接合方法およびこの方法により作成されるデバイス並びに接合装置
【課題】被接合物にダメージを与えることなく、被接合物を接合することができる接合方法およびその方法により作成されたデバイス並びにその接合装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板22の表面に形成された金からなる接合部22aの表面に、洗浄部においてプラズマによるエネルギー波を照射し、表面に形成された酸化膜等を除去して表面活性化処理を行う。その後、チップ20に形成された断面尖形形状を有する金属バンプ20aと、接合部22aを接地して加圧する。加圧により、金属バンプ20aは押し潰されて新生面が露出するため、金属バンプ20aは接合部22aに接合される。なお、金属バンプ20aは、チップ20の接合面から金属バンプ20aの先端までの高さが20〜90%の高さとなるように、加圧力を50〜700MPaとすることにより、チップ20および基板22へのダメージを与えることなく、かつ、接合強度が大きく電気的に精度の高い接合を行うことができる。
【解決手段】基板22の表面に形成された金からなる接合部22aの表面に、洗浄部においてプラズマによるエネルギー波を照射し、表面に形成された酸化膜等を除去して表面活性化処理を行う。その後、チップ20に形成された断面尖形形状を有する金属バンプ20aと、接合部22aを接地して加圧する。加圧により、金属バンプ20aは押し潰されて新生面が露出するため、金属バンプ20aは接合部22aに接合される。なお、金属バンプ20aは、チップ20の接合面から金属バンプ20aの先端までの高さが20〜90%の高さとなるように、加圧力を50〜700MPaとすることにより、チップ20および基板22へのダメージを与えることなく、かつ、接合強度が大きく電気的に精度の高い接合を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合部を有する複数の被接合物を常温接合する接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の被接合物の接合方法として、被接合物の接合表面に原子ビーム、イオンビームまたはプラズマであるエネルギー波を照射することにより、接合表面に形成された酸化膜や有機物の付着層を除去して活性化し、接合表面の金属等の原子が引き合う現象を利用して被接合物の接合を行う方法がある。
【0003】
このような接合方法の一例として、特許文献1では、金属からなる接合部を有する両被接合物の表面に、プラズマによるエネルギー波を照射して表面活性化処理を行った後、低真空中または大気中で両被接合物の接合部どうしを衝合させ、加圧を行っている。それによって、表面活性化処理後に両被接合物表面に再付着した酸化膜や有機物付着層が押し破られて新生面が露出する。そして、金属原子のダングリングボンドが接合表面に生成して、ダングリングボンド同士が接合されて両被接合物の接合が行われるという方法である。
【0004】
【特許文献1】特許第3790995号公報(段落0008〜0010、0165、図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法における接合装置では、両被接合物をプラズマによるエネルギー波によって表面活性化処理した後接合を行うため、エネルギー波の照射により被接合物にイオン等による電気的なダメージを与えるおそれがある。また、被接合物の硬度によっては、エネルギー波により被接合物表面が大きく削られ、機械的ダメージを与えるおそれもある。そのため、特許文献1の方法における接合装置は、センシング素子、例えば受光素子等エネルギー波によるダメージを受けるおそれがある被接合物を基板に接合するような場合には適しておらず、これらの被接合物に対してもダメージを与えることなく接合を行うことができる接合装置の実現が望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被接合物にダメージを与えることなく被接合物を接合することができる接合方法およびその方法により作成されたデバイス並びにその接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる接合方法は、一方の被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の被接合物の接合面に金からなる接合部を形成して、前記両被接合物どうしを、前記他方の被接合物の前記接合部をエネルギー波で表面活性化処理した後、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧して前記金属接合部を押しつぶして接合することを特徴としている(請求項1)。
【0008】
また、本発明にかかる接合方法は、前記エネルギー波がプラズマであることを特徴としている(請求項2)。
【0009】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が金属バンプであることを特徴としている(請求項3)。
【0010】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が、当該被接合物の所定領域を囲んで形成した金属枠体であることを特徴としている(請求項4)。
【0011】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を真空中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間を真空封止することを特徴としている(請求項5)。
【0012】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を封入ガス中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間に前記封入ガスを封入することを特徴としている(請求項6)。
【0013】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属接合部が金めっきで形成されていることを特徴としている(請求項7)。
【0014】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴としている(請求項8)。
【0015】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物がセンシング素子であることを特徴としている(請求項9)。
【0016】
また、請求項1ないし9に記載の接合方法により形成されるデバイスは、半導体デバイス、光デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴としている(請求項10)。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる接合装置は、ヘッドおよびステージに保持した被接合物どうしを接合する接合装置において、いずれか一方の前記被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の前記被接合物の接合面に金からなる接合部を形成しておいた前記両被接合物どうしを、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、つぶれて20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧する加圧制御手段を備え、前記加圧制御手段は、前記他方の被接合物の前記接合部がエネルギー波で表面活性化処理された前記両被接合物どうしを加圧して前記一方の被接合物の前記金属接合部を押しつぶして前記両被接合物どうしを接続することを特徴としている(請求項11)。
【0018】
また、本発明にかかる接合装置は、前記加圧制御手段は、前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴としている(請求項12)。
【0019】
また、本発明にかかる接合装置は、前記表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段をさらに備えたことを特徴としている(請求項13)。
【0020】
また、本発明にかかる接合装置は、前記エネルギー波照射手段はプラズマを発生させることを特徴としている(請求項14)。
【発明の効果】
【0021】
本願発明者は、一方の被接合物の接合面に形成された金属接合部は断面尖形形状を有し、加圧によって押し潰しやすい形状を成しており、このような金属接合部の高さが20〜90%となる範囲で金属接合部を押し潰せば、酸化膜や有機物の付着層を確実に除去しながら新生面を出すことができ、かつ、他の金属接合部と接触することもなく電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。したがって、請求項1、11に記載の発明によれば、前記断面尖形形状を有する金属接合部を一方の被接合物の接合面から金属接合部の先端までの高さが20〜90%となる範囲で押し潰すことにより、酸化膜や有機物の付着層を押し破ることができ、その結果断面尖形形状を有する金属接合部に関しては、接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができて工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
また、他方の被接合物の接合面に形成された接合部は、大気中で酸化されない金によって形成されているため、表面活性化後には接合部の表面に酸化膜や有機物が再付着して層が形成されることはほとんどなく、良好な接合を行うことができる。また、有機物などが再付着して層が形成されたとしても、接合部が表面活性化処理された後一定時間内であれば、その再付着層の厚さは薄いので、断面尖形形状を有する金属接合部と金からなる接合部を衝合して加圧することによって、断面尖形形状を有する金属接合部と金からなる接合部の界面のすべりにより再付着層が効率よく削り取られ、信頼性の高い接合が行われる。
【0023】
請求項2、14に記載の発明によれば、金からなる接合部の表面活性化処理を行うためのエネルギー波がプラズマであるため、真空度が10−2Torr程度の低真空の空間で接合部の表面活性化処理を行うことができる。そのため、表面活性化処理を行うための装置構成は、簡易な設備で済み、装置のコンパクト化、コストダウン化が可能となる。
【0024】
請求項3の発明によれば、一方の被接合物の断面尖形形状を有する金属接合部として金属バンプが形成されているので、金属バンプを加圧によって押し潰して他方の被接合物の接合部と接合することにより、微細電極を有する基板や高精度な実装が要求される接合等において、一方の被接合物と他方の被接合物を高精細に接合することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、一方の被接合物の接合面には接合部として断面尖形形状を有する金属枠体が形成されているので、金属枠体を加圧によって押し潰して他方の被接合物の接合部と接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間を所定の雰囲気で封止することができる。したがって、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間に表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス等のデバイスの本体部が配設されているときには、デバイス等を外部刺激から保護することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、両被接合物の接合部を真空中で接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間を、容易に真空雰囲気に封止することができる。また、他方の被接合物の接合部の表面活性化処理と両被接合物の接合部の接合を同一チャンバー内で行うとすれば、表面活性化処理後にチャンバーから反応ガスを排出して真空雰囲気としてそのまま接合することができるので、チャンバーの開閉や再度の真空引き等の手順を省略することができ、効率よく接合を行うことができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、両被接合物の接合部を封入ガス中で接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間に、容易に封入ガスを封入することができる。また、例えばエネルギー波にArプラズマを使用し、封入ガスもArを使用する場合には、Arプラズマによるエネルギー波によって他方の被接合物の接合部の表面活性化処理を行った後、表面活性化処理で利用したAr雰囲気をそのまま接合の際にも使用できるため、効率よく接合を行うことができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、金属接合部が金めっきによって形成されるため、結晶性が良く、金属接合部と金からなる接合面との金属同士が結合しやすい。さらに、接合部と同じ材料である金を金属接合部の材料として使用するため、大気中で酸化膜の形成がされず、薄く有機物などの再付着層が形成されたとしても、硬度が低いので加圧によって容易に押し潰すことができ、新生面が現れる。したがって、接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。
【0029】
本願発明者は、一方の被接合物に形成された一の前記金属接合部あたりの加圧力が50〜700MPaの範囲内であれば、金属の種類や加圧の速さ等の条件に関わらず、金属接合部の高さは20〜90%の範囲の高さとなることを実験的に見出した。したがって、請求項8、12に記載の発明によれば、前記一方の被接合物に形成された一の前記金属接合部あたりの加圧力が50〜700MPaとなるように加圧を行うことにより、接合強度が大きく、かつ、被接合物にダメージ等がない良好な接合を行うことができる。また、加圧力においても、例えば断面尖形形状を有していない金属バンプ同士を接合する場合に比べ低加圧化が可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、プラズマによるダメージ等を受けやすいセンシング素子、例えば受光素子を一方の被接合物とした場合でも、断面尖形形状を有する金属接合部を形成した一方の被接合物である受光素子にはエネルギー波による表面活性化処理が行われないので、受光素子にダメージ等を与えることなく、受光素子を他方の被接合物の接合部に接合することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、例えば一方の被接合物がプラズマ等によるエネルギー照射によりダメージを受けやすいセンシング素子であっても被接合物にダメージを受けることなく形成され、また、低温で接合することにより熱による損傷を防止され、かつ、アライメント精度が高いデバイスを提供することができる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、接合装置に表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段を備えるため、他方の被接合物の接合部の表面活性化処理と、断面尖形形状を有する金属接合部が形成された一方の被接合物および他方の被接合物の接合動作を、連続して1つの装置で行うことができる。したがって、前記接合部の表面活性化処理を行った後接合を行うまでの時間を短縮することができ、表面活性化処理後、有機物等が前記接合部に再付着するのを防止することが可能になる。また、一連の接合動作を1つの装置で行うことができるので簡便であり、装置をコンパクト化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下に本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる接合装置の一実施形態の概略構成図、図2は接合過程を表す図、図3は接合時の接合界面での結晶方向の回転模式図、図4はバンプ高さと接合強度との関係を示す図、図5はチップの一部と金属バンプを拡大して示した斜視図である。なお、図1に示す本発明にかかる装置構成では、一方の被接合物であるチップ20の接合面に形成された断面尖形形状を有する金属接合部としての金属バンプ20aと他方の被接合物である基板22の接合面に形成された金からなる接合部22aを大気中で接合するための装置を例として挙げる。
【0034】
本実施形態における接合装置は、図1に示すように、上下駆動機構25とヘッド部26を合わせた接合機構27とステージ10とステージテーブル12からなる実装機構28、位置認識部29、搬送部30、制御装置31、洗浄部40を備えている。また、接合機構27は、上下駆動機構25と、ヘッド部26とを備え、上下駆動機構25は上下駆動モータ1とボルト・ナット機構2により、上下ガイド3でガイドされながらヘッド保持部6を上下動できるように構成されている。そして、接合機構27はフレーム34に結合されて、フレーム34はヘッド部26の加圧中心の周辺を囲むように配設された4本の支柱13により架台35と連結されている。なお、支柱13およびフレーム34の一部は図示省略している。
【0035】
ヘッド保持部6は、ヘッド逃がしガイド5で上下方向にガイドされ、自重をキャンセルするための自重カウンター4に牽引された状態でボルト・ナット機構2に連結されている。そして、このヘッド保持部6にヘッド部26が結合されている。
【0036】
また、ヘッド保持部6には加圧力検出手段32が配設されており、先端ツール9とステージ10との間に挟持されたチップ20、基板22等の被接合物への加圧力が検出できるように構成されている。したがって、加圧力検出手段32により検出された被接合物に対する加圧力に基づいて、制御装置31により上下駆動機構25を制御して、被接合物への加圧力を制御することができる。
【0037】
また、ヘッド部26は、チップ20を吸着保持するチップ保持ツール8と先端ツール9、平行移動、回転移動の移動軸を持った位置補正を行うヘッド側アライメントテーブル7、それらを支えるヘッド保持部6により構成されている。なお、ヘッド部26の高さはヘッド部高さ検出手段24によって検出することができる。
【0038】
実装機構28は、基板22を保持するステージ10と、チップ20に対する基板22の位置を調整するために平行・回転移動自在な移動軸を有するステージテーブル12とを備えている。また、ステージ10は、基板22を保持するための保持機構(図示せず)を備えている。ここで、チップ保持ツール8およびステージ10の保持機構として、真空吸着あるいは静電吸着を利用したものを用いるとよい。また、ステージ10上に基板22を置くだけとしてもよい。また、チップ保持ツール8の内部には加熱用ヒータ(図示せず)が埋設されており、ステージ10内部にはステージヒータ11が内蔵されている。
【0039】
位置認識部29は、相対されたチップ20と基板22の間に挿入され、上下のチップと基板各々の位置認識用のアライメントマークを認識する上下マーク認識手段14、上下マーク認識手段14を水平および/または上下移動させる認識手段移動テーブル15から構成される。
【0040】
また、搬送部30はチップ20を搬送するチップ供給装置36、チップトレイ38および基板22を搬送する基板搬送装置37、基板トレイ39により構成される。チップトレイ38はチップトレイカセット41から供給収納され、基板22は、基板カセット42から供給収納される。
【0041】
制御装置31は、制御に必要な操作を行うための操作部を備えており、制御装置31によって装置全般の制御が行われる。特に加圧力制御においては、加圧力検出手段32からの信号により上下駆動モータ1のトルクを制御し、被接合物への加圧力の制御が行われる。
【0042】
洗浄部40では、基板22の接合部22aの表面にプラズマ等のエネルギー波によって、接合部22a表面の酸化膜や有機物からなる付着物の層を除去する表面活性化処理が行われる。なお、プラズマ等のエネルギー波以外の、イオンビーム、原子ビーム等により表面活性化処理を行うとしてもよい。
【0043】
洗浄部40は、真空チャンバー43、被接合物保持手段44、エネルギー波照射手段45、吸気管および排気管(図示せず)を備えている。被接合物保持手段44にはヒーター(図示せず)が内蔵され、交番電源が接続された電極面に、機械的方法により基板22が固定される。
【0044】
吸入ガスとしては、例えばArガスが用いられるが、窒素、酸素等を用いてもよく、Arと酸素等の混合気体でもよい。例えばArガスを使用する場合、10−2Torr程度の一定の真空度でプラズマが発生される。
【0045】
発生されたプラズマは、被接合物保持手段44に保持された基板22の接合部22aの表面に向かって衝突し、表面の酸化膜や有機物等による付着物層が除去され、新生面が現れて表面が活性化される。
【0046】
なお、基板22の接合部22aを表面活性化処理する方法として、交番電源が接続された電極面に保持された基板22に表面活性化処理を行うのが効率上好ましいが、均一性やダメージ軽減から、前記電極を基板22の保持位置以外の場所に設置して、表面活性化処理を行っても構わない。
【0047】
なお、洗浄と接合を連続して行うために、洗浄部40は搬送部30により接合装置と連結されているが、洗浄部40を備えない装置構成としてもよい。その場合は、予め別の洗浄装置等により、基板22の表面活性化処理を行っておくことが必要である。
【0048】
次に、一連の接合動作について図2を参照して説明する。本実施形態では、一方の被接合物である半導体からなるチップ20を他方の被接合物である基板22に接合する接合動作を例として挙げる。
【0049】
チップ20の接合面には、電極であって尖頭を有するすなわち断面尖形形状の銅からなる金属バンプ20aが形成され、基板22の接合面には、電極であり金からなる接合部22aが、チップ側の金属バンプ20aに対向した位置に配設されている。金属バンプ20aの形状の一例を図5に示す。同図(a)に示すように、金属バンプ20aはピラミッド型をしており、チップ20と金属バンプ20aの接合面では、金属バンプ20aは一辺が10μmの正方形をしており、前記接合面から金属バンプ20aの先端までの長さは10μmである。なお、金属バンプ20bの形状は、ピラミッド型に限らず、その他の角錐や円錐等、それ以外の形状であってもよい。例えば、同図(b)に示すように、断面尖形形状を有していれば、断面形状が五角形等の柱状であってもよい。また、寸法に関しても、上記した例に限らずどのようなものであってもよい。また、金であれば好ましい。
【0050】
さらに、金属バンプ20aの材質は金に限らずその他の材料によって形成されたものであってもよいし、金属からなる母材の表面に金膜等を形成して金属バンプ20aを構成してもよい。例えば、潰れ易くするために、硬度が低い錫または金と錫の合金層を母材とし、表面に金膜を形成した金属バンプ20aを形成してもよい。なお、前記のように金属バンプ20aを母材および金膜により形成する場合、金属バンプ20aが加圧により押し潰された後も金属バンプ20aの表面に金膜が残っていると、金属バンプ20aと基板22の接合部22aの金原子同士が引き合うため接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。したがって、加圧後も金属バンプ20aの表面に金膜が残るように金膜の厚さおよび加圧力を調整するとよい。
【0051】
基板22は、基板搬送装置37によって基板トレイ39から洗浄器40へ搬入される。そして、図2(a)に示すようにプラズマ等のエネルギー波が接合部22aに照射され、接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物からなる付着物の層を除去する表面活性化処理が行われる。そして、洗浄部40により表面活性化処理が終了すると、基板22は洗浄部40から取り出され、基板搬送装置37により実装機構28のステージ10へと搬送され、ステージ10に吸着保持される。
【0052】
一方、チップ20はチップ供給装置36によりチップトレイ38からチップ保持ツール8に搬送され、図2(b)に示すように基板22と接合面を対向してチップ保持ツール8に吸着保持される。
【0053】
チップ20と基板22が接合面を対向してそれぞれ吸着保持されると、上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15によってチップ20と基板22の間に挿入され、対向するチップ20と基板22各々の位置合わせ用アライメントマークが上下マーク認識手段14により検出される。この後、チップ20を基準として、ステージテーブル12を平行・回転移動することで基板22の位置を移動させて、チップ20および基板22の位置の調整が行われる。チップ20と基板22の位置調整はステージテーブル12およびヘッド側アライメントテーブル7によって行ってもよく、またはヘッド側アライメントテーブル7のみにて位置調整してもよい。また、どちらか一方のテーブルのみの構成でもよい。アライメント方法は2視やカメラにとらわれず、個別に配置した認識手段で認識してもよい。
【0054】
次に、チップ20および基板22の接合位置が整合された状態で、上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15により待避される。次いで、ヘッド部26が上下駆動機構25により下降され、チップ20の金属バンプ20aと基板22の接合部22aが接地される。ヘッド部26の高さ方向の位置は、ヘッド高さ検出手段24により検出されている。そして、チップ20と基板22の接地タイミングは加圧力検出手段32により検出され、上下駆動モータ1は位置制御からトルク制御へと切り替えられ、図2(c)に示すようにチップ20と基板22へ加圧力が加えられ、接合が行われる。
【0055】
なお、チップ保持ツール8の内部には加熱用ヒータ(図示せず)が埋設されており、ステージ10内部にはステージヒータ11が内蔵されているため、加圧中にチップ20および基板22を加熱しながら接合することもできる。加熱することにより、効率良く結晶方位の回転や粒子の移動が行われ、接合が進み、残留応力が除去されることにより、接合強度を増大することができる。なお、トルク制御に切り替えられている加圧中においても、ヘッド高さはヘッド高さ検出手段24によりモニタされており、高さ方向の位置も調整可能である。
【0056】
一般に、大気中ではチップ20や基板22等の被接合物の表面に酸化膜や有機物等の付着物層が形成されるので、180℃以下の低温で固相のまま被接合物同士を接触させても、そのままでは接合されない。そこで、真空中で金属バンプ20aおよび接合部22aにプラズマ等のエネルギー波等を照射し新生面を露出させた状態で、引き続き真空中で金属バンプ20aおよび接合部22aの接合が行われる。
【0057】
しかし、本実施形態では、チップ20および基板22を加圧することによって、図3(a)および(b)に示すように、金属バンプ20aの尖頭が潰されることにより、並んだ結晶の移動や結晶方向の回転が起こり、新生面が露出することとなる。つまり、チップ20の金属バンプ20aは加圧により尖頭が押し潰されて広がり、金属バンプ20aと接合部22aとの間に滑りが生じるため、金属バンプ20aの表面に形成された酸化膜や付着した有機物等の層は押し潰されて新生面が露出することとなる。
【0058】
また、接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物等の層は、上記のとおり接合前に洗浄部40において接合部22aの表面活性化処理が行われ除去されているので、接合部22aの表面には新生面が露出している。また、接合部22aは金からなるため、酸化膜や有機物等の再付着層等は形成されにくく、形成されたとしても表面活性化処理後一定時間内であればその厚さは薄いので、金属バンプ20aを接合部22aに接地し加圧することによって押し破られる。したがって、再び接合部22aの表面でも新生面が露出し、金属バンプ20aと接合部22aの金属原子が原子間力により引き合い、大気中でも図2(d)に示すように接合が行われることとなる。
【0059】
また、従来技術では、チップ側の接合部は断面尖形形状を有しておらず変形しにくい形状であったため、チップ側の接合部を基板側の接合部に加圧したときに、チップ側の接合部が押し潰されて広がるときに生じる接合部間の滑りが小さく、プラズマ等のエネルギー波により予めチップ側および基板側の両接合部の接合表面の酸化膜等を除去する必要があった。
【0060】
一方、本実施形態では、チップ20の金属バンプ20aは断面尖形形状を有しており、従来技術に比べて金属バンプ20aは加圧によって変形しやすい形態である。そこで、金属バンプ20aの変形に伴って、金属バンプ20aと接合部22aの界面では、金属バンプ20aが押し潰されて広がるときに生じる金属バンプ20aと接合部22a間の滑りが大きくなる。よって、金属バンプ20aで新生面が露出するのと同時に、接合部22aの再付着層等も前記滑りにより押し破られやすくなり、新生面は出やすくなる。また、加圧力においても断面尖形形状を有していない金属バンプ同士を接合する場合に比べ低加圧化が可能となる。
【0061】
したがって、本実施形態では、チップ20の金属バンプ20aの表面活性化処理を行わなくても金属バンプ20aに新生面を露出させることができる。さらに、接合部22aに対しても、加圧したときの金属バンプ20aと接合部22aの間の滑りにより、表面活性化処理後に形成された再付着層の除去を容易にすることができる。よって、例えば他方の被接合物の接合部がパッドである場合に、プラズマ洗浄後の前記バッド表面においても、金属バンプが断面尖形形状を有していない場合に比べて、断面尖形形状を有する金属バンプ20aとパッド表面との界面のすべりにより再付着層が効率よく削り取られるため、信頼性の高い接合が行われる。
【0062】
また、本発明者は、金属バンプ20aを接合面から先端までの高さが20〜90%となる範囲で押し潰せば、金属バンプ20aの表面の酸化膜や有機物等の付着層を確実に除去して新生面を露出することができ、電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。図4を参照して、金属バンプ20aの接合面から先端までの高さと接合強度との関係について説明する。
【0063】
図4は金属バンプ20aがAu、Al、Cuである場合における金属バンプ20aの高さと接合強度との関係を示した図である。同図において金属バンプ20aの高さは、完全につぶれてしまったときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1バンプ当たり15g以上の場合とし、1バンプ当たりの接合強度が15g以上となり接合強度が十分良好であるためには、加圧し潰した後の接合部から金属バンプ20aの先端までの高さは、加圧前のおよそ20〜90%となる場合であればよいことが分かる。
【0064】
また、図4では、加圧後の金属バンプ20aの高さが、加圧前の金属バンプ20aの高さの0〜20%となるときは、金属バンプ20aは大きく潰れているため十分接合していると考えられるが、加圧力が十分過ぎ、チップ20および基板22に余計なダメージが与えられる等、接合されない可能性が含まれると考えられる。また、加圧後の接合面から金属バンプ20aの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの90〜100%となるときは、金属バンプ20aの潰れ方が小さいため、接合されない可能性があると考えられる。以上の点を考慮すると、接合を良好に行うための金属バンプの高さは、加圧後の金属バンプの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの20〜90%の場合とするのがよい。
【0065】
したがって、金属バンプ20aの接合面からの高さが加圧前の接合面からの高さの20〜90%の範囲となるように、チップ20や基板22等の被接合物に加圧するのがよい。
【0066】
そこで、加圧中は、ヘッド高さ検出手段(図示省略)により基板を保持するヘッドの高さをモニタすることにより、金属バンプ20aの、基板22からの高さを検出し、金属バンプ20aの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの20〜90%となるように加圧力の調整を行えばよい。
【0067】
なお、本発明者は、チップ20に形成された金属バンプ20aへの加圧力が、金属の種類、加圧の速さ等の条件に関わらず、1バンプあたり50〜700MPaの範囲のときに、金属バンプ20aが20〜90%の範囲の高さに押し潰されることを実験的に見出した。したがって、チップ20および基板22に、1バンプあたり50〜700MPaの範囲の加圧力が加えられ、金属バンプ20aの高さが20〜90%の高さとなるように制御を行い、接合を行うこともできる。
【0068】
そして接合完了後、チップ20の吸着は解除され、基板22側にチップ20が実装された状態でステージ10上に残り、再び基板搬送装置37により、接合されたチップ20および基板22が基板トレイ39へ排出され、一連の接合動作は終了する。
【0069】
したがって、第1実施形態によると、チップ20aに形成された金属バンプ20aは断面尖形形状を有し、加圧によって押し潰しやすい形状を成しており、図4から分かるように、金属バンプ20aの高さが20〜90%となる範囲で金属バンプを押し潰せば、金属バンプ20aおよび接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物の付着層を確実に除去することができ、かつ、他のバンプと接触することもなく電気的信頼性のよい接合が可能であることが実験的に明らかになった。よって、断面尖形形状を有する金属バンプ20aの高さが20〜90%となる範囲で押し潰すことにより、酸化膜や有機物の付着層を押し破ることができ、その結果金属バンプ20aに関しては、接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができ、工程の簡略化を図ることができる。
【0070】
また、基板22の接合面に形成された接合部22aは、大気中で酸化されない金によって形成されているため、表面活性化処理後には接合部22aの表面に酸化膜や有機物が再付着して層が形成されることはほとんどない。また、酸化膜や有機物が再付着して層が形成されたとしても、接合部が表面活性化処理された後一定時間内であれば、その再付着層の厚さは薄いので、金属バンプ20aと金からなる接合部22aを衝合して加圧することによって再付着層を押し破ることができる。したがって、本実施形態によると、大気中でも金属バンプ20aおよび接合部22aの接合を行うことができる。
【0071】
また、チップ20に形成された金属バンプ20aあたりの加圧力が50〜700MPaの範囲で加圧力の制御を行うと、金属バンプ20aの高さは20〜90%の範囲の高さとなり、接合強度が大きく、かつ、被接合物にダメージ等がない良好な接合を行うことができる。
【0072】
また、プラズマ等のエネルギー波により接合部22aを表面活性化させて接合しているため、低温での接合が可能である。例えば、従来の錫鉛ハンダと比較すると、被接合どうしの接合時の加熱温度を錫鉛ハンダの溶融温度である183℃以下である180℃以下で、固相で接合することができる。また、金属バンプ20aおよび接合部22aの材料によっては100℃以下または常温でも可能であり、加熱によりチップ20や基板22にダメージを与えるおそれが低減される。また、固相で接合することができるため、微細ピッチ電極や数μm以内の高精度な実装が要求される接合においては、従来のように錫鉛ハンダが高温により再溶融するという現象が生じることもなく、高精細な接合が可能である。
【0073】
また、接合部22aの表面活性化処理を行うためのエネルギー波がプラズマであるため、真空度が10−2Torr程度の低真空の空間で接合部の表面活性化処理を行うことができる。そのため、表面活性化処理を行うための装置構成は、簡易な設備で済み、装置のコンパクト化、コストダウン化が可能となる。
【0074】
なお、接合部22aを金属バンプ20aと同様に断面尖形形状を有するバンプ形状(金属バンプ22bとする。)とする変形例が考えられる。この場合、原理的には、金属バンプ同士の接合では、両金属バンプが押し潰され新生面が現れるので、両金属バンプともプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を行わなくても接合を行うことができると考えられる。しかし、実際は、両金属バンプの先端の位置が合わないので、加圧によりチップ20の金属バンプ20aを基板22の金属バンプ22bに押し込むと、尖った先端に沿って両金属バンプの位置がずれることになる。その結果、両金属バンプの新生面同士は圧接されず、接合ができないことになる。
【0075】
したがって、大気中で低温で接合するには、本実施形態のように、予め基板22の接合部22aを、プラズマ等のエネルギー波によって表面活性化処理を行い、金属バンプ20aを加圧して接合する方法が効果的である。
【0076】
(第2実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第2実施形態について詳述する。本実施形態が上記第1実施形態と大きく相違する点は、被接合物であるチップ20の金属バンプ20aが金めっきにより形成して構成されている点であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態との相違点を中心に第2実施形態について詳細に述べる。なお、第1実施形態と同一の構成および動作については、その構成および動作の説明を省略する。
【0077】
この第2実施形態では、チップ20の金属バンプ20aは、金めっきにより形成された金属バンプとして構成されている。一例として、金を電解めっき法により順次積層して、例えばピラミッド状に形成して金属バンプ20aを形成している。このような方法で形成することにより、結晶性の良い金属バンプを形成することができる。また、酸化膜や有機物等からなる付着層が前記金属バンプ20aの接合表面に付着しづらく、また硬度が低いため、加圧により表面の酸化膜等を押し破りやすく、大気中でも接合がしやすくなる。したがって、金属バンプ20aと接合面22aの接合界面で結晶構造を整合させるために加熱する場合の加熱温度をより低く、または常温とすることができ、チップ20や基板22への加熱によるダメージを防止することができる。なお、金属バンプ20aの形状は、ピラミッド型に限らず、その他の角錐型や円錐型等、どのような形状でもよい。
【0078】
また、上記したような方法で形成した場合、例えば、先端を引きちぎることにより新生面を生じさせて接合を行うスタッドバンプのように、材料に不純物を混入させることがないので、接合強度が強く、しかも電気的特性の優れた金属バンプを形成することができる。また、スタッドバンプの場合には、引きちぎりや加圧による塑性変形により、破断面の中央部と周辺部とでは結晶構造が変化し、例えばスタッドバンプの破断面の中央部が接合面22aに接合しないという問題が生じることがある。しかし、上記したように金めっきにより金属バンプ20aを形成した場合には、金属バンプ20aの結晶性が良く、また、押し潰すことにより新生面が現れ金属バンプ20aと接合面22aの結晶構造が整合されるため、金属バンプ20aの中央でも接合が行われることとなる。
【0079】
したがって、第2実施形態によると、金属バンプ20aが金めっきによって形成されるため、結晶性の良いバンプを形成することができる。そして、酸化膜や付着物等の層が形成されにくく新生面が露出しているので、金属バンプ20aは接合部22aとの接合を行いやすく、加熱温度を低くすることができるため、チップ20や基板22への加熱によるダメージを防止することができる。また、付着物等の層が形成されたとしても、金属バンプ20aは金めっきにより形成されるので硬度が低く、加圧によって押し潰すことによって容易に新生面が現れることとなる。また、接合部22aと同じ材料である金を金属バンプの材料として使用するため、金属同士が結合しやすく、接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。
【0080】
(第3実施形態)
続いて第3実施形態について詳細に述べる。以下、上記第1実施形態と異なる点について述べ、上記第1実施形態と同一の構成および動作についての説明は省略する。
【0081】
本実施形態が、上記第1実施形態と大きく相違する点は、チップ20として可視光や赤外光を含めた受光素子であるCMOSイメージセンサを基板22に接合する点であり、その他の点は上記第1実施形態と同一の構成および動作である。チップ20が受光素子である場合、接合前に表面活性化処理を行うとすると、プラズマ等のエネルギー波の照射によりチップ20に不要な電荷等が与えられ、チップ20がダメージを受けるおそれがある。
【0082】
本実施形態によると、プラズマによるダメージ等を受けやすい受光素子を一方の被接合物とした場合でも、受光素子であるチップ20には断面尖形形状を有する金属バンプ20aが形成されているため、表面活性化処理は不要であり、チップ20と基板22の接合前に表面活性化処理の工程を省略することができる。したがって、受光素子であるチップ20を、ダメージを受けることなく接合することができる。なお、受光素子はCMOSイメージセンサに限られず、CCD等の受光素子や、その他のセンシング素子でもよい。また、センシング素子に限られず、プラズマによりダメージを受けやすい材質を使ったデバイス、エッチングにより損傷されるおそれのある薄膜や銀等による配線パターンが形成されたデバイスでもよい。
【0083】
(第4実施形態)
続いて第4実施形態について詳細に述べる。本実施形態が、上記第1実施形態と大きく相違する点は、一方の被接合物であるデバイス基板901の基板本体901aの表面に、所定領域を囲んだ断面尖形形状を有する金属接合部としての金属枠体904が突出形成され、他方の被接合物である蓋基板902と金属枠体904を接合し、デバイス基板901および蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれる空間を、所定の雰囲気に封止する点である。以下、上記第1実施形態と異なる点について述べ、上記第1実施形態と同一の構成および動作についての説明は省略する。
【0084】
まず、本発明の接合装置において接合される基板の構造について詳細に述べる。図6はデバイス基板および蓋基板の一例を示す図、図7は図6のA−A線矢視断面図である。
【0085】
図6を参照して基板の一例について説明する。図6に示すように、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、所定領域を囲んだ断面尖形形状を有する金属枠体904が金めっきによって突出形成されている。また、金属枠体904に囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部903が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。なお、金属枠体904の材質は金に限らず銅やアルミニウム等その他ものであってもよい。
【0086】
また、蓋基板902の基板本体902aの表面には接合部として金薄膜905がスパッタリングまたは金属めっきにより形成されている。なお、金薄膜905の代わりに、金属枠体904に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0087】
このような構成とすれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、後述するように、デバイス基板901と蓋基板902との接合を行って、両基板901、902の接合面と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的である。
【0088】
なお、上記した基板の一例では、金めっきを厚膜状に施すことにより、基板本体901aの表面に断面尖形形状を有する金属枠体904を突出形成したが、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成してもよい。
【0089】
例えば、潰れ易くするために、硬度が低い錫または金と錫の合金層を母材とし、表面に金膜を形成した断面尖形形状を有する金属枠体904を形成してもよい。なお、この場合、金属枠体904が加圧により押し潰された後も金属枠体904の表面に金膜が残っていると、金属枠体904と接合部905の金原子同士が引き合うため接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。したがって、加圧後も金属枠体904の表面に金膜が残るように金膜の厚さおよび加圧力を調整するとよい。また、錫に代わってインジウムを使用してもよい。
【0090】
また、接合装置および接合動作については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、図3に示した装置では、金属枠体904と接合部905の接合を大気中で行うため、デバイス基板901と蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれた空間には、大気が封入されることとなる。
【0091】
また、図8は金属枠体904がAu、Al、Cuである場合の、金属枠体904の高さと接合強度との関係を示した図である。同図において金属枠体904の接合面からの高さは、完全につぶれたときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1金属枠体当たり150g以上の場合とし、1金属枠体当たりの接合強度が150g以上となり接合強度が十分良好であるためには、接合部が金属バンプであるときと同様、金属枠体904の高さが接合面から金属枠体904の先端までの高さのおよそ20〜90%となるように加圧して押し潰すとよいことが分かる。また、金属バンプの場合と同様、金属枠体904の接合面からの高さが20〜90%の高さとなるように1金属枠体当たり50〜700MPaの範囲で加圧力の制御を行うこととしてもよい。
【0092】
(第5実施形態)
続いて第5実施形態について説明する。本実施形態では、上記第4実施形態と同様デバイス基板901の所定領域を囲んで突出形成された断面尖形形状を有する金属枠体904と蓋基板902の接合部905の接合を行う。本実施形態が上記第4実施形態と大きく相違する点は、接合部905の表面活性化処理後、金属枠体904と接合部905の接合を行うための接合装置がチャンバー内に配設されている点である。以下、本装置について詳しく説明する。
【0093】
図9は本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。本実施形態では、同図に示すように、チャンバー52内に表面活性化処理室51と、チャンバー56内に接合室55が構成され、表面活性化処理室51には表面活性化処理装置53が、接合室55には接合装置57が配設されている。また、チャンバー52および56の入口には気密シャッター54および58が設けられ、この気密シャッター54および58を閉じることでチャンバー52および56を気密化して、所定の雰囲気中で表面活性化処理および接合処理を行うことができる。
【0094】
また、表面活性化処理室51と接合室55との間には、表面活性化処理装置53から接合装置57へと両基板901、902を搬送可能にするための搬送機構59が配設されている。このような構成とすれば、表面活性化処理および接合処理において、蓋基板902を表面活性化処理室51から接合室55の上部電極806へと搬送することができる。なお、搬送装置59については、周知の種々の搬送装置を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。
【0095】
したがって、本実施形態によると、蓋基板902を表面活性化処理後、搬送装置59により接合室へ搬送し、上部電極806に保持することにより、チャンバー56内の所定の雰囲気中でデバイス基板901と蓋基板902の接合を行うことができる。よって、デバイス基板901および蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれた所定の空間を大気以外の所定の雰囲気に封入する場合には簡便である。
【0096】
(第6実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第6実施形態について説明する。本実施形態が上記第5実施形態と大きく相違する点は、表面活性化処理と接合処理を続けて行うことができる表面活性化・接合装置が配設されている点であり、蓋基板902の表面活性化処理前にデバイス基板901および蓋基板902を同一チャンバー内にセットし、蓋基板902に表面活性化処理を行った後、続けて所定の雰囲気中でデバイス基板901および蓋基板902の接合を行うことができる。その他の構成は第5実施形態と同様である。以下、第5実施形態との相違点を中心に第9実施形態について説明する。
【0097】
なお、図10は、本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。また、図11は表面活性化処理および接合処理の手順を示す図である。また、図12は図10の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【0098】
図10に示すように、表面活性化・接合装置50において、図示省略したアクチュエータにより昇降可能に構成されたチャンバー壁803と、チャンバー台810とにより減圧チャンバーが構成されている。この表面活性化・接合装置50では、蓋基板902とデバイス基板901とを上下に対向保持した状態でチャンバー壁803を下降して減圧チャンバーを閉じ、真空内でArプラズマにより表面活性化処理(エッチング)を行った後、両基板901、902を接合することができる。
【0099】
また、この装置50は、デバイス基板901を保持し、この保持されている基板の位置調整が可能に構成されたステージ部と、蓋基板902を保持し、Z軸801により昇降制御と加圧制御を行うヘッド部とを備えている。また、ヘッド部はピストン型ヘッド802と、上部電極806とを備え、ステージ部は位置調整(アライメント処理)が可能に構成されたアライメントテーブル820と下部電極809とを備えている。なお、本実施形態では、蓋基板902を上部電極806により保持し、デバイスの本体部903が形成されたデバイス基板901を下部電極809により保持している。また、本実施形態では、デバイス基板901に金属枠体904が形成されており、デバイス基板901および蓋基板902を接合する。
【0100】
また、Z軸801には図示省略する圧力検出手段が組み込まれ、この圧力検出手段による検出信号をZ軸サーボモータのトルク制御装置(図示省略)へフィードバックすることで、ピストン型ヘッド802を基板901、902の接合面とほぼ垂直な方向に加圧力制御を行うことができる。なお、ステージ部側のみ、または、ヘッド部側およびステージ部側の両方を加圧制御可能に構成してもよい。
【0101】
そして、摺動パッキン804がZ軸801に摺接しつつ、アクチュエータによりZ軸801と独立して昇降可能なチャンバー壁803が下降し、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地した状態でチャンバー内を外気と遮断することができる。この状態で、排出バルブ814を開放して真空ポンプ815を作動させて排出口812を介してチャンバー内を真空に引きした後、ガス切換弁816をArガス817(図12参照)を導入するように切換えて吸入バルブ813を開放することで、吸入口811を介して反応ガスとしてArガス817をチャンバー内に導入することができる。
【0102】
そして、Arプラズマによる蓋基板902の表面活性化処理を行った後、チャンバー内を所定の封入ガス雰囲気に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで両基板901、902を接合することができる。また、上部電極806および下部電極809は図示省略する加熱ヒータを備えており、基板901、902どうしの接合時に加熱を併用することで、基板901、902どうしの接合強度を向上させることができる。
【0103】
なお、後述するように、表面活性化処理後、チャンバー内を所定の雰囲気(Arガス817、窒素ガス818、真空、大気等)に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入して接合することができる。例えば、ガス切換弁816を窒素ガス818(図12参照)を導入するように切換えることで、吸入口811を介して封入ガスとして窒素ガス818をチャンバー内に導入し、窒素ガス818を当該所定の空間に封入することができる。
【0104】
また、チャンバー壁803の摺動パッキン(Oリング)804をZ軸801に摺接させてOリングでチャンバーを気密化しているが、ピストン型ヘッド802の外周面に摺動パッキン(Oリング)804を設け当該摺動パッキンをチャンバー壁803に摺接させてチャンバーを気密化してもよい。
【0105】
次に、この表面活性化・接合装置50における表面活性化処理(表面活性化工程)および接合処理(接合工程)の処理手順について図11を参照して説明する。まず、同図(a)に示すようにチャンバー壁803が上昇した状態で蓋基板902を上部電極806により保持し、デバイス基板901を下部電極809により保持する。基板901、902の保持方法は機械的なチャッキング方式でもよいが、静電チャック方式がより好ましい。
【0106】
そして、図11(b)に示すようにチャンバー壁803を下降させ、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地させる。チャンバー壁803は摺動パッキン804がZ軸801に摺接することでにより大気と遮断されているので、吸入バルブ813を閉止した状態で排出バルブ814を開放して真空ポンプ815により真空引きを行うことでチャンバー内の真空度を高めることができる。
【0107】
次に、図11(c)に示すようにチャンバー内に反応ガスを導入する。真空ポンプ815を動作させながら排出バルブ814の排出量と吸入バルブ813のガス吸入量を調整することで、ある一定の真空度に保ちながらチャンバー内を任意の反応ガスで満たすことができる。この実施形態では、反応ガスとして、Arガス817を10−2Torr程度の真空度でチャンバー内に充満させ、同図(d)に示すように、上部電極806に交番電源により電圧印加することで同様にしてArプラズマを発生させ、蓋基板902に形成された接合部905の表面活性化処理を行う。
【0108】
次に、図11(b)に示すように、吸入バルブ813を閉じた状態でチャンバー内をさらに真空引きしてArガスを排出する。なお、両電極806,809を100℃程度に加熱しながら真空引きを行うことにより基板901、902表面に付着したり、基板901、902内部に打ち込まれたArイオンを排出することもできる。
【0109】
その後、図11(c)に示すように、チャンバー内を所定の封入ガスに置換する。なお、ガス切替弁816でArガス817と窒素ガス818を選択して吸入口811に導入することで、Arガス817と窒素ガス818の2つのガスを1チャンバーで切り替えることができる。また、このガス切替弁816は大気を吸入可能に構成されているので封入ガスとしてチャンバー内に大気を導入することもできる。また、チャンバー内に大気を導入してチャンバー内を大気圧とした後に、チャンバーを開いて大気解放させることもできる。
【0110】
したがって、本実施形態では、封入ガスとして、Arガス817、窒素ガス818、大気ガス、真空のうちから1つのガスを選択してチャンバー内に導入することができる。なお、封入ガスをArガス817とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を省略すれば、Arガス817の消費量を抑制できる。また、封入ガスを真空とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を行った後、そのまま後述する接合処理を行えばよい。
【0111】
続いて、図11(e)に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン804で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。このとき、蓋基板902の接合部905がArプラズマにより表面活性化処理された後、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物が当該接合部905および金属枠体904に付着したり、当該接合部905および金属枠体904が大気に暴露されることで、当該接合部905および金属枠体904に有機物や酸化膜などの付着物層が付着することがある。
【0112】
しかしながら、基板901に形成された金属枠体904および蓋基板902に形成された接合部905を真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで金属枠体904および接合部905に再付着した付着物層が押し破られて金属枠体904および接合部905が接合し、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する接合処理が行われる。
【0113】
なお、チャンバー内はチャンバー壁803とZ軸801との間の摺動パッキン804により外部雰囲気と遮断され、チャンバー内を真空または封入ガス雰囲気に維持した状態でピストン型ヘッド802を下降させることができる。また、接合処理の際に両電極806,809に備えられた加熱ヒータにより180℃程度の温度で加熱して、接合強度を向上させることができる。最後に、図11(f)に示すように、チャンバー内に大気を供給し大気圧に戻した後にヘッド部を上昇させて、接合された両基板901、902をチャンバー内から取り出し、表面活性化処理および接合処理が終了する。
【0114】
ところで、デバイス基板901および蓋基板902の接合の際に、デバイス基板901および蓋基板902の位置調整(アライメント)を行った後、接合することもできる。図12に示すように、両基板901、902の間に2視野認識手段825を挿入することで、デバイス基板901に形成された金属枠体904や両基板901、902に形成されたアライメントマーク等の位置を当該2視野認識手段825で検出できる。
【0115】
この2視野認識手段825は両基板901、902間に挿入された状態で、上下に位置する両基板901、902の金属枠体904やアライメントマーク等の像を、プリズム826により、上マーク認識手段827と下マーク認識手段828の方向に屈折させてそれぞれ読み取ることができる。また、2視野認識手段825は両基板901、902の接合面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板901、902面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成され、両基板901、902の任意の位置に形成された金属枠体904やアライメントマーク等の位置を読み取ることができる。
【0116】
そして、両基板901、902に形成された金属枠体904やアライメントマーク等の位置を読み取った後、アライメントテーブル820によりデバイス基板901の位置を、蓋基板902の位置に合わせる位置調整を行う。なお、1回目の位置調整が終了した後、再度、2視野認識手段825を両基板901、902に挿入して繰り返して位置調整を行い、位置精度を向上させることもできる。
【0117】
このように、この表面活性化・接合装置50において、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物が接合部905および金属枠体904に付着しても、加圧することで該付着した付着物層を押し破ってデバイス基板901に形成された金属枠体904および蓋基板902に形成された接合部905を接合することができ、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する接合処理を行うことができる。
【0118】
なお、接合処理を真空中で行うことにより、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0119】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はでない。そのため、不活性なガス以外のガスも採用することができる。
【0120】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部905の付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0121】
(第7実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第7実施形態について説明する。本実施形態が上記第6実施形態と大きく相違する点は、表面活性化処理室と接合室が同一チャンバー内に気密シャッターにより仕切られて構成されている点であり、その他の構成は第6実施形態と同様である。以下、第6実施形態との相違点を中心に第7実施形態について詳細に述べる。なお、第6実施形態と同一の構成および動作については、その構成および動作の説明を省略する。
【0122】
図13は本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。同図に示すように、表面活性化・接合装置60は、チャンバー61が表面活性処理室および接合室から構成され、表面活性化処理室に表面活性化処理装置64が、接合室に接合装置57が配設されている。
【0123】
そして、表面活性化処理室の入口には気密シャッター62が設けられ、この気密シャッター62を閉じることで表面活性化処理室を気密化することができる。また、チャンバー61内の表面活性化処理室と接合室との間には、表面活性化処理装置64から接合装置57へと両基板901、902を搬送可能に搬送機構63が配設されている。なお、搬送装置63については、周知の種々の搬送装置63を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。また、以下の実施形態で説明する搬送装置についても、その構成および動作の説明は省略する。
【0124】
本実施形態では、蓋基板902の表面活性化処理が行われる間は、気密シャッター62を閉じて表面活性化処理室をAr雰囲気にし、Arプラズマによって蓋基板902の表面活性化処理が行われる。
【0125】
その後、気密シャッター62が開放され、搬送機構63により蓋基板902が接合室に搬送されて上部電極806に保持される。また、デバイス基板901は接合室の下部電極809に予め保持されている。そして、接合室の加圧手段801によりデバイス基板901と蓋基板902が加圧されて接合が行われる。
【0126】
なお、表面活性化処理中は、接合室は真空、大気またはその他の封入ガス雰囲気等、どのような雰囲気でもよい。そして、蓋基板902の表面活性化処理後、蓋基板902は接合室に搬送されて上部電極806に保持され、接合室を所望の雰囲気として接合動作が行われる。
【0127】
例えば、両基板901、902の接合面間と金属枠体904で囲まれた空間にArガスを封入する場合は、蓋基板902をArプラズマにより表面活性化処理する際に、デバイス基板901を下部電極809に保持した接合室をAr雰囲気としておけば、表面活性化処理後、気密シャッター63を開放して蓋基板902を搬送機構63によって接合室へ搬送して上部電極806に保持した後すぐに接合を行うことができる。
【0128】
このような構成とすることにより、第6実施形態の装置構成と比較して、表面活性化処理を行ったときに、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物がデバイス基板901に付着するのを防止することができる。また同一チャンバー内に表面活性化処理室と接合室を備えているので、表面活性化処理後短時間で金属枠体904および接合部905の接合を行うことができ、両基板901、902の接合面間と金属枠体904で囲まれた空間に容易に所定の雰囲気を封入することができる。
【0129】
また、接合前に接合室に所定の気体を導入して超高気圧とすることで、大気圧によって両基板901、902を加圧して接合処理を行うこともできる。また、チャンバー61内を任意の気圧で所定のガス雰囲気とすることができ、あるいは、チャンバー61内を真空雰囲気とすることができるように構成されている。以上のような構成とすれば、上記した第4ないし第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0130】
(第8実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第8実施形態について、図14および15を参照して説明する。なお、図14は、本実施形態のデバイス基板および蓋基板の一例を示す概略構成図、図15は接合装置の概略構成図を示す。
【0131】
本接合動作例が上記第7実施形態と大きく相違する点は、デバイス基板901に形成された複数の金属枠体904を取り囲んで断面尖形形状を有する金属外枠体906が形成され、金属外枠体906が接合部905に仮接合された後、金属枠体904が接合部905に本接合される点である。以下、第7実施形態との相違点を中心に第8実施形態について説明する。
【0132】
図14は本実施形態の基板の一例を示す図であり、同図に示すように、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、複数の金属枠体904が形成されている。同図では、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、所定領域をそれぞれ囲んだ断面尖形形状を有する金属枠体904がそれぞれ金めっきにより複数突出形成されている。また、金属枠体904に囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部903が形成されている。
【0133】
また、蓋基板902の基板本体902aの表面には金薄膜905がスパッタリングまたは金属めっきにより形成されている。なお、金薄膜905の代わりに、金属枠体904に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0134】
なお、図14に示すように形成されたデバイス基板901と蓋基板902とを接合した後、接合されたデバイス基板901および蓋基板902を、金属枠体904で囲まれた領域ごとにダイシングすることで、複数のデバイスを効率よく形成することができる。
【0135】
また、デバイス基板901および蓋基板902は、樹脂により構成されたプリント基板、配線層が積み上げられたビルドアップ基板またはSi、SiO2、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等、種々の材料で構成することができる。
【0136】
次に、図15に示した接合装置を参照して、本実施形態の接合動作について説明する。本実施形態では、同図に示すようにチャンバー71内に表面活性化・仮接合装置72が配設された表面活性化・仮接合室が構成されている。
【0137】
なお、この表面活性化・仮接合室は、第6実施形態の図10に示した表面活性化・接合装置50を簡略化して示した図であり、装置の動作は第6実施形態と同様である。本実施形態では、蓋基板902の表面活性化処理を行った後、続けて本装置内で金属外枠体906の仮接合を行い、その後、搬送装置73により、仮接合された基板901、902を大気中の本接合装置75へと搬出し、本接合動作を行う。
【0138】
したがって、この表面活性化・仮接合装置72において、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が金属外枠体906に再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板901、902の金属外枠体906と接合部905を接合することができ、両基板901、902の接合面間に金属外枠体906によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理を行うことができる。
【0139】
なお、仮接合処理を真空中で行うことにより、金属外枠体906によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、金属外枠体906によって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0140】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はない。そのため、不活性なガス以外のガスも採用することができる。
【0141】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部905の付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0142】
なお、金属外枠体906を仮接合する仮接合処理時に、金属枠体904も部分的に接触して接合することがある。このような場合であっても、所定の雰囲気中で金属枠体904の接合が行われることになるので、接合処理後、後述する本接合処理を行うことで、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入することができる。
【0143】
次に、図15を参照して本接合装置75について説明する。同図に示すように、本接合装置75は接合が行われたデバイス基板901および蓋基板902を保持するステージ221と、当該ステージ221に保持された両基板901、902を基板全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段220とを備えている。したがって、高圧プレス手段220により仮接合された両基板901、902の基板全面にわたって一括加圧することで、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができる。
【0144】
なお、高圧プレス手段220に代えて、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段により、仮接合された両基板901、902の加圧位置をずらしながら加圧を行うことによって、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができるとしてもよい。
【0145】
また、高圧プレス手段220およびステージ221の代わりに、接合が行われたデバイス基板901および蓋基板902の上下に加圧ローラを配設し、上下の加圧ローラの間に仮接合がされた両基板901、902を通過させて加圧することにより、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができるとしてもよい。
【0146】
このように、仮接合処理によって両基板901、902の接合面間と金属外枠体906によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気が封入された状態で、両基板901、902を全面にわたって加圧することで当該空間内に形成されているすべての金属枠体904と接合部905を接合し、本接合を確実に行うことができる。したがって、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入できる。
【0147】
すなわち、本接合処理において、両基板901、902を全面にわたって余すところなく加圧することができるので、金属外枠体906の内側に形成されているデバイス基板901の金属枠体904と蓋基板902の接合部905を確実に接合して本接合を行うことができる。
【0148】
また、本接合処理を大気中で行うことにより、本接合を行う際に真空チャンバーが不要となり、かつ、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0149】
なお、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、接合処理が行われる前に、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が接合部905および金属枠体904に付着しても、加圧することで該付着した付着物層を押し破ってデバイス基板901の金属枠体904および蓋基板902の接合部905を本接合することができ、接合面と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気をに封入する本接合を行うことができる。
【0150】
以上のように、本実施形態によれば、デバイス基板901に形成された金属外枠体906および蓋基板902の接合部905を加圧して接合することで、両基板901、902の接合面間と金属外枠体906によって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で加圧することにより、デバイス基板901の金属枠体904および蓋基板902の接合部905の本接合を確実に行うことができるので、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0151】
また、本実施形態では、接合に先立ち、Arプラズマであるエネルギー波で蓋基板902の接合部905を表面活性化処理することで、蓋基板902の接合部905に形成された酸化膜等を除去することができるため、接合を確実に行うことができる。
【0152】
また、本実施形態では、デバイス基板901に形成された金属枠体904および金属外枠体906と、蓋基板902に形成された接合部905とを、加圧することで密着させることができ、それぞれ確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0153】
また、デバイス基板901の金属枠体904に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、デバイス基板901の金属枠体904および金属外枠体906と、蓋基板902の接合部905との仮接合および本接合を行った後、接合後のデバイス基板901および蓋基板902を、金属枠体904によって囲まれた領域ごとにダイシングすることができ、デバイスの本体部や電極が、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれた空間に封止され、外部の雰囲気と遮断された複数のデバイスを提供できる。
【0154】
また、本実施形態では、デバイス基板901に金属枠体904および金属外枠体906が、蓋基板902に接合部905が形成されているが、蓋基板902の接合部905は金属枠体904および金属外枠体906に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0155】
なお、本実施形態では、接合する基板901、902の種類、基板上に形成されたデバイスの種類に応じて、種々の接合装置から最適なものを組み合わせて変更することができる。以下、接合装置の変形例について図16を参照して説明する。図16は接合装置の変形例を示す図である。
【0156】
接合装置90について説明する。図16(a)に示すように、接合装置90は、表面活性化装置が配設された表面活性化室と、仮接合装置が配設された仮接合室と、本接合装置が配設された本接合室とを有するチャンバー91を備えている。また、チャンバー91内には基板901、902を各室の間で搬送する搬送機構92が配設されている。また、各室の入口にはそれぞれの空間を気密化できる気密シャッター(図示省略)が配設されている。このように、各処理はすべて同一のチャンバー91内で実行される。このような構成としても上記した第1ないし第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0157】
また、次に接合装置95について説明する。図16(b)に示すように、接合装置95は、表面活性化装置と、接合装置と、本接合装置とを備えている。また、各装置の間で基板901、902を搬送可能に搬送機構96が大気中に配設されている。このような構成としても上記した第1ないし第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0158】
(その他)
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0159】
例えば、第6実施形態では、同一の装置で被接合物の表面活性化処理から被接合物の接合までを一括した処理として実行していたが、エネルギー波による接合部905の表面活性化処理と、被接合物の接合を行う接合処理とを、それぞれ別の装置で行っても構わない。
【0160】
このような構成とすれば、蓋基板902の接合部905が表面活性化処理された後、デバイス基板901と蓋基板902のアライメントを大気中で行ったり、蓋基板902を大気中を経て接合装置に搬送した場合に、接合部905に酸化膜や有機物等からなる付着物の層が再形成されやすい。しかしながら、上記したように、再形成された付着物層を加圧して押し破ることで金属枠体904および接合部905を接合することができる。
【0161】
また、被接合物の保持手段としては真空チャック方式、静電チャック方式等どのような吸着保持方式でもよい。なお、表面活性化処理を行うチャンバー内部は表面活性化処理を行う過程で真空とするため、チャンバー内部の被接合物の保持手段は静電チャック方式が望ましいが、機械的に固定する方式でもよい。また、大気中でまず真空吸着保持させておいて密着させた後、機械的に固定する方法が密着性が良く好ましい。
【0162】
また、例えば、第1実施形態における接合装置では、ヘッド側に平行移動および回転移動の移動軸と昇降軸が、ステージ側に平行移動と回転移動の移動軸が配設されるとしたが、平行移動および回転移動の移動軸、昇降軸はヘッド側、ステージ側にどのように組み合わせられてもよく、また、重複してもよい。また、ヘッドおよびステージを上下に配置しなくとも左右配置や斜め等に配置してもよい。
【0163】
また、上記実施形態において、ヘッド部26の先端ツール9および/またはステージ10の表面に弾性材を配し、チップ20および基板22の接合時に弾性材を介して両被接合物を加圧しても構わない。このような構成とすれば、被接合物どうしの平行度をならわせることができる。また、薄い被接合物であれば平坦度もならわせることができる。
【0164】
また、上記実施形態において、ステージ10および/またはヘッド部26に球面軸受けを配設し、被接合物の接合時または接合前に被接合物同士を接触加圧して、少なくとも一方の被接合物に他方の傾きを合わせることができる構造にしてもよい。このような構成とすれば、平行度を倣わせて接合することができる。
【0165】
また, チップ20が発光素子である場合には, 位置認識部29に位置認識用のアライメントマークを認識する上下マーク認識手段14の他に、発光点認識手段33を備えるとしてもよい。この場合、上下マーク認識手段14によりアライメントマークを認識して、チップ20と基板22の位置を粗調整し、その後電気的に発光素子を発光させた状態で、発光点認識手段33により発光点を認識し、チップ20と基板22の位置を微調整することにより、サブミクロンの精度で位置調整を行うことができる。
【0166】
また、被接合物の位置認識手段は、上下マーク認識手段14、発光点認識手段33以外のいかなる手段であってもよい。例えばマークが反対面にある場合には、IR(赤外)光による被接合物認識手段を用い、被接合物を透過させて金属からなるアライメントマークを認識して、チップ20と基板22の位置を認識し、位置調整を行ってもよい。
【0167】
また、例えば第1実施形態において、一定時間ヘッド部26のヘッド高さを一定に保持して被接合物の加圧を行ってもよい。この場合、被接合物の接合界面では、荷重に耐え切れなくなり結晶方位の回転や粒子の移動が起こり、新生面が現れて接合し、粒子の移動によって残留応力が除去される。一方、被接合物を瞬間的に加圧した状態では、被接合物の表面は弾性変形しているため、界面の結晶が回転していない場合や、弾性変形が残留応力として残り、接合力に対して引き剥がす方向に働くため、接合強度が落ちることもある。したがって、被接合物の加圧時に、一定時間ヘッド部26のヘッド高さを一定に保持することにより、接合強度が落ちない良好な接合を行うことができる。この停止時間は材料や接合状態によるが、1秒以上から効果があり、2分以上では効果は変わらないものである。
【0168】
また、上記停止時に180℃以下で加熱を行うと、効率良く結晶方位の回転や粒子の移動が行われて接合が進み、残留応力が除去されることにより、接合強度を増加することができる。なお、加熱温度としては180℃以下の低温加熱で十分である。したがって、金属突起となる電極部を多数持つ半導体チップのフリップチップ接合においては、半導体への熱影響から180℃以下好ましくは室温での低温で接合する要望が高く、微細ピッチ電極等の数μm以内の高精度な実装が望まれているため、特に有効である。
【0169】
また、上記した接合時の加熱に代えて超音波振動を与えることで、熱膨張影響を受けずより容易に固相で金属接合することもできる。この場合、超音波発振器とホーンをヘッド部26のチップ保持ツール8の代わりに備える構成としてもよい。超音波振動を与えることにより、室温から180℃以下程度の低温で、加圧力を小さく抑えて接合することが可能であるため、加圧や高温加熱により被接合物に与えるダメージを抑えることができる。また、振幅を小さく抑え、加圧してから振動を与え、接合が進むにつれ接合面積に比例して加圧力を制御することにより位置ずれなく実装することができる。
【0170】
例えば、ホーンとホーン保持部と振動子からなる超音波振動ヘッドを備え、前記大気中での接合時に2μm以下の振幅からなる超音波振動を被接合物に印加し、150MPa以下の荷重、180℃以下の加熱で固相で金属接合する方法および接合装置であってもよい。大気中での接合時に超音波振動を印加するとより接合しやすくなる。既に表面活性化されているので超音波エネルギーは小さくて良く、ダメージや位置ずれを押さえられる2μm以下の振幅で十分であり、1μm以下であればより好ましい。また、金からなる金属バンプ20aを接合部22aに接合する場合、常温では300MPa程度の高加圧力で押しつぶさないと接合できないが、超音波を印加することで接合荷重は半分以下の150MPa以下に下げることができる。
【0171】
また、超音波振動を利用して大面積を接合する場合は、横振動タイプの超音波ヘッドでは横振動させるには接合面積が大きくては不可能であるが、縦振動タイプの超音波ヘッドであれば、大面積な面接合も可能となる。また、超音波振動と呼ぶが振動周波数は特に超音波の領域でなくとも良い。特に縦振動タイプにおいては、低周波でも十分効力を発揮する。
【0172】
また、一方の被接合物に金属接合部が複数形成されている場合には、被接合物の接合前に金属接合部を平面度の出た基準台に押し付けることで高さや表面粗さを均一に修正するレベリングを行うとしてもよい。レベリングを行うことにより、被接合物への接合加重を低減することができる。一例として、高さばらつき2μm、表面粗さ200nmである金属バンプ20aを有するチップ20にレベリングを行った場合、レベリングにより高さばらつきおよび表面粗さは50nm以下となり、加圧力はレベリング前には300MPaであったが、レベリング後は150MPaへと低減された。
【0173】
また、チップ20に形成された金属バンプ20aの形状は、ピラミッド型、円錐型等断面尖形形状を有している形状であればどのような形状であってもよい。
【0174】
また、被接合物は半導体以外のデバイスでもよく、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス等、どのような材料であってもよく、ウエハー等でもよい。また、一方の被接合物の金属接合部および他方の被接合物の接合部は、Au、Al、Cu、錫等が適するが、その他の金属や金属以外のものでも表面活性化接合できるものであればよい。また、他方の被接合物は、全面が接合面であってもよいし、一方の被接合物の金属接合部の対応する位置に、金属接合部を突出形成してもよい。
【0175】
また、上記した実施形態では、Arプラズマによるエネルギー波で他方の被接合物の接合部の表面活性化処理を行ったが、窒素、酸素など他のガスで行ってもよく、例えばArと酸素を混合したものでも構わない。またプラズマ等のエネルギー波でなくても、イオンビームや原子ビーム等で表面活性化処理を行うとしてもよい。
【0176】
また、他方の被接合物の接合部を表面活性化処理する方法として、交番電源が接続された電極面に保持された基板22に表面活性化処理を行うのが効率上好ましいが、均一性やダメージ軽減から、前記電極を基板22の保持位置以外の場所に設置して、表面活性化処理を行うとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明にかかる接合装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】接合過程を表す図である。
【図3】接合時の接合界面での結晶方向の回転模式図である。
【図4】バンプ高さと接合強度との関係を示す図である。
【図5】チップの一部と金属バンプを拡大して示した斜視図である。
【図6】デバイス基板および蓋基板の一例を示す図である。
【図7】図6のA−A線矢視断面図である。
【図8】金属枠体の高さと接合強度との関係を示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図10】本発明の第6実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図11】本発明の第6実施形態における表面活性化処理および接合処理の手順を示す図である。
【図12】図10の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【図13】本発明の第7実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図14】デバイス基板および蓋基板の他の例を示す図である。
【図15】本発明の第8実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図16】本発明の接合装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0178】
20…チップ(一方の被接合物)
20a…金属バンプ(金属接合部)
22…基板(他方の被接合物)
22a…接合部
25…上下駆動機構(加圧制御手段)
26…ヘッド部(加圧制御手段)
31…制御装置(加圧制御手段)
40…洗浄部(エネルギー波照射手段)
53、64…表面活性化処理装置(エネルギー波照射手段)
220…高圧プレス手段(加圧制御手段)
801…Z軸(上下駆動機構、加圧制御手段)
901…デバイス基板(一方の被接合物)
901a…デバイス基板本体
902…蓋基板(他方の被接合物)
902a…蓋基板本体
903…デバイス本体部
904…金属枠体(金属接合部)
905…接合部
906…金属外枠体
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属接合部を有する複数の被接合物を常温接合する接合技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の被接合物の接合方法として、被接合物の接合表面に原子ビーム、イオンビームまたはプラズマであるエネルギー波を照射することにより、接合表面に形成された酸化膜や有機物の付着層を除去して活性化し、接合表面の金属等の原子が引き合う現象を利用して被接合物の接合を行う方法がある。
【0003】
このような接合方法の一例として、特許文献1では、金属からなる接合部を有する両被接合物の表面に、プラズマによるエネルギー波を照射して表面活性化処理を行った後、低真空中または大気中で両被接合物の接合部どうしを衝合させ、加圧を行っている。それによって、表面活性化処理後に両被接合物表面に再付着した酸化膜や有機物付着層が押し破られて新生面が露出する。そして、金属原子のダングリングボンドが接合表面に生成して、ダングリングボンド同士が接合されて両被接合物の接合が行われるという方法である。
【0004】
【特許文献1】特許第3790995号公報(段落0008〜0010、0165、図19)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法における接合装置では、両被接合物をプラズマによるエネルギー波によって表面活性化処理した後接合を行うため、エネルギー波の照射により被接合物にイオン等による電気的なダメージを与えるおそれがある。また、被接合物の硬度によっては、エネルギー波により被接合物表面が大きく削られ、機械的ダメージを与えるおそれもある。そのため、特許文献1の方法における接合装置は、センシング素子、例えば受光素子等エネルギー波によるダメージを受けるおそれがある被接合物を基板に接合するような場合には適しておらず、これらの被接合物に対してもダメージを与えることなく接合を行うことができる接合装置の実現が望まれる。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、被接合物にダメージを与えることなく被接合物を接合することができる接合方法およびその方法により作成されたデバイス並びにその接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかる接合方法は、一方の被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の被接合物の接合面に金からなる接合部を形成して、前記両被接合物どうしを、前記他方の被接合物の前記接合部をエネルギー波で表面活性化処理した後、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧して前記金属接合部を押しつぶして接合することを特徴としている(請求項1)。
【0008】
また、本発明にかかる接合方法は、前記エネルギー波がプラズマであることを特徴としている(請求項2)。
【0009】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が金属バンプであることを特徴としている(請求項3)。
【0010】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が、当該被接合物の所定領域を囲んで形成した金属枠体であることを特徴としている(請求項4)。
【0011】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を真空中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間を真空封止することを特徴としている(請求項5)。
【0012】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を封入ガス中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間に前記封入ガスを封入することを特徴としている(請求項6)。
【0013】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物の前記金属接合部が金めっきで形成されていることを特徴としている(請求項7)。
【0014】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴としている(請求項8)。
【0015】
また、本発明にかかる接合方法は、前記一方の被接合物がセンシング素子であることを特徴としている(請求項9)。
【0016】
また、請求項1ないし9に記載の接合方法により形成されるデバイスは、半導体デバイス、光デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴としている(請求項10)。
【0017】
また、上記課題を解決するために、本発明にかかる接合装置は、ヘッドおよびステージに保持した被接合物どうしを接合する接合装置において、いずれか一方の前記被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の前記被接合物の接合面に金からなる接合部を形成しておいた前記両被接合物どうしを、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、つぶれて20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧する加圧制御手段を備え、前記加圧制御手段は、前記他方の被接合物の前記接合部がエネルギー波で表面活性化処理された前記両被接合物どうしを加圧して前記一方の被接合物の前記金属接合部を押しつぶして前記両被接合物どうしを接続することを特徴としている(請求項11)。
【0018】
また、本発明にかかる接合装置は、前記加圧制御手段は、前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴としている(請求項12)。
【0019】
また、本発明にかかる接合装置は、前記表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段をさらに備えたことを特徴としている(請求項13)。
【0020】
また、本発明にかかる接合装置は、前記エネルギー波照射手段はプラズマを発生させることを特徴としている(請求項14)。
【発明の効果】
【0021】
本願発明者は、一方の被接合物の接合面に形成された金属接合部は断面尖形形状を有し、加圧によって押し潰しやすい形状を成しており、このような金属接合部の高さが20〜90%となる範囲で金属接合部を押し潰せば、酸化膜や有機物の付着層を確実に除去しながら新生面を出すことができ、かつ、他の金属接合部と接触することもなく電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。したがって、請求項1、11に記載の発明によれば、前記断面尖形形状を有する金属接合部を一方の被接合物の接合面から金属接合部の先端までの高さが20〜90%となる範囲で押し潰すことにより、酸化膜や有機物の付着層を押し破ることができ、その結果断面尖形形状を有する金属接合部に関しては、接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができて工程の簡略化を図ることができる。
【0022】
また、他方の被接合物の接合面に形成された接合部は、大気中で酸化されない金によって形成されているため、表面活性化後には接合部の表面に酸化膜や有機物が再付着して層が形成されることはほとんどなく、良好な接合を行うことができる。また、有機物などが再付着して層が形成されたとしても、接合部が表面活性化処理された後一定時間内であれば、その再付着層の厚さは薄いので、断面尖形形状を有する金属接合部と金からなる接合部を衝合して加圧することによって、断面尖形形状を有する金属接合部と金からなる接合部の界面のすべりにより再付着層が効率よく削り取られ、信頼性の高い接合が行われる。
【0023】
請求項2、14に記載の発明によれば、金からなる接合部の表面活性化処理を行うためのエネルギー波がプラズマであるため、真空度が10−2Torr程度の低真空の空間で接合部の表面活性化処理を行うことができる。そのため、表面活性化処理を行うための装置構成は、簡易な設備で済み、装置のコンパクト化、コストダウン化が可能となる。
【0024】
請求項3の発明によれば、一方の被接合物の断面尖形形状を有する金属接合部として金属バンプが形成されているので、金属バンプを加圧によって押し潰して他方の被接合物の接合部と接合することにより、微細電極を有する基板や高精度な実装が要求される接合等において、一方の被接合物と他方の被接合物を高精細に接合することができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、一方の被接合物の接合面には接合部として断面尖形形状を有する金属枠体が形成されているので、金属枠体を加圧によって押し潰して他方の被接合物の接合部と接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間を所定の雰囲気で封止することができる。したがって、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間に表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス等のデバイスの本体部が配設されているときには、デバイス等を外部刺激から保護することができる。
【0026】
請求項5に記載の発明によれば、両被接合物の接合部を真空中で接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間を、容易に真空雰囲気に封止することができる。また、他方の被接合物の接合部の表面活性化処理と両被接合物の接合部の接合を同一チャンバー内で行うとすれば、表面活性化処理後にチャンバーから反応ガスを排出して真空雰囲気としてそのまま接合することができるので、チャンバーの開閉や再度の真空引き等の手順を省略することができ、効率よく接合を行うことができる。
【0027】
請求項6に記載の発明によれば、両被接合物の接合部を封入ガス中で接合することにより、両被接合物の接合面と金属枠体で囲まれる空間に、容易に封入ガスを封入することができる。また、例えばエネルギー波にArプラズマを使用し、封入ガスもArを使用する場合には、Arプラズマによるエネルギー波によって他方の被接合物の接合部の表面活性化処理を行った後、表面活性化処理で利用したAr雰囲気をそのまま接合の際にも使用できるため、効率よく接合を行うことができる。
【0028】
請求項7に記載の発明によれば、金属接合部が金めっきによって形成されるため、結晶性が良く、金属接合部と金からなる接合面との金属同士が結合しやすい。さらに、接合部と同じ材料である金を金属接合部の材料として使用するため、大気中で酸化膜の形成がされず、薄く有機物などの再付着層が形成されたとしても、硬度が低いので加圧によって容易に押し潰すことができ、新生面が現れる。したがって、接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。
【0029】
本願発明者は、一方の被接合物に形成された一の前記金属接合部あたりの加圧力が50〜700MPaの範囲内であれば、金属の種類や加圧の速さ等の条件に関わらず、金属接合部の高さは20〜90%の範囲の高さとなることを実験的に見出した。したがって、請求項8、12に記載の発明によれば、前記一方の被接合物に形成された一の前記金属接合部あたりの加圧力が50〜700MPaとなるように加圧を行うことにより、接合強度が大きく、かつ、被接合物にダメージ等がない良好な接合を行うことができる。また、加圧力においても、例えば断面尖形形状を有していない金属バンプ同士を接合する場合に比べ低加圧化が可能となる。
【0030】
請求項9に記載の発明によれば、プラズマによるダメージ等を受けやすいセンシング素子、例えば受光素子を一方の被接合物とした場合でも、断面尖形形状を有する金属接合部を形成した一方の被接合物である受光素子にはエネルギー波による表面活性化処理が行われないので、受光素子にダメージ等を与えることなく、受光素子を他方の被接合物の接合部に接合することができる。
【0031】
請求項10に記載の発明によれば、例えば一方の被接合物がプラズマ等によるエネルギー照射によりダメージを受けやすいセンシング素子であっても被接合物にダメージを受けることなく形成され、また、低温で接合することにより熱による損傷を防止され、かつ、アライメント精度が高いデバイスを提供することができる。
【0032】
請求項13に記載の発明によれば、接合装置に表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段を備えるため、他方の被接合物の接合部の表面活性化処理と、断面尖形形状を有する金属接合部が形成された一方の被接合物および他方の被接合物の接合動作を、連続して1つの装置で行うことができる。したがって、前記接合部の表面活性化処理を行った後接合を行うまでの時間を短縮することができ、表面活性化処理後、有機物等が前記接合部に再付着するのを防止することが可能になる。また、一連の接合動作を1つの装置で行うことができるので簡便であり、装置をコンパクト化することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
(第1実施形態)
以下に本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は本発明にかかる接合装置の一実施形態の概略構成図、図2は接合過程を表す図、図3は接合時の接合界面での結晶方向の回転模式図、図4はバンプ高さと接合強度との関係を示す図、図5はチップの一部と金属バンプを拡大して示した斜視図である。なお、図1に示す本発明にかかる装置構成では、一方の被接合物であるチップ20の接合面に形成された断面尖形形状を有する金属接合部としての金属バンプ20aと他方の被接合物である基板22の接合面に形成された金からなる接合部22aを大気中で接合するための装置を例として挙げる。
【0034】
本実施形態における接合装置は、図1に示すように、上下駆動機構25とヘッド部26を合わせた接合機構27とステージ10とステージテーブル12からなる実装機構28、位置認識部29、搬送部30、制御装置31、洗浄部40を備えている。また、接合機構27は、上下駆動機構25と、ヘッド部26とを備え、上下駆動機構25は上下駆動モータ1とボルト・ナット機構2により、上下ガイド3でガイドされながらヘッド保持部6を上下動できるように構成されている。そして、接合機構27はフレーム34に結合されて、フレーム34はヘッド部26の加圧中心の周辺を囲むように配設された4本の支柱13により架台35と連結されている。なお、支柱13およびフレーム34の一部は図示省略している。
【0035】
ヘッド保持部6は、ヘッド逃がしガイド5で上下方向にガイドされ、自重をキャンセルするための自重カウンター4に牽引された状態でボルト・ナット機構2に連結されている。そして、このヘッド保持部6にヘッド部26が結合されている。
【0036】
また、ヘッド保持部6には加圧力検出手段32が配設されており、先端ツール9とステージ10との間に挟持されたチップ20、基板22等の被接合物への加圧力が検出できるように構成されている。したがって、加圧力検出手段32により検出された被接合物に対する加圧力に基づいて、制御装置31により上下駆動機構25を制御して、被接合物への加圧力を制御することができる。
【0037】
また、ヘッド部26は、チップ20を吸着保持するチップ保持ツール8と先端ツール9、平行移動、回転移動の移動軸を持った位置補正を行うヘッド側アライメントテーブル7、それらを支えるヘッド保持部6により構成されている。なお、ヘッド部26の高さはヘッド部高さ検出手段24によって検出することができる。
【0038】
実装機構28は、基板22を保持するステージ10と、チップ20に対する基板22の位置を調整するために平行・回転移動自在な移動軸を有するステージテーブル12とを備えている。また、ステージ10は、基板22を保持するための保持機構(図示せず)を備えている。ここで、チップ保持ツール8およびステージ10の保持機構として、真空吸着あるいは静電吸着を利用したものを用いるとよい。また、ステージ10上に基板22を置くだけとしてもよい。また、チップ保持ツール8の内部には加熱用ヒータ(図示せず)が埋設されており、ステージ10内部にはステージヒータ11が内蔵されている。
【0039】
位置認識部29は、相対されたチップ20と基板22の間に挿入され、上下のチップと基板各々の位置認識用のアライメントマークを認識する上下マーク認識手段14、上下マーク認識手段14を水平および/または上下移動させる認識手段移動テーブル15から構成される。
【0040】
また、搬送部30はチップ20を搬送するチップ供給装置36、チップトレイ38および基板22を搬送する基板搬送装置37、基板トレイ39により構成される。チップトレイ38はチップトレイカセット41から供給収納され、基板22は、基板カセット42から供給収納される。
【0041】
制御装置31は、制御に必要な操作を行うための操作部を備えており、制御装置31によって装置全般の制御が行われる。特に加圧力制御においては、加圧力検出手段32からの信号により上下駆動モータ1のトルクを制御し、被接合物への加圧力の制御が行われる。
【0042】
洗浄部40では、基板22の接合部22aの表面にプラズマ等のエネルギー波によって、接合部22a表面の酸化膜や有機物からなる付着物の層を除去する表面活性化処理が行われる。なお、プラズマ等のエネルギー波以外の、イオンビーム、原子ビーム等により表面活性化処理を行うとしてもよい。
【0043】
洗浄部40は、真空チャンバー43、被接合物保持手段44、エネルギー波照射手段45、吸気管および排気管(図示せず)を備えている。被接合物保持手段44にはヒーター(図示せず)が内蔵され、交番電源が接続された電極面に、機械的方法により基板22が固定される。
【0044】
吸入ガスとしては、例えばArガスが用いられるが、窒素、酸素等を用いてもよく、Arと酸素等の混合気体でもよい。例えばArガスを使用する場合、10−2Torr程度の一定の真空度でプラズマが発生される。
【0045】
発生されたプラズマは、被接合物保持手段44に保持された基板22の接合部22aの表面に向かって衝突し、表面の酸化膜や有機物等による付着物層が除去され、新生面が現れて表面が活性化される。
【0046】
なお、基板22の接合部22aを表面活性化処理する方法として、交番電源が接続された電極面に保持された基板22に表面活性化処理を行うのが効率上好ましいが、均一性やダメージ軽減から、前記電極を基板22の保持位置以外の場所に設置して、表面活性化処理を行っても構わない。
【0047】
なお、洗浄と接合を連続して行うために、洗浄部40は搬送部30により接合装置と連結されているが、洗浄部40を備えない装置構成としてもよい。その場合は、予め別の洗浄装置等により、基板22の表面活性化処理を行っておくことが必要である。
【0048】
次に、一連の接合動作について図2を参照して説明する。本実施形態では、一方の被接合物である半導体からなるチップ20を他方の被接合物である基板22に接合する接合動作を例として挙げる。
【0049】
チップ20の接合面には、電極であって尖頭を有するすなわち断面尖形形状の銅からなる金属バンプ20aが形成され、基板22の接合面には、電極であり金からなる接合部22aが、チップ側の金属バンプ20aに対向した位置に配設されている。金属バンプ20aの形状の一例を図5に示す。同図(a)に示すように、金属バンプ20aはピラミッド型をしており、チップ20と金属バンプ20aの接合面では、金属バンプ20aは一辺が10μmの正方形をしており、前記接合面から金属バンプ20aの先端までの長さは10μmである。なお、金属バンプ20bの形状は、ピラミッド型に限らず、その他の角錐や円錐等、それ以外の形状であってもよい。例えば、同図(b)に示すように、断面尖形形状を有していれば、断面形状が五角形等の柱状であってもよい。また、寸法に関しても、上記した例に限らずどのようなものであってもよい。また、金であれば好ましい。
【0050】
さらに、金属バンプ20aの材質は金に限らずその他の材料によって形成されたものであってもよいし、金属からなる母材の表面に金膜等を形成して金属バンプ20aを構成してもよい。例えば、潰れ易くするために、硬度が低い錫または金と錫の合金層を母材とし、表面に金膜を形成した金属バンプ20aを形成してもよい。なお、前記のように金属バンプ20aを母材および金膜により形成する場合、金属バンプ20aが加圧により押し潰された後も金属バンプ20aの表面に金膜が残っていると、金属バンプ20aと基板22の接合部22aの金原子同士が引き合うため接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。したがって、加圧後も金属バンプ20aの表面に金膜が残るように金膜の厚さおよび加圧力を調整するとよい。
【0051】
基板22は、基板搬送装置37によって基板トレイ39から洗浄器40へ搬入される。そして、図2(a)に示すようにプラズマ等のエネルギー波が接合部22aに照射され、接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物からなる付着物の層を除去する表面活性化処理が行われる。そして、洗浄部40により表面活性化処理が終了すると、基板22は洗浄部40から取り出され、基板搬送装置37により実装機構28のステージ10へと搬送され、ステージ10に吸着保持される。
【0052】
一方、チップ20はチップ供給装置36によりチップトレイ38からチップ保持ツール8に搬送され、図2(b)に示すように基板22と接合面を対向してチップ保持ツール8に吸着保持される。
【0053】
チップ20と基板22が接合面を対向してそれぞれ吸着保持されると、上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15によってチップ20と基板22の間に挿入され、対向するチップ20と基板22各々の位置合わせ用アライメントマークが上下マーク認識手段14により検出される。この後、チップ20を基準として、ステージテーブル12を平行・回転移動することで基板22の位置を移動させて、チップ20および基板22の位置の調整が行われる。チップ20と基板22の位置調整はステージテーブル12およびヘッド側アライメントテーブル7によって行ってもよく、またはヘッド側アライメントテーブル7のみにて位置調整してもよい。また、どちらか一方のテーブルのみの構成でもよい。アライメント方法は2視やカメラにとらわれず、個別に配置した認識手段で認識してもよい。
【0054】
次に、チップ20および基板22の接合位置が整合された状態で、上下マーク認識手段14が認識手段移動テーブル15により待避される。次いで、ヘッド部26が上下駆動機構25により下降され、チップ20の金属バンプ20aと基板22の接合部22aが接地される。ヘッド部26の高さ方向の位置は、ヘッド高さ検出手段24により検出されている。そして、チップ20と基板22の接地タイミングは加圧力検出手段32により検出され、上下駆動モータ1は位置制御からトルク制御へと切り替えられ、図2(c)に示すようにチップ20と基板22へ加圧力が加えられ、接合が行われる。
【0055】
なお、チップ保持ツール8の内部には加熱用ヒータ(図示せず)が埋設されており、ステージ10内部にはステージヒータ11が内蔵されているため、加圧中にチップ20および基板22を加熱しながら接合することもできる。加熱することにより、効率良く結晶方位の回転や粒子の移動が行われ、接合が進み、残留応力が除去されることにより、接合強度を増大することができる。なお、トルク制御に切り替えられている加圧中においても、ヘッド高さはヘッド高さ検出手段24によりモニタされており、高さ方向の位置も調整可能である。
【0056】
一般に、大気中ではチップ20や基板22等の被接合物の表面に酸化膜や有機物等の付着物層が形成されるので、180℃以下の低温で固相のまま被接合物同士を接触させても、そのままでは接合されない。そこで、真空中で金属バンプ20aおよび接合部22aにプラズマ等のエネルギー波等を照射し新生面を露出させた状態で、引き続き真空中で金属バンプ20aおよび接合部22aの接合が行われる。
【0057】
しかし、本実施形態では、チップ20および基板22を加圧することによって、図3(a)および(b)に示すように、金属バンプ20aの尖頭が潰されることにより、並んだ結晶の移動や結晶方向の回転が起こり、新生面が露出することとなる。つまり、チップ20の金属バンプ20aは加圧により尖頭が押し潰されて広がり、金属バンプ20aと接合部22aとの間に滑りが生じるため、金属バンプ20aの表面に形成された酸化膜や付着した有機物等の層は押し潰されて新生面が露出することとなる。
【0058】
また、接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物等の層は、上記のとおり接合前に洗浄部40において接合部22aの表面活性化処理が行われ除去されているので、接合部22aの表面には新生面が露出している。また、接合部22aは金からなるため、酸化膜や有機物等の再付着層等は形成されにくく、形成されたとしても表面活性化処理後一定時間内であればその厚さは薄いので、金属バンプ20aを接合部22aに接地し加圧することによって押し破られる。したがって、再び接合部22aの表面でも新生面が露出し、金属バンプ20aと接合部22aの金属原子が原子間力により引き合い、大気中でも図2(d)に示すように接合が行われることとなる。
【0059】
また、従来技術では、チップ側の接合部は断面尖形形状を有しておらず変形しにくい形状であったため、チップ側の接合部を基板側の接合部に加圧したときに、チップ側の接合部が押し潰されて広がるときに生じる接合部間の滑りが小さく、プラズマ等のエネルギー波により予めチップ側および基板側の両接合部の接合表面の酸化膜等を除去する必要があった。
【0060】
一方、本実施形態では、チップ20の金属バンプ20aは断面尖形形状を有しており、従来技術に比べて金属バンプ20aは加圧によって変形しやすい形態である。そこで、金属バンプ20aの変形に伴って、金属バンプ20aと接合部22aの界面では、金属バンプ20aが押し潰されて広がるときに生じる金属バンプ20aと接合部22a間の滑りが大きくなる。よって、金属バンプ20aで新生面が露出するのと同時に、接合部22aの再付着層等も前記滑りにより押し破られやすくなり、新生面は出やすくなる。また、加圧力においても断面尖形形状を有していない金属バンプ同士を接合する場合に比べ低加圧化が可能となる。
【0061】
したがって、本実施形態では、チップ20の金属バンプ20aの表面活性化処理を行わなくても金属バンプ20aに新生面を露出させることができる。さらに、接合部22aに対しても、加圧したときの金属バンプ20aと接合部22aの間の滑りにより、表面活性化処理後に形成された再付着層の除去を容易にすることができる。よって、例えば他方の被接合物の接合部がパッドである場合に、プラズマ洗浄後の前記バッド表面においても、金属バンプが断面尖形形状を有していない場合に比べて、断面尖形形状を有する金属バンプ20aとパッド表面との界面のすべりにより再付着層が効率よく削り取られるため、信頼性の高い接合が行われる。
【0062】
また、本発明者は、金属バンプ20aを接合面から先端までの高さが20〜90%となる範囲で押し潰せば、金属バンプ20aの表面の酸化膜や有機物等の付着層を確実に除去して新生面を露出することができ、電気的信頼性のよい接合が可能であることを実験的に見出した。図4を参照して、金属バンプ20aの接合面から先端までの高さと接合強度との関係について説明する。
【0063】
図4は金属バンプ20aがAu、Al、Cuである場合における金属バンプ20aの高さと接合強度との関係を示した図である。同図において金属バンプ20aの高さは、完全につぶれてしまったときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1バンプ当たり15g以上の場合とし、1バンプ当たりの接合強度が15g以上となり接合強度が十分良好であるためには、加圧し潰した後の接合部から金属バンプ20aの先端までの高さは、加圧前のおよそ20〜90%となる場合であればよいことが分かる。
【0064】
また、図4では、加圧後の金属バンプ20aの高さが、加圧前の金属バンプ20aの高さの0〜20%となるときは、金属バンプ20aは大きく潰れているため十分接合していると考えられるが、加圧力が十分過ぎ、チップ20および基板22に余計なダメージが与えられる等、接合されない可能性が含まれると考えられる。また、加圧後の接合面から金属バンプ20aの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの90〜100%となるときは、金属バンプ20aの潰れ方が小さいため、接合されない可能性があると考えられる。以上の点を考慮すると、接合を良好に行うための金属バンプの高さは、加圧後の金属バンプの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの20〜90%の場合とするのがよい。
【0065】
したがって、金属バンプ20aの接合面からの高さが加圧前の接合面からの高さの20〜90%の範囲となるように、チップ20や基板22等の被接合物に加圧するのがよい。
【0066】
そこで、加圧中は、ヘッド高さ検出手段(図示省略)により基板を保持するヘッドの高さをモニタすることにより、金属バンプ20aの、基板22からの高さを検出し、金属バンプ20aの高さが加圧前の金属バンプ20aの高さの20〜90%となるように加圧力の調整を行えばよい。
【0067】
なお、本発明者は、チップ20に形成された金属バンプ20aへの加圧力が、金属の種類、加圧の速さ等の条件に関わらず、1バンプあたり50〜700MPaの範囲のときに、金属バンプ20aが20〜90%の範囲の高さに押し潰されることを実験的に見出した。したがって、チップ20および基板22に、1バンプあたり50〜700MPaの範囲の加圧力が加えられ、金属バンプ20aの高さが20〜90%の高さとなるように制御を行い、接合を行うこともできる。
【0068】
そして接合完了後、チップ20の吸着は解除され、基板22側にチップ20が実装された状態でステージ10上に残り、再び基板搬送装置37により、接合されたチップ20および基板22が基板トレイ39へ排出され、一連の接合動作は終了する。
【0069】
したがって、第1実施形態によると、チップ20aに形成された金属バンプ20aは断面尖形形状を有し、加圧によって押し潰しやすい形状を成しており、図4から分かるように、金属バンプ20aの高さが20〜90%となる範囲で金属バンプを押し潰せば、金属バンプ20aおよび接合部22aの表面に形成された酸化膜や有機物の付着層を確実に除去することができ、かつ、他のバンプと接触することもなく電気的信頼性のよい接合が可能であることが実験的に明らかになった。よって、断面尖形形状を有する金属バンプ20aの高さが20〜90%となる範囲で押し潰すことにより、酸化膜や有機物の付着層を押し破ることができ、その結果金属バンプ20aに関しては、接合前のプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を省略することができ、工程の簡略化を図ることができる。
【0070】
また、基板22の接合面に形成された接合部22aは、大気中で酸化されない金によって形成されているため、表面活性化処理後には接合部22aの表面に酸化膜や有機物が再付着して層が形成されることはほとんどない。また、酸化膜や有機物が再付着して層が形成されたとしても、接合部が表面活性化処理された後一定時間内であれば、その再付着層の厚さは薄いので、金属バンプ20aと金からなる接合部22aを衝合して加圧することによって再付着層を押し破ることができる。したがって、本実施形態によると、大気中でも金属バンプ20aおよび接合部22aの接合を行うことができる。
【0071】
また、チップ20に形成された金属バンプ20aあたりの加圧力が50〜700MPaの範囲で加圧力の制御を行うと、金属バンプ20aの高さは20〜90%の範囲の高さとなり、接合強度が大きく、かつ、被接合物にダメージ等がない良好な接合を行うことができる。
【0072】
また、プラズマ等のエネルギー波により接合部22aを表面活性化させて接合しているため、低温での接合が可能である。例えば、従来の錫鉛ハンダと比較すると、被接合どうしの接合時の加熱温度を錫鉛ハンダの溶融温度である183℃以下である180℃以下で、固相で接合することができる。また、金属バンプ20aおよび接合部22aの材料によっては100℃以下または常温でも可能であり、加熱によりチップ20や基板22にダメージを与えるおそれが低減される。また、固相で接合することができるため、微細ピッチ電極や数μm以内の高精度な実装が要求される接合においては、従来のように錫鉛ハンダが高温により再溶融するという現象が生じることもなく、高精細な接合が可能である。
【0073】
また、接合部22aの表面活性化処理を行うためのエネルギー波がプラズマであるため、真空度が10−2Torr程度の低真空の空間で接合部の表面活性化処理を行うことができる。そのため、表面活性化処理を行うための装置構成は、簡易な設備で済み、装置のコンパクト化、コストダウン化が可能となる。
【0074】
なお、接合部22aを金属バンプ20aと同様に断面尖形形状を有するバンプ形状(金属バンプ22bとする。)とする変形例が考えられる。この場合、原理的には、金属バンプ同士の接合では、両金属バンプが押し潰され新生面が現れるので、両金属バンプともプラズマ等のエネルギー波による表面活性化処理を行わなくても接合を行うことができると考えられる。しかし、実際は、両金属バンプの先端の位置が合わないので、加圧によりチップ20の金属バンプ20aを基板22の金属バンプ22bに押し込むと、尖った先端に沿って両金属バンプの位置がずれることになる。その結果、両金属バンプの新生面同士は圧接されず、接合ができないことになる。
【0075】
したがって、大気中で低温で接合するには、本実施形態のように、予め基板22の接合部22aを、プラズマ等のエネルギー波によって表面活性化処理を行い、金属バンプ20aを加圧して接合する方法が効果的である。
【0076】
(第2実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第2実施形態について詳述する。本実施形態が上記第1実施形態と大きく相違する点は、被接合物であるチップ20の金属バンプ20aが金めっきにより形成して構成されている点であり、その他の構成は第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態との相違点を中心に第2実施形態について詳細に述べる。なお、第1実施形態と同一の構成および動作については、その構成および動作の説明を省略する。
【0077】
この第2実施形態では、チップ20の金属バンプ20aは、金めっきにより形成された金属バンプとして構成されている。一例として、金を電解めっき法により順次積層して、例えばピラミッド状に形成して金属バンプ20aを形成している。このような方法で形成することにより、結晶性の良い金属バンプを形成することができる。また、酸化膜や有機物等からなる付着層が前記金属バンプ20aの接合表面に付着しづらく、また硬度が低いため、加圧により表面の酸化膜等を押し破りやすく、大気中でも接合がしやすくなる。したがって、金属バンプ20aと接合面22aの接合界面で結晶構造を整合させるために加熱する場合の加熱温度をより低く、または常温とすることができ、チップ20や基板22への加熱によるダメージを防止することができる。なお、金属バンプ20aの形状は、ピラミッド型に限らず、その他の角錐型や円錐型等、どのような形状でもよい。
【0078】
また、上記したような方法で形成した場合、例えば、先端を引きちぎることにより新生面を生じさせて接合を行うスタッドバンプのように、材料に不純物を混入させることがないので、接合強度が強く、しかも電気的特性の優れた金属バンプを形成することができる。また、スタッドバンプの場合には、引きちぎりや加圧による塑性変形により、破断面の中央部と周辺部とでは結晶構造が変化し、例えばスタッドバンプの破断面の中央部が接合面22aに接合しないという問題が生じることがある。しかし、上記したように金めっきにより金属バンプ20aを形成した場合には、金属バンプ20aの結晶性が良く、また、押し潰すことにより新生面が現れ金属バンプ20aと接合面22aの結晶構造が整合されるため、金属バンプ20aの中央でも接合が行われることとなる。
【0079】
したがって、第2実施形態によると、金属バンプ20aが金めっきによって形成されるため、結晶性の良いバンプを形成することができる。そして、酸化膜や付着物等の層が形成されにくく新生面が露出しているので、金属バンプ20aは接合部22aとの接合を行いやすく、加熱温度を低くすることができるため、チップ20や基板22への加熱によるダメージを防止することができる。また、付着物等の層が形成されたとしても、金属バンプ20aは金めっきにより形成されるので硬度が低く、加圧によって押し潰すことによって容易に新生面が現れることとなる。また、接合部22aと同じ材料である金を金属バンプの材料として使用するため、金属同士が結合しやすく、接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。
【0080】
(第3実施形態)
続いて第3実施形態について詳細に述べる。以下、上記第1実施形態と異なる点について述べ、上記第1実施形態と同一の構成および動作についての説明は省略する。
【0081】
本実施形態が、上記第1実施形態と大きく相違する点は、チップ20として可視光や赤外光を含めた受光素子であるCMOSイメージセンサを基板22に接合する点であり、その他の点は上記第1実施形態と同一の構成および動作である。チップ20が受光素子である場合、接合前に表面活性化処理を行うとすると、プラズマ等のエネルギー波の照射によりチップ20に不要な電荷等が与えられ、チップ20がダメージを受けるおそれがある。
【0082】
本実施形態によると、プラズマによるダメージ等を受けやすい受光素子を一方の被接合物とした場合でも、受光素子であるチップ20には断面尖形形状を有する金属バンプ20aが形成されているため、表面活性化処理は不要であり、チップ20と基板22の接合前に表面活性化処理の工程を省略することができる。したがって、受光素子であるチップ20を、ダメージを受けることなく接合することができる。なお、受光素子はCMOSイメージセンサに限られず、CCD等の受光素子や、その他のセンシング素子でもよい。また、センシング素子に限られず、プラズマによりダメージを受けやすい材質を使ったデバイス、エッチングにより損傷されるおそれのある薄膜や銀等による配線パターンが形成されたデバイスでもよい。
【0083】
(第4実施形態)
続いて第4実施形態について詳細に述べる。本実施形態が、上記第1実施形態と大きく相違する点は、一方の被接合物であるデバイス基板901の基板本体901aの表面に、所定領域を囲んだ断面尖形形状を有する金属接合部としての金属枠体904が突出形成され、他方の被接合物である蓋基板902と金属枠体904を接合し、デバイス基板901および蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれる空間を、所定の雰囲気に封止する点である。以下、上記第1実施形態と異なる点について述べ、上記第1実施形態と同一の構成および動作についての説明は省略する。
【0084】
まず、本発明の接合装置において接合される基板の構造について詳細に述べる。図6はデバイス基板および蓋基板の一例を示す図、図7は図6のA−A線矢視断面図である。
【0085】
図6を参照して基板の一例について説明する。図6に示すように、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、所定領域を囲んだ断面尖形形状を有する金属枠体904が金めっきによって突出形成されている。また、金属枠体904に囲まれた領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部903が形成されている。ここで、所定領域とは、回路の動作部分や振動部分などが形成される領域のことである。なお、金属枠体904の材質は金に限らず銅やアルミニウム等その他ものであってもよい。
【0086】
また、蓋基板902の基板本体902aの表面には接合部として金薄膜905がスパッタリングまたは金属めっきにより形成されている。なお、金薄膜905の代わりに、金属枠体904に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0087】
このような構成とすれば、金は腐食せず、また、加熱してもガスを発生しないので、後述するように、デバイス基板901と蓋基板902との接合を行って、両基板901、902の接合面と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入し、当該空間を外部の雰囲気から遮断する封止材として、実用的である。
【0088】
なお、上記した基板の一例では、金めっきを厚膜状に施すことにより、基板本体901aの表面に断面尖形形状を有する金属枠体904を突出形成したが、金属からなる母材の表面に金膜を形成して構成してもよい。
【0089】
例えば、潰れ易くするために、硬度が低い錫または金と錫の合金層を母材とし、表面に金膜を形成した断面尖形形状を有する金属枠体904を形成してもよい。なお、この場合、金属枠体904が加圧により押し潰された後も金属枠体904の表面に金膜が残っていると、金属枠体904と接合部905の金原子同士が引き合うため接合強度の大きい良好な接合を行うことができる。したがって、加圧後も金属枠体904の表面に金膜が残るように金膜の厚さおよび加圧力を調整するとよい。また、錫に代わってインジウムを使用してもよい。
【0090】
また、接合装置および接合動作については、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、図3に示した装置では、金属枠体904と接合部905の接合を大気中で行うため、デバイス基板901と蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれた空間には、大気が封入されることとなる。
【0091】
また、図8は金属枠体904がAu、Al、Cuである場合の、金属枠体904の高さと接合強度との関係を示した図である。同図において金属枠体904の接合面からの高さは、完全につぶれたときを0%、全く潰れていないときを100%としている。同図において、接合が良好であるための接合強度は1金属枠体当たり150g以上の場合とし、1金属枠体当たりの接合強度が150g以上となり接合強度が十分良好であるためには、接合部が金属バンプであるときと同様、金属枠体904の高さが接合面から金属枠体904の先端までの高さのおよそ20〜90%となるように加圧して押し潰すとよいことが分かる。また、金属バンプの場合と同様、金属枠体904の接合面からの高さが20〜90%の高さとなるように1金属枠体当たり50〜700MPaの範囲で加圧力の制御を行うこととしてもよい。
【0092】
(第5実施形態)
続いて第5実施形態について説明する。本実施形態では、上記第4実施形態と同様デバイス基板901の所定領域を囲んで突出形成された断面尖形形状を有する金属枠体904と蓋基板902の接合部905の接合を行う。本実施形態が上記第4実施形態と大きく相違する点は、接合部905の表面活性化処理後、金属枠体904と接合部905の接合を行うための接合装置がチャンバー内に配設されている点である。以下、本装置について詳しく説明する。
【0093】
図9は本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。本実施形態では、同図に示すように、チャンバー52内に表面活性化処理室51と、チャンバー56内に接合室55が構成され、表面活性化処理室51には表面活性化処理装置53が、接合室55には接合装置57が配設されている。また、チャンバー52および56の入口には気密シャッター54および58が設けられ、この気密シャッター54および58を閉じることでチャンバー52および56を気密化して、所定の雰囲気中で表面活性化処理および接合処理を行うことができる。
【0094】
また、表面活性化処理室51と接合室55との間には、表面活性化処理装置53から接合装置57へと両基板901、902を搬送可能にするための搬送機構59が配設されている。このような構成とすれば、表面活性化処理および接合処理において、蓋基板902を表面活性化処理室51から接合室55の上部電極806へと搬送することができる。なお、搬送装置59については、周知の種々の搬送装置を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。
【0095】
したがって、本実施形態によると、蓋基板902を表面活性化処理後、搬送装置59により接合室へ搬送し、上部電極806に保持することにより、チャンバー56内の所定の雰囲気中でデバイス基板901と蓋基板902の接合を行うことができる。よって、デバイス基板901および蓋基板902の接合面と金属枠体904で囲まれた所定の空間を大気以外の所定の雰囲気に封入する場合には簡便である。
【0096】
(第6実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第6実施形態について説明する。本実施形態が上記第5実施形態と大きく相違する点は、表面活性化処理と接合処理を続けて行うことができる表面活性化・接合装置が配設されている点であり、蓋基板902の表面活性化処理前にデバイス基板901および蓋基板902を同一チャンバー内にセットし、蓋基板902に表面活性化処理を行った後、続けて所定の雰囲気中でデバイス基板901および蓋基板902の接合を行うことができる。その他の構成は第5実施形態と同様である。以下、第5実施形態との相違点を中心に第9実施形態について説明する。
【0097】
なお、図10は、本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。また、図11は表面活性化処理および接合処理の手順を示す図である。また、図12は図10の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【0098】
図10に示すように、表面活性化・接合装置50において、図示省略したアクチュエータにより昇降可能に構成されたチャンバー壁803と、チャンバー台810とにより減圧チャンバーが構成されている。この表面活性化・接合装置50では、蓋基板902とデバイス基板901とを上下に対向保持した状態でチャンバー壁803を下降して減圧チャンバーを閉じ、真空内でArプラズマにより表面活性化処理(エッチング)を行った後、両基板901、902を接合することができる。
【0099】
また、この装置50は、デバイス基板901を保持し、この保持されている基板の位置調整が可能に構成されたステージ部と、蓋基板902を保持し、Z軸801により昇降制御と加圧制御を行うヘッド部とを備えている。また、ヘッド部はピストン型ヘッド802と、上部電極806とを備え、ステージ部は位置調整(アライメント処理)が可能に構成されたアライメントテーブル820と下部電極809とを備えている。なお、本実施形態では、蓋基板902を上部電極806により保持し、デバイスの本体部903が形成されたデバイス基板901を下部電極809により保持している。また、本実施形態では、デバイス基板901に金属枠体904が形成されており、デバイス基板901および蓋基板902を接合する。
【0100】
また、Z軸801には図示省略する圧力検出手段が組み込まれ、この圧力検出手段による検出信号をZ軸サーボモータのトルク制御装置(図示省略)へフィードバックすることで、ピストン型ヘッド802を基板901、902の接合面とほぼ垂直な方向に加圧力制御を行うことができる。なお、ステージ部側のみ、または、ヘッド部側およびステージ部側の両方を加圧制御可能に構成してもよい。
【0101】
そして、摺動パッキン804がZ軸801に摺接しつつ、アクチュエータによりZ軸801と独立して昇降可能なチャンバー壁803が下降し、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地した状態でチャンバー内を外気と遮断することができる。この状態で、排出バルブ814を開放して真空ポンプ815を作動させて排出口812を介してチャンバー内を真空に引きした後、ガス切換弁816をArガス817(図12参照)を導入するように切換えて吸入バルブ813を開放することで、吸入口811を介して反応ガスとしてArガス817をチャンバー内に導入することができる。
【0102】
そして、Arプラズマによる蓋基板902の表面活性化処理を行った後、チャンバー内を所定の封入ガス雰囲気に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで両基板901、902を接合することができる。また、上部電極806および下部電極809は図示省略する加熱ヒータを備えており、基板901、902どうしの接合時に加熱を併用することで、基板901、902どうしの接合強度を向上させることができる。
【0103】
なお、後述するように、表面活性化処理後、チャンバー内を所定の雰囲気(Arガス817、窒素ガス818、真空、大気等)に置換してピストン型ヘッド802を下降させることで、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に当該所定の雰囲気を封入して接合することができる。例えば、ガス切換弁816を窒素ガス818(図12参照)を導入するように切換えることで、吸入口811を介して封入ガスとして窒素ガス818をチャンバー内に導入し、窒素ガス818を当該所定の空間に封入することができる。
【0104】
また、チャンバー壁803の摺動パッキン(Oリング)804をZ軸801に摺接させてOリングでチャンバーを気密化しているが、ピストン型ヘッド802の外周面に摺動パッキン(Oリング)804を設け当該摺動パッキンをチャンバー壁803に摺接させてチャンバーを気密化してもよい。
【0105】
次に、この表面活性化・接合装置50における表面活性化処理(表面活性化工程)および接合処理(接合工程)の処理手順について図11を参照して説明する。まず、同図(a)に示すようにチャンバー壁803が上昇した状態で蓋基板902を上部電極806により保持し、デバイス基板901を下部電極809により保持する。基板901、902の保持方法は機械的なチャッキング方式でもよいが、静電チャック方式がより好ましい。
【0106】
そして、図11(b)に示すようにチャンバー壁803を下降させ、チャンバー台810に固定パッキン805を介して接地させる。チャンバー壁803は摺動パッキン804がZ軸801に摺接することでにより大気と遮断されているので、吸入バルブ813を閉止した状態で排出バルブ814を開放して真空ポンプ815により真空引きを行うことでチャンバー内の真空度を高めることができる。
【0107】
次に、図11(c)に示すようにチャンバー内に反応ガスを導入する。真空ポンプ815を動作させながら排出バルブ814の排出量と吸入バルブ813のガス吸入量を調整することで、ある一定の真空度に保ちながらチャンバー内を任意の反応ガスで満たすことができる。この実施形態では、反応ガスとして、Arガス817を10−2Torr程度の真空度でチャンバー内に充満させ、同図(d)に示すように、上部電極806に交番電源により電圧印加することで同様にしてArプラズマを発生させ、蓋基板902に形成された接合部905の表面活性化処理を行う。
【0108】
次に、図11(b)に示すように、吸入バルブ813を閉じた状態でチャンバー内をさらに真空引きしてArガスを排出する。なお、両電極806,809を100℃程度に加熱しながら真空引きを行うことにより基板901、902表面に付着したり、基板901、902内部に打ち込まれたArイオンを排出することもできる。
【0109】
その後、図11(c)に示すように、チャンバー内を所定の封入ガスに置換する。なお、ガス切替弁816でArガス817と窒素ガス818を選択して吸入口811に導入することで、Arガス817と窒素ガス818の2つのガスを1チャンバーで切り替えることができる。また、このガス切替弁816は大気を吸入可能に構成されているので封入ガスとしてチャンバー内に大気を導入することもできる。また、チャンバー内に大気を導入してチャンバー内を大気圧とした後に、チャンバーを開いて大気解放させることもできる。
【0110】
したがって、本実施形態では、封入ガスとして、Arガス817、窒素ガス818、大気ガス、真空のうちから1つのガスを選択してチャンバー内に導入することができる。なお、封入ガスをArガス817とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を省略すれば、Arガス817の消費量を抑制できる。また、封入ガスを真空とする場合には上記した表面活性化処理後にチャンバー内を真空引きする処理を行った後、そのまま後述する接合処理を行えばよい。
【0111】
続いて、図11(e)に示すように、真空中または封入ガス中でチャンバー壁803とZ軸801とが摺動パッキン804で接しながらピストン型ヘッド802がZ軸801により下降される。このとき、蓋基板902の接合部905がArプラズマにより表面活性化処理された後、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物が当該接合部905および金属枠体904に付着したり、当該接合部905および金属枠体904が大気に暴露されることで、当該接合部905および金属枠体904に有機物や酸化膜などの付着物層が付着することがある。
【0112】
しかしながら、基板901に形成された金属枠体904および蓋基板902に形成された接合部905を真空中または封入ガス中で接触させ、加圧することで金属枠体904および接合部905に再付着した付着物層が押し破られて金属枠体904および接合部905が接合し、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する接合処理が行われる。
【0113】
なお、チャンバー内はチャンバー壁803とZ軸801との間の摺動パッキン804により外部雰囲気と遮断され、チャンバー内を真空または封入ガス雰囲気に維持した状態でピストン型ヘッド802を下降させることができる。また、接合処理の際に両電極806,809に備えられた加熱ヒータにより180℃程度の温度で加熱して、接合強度を向上させることができる。最後に、図11(f)に示すように、チャンバー内に大気を供給し大気圧に戻した後にヘッド部を上昇させて、接合された両基板901、902をチャンバー内から取り出し、表面活性化処理および接合処理が終了する。
【0114】
ところで、デバイス基板901および蓋基板902の接合の際に、デバイス基板901および蓋基板902の位置調整(アライメント)を行った後、接合することもできる。図12に示すように、両基板901、902の間に2視野認識手段825を挿入することで、デバイス基板901に形成された金属枠体904や両基板901、902に形成されたアライメントマーク等の位置を当該2視野認識手段825で検出できる。
【0115】
この2視野認識手段825は両基板901、902間に挿入された状態で、上下に位置する両基板901、902の金属枠体904やアライメントマーク等の像を、プリズム826により、上マーク認識手段827と下マーク認識手段828の方向に屈折させてそれぞれ読み取ることができる。また、2視野認識手段825は両基板901、902の接合面にほぼ平行なXY軸方向と、両基板901、902面にほぼ垂直なZ軸方向とに移動可能に構成されたテーブル(図示省略)により移動可能に構成され、両基板901、902の任意の位置に形成された金属枠体904やアライメントマーク等の位置を読み取ることができる。
【0116】
そして、両基板901、902に形成された金属枠体904やアライメントマーク等の位置を読み取った後、アライメントテーブル820によりデバイス基板901の位置を、蓋基板902の位置に合わせる位置調整を行う。なお、1回目の位置調整が終了した後、再度、2視野認識手段825を両基板901、902に挿入して繰り返して位置調整を行い、位置精度を向上させることもできる。
【0117】
このように、この表面活性化・接合装置50において、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物が接合部905および金属枠体904に付着しても、加圧することで該付着した付着物層を押し破ってデバイス基板901に形成された金属枠体904および蓋基板902に形成された接合部905を接合することができ、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する接合処理を行うことができる。
【0118】
なお、接合処理を真空中で行うことにより、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0119】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はでない。そのため、不活性なガス以外のガスも採用することができる。
【0120】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部905の付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0121】
(第7実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第7実施形態について説明する。本実施形態が上記第6実施形態と大きく相違する点は、表面活性化処理室と接合室が同一チャンバー内に気密シャッターにより仕切られて構成されている点であり、その他の構成は第6実施形態と同様である。以下、第6実施形態との相違点を中心に第7実施形態について詳細に述べる。なお、第6実施形態と同一の構成および動作については、その構成および動作の説明を省略する。
【0122】
図13は本実施形態における装置構成を示した概略構成図である。同図に示すように、表面活性化・接合装置60は、チャンバー61が表面活性処理室および接合室から構成され、表面活性化処理室に表面活性化処理装置64が、接合室に接合装置57が配設されている。
【0123】
そして、表面活性化処理室の入口には気密シャッター62が設けられ、この気密シャッター62を閉じることで表面活性化処理室を気密化することができる。また、チャンバー61内の表面活性化処理室と接合室との間には、表面活性化処理装置64から接合装置57へと両基板901、902を搬送可能に搬送機構63が配設されている。なお、搬送装置63については、周知の種々の搬送装置63を採用することができ、その構成および動作は周知のものであるため、その構成および動作の説明は省略する。また、以下の実施形態で説明する搬送装置についても、その構成および動作の説明は省略する。
【0124】
本実施形態では、蓋基板902の表面活性化処理が行われる間は、気密シャッター62を閉じて表面活性化処理室をAr雰囲気にし、Arプラズマによって蓋基板902の表面活性化処理が行われる。
【0125】
その後、気密シャッター62が開放され、搬送機構63により蓋基板902が接合室に搬送されて上部電極806に保持される。また、デバイス基板901は接合室の下部電極809に予め保持されている。そして、接合室の加圧手段801によりデバイス基板901と蓋基板902が加圧されて接合が行われる。
【0126】
なお、表面活性化処理中は、接合室は真空、大気またはその他の封入ガス雰囲気等、どのような雰囲気でもよい。そして、蓋基板902の表面活性化処理後、蓋基板902は接合室に搬送されて上部電極806に保持され、接合室を所望の雰囲気として接合動作が行われる。
【0127】
例えば、両基板901、902の接合面間と金属枠体904で囲まれた空間にArガスを封入する場合は、蓋基板902をArプラズマにより表面活性化処理する際に、デバイス基板901を下部電極809に保持した接合室をAr雰囲気としておけば、表面活性化処理後、気密シャッター63を開放して蓋基板902を搬送機構63によって接合室へ搬送して上部電極806に保持した後すぐに接合を行うことができる。
【0128】
このような構成とすることにより、第6実施形態の装置構成と比較して、表面活性化処理を行ったときに、表面活性化処理により除去された付着物層の浮遊物がデバイス基板901に付着するのを防止することができる。また同一チャンバー内に表面活性化処理室と接合室を備えているので、表面活性化処理後短時間で金属枠体904および接合部905の接合を行うことができ、両基板901、902の接合面間と金属枠体904で囲まれた空間に容易に所定の雰囲気を封入することができる。
【0129】
また、接合前に接合室に所定の気体を導入して超高気圧とすることで、大気圧によって両基板901、902を加圧して接合処理を行うこともできる。また、チャンバー61内を任意の気圧で所定のガス雰囲気とすることができ、あるいは、チャンバー61内を真空雰囲気とすることができるように構成されている。以上のような構成とすれば、上記した第4ないし第6実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0130】
(第8実施形態)
続いて、本発明にかかる接合装置の第8実施形態について、図14および15を参照して説明する。なお、図14は、本実施形態のデバイス基板および蓋基板の一例を示す概略構成図、図15は接合装置の概略構成図を示す。
【0131】
本接合動作例が上記第7実施形態と大きく相違する点は、デバイス基板901に形成された複数の金属枠体904を取り囲んで断面尖形形状を有する金属外枠体906が形成され、金属外枠体906が接合部905に仮接合された後、金属枠体904が接合部905に本接合される点である。以下、第7実施形態との相違点を中心に第8実施形態について説明する。
【0132】
図14は本実施形態の基板の一例を示す図であり、同図に示すように、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、複数の金属枠体904が形成されている。同図では、デバイス基板901の基板本体901aの表面には、所定領域をそれぞれ囲んだ断面尖形形状を有する金属枠体904がそれぞれ金めっきにより複数突出形成されている。また、金属枠体904に囲まれたぞれぞれの領域には、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイスなどのデバイスの本体部903が形成されている。
【0133】
また、蓋基板902の基板本体902aの表面には金薄膜905がスパッタリングまたは金属めっきにより形成されている。なお、金薄膜905の代わりに、金属枠体904に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0134】
なお、図14に示すように形成されたデバイス基板901と蓋基板902とを接合した後、接合されたデバイス基板901および蓋基板902を、金属枠体904で囲まれた領域ごとにダイシングすることで、複数のデバイスを効率よく形成することができる。
【0135】
また、デバイス基板901および蓋基板902は、樹脂により構成されたプリント基板、配線層が積み上げられたビルドアップ基板またはSi、SiO2、ガラス、セラミックおよびLT(酸化物単結晶)からなるウエハー等、種々の材料で構成することができる。
【0136】
次に、図15に示した接合装置を参照して、本実施形態の接合動作について説明する。本実施形態では、同図に示すようにチャンバー71内に表面活性化・仮接合装置72が配設された表面活性化・仮接合室が構成されている。
【0137】
なお、この表面活性化・仮接合室は、第6実施形態の図10に示した表面活性化・接合装置50を簡略化して示した図であり、装置の動作は第6実施形態と同様である。本実施形態では、蓋基板902の表面活性化処理を行った後、続けて本装置内で金属外枠体906の仮接合を行い、その後、搬送装置73により、仮接合された基板901、902を大気中の本接合装置75へと搬出し、本接合動作を行う。
【0138】
したがって、この表面活性化・仮接合装置72において、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が金属外枠体906に再付着しても、加圧することで該再付着した付着物層を押し破って両基板901、902の金属外枠体906と接合部905を接合することができ、両基板901、902の接合面間に金属外枠体906によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入する仮接合処理を行うことができる。
【0139】
なお、仮接合処理を真空中で行うことにより、金属外枠体906によって囲まれて形成される空間を容易に真空雰囲気で封止することができる。また、接合処理をArガス、窒素ガス、大気といった封入ガス中で行うことにより、金属外枠体906によって囲まれて形成される空間に容易にこれらの封入ガスを封入することができる。
【0140】
また、封入ガスは、接合部を金とすれば、不活性なガスでなくとも腐食されないため接合に影響はない。そのため、不活性なガス以外のガスも採用することができる。
【0141】
また、Arプラズマにより表面活性化処理を行えば、接合部905の付着物層を除去するエッチング力が高く効率がよい。しかしながら、窒素、酸素など他の反応ガスによるプラズマにより表面活性化処理を行うこともできる。
【0142】
なお、金属外枠体906を仮接合する仮接合処理時に、金属枠体904も部分的に接触して接合することがある。このような場合であっても、所定の雰囲気中で金属枠体904の接合が行われることになるので、接合処理後、後述する本接合処理を行うことで、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入することができる。
【0143】
次に、図15を参照して本接合装置75について説明する。同図に示すように、本接合装置75は接合が行われたデバイス基板901および蓋基板902を保持するステージ221と、当該ステージ221に保持された両基板901、902を基板全面にわたって一括加圧する高圧プレス手段220とを備えている。したがって、高圧プレス手段220により仮接合された両基板901、902の基板全面にわたって一括加圧することで、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができる。
【0144】
なお、高圧プレス手段220に代えて、加圧位置をずらしながら加圧する加圧手段により、仮接合された両基板901、902の加圧位置をずらしながら加圧を行うことによって、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができるとしてもよい。
【0145】
また、高圧プレス手段220およびステージ221の代わりに、接合が行われたデバイス基板901および蓋基板902の上下に加圧ローラを配設し、上下の加圧ローラの間に仮接合がされた両基板901、902を通過させて加圧することにより、金属外枠体906の内側に形成された金属枠体904のすべてを確実に接合することができるとしてもよい。
【0146】
このように、仮接合処理によって両基板901、902の接合面間と金属外枠体906によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気が封入された状態で、両基板901、902を全面にわたって加圧することで当該空間内に形成されているすべての金属枠体904と接合部905を接合し、本接合を確実に行うことができる。したがって、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を確実に封入できる。
【0147】
すなわち、本接合処理において、両基板901、902を全面にわたって余すところなく加圧することができるので、金属外枠体906の内側に形成されているデバイス基板901の金属枠体904と蓋基板902の接合部905を確実に接合して本接合を行うことができる。
【0148】
また、本接合処理を大気中で行うことにより、本接合を行う際に真空チャンバーが不要となり、かつ、封入ガスの使用量を削減できコストダウンを図ることができる。
【0149】
なお、Arプラズマによる接合部905の表面活性化処理後、接合処理が行われる前に、エッチングにより除去された付着物層の浮遊物が接合部905および金属枠体904に付着しても、加圧することで該付着した付着物層を押し破ってデバイス基板901の金属枠体904および蓋基板902の接合部905を本接合することができ、接合面と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気をに封入する本接合を行うことができる。
【0150】
以上のように、本実施形態によれば、デバイス基板901に形成された金属外枠体906および蓋基板902の接合部905を加圧して接合することで、両基板901、902の接合面間と金属外枠体906によって囲まれる空間に所定の雰囲気を封入できる。したがって、当該空間内の所定の雰囲気中で加圧することにより、デバイス基板901の金属枠体904および蓋基板902の接合部905の本接合を確実に行うことができるので、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって輪郭状に囲まれて形成される空間に所定の雰囲気を封入するとともに、この空間を外部の雰囲気から確実に遮断できる。
【0151】
また、本実施形態では、接合に先立ち、Arプラズマであるエネルギー波で蓋基板902の接合部905を表面活性化処理することで、蓋基板902の接合部905に形成された酸化膜等を除去することができるため、接合を確実に行うことができる。
【0152】
また、本実施形態では、デバイス基板901に形成された金属枠体904および金属外枠体906と、蓋基板902に形成された接合部905とを、加圧することで密着させることができ、それぞれ確実に仮接合および本接合を行うことができる。
【0153】
また、デバイス基板901の金属枠体904に囲まれた領域に、表面弾性波デバイス、RFデバイスなどの半導体デバイスの本体部、機械的な可動部を有するMEMSデバイスの本体部、またはデバイスの電極等を形成して、デバイス基板901の金属枠体904および金属外枠体906と、蓋基板902の接合部905との仮接合および本接合を行った後、接合後のデバイス基板901および蓋基板902を、金属枠体904によって囲まれた領域ごとにダイシングすることができ、デバイスの本体部や電極が、両基板901、902の接合面間と金属枠体904によって囲まれた空間に封止され、外部の雰囲気と遮断された複数のデバイスを提供できる。
【0154】
また、本実施形態では、デバイス基板901に金属枠体904および金属外枠体906が、蓋基板902に接合部905が形成されているが、蓋基板902の接合部905は金属枠体904および金属外枠体906に対応する位置に突出形成された金属枠体等であってもよい。
【0155】
なお、本実施形態では、接合する基板901、902の種類、基板上に形成されたデバイスの種類に応じて、種々の接合装置から最適なものを組み合わせて変更することができる。以下、接合装置の変形例について図16を参照して説明する。図16は接合装置の変形例を示す図である。
【0156】
接合装置90について説明する。図16(a)に示すように、接合装置90は、表面活性化装置が配設された表面活性化室と、仮接合装置が配設された仮接合室と、本接合装置が配設された本接合室とを有するチャンバー91を備えている。また、チャンバー91内には基板901、902を各室の間で搬送する搬送機構92が配設されている。また、各室の入口にはそれぞれの空間を気密化できる気密シャッター(図示省略)が配設されている。このように、各処理はすべて同一のチャンバー91内で実行される。このような構成としても上記した第1ないし第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0157】
また、次に接合装置95について説明する。図16(b)に示すように、接合装置95は、表面活性化装置と、接合装置と、本接合装置とを備えている。また、各装置の間で基板901、902を搬送可能に搬送機構96が大気中に配設されている。このような構成としても上記した第1ないし第7実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0158】
(その他)
なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上記したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。
【0159】
例えば、第6実施形態では、同一の装置で被接合物の表面活性化処理から被接合物の接合までを一括した処理として実行していたが、エネルギー波による接合部905の表面活性化処理と、被接合物の接合を行う接合処理とを、それぞれ別の装置で行っても構わない。
【0160】
このような構成とすれば、蓋基板902の接合部905が表面活性化処理された後、デバイス基板901と蓋基板902のアライメントを大気中で行ったり、蓋基板902を大気中を経て接合装置に搬送した場合に、接合部905に酸化膜や有機物等からなる付着物の層が再形成されやすい。しかしながら、上記したように、再形成された付着物層を加圧して押し破ることで金属枠体904および接合部905を接合することができる。
【0161】
また、被接合物の保持手段としては真空チャック方式、静電チャック方式等どのような吸着保持方式でもよい。なお、表面活性化処理を行うチャンバー内部は表面活性化処理を行う過程で真空とするため、チャンバー内部の被接合物の保持手段は静電チャック方式が望ましいが、機械的に固定する方式でもよい。また、大気中でまず真空吸着保持させておいて密着させた後、機械的に固定する方法が密着性が良く好ましい。
【0162】
また、例えば、第1実施形態における接合装置では、ヘッド側に平行移動および回転移動の移動軸と昇降軸が、ステージ側に平行移動と回転移動の移動軸が配設されるとしたが、平行移動および回転移動の移動軸、昇降軸はヘッド側、ステージ側にどのように組み合わせられてもよく、また、重複してもよい。また、ヘッドおよびステージを上下に配置しなくとも左右配置や斜め等に配置してもよい。
【0163】
また、上記実施形態において、ヘッド部26の先端ツール9および/またはステージ10の表面に弾性材を配し、チップ20および基板22の接合時に弾性材を介して両被接合物を加圧しても構わない。このような構成とすれば、被接合物どうしの平行度をならわせることができる。また、薄い被接合物であれば平坦度もならわせることができる。
【0164】
また、上記実施形態において、ステージ10および/またはヘッド部26に球面軸受けを配設し、被接合物の接合時または接合前に被接合物同士を接触加圧して、少なくとも一方の被接合物に他方の傾きを合わせることができる構造にしてもよい。このような構成とすれば、平行度を倣わせて接合することができる。
【0165】
また, チップ20が発光素子である場合には, 位置認識部29に位置認識用のアライメントマークを認識する上下マーク認識手段14の他に、発光点認識手段33を備えるとしてもよい。この場合、上下マーク認識手段14によりアライメントマークを認識して、チップ20と基板22の位置を粗調整し、その後電気的に発光素子を発光させた状態で、発光点認識手段33により発光点を認識し、チップ20と基板22の位置を微調整することにより、サブミクロンの精度で位置調整を行うことができる。
【0166】
また、被接合物の位置認識手段は、上下マーク認識手段14、発光点認識手段33以外のいかなる手段であってもよい。例えばマークが反対面にある場合には、IR(赤外)光による被接合物認識手段を用い、被接合物を透過させて金属からなるアライメントマークを認識して、チップ20と基板22の位置を認識し、位置調整を行ってもよい。
【0167】
また、例えば第1実施形態において、一定時間ヘッド部26のヘッド高さを一定に保持して被接合物の加圧を行ってもよい。この場合、被接合物の接合界面では、荷重に耐え切れなくなり結晶方位の回転や粒子の移動が起こり、新生面が現れて接合し、粒子の移動によって残留応力が除去される。一方、被接合物を瞬間的に加圧した状態では、被接合物の表面は弾性変形しているため、界面の結晶が回転していない場合や、弾性変形が残留応力として残り、接合力に対して引き剥がす方向に働くため、接合強度が落ちることもある。したがって、被接合物の加圧時に、一定時間ヘッド部26のヘッド高さを一定に保持することにより、接合強度が落ちない良好な接合を行うことができる。この停止時間は材料や接合状態によるが、1秒以上から効果があり、2分以上では効果は変わらないものである。
【0168】
また、上記停止時に180℃以下で加熱を行うと、効率良く結晶方位の回転や粒子の移動が行われて接合が進み、残留応力が除去されることにより、接合強度を増加することができる。なお、加熱温度としては180℃以下の低温加熱で十分である。したがって、金属突起となる電極部を多数持つ半導体チップのフリップチップ接合においては、半導体への熱影響から180℃以下好ましくは室温での低温で接合する要望が高く、微細ピッチ電極等の数μm以内の高精度な実装が望まれているため、特に有効である。
【0169】
また、上記した接合時の加熱に代えて超音波振動を与えることで、熱膨張影響を受けずより容易に固相で金属接合することもできる。この場合、超音波発振器とホーンをヘッド部26のチップ保持ツール8の代わりに備える構成としてもよい。超音波振動を与えることにより、室温から180℃以下程度の低温で、加圧力を小さく抑えて接合することが可能であるため、加圧や高温加熱により被接合物に与えるダメージを抑えることができる。また、振幅を小さく抑え、加圧してから振動を与え、接合が進むにつれ接合面積に比例して加圧力を制御することにより位置ずれなく実装することができる。
【0170】
例えば、ホーンとホーン保持部と振動子からなる超音波振動ヘッドを備え、前記大気中での接合時に2μm以下の振幅からなる超音波振動を被接合物に印加し、150MPa以下の荷重、180℃以下の加熱で固相で金属接合する方法および接合装置であってもよい。大気中での接合時に超音波振動を印加するとより接合しやすくなる。既に表面活性化されているので超音波エネルギーは小さくて良く、ダメージや位置ずれを押さえられる2μm以下の振幅で十分であり、1μm以下であればより好ましい。また、金からなる金属バンプ20aを接合部22aに接合する場合、常温では300MPa程度の高加圧力で押しつぶさないと接合できないが、超音波を印加することで接合荷重は半分以下の150MPa以下に下げることができる。
【0171】
また、超音波振動を利用して大面積を接合する場合は、横振動タイプの超音波ヘッドでは横振動させるには接合面積が大きくては不可能であるが、縦振動タイプの超音波ヘッドであれば、大面積な面接合も可能となる。また、超音波振動と呼ぶが振動周波数は特に超音波の領域でなくとも良い。特に縦振動タイプにおいては、低周波でも十分効力を発揮する。
【0172】
また、一方の被接合物に金属接合部が複数形成されている場合には、被接合物の接合前に金属接合部を平面度の出た基準台に押し付けることで高さや表面粗さを均一に修正するレベリングを行うとしてもよい。レベリングを行うことにより、被接合物への接合加重を低減することができる。一例として、高さばらつき2μm、表面粗さ200nmである金属バンプ20aを有するチップ20にレベリングを行った場合、レベリングにより高さばらつきおよび表面粗さは50nm以下となり、加圧力はレベリング前には300MPaであったが、レベリング後は150MPaへと低減された。
【0173】
また、チップ20に形成された金属バンプ20aの形状は、ピラミッド型、円錐型等断面尖形形状を有している形状であればどのような形状であってもよい。
【0174】
また、被接合物は半導体以外のデバイスでもよく、表面弾性波デバイスやRFデバイスといった半導体デバイス、機械的な可動部分を有するMEMSデバイス等、どのような材料であってもよく、ウエハー等でもよい。また、一方の被接合物の金属接合部および他方の被接合物の接合部は、Au、Al、Cu、錫等が適するが、その他の金属や金属以外のものでも表面活性化接合できるものであればよい。また、他方の被接合物は、全面が接合面であってもよいし、一方の被接合物の金属接合部の対応する位置に、金属接合部を突出形成してもよい。
【0175】
また、上記した実施形態では、Arプラズマによるエネルギー波で他方の被接合物の接合部の表面活性化処理を行ったが、窒素、酸素など他のガスで行ってもよく、例えばArと酸素を混合したものでも構わない。またプラズマ等のエネルギー波でなくても、イオンビームや原子ビーム等で表面活性化処理を行うとしてもよい。
【0176】
また、他方の被接合物の接合部を表面活性化処理する方法として、交番電源が接続された電極面に保持された基板22に表面活性化処理を行うのが効率上好ましいが、均一性やダメージ軽減から、前記電極を基板22の保持位置以外の場所に設置して、表面活性化処理を行うとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0177】
【図1】本発明にかかる接合装置の一実施形態の概略構成図である。
【図2】接合過程を表す図である。
【図3】接合時の接合界面での結晶方向の回転模式図である。
【図4】バンプ高さと接合強度との関係を示す図である。
【図5】チップの一部と金属バンプを拡大して示した斜視図である。
【図6】デバイス基板および蓋基板の一例を示す図である。
【図7】図6のA−A線矢視断面図である。
【図8】金属枠体の高さと接合強度との関係を示す図である。
【図9】本発明の第5実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図10】本発明の第6実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図11】本発明の第6実施形態における表面活性化処理および接合処理の手順を示す図である。
【図12】図10の装置において2視野認識手段を用いた大気中でのアライメント処理を示す図である。
【図13】本発明の第7実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図14】デバイス基板および蓋基板の他の例を示す図である。
【図15】本発明の第8実施形態における装置構成を示した概略構成図である。
【図16】本発明の接合装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0178】
20…チップ(一方の被接合物)
20a…金属バンプ(金属接合部)
22…基板(他方の被接合物)
22a…接合部
25…上下駆動機構(加圧制御手段)
26…ヘッド部(加圧制御手段)
31…制御装置(加圧制御手段)
40…洗浄部(エネルギー波照射手段)
53、64…表面活性化処理装置(エネルギー波照射手段)
220…高圧プレス手段(加圧制御手段)
801…Z軸(上下駆動機構、加圧制御手段)
901…デバイス基板(一方の被接合物)
901a…デバイス基板本体
902…蓋基板(他方の被接合物)
902a…蓋基板本体
903…デバイス本体部
904…金属枠体(金属接合部)
905…接合部
906…金属外枠体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の被接合物の接合面に金からなる接合部を形成して、前記両被接合物どうしを、
前記他方の被接合物の前記接合部をエネルギー波で表面活性化処理した後、
前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧して前記金属接合部を押しつぶして接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記エネルギー波はプラズマであることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が金属バンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が、当該被接合物の所定領域を囲んで形成した金属枠体であることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を真空中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間を真空封止することを特徴とする請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を封入ガス中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間に前記封入ガスを封入することを特徴とする請求項4に記載の接合方法。
【請求項7】
前記一方の被接合物の前記金属接合部が金めっきで形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記一方の被接合物がセンシング素子であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイス、光デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
ヘッドおよびステージに保持した被接合物どうしを接合する接合装置において、
いずれか一方の前記被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の前記被接合物の接合面に金からなる接合部を形成しておいた前記両被接合物どうしを、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、つぶれて20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧する加圧制御手段を備え、
前記加圧制御手段は、
前記他方の被接合物の前記接合部がエネルギー波で表面活性化処理された前記両被接合物どうしを加圧して前記一方の被接合物の前記金属接合部を押しつぶして前記両被接合物どうしを接続することを特徴とする接合装置。
【請求項12】
前記加圧制御手段は、
前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴とする請求項11に記載の接合装置。
【請求項13】
前記表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段をさらに備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記エネルギー波照射手段はプラズマを発生させることを特徴とする請求項13に記載の接合装置。
【請求項1】
一方の被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の被接合物の接合面に金からなる接合部を形成して、前記両被接合物どうしを、
前記他方の被接合物の前記接合部をエネルギー波で表面活性化処理した後、
前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧して前記金属接合部を押しつぶして接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記エネルギー波はプラズマであることを特徴とする請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が金属バンプであることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記一方の被接合物に形成した前記金属接合部が、当該被接合物の所定領域を囲んで形成した金属枠体であることを特徴とする請求項1または2に記載の接合方法。
【請求項5】
前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を真空中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間を真空封止することを特徴とする請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記一方の被接合物の前記金属枠体および前記他方の被接合物の前記接合部の衝合、加圧を封入ガス中で行うことにより、前記一方の被接合物と前記他方の被接合物の間の前記金属枠体によって囲まれる空間に前記封入ガスを封入することを特徴とする請求項4に記載の接合方法。
【請求項7】
前記一方の被接合物の前記金属接合部が金めっきで形成されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記一方の被接合物がセンシング素子であることを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の接合方法により形成されたデバイスであって、半導体デバイス、光デバイスまたはMEMSデバイスからなることを特徴とするデバイス。
【請求項11】
ヘッドおよびステージに保持した被接合物どうしを接合する接合装置において、
いずれか一方の前記被接合物の接合面に断面尖形形状を有する金属接合部を形成し、他方の前記被接合物の接合面に金からなる接合部を形成しておいた前記両被接合物どうしを、前記一方の被接合物の前記金属接合部と前記他方の被接合物の前記接合部とを衝合させ、前記一方の被接合物の接合面から前記金属接合部先端までの高さが、つぶれて20%〜90%の高さとなる加圧力で加圧する加圧制御手段を備え、
前記加圧制御手段は、
前記他方の被接合物の前記接合部がエネルギー波で表面活性化処理された前記両被接合物どうしを加圧して前記一方の被接合物の前記金属接合部を押しつぶして前記両被接合物どうしを接続することを特徴とする接合装置。
【請求項12】
前記加圧制御手段は、
前記一方の被接合物に形成した一の前記金属接合部あたりの前記加圧力が50MPa〜700MPaとなるように加圧することを特徴とする請求項11に記載の接合装置。
【請求項13】
前記表面活性化処理を行うエネルギー波照射手段をさらに備えたことを特徴とする請求項11または12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記エネルギー波照射手段はプラズマを発生させることを特徴とする請求項13に記載の接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−105254(P2009−105254A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276173(P2007−276173)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(304019355)ボンドテック株式会社 (36)
【Fターム(参考)】
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