説明

接合方法および接合装置

【課題】熱反応性樹脂による接着剤を介した電極の接合において、生産性を向上させることが可能な接合方法および接合装置を提供する。
【解決手段】接合対象物の加圧領域内の角に近い部分、または、加圧領域内の重心位置からの距離が相対的に長い部分によって挟み込まれる接着剤が、その加圧領域内の重心位置に近い部分によって挟み込まれる接着剤よりも先に溶けるように、かつ、加圧領域内の全域の接着剤が溶けた状態となる時間帯が存在するように、複数のレーザ光源から発せられるレーザ光によって形成される照射領域におけるレーザ光の強度分布を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルに代表される表示パネルと駆動回路基板との接合、表示パネルとそれに接合される電子部品との接合、表示パネルと、電子部品が接続されたテープ、パッケージ等のキャリア部材との接合に適した接合方法および、その接合方法の実施に好適な接合装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、その他各種モニタ用の画像表示装置として、液晶表示装置が急速に普及してきている。
【0003】
この種の液晶表示装置では、一般に、照明用の面状光源であるバックライトが液晶表示パネルの背面に配設される。そのバックライトが所定の広がりを有する液晶面の全体を均一な明るさに照明することによって、液晶面に形成された画像が可視像化される。多くの場合、液晶表示装置は、液晶材料を2枚のガラス基板の間に封入して構成した液晶表示パネルと、液晶表示パネル上に実装された液晶材料を駆動するためのプリント回路基板と、液晶表示パネルの背面に液晶表示パネル保持フレームを介して配置されるバックライト・ユニットと、これらを覆う外枠フレームとを備えている。
【0004】
液晶表示装置の1つとして、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)液晶表示装置がある。TFT液晶表示装置の場合、液晶表示パネルを構成する2枚のガラス基板のうちの一方はアレイ基板を構成し、他方はカラーフィルタ基板を構成する。
【0005】
アレイ基板とは、液晶材料の駆動素子であるTFT、表示電極、信号線の他にプリント回路基板と電気的に接続するための引出電極などが、その表面に形成されたガラス基板である。TFTがガラス基板の表面に規則的に配列されているため、このガラス基板は一般的にアレイ基板と呼ばれている。
【0006】
一方、カラーフィルタ基板は、その表面にカラーフィルタ(代表的には赤フィルタ、緑フィルタおよび青フィルタ)が形成されたガラス基板である。なおカラーフィルタ基板の表面(ガラス基板の表面)には、カラーフィルタの他にコモン電極、ブラックマトリックス、配向膜なども形成される。
【0007】
多くの場合、液晶表示装置に設けられるプリント回路基板は、アレイ基板に形成された引出電極と、TAB(Tape Automated Bonding)テープキャリア(以下、単にTABとも称する)を介して接続される。あるいはTAB技術により、テープフィルムにLSIチップを接続したパッケージ(代表的にはTCP(Tape Carrier Package))を介してプリント回路基板を液晶表示パネルに実装することも行なわれている。
【0008】
また、TAB技術と同様のパッケージ技術として、COF(Chip on film/FPC)やSOF(System on Film)が挙げられる。
【0009】
TABの入力リード導体はプリント回路基板の対応する導体に接続される。一方、TABの出力リード導体はアレイ基板の対応する引出電極に接続される。TABのリード導体とプリント回路基板の対応する導体との接続の際には、たとえば、はんだ、あるいは接着剤としての樹脂の中に導電材料からなる粒子を分散させた接合材料(代表的にはACF(Anisotropic Conductive Film:異方性導電膜)およびACP(Anisotropic Conductive Paste:異方性導電ペースト))が用いられている。また、導電性粒子を含まない樹脂接着剤(たとえばNCP(Non Conductive Particle/Paste))も接合材料として用いられている。
【0010】
TABの出力リード導体とアレイ基板の対応する引出電極との接続の際にも同様にACFあるいはACP、NCP等が用いられている。さらに、これらの接続のみならずTCP上のLSIチップとフィルムとの接続にもACF、あるいはACP、NCP等が用いられている。
【0011】
また、TABを用いた実装技術の他に、COG(Chip On Glass)と呼ばれる実装技術がある。このCOGは、アレイ基板上に、主としてシリコンからなるIC(Integrated Circuit)チップ(以下、シリコンチップあるいはベアチップとも称する)等の電子部品をACFあるいはACP、NCP等の材料により接合する技術である。具体的には、電子部品上に形成されたバンプ電極と、アレイ基板上の引出電極とが、ACF等の接合材料によって電気的に接続される。
【0012】
ACFには、熱可塑性樹脂を接着剤とする熱可塑型ACFと熱硬化型樹脂を接着剤とする熱硬化型ACFの2種類が存在する。熱可塑型ACFおよび熱硬化型ACFによる接合の手法は、加熱および加圧を伴う熱加圧を行なう点で一致している。
【0013】
上述した電極の接合は、従来では以下に説明する手順により実行される。まず、液晶パネル基板が搬入される。次に、実装部のクリーニングおよびACFの基板ガラスへの貼付けが行なわれる。続いて、ベアチップやフィルム等(以下、実装部品とも呼ぶ)の精密な位置決めを伴う低温での仮圧着が行なわれる。続いて高温でACFを硬化させるとともにパネル基板の電極と実装部品の電極とを接続する本圧着が行なわれる。なお、本圧着の後には、検査および搬出作業が行なわれる。
【0014】
各工程のうち、最も時間を要するのが本圧着である。従来、この工程では、高温に保持されたヒータツールバーを実装部品に押し当てることによりACFの加熱および加圧が行なわれている。従来、本圧着では、たとえば約10秒程度の加熱加圧時間が必要である。ただし、加熱加圧時間はACFの材料特性によっても左右される。
【0015】
ヒータツールによる加熱手法は高い信頼性が得られる。しかしながら、この加熱手法では、仮圧着工程と本圧着工程の2工程を要する上に、圧着自体が、ヒータツールバーから接合部品への熱伝導を経て、ACFを加熱して硬化させることで行なわれるので、接合に時間を要し、タクトを律速する要因ともなっている。
【0016】
この問題を回避するため、レーザ光をACFに照射してACFを加熱することにより、高速に接合するとともに、従来は必要であった仮圧着工程を無くし、本圧着のみで接合するタクト改善方法が提案されている。
【0017】
たとえば、特開2006−253665号公報(特許文献1)には、ACFをガラス基板と電極部材との間に圧力を加えて挟み込むステップと、そのACFにレーザ光を吸収させることによりACFを発熱させるステップとを備える接合方法が開示されている。
【特許文献1】特開2006−253665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特開2006−253665号公報にはACFにレーザ光を照射するための方式としてワブリング方式および塗りつぶし方式が例示されている。上記文献によれば、ワブリング方式とは、照射スポットの中心が旋回しながら進むようにレーザ光の照射軌跡を描く方式であり、塗りつぶし方式とは、多数の平行線によって照射領域を埋め尽くす方式である。
【0019】
しかしながら、発明者らの鋭意研究の結果、複数の電極を有する電子部品を接合するにあたって、各電極にレーザ光を順次照射してACFを硬化させることは、機械的、電気的信頼性確保のためには望ましくないことがわかった。すなわち、この圧着工程では、ACFに含まれる導電性粒子を電子部品の電極とパネル基板の電極とで押し挟みこんだ状態でACFに含まれる熱反応性接着剤を硬化させる必要があるところ、複数の電極対に対して順にレーザ光を照射してACFを局所的に硬化させてしまうと、既に硬化したACFが他の電極対を押し挟む際の妨げになり、後からレーザ光を照射して接着した電極対については導電性粒子の押し挟みが不十分な状態でACFが硬化されてしまう場合がある。
【0020】
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであって、熱反応性樹脂による接着剤を介した電極の接合において、生産性を向上させることが可能な接合方法および接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明は要約すれば、ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する方法である。接合方法は、ガラス基板上の引出電極と接合対象物の接続電極とを、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向させ、かつ熱反応性樹脂による接着剤を、引出電極と接続電極との間に介在させた状態で、ガラス基板と接合対象物の少なくとも一方に圧力を加えることにより、接着剤をガラス基板と接合対象物との間に挟みこむステップと、ガラス基板に向けて押し当てられる接合対象物の加圧領域内の角に近い部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤が、加圧領域の重心位置近傍の部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤よりも先に溶け、かつ、加圧領域の全域の接着剤が溶ける時間帯が存在するように、その強度分布が制御されたレーザ光を、接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるよう照射するステップと、レーザ光の照射時または照射後に生じる接着剤の反応の後に、圧力を開放するステップとを備える。
【0022】
「重心位置」とは、加圧領域の中心である場合を含む。加圧領域が複数の多角形の足し合わせによって表される複雑な形状の場合には、たとえば仮想的に区分けされた多角形ごとに角と重心位置とが考慮される。
【0023】
「加圧領域」は、接合対象物の大きさと一致しない場合を含む。例えば、テープキャリアをガラス基板に接合する場合には、テープキャリアの一部が加圧されてガラス基板と接合される。一方、ドライバICのような小さな電子部品の場合には、電子部品全体が加圧領域となり、部品全体がガラス基板上に実装される。
【0024】
また、この発明では、レーザ光源から出射されたレーザ光が、ガラス基板または接合対象物を透過して加圧領域に向けて照射されてもよい。
【0025】
この発明によれば、接合対象物の加圧領域の中の角に近い部分によって挟み込まれる接着剤が先に溶けて、加圧領域の外側に流れ出す。その結果、十分な量の接着剤が加圧領域の角部の周囲にも押し出されることになる。したがって、熱反応性樹脂による接着剤を用いた接合でのレーザ光による高速接合において信頼が向上する。
【0026】
本発明の他の局面に従うと、ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する方法である。接合方法は、ガラス基板上の引出電極と接合対象物の接続電極とを、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向させ、かつ熱反応性樹脂による接着剤を、引出電極と接続電極との間に介在させた状態で、ガラス基板と接合対象物の少なくとも一方に圧力を加えることにより、接着剤をガラス基板と接合対象物との間に挟みこむステップと、ガラス基板に向けて押し当てられる接合対象物の加圧領域内において加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長くなる加圧領域の外周部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤が、加圧領域内において距離が相対的に短い部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤より先に溶け、かつ、加圧領域の全域の接着剤が溶ける時間帯が存在するように、その強度分布を制御したレーザ光を、接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるよう照射するステップと、レーザ光の照射時または照射後に生じる接着剤の反応の後に、圧力を開放するステップとを備える。
【0027】
この発明によれば、たとえば細長い矩形を有する接合対象物(たとえば細長いシリコンチップによるIC)の場合、長手方向の両端部に挟まれる接着剤を先に溶かすことで、長手方向や対角線方向への接着剤の外部へ押し出し量を十分に確保することができ、接合信頼性が向上する。
【0028】
なお、「重心位置」、「加圧領域」については、上記発明の場合と同様である。また、この発明においても、レーザ光源から出射されたレーザ光が、ガラス基板または接合対象物を透過して加圧領域に向けて照射されてもよい。
【0029】
好ましくは、加圧領域の形状は、長方形である。重心位置からの距離が相対的に長くなる加圧領域の外周部分は、長方形の短辺部分である。
【0030】
好ましくは、照射するステップは、加圧領域を含むレーザ光の照射領域を、照射位置が異なる複数のレーザビームの足し合わせによって覆うように、レーザ光を照射するステップと、接着剤の反応と関連づけられる物理量の照射領域での分布をモニタするモニタによって測定される照射領域での分布に基づいて、複数のレーザビームの各々の強度を制御するステップとを含む。
【0031】
この制御には、時間的に強度を変化させる制御を含む。
より好ましくは、モニタは、照射領域での温度分布を測定する。制御するステップは、モニタにより測定される温度分布に基づいて、重心位置よりも接着剤が先に溶けるべき部分の温度が、予め定められた温度に達したか否かを判断するステップと、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達したときの温度分布に基づいて、照射領域内の残りの箇所に照射されるレーザ光のパワーを制御するステップとを含む。
【0032】
さらに好ましくは、判断するステップは、接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率に基づいて、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達する時刻を推定し、現在時刻が推定された時刻に達したときに、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達したか否かを判断する。
【0033】
さらに好ましくは、上記接着剤は、熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である。
【0034】
本発明のさらに他の局面に従うと、ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する装置である。接合装置は、ガラス基板上の引出電極と接合対象物の接続電極とが、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向し、かつ熱反応性樹脂による接着剤が、引出電極と接続電極との間に介在した状態で、ガラス基板と接合対象物の少なくとも一方に圧力を加える加圧部と、接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるようレーザ光を照射するレーザ光照射部と、ガラス基板に向けて押し当てられる接合対象物の加圧領域内の角に近い部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤が、加圧領域の重心位置近傍の部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤よりも先に溶け、かつ、加圧領域の全域の接着剤が溶ける時間帯が存在するように、レーザ光照射部から照射されるレーザ光の強度分布を制御する制御部とを備える。
【0035】
「重心位置」、「加圧領域」については、上記発明の場合と同様である。また、この発明においても、レーザ光源から出射されたレーザ光が、ガラス基板または接合対象物を透過して加圧領域に向けて照射されてもよい。
【0036】
本発明のさらに他の局面に従うと、ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する装置である。接合装置は、ガラス基板上の引出電極と接合対象物の接続電極とが、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向し、かつ熱反応性樹脂による接着剤が、引出電極と接続電極との間に介在した状態で、ガラス基板と接合対象物の少なくとも一方に圧力を加える加圧部と、接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるようレーザ光を照射するレーザ光照射部と、ガラス基板に向けて押し当てられる接合対象物の加圧領域内において加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長くなる加圧領域の外周部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤が、加圧領域内において距離が相対的に短い部分により接合対象物と挟み込まれる接着剤より先に溶け、かつ、加圧領域の全域の接着剤が溶ける時間帯が存在するように、レーザ光照射部から照射されるレーザ光の強度分布を制御する制御部とを備える。
【0037】
「重心位置」、「加圧領域」については、上記発明の場合と同様である。また、この発明においても、レーザ光源から出射されたレーザ光が、ガラス基板または接合対象物を透過して加圧領域に向けて照射されてもよい。
【0038】
好ましくは、加圧領域の形状は、長方形である。重心位置からの距離が相対的に長くなる加圧領域の外周部分は、長方形の短辺部分である。
【0039】
好ましくは、接合装置は、加圧領域を含むレーザ光の照射領域での、接着剤の反応と関連づけられる物理量の分布をモニタするモニタをさらに備える。レーザ光照射部は、照射領域を、照射位置が異なる複数のレーザビームの足し合わせによって覆うようにレーザ光を照射する。制御部は、モニタによって測定される分布に基づいて、複数のレーザビームの各々の強度を制御する。
【0040】
より好ましくは、モニタは、照射領域での温度分布を測定する。制御部は、モニタにより測定される温度分布に基づいて、重心位置よりも接着剤が先に溶けるべき部分の温度が、予め定められた温度に達したか否かを判断し、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達したときの温度分布に基づいて、照射領域内の残りの箇所に照射されるレーザ光のパワーを制御する。
【0041】
さらに好ましくは、制御部は、接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率に基づいて、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達する時刻を推定し、現在時刻が推定された時刻に達したときに、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が予め定められた温度に達したか否かを判断する。
【0042】
さらに好ましくは、上記接着剤は、熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である。
【発明の効果】
【0043】
本発明によれば、ガラス基板上に形成された複数の電極と、接合対象物(代表的にはTCP、ベアチップ等)の複数の電極とを、熱反応性樹脂による接着剤を介して接合する場合において、十分な量の接着剤を接合対象物の加圧領域の外側に押し出すことができるので、高速かつ確実な接合を実現でき、生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰返さない。
【0045】
図1は、本発明の実施の形態に従う接合装置の処理対象である液晶表示装置の概略ブロック図である。
【0046】
図1を参照して、液晶表示装置は、液晶表示パネル(図中「LCD」と示す)1と、TCP(Tape Carrier Package)2と、プリント回路基板3と、インターフェイス部4と、フレキシブル基板(図中、「FPC」と示す)6とを備える。
【0047】
TCP2は、液晶表示パネル1とプリント回路基板3との間に配置される。TCP2は、液晶表示パネルの構成素子を駆動するためのドライバIC5を含む。
【0048】
プリント回路基板3は、液晶表示パネル1上に実装された液晶材料を駆動するための回路が形成された基板である。インターフェイス部4は、液晶表示パネル1の周辺に配設された周辺回路に接続される配線を含む。フレキシブル基板6は、プリント回路基板3とインターフェイス部4とを電気的に接続するためのものである。
【0049】
液晶表示パネル1とプリント回路基板3とはTCP2によって接合される。より詳細に説明すると、液晶表示パネル1の電極(引出電極)とTCP2の電極とは、ACFによって、電気的に接合されるとともに、一体の形状となる。同様に、TCP2の電極とプリント回路基板3の電極とは、ACFによって、電気的に接合され、かつ一体の形状となる。
【0050】
なお、COG(Chip On Glass)方式も液晶表示パネルの製造に用いられる。図1には、TCP2の実装だけでなく、ベアチップの状態のドライバIC5の実装も示す(液晶表示パネル1の左側)。ベアチップ(ドライバIC5)の表面には図示しないバンプ電極が設けられている。このバンプ電極はACFによって液晶表示パネル1の電極(引出電極)と電気的に接合される。
【0051】
なお、図1は、説明の便宜の点からTCP2およびベアチップがともに液晶表示パネルに実装された状態を示したものである。したがって、たとえばベアチップが液晶表示パネル1に実装されておらず、TCPのみが液晶表示パネル1に実装されていてもよい。ただし本実施の形態に係る接合装置(図4参照)は、TCP2の実装およびベアチップの実装の両方に用いることができる。
【0052】
図2は、図1に示すTCP2の一構成例を説明する図である。
図2を参照して、TCP2は、キャリアテープ2aと、複数のリード導体2bと、ドライバIC5とを含む。キャリアテープ2aの表面には複数のリード導体2bが形成されるとともに、ドライバIC5が搭載される。複数のリード導体2bの各々はドライバIC5の表面に形成されたバンプ電極(図示せず)に電気的に接続される。
【0053】
図3は、ACFを説明する図である。
図3(a)は、ACFの構造の一例を説明する図である。図3(a)を参照して、ACF10は、無数のミクロパーティクル(導電性粒子)11がエポキシ系またはアクリル系の接着剤であるバインダ中に含まれた構成を有する。バインダは熱反応性樹脂である。なお、バインダは熱硬化型樹脂でもよいし、熱可塑性樹脂でもよい。
【0054】
図3(b)は、ACF10に熱および圧力が加わるときのACF10の状態を説明する図である。図3(b)を参照して、ACF10は電極15,16に挟まれる。ACF10に熱および圧力が加わると、ACF10の全体のうち電極15,16に接触した部分に圧力がかかる。なお図3(b)は、ACF10の全体のうち電極15,16に接触した部分のみを示している。
【0055】
ミクロパーティクル11は、樹脂コア13と、樹脂コア13の表面に形成されたニッケル(Ni)メッキ層12と、ニッケルメッキ層12の外側に形成された金メッキ層14とを含む。ACF10に熱および圧力が加わると、ACF10の内部に分散しているミクロパーティクル11同士が接触することにより、メッキ層同士が接触する。さらに、樹脂コア13が弾性体であるため、樹脂コア13に反発力が生じる。この反発力によって、メッキ層が電極16と電極15とに物理的に接触する。これにより電極15と電極16との間に導電経路が形成される。
【0056】
図3(c)は、ACFの構造の他の例として2層構造のACFを示した図である。図3(c)に示されるように、2層構造のACFでは、バインダとミクロパーティクルとは、別々の領域すなわちバインダ領域10aおよびミクロパーティクル領域11aとにそれぞれ分離して形成されている。当該構成においても、上述した構成と同様に、加熱および加圧によりACFを挟む電極の間に導電経路を形成することが可能となる。なお、2層構造のACFを用いることにより、加熱および加圧による2つの電極の相対的な位置のずれを抑制することが可能となる。
【0057】
[接合装置の構成]
図4は、本発明の実施の形態に従う接合装置100の構成図である。なお、以下の説明では、主として接合装置100がACF10を介してドライバIC5(ベアチップ)を液晶表示パネル1に接合する場合を説明する。また、以下の説明では互いに垂直なX方向、Y方向、およびZ方向をそれぞれ「左右方向」、「前後方向」、「上下方向」と呼ぶ場合もある。
【0058】
図4を参照して、接合装置100は、シリンダ20と、チップトレイ21と、シリンダ移動機構22と、加圧ヘッド25とを備える。
【0059】
ドライバIC5およびACF10はシリンダ20(加圧ヘッド25)と液晶表示パネル1との間に挿入される。
【0060】
加圧ヘッド25は、シリンダ20の先端部に取り付けられる。シリンダ20が下がると加圧ヘッド25がドライバIC5(ベアチップ)に接する。シリンダ20は、ドライバIC5と液晶表示パネル1との接合の際に加圧ヘッド25の高さを調整することにより、ドライバIC5(およびACF10)に加えられる圧力を制御するものである。
【0061】
シリンダ移動機構22は、シリンダ20を左右方向(X方向)に移動させるためのものである。シリンダ移動機構22の構成は特に限定されるものではないが、たとえばシリンダ移動機構22は、ボールねじ、およびリニアモータを含む。
【0062】
チップトレイ21には、液晶表示パネル1との接合のために用いられるドライバIC5(ドライバIC5b)が予め並べられている。たとえばロボットアーム(図示せず、以下同じ)によりチップトレイ21からドライバIC5bが取り上げられる。シリンダ20は、シリンダ移動機構22によりチップトレイ21の位置まで移動し、ロボットアームからドライバIC5bを受ける。後述するようにシリンダ20の内部には、TCP2を真空吸着するための真空吸着部が設けられ、加圧ヘッド25には真空吸着孔が形成される。これによりシリンダ20はドライバIC5bを真空チャックする。そして、シリンダ20は、液晶表示パネル1の位置に戻る。
【0063】
なお、上述したロボットアームがドライバIC5bを液晶表示パネル1の位置まで直接運んでもよい。このようにドライバIC5(ベアチップ)をチップトレイ21から液晶表示パネル1まで運ぶための方法および手段は特に限定されない。
【0064】
接合装置100は、さらに、ドライバIC5およびACF10を加熱するためのレーザ光を発するレーザ装置31を備える。レーザ装置31はその内部に複数のレーザ光源32を含む。レーザ光源32から発せられるレーザ光のパワー、およびレーザ光源32の個数は、たとえばACF10の加熱および硬化に求められる条件に基づいて適切に定められる。
【0065】
接合装置100は、さらに、複数の光ファイバ33と、レーザ冷却装置34と、レーザ制御部35と、電源装置36と、ファイバ中継器40と、複数の光ファイバ41とを備える。複数の光ファイバ33は、複数のレーザ光源32に対応してそれぞれ設けられる。各光ファイバ33は対応するレーザ光源32から発せられたレーザ光を伝達する。
【0066】
レーザ冷却装置34は、レーザ装置31を冷却することによってレーザ装置31の温度を一定に保つ機能を実現する。これによりレーザ装置31から出力されるレーザ光のパワーを安定させることが可能になる。なお、冷却方式は特に限定されず、たとえばファンによる空冷でもよいし、水冷でもよい。
【0067】
レーザ制御部35は、レーザ冷却装置34を制御するとともに、複数のレーザ光源32の出力を制御する。たとえばレーザ制御部35は、レーザ光源32の温度が予め定められた制限温度以下であれば、レーザ光源32に対してレーザ光の出力を継続させ、レーザ光源32の温度がその制限温度を超えた場合には、レーザ光源32に対してレーザ光の出力を停止させる。
【0068】
本実施の形態では、レーザ光源32は半導体レーザである。電源装置36は、半導体レーザに電流を供給することにより半導体レーザからレーザ光を出力させる。また、電源装置36は、接合装置100の他の装置に対しても電源電圧を供給する。
【0069】
ファイバ中継器40は、複数の光ファイバ33からの光を複数の光ファイバ41に伝達するために設けられる。なお、光ファイバ33の本数と光ファイバ41の本数とは同じでもよいし異なっていてもよい。たとえば2本の光ファイバ33の各々からの光を光結合器により1本の光ファイバ41に結合することによって、その光ファイバ41を伝播する光のパワーを高めることができる。
【0070】
また、レーザ光を伝送する光伝送路(すなわち光ファイバ)の途中にファイバ中継器40を設けることにより、たとえば複数の光ファイバ33のいずれかを交換する必要が生じた場合にも、交換作業を容易にすることができる。すなわちファイバ中継器40によって、接合装置100の保守作業を容易にすることが可能になる。
【0071】
接合装置100は、さらに、レーザ光保護カバー38と、複数のレンズ42と、複数のレンズホルダ43と、フィクスチャ45とを備える。
【0072】
レーザ光保護カバー38は、接合装置100の周囲にレーザ光が漏れるのを防ぐために設けられる。
【0073】
複数のレンズ42は、複数の光ファイバ41に対応してそれぞれ設けられる。複数のレンズ42の各々はコリメートレンズである。レンズ42によって、そのレンズに対応する光ファイバ41の一端から出力されたレーザ光は平行光となる。
【0074】
複数のレンズホルダ43は複数のレンズ42にそれぞれ対応して設けられる。各レンズホルダ43は、対応するレンズ42および対応する光ファイバ41の一端を固定する。これにより、レンズ42と、光ファイバ41とを予め定められた配置に従って設置することが可能になる。レンズ42と光ファイバ41とは平行光が出射されるように配置される。
【0075】
フィクスチャ45は、所定単位数(たとえば8つ)のレンズホルダ43を一列に並べて固定するためのものである。したがって各フィクスチャ45に設けられた複数のレンズ42(各レンズ42はレンズホルダ43により固定される)から、一列に並んだ平行光の列が出射される。
【0076】
接合装置100は、さらに、複数のフィクスチャ45を支持するための支持部材51と、支持部材51を前後方向(Y方向)に移動させるためのスライドレール52と、スライドレール52が敷設され、かつ、移動可能な支持部材51の外側に配置された固定部53と、固定部53の上面に設置されたバックアップ基板55と、X方向に移動可能に固定部53に取り付けられたX方向可動遮光部材56と、バックアップ基板55に接した状態で設置されたY方向遮光部材57とを備える。なお、バックアップ基板55は、固定部53の上面に動かないように固定されている。
【0077】
接合装置100は、さらに、カメラ60と、カメラ60を動かすためのアーム62を備える。カメラ60は、液晶表示パネル1(パネル基板)の引出電極と、対応するドライバICのバンプ電極とが対向した状態において、バックアップ基板55および液晶表示パネル1を介して、引出電極およびバンプ電極を撮影する。カメラ60によって撮影された画像は引出電極に対するバンプ電極の位置合わせを行なうために用いられる。
【0078】
ACF10の加熱のためにレンズ42からレーザ光が出射するときには、アーム62によって、カメラ60はレーザ光の光路上の位置から退避させられる。したがってカメラ60によってレーザ光が遮られるのを防ぐことができる。なおアーム62の移動方向は特定されず、たとえばX方向に沿って動いてもよいし、XY平面内で回転してもよい。
【0079】
接合装置100は、さらに、制御装置70と、モータドライバ75と、表示装置80とを備える。制御装置70は、接合装置100全体を制御する。モータドライバ75は、制御装置70の指令に応じて、シリンダ移動機構22に設けられたモータ(上述の例ではリニアモータ)および、アーム62を動かすためのモータ(図示せず)を駆動する。
【0080】
表示装置80は、たとえばカメラ60が写した画像、ユーザの入力する指示、接合装置100の現在の稼動状況等の各種情報を表示する。なお、表示装置80は、タッチパネルディスプレイのように入力装置を兼ねてもよい。あるいは、マウスやキーボード等の入力装置が接合装置100に接続され、ユーザがその入力装置を操作した結果が表示装置80に表示されてもよい。
【0081】
図5は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第1の図である。
【0082】
図6は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第2の図である。
【0083】
図5および図6を参照して、レーザ光照射部は、複数のレーザ光源32を備える。本実施の形態では、エネルギー効率、および実装領域(すなわちACF10におけるレーザ光の照射領域)の大きさを考慮して半導体レーザがレーザ光源32に用いられる。
【0084】
本実施の形態では、レーザ光の波長は、600nm〜1100nmの範囲内から選択される。この範囲の波長の光は、バックアップ基板55と液晶表示パネル1とACF10の主材料である樹脂(たとえばエポキシ樹脂)とを透過しやすく、かつ、TCP2に搭載される半導体チップ(あるいはベアチップ)の主材料である単結晶シリコンやTCP2のキャリアテープの主材料であるポリイミドにより吸収されやすく、かつ、配線パターンの主材料であるアルミニウムにより吸収されにくい。これによりACF10のみならずシリコンチップ(またはキャリアテープ)もレーザ光によって加熱される。したがって、ACF10の自身の発熱だけでなくシリコンチップ(またはキャリアテープによる加熱によってACF10を加熱できるので、レーザ光をACFの加熱に有効的に活用できる。なお、波長スペクトルの幅は狭いほど好ましい。
【0085】
レーザ光源32からの光は光ファイバ33を伝播する。光ファイバ33と光ファイバ41とはファイバ中継器40により光学的に結合される。
【0086】
ファイバ中継器40は、光ファイバ33と光ファイバ41とを接続するための入力コネクタ47および出力コネクタ48を含む。光ファイバ33の端部は入力コネクタ47に挿入され、光ファイバ41の端部は出力コネクタ48に挿入される。入力コネクタ47と出力コネクタ48とが接続されることにより、光ファイバ33と光ファイバ41とが光学的に結合される。
【0087】
光ファイバ33、41は、レーザ光源から出たレーザ光がACF10に向かう向きに進行するように、そのレーザ光を導くためのものである。レーザ光源32から出たレーザ光は光ファイバ33,41を伝播し、レンズホルダ43に固定されたレンズ42により平行な光線に調整される。なお、1つのフィクスチャ45に設けられた複数のレンズ42の各々によりコリメートされたレーザ光は、互いに平行、かつ重なりあう光ビームとなる。
【0088】
フィクスチャ45はレンズホルダ43の傾きを調整できるよう構成される。たとえば図5に示すように、フィクスチャ45は、支持部材51とフィクスチャ45との間に設けられた棒状の回転軸54を中心にフィクスチャ45を回転させることにより、その傾きを調整できる。各フィクスチャ45の傾きは、各フィクスチャ45に設けられたレンズからのレーザビームLBがACF10において集まるように設定される。X方向可動遮光部材56により、複数のレンズ42から出射されたレーザビームLBの一部は遮られる。
【0089】
なお回転軸54等はフィクスチャ45の傾きの調整を実現するための構成の一例として図5に示したものである。したがってフィクスチャ45の傾きを調整するための構成は図5に示したものに限定されない。
【0090】
温度検出部64はACF10の温度を測定するためのものである。ここで、物体は加熱の有無に関わらず、それ自身が温度に応じた波長を有する電磁波を輻射している。したがって、その物体から輻射される電磁波を検出することによって物体の温度を非接触で計測できる。本実施の形態では温度検出部64として、物体から輻射される電磁波の強度または波長を検出できるものが使用できる。具体例を挙げると、たとえば温度検出部64には、サーモパイル、熱線カメラ、フォトダイオードなどを用いることができる。
【0091】
バックアップ基板55は、液晶表示パネル1を支持するためのものである。従来のヒータツール方式(加熱されたヘッドによりACFを加圧する方式)では、バックアップ基板は圧着する際に変形がほとんど生じないような剛性を有する材料で構成されていればよい。したがって従来のバックアップ基板は不透明な物体でもよい。しかしながら本実施の形態では、カメラ60(図4参照)がバックアップ基板55を通して液晶表示パネルの電極およびドライバIC5の電極を撮影するとともに、その撮影された画像に基づいて、ドライバIC5の位置決めが行なわれる。さらに、バックアップ基板55は、レーザ光(レーザビームLB)を透過させなければならない。また、ACF10を介したドライバIC5と液晶表示パネル1の接合の際には、加圧ヘッド25(図4参照)によってドライバIC5に圧力が加わるので、バックアップ基板55は剛性を有さなければならない。したがってバックアップ基板55は剛性が高く透明な材質で形成される。このような要件を満たすためのバックアップ基板55の材料としては、石英ガラスが好ましい。
【0092】
なお、バックアップ基板55の表面55c(レーザビームLBの入射面)には、減反射コーティングが行なわれていることが好ましい。これにより、バックアップ基板55を透過するレーザ光の光量を増やすことができるので、ACF10に照射される光のパワーを高めることができる。したがって、ACF10の温度を短時間で目的の温度まで上昇させることが可能になる。
【0093】
ただし、減反射コーティングされたバックアップ基板55を透過する光の波長は、減反射コーティングされていないバックアップ基板55を透過する光の波長に対して赤方シフトする可能性がある。したがってバックアップ基板55の表面55cに減反射コーティングが行なわれている場合、カメラ60としては赤外線側での解像度が高いものを用いることが好ましい。これによりバックアップ基板55の表面に減反射コーティングがなされていても、液晶表示パネル1の電極およびドライバIC5の電極をカメラで撮影できるので互いの電極の位置合わせを精度良く行なうことが可能になる。
【0094】
電源装置36は、レーザ制御部35の指令に応じてレーザ光源32(半導体レーザ)に印加する電流値を制御する。図示しないが、電源装置36はたとえばトランジスタに代表される、制御信号に応じた電流を流す電流制御素子が設けられている。
【0095】
温度検出部64は、検出したACF10の温度を示す信号を信号線65、信号コネクタ66,67を介して温度算出部68に出力する。温度算出部68は、温度検出部64からの信号に基づいて、ACF10の温度を算出する。そして温度算出部68は、その算出結果、すなわちACF10の温度の情報を温度制御部69に出力する。
【0096】
温度制御部69は、温度算出部68が送信したACF10の温度の情報に基づいて、レーザ制御部35に指示を送る。この指示は、レーザビームのパワーを上げるための指示、レーザビームのパワーを下げるための指示を含むものである。なお温度制御部69は、接合装置100の全体の動作を制御する制御装置70によって制御される。
【0097】
図7は、フィクスチャ45および温度検出部64の配置を説明する、X方向から見た図である。
【0098】
図7を参照して、複数のフィクスチャ45は、各フィクスチャ45に設けられた複数のコリメートレンズがX方向に一列に並べられており(図4等に示すレンズ42、図7には示さないが紙面に垂直方向に並んでいる)、各々出射されるレーザビームの列が光がバックアップ基板55上、好ましくは、バックアップ基板55上に置かれた液晶表示パネル1の上面で集まるように配置される。これによって、各フィクスチャ45に設けられた複数のレンズから発せられる平行光列(レーザビーム列)をACF10に集中させることができる。よって、高パワーの光をACF10に吸収させることにより、高速にACF10を加熱することができる。
【0099】
具体的には、複数のフィクスチャ45は、バックアップ基板55における平行光の集光位置(すなわちバックアップ基板55の上面での所定の位置)を中心としてX方向に垂直な断面において扇状に配置される。
【0100】
なお、各フィクスチャ45に配置された複数のレンズ(たとえば8個のレンズ)は、X方向(紙面垂直方向)に等間隔で配置される。これによりバックアップ基板55ではその複数のレンズからそれぞれ出射した複数のレーザビームが均一のピッチで整列する。
【0101】
図8は、バックアップ基板55上でのレーザ光の照射領域を説明する図である。図8を参照して、コリメートされたレーザビームはバックアップ基板55の上において、互いに重なり合う円形のスポット(破線で示す)を形成する。複数のスポットは均一のピッチで並んでいる。スポットが重なりあうことによりACFに照射される光のパワーを高くすることができる。なお、スポットが重ねられた領域の両端の部分は、中央部分に比べて光のパワーが小さい(なぜなら重なりあうスポットの数が少ない)。この部分はACFの加熱には用いられないため、X方向可動遮光部材56によって予めカットされる。
【0102】
レーザ光の照射領域ARのX方向の長さは、X方向可動遮光部材56をX方向に移動させることにより調整される。
【0103】
また、図8を参照して、Y方向遮光部材57(厳密には、後述する図9、図10等に示されるバックアップ基板55の傾斜面55a)によって照射領域ARのY方向の長さが調整される。後述するように、Y方向遮光部材57自体は移動しないものの、レンズが設けられたフィクスチャを一体にしてY方向に移動させることによって、相対的にY方向遮光部材57が移動する。したがって、照射領域ARのY方向の長さを変えることができる。
【0104】
X方向可動遮光部材56およびY方向遮光部材57によって定められる照射領域ARの最大サイズが、パネル基板に実装可能なドライバICの最大サイズとなる。
【0105】
なお、ドライバICの形状は長方形であることが多い。その長方形の長軸方向がX方向に対応し、短軸方向がY方向に対応する。
【0106】
Y方向遮光部材57は、XY平面に対して傾斜した傾斜面57aを有する。すなわちY方向遮光部材57におけるACF10側の平面57bと傾斜面57aとによって形成される稜部はナイフエッジ状である。
【0107】
なお、バックアップ基板55も、この傾斜面57aに接する(XY平面に対する傾斜角度が傾斜面57aの傾斜角度と同一である)傾斜面を有する。なお、この傾斜角度は、図中において、いずれのフィクスチャからのレーザビームの一部もしくは全部がその傾斜面にあたった場合に、全反射するように、もしくは、傾斜面を透過した後にその上に配置されるACF等に入射しないような屈折を考慮した角度に定められる。さらにこの傾斜面の傾斜角度は、扇状に配置されたフィクスチャのうち最もY方向負側に位置するフィクスチャ(符号45aにて示す)から出射されるレーザビームがバックアップ基板55へ向かう方向と比べて、よりY方向に沿うような角度に定められる。これにより、バックアップ基板55上の傾斜面57によって遮られる部分を除く位置へ向けて出射されるレーザビームについては、いずれのフィクスチャからのレーザビームも同様に傾斜面57aにけられることなくバックアップ基板55上へ到達可能となり、Y方向の位置が負によったフィクスチャがより多くレーザビームを、けられるような事態を回避できる。
【0108】
なお、傾斜面は粗面としてもよい。この場合は、レーザビームの一部もしくは全部がその傾斜面にあたった場合、拡散されて弱まるため、前述のように、全反射角度、もしくは、傾斜面を透過した後にその上に配置されるACF等に入射しないような屈折角度を考慮する必要性はなくなる。
【0109】
傾斜面57aにより切り欠かれた位置に勘合するように、Y方向遮光部材として機能するためのセラミック部材による遮光用ナイフエッジがバックアップ基板55と上面を等しくして配置される。
【0110】
温度検出部64はACF10の斜め下方に設けられる。また、ACF10におけるレーザ光の照射領域の複数の箇所の温度を検出するため、温度検出部64は複数設けられる。なお図示しないが、温度検出部64には上述したサーモパイル(熱線カメラ、あるいはフォトダイオードでもよい)が設けられる。
【0111】
温度検出部64の前面、すなわちACF10から輻射される電磁波が入射する面にはフィルタ64fが設けられる。このフィルタ64fは散乱した(あるいは反射した)レーザ光を透過させず、かつACF10から輻射される電磁波のみを透過させるために設けられる。たとえばフィルタ64fは、1.2μm〜1.5μmの波長帯の電磁波を透過するよう構成されたフィルタである。
【0112】
フィルタ64fの前方には筒64bが取り付けられる。筒64bによって、ACF10から輻射される電磁波の指向性を制御できる。
【0113】
なお、散乱した(あるいは反射した)レーザ光等の外乱の影響がない場合、温度検出部64をバックアップ基板55の下部に設けることも可能である。ただしこの場合にはバックアップ基板55の材質として、通常の石英に比較して水酸基が少ない無水石英が特に好ましい。ACF10の加熱時にACF10の温度は、たとえば250℃程度に達する。この場合、ACF10からは、波長が2μmより長い電磁波が輻射される。バックアップ基板55の材質を無水石英とすることによって、水酸基の吸収帯に相当する2.5μm付近の波長帯での光の吸収を抑えることができるので、精度のよい温度検出が可能になる。
【0114】
図9は、本実施の形態に従う接合装置100に含まれるビーム整形部の構成を説明するための図である。
【0115】
図9(a)は、X方向可動遮光部材を説明する図である。
図9(b)は、Y方向遮光部材を説明する図である。
【0116】
図9(a),図9(b)を参照して、レーザビームLBのX方向の整形はX方向可動遮光部材56によって実現される。つまりACF10におけるレーザ光(レーザビームLB)の照射領域のX方向の長さは、X方向可動遮光部材56によって調整される。
【0117】
一方、レーザビームLBのY方向の整形は、Y方向遮光部材57として、バックアップ基板55側の傾斜面(Y方向遮光部材57の傾斜面57aに接する傾斜面55a)と傾斜面57aにより切り欠かれた位置に勘合するセラミック部材による遮光用ナイフエッジとのいずれか、あるいは両方によって実現される。すなわちバックアップ基板55は、液晶表示パネル1の指示部材として機能するのみならず、レーザビームLBのY方向の整形を行なうためのシャッターとしても機能する。なお、図7、図9を参照すれば分かるように、傾斜面55aは、バックアップ基板55においてZ方向(液晶表示パネル1に対向する上面と反対側に位置する下面から、その上面に向かう向き)に対し、Y方向に傾いた斜面である。
【0118】
図7に示すように、フィクスチャ45はX方向の軸を中心にZ軸方向に傾けられる。仮にバックアップ基板55の下方でレーザビームのY方向の整形が行なわれた場合、ACF10におけるレーザビームの照射領域のY方向の精度が確保できない可能性が高くなる。このため、ACF10に極めて近い位置、すなわち、バックアップ基板55の上面においてレーザビームのY方向の整形を行なうことにより、照射領域のY方向の精度を確保できる。
【0119】
傾斜面55aは、たとえばサンドブラストあるいはエッチング等の加工によって粗面(砂面、あるいは梨地とも言い換えることができる)となっている。傾斜面55aに達したレーザ光が、たとえば傾斜面55aからバックアップ基板55の外側に出射される場合、そのレーザ光は傾斜面55aにおいて散乱(拡散)する。さらにバックアップ基板55の外側に散乱した光は、Y方向遮光部材57により多重散乱したり、Y方向遮光部材57に吸収されたりする。液晶表示パネル1には偏光板7等の熱に弱い部品が設けられている。Y方向遮光部材57によって、このような熱に弱い部品に高パワーのレーザ光が照射されるのを回避できる。
【0120】
なお、Y方向遮光部材57のエッジの位置Pe(すなわちナイフエッジの先端の位置)は、シリコンチップ(ドライバIC5)のエッジと同じ位置か、またはシリコンチップ側に入り込んだ位置である。また、バックアップ基板55の上面はY方向遮光部材57の上面(平面57b)と同じ高さ、あるいはY方向遮光部材57の上面よりも高い位置である。
【0121】
X方向可動遮光部材56およびY方向遮光部材57はたとえばセラミックにより形成される。
【0122】
図10は、バックアップ基板55によるレーザビームのY方向の整形を説明するための模式図である。なお図10では、説明の便宜上、傾斜面55aを平面として表す。
【0123】
図10を参照して、光ファイバ41を伝達したレーザ光はレンズホルダ43に設けられたレンズ42から出射され、空気とバックアップ基板55との界面で屈折する。そのレーザ光は、バックアップ基板55の内部を進み、傾斜面55aに達する。傾斜面55aの垂線に対するレーザ光の入射角θは全反射角よりも大きいため、レーザ光は傾斜面55aで全反射する。
【0124】
図11は、レーザ光源32として用いられる半導体レーザを説明するための図である。図11を参照して、半導体レーザには、マルチエミッタ型の半導体レーザ、シングルエミッタ型の半導体レーザの2種類がある。図11(a)は、マルチエミッタ型の半導体レーザを示す図である。図11(a)を参照して、半導体レーザ32aはレーザ光を出力するための複数のエミッタEMを有する半導体チップである。したがって1つの半導体チップから出力される光のパワーを大きくすることができる。
【0125】
図11(b)は、マルチエミッタ型の半導体レーザに生じると考えられる問題点を説明する図である。図11(b)を参照して、複数のエミッタEMの1つ(あるいはその周辺の領域)にダメージ(たとえば結晶欠陥が考えられる)などが生じた場合に、そのダメージが他のエミッタに伝達することが考えられる。
【0126】
図11(c)は、シングルエミッタ型の半導体レーザを示す図である。図11(c)を参照して、半導体レーザ32bは、1つのエミッタEMを有する。たとえば多くの半導体レーザチップでは、結晶のへき開面からレーザ光を出力するよう構成されている。このような半導体レーザチップでは、対向する2面が、へき開面である。したがって、その2面の両方からレーザ光が出力される。ただし、出力光として取り出されるのは、その2面の一方から出た光である。したがって、本実施の形態では、結晶のへき開面からレーザ光を出力する半導体レーザをシングルエミッタ型の半導体レーザに含むものとする。
【0127】
シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、個々の半導体レーザから出力される光のパワーは、マルチエミッタ型の半導体レーザから出力される光のパワーよりも小さい。したがって、シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、マルチエミッタ型の半導体レーザに比較して、ACFを加熱するに必要なパワーを得るために必要な個数は多くなると考えられる。ただし、シングルエミッタ型の半導体レーザの場合、複数のレーザ光源32のいずれか1つが故障しても対象のレーザ光源のみ交換すればよいため保守性に優れる。また、複数のレーザ光源32の間で出力光のパワーがばらついたとしても、複数のレーザ光源32を個別に制御する(レーザ光源32ごとに駆動電流を制御する)ことが可能である。つまり、エミッタ単位で光出力を制御できる。これにより、均一かつ接合に十分なパワーのビームを生成することが可能になる。したがって本実施の形態ではレーザ光源としてシングルエミッタ型半導体レーザを用いる。
【0128】
図12は、図4に示す加圧ヘッド25を説明するための図である。
図12(a)は、加圧ヘッド25およびその周辺の構成を示す模式図である。図12(a)を参照して、加圧ヘッド25は、シリンダ20の先端に設けられた押さえ部材25a,25bを含む。押さえ部材25a,25bは、ドライバIC5の主材料であるシリコンよりも熱伝導度の低い材料が用いられる。シリコンよりも熱伝導度の低い材料を押さえ部材25a,25bに用いることによって、ドライバIC5の熱がシリンダ20に逃げるのを抑制できる。これによりドライバIC5の温度低下を防ぐことができるので、ドライバIC5(シリコンチップ)の下に設けられたACF10の温度低下も防ぐことができる。
【0129】
また、ドライバIC5に圧力を加えるため、押さえ部材25a,25bは適度な硬度を有する材料により形成されることも必要である。以上の点から、押さえ部材25a,25bの材料は、セラミック、石英、ガラスを含む材料の中から選ばれる。
【0130】
複数の吸着孔23は、押さえ部材25a,25bを貫通するように形成される。真空吸着部77は、複数の吸着孔23を介して対象物であるドライバIC5を真空吸着する。したがってドライバIC5の表面(バンプ電極が形成された面と反対側の面)は押さえ部材25aに密着する。ドライバIC5を押さえ部材25aに密着させることによって、ドライバIC5に加えられる圧力を、押さえ部材25aに接触するドライバIC5の接触面内で均一にすることができる。
【0131】
ドライバIC5の表面に圧力を均等に加えることによって、液晶表示パネル側の電極の位置に対してドライバIC側の電極の位置がずれるという問題を防ぐことが可能になる。これにより高精度に接合を行なうことができる。
【0132】
なお、真空吸着部77は図示しない制御装置70によって制御される。また、真空吸着部77は、真空吸着の終了時には、たとえば吸着孔23に圧縮空気を供給することにより、吸着孔23の圧力を大気圧に戻す。
【0133】
複数の吸着孔23の各々にはバルブ24が設けられる。真空吸着部77は、ドライバICのサイズ(チップサイズ)に対応して使用する吸着孔23を決定する。使用される吸着孔23に設けられたバルブ24は開状態となり、使用されない吸着孔23に設けられたバルブ24は閉状態となる。真空吸着部77は、ドライバICのサイズに対応して、開状態のバルブと、閉状態のバルブとを決定する。
【0134】
図12(b)に示されるように、押さえ部材25aの底面はドライバICの表面よりも大きい。したがってドライバICのサイズに応じて、開状態のバルブと、閉状態のバルブとを決定できる。
【0135】
なお押さえ部材25aの底面とドライバICの表面とが同じ大きさであってもよい。図12(c)は、押さえ部材25aおよびドライバIC5のX方向の長さを説明するための図であり、図12(d)は、押さえ部材25aおよびドライバIC5のY方向の長さを説明するための図である。図12(c)および図12(d)に示されるように、押さえ部材25aの底面とドライバICの表面とは同じ大きさである。ただし、押さえ部材25aの底面がドライバICの表面とずれた場合に、ドライバIC5の表面に圧力が均等に加わらないことが考えられる。したがって、図12(b)に示すように、押さえ部材25aの底面がドライバICの表面より大きいほうが好ましい。
【0136】
図13は、本実施の形態に従う接合装置100の制御系を説明するためのブロック図である。
【0137】
図13を参照して、レーザ制御部35、温度算出部68および温度制御部69は制御装置70の直接的または間接的な指示に応じて動作する。
【0138】
レーザ制御部35は、温度検出回路35aと、制御回路35bと、メモリ35cと、インターフェイス(図13ではI/Fと示す)回路35dとを含む。温度検出回路35aは、複数のレーザ光源32の各々の温度または全体の温度(たとえば雰囲気温度)を検出して、その検出した温度を制御回路35bに出力する。メモリ35cは、レーザ光源32を動作させるための情報を記憶する。この情報は、たとえば、複数のレーザ光源32の各々の動作温度、または全体の温度の上限値の情報、レーザ光源の動作電流値と光出力との関係を示す情報などを含む。
【0139】
制御回路35bは、メモリ35cから動作温度の上限値の情報を読み出すとともに、温度検出回路35aの検出結果(現在の動作温度)を受ける。制御回路35bは、現在の動作温度が上限値を超える場合には、電源装置36を制御することにより、たとえば複数のレーザ光源32の全部または一部による光出力を停止するなど、各レーザ光源を駆動する条件を独立に制御する。なお、レーザ光源32の動作温度が上限値を超えないようにレーザ光源32はレーザ冷却装置34により冷却される。
【0140】
また、制御回路35bは、インターフェイス回路35dから、ACF10のある部分または全体に照射されるレーザ光のパワーを上げるための指示(またはレーザ光のパワーを下げるための指示)を受ける。制御回路35bは、その指示に応じて、電源装置36を制御することにより、複数のレーザ光源32の一部または全部に供給される電流を増やしたり減らしたりするなど、各レーザ光源を駆動する条件を独立に制御する。この制御は、各レーザ光源32が出射するレーザ光の強度を、時間に対して一定にする制御、あるいは時間的に変化させる制御を含む。
【0141】
この構成によれば、おのおの独立した駆動条件で制御可能なレーザ光源からの光を、ファイバ、レンズ等の光学系を介して、図8に示すような、バックアップ基板55上の一定の領域に対して、異なる位置に照射される複数のレーザビームの集まりとして照射するので、この領域に照射されるレーザビームの強度分布および時間的な強度の変化を制御することが可能となる。
【0142】
温度算出部68は、温度検出部64に設けられた複数の温度センサ64a(たとえば図13に示すように3個の温度センサ64a)の各々から出力される信号を受ける。温度算出部68は、A/D(アナログ−デジタル)変換回路68aと、演算回路68bと、メモリ68cと、インターフェイス回路68dとを含む。A/D変換回路68aは、温度センサ64aから受けた信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。メモリ68cは、温度と、デジタル信号が示す数値との対応関係を示す情報を記憶する。演算回路68bは、メモリ68cから、温度とデジタル信号が示す数値との対応関係の情報を読み出すとともに、A/D変換回路68aからのデジタル信号を受ける。そして演算回路68bは、現在のACF10の温度を算出し、その算出結果をインターフェイス回路68dに出力する。インターフェイス回路68dはその温度の情報を温度制御部69に出力する。なお、演算回路68bからインターフェイス回路68dに出力される温度の情報は、複数の温度センサ64aの各々が検出した温度の情報である。
【0143】
温度制御部69は、演算回路69aと、インターフェイス回路69b,69cとを含む。インターフェイス回路69bは、インターフェイス回路68dから出力された、ACF10の温度の情報を受けるとともに、その情報を演算回路69aに出力する。
【0144】
演算回路69aは、インターフェイス回路69bから受けた情報に基づいて、ACF10の温度分布に関する情報を生成する。そして演算回路69aはその温度分布情報に基づいて、ACF10の面内において、その温度を高くする(あるいは低くする)必要がある部分を特定する。なお、たとえばACF10の温度が全体的に低い場合には、演算回路69aはACF10の面内のすべての部分において温度を高くする必要があると判定する。そして演算回路69aは、その演算結果をインターフェイス回路69cに出力する。
【0145】
インターフェイス回路69cは、演算回路69aの演算結果をレーザ制御部35に出力する。インターフェイス回路69cから出力された情報は、インターフェイス回路35dによって受信され、インターフェイス回路35dから制御回路35bに送られる。
【0146】
制御装置70は、温度制御部69(演算回路69a)からACF10の温度分布に関する情報を受けるとともに、温度制御部69に対して動作/停止を指示する。たとえば制御装置70は、ACF10の温度分布に関する情報を表示装置80に出力して、表示装置80にその情報を表示させる。
【0147】
さらに、制御装置70は、カメラ60(図4参照)が取り付けられたアーム62を移動させるためのアーム移動装置62aを制御する。アーム移動装置62aはたとえばモータ、ギヤ、図4に示すモータドライバ75等から構成される。すなわち図13に示すアーム62およびアーム移動装置62aは、カメラ60を移動させるためのカメラ移動機構を構成する。
【0148】
さらに、制御装置70は、フィクスチャ45が取り付けられた支持部材51(図4参照)をY方向に移動させるための光学系移動装置51aを制御するとともに、X方向可動遮光部材56をX方向に動かすためのX方向可動遮光部材駆動部56aを制御する。これにより、レーザビームがACF10において所定の形状に整形される。さらに、制御装置70は、真空吸着部77の動作を制御する。
【0149】
記憶装置82(たとえばハードディスク)は、制御装置70が実行するプログラム、制御装置70の処理結果等を不揮発的に記憶する。
【0150】
[接合処理]
図14は、液晶表示パネル1と実装部品とをACF10を介して接合する接合処理の全体を説明するためのフローチャートである。なお、以下の説明では「実装部品」としてICドライバ5(ベアチップ)を例示するが、「実装部品」がTCP、その他接合可能な電子部品である場合にも同様の処理が実行される。
【0151】
図14を参照して、処理が開始されると、まずステップS1において、液晶表示パネル1が搬入される。次にステップS2において、液晶表示パネル1のガラス基板に設けられた引出電極(以下ではパネル電極とも呼ぶ)のクリーニング処理が行なわれる。続いてステップS3において、接続材料であるACFの位置決めが行なわれ、ACFがその決められた位置に貼付けられる。
【0152】
ステップS4において、液晶表示パネル1への実装部品すなわちICドライバ5がシリンダ20等によってチップトレイ21からピックアップされる(図4参照)。
【0153】
ステップS5において、カメラ60が取り付けられたアーム62がバックアック基板55の下部にスライドインする。図13に示されるように、制御装置70がアーム移動装置62aを制御することによって、アーム62が移動する。これによりカメラ60がバックアック基板55の下部の所定の位置まで移動する。
【0154】
ステップS6において、カメラ60は、バックアップ基板55および液晶表示パネル1のガラス基板を介してパネル電極およびドライバIC5のバンプ電極とを撮影する。カメラ60が撮影した画像に基づいて、パネル電極に対する実装部品(より特定的にはバンプ電極)の位置決めが行なわれ、パネル電極とバンプ電極とで対応する電極同士の位置合わせが行なわれる。
【0155】
ステップS7において、シリンダ20が降下することにより加圧ヘッド25が降下する。これによりドライバIC5(およびACF10)が加圧され、ACF10が、液晶表示パネル1とドライバIC5との間に挟みこまれる。
【0156】
ステップS8において、レーザ光がACF10に照射される。これによりACF10が加熱され、ACF10の温度がある温度に達すると、ACF10中の接着剤が流動化する。さらにACF10は加圧されているので、ACF10の内部ではミクロパーティクル同士が接触する。これによりドライバIC5の電極とパネル電極とがミクロパーティクルを介して電気的に接続される。さらに、ACF10の加熱を続けることにより接着剤(ACF)が硬化する。なお、このステップS8においてドライバIC5に加えられる圧力は一定でも良いし、適宜変化しても良い。
【0157】
ステップS9において、シリンダ20(加圧ヘッド25)が上昇する。これにより、ドライバIC5(ACF10)の圧力が開放される。
【0158】
ステップS10において、実装部の検査が行なわれる。この検査は、たとえば電気的な接続の検査、外観検査等である。
【0159】
ステップS11において、次工程(たとえば組立て工程)での処理のために液晶表示パネル1が搬出される。ステップS11の処理が終わると全体の処理が終了する。
【0160】
次に、ステップS8の処理の一部であるレーザ光照射処理についてさらに詳しく説明する。図15は、レーザ光照射処理を説明するためのフローチャートである。
【0161】
図15を参照して、レーザ光照射処理は、実際にレーザ光がACF10に照射される前の段階の処理(ステップS20の処理)と、レーザ光がACF10に照射されるときの処理(ステップS21〜S27の処理)とに大別される。
【0162】
ステップS20の処理についてまず説明する。ステップS20は、サブステップであるステップS20A〜S20Eを含む。ステップS20Aにおいて、ACF10の表面における目標の温度分布と、加熱時間とが設定される。たとえばユーザが入力装置に、これらの情報を入力する。制御装置70は、入力装置から情報を取得する。これにより温度分布および加熱時間が設定される。なお、これらの情報は、制御装置70から温度制御部69(図13参照)に送られてもよい。
【0163】
図15および図13を参照して、ステップS20Bにおいて、温度保持フィードバック係数の設定が行なわれる。レーザ光がACF10に照射されている間、制御装置70、温度制御部69、およびレーザ制御部35によって、ACF10の温度を設定温度に保持するためにレーザ光のパワーが調整される。この処理はACF10の温度と設定温度とのずれに基づいて、レーザ光のパワーを制御するフィードバック制御である。この制御においては、レーザ光のパワーの補正量は、ACF10の温度と設定温度とのずれに、ある係数を乗じた値に基づいて算出される。温度制御部69は、ステップS20Bにおいて、その係数を設定する。なお制御装置70がフィードバック係数を設定してもよい。
【0164】
ステップS20Cにおいて、レーザ制御部35は、設定されたフィードバック係数に基づいて、レーザ光の初期の出力値を設定する。ステップS20Dにおいて、レーザ制御部35は、その設定された出力値に基づいて、複数のレーザ光源32のうち、動作対象のレーザ光源を設定する。
【0165】
ステップS20Eにおいて、制御装置70は、X方向可動遮光部材駆動部56aを制御することにより、X方向可動遮光部材56を移動させる。さらに制御装置70は、光学系移動装置51aを制御することにより、Y方向遮光部材57を、フィクスチャ45が固定された固定部53(図4参照)に対して相対的に移動させる。
【0166】
次に、ステップS21において、レーザ制御部35は電源装置36を制御することにより動作対象のレーザ光源32から、設定された出力値(レーザ初期出力値)のレーザ光を出力させる。さらに、温度検出部64に設けられた複数の温度センサ64aは、ACF10の温度を検出する。
【0167】
ステップS22において、温度算出部68は、複数の温度センサ64aの各々の出力を取得する。温度算出部68は、温度センサ64aの出力に基づいてACF10の温度を算出し、その算出結果(ACF10の温度の情報)を温度制御部69に出力する。
【0168】
ステップS23において、温度制御部69は、温度算出部68によって算出されたACF10の温度の情報を受ける。これにより温度制御部69は、ACF10の温度分布の情報を取得する。
【0169】
ステップS24において、温度制御部69は、ステップS20Aで設定された目標の温度分布と、ステップS23において取得した温度分布とを比較する。そして温度制御部69は、これらの温度分布の比較結果をレーザ制御部35に出力する。レーザ制御部35は、その比較結果(温度分布の違い)に基づいて、レーザ光源の出力のフィードバック量を算出する。たとえばレーザ制御部35は、ACF10のある部分において、目標の温度と実際の温度とに差が生じている場合には、その温度差に応じたフィードバック量を算出する。
【0170】
ステップS25において、レーザ制御部35は、算出したフィードバック量に基づいてレーザ光源からの出力を補正する。上述の例の場合には、レーザ制御部35は、目標の温度と実際の温度とに差が生じているACF10の部分にレーザ光を照射するレーザ光源を特定する。そして、レーザ制御部35は、その特定されたレーザ光源の出力をフィードバック量だけ増加させるように、電源装置36を制御する。電源装置36は、そのレーザ光源に供給する電流を増やすことによってレーザ光源の出力を増加させる。
【0171】
ステップS26において、レーザ制御部35は、ACF10の加熱時間(言い換えればレーザ光がACF10に照射される時間)が予め定められた経過時間を上回るか否かを判定する。ACF10の加熱時間が所定の経過時間以下の場合(ステップS26においてNO)、処理はステップS22に戻る。一方、ACF10の加熱時間が所定の経過時間を上回る場合(ステップS26においてYES)、ステップS27において、レーザ制御部35は、レーザ光源32によるレーザ光の照射を完了させる。ステップS27の処理が終了すると全体の処理が終了する。
【0172】
図16は、ベアチップ(ドライバIC5)を液晶表示パネル1に実装する場合におけるレーザ光の照射領域ARの一例を示す図である。
【0173】
図16(a)は、ベアチップ(ドライバIC5)側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。図16(b)は、ベアチップ(ドライバIC5)および液晶表示パネル1の側面側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。
【0174】
図16を参照して、ドライバIC5のバンプ電極5aが液晶表示パネル1のパネル電極1aと重なるようにドライバIC5の位置が決定される。ACF10は、ドライバIC5のバンプ電極5aと、液晶表示パネル1のパネル電極1aとに挟まれる。
【0175】
レーザ光の照射領域ARは、接合対象物の加圧領域を少なくとも包含するよう設定される。接合対象物がドライバICである場合には、加圧領域は、ドライバIC全体となる。したがってレーザ光の照射領域ARは、ドライバIC5の輪郭により定まる領域を包含するように設定される。
【0176】
図14のフローチャートでのステップS8の処理において、この照射領域ARにレーザ光が照射される。レーザ光の照射時には、照射領域ARは、図8に示したように照射位置が異なる複数のレーザビームを足し合わせることによって覆われる。
【0177】
なお、接合対象物の加圧領域(この場合はドライバIC5全体)を少なくとも包含するようレーザ光の照射領域ARが設定されると、ドライバIC5の周囲にもレーザ光が照射される。そこで、本実施の形態では、ドライバIC5の周囲のACFが焦げて不良とならないように、照射領域ARにおけるレーザ光の強度分布を制御する。レーザ光の照射領域ARがドライバICの輪郭により定まる領域より大きくても、ドライバICの輪郭より外側のレーザ光の強度がドライバICの輪郭内のレーザ光の強度に比べて低ければ上記の急速な硬化や焦げ付きの問題は発生しないと考えられる。従って、ここで言うレーザ光の照射領域ARは、接合時におけるACFの流動化および硬化に実質的に影響を与える程度の強度を持つレーザ光の照射領域をさす。
【0178】
図17は、ACF中の接着剤の温度による状態変化の例を説明する図である。図17を参照して、グラフの横軸はACFの加熱開始からの経過時間を示し、グラフの縦軸は温度を示す。なお、この例では、接着剤に含まれる熱反応性樹脂は熱硬化性樹脂であり、加熱によって一旦流動化し、さらに加熱を続けることで硬化する。
【0179】
ACFの温度が接着剤中の反応開始温度(この例では約150℃とする)に達すると、接着剤の流動化が開始される。すなわち接着剤が溶け始める。ACFの温度を250℃まで上昇させて、250℃での加熱を所定時間続ける。これによって、一旦流動化した接着剤は硬化する。接着剤が硬化すると、レーザ光の照射、すなわちACFの加熱が終了する。
【0180】
なお、接着剤に含まれる熱反応性樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、熱可塑性樹脂が溶けた後にレーザ光の照射を終了して樹脂を冷却することで熱可塑性樹脂を硬化させる。
【0181】
発明者らは、このような特性を有する接着剤(以下では、その中に含まれる熱反応性樹脂が熱硬化性樹脂であるとして説明する)を含むACFをレーザ光で加熱して、電子部品と液晶表示パネルとを接合する場合、位置合わせされたドライバIC5のバンプ電極5aと液晶表示パネル1のパネル電極1aとの対ごとにレーザ光を順次照射してACFを硬化することが、機械的、電気的信頼性確保にとって望ましくないことを見出した。
【0182】
上述のように、加圧工程ではACFに含まれる導電性粒子をバンプ電極5aとパネル電極1aとで押し挟みこんだ状態で、ACFに含まれる接着剤を硬化させる必要がある(図3を参照)。しかし、バンプ電極5aとパネル電極1aとからなる複数の電極対に順にレーザ光を照射すると、接着剤が既に硬化した部分と、これから接着剤が溶ける部分とが混在する。既に硬化した接着剤は他の電極対を押し挟む際の妨げとなる。したがって、後からレーザ光を照射して接着した電極対については、導電性粒子の押し挟みが不十分な状態で接着剤が硬化してしまう場合がある。この場合には、ドライバIC5と液晶表示パネル1との接着が不十分となるのみならず、電極同士の電気的接続の信頼性も不十分となる。
【0183】
また、本実施の形態に従う接合方法は、レーザ光をACFに照射することで、高速な接合を実現可能にするものであり、具体的には、ACFの接着剤をレーザ光により急速に溶かすとともに、その溶けた接着剤をドライバICと液晶表示パネルとで急激に押し挟むものである。このため、接合対象物である電子部品の形状によっては、十分な量の接着剤がその外側に押し出されなくなるような接合対象物の外周部分が存在する可能性がある。
【0184】
たとえば電子部品の形状が円形であれば、接着剤が溶けた状態で電子部品を加圧すると、電子部品の外周全体から接着剤が均等に押し出されるため、このような問題は生じにくいと考えられる。しかし、多くの電子部品の形状は多角形(代表的には矩形)であり、その多角形の角部から外部に押し出される接着剤の量が不足しがちな傾向となる。具体的には、電子部品の形状が矩形であれば、その対角線の延長方向に押し出される接着剤の量が少なくなる傾向がある。
【0185】
また、図16に示したように、接合対象物である電子部品(図16ではドライバIC5)の形状が細長い矩形の場合には、その対角線の延長方向に押し出される接着剤の量が不足する傾向が生じるだけでなく、その長手方向の端部から外部に押し出される接着剤の量が不足する傾向も生じる。押し出される接着剤の量が不足している部位では、電子部品の外側と液晶表示パネルとの間の隙間を塞ぐ接着剤の量が少ないため、水分やガスがその隙間に浸入するおそれがある。また接着強度が弱いために、接合された電子部品の信頼性が低くなるという問題も発生する。
【0186】
さらに、熱硬化型樹脂による接着剤の場合、基板および電子部品は、各々に熱が加えられた状態で接着されることになるので、これらが冷えると応力が発生する。つまり、基板および実装部品が冷えた後には、電子部品の接着剤を剥がそうとする力が生じる。これらの理由により、接合された電子部品の信頼性を確保するためには、その電子部品の端部から十分な量の接着剤を電子部品の外側に押し出すことが必要となる。
【0187】
これに対し、従来の接合方法では、高温に保持されたヒータツールバーを実装部品に押し当てることでACF中の接着剤を加熱する。ヒータツールバーからの熱が電子部品を介してACFへ伝導されるのに比較的時間がかかるので、ACF中の接着剤が徐々に溶かされながら押し挟まれる。したがって、十分な量の接着剤を、電子部品の外周全体から電子部品の外側に押し出すことができる。
【0188】
電子部品と液晶表示パネル基板との間で押し挟まれることにより接着剤には高い圧力が印加されるが、電子部品の外側ではその圧力が開放される。このため接着剤は電子部品の外側に最短距離で至る経路の方向に支配的に流れる。本実施の形態のように流動化した接着剤を電子部品の外側に急激に押し出す場合、流動化した接着剤がどちらの方向に流れやすいかを考察することで、加圧領域のある部分から外側に十分な量の接着剤が押し出されないという現象が生じるか否かを予測できる。
【0189】
本実施の形態では、このような接着剤の流れを考慮して、部位ごとに接着剤の溶かし方を制御する。詳細には、本実施の形態では、ドライバIC5(接合対象物)の加圧領域内の角に近い部分(あるいはドライバIC5の長手方向の端部のように、加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長い部分)によって挟み込まれる接着剤が、その加圧領域の重心位置に近い部分によって挟み込まれる接着剤よりも先に溶け、かつ、その加圧領域内の全域の接着剤が溶けた状態となる時間帯が存在するようにレーザ光の強度分布を制御する。ここで、「加圧領域内の角に近い部分」あるいは「加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長い部分」とは、加圧領域が正方形の場合には角の部分に相当し、加圧領域が長方形の場合には、その長方形の短辺側の端部に相当する。
【0190】
このように強度分布が制御されたレーザ光を少なくとも加圧領域に照射することで、ドライバIC5の角部、長手方向の端部から外部への接着剤の押し出し量を十分に確保することができる。したがってヒータツールバーを用いた従来の接合方法と同等もしくはそれ以上の信頼性を確保することが可能となるので、接合の信頼性を高めることができる。
【0191】
図18を参照しながら、長方形の加圧領域における接着剤の流れについてさらに説明する。なお図18は、液晶表示パネル1を通してACF(ACFの貼付領域)およびドライバIC5を見た状態を示している。この場合の加圧領域はドライバIC5全体であるので、その加圧領域の形状は長方形となる。また、図18では、矢印により、接着剤の流れのベクトルを示す。
【0192】
図18(a)は、接着剤の加熱の早期段階における接着剤の流れを模式的に示す図である。図18(a)を参照して、接着剤の加熱の早期段階では、長方形の加圧領域での短辺側の端部(短辺部分)における接着剤のみが溶けた状態となるが、端部で溶けた接着剤は、長方形の水平方向内側に流れることができない。したがって、長方形の短辺側端部で溶けた接着剤は、図中で示した上下方向および長方形の水平方向外側にのみ流れる。
【0193】
図18(b)は、接着剤の加熱の終期段階における接着剤の流れを模式的に示す図である。図18(b)を参照して、接着剤の加熱が進むことで、長方形(加圧領域)の重心位置近傍部分の接着剤も溶ける。ただし、破線の矢印にて示すように、重心位置近傍部分で溶けた接着剤の流れのうち水平方向外側に向かう成分は、長方形の短辺側端部から水平方向内側に向かう成分と相殺される。したがって、長方形(加圧領域)の重心位置近傍部分で溶けた接着剤は水平方向にはほとんど流れずに上下方向に流れる。これに対し、短辺側端部の接着剤は、長方形の水平方向内側にはほとんど流れずに、上下方向、および長方形の水平方向外側に大きく流れる。
【0194】
ここで、「加圧領域の重心位置」とは、たとえば加圧領域の中心である。ただし、重心位置は加圧領域の中心に限定されるものではない。
【0195】
図19は、加圧領域内の重心位置を具体的に例示する図である。図19を参照して、加圧領域が単純な多角形(図19(a)に示すように、たとえば長方形)である場合には、加圧領域の重心位置は、その多角形の中心となる。また、長方形の短辺部分が「加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長い部分」に対応する。
一方、図19(b)に示すように、加圧領域が複雑な形状の場合、その加圧領域を複数の多角形(この例では3つの長方形)に仮想的に区分けする。そして、各長方形の重心位置および「重心位置からの距離が相対的に長い部分」(各長方形の短辺部分)を考慮し、各長方形の短辺部分の接着剤が重心位置近傍部分の接着剤より先に溶けるようにレーザ光の強度分布が制御される。
【0196】
[レーザ光の強度分布の制御]
本実施の形態では、加圧領域を含む照射領域における各々の照射位置を異ならせた複数のレーザビームを、それらレーザビームを合成することでその照射領域全域を覆うように照射する。本実施の形態に係る接合装置および接合方法によれば、ACF中のレーザ光の照射領域の全体(全加工面)が流動化するように、レーザ光の強度および照射時間が制御される。このため、全加工面中の複数の測定箇所の温度が計測(検知)される。レーザ光の強度分布の制御は、その照射領域の温度分布をモニタした結果から得られる照射領域の温度分布に基づき、各レーザビームの強度を制御することで行なわれる。
【0197】
図20は、本実施の形態に係る接合装置および接合方法によって実現される温度制御を説明するための図である。
【0198】
図20(a)は、ACF10における複数の温度測定箇所を説明するための図である。
図20(a)を参照して、長方形のドライバIC5がACF10の上に載せられている。ACF10の温度測定箇所(図中において丸囲みの数字1〜4にて示す)は、長方形の長軸に沿って並んでいる。
【0199】
図20(b)は、図20(a)に示した複数の温度測定箇所における温度の時間変化の例を示した図である。図20(a),図20(b)を参照して、丸囲みの数字1で示した場所、丸囲みの数字2で示した場所、丸囲みの数字3で示した場所、丸囲みの数字4で示した場所の順に、樹脂の流動化および硬化が進む。ACF全体(全加工面)で樹脂が流動化している時間帯とは、これらの測定箇所のすべてにおいて、樹脂が流動化している時間帯に相当する。
【0200】
なお、この温度プロファイルは一例であるが、以下の説明では、このプロファイルに従う制御が行なわれるものとする。本実施の形態に従う接合装置および接合方法では、複数の温度測定箇所(丸囲みの数字1〜4で示した位置)のうち、最も早くACF10が硬化する1箇所(図20では丸囲みの数字1で示した位置)においてACF10が硬化するまでに、残りの箇所における温度がACFの流動化が開始される温度として予め定められた温度(約150℃)に達するように、各レーザ光源から出射されるレーザ光の出力パワーおよび照射時間が制御される。
【0201】
より具体的には、図20に示す温度プロファイルが実現されるように、丸囲みの数字1〜4で示した各位置のレーザ光の強度を制御する。これによって、ドライバIC5の加圧領域内の角に近い部分、あるいはドライバIC5の長手方向の端部によって挟み込まれる接着剤を、その加圧領域の重心位置に近い部分によって挟み込まれる接着剤よりも先に溶かすことができる。さらに、その加圧領域内の全域(ドライバIC5の全体)の接着剤が溶けた状態となる時間帯を作ることができる。
【0202】
図21は、レーザ制御部35によるレーザ光のパワーおよびレーザ光の照射時間の制御を説明する模式図である。図21を参照して、レーザ光のパワーは、レーザ光の照射開始時点から上昇し、ある値に達すると、その値に保たれる。そして、レーザ光の照射開始時点から所定の時間が経過すると、レーザ光のパワーは、次第に低下する。このようにレーザ光のパワーおよび照射時間を予め設定することによって、レーザ光の照射によるACF10の加熱時に、図20に示す温度プロファイルを実現することができる。
【0203】
レーザ制御部35は、図21に示したようなレーザ光のパワーおよび照射時間の条件を各レーザ光源に対応付けて記憶する。そしてレーザ制御部35は、その条件に従って電源装置36を制御することで、図20に示した温度プロファイルを実現する。なお、レーザ光のパワーおよび照射時間の条件は、レーザ光源ごとに異なってもよいし、同一のものであってもよい。
【0204】
また、図21に示した条件は、たとえば、実験などによって決定されるものであり、レーザ光の照射の初期条件に相当する。しかしながら様々な要因によって、初期条件通りにレーザ光を照射したとしても、図20に示した温度プロファイルが得られない可能性が考えられる。したがって、レーザ制御部35は、温度制御部69からの制御指令に応じて、対応するレーザ光源から出射されるレーザ光のパワー(あるいはレーザ光の照射時間)を変化させることで、図20に示した温度プロファイルを実現する。
【0205】
詳細に説明すると、温度検出部64および温度算出部68によって、照射領域の温度分布が測定される。そして、温度制御部69は、その測定された温度分布に基づいて、レーザ制御部35に、照射領域のある部分でのレーザビームのパワーを上げるための指示(あるいはレーザビームのパワーを下げるための指示)を送る。レーザ制御部35は、その指示に応じて、該当部分を照射するレーザ光源32から発せられるレーザビームのパワーが上げる(あるいは下がる)ように、電源装置36を制御する。
【0206】
図22は、本実施の形態に従う温度分布の検出を説明するための図である。
図22を参照して、本実施の形態では、複数(たとえば72個)のシングルエミッタ型の半導体レーザ32bが用いられる。ACFでの温度分布を正確に検出するためには、理想的には、サーモパイル(温度検出部64)の数は半導体レーザと同数である。ただし、本実施の形態では、レーザビームの均一性の観点から、レーザ光が重なるよう半導体レーザ32bが配置されるとともに、サーモパイルの数を半導体レーザ32bの数よりも大幅に少なくする。図22に示されるように、たとえばサーモパイルの個数を5とする。
【0207】
サーモパイルは、ACFから輻射される電磁波の強度に基づき、ACFの温度を検出する。図23は、物体から輻射された電磁波を説明するための図である。なお、温度Tにおいて、波長λの電磁波の黒体輻射強度B(λ)はB(λ)=(2hc/λ)×(1/ehc/λkT−1)と表される(プランク分布)。
【0208】
図23(a)は、25℃、100℃、150℃、250℃の各温度における黒体輻射強度B(λ)を示した図である。図23(a)に示されるプランク分布を用いることにより、サーモパイルに入力される電磁波のうちの約2μmから約5μmまでの波長帯の電磁波について、その強度の最大値が予め算出される。図23(b)は、約2μmから約5μmまでの波長帯において、プランク分布を積分した結果を示す図である。図23(b)を参照して、温度が高くなるほどサーモパイルへの入力最大値が大きくなる。本実施の形態では、温度算出部68は、図23(b)に基づいて定義された、ACFの温度とサーモパイルに入力される電磁波の強度との関係、およびサーモパイルの入出力特性を表わすデータテーブルを予め用意する。
【0209】
温度算出部68は、このデータテーブル、およびサーモパイルからの出力電圧に基づいて、サーモパイルが検出した温度を算出する。温度算出部68は、その算出した温度からデータ補完等の処理を行なうことにより、ACFの温度分布を算出する。
【0210】
温度算出部68は、ACF中の照射領域の温度分布を所定の周期で測定する。温度制御部69およびレーザ制御部35は、その温度分布の中のある部分の温度が、図20に示した温度プロファイルから得られる理想的な温度よりも低い(あるいは高い)場合には、その部分の温度上昇率を補正する。この制御はフィードバック制御であり、たとえば、理想温度と実際の温度とのずれに、ある係数を乗じた値をレーザ光のパワーの補正量とする制御である。
【0211】
図24は、フィードバック制御に用いられる係数を説明するための図である。図24を参照して、所定の温度範囲(図24では50℃)ごとに、係数として、ACFの温度を1℃上昇させるのに必要なレーザ光のパワーの増分値が定められる。温度制御部69はこの係数を記憶する(図15のステップS20B参照)。
【0212】
温度制御部69は、温度算出部68によって求められた照射領域の温度分布と、レーザ光の照射開始からの経過時間と図20に示した温度プロファイルとから求められた温度分布とを比較する。温度制御部69は、これらの温度分布から、照射領域の中に、理想温度よりも温度が低い部分がある場合には、その部分の温度を上昇させるよう、図24の係数および、理想温度と実際の温度とのずれからレーザ光のパワーの補正量を算出し、その算出結果をレーザ制御部35に送る。レーザ制御部35は、該当部分を照射するレーザ光源32から発せられるレーザビームのパワーがその補正量だけ上げるように電源装置36を制御する。
【0213】
以下、温度制御部69およびレーザ制御部35によるレーザ光の強度分布の制御についてフローチャートを参照しながら説明する。なお温度制御部69およびレーザ制御部35は本発明の接合装置における「制御部」に対応する。
【0214】
図25は、レーザ制御部35および温度制御部69によるレーザ光の強度分布制御を示すフローチャートである。図25を参照して、処理が開始されると、レーザ制御部35は、図21に示した初期条件に従って、各レーザ光源から出力されるレーザ光のパワーと照射時間とを制御する(ステップS31)。
【0215】
次に、温度制御部69は、温度検出部64(サーモパイル)および温度算出部68を介して、温度分布を取得する(ステップS32)。続いて、温度制御部69は、温度算出部68によって算出された照射領域の温度分布に基づいて、照射領域において接着剤が先に溶けるべき部分の温度が、接着剤が溶け始める温度(以下では樹脂流動化温度と呼ぶ)として予め定められた所定温度(たとえば150℃)に達したか否かを判定する(ステップS33)。接着剤が先に溶けるべき部分の温度が樹脂流動化温度に達した場合(ステップS33においてYES)、処理はステップS34に進む。なお、ステップS33の処理の具体例については後述する。
【0216】
一方、接着剤が先に溶けるべき部分の温度が樹脂流動化温度に達していない場合(ステップS33においてNO)、処理はステップS31に戻る。この場合には、ACFの照射領域のいずれの部分においても接着剤がまだ溶けていない。したがって、この場合には、初期条件に従うレーザ光の照射が継続される。
【0217】
ステップS34において、レーザ制御部35および温度制御部69は、先に樹脂流動化温度に達した部分(すなわち加圧領域の角部等)のレーザ光のパワーおよび照射時間を制御することで、その部分の温度プロファイルを図20に示したプロファイルとなるよう制御する。次に、ステップS35において、レーザ制御部35および温度制御部69は、ACF中の照射領域の残りの部分の温度が、図20に示す、予め定められた温度プロファイルに従って変化するよう、その部分のレーザ光のパワーおよび照射時間を制御する。これにより、ドライバIC5の加圧領域内の角に近い部分、あるいはドライバIC5の長手方向の端部によって挟み込まれる接着剤が、その加圧領域の重心位置に近い部分によって挟み込まれる接着剤よりも先に溶けた状態が生じるようなレーザ光の強度分布を得ることができる。さらに、その加圧領域内の全域(ドライバIC5の全体)の接着剤が溶けた状態となる時間帯が生じるようなレーザ光の強度分布を得ることができる。
【0218】
加圧領域内の全域(ドライバIC5の全体)で溶けた接着剤はレーザ光の照射による加熱を継続することで硬化する。ステップS36において、レーザ制御部35は、各レーザ光源のレーザ光の出力をオフする。ステップS36の処理が終了すると、全体の処理が終了する。
【0219】
続いて、ステップS33の処理の具体例について説明する。図26は、ステップS33の処理の第1の例を示すフローチャートである。図26を参照して、処理が開始されると、温度制御部69は、温度検出部64(サーモパイル)および温度算出部68によって測定された温度分布の中に、樹脂流動化温度に達した温度値があるか否かを判定する(ステップS41)。樹脂流動化温度に達した温度値がある場合(ステップS41においてYES)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS34の処理が行なわれる。その測定された温度分布の中に、樹脂流動化温度に達した温度値がない場合(ステップS41においてNO)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS31の処理が行なわれる。
【0220】
図27は、ステップS33の処理の第2の例を示すフローチャートである。図27を参照して、処理が開始されると、温度制御部69は、温度検出部64(サーモパイル)および温度算出部68によって、一定の周期で測定された温度分布に基づき、接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率を算出する(ステップS51)。そして、温度制御部69は、その温度上昇率から、その部分の温度が、樹脂流動化温度に達する時刻を推定する(ステップS52)。続いて温度制御部69は、現在時刻がその推定時刻に達した否かを判定する(ステップS53)。現在時刻が推定時刻に達した場合(ステップS53においてYES)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS34の処理が行なわれる。一方、現在時刻が推定時刻に達していない場合(ステップS53においてNO)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS31の処理が行なわれる。
【0221】
図28は、ステップS33の処理の第3の例を示すフローチャートである。この第3の例は、図26および図27に示した処理を組み合わせたものに相当する。
【0222】
図28を参照して、処理が開始されると、温度制御部69は、温度検出部64(サーモパイル)および温度算出部68によって、一定の周期で測定された温度分布に基づき、接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率を算出する(ステップS61)。そして、温度制御部69は、その温度上昇率から、その部分の温度が、樹脂流動化温度に達する時刻を推定する(ステップS62)。
【0223】
続いて温度制御部69は、現在時刻が推定時刻に達する前に、温度検出部64(サーモパイル)および温度算出部68を介して、接着剤が先に溶けるべき部分の温度値を取得する(ステップS63)。そして温度制御部69は、その部分の温度が樹脂流動化温度に達したか否かを判定する(ステップS64)。その部分の温度が樹脂流動化温度に達した場合(ステップS64においてYES)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS34の処理が行なわれる。一方、その部分の温度がまだ樹脂流動化温度に達していない場合(ステップS64においてNO)、温度制御部69は、現在の時刻がステップS62において推定した時刻に達したか否かを判定する(ステップS65)。
【0224】
現在時刻が推定時刻に達した場合(ステップS65においてYES)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS34の処理が行なわれる。現在時刻が推定時刻に達していない場合(ステップS65においてNO)、ステップS33の処理が終了して、以後はステップS31の処理が行なわれる。この第3の例では、現在時刻が推定時刻に達する前に、検出温度が樹脂流動化温度に達したかどうかが確認される(ステップS63)。これによって、加圧領域の角部等において接着剤の熱反応反応が進みすぎるという状態(たとえば接着剤の硬化が既に始まっている状態)を防ぐことができる。
【0225】
なお、レーザ制御部35および温度制御部69によるレーザ光の強度分布の具体的な制御は、図25〜図28に示した制御に限定されるものではない。図29は、レーザ制御部35および温度制御部69によるレーザ光の強度分布の他の制御例を示すフローチャートである。図29を参照して、処理が開始されると、レーザ制御部35および温度制御部69は、照射領域の温度分布から、照射領域内の所定の部分(先に接着剤が溶けるべき部分および、加圧領域の重心位置を含む)と、その部分に照射されるレーザ光の照射時間との積の時間積分値を算出する(ステップS71)。そして、レーザ制御部35は、その時間積分値に基づいて、各レーザ光源の出力パワーおよび照射時間を制御する(ステップS72)。たとえば、レーザ制御部35は、各レーザ光源に対応して算出した時間積分値が基準値に達した場合に、そのレーザ光源からのレーザ光の出力を停止させる。
【0226】
また、照射領域にレーザ光を照射している間の強度分布については、照射領域の全域にわたって均一でもよいし、図30に示したように、先に接着剤が溶けるべき部分である加圧領域の角部に近いほどパワーが大きく、加圧領域の重心位置に近いほどパワーが小さくなるような強度分布でもよい。加圧領域の角部に対応する部分では接着剤の熱が外部(空気中)に放出されやすい。これに対し、加圧領域の重心位置では接着剤の熱が外部に逃げにくい。図30に示すようにレーザ光の強度分布を生成した場合には、加圧領域(ドライバIC5)の角部(あるいはドライバIC5の長手方向の端部)における接着剤を加圧領域の重心における接着剤より先に溶かすことが可能になる。
【0227】
なお以上の説明では、接合対象物としてドライバICを示した。ただし接合対象物はドライバICに限定されるものではない。たとえばTCP2に設けられたリード導線2bをACFを介して液晶表示パネル1上の電極に接続することも考えられる。この場合のレーザ光の照射領域ARの一例を図31に示す。
【0228】
図31(a)は、TCP2側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。図31(b)は、TCP2および液晶表示パネル1の側面側から見たレーザ光の照射領域ARを示す図である。なお、図示の便宜上、図31(a)には液晶表示パネル1は示していない。
【0229】
図31(a)および(b)を参照して、照射領域ARは、リード導線2bを含み、かつ、TCP2のキャリアテープ2aとACF10との重なり範囲をはみ出ないように設定される。なお、この場合の加圧領域とは、複数のリード導線2bを含む領域であるが、TCP2の一部の領域となる。接合対象物がドライバICのような小さな電子部品の場合、加圧領域は電子部品全体となるが、図31に示すように、加圧領域は接合対象物の一部でもよい。
【0230】
このように、本実施の形態では、接合対象物の加圧領域内の角に近い部分、または、加圧領域内の重心位置からの距離が相対的に長い部分によって挟み込まれる接着剤が、その加圧領域内の重心位置に近い部分によって挟み込まれる接着剤よりも先に溶けるように、かつ、加圧領域内の全域の接着剤が溶けた状態となる時間帯が存在するように、複数のレーザ光源から発せられるレーザ光によって形成される照射領域におけるレーザ光の強度分布を制御する。これによって、ACFを用いた接合でのレーザ光による高速接合において信頼が向上する。信頼性の高い接合を高速で実現することができるので、ACF等の熱反応性樹脂による接着剤を介した電極の接合において、生産性を向上させることが可能になる。
【0231】
なお、本実施の形態に適用可能な光学系は上述の構成に限定されるものではない。以下に本実施の形態に適用可能な光学系の例を説明する。
【0232】
図32は、本実施の形態に適用可能な光学系の他の例を示す図である。図32(a)を参照して、この光学系では、光ファイバ41から出た光(レーザビームLB)が発散光としてACF10および電子部品(図32ではドライバIC5)に照射される。ホルダ43aはファイバホルダである。なお、照射面(液晶表示パネル1とACF10との接触面とする)において適切な大きさのスポットが形成されるように、光ファイバ41から出射したレーザ光を発散させるためのレンズがホルダ43aに取り付けられてもよい。以下では、レンズがホルダ43aに取り付けられていないものとして説明する。
【0233】
この光学系では、光ファイバ41の出射端の位置を液晶表示パネル1にできるだけ近づけることが好ましい。このため、バックアップ基板55には、その上下方向(厚み方向)に貫通する孔55dが形成される。ホルダ43aは、この孔に沿って上下に移動可能である。このようにホルダ43aを移動させることで、光ファイバ41から出射されるレーザ光のビームサイズを調整することが可能になる。
【0234】
また、液晶表示パネル1上の引出電極と、対応するドライバIC5のバンプ電極との位置合わせの場合には、対応する位置にカメラを移動させることが必要になる。図28(b)に示すように、カメラ60は、孔55dの内部を水平方向に沿って移動する。一方、カメラ60との干渉を避けるため、カメラ60の移動時には、ホルダ43a(および光ファイバ41)は下方に退避させられる。
【0235】
図33は、図32に示したホルダ43aの構成を説明する図である。図33(a)は、ホルダ43aの上面図である。図33(b)は、ホルダ43aの側面図である。図33(a)および(b)を参照して複数のホルダ43aは、フィクスチャ45によって固定される。このフィクスチャ45はガラス等の透明な材質により形成される。フィクスチャ45の下部には、たとえば面発光LEDやランプ等によって構成されたガイド照明46が取り付けられる。
【0236】
ガイド照明46からのガイド光は、導光路であるフィクスチャ45を通り、フィクスチャ45から出た際に発散光となる。図33(b)ではガイド光を実線で示し、レーザビームLBを破線で示す。ガイド照明46のNA(開口数)は光ファイバ41のNAと一致するよう設計される。これによって、光ファイバ41から出射したレーザビームLBによる照射エリアを、ガイド照明46からのガイド光によって示すことができる。
【0237】
なお、この構成例においては、バックアップ基板は、ガラスや石英でもよいし、金属であってもよい。また、バックアップ基板がガラスや石英である場合、孔55dは必ずしも上下方向に貫通していなくてもよい。一方、バックアップ基板が金属である場合には、光ファイバからの光をACF10に到達させるために孔55dを上下方向に貫通させる必要がある。また、バックアップ基板55は、接合対象となる電子部品の品種変更に応じて交換されてもよい。
【0238】
このように構成された光学系において、たとえば各ホルダ43aに設けられた光ファイバ41から出射されるレーザ光の強度を制御することによって、照射領域におけるレーザ光の強度分布を制御することが可能になる。
【0239】
図34は、本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。図34(a)は、レーザ光の進行方向に沿った光学系の断面構造図である。図34(a)を参照して、この光学系は、光ファイバ41と、光ファイバ41の出射端側がその内部に挿入されるフェルール44と、複数のフェルール44を固定するフィクスチャ45と、光ファイバ41から出射されたレーザ光を通すための複数のインテグレータ91と、複数のインテグレータ91を所定の位置に設置するためのインテグレータガイド92と、インテグレータ91の入射端で反射したレーザ光を導光する光ファイバ93と、その光ファイバ93から出射された光を受光する受光素子94とを備える。
【0240】
光ファイバ41から出た光をインテグレータ91に通すことで、インテグレータ91から、均一な強度分布を有する光を出力することができる。なお、インテグレータ91の光出射位置から液晶表示パネル1までの距離に応じて光の広がり方が変化する。
【0241】
この光学系では、インテグレータ91はアレイ状に配列される。図30(b)は、アレイ状に配列された複数のインテグレータ91からの光が照射面(液晶表示パネル1とACF10との接触面とする)での照射領域において重なり合う状態を示している。インテグレータ91からの光は領域95およびその周囲の領域(破線の枠により示す)に広がる。これにより、照射面では、メッシュ状に重なり合って配置された矩形の光スポットが複数形成されるので、連続的な照射領域を形成することができるとともに、その照射領域内における強度分布をほぼ均一とすることができる。
【0242】
図34(a)に示されるように、バックアップ基板55の内部には、インテグレータ91からの光を遮光するマスク59が設けられている。このマスク59によって、図33(b)に示されるように、照射面における所望の領域、すなわち照射領域AR(実線にて示す)のみにレーザ光を照射することができる。
【0243】
受光素子94は、インテグレータ91の入射端で反射したレーザ光を受光し、その受光強度を示す信号を出力する。この信号は、各光ファイバ41から出射されたレーザ光の強度を反映している。したがって図33に示す光学系を用いることで、各受光素子94からの信号に基づいて照射領域ARにおけるレーザ光の強度分布を任意に制御できる。
【0244】
図35を参照して、(a),(b),(c)の順に、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなる。なお斜線の領域は、図34(b)に示す領域95に対応する。ここで、光の広がりとマスク59の厚みとの関係は以下の通りである。マスク59が薄いほど、各インテグレータ91から出射された光の広がりが小さくなる。一方、マスク59が厚いほど、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなる。
【0245】
各インテグレータ91から出射された光の広がりが小さいほど、光が重なり合う部分が大きくなるため、パワー密度が高くなる。また強度の均一性が良好となる。また、メッシュのピッチが短くなる。これに対し、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きいほど、照射面において光が重なり合う部分が小さくなるため、パワー密度が低くなる。また、照射面での強度の均一性も悪くなる。また、メッシュのピッチが長くなる。
【0246】
なお、図35は、インテグレータ91から出射された光の広がりを変化させることが可能なパラメータを説明したものであって、各インテグレータ91から出射された光の広がりが大きくなるほど望ましくないということを示すものではない。インテグレータ91から出射された光の広がりの程度は、必要とされるパワー密度や、照射領域の大きさ等によって適切に定められるものである。
【0247】
なお、以上の説明では熱反応性樹脂による接着剤の例として、導電性粒子が熱反応性樹脂に分散された接着剤である異方性導電性材料(具体的にはACF)を示した。ただし、このような異方性導電材料はACFに限定されず、たとえばACP(Anisotropic Conductive Paste)でもよい。さらに、熱反応性樹脂による接着剤は、接合対象物の電極とパネル基板上の引出電極とを接触させたまま保持するものであってもよいので、導電性粒子を含まないものであってもよい。このような接着剤として、たとえばNCF(Non Conductive Film)、NCP(Non Conductive resin Paste)等も、本発明による接合方法および接合装置に適用可能である。
【0248】
また、以上説明した実施の形態は、照射領域の温度分布をモニタした結果から得られる照射領域の温度分布に基づき、各レーザビームの強度を制御するものである。ただし、接着剤の物理的特性が予め把握されているのであれば、上述の制御と同様の制御を行なうことができる。具体的には、接着剤の熱反応に関連する物理量の照射領域における分布を測定するモニタを用い、そのモニタにより測定された照射領域内の物理量の分布から各レーザビームの強度を制御すればよい。したがって、その物理量は「温度」に限定されるものではない。
【0249】
たとえば、物理量がレーザ光のパワーであってもよい。この場合のモニタは、各レーザ光源から出力されるレーザ光のパワーを(時間的に)モニタするモニタである。このモニタの測定結果により算出される照射領域でのレーザ光パワーの分布を用いても、各レーザビームの強度を制御することができる。
【0250】
また、以上の説明では表示装置として液晶表示装置を示した。しかし、本実施の形態に従う接合装置および接合方法は、異方性導電材料を介して被接合物(表示パネル)の電極と接合対象物(たとえばTCP、ベアチップ、その他の電子部品等)の電極とが接合される表示装置に対して広く適用が可能である。したがって、本実施の形態に従う接合装置および接合方法による処理が可能な表示装置は液晶表示装置に限定されず、たとえば、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、電界放出ディスプレイなどでもよい。
【0251】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0252】
【図1】本発明の実施の形態に従う接合装置の処理対象である液晶表示装置の概略ブロック図である。
【図2】図1に示すTCP2の一構成例を説明する図である。
【図3】ACFを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態に従う接合装置100の構成図である。
【図5】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第1の図である。
【図6】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるレーザ光照射部の構成を説明するための第2の図である。
【図7】フィクスチャ45および温度検出部64の配置を説明する、X方向から見た図である。
【図8】バックアップ基板55上でのレーザ光の照射領域を説明する図である。
【図9】本実施の形態に従う接合装置100に含まれるビーム整形部の構成を説明するための図である。
【図10】バックアップ基板55によるレーザビームのY方向の整形を説明するための模式図である。
【図11】レーザ光源32として用いられる半導体レーザを説明するための図である。
【図12】図4に示す加圧ヘッド25を説明するための図である。
【図13】本実施の形態に従う接合装置100の制御系を説明するためのブロック図である。
【図14】液晶表示パネル1と実装部品とをACF10を介して接合する接合処理の全体を説明するためのフローチャートである。
【図15】レーザ光照射処理を説明するためのフローチャートである。
【図16】ベアチップ(ドライバIC5)を液晶表示パネル1に実装する場合におけるレーザ光の照射領域ARの一例を示す図である。
【図17】ACF中の接着剤の温度による状態変化の例を説明する図である。
【図18】長方形の加圧領域における接着剤の流れを模式的に示す図である。
【図19】加圧領域内の重心位置を具体的に例示する図である。
【図20】本実施の形態に係る接合装置および接合方法によって実現される温度制御を説明するための図である。
【図21】レーザ制御部35によるレーザ光のパワーおよびレーザ光の照射時間の制御を説明する模式図である。
【図22】本実施の形態に従う温度分布の検出を説明するための図である。
【図23】物体から輻射された電磁波を説明するための図である。
【図24】フィードバック制御に用いられる係数を説明するための図である。
【図25】レーザ制御部35および温度制御部69によるレーザ光の強度分布制御を示すフローチャートである。
【図26】ステップS33の処理の第1の例を示すフローチャートである。
【図27】ステップS33の処理の第2の例を示すフローチャートである。
【図28】ステップS33の処理の第3の例を示すフローチャートである。
【図29】レーザ制御部35および温度制御部69によるレーザ光の強度分布の他の制御例を示すフローチャートである。
【図30】照射領域内のレーザ光の強度分布の一例を示す図である。
【図31】接合対象物がTCPである場合のレーザ光の照射領域ARの一例を示す図である。
【図32】本実施の形態に適用可能な光学系の他の例を示す図である。
【図33】図32に示したホルダ43aの構成を説明する図である。
【図34】本実施の形態に適用可能な光学系のさらに他の例を示す図である。
【図35】複数のインテグレータ91の各々から出射された光の重なりの例を説明する図である。
【符号の説明】
【0253】
1 液晶表示パネル、1a パネル電極、2 TCP、2a キャリアテープ、2b リード導体、3 プリント回路基板、4 インターフェイス部、5 ドライバIC、5a バンプ電極、6 フレキシブル基板、7 偏光板、10a バインダ領域、11 ミクロパーティクル、11a ミクロパーティクル領域、12 ニッケルメッキ層、13 樹脂コア、14 金メッキ層、15,16 電極、20 シリンダ、21 チップトレイ、22 シリンダ移動機構、23 吸着孔、24 バルブ、25 加圧ヘッド、25a,25b 押さえ部材、31 レーザ装置、32 レーザ光源、32a,32b 半導体レーザ、33,41 光ファイバ、34 レーザ冷却装置、35 レーザ制御部、35a 温度検出回路、35b 制御回路、35c,68c メモリ、35d,68d,69b,69c インターフェイス回路、36 電源装置、38 レーザ光保護カバー、40 ファイバ中継器、42 レンズ、43 レンズホルダ、43a ホルダ、44 フェルール、45 フィクスチャ、46 ガイド照明、47 入力コネクタ、48 出力コネクタ、51 支持部材、51a 光学系移動装置、52 スライドレール、53 固定部、55 バックアップ基板、55b,55c 表面、55a,57a 傾斜面、56 X方向可動遮光部材、56a X方向可動遮光部材駆動部、57 Y方向遮光部材、57b 平面、58 レーザ光吸収体、59 マスク、60 カメラ、62 アーム、62a アーム移動装置、64 温度検出部、64f フィルタ、64a 温度センサ、64b 筒、65 信号線、66,67 信号コネクタ、68 温度算出部、68a A/D変換回路、68b,69a 演算回路、69 温度制御部、70 制御装置、75 モータドライバ、77 真空吸着部、80 表示装置、82 記憶装置、91 インテグレータ、92 インテグレータガイド、94 受光素子、100 接合装置、AR 照射領域、EM エミッタ、LB レーザビーム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、前記引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて前記引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的にに接合する方法であって、
前記ガラス基板上の前記引出電極と前記接合対象物の前記接続電極とを、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向させ、かつ熱反応性樹脂による接着剤を、前記引出電極と前記接続電極との間に介在させた状態で、前記ガラス基板と前記接合対象物の少なくとも一方に圧力を加えることにより、前記接着剤を前記ガラス基板と前記接合対象物との間に挟みこむステップと、
前記ガラス基板に向けて押し当てられる前記接合対象物の加圧領域内の角に近い部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤が、前記加圧領域の重心位置近傍の部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤よりも先に溶け、かつ、前記加圧領域の全域の前記接着剤が溶ける時間帯が存在するように、その強度分布が制御されたレーザ光を、前記接合対象物の少なくとも前記加圧領域が加熱されるよう照射するステップと、
前記レーザ光の照射時または照射後に生じる前記接着剤の反応の後に、前記圧力を開放するステップとを備える、接合方法。
【請求項2】
ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、前記引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて前記引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する方法であって、
前記ガラス基板上の前記引出電極と前記接合対象物の前記接続電極とを、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向させ、かつ熱反応性樹脂による接着剤を、前記引出電極と前記接続電極との間に介在させた状態で、前記ガラス基板と前記接合対象物の少なくとも一方に圧力を加えることにより、前記接着剤を前記ガラス基板と前記接合対象物との間に挟みこむステップと、
前記ガラス基板に向けて押し当てられる前記接合対象物の加圧領域内において前記加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長くなる前記加圧領域の外周部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤が、前記加圧領域内において前記距離が相対的に短い部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤より先に溶け、かつ、前記加圧領域の全域の前記接着剤が溶ける時間帯が存在するように、その強度分布を制御したレーザ光を、前記接合対象物の少なくとも前記加圧領域が加熱されるよう照射するステップと、
前記レーザ光の照射時または照射後に生じる前記接着剤の反応の後に、前記圧力を開放するステップとを備える、接合方法。
【請求項3】
前記加圧領域の形状は、長方形であり、
前記重心位置からの距離が相対的に長くなる前記加圧領域の外周部分は、前記長方形の短辺部分である、請求項2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記照射するステップは、
前記加圧領域を含む前記レーザ光の照射領域を、照射位置が異なる複数のレーザビームの足し合わせによって覆うように、前記レーザ光を照射するステップと、
前記接着剤の反応と関連づけられる物理量の前記照射領域での分布をモニタするモニタによって測定される前記照射領域での分布に基づいて、前記複数のレーザビームの各々の強度を制御するステップとを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記モニタは、前記照射領域での温度分布を測定し、
前記制御するステップは、
前記モニタにより測定される前記温度分布に基づいて、前記重心位置よりも前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が、予め定められた温度に達したか否かを判断するステップと、
前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達したときの前記温度分布に基づいて、前記照射領域内の残りの箇所に照射される前記レーザ光のパワーを制御するステップとを含む、請求項4に記載の接合方法。
【請求項6】
前記判断するステップは、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率に基づいて、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達する時刻を推定し、現在時刻が推定された時刻に達したときに、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達したか否かを判断する、請求項5に記載の接合方法。
【請求項7】
前記接着剤は、前記熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である、請求項1から6のいずれか1項に記載の接合方法。
【請求項8】
ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、前記引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて前記引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する装置であって、
前記ガラス基板上の前記引出電極と前記接合対象物の前記接続電極とが、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向し、かつ熱反応性樹脂による接着剤が、前記引出電極と前記接続電極との間に介在した状態で、前記ガラス基板と前記接合対象物の少なくとも一方に圧力を加える加圧部と、
前記接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるようレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記ガラス基板に向けて押し当てられる前記接合対象物の加圧領域内の角に近い部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤が、前記加圧領域の重心位置近傍の部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤よりも先に溶け、かつ、前記加圧領域の全域の前記接着剤が溶ける時間帯が存在するように、前記レーザ光照射部から照射される前記レーザ光の強度分布を制御する制御部とを備える、接合装置。
【請求項9】
ガラス基板上に配列された複数の電極からなる引出電極と、前記引出電極に含まれる各電極と配置を対応させて前記引出電極の接合対象物上に配列された、複数の電極からなる接続電極とを、物理的かつ電気的に接合する装置であって、
前記ガラス基板上の前記引出電極と前記接合対象物の前記接続電極とが、対応する電極同士の位置を合わせた状態で対向し、かつ熱反応性樹脂による接着剤が、前記引出電極と前記接続電極との間に介在した状態で、前記ガラス基板と前記接合対象物の少なくとも一方に圧力を加える加圧部と、
前記接合対象物の少なくとも加圧領域が加熱されるようレーザ光を照射するレーザ光照射部と、
前記ガラス基板に向けて押し当てられる前記接合対象物の加圧領域内において前記加圧領域の重心位置からの距離が相対的に長くなる前記加圧領域の外周部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤が、前記加圧領域内において前記距離が相対的に短い部分により前記接合対象物と挟み込まれる前記接着剤より先に溶け、かつ、前記加圧領域の全域の前記接着剤が溶ける時間帯が存在するように、前記レーザ光照射部から照射される前記レーザ光の強度分布を制御する制御部とを備える、接合装置。
【請求項10】
前記加圧領域の形状は、長方形であり、
前記重心位置からの距離が相対的に長くなる前記加圧領域の外周部分は、前記長方形の短辺部分である、請求項9に記載の接合装置。
【請求項11】
前記接合装置は、
前記加圧領域を含む前記レーザ光の照射領域での、前記接着剤の反応と関連づけられる物理量の分布をモニタするモニタをさらに備え、
前記レーザ光照射部は、前記照射領域を、照射位置が異なる複数のレーザビームの足し合わせによって覆うように前記レーザ光を照射し、
前記制御部は、前記モニタによって測定される前記分布に基づいて、前記複数のレーザビームの各々の強度を制御する、請求項8から10のいずれか1項に記載の接合装置。
【請求項12】
前記モニタは、前記照射領域での温度分布を測定し、
前記制御部は、前記モニタにより測定される前記温度分布に基づいて、前記重心位置よりも前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が、予め定められた温度に達したか否かを判断し、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達したときの前記温度分布に基づいて、前記照射領域内の残りの箇所に照射される前記レーザ光のパワーを制御する、請求項11に記載の接合装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度上昇率に基づいて、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達する時刻を推定し、現在時刻が推定された時刻に達したときに、前記接着剤が先に溶けるべき部分の温度が前記予め定められた温度に達したか否かを判断する、請求項12に記載の接合装置。
【請求項14】
前記接着剤は、前記熱反応性樹脂に導電性粒子が分散された接着剤である、請求項8から13のいずれか1項に記載の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【公開番号】特開2009−224395(P2009−224395A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−64588(P2008−64588)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】