接合構造体および電子回路基板
【課題】はんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体において、リフトオフの発生を効果的に低減する。
【解決手段】本発明の接合構造体は、スルーホール(2)が設けられた基板(1)と、スルーホール(2)の周囲に設けられたランド(3a〜3c)と、電子部品から引き出され、スルーホール(2)の内部に配置されるリード(5)とを備える。ランド(3a〜3c)とリード(5)とを接続するフィレットは、表面ランド部分(3a)と接触する上部フィレット(6a)および裏面ランド部分(3b)と接触する下部フィレット(6b)を含み、上部フィレットの外径が、スルーホールの直径の1.5倍以下である。
【解決手段】本発明の接合構造体は、スルーホール(2)が設けられた基板(1)と、スルーホール(2)の周囲に設けられたランド(3a〜3c)と、電子部品から引き出され、スルーホール(2)の内部に配置されるリード(5)とを備える。ランド(3a〜3c)とリード(5)とを接続するフィレットは、表面ランド部分(3a)と接触する上部フィレット(6a)および裏面ランド部分(3b)と接触する下部フィレット(6b)を含み、上部フィレットの外径が、スルーホールの直径の1.5倍以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体、およびこれを含む電子回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をプリント基板などの基板に接合して電子回路基板を作製する1つの方法として、いわゆる「フローはんだ付け」を用いる方法がある。図13は、従来のフローはんだ付け方法に従って作製された電子回路基板の概略部分断面図であり、図14(b)は、図13の部分拡大図であり、図14(a)は図14(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0003】
図13および図14に示すように、一般的な従来のフローはんだ付け方法においては、まず、電子部品67から引き出されたリード65(例えば電極)を、基板61に貫通して設けられたスルーホール62の空洞に基板61の表面(図中の上側面)から挿入して裏面(図中の下側面)へ通す。このとき、スルーホール62の壁面ならびに該壁面の周囲に位置する基板61の表面および裏面上の領域には、例えば銅箔などからなるランド63(図13)が形成されており、それぞれ壁面ランド部分63c、表面ランド部分63a、裏面ランド部分63bとする(図14(b))。このランド63は、基板61の表面または裏面に形成された回路パターン(図示せず)に接続されている。また、ランド63を除く基板61の表面および裏面上は、はんだレジスト64(図13に斜線を付して示す)によって覆われている。
【0004】
その後、基板61の裏面側から、加熱により溶融させたはんだ材料を噴流の形態で基板61に接触させる。溶融状態のはんだ材料は、リード65が挿入されたスルーホール62の内部の環状空間(図14(a)を参照のこと)を毛管現象によって濡れ上がり、表面ランド部分63aおよび裏面ランド部分63bの表面で濡れ広がる。その後、はんだ材料は温度低下により固化して図13および図14(b)に示すように接合部66(図14(a)に示さず)を形成する。このとき、はんだレジスト64で覆われた領域にははんだ材料は付着しない。
【0005】
以上のようにして、はんだ材料からなる接合部、いわゆる「フィレット」(以下、このような接合部を単に「フィレット」と言うものとする)66が形成される。これにより、電子部品67のリード65と基板61に形成されたランド63とを電気的および物理的に接合して、電子回路基板70が作製される。
【0006】
【特許文献1】特開平08−181424号公報
【特許文献2】特開平11−186712号公報
【特許文献3】特開2000−307223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにして作製される電子回路基板においては、従来、SnおよびPbを主要構成成分とするSn−Pb系のはんだ材料、特にSn−Pb共晶はんだ材料が一般的に用いられている。しかし、Sn−Pb系はんだ材料に含まれる鉛は、不適切な廃棄物処理により環境汚染を招く可能性があるため、鉛を含有するはんだ材料の代替として、鉛を含まないはんだ材料、いわゆる「鉛フリーはんだ材料」が工業規模で使用され始めている。しかし、鉛フリーはんだ材料を用いて、上記のようなフローはんだ付け方法により電子回路基板を作製すると、図14(b)に示すように、上部フィレット66aおよび/または下部フィレット66bがそれぞれ表面ランド部分63aおよび/または裏面ランド部分63bから剥離して、ランドとフィレットとの間の接合が不十分になるという問題がある。このような現象は一般に「リフトオフ」と呼ばれ、電子回路基板の高い信頼性を得るには電子部品のリードとランドとの間で十分に高い接合強度が要求されるため好ましくない。Sn−Pb共晶はんだ材料を用いる場合にはこのようなリフトオフはほとんど発生せず、問題視されていなかったが、近年、鉛フリーはんだ材料を用いる場合にリフトオフが顕著に発生することが知られ、リフトオフの発生が問題となっている。現在、従来のSn−Pbはんだ材料から鉛フリーはんだ材料への移行が推進されており、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に特有の問題であるリフトオフを防止することは電子回路基板の作製において非常に重要である。
【0008】
鉛フリーはんだ材料を用いる場合に上述のようなリフトオフが発生する要因については、一般的に以下の2つのタイプが考えられている。
【0009】
1つの要因としては、フローはんだ付けに用いる鉛フリーはんだ材料そのものの組成に起因するものが考えられる。より詳細には、はんだ材料として例えばSn−Ag−Bi系合金を用いると、このSn−Ag−Bi系合金を構成する各金属元素(即ち、Sn、Ag、Bi)およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る合金(即ち、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Ag−Bi系合金)のうち、Sn−Bi共晶合金は、元のSn−Ag−Bi系合金の融点(約200℃)よりも低い融点(約138℃)を有する。以下、このように、元のはんだ材料よりも低い融点を有する金属および/または合金を単に低融点金属(または低融点合金)とも言うものとする。Sn−Ag−Bi系合金については、Sn−Bi共晶合金が低融点金属となる。
【0010】
よって、この場合、溶融状態で基板に供給されたSn−Ag−Bi系合金が徐々に固化する際、元のSn−Ag−Bi系合金に比べて低融点のSn−Bi共晶合金は、フィレット内の温度勾配によって、まだ固化していない溶融部分へ移動して濃縮される。この結果、Sn−Bi共晶合金は、フィレット内の最高温部、即ち最も固化が遅くなる部分に集まって偏析する。ここで、フィレットの上方部分(上部フィレット)における最高温部は、熱の良導体である銅箔からなるランドとフィレットとの界面(以下、単にランド/フィレット界面とも言う)の近傍領域であり、図14(b)に示すように、このランド/フィレット界面の近傍にSn−Bi共晶合金などの低融点合金75が集まって偏析する。フィレットが凝固する過程で、まだ溶融状態にあって強度の弱い基板面上のランド/フィレット界面付近の低融点合金に、凝固収縮による張力(図14(b)に破線矢印にて模式的に上部フィレット66aについてのみ示す)が作用すると、ランド/フィレット界面の外周部からクラックが発生し、凝固が外周部から内部へ進行するにつれてクラックもフィレット66aおよび66bの内部(または中央部)へと向かって拡大していく。このようにしてフィレットに形成されたクラックのために、図14(b)に示すように、フィレットの外周端部71がランド72の外周端部から剥離してリフトオフが発生すると考えられる。
【0011】
もう1つの要因としては、リード65の材料とフィレット66のはんだ材料との組合せに起因するものが挙げられる。リード65と溶融状態で接触するはんだ材料として、例えばSn−0.7Cu共晶合金(即ち、0.7重量%のCuおよびSn残部からなる合金)を用いる場合には、このはんだ材料を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る合金のうち、元のSn−Cu共晶合金の融点(約227℃)よりも融点が低い低融点金属または低融点合金は存在しないため、上述の要因は当て嵌まらない。しかし、このような場合であっても上記のようなクラックが形成され、リフトオフが発生し得る。これは、リード材料、例えばリードのめっきの材料とフローはんだ付けに用いるはんだ材料との組合せに依存して起こると考えられる。
【0012】
一般的に、リード65は、母材と該母材を被覆するめっき(以下、単に「めっき」とも言うものとする)とからなる。通常、リードはSn−Pb系めっきが施されているが、この場合、溶融状態の高温のはんだ材料がスルーホール62内を濡れ上がる際、はんだ材料とめっきとが接触してめっき成分がはんだ材料中に溶け出し得る。Sn−Pb共晶合金は、はんだ材料であるSn−Cu共晶合金の融点(約227℃)よりも低い融点(約183℃)を有するため、溶融したSn−Cu共晶合金が固化(凝固)する際、上記と同様の過程を経て、低融点のSn−Pb共晶合金がランド/フィレット界面近傍に偏析して、リフトオフを発生させ得る。
【0013】
上述のSn−Cu系はんだ材料とSn−Pb系めっき材料との組合せ以外にも、例えばSn−Cu(融点約227℃)、Sn−Ag−Cu(融点約220℃)などのフロー付けに一般的に用いられている鉛フリーはんだ材料とBi、Zn、またはIn金属元素を含むめっきを用いる場合、Sn−Bi(融点約138℃)、Sn−Zn(融点199℃)またはSn−In(融点約118℃)などの低融点合金を構成し得る。このように、はんだ材料だけでなく、はんだ材料およびリード(例えばめっき)を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の2つまたはそれ以上の任意の組合せで構成され得る合金のうち、元のはんだ材料よりも低融点のものが存在する場合にリフトオフが発生する。
【0014】
これら2つの要因は、いずれもランド/フィレット界面近傍に、フィレット本体を構成する合金の組成(実質的に元のはんだ材料の組成に等しい)と異なる組成の低融点合金(または低融点金属)が析出することに起因する。また、実際には、これら2つの要因が組み合わされる場合もある。
【0015】
従来のSn−Pb共晶はんだ材料およびSn−Pb系めっき材料の組合せでは、上記のような2つの要因のいずれもが無く、リフトオフの発生が問題にならなかったものと考えられる。リフトオフの発生は鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著に発生し、鉛フリーはんだ材料に特有の問題であると言える。
【0016】
本発明は上記の従来の課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、フローはんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体であって、リフトオフの発生が効果的に低減された構造体ならびにそのような接合構造体を含む電子回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、フローはんだ付けにおけるリフトオフの発生を効果的に低減すべく、接合構造体の構造面および材料面のそれぞれおよびこれらの両面からアプローチして、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明の1つの要旨においては、スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;ランドおよびリードを接続するようにフローはんだ付けによってはんだ材料を用いて形成され、基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体が提供される。
【0019】
尚、本明細書において上部フィレットまたは下部フィレットの外形とは、基板の主面(または表面もしくは裏面)に対して実質的に平行な断面において、フィレットの面積が最大となるときのフィレット断面の外側の輪郭またはその断面積を言い、一般的には、フローはんだ付けにより基板に供給された溶融状態のはんだ材料が濡れ広がる表面ランド部分または裏面ランド部分の露出部の外側の輪郭またははんだ材料により濡れた面積に等しい。上部フィレットまたは下部フィレットの外形は、通常、表面ランド部分または裏面ランド部分の露出部がリング状の形状を有する(よって円形の外側輪郭を有する)場合には、露出部の外径(直径)で代表される。本明細書において、表面ランド部分または裏面ランド部分の「露出部」とは、フローはんだ付けによりはんだ材料を供給するに際して露出しており、はんだ材料と接触するようになる部分を言うものとする。
【0020】
上記のような本発明の接合構造体においては、上部フィレットの外径が下部フィレットの外径よりも小さいため、上部フィレットの外径が下部フィレットの外径に対して大きい場合または等しい場合よりも、上部フィレットの傾斜している露出領域をより小さくでき、よって、はんだ材料の凝固収縮により生じる張力を低減することができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0021】
本発明の1つの態様においては、表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さく、および/または表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている。表面ランド部分の外径が裏面ランド部分の外径より小さくなるようにランドを形成しておくことによって、上部フィレットの外径を下部フィレットの外径より小さくすることができる。また、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストで覆って、表面ランド部分の露出部の外径を表面ランド部分自体の外径より小さくし、更に表面ランド部分の露出部の外径が裏面ランド部分の外径より小さくすることによっても、上部フィレットの外径を下部フィレットの外径より小さくすることができる。尚、表面ランド部分または裏面ランド部分の外形とは、基板の表面または裏面に形成されたままのランドの外側の輪郭または表面または裏面に平行な面上の面積を言うものとする。
【0022】
好ましい態様においては、壁面ランド部分がその基板表面側の端部にてテーパー形状を有する。このようなテーパー形状を設けることにより、凝固過程においてはんだ材料はテーパー形状の近傍領域にて最も高温となり、低融点金属がその領域に溜まって、フィレットの外周端部付近に析出するのを低減できる。また、このようなテーパー形状によって、フィレットとランドとの間の接合強度を向上させて、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に抗することができる。これにより、リフトオフの発生を更に低減することができる。
【0023】
好ましい態様においては、上記スルーホールの近傍に別のスルーホールが基板を貫通して設けられ、上記ランドが該別のスルーホールの壁面を覆い、かつ基板の表面および裏面上にてこれらスルーホール間の領域を覆うように、ランドが接続されて形成され、基板表面のスルーホール間に位置するランド部分がはんだレジストで覆われている。このような構成においては、凝固過程においてはんだ材料は2つのスルーホール間に位置する部分にて最も高温となり、よって、2つのスルーホール間のランド部分の近傍に低融点金属を積極的に偏析させ、他のランド/フィレット界面近傍で析出する低融点金属を相対的に減少させることができる。これにより、クラックの発生をスルーホールの間の領域に集中させることができ、リフトオフがわずかに発生しても、ごく一部の領域、即ちスルーホールの間の近傍領域で積極的に起こさせ、その他の領域で起こりにくくして、全面的なリフトオフの発生を回避することが可能となる。
【0024】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、またはこれに加えて、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体が提供される。具体的には、以下に示すような態様がある。
【0025】
本発明の1つの態様においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形は表面ランド部分の外形よりも小さい。これにより、上部フィレットと接触していない表面ランド部分の領域を通じてはんだ材料の熱を逃がすことができるため、表面ランド部分の温度を下げて、温度上昇を抑制することができ、この領域に偏析する低融点金属を低減することができる。この結果、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。例えば、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストなどで予め覆った基板をフローはんだ付けすることにより上部フィレットの外形を表面ランド部分の外形よりも小さくすることができる。
【0026】
本発明のもう1つの態様においては、基板は表面ランド部分と接触して形成された放熱板を含む。この場合、はんだ材料から表面ランド部分に伝導された熱を放熱板へ逃がすことができるため、上記態様と同様に表面ランド部分の温度上昇を抑制することができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。放熱板は、例えば、ランドを形成する前に予め基板に埋め込んで設け、この放熱板に表面ランド部分が接触するようにランドを形成するようにしてよい。
【0027】
本発明のもう1つの態様においては、壁面ランド部分に切欠き部が形成されている。はんだ材料が放熱により温度低下して、その露出部から次第に凝固する際、フィレット全体では、上部フィレットおよび下部フィレットの間のフィレット部分が最も高温であり、従来、この部分のはんだ材料の熱が壁面ランド部分を通じて表面ランド部分に伝わることにより、表面ランド部分/フィレット界面近傍が高温となっていた。しかし、本態様のように壁面ランド部分に切欠き部を設けることにより、上部フィレットおよび下部フィレットの間のフィレット部分からの壁面ランド部分を介する熱の供給を遮断し、よって、表面ランド部分の温度を従来よりも速く低下させ、表面ランド部分の温度上昇を抑制することができる。これにより、この領域に偏析する低融点金属を低減し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0028】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体が提供される。本態様によれば、表面ランド部分および/または裏面ランド部分に突起部が設けられているので、ランド/フィレット界面における外周端からリードの方向に向かうクラックの進行を突起により停止し、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に耐えることができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0029】
本発明の1つの態様においては、上記突起部が表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の外縁部に位置する。本態様によれば、表面ランド部分および/または裏面ランド部分の外縁部に突起部が設けられているので、クラックの進行方向を、ランド/フィレット界面におけるランドの外周端からリードの方向に向かう方向でなく、突起部/フィレット界面における下向きの方向にすることができ、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に耐えることができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0030】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、リードのスルーホールに挿入されない部分であって、基板の表面側に位置する部分がはんだレジストで覆われ、該はんだレジストによって基板表面からのフィレットの高さが制限されている接合構造体が提供される。本態様によれば、はんだレジストでフィレットの高さが制限されているので、上部フィレット/表面ランド部分の界面端部にかかるはんだ材料の凝固収縮による張力の方向が、基板の表面に対してより鋭角になり、よって、この張力の垂直成分を小さくして、ランド/フィレット界面で剥離させにくくすることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0031】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、ランドが金属皮膜で覆われている接合構造体が提供される。本態様によれば、ランドが、好ましくはランド全体がはんだ材料と接触しないように金属皮膜で覆われているため、金属皮膜とランドとの間で拡散層を形成し、この拡散層は、フローはんだ付けの際、溶融したはんだ材料中に溶出せず、ランド/フィレットの界面に低融点金属が偏析することを回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。この金属皮膜は、好ましくはSn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる皮膜、例えばこのような材料からなるレベラーである。
【0032】
上記のような本発明の種々の構造を有する接合構造体は、それらの特徴を単独で用いてもよいが、相互に組み合せて用いることもできる。
【0033】
本発明の更に別の要旨によれば、スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面ならびにその周囲の基板の表面および裏面上に形成されたランドと;電子部品から引き出され、スルーホールの内部に配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続するフィレットとを有し、はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する接合構造体が提供される。
【0034】
上記のような本発明の接合構造体においては、はんだ材料を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る全ての合金のうちに、元のはんだ材料よりも融点が低い低融点金属または低融点合金が存在せず、よって、フローはんだ付けに用いるはんだ材料そのものの組成に基づくリフトオフの1つの発生要因をなくすことができるため、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0035】
好ましい態様においては、リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する。この場合には、リードのめっき材料の組成とフローはんだ付けに用いるはんだ材料の組成との組合せに基づくリフトオフの更なる発生要因をなくすことができるため、リフトオフの発生を更に低減することが可能となる。
【0036】
更に好ましい態様においては、はんだ材料、母材材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する。この場合には、はんだ材料およびめっき材料に加えて、リードの母材の材料の組成をも考慮することにより、リフトオフの発生を更に低減することが可能となる。
【0037】
はんだ材料は、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される材料からなる鉛フリーはんだ材料であることが好ましい。めっきの材料は、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属であることが好ましい。母材の材料は、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属であることが好ましい。はんだ材料/めっき材料/母材材料の好ましい組合せとしては、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、およびSn−Cu/Sn−Ag/Feなどが挙げられる。
【0038】
もう1つの好ましい態様においては、リードは母材および該母材を被覆するめっきから成り、母材を構成する金属元素の少なくとも1つが、および/またははんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と母材を構成する金属元素との合金の少なくとも1つが、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を更に備える。例えば、母材がZn系合金からなる場合、上記手段は、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきとすることができる。この場合、母材を構成するZn元素がはんだ材料中に溶出せず、低融点金属の形成を回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0039】
このような本発明の接合構造体の材料的な特徴は、上記の構造的特徴を有する種々の本発明の接合構造体と組合せて用いられることが好ましく、これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも顕著に低減することが可能となる。
【0040】
上述のような本発明のすべての接合構造体は、電子部品が基板に接合された接合構造体を含む電子回路基板に好適に用いられ得る。
【0041】
また、本発明のすべての接合構造体は、鉛フリーはんだ材料を用いて電子部品を基板にフローはんだ付けするのに好適に用いられる。尚、本明細書において、鉛フリーはんだ材料とは、実質的に鉛を含有しない、一般的には鉛含有量が0.1重量%以下であるはんだ材料を言う。鉛はんだ材料には、例えば、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Ag−Bi、およびSn−Ag−Bi−Cu、Sn−Ag−Bi−Inなどのはんだ材料が含まれる。
【0042】
本発明は以下の態様1〜33を含むものとする。
【0043】
(態様1) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの内径(または直径)以上であることを特徴とする接合構造体。
【0044】
(態様2) 表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さい、態様1に記載の接合構造体。
【0045】
(態様3) 表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている、態様1に記載の接合構造体。
【0046】
(態様4) 壁面ランド部分がその基板表面側の端部にてテーパー形状を有する、態様1〜3のいずれかに記載の接合構造体。
【0047】
(態様5) 前記スルーホールの近傍に別のスルーホールが基板を貫通して設けられ、前記ランドが該別のスルーホールの壁面を覆い、かつ基板の表面および裏面上にてこれらスルーホール間を接続して形成され、該ランドの基板表面のスルーホール間を接続する部分がはんだレジストで覆われている、態様1〜4のいずれかに記載の接合構造体。
【0048】
(態様6) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体。
【0049】
(態様7) 表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が表面ランド部分の外形よりも小さい、態様6に記載の接合構造体。
【0050】
(態様8) 基板が表面ランド部分と接触して形成された放熱板を含む、態様6または7に記載の接合構造体。
【0051】
(態様9) 壁面ランド部分に切欠き部が形成されている、態様6〜8のいずれかに記載の接合構造体。
【0052】
(態様10) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体。
【0053】
(態様11) 前記突起部が表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の外縁部に位置する、態様10に記載の接合構造体。
【0054】
(態様12) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:リードのスルーホールに挿入されない部分であって、基板の表面側に位置する部分がはんだレジストで覆われ、該はんだレジストによって基板表面からのフィレットの高さが制限されている接合構造体。
【0055】
(態様13) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:ランドが皮膜(例えば金属皮膜)で覆われている接合構造体。
【0056】
(態様14) 前記皮膜が、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様13に記載の接合構造体。
【0057】
(態様15) 態様1〜14のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【0058】
(態様16) はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様1〜14のいずれかに記載の接合構造体。
【0059】
(態様17) はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される、態様16に記載の接合構造体。
【0060】
(態様18) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様16または17に記載の接合構造体。
【0061】
(態様19) めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様18に記載の接合構造体。
【0062】
(態様20) はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様18または19に記載の接合構造体。
【0063】
(態様21) 母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、態様18〜20のいずれかに記載の接合構造体。
【0064】
(態様22) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、態様16または17に記載の接合構造体。
【0065】
(態様23) 母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、態様22に記載の接合構造体。
【0066】
(態様24) 態様16〜23のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【0067】
(態様25) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面ならびにその周囲の基板の表面および裏面上に形成されたランドと;電子部品から引き出され、スルーホールの内部に配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続するフィレットとを有する接合構造体であって:はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する接合構造体。
【0068】
(態様26) はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される、態様25に記載の接合構造体。
【0069】
(態様27) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様25または26に記載の接合構造体。
【0070】
(態様28) めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様27に記載の接合構造体。
【0071】
(態様29) はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様27または28に記載の接合構造体。
【0072】
(態様30) 母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、態様27〜29のいずれかに記載の接合構造体。
【0073】
(態様31) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、態様25または26に記載の接合構造体。
【0074】
(態様32) 母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、態様31に記載の接合構造体。
【0075】
(態様33) 態様25〜32のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、はんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体であって、リフトオフの発生が効果的に低減された構造体ならびにそのような接合構造体を含む電子回路基板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図12において、同様の部材には同様の参照番号を付している。各実施形態において、同様の構成については説明を省略し、異なる点を中心に記載する。
【0078】
(実施形態1)
本実施形態は、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体を含む電子回路基板に関する。図1(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図1(a)は、図1(b)のフィレットを除いた概略上面図である。図1(a)は、フローはんだ付けによりはんだ材料を供給する前の状態の基板の上面図に等しく、後述する図2(a)、図3(a)および図4(a)についても同様である。
【0079】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板20においては、スルーホール2が基板1を貫通して設けられている。スルーホール2の壁面上ならびにスルーホール2を取り囲む基板1の表面(図中の上側面)および裏面(図中の下側面)上にそれぞれ位置する壁面ランド部分3c、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bからなるランドが一体的に形成されている。この表面ランド部分3aおよび/または裏面ランド部分3bは、基板1の表面および/または裏面上に形成された配線パターン(図示せず)に接続されている。他方、電子部品(図示せず)から引き出されたリード(電極)5が、基板1の表面から裏面に向かってスルーホール2を通して配置され、上部フィレット6aおよび下部フィレット6bを含むフィレットによってランドと電気的および物理的に接合されている。より詳細には、フィレットは、フィレットのほぼ中央を通るリード5を除いて、略円錐形状を有する上部フィレット6aおよび下部フィレット6bとこれら上部フィレット6aおよび下部フィレット6bをつなぐ円筒状(スルーホールに等しい)のフィレット部分とで構成される。このフィレットははんだ材料から成り、フローはんだ付けによって形成される。
【0080】
スルーホール2は、リード5が通過し得、またリード5とスルーホール2との間の環状空間をはんだ材料が濡れ上がるのに適する任意の形状を有する。例えば直径約0.5mmの円形断面を有するようなリード5を用いる場合、スルーホール2は直径(D)約0.9〜1.0mmの円筒形状を有する。
【0081】
表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの基板1の主面に平行な平面形状は、スルーホール2の部分を除いて、例えば円形、楕円形、および矩形などの任意の形状であってよい。本実施形態では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの形状は、スルーホール5の部分を除いて円形(表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形)であり、よって、スルーホール5を考慮すればリング状の形状を有するものとする(図1(a)を参照のこと)。ランドは、例えば約30μmの厚さを有する銅箔などの種々の金属材料などから成り得る。
【0082】
また、上部フィレット6aの外形Aは、本実施形態のように表面ランド部分3aの外側の輪郭が円形であり、表面ランド部分3aがはんだレジスト4などにより覆われておらず表面ランド部分3aの全面がはんだ材料で濡れる場合には表面ランド部分の外径(または上部フィレット6a自身の外径)で代表される。下部フィレット6bの外形Bは、上部フィレット6aと同様に、本実施形態のように裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形であり、裏面ランド部分3bがはんだレジスト4などにより覆われておらず裏面ランド部分3bの全面がはんだ材料で濡れる場合には裏面ランド部分3bの外径(または下部フィレット6b自身の外径)で代表される。スルーホール2の大きさDは、本実施形態のようにスルーホール2が円形断面を有する場合にはその直径で代表される。本実施形態によれば、上部フィレット6aの外径(または外形)Aは、下部フィレット6bの外径(または外形)Bよりも小さく、スルーホール2の直径(または大きさ)D以上となり、よって、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上となっている。
【0083】
リフトオフは、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に基板の表面と裏面の両方のランド/フィレット界面で発生し得るが、例えばSn−Cu、Sn−Ag、またはSn−Ag−Cuなどのはんだ材料を用いる場合には、基板の表面側だけで発生することが多い。これは、スルーホールを濡れ上がるにつれてリードのめっき材料などがはんだ材料中により多く溶出することによると考えられる。リフトオフの発生率をより減少させるためには、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面でのクラック発生を低減することが効果的であることが本発明者らにより解っている。上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面でのクラック発生を低減するためには上部フィレット6aの外径をより小さくすることが好ましい。従来の電子回路基板では、上部フィレットの外径は、一般的にスルーホールの直径の約1.5倍よりも大きく、リフトオフの発生率を従来よりも低減するためには上部フィレット6aの外径をより小さく、1.5倍以下とすることが好ましく、より好ましくは1.2倍以下である。また、上部フィレット6aは、スルーホールを埋めるように形成されることが望まれるためスルーホール2の直径以上の外径を有することが好ましい。よって、上部フィレット6aの外径Aは、スルーホール2の直径Dに対して、好ましくは1.0〜1.5倍、より好ましくは1.1〜1.2倍である。
【0084】
他方、下部フィレット6bの外径Bは、裏面側ではあまりリフトオフが発生しないため、従来のものと同程度としてよい。しかし、上部フィレットと表面ランド部分との接触面積が従来よりも減少したことに基づくフィレットとランドとの接合強度の減少を補償し、接合強度を確保するために、下部フィレット6bの外径をより大きくして下部フィレットと裏面ランドとの接触面積を大きくすることが好ましい。下部フィレット6bの外径Bは、スルーホール2の直径Dに対して、好ましくは1.5倍より大きく、より好ましくは2〜3倍である。
【0085】
基板1には、例えば約1.6mmの厚さを有するガラスエポキシ樹脂、紙フェノールなどからなる基板が用いられ得る。基板1に接合される電子部品としては、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、インダクタなどのリード付チップ部品ならびにコネクタなどであってよい。
【0086】
本実施形態によれば、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形(または外径)が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形(または外径)よりも小さく、スルーホールの大きさ(または直径)以上である構造が提供される。このような構造により、上部フィレットの外径が下部フィレットのある外径に対して大きい場合または等しい場合よりも、上部フィレットの傾斜している露出領域をより小さくでき、よって、はんだ材料の凝固収縮により上部フィレット/表面ランド界面に加わる張力を低減することができる。リフトオフの発生は、クラックの発生を少なくとも表面側において防止すれば効果的に低減されることが本発明者らにより解っているため、本実施形態のように上部フィレット/表面ランド界面に加わる張力を小さくしてクラックの発生を低減することにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果を奏することができる。更に、本実施形態の接合構造体は製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0087】
これに加えて、このような電子回路基板20において、フィレットのはんだ材料を構成する全ての金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料が選択されていることが好ましい。具体的な材料としては、はんだ材料には、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuなどを用いることが好ましい。
【0088】
また、一般的にリード5は母材(図示せず)と該母材を被覆するめっき(図示せず)とにより構成されるが、フィレットの形成の際にめっき材料がはんだ材料中へ溶融する場合、はんだ材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料およびめっき材料が選択されることが好ましい。更に、めっきおよび母材の両方の材料がはんだ材料中へ溶融し得る場合には、はんだ材料、母材およびめっきの材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料、母材の材料およびめっきの材料が選択されることが好ましい。
【0089】
具体的な材料としては、リード5の母材の材料には、例えばCu、Fe、およびFe−Cu合金など、めっき材料には、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどが用いられ得る。はんだ材料/めっき材料/母材材料の組合せが、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、またはSn−Cu/Sn−Ag/Feなどであることがより好ましい。
【0090】
このように好ましくははんだ材料、より好ましくははんだ材料およびめっき材料の組合せ、更に好ましくははんだ材料、めっき材料および母材材料の組合せを選択することにより、フィレット内の温度勾配に起因してランド/フィレット界面近傍に低融点金属が偏析しない。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を更に効果的に低減することが可能となる。
【0091】
しかし、本発明はこれに限定されず、はんだ材料、母材材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金のうちの1つまたはそれ以上が、元のはんだ材料の融点より低い融点を有していてもよい。
【0092】
例えば、リード5の母材が、はんだ材料中に溶融して低融点金属(Sn−Zn合金:融点199℃)を形成し得るようなZn系合金からなるものを用いてもよい。このように、母材材料を構成する元素がはんだ材料および/またはめっきを構成する金属元素と合金を形成して低融点合金となる場合、または母材を構成する金属元素そのものが低融点金属となる場合には、母材とめっきとの間にNiからなる下地めっきを施して、この上から例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどの材料からなるめっきを施すことが好ましい。これにより、母材材料のZn元素がはんだ材料中に溶出せず、低融点金属の形成を回避でき、これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0093】
(実施形態2)
本実施形態は、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの実施形態である。図2(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図2(a)は、図2(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0094】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板21においては、表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4で覆われている。より詳細には、図2(a)に示すように、図中に点線で示される円形の境界と、スルーホール2の輪郭に等しい円形の境界との間の領域にある表面ランド部分3aのうち、その外縁部がはんだレジスト4(図中に斜線にて示される)により覆われることによって、表面ランド部分3aの露出部がはんだレジスト4により制限されている。本実施形態のように表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4により覆われており、表面ランド部分3aの露出部の輪郭が円形であってその露出部だけがはんだ材料で濡れる場合には、上部フィレット6aの外形Aは、表面ランド部分の露出部の外径(または上部フィレット6aの外径)で代表される。下部フィレット6bの外形Bは、実施形態1と同様に裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形であってその全面がはんだ材料で濡れる場合には裏面ランド部分3bの外径(または下部フィレット6bの外径)で代表される。スルーホール2の大きさDは、実施形態1と同様に、スルーホール2が円形断面を有する場合にはその直径で代表される。実施形態によれば、上部フィレット6aの外径(または外形)Aは、下部フィレット6bの外径(または外形)Bよりも小さく、スルーホール2の直径(または大きさ)D以上となり、よって、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上となっている。
【0095】
本実施形態においても実施形態1と同様に、スルーホールの直径Dに対して、上部フィレット6aの外径Aは、好ましくは1.0〜1.5倍、より好ましくは1.1〜1.2倍であり、下部フィレット6bの外径Bは、好ましくは1.5倍より大きく、より好ましくは2〜3倍である。
【0096】
尚、図2においては、表面ランド部分3aの外径が裏面ランド部分3bの外径にほぼ等しいものとして示しているが、本発明はこれに限定されず、表面ランド部分3aの外形(例えば外径)が裏面ランド部分3bの外形(外径)より大きくても、小さくてもよい。表面ランド部分3aの外形(例えば外径)を裏面ランド部分3bの外形(外径)より大きくする場合には、後述の実施形態5による効果をも奏することが可能となる。
【0097】
本実施形態の接合構造体によっても、実施形態1と同様に、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である構造が提供され、よって、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果を奏する。更に、本実施形態の接合構造体もまた、実施形態1と同様に製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0098】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態2を改変したものである。図3(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図3(a)は、図3(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0099】
図3(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板22においては、スルーホール2の基板1の表面側の端部が面取りされ、壁面ランド部分3cが表面側の端部にテーパー形状(または傾斜部)7を有し、このテーパー形状を通じて表面ランド部分3aと繋がっている。
【0100】
本実施形態においては、壁面ランド部分の表面側端部をテーパー形状とすることにより、はんだ材料が凝固する過程においてテーパー形状の近傍領域が最も高温となり、低融点金属がその領域に溜まって、フィレットの外周端部付近に析出するのを低減できる。また、このようなテーパー形状によって、フィレットとランドとの間の接合強度を向上させて、フィレットとランドとの間の接合がはんだの凝固収縮による張力に抗することができる。これにより、実施形態2の場合よりも更にリフトオフの発生を低減することができる。
【0101】
本実施形態においては、テーパー形状を壁面ランド部分の基板表面側の端部にのみ設けるものとしたが、裏面側端部にのみ、あるいはこれらの両方に設けてもよい。リフトオフの発生は、クラックの発生を少なくとも表面側において防止すれば効果的に低減されることが本発明者らにより解っているため、テーパー形状を少なくとも基板表面側に設けることが好ましい。
【0102】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1の電子回路基板の接合構造体に組み合わせて利用することも可能である。
【0103】
(実施形態4)
本実施形態は実施形態2を改変したものである。図4(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図4(a)は、図4(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0104】
図4(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板23においては、スルーホール2の近傍に別のスルーホール8が基板1を貫通して設けられている。ランド3は、スルーホール2だけでなく、スルーホール8の壁面をも覆い、基板1の表面および裏面上にてスルーホール2および8の間(図中の3dおよび3eの部分)の領域を覆って、スルーホール2および8の壁面を覆うランド部分同士が接続されて一体的に形成されている。基板1の表面において、ランド3のスルーホール2およびスルーホール8の間を接続する部分3dは、はんだレジスト4で覆われている。
【0105】
本実施形態の接合構造体においても、実施形態2と同様に、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上である。これにより、実施形態2と同様に、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果が得られる。
【0106】
更に、本実施形態の構造体によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0107】
一般的には、はんだ材料からなるフィレットを形成する際、溶融状態のはんだ噴流から高い熱伝導性を有するランド(例えば銅)を通して伝導された熱は表面ランド部分3aの外縁部から放出される。しかし、本実施形態によれば、スルーホール間のランド部分3dは、スルーホール2だけでなくスルーホール8を通じても熱供給されるため、スルーホール2および8の間を接続するランド部分3dが、スルーホール2の周囲にある他の表面ランド部分3aよりも高い温度を有する。従って、局所的に温度が高い部分(即ち、スルーホール2および8の間のランド部分3d)を基板表面に設けることができ、これにより、低融点金属の偏析を該高温部分3dに集中させて、クラックの発生箇所を該部分3dに積極的に集中させることにより、他の部分でのクラックの発生を相対的に低減することができる。これにより、リフトオフが発生しても、部分3dの近傍でしか剥離が起こらず、フィレットが完全にリフトオフすることが回避できる。
【0108】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1および3の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0109】
(実施形態5)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関する。図5は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0110】
図5に示すように、本実施形態の電子回路基板24では、表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4で覆われ、このはんだレジスト4によってフィレット6の形成が制限されて、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形(例えば外径)Aが、表面ランド部分3aの外形(例えば外径)Eよりも小さくなっている。表面ランド部分3aの外形Eは、好ましくは裏面ランド部分3bの外形Fよりも大きい。スルーホールの直径Dに対して、上部フィレット6aの外径Aは、好ましくは1〜5倍、より好ましくは1〜1.5倍であり、裏面ランド部分3b(または下部フィレット6b)の外径Fは、好ましくは2〜5倍である。表面ランド部分3aの外径Eは、裏面ランド部分3b(または下部フィレット6b)の外径Fに対して好ましくは1〜3倍である。
【0111】
本実施形態によれば、表面ランド部分3aがフィレット6aに接触しない外縁部を有し、はんだ材料からなるフィレットの形成の際に、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して伝導された熱を表面ランド部分3aの外縁部から効果的に放出させることができる。これにより、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。更に、本実施形態の接合構造体は製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0112】
本実施形態においては、フィレットに接触しない放熱用外縁部を表面ランド部分にのみ設けるものとしたが、裏面ランド部分にのみ、あるいはこれらの両方に設けてもよい。しかし、放熱用外縁部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0113】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態2〜4の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0114】
(実施形態6)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの実施形態である。図6は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0115】
図6に示すように、本実施形態の電子回路基板25では、表面ランド部分3aに接触する放熱板9が基板1に埋設されている。
【0116】
本実施形態によれば、上記のような放熱板9によって、実施形態5と同様に、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して伝導された熱を効果的に逃がすことができる。これにより、実施形態5と同様に、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0117】
本実施形態においては、放熱板を表面ランド部分に接触して基板表面にのみ設けるものとしたが、裏面ランド部分に接触して基板裏面にのみ設けてもよく、あるいはこれらの両方を設けてもよい。しかし、放熱板は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0118】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜5の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0119】
(実施形態7)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの別の実施形態である。図7は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0120】
図7に示すように、本実施形態の電子回路基板26では、壁面ランド部分3cに切欠き部10が形成されてランドのエッジ部が落とされており、これにより、表面ランド部分3aと裏面ランド部分3bが少なくとも部分的に隔離されている。
【0121】
本実施形態によれば、上記のような切欠き部10によって、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して供給される熱の伝導経路を制限(表面ランド部分3aが完全に隔離される場合には断絶)することによって、表面ランド部分3aへの熱供給量を減少させることができる。これにより、実施形態5と同様に、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0122】
本実施形態においては、切欠き部を壁面ランド部分の基板表面側のエッジに設けるものとしたが、壁面ランド部分の任意の位置に形成することができ、切欠き部は、任意の形状を有していてよい。表面ランド部分と裏面ランド部分との導通は失われていても、保たれていてもよい。
【0123】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜6の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0124】
(実施形態8)
本実施形態は、表面ランド部分および裏面ランド部分上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図8は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0125】
図8に示すように、本実施形態の電子回路基板27では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bに2つのリング状突起部11をそれぞれ有する。
【0126】
本実施形態によれば、上記のような突起部11によってランド/フィレット界面でのクラックの進行を停止し、上部フィレット6aと表面ランド部分3a、ならびに下部フィレット6bと裏面ランド部分3bとの接合強度を向上させることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0127】
ただし、突起部11の数および形状はこれに限定されるものではなく、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの上に凹凸が形成されるものであればよく、例えば、突起部が表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの上にドット状に形成されていてもよい。
【0128】
また、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3cの両方の上に突起部が設けられている必要はなく、いずれか一方の上に設けられていてもよい。しかし、突起部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0129】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜7の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0130】
(実施形態9)
本実施形態は、実施形態8を改変したものである。図9(a)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図9(b)は、図9(a)の部分拡大図である。
【0131】
図9(a)に示すように、本実施形態の電子回路基板28では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの外縁部に1つのリング状突起部12をそれぞれ有する。
【0132】
本実施形態によれば、上記のような突起部12によって、フィレットが凝固する過程における凝固収縮による張力(図9(b)に破線矢印にて示す)は、上部フィレット6aおよび突起部12の界面に作用し、ここで発生したクラックの拡大(進行)方向は、上部フィレット6a/突起部12の界面に沿って下方となる。これにより、クラックの進行方向を上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面に沿った方向でなく、上部フィレット6a/突起部12の界面に沿った方向にすることができ、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、本実施形態によっても、実施形態8と同様に、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0133】
また、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3cの両方の上に突起部が設けられている必要はなく、いずれか一方の上に設けられていてもよい。しかし、突起部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0134】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1、6、7、および8の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0135】
(実施形態10)
本実施形態は、リードが部分的にはんだレジストで覆われた接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図10は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0136】
図10に示すように、本実施形態の電子回路基板29では、リード5のスルーホール2に挿入されない部分であって、基板1の表面側に位置する部分がはんだレジスト13で覆われ、これにより上部フィレット6aの基板1の表面からの高さが制限されている。
【0137】
本実施形態によれば、上記のようなはんだレジスト13でフィレット6の高さが制限されることにより、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面端部にかかるはんだ材料の凝固収縮による張力(図10(b)に破線矢印にて示す)の方向を、基板1の主面に対して従来より鋭角にして、該張力の垂直成分を小さくし、ランド/フィレット界面を剥離させにくくすることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0138】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜9の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0139】
(実施形態11)
本実施形態は、ランドとはんだ材料とが直接接触しないようにランドが金属皮膜で覆われている接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図11は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0140】
図11に示すように、本実施形態の電子回路基板30では、ランド上、即ち表面ランド部分3a、壁面ランド部分3c、および裏面ランド部分3bの上に金属皮膜14が形成されている。金属皮膜14は、例えばいわゆる「レベラー」などの金属皮膜であり得、好ましくはSn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなり、約10〜100μmの厚さを有する。
【0141】
本実施形態によれば、上記のような金属皮膜14でランドが覆われていることによって金属皮膜とランドとの間で拡散層を形成し、これにより表面ランド部分3a、裏面ランド部分3bおよび壁面ランド部分3cのいずれもが、はんだ材料と直接的に接触しない。この拡散層により、フローはんだ付けの際、溶融したはんだ材料中に溶出せず、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面に低融点金属が偏析することを回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0142】
上記のようなレベラー(金属皮膜)は、当該技術分野において既知の方法によって形成することができる。
【0143】
また、本実施形態においては、表面、壁面および裏面ランド部分からなるランドの表面全てを覆うものとしたが、表面ランド部分のみを金属皮膜で覆うようにしてもリフトオフを有る程度低減することができる。この場合、クリームはんだなどのはんだ材料を基板表面に印刷する工程において、金属皮膜(レベラー)を表面ランド部分に同時に形成することもできる。
【0144】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜10の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0145】
(実施形態12)
本実施形態は、従来の電子回路基板と実質的に同様の構造(または構成)を有するが、リードの母材の材料およびめっきの材料ならびにはんだ材料の組合せが適切に選択されている点で異なるものである。
【0146】
図12に示すように、本実施形態の電子回路基板31においては、スルーホール2が基板1を貫通して設けられている。スルーホール2の壁面上ならびにその周囲の基板1の表面(図中の上側面)および裏面(図中の下側面)上に、それぞれ壁面ランド部分3c、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bからなるランドが一体的に形成されている。このランドは、例えば銅からなり、基板1の表面および/または裏面上に形成された配線パターン(図示せず)に接続されている。他方、電子部品(図示せず)から引き出されたリード(電極)5が、スルーホール2を通って配置され、はんだ材料からなる、上部フィレット6aおよび下部フィレット6bを含むフィレットによって基板1のランド3と電気的および物理的に接合されている。図12には、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bは実質的に同じ外形を有するものとして示すが、本発明はこれに限定されない。代表的には、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bは、外径2〜3mmのリング状の平面形状を有する。またランドは、例えば約30μmの厚さを有し得る。
【0147】
基板1には、例えば約1.6mmの厚さを有するガラスエポキシ樹脂、紙フェノールなどからなる基板が用いられ得る。また、スルーホール2は、リード5が通過し得、またリード5とスルーホール2との間の環状空間をはんだ材料が濡れ上がるのに適する任意の形状を有し得るが、例えば直径約0.5mmの円形断面を有するようなリード5を用いる場合、直径約0.9〜1.0mmの円筒形状を有する。基板1に接合される電子部品5としては、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、インダクタなどのリード付チップ部品ならびにコネクタなどであってよい。
【0148】
このような電子回路基板31においては、フィレット6のはんだ材料を構成する全ての金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料が選択されている。
【0149】
具体的な材料としては、はんだ材料には、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuなどを用いることができる。
【0150】
また、一般的にリード5は母材(図示せず)と該母材を被覆するめっき(図示せず)とにより構成されるが、フィレットの形成の際にめっきの材料がはんだ材料中へ溶融する場合、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料およびめっきの材料が選択されることが好ましい。更に、めっきおよび母材の材料の両方がはんだ材料中へ溶融し得る場合には、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料、母材およびめっきの材料が選択されることが好ましい。
【0151】
具体的な材料としては、リード5の母材には、例えばCu、Fe、およびFe−Cu合金など、めっきには、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどからなるものを用いることができる。
【0152】
はんだ材料/めっき材料/母材材料の好ましい組合せとしては、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、およびSn−Cu/Sn−Ag/Feなどが挙げられる。
【0153】
本実施形態によれば、はんだ材料、好ましくははんだ材料およびめっき材料、更に好ましくははんだ材料、母材材料およびめっき材料は、各材料を構成する金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金がはんだ材料の融点以上の融点を有するように選択されている。従って、低融点金属が形成されず、フィレット内の温度勾配に起因してランド/フィレット界面近傍に低融点金属が偏析しない。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0154】
(実施形態13)
本実施形態は、実施形態12と同様の構成を有するが、はんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と、母材を構成する金属元素との合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有する点で異なる。
【0155】
具体的には、本実施形態ではリードの母材として、例えばZn系合金などの材料を用いている。Zn系合金に含まれるZn金属元素ははんだ材料中に溶融して、例えばはんだ材料および/またはめっきを構成するSn金属元素と共にSn−Zn合金(融点199℃)を形成する。はんだ材料は、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Bi−Cuなどの鉛フリーはんだ材料であり、この場合Sn−Zn合金ははんだ材料よりも融点が低い低融点合金となる。更に、本実施形態においては、母材とめっきとの間にNiの下地めっきを施して、この上から、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどの材料からなるめっきを施している点で実施形態12と異なる。Niは非常に高い融点を有するので、Niの下地めっきで母材を覆うことにより、母材のZn金属元素がはんだ材料中に溶融することが回避される。
【0156】
このような構成により、母材を構成するZn金属元素がはんだ材料中に溶出せず、Zn金族元素を含むSn−Zn低融点合金の形成を回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0157】
(実施例1)
実施形態1について、フローはんだ付けに用いるはんだ材料および上部フィレットの外形を種々に変化させて接合構造体を作製し、そのリフトオフの発生率を調べた。
【0158】
基板として、厚さ約1.6mm、縦約180mm、横約300mmの寸法を有するガラスエポキシ樹脂からなる基板を用いた。この基板には、直径約1.3mmの円筒状のスルーホールが基板の主面に対して垂直に設けられていた。基板に設けるランドの材料は銅とした。表面ランド部分および裏面ランド部分はいずれも中央部にスルーホールが位置するリング形状とした。裏面ランド部分の外径(リング外径)を約2.0mmとし、裏面ランド部分の全体が露出するように裏面ランド部分を除く基板の裏面をはんだレジストで覆った。この裏面ランド部分の外径は、スルーホールの直径の約1.54倍となる。表面ランド部分のリング外径を約1.5mm、1.7mm、および2.0mmとし、表面ランド部分の全体が露出するように表面ランド部分を除く基板の表面をはんだレジストで覆った。これら表面ランド部分の外径は、スルーホールの直径のそれぞれ約1.15倍、1.31倍、および1.54倍となる。基板に接合する電子部品としてはダイオードを用いた。ダイオードから引き出されたリードは、直径約0.8mmの円形断面を有する棒状体であり、Cuからなる母材にSn−Pbめっき(Pb5〜15%、Sn残部)が施されて構成されていた。ダイオードから引き出されたリードを基板のスルーホールに挿入し、フローはんだ付けによりダイオードのリードと基板のランドとを接合し電子回路基板を作成した。このフローはんだ付けは、Sn−3Ag−0.5Cu(即ち、約3重量%のAg、約0.5重量%のCuおよびSn残部からなる合金)およびSn−0.7Cu(即ち、約0.7重量%のCuおよびSn残部からなる合金)をはんだ材料として用い、これら2つのはんだ材料の各々につきリング外形の異なる3種の基板に対してフローはんだ付けを実施した。得られた電子回路基板の上部フィレットの外径は、表面ランド部分の外径に実質的に等しかった。
【0159】
以上のようにして得られた電子回路基板のリフトオフの発生率を調べた。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
表1より、上部フィレットの外径(本実施例では表面ランド部分の外径に等しい)を1.54倍とするよりも、1.31倍、更には1.15倍としたほうがリフトオフの発生率が低下することが解る。これより、上部フィレットの外径を小さくすることによりリフトオフの発生率が減少する傾向にあることが理解されよう。
【0162】
(実施例2)
実施形態2について、フローはんだ付けに用いるはんだ材料および上部フィレットの外形を種々に変化させて接合構造体を作製し、そのリフトオフの発生率を調べた。本実施形態は、表面ランド部分の外径を全て約2.0mmとし、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストで覆って、表面ランド部分のはんだレジストから露出している部分の外径を約1.5mm、1.7mm、および2.0mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電子回路基板を作製した。これら表面ランド部分の露出部の外径は、スルーホールの直径のそれぞれ約1.15倍、1.31倍、および1.54倍となり、得られた電子回路基板の上部フィレットの外径は、表面ランド部分の露出部の外径に実質的に等しかった。
【0163】
以上のようにして得られた電子回路基板のリフトオフの発生率を調べた。結果を表2に示す。
【0164】
【表2】
【0165】
表2より、上部フィレットの外径(本実施例では表面ランド部分のはんだレジストに覆われていない露出部の外径に等しい)を1.54倍とするよりも、1.31倍または1.15倍としたほうがリフトオフの発生率が低下することが解る。これより、実施例1と同様に、上部フィレットの外径を小さくすることによりリフトオフの発生率が減少する傾向にあることが理解されよう。
【産業上の利用の可能性】
【0166】
本発明は、フローはんだ付けによって電子部品が基板に接合され、リフトオフの発生が効果的に低減された接合構造体、およびそのような接合構造体を含む電子回路基板を提供する。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1(a)は、本発明の1つの実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図1(b)は、図1(a)の概略断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図2(b)は、図2(a)の概略断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図3(b)は、図3(a)の概略断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図4(b)は、図4(a)の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図であり、図9(b)は、図9(a)の部分拡大図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図12】図12は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図13】図13は、従来の電子回路基板において、1つの電子部品が基板に接合されている様子を示す概略部分断面図である。
【図14】図14(a)は、図13のフィレット近傍の(フィレットを除く)上面拡大図であり、図14(b)は、図14(a)の概略断面図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体、およびこれを含む電子回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品をプリント基板などの基板に接合して電子回路基板を作製する1つの方法として、いわゆる「フローはんだ付け」を用いる方法がある。図13は、従来のフローはんだ付け方法に従って作製された電子回路基板の概略部分断面図であり、図14(b)は、図13の部分拡大図であり、図14(a)は図14(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0003】
図13および図14に示すように、一般的な従来のフローはんだ付け方法においては、まず、電子部品67から引き出されたリード65(例えば電極)を、基板61に貫通して設けられたスルーホール62の空洞に基板61の表面(図中の上側面)から挿入して裏面(図中の下側面)へ通す。このとき、スルーホール62の壁面ならびに該壁面の周囲に位置する基板61の表面および裏面上の領域には、例えば銅箔などからなるランド63(図13)が形成されており、それぞれ壁面ランド部分63c、表面ランド部分63a、裏面ランド部分63bとする(図14(b))。このランド63は、基板61の表面または裏面に形成された回路パターン(図示せず)に接続されている。また、ランド63を除く基板61の表面および裏面上は、はんだレジスト64(図13に斜線を付して示す)によって覆われている。
【0004】
その後、基板61の裏面側から、加熱により溶融させたはんだ材料を噴流の形態で基板61に接触させる。溶融状態のはんだ材料は、リード65が挿入されたスルーホール62の内部の環状空間(図14(a)を参照のこと)を毛管現象によって濡れ上がり、表面ランド部分63aおよび裏面ランド部分63bの表面で濡れ広がる。その後、はんだ材料は温度低下により固化して図13および図14(b)に示すように接合部66(図14(a)に示さず)を形成する。このとき、はんだレジスト64で覆われた領域にははんだ材料は付着しない。
【0005】
以上のようにして、はんだ材料からなる接合部、いわゆる「フィレット」(以下、このような接合部を単に「フィレット」と言うものとする)66が形成される。これにより、電子部品67のリード65と基板61に形成されたランド63とを電気的および物理的に接合して、電子回路基板70が作製される。
【0006】
【特許文献1】特開平08−181424号公報
【特許文献2】特開平11−186712号公報
【特許文献3】特開2000−307223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のようにして作製される電子回路基板においては、従来、SnおよびPbを主要構成成分とするSn−Pb系のはんだ材料、特にSn−Pb共晶はんだ材料が一般的に用いられている。しかし、Sn−Pb系はんだ材料に含まれる鉛は、不適切な廃棄物処理により環境汚染を招く可能性があるため、鉛を含有するはんだ材料の代替として、鉛を含まないはんだ材料、いわゆる「鉛フリーはんだ材料」が工業規模で使用され始めている。しかし、鉛フリーはんだ材料を用いて、上記のようなフローはんだ付け方法により電子回路基板を作製すると、図14(b)に示すように、上部フィレット66aおよび/または下部フィレット66bがそれぞれ表面ランド部分63aおよび/または裏面ランド部分63bから剥離して、ランドとフィレットとの間の接合が不十分になるという問題がある。このような現象は一般に「リフトオフ」と呼ばれ、電子回路基板の高い信頼性を得るには電子部品のリードとランドとの間で十分に高い接合強度が要求されるため好ましくない。Sn−Pb共晶はんだ材料を用いる場合にはこのようなリフトオフはほとんど発生せず、問題視されていなかったが、近年、鉛フリーはんだ材料を用いる場合にリフトオフが顕著に発生することが知られ、リフトオフの発生が問題となっている。現在、従来のSn−Pbはんだ材料から鉛フリーはんだ材料への移行が推進されており、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に特有の問題であるリフトオフを防止することは電子回路基板の作製において非常に重要である。
【0008】
鉛フリーはんだ材料を用いる場合に上述のようなリフトオフが発生する要因については、一般的に以下の2つのタイプが考えられている。
【0009】
1つの要因としては、フローはんだ付けに用いる鉛フリーはんだ材料そのものの組成に起因するものが考えられる。より詳細には、はんだ材料として例えばSn−Ag−Bi系合金を用いると、このSn−Ag−Bi系合金を構成する各金属元素(即ち、Sn、Ag、Bi)およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る合金(即ち、Sn−Ag系合金、Sn−Bi系合金、Ag−Bi系合金)のうち、Sn−Bi共晶合金は、元のSn−Ag−Bi系合金の融点(約200℃)よりも低い融点(約138℃)を有する。以下、このように、元のはんだ材料よりも低い融点を有する金属および/または合金を単に低融点金属(または低融点合金)とも言うものとする。Sn−Ag−Bi系合金については、Sn−Bi共晶合金が低融点金属となる。
【0010】
よって、この場合、溶融状態で基板に供給されたSn−Ag−Bi系合金が徐々に固化する際、元のSn−Ag−Bi系合金に比べて低融点のSn−Bi共晶合金は、フィレット内の温度勾配によって、まだ固化していない溶融部分へ移動して濃縮される。この結果、Sn−Bi共晶合金は、フィレット内の最高温部、即ち最も固化が遅くなる部分に集まって偏析する。ここで、フィレットの上方部分(上部フィレット)における最高温部は、熱の良導体である銅箔からなるランドとフィレットとの界面(以下、単にランド/フィレット界面とも言う)の近傍領域であり、図14(b)に示すように、このランド/フィレット界面の近傍にSn−Bi共晶合金などの低融点合金75が集まって偏析する。フィレットが凝固する過程で、まだ溶融状態にあって強度の弱い基板面上のランド/フィレット界面付近の低融点合金に、凝固収縮による張力(図14(b)に破線矢印にて模式的に上部フィレット66aについてのみ示す)が作用すると、ランド/フィレット界面の外周部からクラックが発生し、凝固が外周部から内部へ進行するにつれてクラックもフィレット66aおよび66bの内部(または中央部)へと向かって拡大していく。このようにしてフィレットに形成されたクラックのために、図14(b)に示すように、フィレットの外周端部71がランド72の外周端部から剥離してリフトオフが発生すると考えられる。
【0011】
もう1つの要因としては、リード65の材料とフィレット66のはんだ材料との組合せに起因するものが挙げられる。リード65と溶融状態で接触するはんだ材料として、例えばSn−0.7Cu共晶合金(即ち、0.7重量%のCuおよびSn残部からなる合金)を用いる場合には、このはんだ材料を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る合金のうち、元のSn−Cu共晶合金の融点(約227℃)よりも融点が低い低融点金属または低融点合金は存在しないため、上述の要因は当て嵌まらない。しかし、このような場合であっても上記のようなクラックが形成され、リフトオフが発生し得る。これは、リード材料、例えばリードのめっきの材料とフローはんだ付けに用いるはんだ材料との組合せに依存して起こると考えられる。
【0012】
一般的に、リード65は、母材と該母材を被覆するめっき(以下、単に「めっき」とも言うものとする)とからなる。通常、リードはSn−Pb系めっきが施されているが、この場合、溶融状態の高温のはんだ材料がスルーホール62内を濡れ上がる際、はんだ材料とめっきとが接触してめっき成分がはんだ材料中に溶け出し得る。Sn−Pb共晶合金は、はんだ材料であるSn−Cu共晶合金の融点(約227℃)よりも低い融点(約183℃)を有するため、溶融したSn−Cu共晶合金が固化(凝固)する際、上記と同様の過程を経て、低融点のSn−Pb共晶合金がランド/フィレット界面近傍に偏析して、リフトオフを発生させ得る。
【0013】
上述のSn−Cu系はんだ材料とSn−Pb系めっき材料との組合せ以外にも、例えばSn−Cu(融点約227℃)、Sn−Ag−Cu(融点約220℃)などのフロー付けに一般的に用いられている鉛フリーはんだ材料とBi、Zn、またはIn金属元素を含むめっきを用いる場合、Sn−Bi(融点約138℃)、Sn−Zn(融点199℃)またはSn−In(融点約118℃)などの低融点合金を構成し得る。このように、はんだ材料だけでなく、はんだ材料およびリード(例えばめっき)を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の2つまたはそれ以上の任意の組合せで構成され得る合金のうち、元のはんだ材料よりも低融点のものが存在する場合にリフトオフが発生する。
【0014】
これら2つの要因は、いずれもランド/フィレット界面近傍に、フィレット本体を構成する合金の組成(実質的に元のはんだ材料の組成に等しい)と異なる組成の低融点合金(または低融点金属)が析出することに起因する。また、実際には、これら2つの要因が組み合わされる場合もある。
【0015】
従来のSn−Pb共晶はんだ材料およびSn−Pb系めっき材料の組合せでは、上記のような2つの要因のいずれもが無く、リフトオフの発生が問題にならなかったものと考えられる。リフトオフの発生は鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著に発生し、鉛フリーはんだ材料に特有の問題であると言える。
【0016】
本発明は上記の従来の課題を解決すべくなされたものであり、本発明の目的は、フローはんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体であって、リフトオフの発生が効果的に低減された構造体ならびにそのような接合構造体を含む電子回路基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、フローはんだ付けにおけるリフトオフの発生を効果的に低減すべく、接合構造体の構造面および材料面のそれぞれおよびこれらの両面からアプローチして、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明の1つの要旨においては、スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;ランドおよびリードを接続するようにフローはんだ付けによってはんだ材料を用いて形成され、基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体が提供される。
【0019】
尚、本明細書において上部フィレットまたは下部フィレットの外形とは、基板の主面(または表面もしくは裏面)に対して実質的に平行な断面において、フィレットの面積が最大となるときのフィレット断面の外側の輪郭またはその断面積を言い、一般的には、フローはんだ付けにより基板に供給された溶融状態のはんだ材料が濡れ広がる表面ランド部分または裏面ランド部分の露出部の外側の輪郭またははんだ材料により濡れた面積に等しい。上部フィレットまたは下部フィレットの外形は、通常、表面ランド部分または裏面ランド部分の露出部がリング状の形状を有する(よって円形の外側輪郭を有する)場合には、露出部の外径(直径)で代表される。本明細書において、表面ランド部分または裏面ランド部分の「露出部」とは、フローはんだ付けによりはんだ材料を供給するに際して露出しており、はんだ材料と接触するようになる部分を言うものとする。
【0020】
上記のような本発明の接合構造体においては、上部フィレットの外径が下部フィレットの外径よりも小さいため、上部フィレットの外径が下部フィレットの外径に対して大きい場合または等しい場合よりも、上部フィレットの傾斜している露出領域をより小さくでき、よって、はんだ材料の凝固収縮により生じる張力を低減することができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0021】
本発明の1つの態様においては、表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さく、および/または表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている。表面ランド部分の外径が裏面ランド部分の外径より小さくなるようにランドを形成しておくことによって、上部フィレットの外径を下部フィレットの外径より小さくすることができる。また、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストで覆って、表面ランド部分の露出部の外径を表面ランド部分自体の外径より小さくし、更に表面ランド部分の露出部の外径が裏面ランド部分の外径より小さくすることによっても、上部フィレットの外径を下部フィレットの外径より小さくすることができる。尚、表面ランド部分または裏面ランド部分の外形とは、基板の表面または裏面に形成されたままのランドの外側の輪郭または表面または裏面に平行な面上の面積を言うものとする。
【0022】
好ましい態様においては、壁面ランド部分がその基板表面側の端部にてテーパー形状を有する。このようなテーパー形状を設けることにより、凝固過程においてはんだ材料はテーパー形状の近傍領域にて最も高温となり、低融点金属がその領域に溜まって、フィレットの外周端部付近に析出するのを低減できる。また、このようなテーパー形状によって、フィレットとランドとの間の接合強度を向上させて、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に抗することができる。これにより、リフトオフの発生を更に低減することができる。
【0023】
好ましい態様においては、上記スルーホールの近傍に別のスルーホールが基板を貫通して設けられ、上記ランドが該別のスルーホールの壁面を覆い、かつ基板の表面および裏面上にてこれらスルーホール間の領域を覆うように、ランドが接続されて形成され、基板表面のスルーホール間に位置するランド部分がはんだレジストで覆われている。このような構成においては、凝固過程においてはんだ材料は2つのスルーホール間に位置する部分にて最も高温となり、よって、2つのスルーホール間のランド部分の近傍に低融点金属を積極的に偏析させ、他のランド/フィレット界面近傍で析出する低融点金属を相対的に減少させることができる。これにより、クラックの発生をスルーホールの間の領域に集中させることができ、リフトオフがわずかに発生しても、ごく一部の領域、即ちスルーホールの間の近傍領域で積極的に起こさせ、その他の領域で起こりにくくして、全面的なリフトオフの発生を回避することが可能となる。
【0024】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、またはこれに加えて、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体が提供される。具体的には、以下に示すような態様がある。
【0025】
本発明の1つの態様においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形は表面ランド部分の外形よりも小さい。これにより、上部フィレットと接触していない表面ランド部分の領域を通じてはんだ材料の熱を逃がすことができるため、表面ランド部分の温度を下げて、温度上昇を抑制することができ、この領域に偏析する低融点金属を低減することができる。この結果、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。例えば、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストなどで予め覆った基板をフローはんだ付けすることにより上部フィレットの外形を表面ランド部分の外形よりも小さくすることができる。
【0026】
本発明のもう1つの態様においては、基板は表面ランド部分と接触して形成された放熱板を含む。この場合、はんだ材料から表面ランド部分に伝導された熱を放熱板へ逃がすことができるため、上記態様と同様に表面ランド部分の温度上昇を抑制することができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。放熱板は、例えば、ランドを形成する前に予め基板に埋め込んで設け、この放熱板に表面ランド部分が接触するようにランドを形成するようにしてよい。
【0027】
本発明のもう1つの態様においては、壁面ランド部分に切欠き部が形成されている。はんだ材料が放熱により温度低下して、その露出部から次第に凝固する際、フィレット全体では、上部フィレットおよび下部フィレットの間のフィレット部分が最も高温であり、従来、この部分のはんだ材料の熱が壁面ランド部分を通じて表面ランド部分に伝わることにより、表面ランド部分/フィレット界面近傍が高温となっていた。しかし、本態様のように壁面ランド部分に切欠き部を設けることにより、上部フィレットおよび下部フィレットの間のフィレット部分からの壁面ランド部分を介する熱の供給を遮断し、よって、表面ランド部分の温度を従来よりも速く低下させ、表面ランド部分の温度上昇を抑制することができる。これにより、この領域に偏析する低融点金属を低減し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0028】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体が提供される。本態様によれば、表面ランド部分および/または裏面ランド部分に突起部が設けられているので、ランド/フィレット界面における外周端からリードの方向に向かうクラックの進行を突起により停止し、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に耐えることができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0029】
本発明の1つの態様においては、上記突起部が表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の外縁部に位置する。本態様によれば、表面ランド部分および/または裏面ランド部分の外縁部に突起部が設けられているので、クラックの進行方向を、ランド/フィレット界面におけるランドの外周端からリードの方向に向かう方向でなく、突起部/フィレット界面における下向きの方向にすることができ、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、フィレットとランドとの間の接合がはんだ材料の凝固収縮による張力に耐えることができ、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0030】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、リードのスルーホールに挿入されない部分であって、基板の表面側に位置する部分がはんだレジストで覆われ、該はんだレジストによって基板表面からのフィレットの高さが制限されている接合構造体が提供される。本態様によれば、はんだレジストでフィレットの高さが制限されているので、上部フィレット/表面ランド部分の界面端部にかかるはんだ材料の凝固収縮による張力の方向が、基板の表面に対してより鋭角になり、よって、この張力の垂直成分を小さくして、ランド/フィレット界面で剥離させにくくすることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0031】
本発明の別の要旨においては、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上であることに代えて、あるいはこれに加えて、ランドが金属皮膜で覆われている接合構造体が提供される。本態様によれば、ランドが、好ましくはランド全体がはんだ材料と接触しないように金属皮膜で覆われているため、金属皮膜とランドとの間で拡散層を形成し、この拡散層は、フローはんだ付けの際、溶融したはんだ材料中に溶出せず、ランド/フィレットの界面に低融点金属が偏析することを回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。この金属皮膜は、好ましくはSn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる皮膜、例えばこのような材料からなるレベラーである。
【0032】
上記のような本発明の種々の構造を有する接合構造体は、それらの特徴を単独で用いてもよいが、相互に組み合せて用いることもできる。
【0033】
本発明の更に別の要旨によれば、スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面ならびにその周囲の基板の表面および裏面上に形成されたランドと;電子部品から引き出され、スルーホールの内部に配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続するフィレットとを有し、はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する接合構造体が提供される。
【0034】
上記のような本発明の接合構造体においては、はんだ材料を構成する全ての金属元素およびこれら金属元素の任意の組合せで構成され得る全ての合金のうちに、元のはんだ材料よりも融点が低い低融点金属または低融点合金が存在せず、よって、フローはんだ付けに用いるはんだ材料そのものの組成に基づくリフトオフの1つの発生要因をなくすことができるため、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0035】
好ましい態様においては、リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する。この場合には、リードのめっき材料の組成とフローはんだ付けに用いるはんだ材料の組成との組合せに基づくリフトオフの更なる発生要因をなくすことができるため、リフトオフの発生を更に低減することが可能となる。
【0036】
更に好ましい態様においては、はんだ材料、母材材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する。この場合には、はんだ材料およびめっき材料に加えて、リードの母材の材料の組成をも考慮することにより、リフトオフの発生を更に低減することが可能となる。
【0037】
はんだ材料は、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される材料からなる鉛フリーはんだ材料であることが好ましい。めっきの材料は、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属であることが好ましい。母材の材料は、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属であることが好ましい。はんだ材料/めっき材料/母材材料の好ましい組合せとしては、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、およびSn−Cu/Sn−Ag/Feなどが挙げられる。
【0038】
もう1つの好ましい態様においては、リードは母材および該母材を被覆するめっきから成り、母材を構成する金属元素の少なくとも1つが、および/またははんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と母材を構成する金属元素との合金の少なくとも1つが、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を更に備える。例えば、母材がZn系合金からなる場合、上記手段は、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきとすることができる。この場合、母材を構成するZn元素がはんだ材料中に溶出せず、低融点金属の形成を回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0039】
このような本発明の接合構造体の材料的な特徴は、上記の構造的特徴を有する種々の本発明の接合構造体と組合せて用いられることが好ましく、これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも顕著に低減することが可能となる。
【0040】
上述のような本発明のすべての接合構造体は、電子部品が基板に接合された接合構造体を含む電子回路基板に好適に用いられ得る。
【0041】
また、本発明のすべての接合構造体は、鉛フリーはんだ材料を用いて電子部品を基板にフローはんだ付けするのに好適に用いられる。尚、本明細書において、鉛フリーはんだ材料とは、実質的に鉛を含有しない、一般的には鉛含有量が0.1重量%以下であるはんだ材料を言う。鉛はんだ材料には、例えば、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Ag−Bi、およびSn−Ag−Bi−Cu、Sn−Ag−Bi−Inなどのはんだ材料が含まれる。
【0042】
本発明は以下の態様1〜33を含むものとする。
【0043】
(態様1) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの内径(または直径)以上であることを特徴とする接合構造体。
【0044】
(態様2) 表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さい、態様1に記載の接合構造体。
【0045】
(態様3) 表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている、態様1に記載の接合構造体。
【0046】
(態様4) 壁面ランド部分がその基板表面側の端部にてテーパー形状を有する、態様1〜3のいずれかに記載の接合構造体。
【0047】
(態様5) 前記スルーホールの近傍に別のスルーホールが基板を貫通して設けられ、前記ランドが該別のスルーホールの壁面を覆い、かつ基板の表面および裏面上にてこれらスルーホール間を接続して形成され、該ランドの基板表面のスルーホール間を接続する部分がはんだレジストで覆われている、態様1〜4のいずれかに記載の接合構造体。
【0048】
(態様6) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体。
【0049】
(態様7) 表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が表面ランド部分の外形よりも小さい、態様6に記載の接合構造体。
【0050】
(態様8) 基板が表面ランド部分と接触して形成された放熱板を含む、態様6または7に記載の接合構造体。
【0051】
(態様9) 壁面ランド部分に切欠き部が形成されている、態様6〜8のいずれかに記載の接合構造体。
【0052】
(態様10) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体。
【0053】
(態様11) 前記突起部が表面ランド部分および裏面ランド部分の少なくともいずれか一方の外縁部に位置する、態様10に記載の接合構造体。
【0054】
(態様12) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:リードのスルーホールに挿入されない部分であって、基板の表面側に位置する部分がはんだレジストで覆われ、該はんだレジストによって基板表面からのフィレットの高さが制限されている接合構造体。
【0055】
(態様13) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと;電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成され、ランドおよびリードを接続し、かつ基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットとを有する接合構造体であって:ランドが皮膜(例えば金属皮膜)で覆われている接合構造体。
【0056】
(態様14) 前記皮膜が、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様13に記載の接合構造体。
【0057】
(態様15) 態様1〜14のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【0058】
(態様16) はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様1〜14のいずれかに記載の接合構造体。
【0059】
(態様17) はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される、態様16に記載の接合構造体。
【0060】
(態様18) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様16または17に記載の接合構造体。
【0061】
(態様19) めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様18に記載の接合構造体。
【0062】
(態様20) はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様18または19に記載の接合構造体。
【0063】
(態様21) 母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、態様18〜20のいずれかに記載の接合構造体。
【0064】
(態様22) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、態様16または17に記載の接合構造体。
【0065】
(態様23) 母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、態様22に記載の接合構造体。
【0066】
(態様24) 態様16〜23のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【0067】
(態様25) スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と;スルーホールの壁面ならびにその周囲の基板の表面および裏面上に形成されたランドと;電子部品から引き出され、スルーホールの内部に配置されるリードと;はんだ材料を用いるフローはんだ付けによって形成された、ランドおよびリードを接続するフィレットとを有する接合構造体であって:はんだ材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する接合構造体。
【0068】
(態様26) はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される、態様25に記載の接合構造体。
【0069】
(態様27) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様25または26に記載の接合構造体。
【0070】
(態様28) めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、態様27に記載の接合構造体。
【0071】
(態様29) はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有する、態様27または28に記載の接合構造体。
【0072】
(態様30) 母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、態様27〜29のいずれかに記載の接合構造体。
【0073】
(態様31) リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素の組合せからなる合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有し、リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、態様25または26に記載の接合構造体。
【0074】
(態様32) 母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、態様31に記載の接合構造体。
【0075】
(態様33) 態様25〜32のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【発明の効果】
【0076】
本発明によれば、はんだ付けによって電子部品が基板に接合された接合構造体であって、リフトオフの発生が効果的に低減された構造体ならびにそのような接合構造体を含む電子回路基板が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0077】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図12において、同様の部材には同様の参照番号を付している。各実施形態において、同様の構成については説明を省略し、異なる点を中心に記載する。
【0078】
(実施形態1)
本実施形態は、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体を含む電子回路基板に関する。図1(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図1(a)は、図1(b)のフィレットを除いた概略上面図である。図1(a)は、フローはんだ付けによりはんだ材料を供給する前の状態の基板の上面図に等しく、後述する図2(a)、図3(a)および図4(a)についても同様である。
【0079】
図1(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板20においては、スルーホール2が基板1を貫通して設けられている。スルーホール2の壁面上ならびにスルーホール2を取り囲む基板1の表面(図中の上側面)および裏面(図中の下側面)上にそれぞれ位置する壁面ランド部分3c、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bからなるランドが一体的に形成されている。この表面ランド部分3aおよび/または裏面ランド部分3bは、基板1の表面および/または裏面上に形成された配線パターン(図示せず)に接続されている。他方、電子部品(図示せず)から引き出されたリード(電極)5が、基板1の表面から裏面に向かってスルーホール2を通して配置され、上部フィレット6aおよび下部フィレット6bを含むフィレットによってランドと電気的および物理的に接合されている。より詳細には、フィレットは、フィレットのほぼ中央を通るリード5を除いて、略円錐形状を有する上部フィレット6aおよび下部フィレット6bとこれら上部フィレット6aおよび下部フィレット6bをつなぐ円筒状(スルーホールに等しい)のフィレット部分とで構成される。このフィレットははんだ材料から成り、フローはんだ付けによって形成される。
【0080】
スルーホール2は、リード5が通過し得、またリード5とスルーホール2との間の環状空間をはんだ材料が濡れ上がるのに適する任意の形状を有する。例えば直径約0.5mmの円形断面を有するようなリード5を用いる場合、スルーホール2は直径(D)約0.9〜1.0mmの円筒形状を有する。
【0081】
表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの基板1の主面に平行な平面形状は、スルーホール2の部分を除いて、例えば円形、楕円形、および矩形などの任意の形状であってよい。本実施形態では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの形状は、スルーホール5の部分を除いて円形(表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形)であり、よって、スルーホール5を考慮すればリング状の形状を有するものとする(図1(a)を参照のこと)。ランドは、例えば約30μmの厚さを有する銅箔などの種々の金属材料などから成り得る。
【0082】
また、上部フィレット6aの外形Aは、本実施形態のように表面ランド部分3aの外側の輪郭が円形であり、表面ランド部分3aがはんだレジスト4などにより覆われておらず表面ランド部分3aの全面がはんだ材料で濡れる場合には表面ランド部分の外径(または上部フィレット6a自身の外径)で代表される。下部フィレット6bの外形Bは、上部フィレット6aと同様に、本実施形態のように裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形であり、裏面ランド部分3bがはんだレジスト4などにより覆われておらず裏面ランド部分3bの全面がはんだ材料で濡れる場合には裏面ランド部分3bの外径(または下部フィレット6b自身の外径)で代表される。スルーホール2の大きさDは、本実施形態のようにスルーホール2が円形断面を有する場合にはその直径で代表される。本実施形態によれば、上部フィレット6aの外径(または外形)Aは、下部フィレット6bの外径(または外形)Bよりも小さく、スルーホール2の直径(または大きさ)D以上となり、よって、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上となっている。
【0083】
リフトオフは、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に基板の表面と裏面の両方のランド/フィレット界面で発生し得るが、例えばSn−Cu、Sn−Ag、またはSn−Ag−Cuなどのはんだ材料を用いる場合には、基板の表面側だけで発生することが多い。これは、スルーホールを濡れ上がるにつれてリードのめっき材料などがはんだ材料中により多く溶出することによると考えられる。リフトオフの発生率をより減少させるためには、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面でのクラック発生を低減することが効果的であることが本発明者らにより解っている。上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面でのクラック発生を低減するためには上部フィレット6aの外径をより小さくすることが好ましい。従来の電子回路基板では、上部フィレットの外径は、一般的にスルーホールの直径の約1.5倍よりも大きく、リフトオフの発生率を従来よりも低減するためには上部フィレット6aの外径をより小さく、1.5倍以下とすることが好ましく、より好ましくは1.2倍以下である。また、上部フィレット6aは、スルーホールを埋めるように形成されることが望まれるためスルーホール2の直径以上の外径を有することが好ましい。よって、上部フィレット6aの外径Aは、スルーホール2の直径Dに対して、好ましくは1.0〜1.5倍、より好ましくは1.1〜1.2倍である。
【0084】
他方、下部フィレット6bの外径Bは、裏面側ではあまりリフトオフが発生しないため、従来のものと同程度としてよい。しかし、上部フィレットと表面ランド部分との接触面積が従来よりも減少したことに基づくフィレットとランドとの接合強度の減少を補償し、接合強度を確保するために、下部フィレット6bの外径をより大きくして下部フィレットと裏面ランドとの接触面積を大きくすることが好ましい。下部フィレット6bの外径Bは、スルーホール2の直径Dに対して、好ましくは1.5倍より大きく、より好ましくは2〜3倍である。
【0085】
基板1には、例えば約1.6mmの厚さを有するガラスエポキシ樹脂、紙フェノールなどからなる基板が用いられ得る。基板1に接合される電子部品としては、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、インダクタなどのリード付チップ部品ならびにコネクタなどであってよい。
【0086】
本実施形態によれば、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形(または外径)が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形(または外径)よりも小さく、スルーホールの大きさ(または直径)以上である構造が提供される。このような構造により、上部フィレットの外径が下部フィレットのある外径に対して大きい場合または等しい場合よりも、上部フィレットの傾斜している露出領域をより小さくでき、よって、はんだ材料の凝固収縮により上部フィレット/表面ランド界面に加わる張力を低減することができる。リフトオフの発生は、クラックの発生を少なくとも表面側において防止すれば効果的に低減されることが本発明者らにより解っているため、本実施形態のように上部フィレット/表面ランド界面に加わる張力を小さくしてクラックの発生を低減することにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果を奏することができる。更に、本実施形態の接合構造体は製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0087】
これに加えて、このような電子回路基板20において、フィレットのはんだ材料を構成する全ての金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料が選択されていることが好ましい。具体的な材料としては、はんだ材料には、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuなどを用いることが好ましい。
【0088】
また、一般的にリード5は母材(図示せず)と該母材を被覆するめっき(図示せず)とにより構成されるが、フィレットの形成の際にめっき材料がはんだ材料中へ溶融する場合、はんだ材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料およびめっき材料が選択されることが好ましい。更に、めっきおよび母材の両方の材料がはんだ材料中へ溶融し得る場合には、はんだ材料、母材およびめっきの材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料、母材の材料およびめっきの材料が選択されることが好ましい。
【0089】
具体的な材料としては、リード5の母材の材料には、例えばCu、Fe、およびFe−Cu合金など、めっき材料には、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどが用いられ得る。はんだ材料/めっき材料/母材材料の組合せが、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、またはSn−Cu/Sn−Ag/Feなどであることがより好ましい。
【0090】
このように好ましくははんだ材料、より好ましくははんだ材料およびめっき材料の組合せ、更に好ましくははんだ材料、めっき材料および母材材料の組合せを選択することにより、フィレット内の温度勾配に起因してランド/フィレット界面近傍に低融点金属が偏析しない。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を更に効果的に低減することが可能となる。
【0091】
しかし、本発明はこれに限定されず、はんだ材料、母材材料およびめっき材料を構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金のうちの1つまたはそれ以上が、元のはんだ材料の融点より低い融点を有していてもよい。
【0092】
例えば、リード5の母材が、はんだ材料中に溶融して低融点金属(Sn−Zn合金:融点199℃)を形成し得るようなZn系合金からなるものを用いてもよい。このように、母材材料を構成する元素がはんだ材料および/またはめっきを構成する金属元素と合金を形成して低融点合金となる場合、または母材を構成する金属元素そのものが低融点金属となる場合には、母材とめっきとの間にNiからなる下地めっきを施して、この上から例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどの材料からなるめっきを施すことが好ましい。これにより、母材材料のZn元素がはんだ材料中に溶出せず、低融点金属の形成を回避でき、これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0093】
(実施形態2)
本実施形態は、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの実施形態である。図2(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図2(a)は、図2(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0094】
図2(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板21においては、表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4で覆われている。より詳細には、図2(a)に示すように、図中に点線で示される円形の境界と、スルーホール2の輪郭に等しい円形の境界との間の領域にある表面ランド部分3aのうち、その外縁部がはんだレジスト4(図中に斜線にて示される)により覆われることによって、表面ランド部分3aの露出部がはんだレジスト4により制限されている。本実施形態のように表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4により覆われており、表面ランド部分3aの露出部の輪郭が円形であってその露出部だけがはんだ材料で濡れる場合には、上部フィレット6aの外形Aは、表面ランド部分の露出部の外径(または上部フィレット6aの外径)で代表される。下部フィレット6bの外形Bは、実施形態1と同様に裏面ランド部分3bの外側の輪郭が円形であってその全面がはんだ材料で濡れる場合には裏面ランド部分3bの外径(または下部フィレット6bの外径)で代表される。スルーホール2の大きさDは、実施形態1と同様に、スルーホール2が円形断面を有する場合にはその直径で代表される。実施形態によれば、上部フィレット6aの外径(または外形)Aは、下部フィレット6bの外径(または外形)Bよりも小さく、スルーホール2の直径(または大きさ)D以上となり、よって、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上となっている。
【0095】
本実施形態においても実施形態1と同様に、スルーホールの直径Dに対して、上部フィレット6aの外径Aは、好ましくは1.0〜1.5倍、より好ましくは1.1〜1.2倍であり、下部フィレット6bの外径Bは、好ましくは1.5倍より大きく、より好ましくは2〜3倍である。
【0096】
尚、図2においては、表面ランド部分3aの外径が裏面ランド部分3bの外径にほぼ等しいものとして示しているが、本発明はこれに限定されず、表面ランド部分3aの外形(例えば外径)が裏面ランド部分3bの外形(外径)より大きくても、小さくてもよい。表面ランド部分3aの外形(例えば外径)を裏面ランド部分3bの外形(外径)より大きくする場合には、後述の実施形態5による効果をも奏することが可能となる。
【0097】
本実施形態の接合構造体によっても、実施形態1と同様に、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である構造が提供され、よって、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果を奏する。更に、本実施形態の接合構造体もまた、実施形態1と同様に製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0098】
(実施形態3)
本実施形態は実施形態2を改変したものである。図3(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図3(a)は、図3(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0099】
図3(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板22においては、スルーホール2の基板1の表面側の端部が面取りされ、壁面ランド部分3cが表面側の端部にテーパー形状(または傾斜部)7を有し、このテーパー形状を通じて表面ランド部分3aと繋がっている。
【0100】
本実施形態においては、壁面ランド部分の表面側端部をテーパー形状とすることにより、はんだ材料が凝固する過程においてテーパー形状の近傍領域が最も高温となり、低融点金属がその領域に溜まって、フィレットの外周端部付近に析出するのを低減できる。また、このようなテーパー形状によって、フィレットとランドとの間の接合強度を向上させて、フィレットとランドとの間の接合がはんだの凝固収縮による張力に抗することができる。これにより、実施形態2の場合よりも更にリフトオフの発生を低減することができる。
【0101】
本実施形態においては、テーパー形状を壁面ランド部分の基板表面側の端部にのみ設けるものとしたが、裏面側端部にのみ、あるいはこれらの両方に設けてもよい。リフトオフの発生は、クラックの発生を少なくとも表面側において防止すれば効果的に低減されることが本発明者らにより解っているため、テーパー形状を少なくとも基板表面側に設けることが好ましい。
【0102】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1の電子回路基板の接合構造体に組み合わせて利用することも可能である。
【0103】
(実施形態4)
本実施形態は実施形態2を改変したものである。図4(b)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図4(a)は、図4(b)のフィレットを除いた概略上面図である。
【0104】
図4(a)および(b)に示すように、本実施形態の電子回路基板23においては、スルーホール2の近傍に別のスルーホール8が基板1を貫通して設けられている。ランド3は、スルーホール2だけでなく、スルーホール8の壁面をも覆い、基板1の表面および裏面上にてスルーホール2および8の間(図中の3dおよび3eの部分)の領域を覆って、スルーホール2および8の壁面を覆うランド部分同士が接続されて一体的に形成されている。基板1の表面において、ランド3のスルーホール2およびスルーホール8の間を接続する部分3dは、はんだレジスト4で覆われている。
【0105】
本実施形態の接合構造体においても、実施形態2と同様に、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形が、裏面ランド部分3bと接触する下部フィレット6bの外形よりも小さく、スルーホール2の大きさ以上である。これにより、実施形態2と同様に、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生が従来よりも効果的に低減されるという効果が得られる。
【0106】
更に、本実施形態の構造体によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0107】
一般的には、はんだ材料からなるフィレットを形成する際、溶融状態のはんだ噴流から高い熱伝導性を有するランド(例えば銅)を通して伝導された熱は表面ランド部分3aの外縁部から放出される。しかし、本実施形態によれば、スルーホール間のランド部分3dは、スルーホール2だけでなくスルーホール8を通じても熱供給されるため、スルーホール2および8の間を接続するランド部分3dが、スルーホール2の周囲にある他の表面ランド部分3aよりも高い温度を有する。従って、局所的に温度が高い部分(即ち、スルーホール2および8の間のランド部分3d)を基板表面に設けることができ、これにより、低融点金属の偏析を該高温部分3dに集中させて、クラックの発生箇所を該部分3dに積極的に集中させることにより、他の部分でのクラックの発生を相対的に低減することができる。これにより、リフトオフが発生しても、部分3dの近傍でしか剥離が起こらず、フィレットが完全にリフトオフすることが回避できる。
【0108】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1および3の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0109】
(実施形態5)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関する。図5は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0110】
図5に示すように、本実施形態の電子回路基板24では、表面ランド部分3aの外縁部がはんだレジスト4で覆われ、このはんだレジスト4によってフィレット6の形成が制限されて、表面ランド部分3aと接触する上部フィレット6aの外形(例えば外径)Aが、表面ランド部分3aの外形(例えば外径)Eよりも小さくなっている。表面ランド部分3aの外形Eは、好ましくは裏面ランド部分3bの外形Fよりも大きい。スルーホールの直径Dに対して、上部フィレット6aの外径Aは、好ましくは1〜5倍、より好ましくは1〜1.5倍であり、裏面ランド部分3b(または下部フィレット6b)の外径Fは、好ましくは2〜5倍である。表面ランド部分3aの外径Eは、裏面ランド部分3b(または下部フィレット6b)の外径Fに対して好ましくは1〜3倍である。
【0111】
本実施形態によれば、表面ランド部分3aがフィレット6aに接触しない外縁部を有し、はんだ材料からなるフィレットの形成の際に、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して伝導された熱を表面ランド部分3aの外縁部から効果的に放出させることができる。これにより、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。更に、本実施形態の接合構造体は製造が比較的容易であり、特別な設備を必要としないという利点がある。
【0112】
本実施形態においては、フィレットに接触しない放熱用外縁部を表面ランド部分にのみ設けるものとしたが、裏面ランド部分にのみ、あるいはこれらの両方に設けてもよい。しかし、放熱用外縁部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0113】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態2〜4の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0114】
(実施形態6)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの実施形態である。図6は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0115】
図6に示すように、本実施形態の電子回路基板25では、表面ランド部分3aに接触する放熱板9が基板1に埋設されている。
【0116】
本実施形態によれば、上記のような放熱板9によって、実施形態5と同様に、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して伝導された熱を効果的に逃がすことができる。これにより、実施形態5と同様に、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0117】
本実施形態においては、放熱板を表面ランド部分に接触して基板表面にのみ設けるものとしたが、裏面ランド部分に接触して基板裏面にのみ設けてもよく、あるいはこれらの両方を設けてもよい。しかし、放熱板は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0118】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜5の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0119】
(実施形態7)
本実施形態は、表面ランド部分の温度上昇を抑制するような構造を有する接合構造体を含む電子回路基板に関するもう1つの別の実施形態である。図7は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0120】
図7に示すように、本実施形態の電子回路基板26では、壁面ランド部分3cに切欠き部10が形成されてランドのエッジ部が落とされており、これにより、表面ランド部分3aと裏面ランド部分3bが少なくとも部分的に隔離されている。
【0121】
本実施形態によれば、上記のような切欠き部10によって、溶融状態のはんだ噴流からランドを通して供給される熱の伝導経路を制限(表面ランド部分3aが完全に隔離される場合には断絶)することによって、表面ランド部分3aへの熱供給量を減少させることができる。これにより、実施形態5と同様に、表面ランド部分3aの温度上昇が抑制されて、表面ランド部分3a/上部フィレット6a界面での低温合金の偏析を緩和し、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0122】
本実施形態においては、切欠き部を壁面ランド部分の基板表面側のエッジに設けるものとしたが、壁面ランド部分の任意の位置に形成することができ、切欠き部は、任意の形状を有していてよい。表面ランド部分と裏面ランド部分との導通は失われていても、保たれていてもよい。
【0123】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜6の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0124】
(実施形態8)
本実施形態は、表面ランド部分および裏面ランド部分上に少なくとも1つの突起部が設けられている接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図8は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0125】
図8に示すように、本実施形態の電子回路基板27では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bに2つのリング状突起部11をそれぞれ有する。
【0126】
本実施形態によれば、上記のような突起部11によってランド/フィレット界面でのクラックの進行を停止し、上部フィレット6aと表面ランド部分3a、ならびに下部フィレット6bと裏面ランド部分3bとの接合強度を向上させることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0127】
ただし、突起部11の数および形状はこれに限定されるものではなく、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの上に凹凸が形成されるものであればよく、例えば、突起部が表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの上にドット状に形成されていてもよい。
【0128】
また、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3cの両方の上に突起部が設けられている必要はなく、いずれか一方の上に設けられていてもよい。しかし、突起部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0129】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜7の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0130】
(実施形態9)
本実施形態は、実施形態8を改変したものである。図9(a)は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図であり、図9(b)は、図9(a)の部分拡大図である。
【0131】
図9(a)に示すように、本実施形態の電子回路基板28では、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bの外縁部に1つのリング状突起部12をそれぞれ有する。
【0132】
本実施形態によれば、上記のような突起部12によって、フィレットが凝固する過程における凝固収縮による張力(図9(b)に破線矢印にて示す)は、上部フィレット6aおよび突起部12の界面に作用し、ここで発生したクラックの拡大(進行)方向は、上部フィレット6a/突起部12の界面に沿って下方となる。これにより、クラックの進行方向を上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面に沿った方向でなく、上部フィレット6a/突起部12の界面に沿った方向にすることができ、ランドとフィレットとの接合強度を向上させることができる。よって、本実施形態によっても、実施形態8と同様に、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0133】
また、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3cの両方の上に突起部が設けられている必要はなく、いずれか一方の上に設けられていてもよい。しかし、突起部は、少なくとも表面ランド部分に設けられることが好ましく、表面および裏面ランド部分の両方に設けられることがより好ましい。
【0134】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1、6、7、および8の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0135】
(実施形態10)
本実施形態は、リードが部分的にはんだレジストで覆われた接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図10は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0136】
図10に示すように、本実施形態の電子回路基板29では、リード5のスルーホール2に挿入されない部分であって、基板1の表面側に位置する部分がはんだレジスト13で覆われ、これにより上部フィレット6aの基板1の表面からの高さが制限されている。
【0137】
本実施形態によれば、上記のようなはんだレジスト13でフィレット6の高さが制限されることにより、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面端部にかかるはんだ材料の凝固収縮による張力(図10(b)に破線矢印にて示す)の方向を、基板1の主面に対して従来より鋭角にして、該張力の垂直成分を小さくし、ランド/フィレット界面を剥離させにくくすることができる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0138】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜9の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0139】
(実施形態11)
本実施形態は、ランドとはんだ材料とが直接接触しないようにランドが金属皮膜で覆われている接合構造体を含む電子回路基板に関するものである。図11は、本実施形態の電子回路基板の概略断面図である。
【0140】
図11に示すように、本実施形態の電子回路基板30では、ランド上、即ち表面ランド部分3a、壁面ランド部分3c、および裏面ランド部分3bの上に金属皮膜14が形成されている。金属皮膜14は、例えばいわゆる「レベラー」などの金属皮膜であり得、好ましくはSn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなり、約10〜100μmの厚さを有する。
【0141】
本実施形態によれば、上記のような金属皮膜14でランドが覆われていることによって金属皮膜とランドとの間で拡散層を形成し、これにより表面ランド部分3a、裏面ランド部分3bおよび壁面ランド部分3cのいずれもが、はんだ材料と直接的に接触しない。この拡散層により、フローはんだ付けの際、溶融したはんだ材料中に溶出せず、上部フィレット6a/表面ランド部分3aの界面に低融点金属が偏析することを回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を効果的に低減することができる。
【0142】
上記のようなレベラー(金属皮膜)は、当該技術分野において既知の方法によって形成することができる。
【0143】
また、本実施形態においては、表面、壁面および裏面ランド部分からなるランドの表面全てを覆うものとしたが、表面ランド部分のみを金属皮膜で覆うようにしてもリフトオフを有る程度低減することができる。この場合、クリームはんだなどのはんだ材料を基板表面に印刷する工程において、金属皮膜(レベラー)を表面ランド部分に同時に形成することもできる。
【0144】
尚、本実施形態の特徴は、実施形態1〜10の電子回路基板の接合構造に組み合わせて利用することも可能である。
【0145】
(実施形態12)
本実施形態は、従来の電子回路基板と実質的に同様の構造(または構成)を有するが、リードの母材の材料およびめっきの材料ならびにはんだ材料の組合せが適切に選択されている点で異なるものである。
【0146】
図12に示すように、本実施形態の電子回路基板31においては、スルーホール2が基板1を貫通して設けられている。スルーホール2の壁面上ならびにその周囲の基板1の表面(図中の上側面)および裏面(図中の下側面)上に、それぞれ壁面ランド部分3c、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bからなるランドが一体的に形成されている。このランドは、例えば銅からなり、基板1の表面および/または裏面上に形成された配線パターン(図示せず)に接続されている。他方、電子部品(図示せず)から引き出されたリード(電極)5が、スルーホール2を通って配置され、はんだ材料からなる、上部フィレット6aおよび下部フィレット6bを含むフィレットによって基板1のランド3と電気的および物理的に接合されている。図12には、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bは実質的に同じ外形を有するものとして示すが、本発明はこれに限定されない。代表的には、表面ランド部分3aおよび裏面ランド部分3bは、外径2〜3mmのリング状の平面形状を有する。またランドは、例えば約30μmの厚さを有し得る。
【0147】
基板1には、例えば約1.6mmの厚さを有するガラスエポキシ樹脂、紙フェノールなどからなる基板が用いられ得る。また、スルーホール2は、リード5が通過し得、またリード5とスルーホール2との間の環状空間をはんだ材料が濡れ上がるのに適する任意の形状を有し得るが、例えば直径約0.5mmの円形断面を有するようなリード5を用いる場合、直径約0.9〜1.0mmの円筒形状を有する。基板1に接合される電子部品5としては、抵抗、コンデンサ、トランジスタ、インダクタなどのリード付チップ部品ならびにコネクタなどであってよい。
【0148】
このような電子回路基板31においては、フィレット6のはんだ材料を構成する全ての金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料が選択されている。
【0149】
具体的な材料としては、はんだ材料には、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuなどを用いることができる。
【0150】
また、一般的にリード5は母材(図示せず)と該母材を被覆するめっき(図示せず)とにより構成されるが、フィレットの形成の際にめっきの材料がはんだ材料中へ溶融する場合、はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料およびめっきの材料が選択されることが好ましい。更に、めっきおよび母材の材料の両方がはんだ材料中へ溶融し得る場合には、はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素ならびに該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、該はんだ材料の融点以上の融点を有するように、はんだ材料、母材およびめっきの材料が選択されることが好ましい。
【0151】
具体的な材料としては、リード5の母材には、例えばCu、Fe、およびFe−Cu合金など、めっきには、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどからなるものを用いることができる。
【0152】
はんだ材料/めっき材料/母材材料の好ましい組合せとしては、Sn−Cu/Sn−Cu/Cu、Sn−Cu/Sn/Cu、Sn−Cu/Sn−Cu/Fe、Sn−Cu/Sn/Fe、Sn−Cu/Sn−Ag/Cu、およびSn−Cu/Sn−Ag/Feなどが挙げられる。
【0153】
本実施形態によれば、はんだ材料、好ましくははんだ材料およびめっき材料、更に好ましくははんだ材料、母材材料およびめっき材料は、各材料を構成する金属元素および該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金がはんだ材料の融点以上の融点を有するように選択されている。従って、低融点金属が形成されず、フィレット内の温度勾配に起因してランド/フィレット界面近傍に低融点金属が偏析しない。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0154】
(実施形態13)
本実施形態は、実施形態12と同様の構成を有するが、はんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と、母材を構成する金属元素との合金が、該はんだ材料の融点より低い融点を有する点で異なる。
【0155】
具体的には、本実施形態ではリードの母材として、例えばZn系合金などの材料を用いている。Zn系合金に含まれるZn金属元素ははんだ材料中に溶融して、例えばはんだ材料および/またはめっきを構成するSn金属元素と共にSn−Zn合金(融点199℃)を形成する。はんだ材料は、例えばSn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Bi−Cuなどの鉛フリーはんだ材料であり、この場合Sn−Zn合金ははんだ材料よりも融点が低い低融点合金となる。更に、本実施形態においては、母材とめっきとの間にNiの下地めっきを施して、この上から、例えばSn、Sn−Cu、およびSn−Agなどの材料からなるめっきを施している点で実施形態12と異なる。Niは非常に高い融点を有するので、Niの下地めっきで母材を覆うことにより、母材のZn金属元素がはんだ材料中に溶融することが回避される。
【0156】
このような構成により、母材を構成するZn金属元素がはんだ材料中に溶出せず、Zn金族元素を含むSn−Zn低融点合金の形成を回避できる。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【0157】
(実施例1)
実施形態1について、フローはんだ付けに用いるはんだ材料および上部フィレットの外形を種々に変化させて接合構造体を作製し、そのリフトオフの発生率を調べた。
【0158】
基板として、厚さ約1.6mm、縦約180mm、横約300mmの寸法を有するガラスエポキシ樹脂からなる基板を用いた。この基板には、直径約1.3mmの円筒状のスルーホールが基板の主面に対して垂直に設けられていた。基板に設けるランドの材料は銅とした。表面ランド部分および裏面ランド部分はいずれも中央部にスルーホールが位置するリング形状とした。裏面ランド部分の外径(リング外径)を約2.0mmとし、裏面ランド部分の全体が露出するように裏面ランド部分を除く基板の裏面をはんだレジストで覆った。この裏面ランド部分の外径は、スルーホールの直径の約1.54倍となる。表面ランド部分のリング外径を約1.5mm、1.7mm、および2.0mmとし、表面ランド部分の全体が露出するように表面ランド部分を除く基板の表面をはんだレジストで覆った。これら表面ランド部分の外径は、スルーホールの直径のそれぞれ約1.15倍、1.31倍、および1.54倍となる。基板に接合する電子部品としてはダイオードを用いた。ダイオードから引き出されたリードは、直径約0.8mmの円形断面を有する棒状体であり、Cuからなる母材にSn−Pbめっき(Pb5〜15%、Sn残部)が施されて構成されていた。ダイオードから引き出されたリードを基板のスルーホールに挿入し、フローはんだ付けによりダイオードのリードと基板のランドとを接合し電子回路基板を作成した。このフローはんだ付けは、Sn−3Ag−0.5Cu(即ち、約3重量%のAg、約0.5重量%のCuおよびSn残部からなる合金)およびSn−0.7Cu(即ち、約0.7重量%のCuおよびSn残部からなる合金)をはんだ材料として用い、これら2つのはんだ材料の各々につきリング外形の異なる3種の基板に対してフローはんだ付けを実施した。得られた電子回路基板の上部フィレットの外径は、表面ランド部分の外径に実質的に等しかった。
【0159】
以上のようにして得られた電子回路基板のリフトオフの発生率を調べた。結果を表1に示す。
【0160】
【表1】
【0161】
表1より、上部フィレットの外径(本実施例では表面ランド部分の外径に等しい)を1.54倍とするよりも、1.31倍、更には1.15倍としたほうがリフトオフの発生率が低下することが解る。これより、上部フィレットの外径を小さくすることによりリフトオフの発生率が減少する傾向にあることが理解されよう。
【0162】
(実施例2)
実施形態2について、フローはんだ付けに用いるはんだ材料および上部フィレットの外形を種々に変化させて接合構造体を作製し、そのリフトオフの発生率を調べた。本実施形態は、表面ランド部分の外径を全て約2.0mmとし、表面ランド部分の外縁部をはんだレジストで覆って、表面ランド部分のはんだレジストから露出している部分の外径を約1.5mm、1.7mm、および2.0mmとしたことを除き、実施例1と同様にして電子回路基板を作製した。これら表面ランド部分の露出部の外径は、スルーホールの直径のそれぞれ約1.15倍、1.31倍、および1.54倍となり、得られた電子回路基板の上部フィレットの外径は、表面ランド部分の露出部の外径に実質的に等しかった。
【0163】
以上のようにして得られた電子回路基板のリフトオフの発生率を調べた。結果を表2に示す。
【0164】
【表2】
【0165】
表2より、上部フィレットの外径(本実施例では表面ランド部分のはんだレジストに覆われていない露出部の外径に等しい)を1.54倍とするよりも、1.31倍または1.15倍としたほうがリフトオフの発生率が低下することが解る。これより、実施例1と同様に、上部フィレットの外径を小さくすることによりリフトオフの発生率が減少する傾向にあることが理解されよう。
【産業上の利用の可能性】
【0166】
本発明は、フローはんだ付けによって電子部品が基板に接合され、リフトオフの発生が効果的に低減された接合構造体、およびそのような接合構造体を含む電子回路基板を提供する。これにより、鉛フリーはんだ材料を用いる場合に顕著なリフトオフの発生を従来よりも効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】図1(a)は、本発明の1つの実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図1(b)は、図1(a)の概略断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図2(b)は、図2(a)の概略断面図である。
【図3】図3(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図3(b)は、図3(a)の概略断面図である。
【図4】図4(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す(フィレットを除く)概略上面図であり、図4(b)は、図4(a)の概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図6】図6は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図8】図8は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図9】図9(a)は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図であり、図9(b)は、図9(a)の部分拡大図である。
【図10】図10は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図11】図11は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図12】図12は、本発明の別の実施形態における接合構造体を有する電子回路基板を示す概略部分断面図である。
【図13】図13は、従来の電子回路基板において、1つの電子部品が基板に接合されている様子を示す概略部分断面図である。
【図14】図14(a)は、図13のフィレット近傍の(フィレットを除く)上面拡大図であり、図14(b)は、図14(a)の概略断面図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と、
スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと、
電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと、
ランドおよびリードを接続するようにフローはんだ付けによってはんだ材料を用いて形成され、基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットと
を有する接合構造体であって、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体。
【請求項2】
表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さい、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項4】
はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される鉛フリーはんだ材料である、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項5】
はんだ材料を構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項6】
リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り:
はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項5に記載の接合構造体。
【請求項7】
めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項8】
はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項9】
母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項10】
リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り:
母材を構成する金属元素、ならびに
はんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と、母材を構成する金属元素との合金
のうちの少なくとも1つが、該はんだ材料の融点より低い融点を有し:
リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項11】
母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、請求項10に記載の接合構造体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【請求項1】
スルーホールが貫通して設けられている、表面および裏面を有する基板と、
スルーホールの壁面上にある壁面ランド部分、スルーホールの周囲の基板の表面および裏面上にそれぞれある表面ランド部分および裏面ランド部分とからなるランドと、
電子部品から引き出され、基板の表面から裏面に向かってスルーホールを貫通して配置されるリードと、
ランドおよびリードを接続するようにフローはんだ付けによってはんだ材料を用いて形成され、基板の表面上にある上部フィレットと基板の裏面上にある下部フィレットとを含むフィレットと
を有する接合構造体であって、表面ランド部分と接触する上部フィレットの外形が、裏面ランド部分と接触する下部フィレットの外形よりも小さく、スルーホールの大きさ以上である接合構造体。
【請求項2】
表面ランド部分の外形が裏面ランド部分の外形よりも小さい、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項3】
表面ランド部分の外縁部がはんだレジストで覆われている、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項4】
はんだ材料が、Sn−Cu、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag、およびSn−Ag−Bi−Cuからなる群から選択される鉛フリーはんだ材料である、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項5】
はんだ材料を構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項6】
リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り:
はんだ材料およびめっきを構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項5に記載の接合構造体。
【請求項7】
めっきが、Sn、Sn−Cu、およびSn−Agからなる群から選択される金属からなる、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項8】
はんだ材料、母材およびめっきを構成する全ての金属元素、ならびに
該金属元素からなる群から選択される2つまたはそれ以上の金属元素からなる全ての合金が、
該はんだ材料の融点以上の融点を有する、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項9】
母材が、Cu、Fe、およびFe−Cu合金からなる群から選択される金属からなる、請求項6に記載の接合構造体。
【請求項10】
リードが母材および該母材を被覆するめっきから成り:
母材を構成する金属元素、ならびに
はんだ材料およびめっきを構成する金属元素からなる群から選択される金属元素と、母材を構成する金属元素との合金
のうちの少なくとも1つが、該はんだ材料の融点より低い融点を有し:
リードが、母材を構成する金属元素をフィレット内に溶融させない手段を備える、請求項1に記載の接合構造体。
【請求項11】
母材がZn系合金からなり、前記手段が、母材とめっきとの間に配置されたNiからなる下地めっきである、請求項10に記載の接合構造体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の接合構造体を含む電子回路基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2009−88573(P2009−88573A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14498(P2009−14498)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2001−566606(P2001−566606)の分割
【原出願日】平成13年3月14日(2001.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【分割の表示】特願2001−566606(P2001−566606)の分割
【原出願日】平成13年3月14日(2001.3.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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