説明

接合構造物、回転体支持装置、駆動伝達装置及び画像形成装置

【課題】棒状の部材が、板状の部材に対して強固に且つ高い取付け精度(取付け位置、直角度等の精度)で溶接により接合固定された接合構造物、回転体支持装置、駆動伝達装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】接合構造物(1)は、溶接用の貫通孔(15)が形成された板状部材(10)と、前記板状部材の貫通孔を含む表面の部分(12)に、端面(21)が接触して溶接により接合固定された棒状部材(20)とを有し、
前記板状部材の貫通孔を前記棒状部材の端面の面積よりも狭い開口面積で且つ当該端面の略中央部に位置するように形成しているとともに、前記板状部材の貫通孔の少なくとも一部分と前記棒状部材の端面の少なくとも一部とを溶接(30)している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、接合構造物、回転体支持装置、駆動伝達装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車等の回転体を回転可能に支持するための回転軸(シャフト)を板金等の板状部材に接合して固定した構造物として、その回転軸と板状部材とを溶接により接合固定した接合構造物がある。
【0003】
例えば、凸部を形成して外周縁部に段差部が設けられた端面を有するシャフトを、その凸部が隙間をもって嵌め入れられる貫通孔を形成したスラスト軸受けに、その凸部と貫通孔の接合部の全周をレーザー照射により溶接して固定した動圧軸受け装置が知られている(特許文献1)。
【0004】
また、回転する放熱フィンが取り付けられるスタッドを、そのスタッドが溶接される中央部を除く周囲部にろう材レジスト膜が形成された底板に、ろう付け溶接により固定したセラミック構造物が知られている(特許文献2)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−183809号公報
【特許文献2】特開平5−109949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、棒状の部材が、板状の部材に対して強固に且つ高い取付け精度(取付け位置、直角度等の精度)で溶接により接合固定された接合構造物並びにその構造物を含む回転体支持装置、駆動伝達装置及び画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明(A1)の接合構造物は、溶接用の貫通孔が形成された板状部材と、前記板状部材の貫通孔を含む表面の部分に、端面が接触して溶接により接合固定された棒状部材とを有し、
前記板状部材の貫通孔を前記棒状部材の端面の面積よりも狭い開口面積で且つ当該端面の略中央部に位置するように形成しているとともに、前記板状部材の貫通孔の少なくとも一部分と前記棒状部材の端面の少なくとも一部とを溶接していることを特徴とするものである。
【0008】
また、この発明(A2)の接合構造物は、上記発明A1の接合構造物において、前記板状部材の貫通孔が、1回の溶接作業で当該貫通孔の全周部分の溶接がされる開口面積で形成されているものである。
【0009】
また、この発明(A3)の接合構造物は、上記発明A1又はA2の接合構造物において、前記棒状部材がストレートな棒形状からなるものである。
【0010】
さらに、この発明(B)の回転体支持装置は、前記棒状部材が回転体を回転可能に支持する回転軸である上記発明A1〜A3のいずれかの接合構造物を含み、その回転軸に回転体が支持されていることを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明(C)の駆動伝達装置は、回転動力の伝達に用いられる回転体を回転可能に支持する棒状部材の回転軸を板状部材に接合固定する接合構造部の少なくとも1部が、上記発明A1〜A3のいずれかの接合構造物で構成されていることを特徴とするものである。
【0012】
また、この発明(D)の画像形成装置は、回転動力を伝達する駆動伝達装置の少なくとも一部が、上記発明Cの駆動伝達装置で構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
上記発明A1の接合構造物によれば、棒状部材が、板状部材に対して強固にかつ高い取付け精度で溶接により接合固定されたものとなる。
【0014】
上記発明A2の接合構造物では、当該発明の構成を有しない場合に比べて、棒状部材が板状部材に、簡素化された作業量で取り付けられる。
【0015】
上記発明A3の接合構造物では、当該発明の構成を有しない場合に比べて、棒状部材が、例えばその溶接される端面を広大化するための台座部分等の部位を形成することなく板状部材に強固に接合固定されるようになり、また、その広大化のための部位の形成に伴う棒状部材の材料の切削除去又は追加による無駄なコストアップを回避することができる。
【0016】
上記発明Bの回転体支持装置によれば、当該発明の構成を有しない場合に比べて、回転体を回転可能に支持する回転軸が、板状部材に対して強固にかつ高い取付け精度で溶接により接合固定されたものとなり、また、このような回転軸に支持される回転体が円滑に精度よく回転するようになる。
【0017】
上記発明Cの駆動伝達装置によれば、接合構造部のうち少なくとも上記発明A1〜A3のいずれかの接合構造物で構成されている1部において、棒状部材の回転軸が板状部材に対して強固にかつ高い取付け精度で溶接により接合固定されたものとなり、また、そのような接合構造物における回転軸に支持される回転体が円滑に精度よく回転するようになる。
【0018】
上記発明Dの画像形成装置によれば、駆動伝達装置のうち少なくとも上記発明Cの駆動伝達装置で構成されている1部において、上記発明A1〜A3のいずれかの接合構造物で構成されている接合構造部における棒状部材の回転軸が板状部材に対して強固にかつ高い取付け精度で溶接により接合固定されたものとなり、また、そのような接合構造物における回転軸に支持される回転体が円滑に精度よく回転することで本発明の構成を有しない場合に比べて高画質の画像を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
[実施の形態1]
図1及び図2は、本発明の実施の形態1に係る接合構造物及び歯車支持装置を示すものであり、図1はその構造物及び装置の全体の構成を示す概略断面図、図2はその溶接部分(板金の側から見たときの状態)を示す拡大説明図である。
【0020】
接合構造物1は、溶接用の貫通孔15が形成された板金10と、この板金の貫通孔15を含む表面の部分に一方の端面21が接触して溶接固定された回転軸20とで主に構成されている。また、歯車支持装置4は、この接合構造物1の回転軸20に歯車40を回転可能に支持させたものであり、要するに、その接合構造物1を含んだ構成になっている。
【0021】
板金10は、少なくとも回転軸20を溶接して固定する表面の部位12が平面である板状の形態からなるものあり、所望の溶接が可能な金属又は合金等の材料で構成されている。一方の回転軸20は、歯車40を回転可能に支持できる形態のものであればよいが、この実施の形態では、ストレートな円柱形状からなるものであり、所望の溶接が可能な金属又は合金等の材料で構成されている。また、回転軸20は、溶接により接合固定される側の端部の端面21が回転中心線(二点鎖線)Lに対して直角の面として切断(又は切削)された円形の平面で形成されている。
【0022】
ここで、上記板金10及び回転軸20における各「平面」とは、平滑な面であるが、板金10の接合対象となる平面部分と回転軸の端面とを接触させたときに不要な隙間が発生しない程度に密接させることができるような面の形態であればよい。
【0023】
また、板金10における溶接用の貫通孔15は、図2に示すように、回転軸20の端面21の面積よりも狭い開口面積で形成される孔であり、しかも、回転軸20が溶接で接合固定される部位においてその端面21の略中央部に位置する関係になるように形成されている。この実施の形態では、前述したように回転軸20の端面21が円形であるため、その端面21の略中央部とは、当該円形の中心点(図2に符合Oで指し示す記号+)を中心に含んだ部位となる。また、貫通孔15は、その開口が円形の形状で形成されたものであるが、その開口形状については必要に応じて円形以外の形状(正多角形など)としても構わない。
【0024】
また、板金10と回転軸20とは、図2に示すように、その板金10の貫通孔15となる部分と回転軸の端面21の一部とが所定の溶接方法により溶接されている。図1中の符合30は溶接される部分を示す。この実施の形態では、その貫通孔15となる板金部分と端面21との間の3箇所(図中の点線の円に含まれる部分が溶接部分)31〜33が溶接されている。このような板金10の貫通孔15の少なくとも一部分と回転軸10の端面21の少なくとも一部とを溶接しているため、その溶接した結果(状態)を視認することができる。
【0025】
ちなみに、この溶接部分については、1箇所であっても、あるいは、3箇所以外の複数の箇所であっても、あるいは、貫通孔15の全周部分としてもよいが、取付け強度や作業性等を考慮すると3箇所程度が好ましい。また、溶接方法としては、例えば、溶加材を必要としないレーザー溶接方法が適用されるが、これ以外の溶接方法であっても構わない。
【0026】
歯車40は、例えば複数の歯車を噛み合わせて回転動力を伝達する回転伝達装置(又は機構)における歯車の1つであり、板金10に溶接により接合固定された回転軸20に回転可能に取り付けられる。
【0027】
このような接合構造物1又は歯車支持装置4は、例えば、次のようにして製作される。
【0028】
まず、図3及び図4に示すように、溶接作業用テーブル100に形成された回転軸収容保持凹部102に、溶接対象となる回転軸20をその端面21が上面となる状態で嵌め入れる。この回転軸収容保持凹部102は、回転軸21を所定の位置で嵌め入れるように収容して所定の姿勢で安定して保持することができ、しかも、その収容したときの回転軸20の端面21がテーブル表面101から突出した状態となる寸法形状で形成されている(図4)。
【0029】
続いて、回転軸20が保持された溶接作業用テーブル100に、溶接対象となる板金10を、その貫通孔15が含まれる表面部分12が回転軸の端面21に接触した状態に保たれるように装着する。
【0030】
この板金10の装着は、例えば、図3に例示するように行われる。すなわち、まず、作業用テーブル100の回転軸収容保持凹部102から離れた表面部分に複数本の板金装着用の位置決めピン106、107、・・を固定して設ける一方で、板金10の回転軸20との溶着位置を基準にしたときに作業用テーブル100の位置決めピン106、107、・・と対応することになる位置に当該位置決めピン106、107が差し込まれて板金10の装着状態を位置決めする位置決め孔16、17、・・を形成しておく。そのうえで、板金10を、その位置決め孔16、17、・・に作業用テーブル100の位置決めピン106、107、・・が差し込まれるように取り付けることにより、その板金の装着が行われる。またこの際、板金10を装着した後の位置決めピン106、107、・・には、例えば、その板金10の装着状態を保持するためのネジ固定式等の固定用治具112、113が取り付けられる。
【0031】
これにより、板金10は、その貫通孔15を含む表面部分12が作業用テーブル100に保持された回転軸20の端面21に面で接触した状態に保たれるとともに、その貫通孔15が回転軸20の端面21の中央部に位置した状態に保たれる。これに加えて、固定用治具112、113の取り付けにより、その板金10の表面部分12が回転軸20の端面21に密着した状態に保持される。
【0032】
この板金10の作業用テーブル100への装着を行った後に、その板金10の貫通孔15の該当部分とこの部分に接触する回転軸20の端面21の部分との間の溶接を行う。図4中の符合3は、溶接の作業対象部分を指し示している。この溶接の際、溶接すべき部分が3箇所(図2の符合31〜33)である場合は、溶接の作業(この例ではレーザーの照射)が3回行われる。レーザー溶接を行った場合には、貫通孔15の板金部分と回転軸20の端面21部分とがそれ以外の部分とは異なる色に変色した状態になるため、その溶接した結果を視認することができる。
【0033】
このようにして製作される接合構造物1においては、回転軸20が板金10の所定の取付け部位(貫通孔15を含む表面部分12)に溶接により位置的なずれがなく正確に強固に接合固定されるとともに、高い直角度で接合固定される。
【0034】
これに対して、例えば、図7に例示するように、回転軸20の端面21に凸部28を形成して段差のある端面構造にするとともに、板金10の側に当該凸部28を差し入れるための貫通孔18を形成したうえで、その凸部28を貫通孔18に差し込んだ状態で溶接を行って回転軸の接合固定をする場合には、次のような不具合が発生する傾向にある。
【0035】
つまり、この場合は、その凸部28と貫通孔18の間に通常0.05mm程度の隙間Sを設けたうえで回転軸20の凸部28を板金10の貫通孔18に差し込むが、この隙間Sの存在により真っ先に溶接された部分において凸部28と貫通孔18が引き寄せられて接近した状態となり、これにより回転軸20が板金10の表面に沿ったいずれかの方向(矢印B1,B2等の方向)に片寄った状態で溶接固定されるため、取付け位置の精度が劣ることになる。また、この際、その隙間Sが大きいときには、回転軸20の全体が両矢印Cで示す方向に傾いた状態で溶接されて固定されることがあり、これにより直角度の精度が劣ることになる。
【0036】
この他にも、図8に示すように、上掲の例における貫通孔18や凸部28を形成しない板金10及び回転軸20を用意し、回転軸20の平面からなる端面21を板金10の平面からなる表面13に接触させた状態にして溶接を行って回転軸の接合固定をする場合には、次のような不具合が発生する傾向にある。この場合には、その溶接方法として例えばレーザー溶接を適用し、回転軸20のうち板金10と接合する端部周囲を接合することができるが、図7を用いて説明した上記の例とほぼ同様に、真っ先に溶接される部位の溶接による変動の影響を受けて回転軸20が板金10の表面に沿ったいずれかの方向(矢印B1,B2等の方向)に片寄った状態で溶接固定されるため、取付け位置の精度が劣る場合がある。
【0037】
また、上記レーザー溶接に代えてスポット溶接を適用した場合には、例えば、図8に示すように、その板金10の側から回転軸20の端面21の中心部を狙ってスポット溶接することができる。しかし、この場合は、上記レーザー溶接を行う場合と同様に、回転軸20の取付け精度が劣ることがある。また、スポット溶接の場合は、その溶接した部分を視認することができず、これにより、例えば、溶接不良に起因した取付け強度の低下等が発生するおそれがある。
【0038】
歯車支持装置4は、上記の製作された接合構造物1の回転軸20に歯車40を取り付けることにより完成する。この場合、前述したように回転軸20が板金10に対して高い位置精度や直角度精度で接合固定されているため、その回転軸20に回転可能に支持される歯車40も正確な位置で、しかも正確な姿勢で回転するようになる。
【0039】
この実施の形態では、例えば以下の条件からなる接合構造物1を製作した。
【0040】
すなわち、板金10として、肉厚が1mmの電気亜鉛メッキ鋼板(電気メッキの原板:SECC)の板金を使用し、これに接合固定する回転軸20として、直径が6mm、長さが25mmのストレートな円柱形状からなるステンレス(SUS)の軸を使用した。また、板金10の所定箇所には、直径4〜5mmの円形の貫通孔15を形成した。そして、その板金10と回転軸20を溶接作業用テーブルに装着し、板金10の貫通孔15を含む表面部分に回転軸20の端面21が接触した状態となるように位置を固定して保持した後、貫通孔15の周囲のうちの3箇所をレーザー溶接した。レーザー溶接は、例えば、レーザー加工機(三菱電機社製:3020HT)を用い、肉厚1mmの板金10を使用するため、そのレーザー発信器の出力を1kWに設定して行った。
【0041】
この条件からなる接合構造物1は、回転軸20が板金10に対して溶接により正確な位置に強固に接合固定されているとともに、ほぼ90°の直角度で接合固定されていた。なお、レーザー溶接は、貫通孔15の周囲全体(全周)に対して(1周させるように)行ってもよい。
【0042】
[実施の形態1の変形例等]
実施の形態1では、板金10に対してレーザー溶接を3箇所することができる程度の大きさの貫通孔15を形成した場合を示したが、この他にも、例えば、図5に示すように、1回の溶接作業で貫通孔の全周部分の溶接がされる開口面積からなる小さい貫通孔16を形成してもよい。この場合は、図5の符合35で指し示す斜線を付した部分が、その貫通孔16の全周部分と溶接された状態となる。また、このような貫通孔16は、例えば、前掲した具体例で説明すると、直径が1〜2mm程度の円形の貫通孔として形成される。さらに、この貫通孔16の孔径が小さく回転軸20の取り付け強度が不足するおそれがある場合には、その貫通孔16へのレーザー溶接に加えて、例えば、回転軸20の板金10と接合する端部21の周囲へのレーザー溶接を組み合わせて行ってもよい。
【0043】
また、実施の形態1においては、回転軸20として、図6に例示するように、円柱の軸本体部22のうち端面21となる端部側に、その本体部22よりも外径が大きい円板状の台座部24を形成したものを使用することもできる。この場合は、板金10に接合固定される端面21の面積が台座部24により増加する分だけ広くなるので、回転軸20をより安定した状態で接合固定することができる。その一方で、台座部24を形成する分だけ、材料コストが増える。また、その台座部を旋盤加工により切削して形成する場合には、軸本端部22の材料が切削で除去されるため無駄が発生する。
【0044】
さらに、実施の形態1では、回転軸20を接合固定する場合を説明したが、その回転軸に代えて他の用途で使用する棒状の部材を接合固定するようにしてもよい。また、実施の形態1では、1つの回転軸20を接合固定する場合を説明したが、複数の回転軸20を接合固定してもよいことは言うまでもない。さらに、貫通孔15,17は、その開口形状が円形のものに限らず、他の開口形状のものであっても構わない。
【0045】
この他、実施の形態1では、回転軸20に歯車40を取り付ける場合を説明したが、歯車に代えて、円筒状のロールや電動モータのローター等のような回転体を回転可能に支持するようにしてもよい。このような各種の回転体を支持する回転体支持装置は、歯車式の回転伝達装置や、その回転伝達装置を必要とする各種装置に適用することができる。
【0046】
[実施の形態2]
図9及び図10は、実施の形態1に係る接合構造物1を含む歯車支持装置4を適用した実施の形態2に係る画像形成装置5及びこれに用いた駆動伝達装置7を示すものである。
【0047】
画像形成装置5は、図9に示すように、装置本体(図示せず)の内部に、画像情報に基づくトナー像を形成するとともにそのトナー像を最終的にシート状の記録用紙9に転写する作像装置50と、そのトナー像が転写された記録用紙9を通過させてトナー像の定着を行う定着装置60と、作像装置50に記録用紙9を搬送して供給する給紙装置65とが主に装備されている。
【0048】
作像装置50は、例えば公知の電子写真方式を利用してトナー像を形成して転写することができるものである。具体的には、矢印方向に回転駆動するドラム形態の感光体52を備えており、この感光体52の周囲に、感光体51の表面(像保持面)を一様に帯電させる帯電装置53と、帯電後の感光体52の表面に画像情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある潜像を形成する露光装置54と、その潜像にトナーを転移付着させてトナー像として顕像化する現像装置55と、そのトナー像を給紙装置65から供給される用紙9に転写する転写装置56と、転写後の感光体52の表面に残留するトナー等を除去して清掃する清掃装置57が主に配置されている。
【0049】
このうち、感光体52としては、円筒形態等の基材の周面に有機感光材料からなる光導電性層を形成したものが使用されている。帯電装置53としては、帯電ロール等の帯電部材を感光体52の表面に接触又は近接させて設置するとともに、その帯電部材に図示しない電源装置から所定の帯電用電圧を印加するものが使用されている。露光装置54としては、LEDアレイ、半導体レーザー走査装置等で構成されるものが使用している。この露光装置54には、画像形成装置1に接続又は装備される画像読取装置、情報記憶媒体読取装置、パーソナルコンピュータ等の外部接続機器から入力される画像情報を画像形成時に図示しない画像処理装置で所要の処理をして得られる画像信号が入力されるようになっている。
【0050】
また、現像装置55としては、収容している現像剤を構成するトナーを感光体52と対向する現像位置に搬送供給するための現像ロールを装備し、また、その現像ロールに図示しない電源装置から所定の現像用電圧を印加するものが使用されている。転写装置56としては、転写ロール等の転写部材を感光体52の表面に接触又は近接させて設置するとともに、その転写部材に図示しない電源装置から所定の転写用電圧を印加するものが使用されている。清掃装置57としては、転写後の感光体52の表面に所定の圧力で先端部が当接するクリーニングブレード等の清掃部材を装備するものが使用されている。
【0051】
定着装置60は、本体61の内部に、所定の温度に加熱されるとともに矢印方向に回転駆動する加熱ロール62と、この加熱ロール62の軸線方向にほぼ沿うように所定の圧力で接触して定着用の圧接部を形成する加圧ロール等の加圧部材63とを備えたものである。この定着装置60による定着は、その加熱ロール62と加圧部材63の間の定着用圧接部にトナー像が転写された用紙9を導入して通過させることによりトナー像等を加熱及び加圧することで行われる。
【0052】
給紙装置65は、作像装置50に供給すべき複数枚のシート状の記録用紙9が積載された状態で収容される用紙収容体66と、この用紙収容体66に収容される用紙9を1枚ずつ送り出す送出装置67とを主に備えたものである。用紙収容体61は、必要により複数装備される。また、給紙装置60は、用紙9を用紙収容体61から作像装置50の転写部(感光体52と転写装置56との間)まで搬送するための用紙搬送ロール対68a,68b,68c,…や搬送ガイド部材等で構成される用紙搬送路を装備している。用紙搬送路は、作像装置50と定着装置60の間や、定着装置60と用紙排紙部(トレイなど)69の間にも設置されている。例えば定着装置60の用紙排出側には、定着後の用紙9を排紙部69に排出搬送するための排出ロール対68eが設置されている。
【0053】
この画像形成装置1による基本的な画像形成は次のようして行われる。
【0054】
画像形成の開始指令の信号を受けると、作像装置50において感光体52が回転し始める。続いて、その回転する感光体52の表面が帯電用電圧の印加された帯電装置53により所定の帯電電位に帯電された後、その帯電された感光体52の表面に画像信号に基づいて動作する露光装置54から光が露光されて所定の潜像電位からなる潜像が形成される。次いで、その静電潜像が、現像用電圧の印加された現像装置55を通過する際にトナーにより現像されてトナー像となる。
【0055】
しかる後、その感光体52上のトナー像が、転写用電圧の印加された転写装置56と対向する転写部において給紙装置60から給紙路を通して所定のタイミングで搬送される記録用紙9に対して静電的に転写される。トナー像が転写された用紙9は、定着装置60に導入されるように搬送され、その定着装置60における定着温度に加熱保持された加熱ロール62と加圧部材63との間の定着接触部を通過する際に加熱及び加圧されることでトナー像の用紙9への定着がなされる。その後、この定着後の用紙9は、排紙路を通して用紙排紙部69に排出されて積載収容される。
【0056】
これにより、用紙1枚に対する基本的なプリント動作が終了する。また、複数枚のプリント指示がある場合には、上記した一連の動作がその枚数分だけ同様に繰り返されることになる。上記転写が終了した後の感光体52は、その表面に残留付着するトナー、紙粉等が清掃装置57によって除去されて清掃される。
【0057】
そして、この画像形成装置5は、図9や図10に示すように、その作像装置50における感光体52を回転駆動させる回転動力を伝達するための駆動伝達装置7を有している。
【0058】
駆動伝達装置7は、回転駆動用の電動モータ80の回転動力を、その電動モータ80の回転軸の駆動はすば歯車81と噛み合い、回転伝達用の複数のはすば歯車71〜73で構成される歯車列を介して、最終的に感光体52を回転させる回転歯車74に伝達するようになっている。
【0059】
歯車列における第一はすば歯車71及び第2はすば歯車72は、大径歯部71a、72aと小径歯部71b、72bをそれぞれ有する2段歯車になっている。また、歯車列を構成する3つのはすば歯車71〜73は、間隔を隔てて対向するように配置された支持枠板70A,70Bに固定される3つの回転軸20A,20B,20Cにそれぞれ回転可能に支持されているとともに、その各歯部が隣り合う所定の歯車(歯部)と噛み合っている。
【0060】
上記3つの回転軸20A,20B,20Cは、細い円柱棒状の部材であり、その一端部側の端面21が一方の支持枠板70Bに接触して溶接により接合固定されている一方で、その他端部26が他方の支持枠板70Aに形成される差し込み孔(図示せず)に差し込まれた状態で取り付けられている。
【0061】
また、回転軸20A,20B,20Cは、図11に示すように、その一端部の端面21が、実施の形態1に係る接合構造物1又は歯車支持装置4における回転軸(棒状部材)20と同様の構成(図1等を参照)で取り付けられている。すなわち、支持枠板70Bにおける回転軸20A,20B,20Cの端面21を接合固定すべき部位に、前記した構成を有する溶接用の貫通孔15(又は16)をそれぞれ形成しておき、その各回転軸20A,20B,20Cの端面21を支持枠板70Bの各貫通孔15(16)を含む表面部分にそれぞれ接触させて密着させた状態で、その各貫通孔15(16)の少なくとも一部分とその各回転軸の端面21の少なくとも一部とを溶接することで接合固定している。
【0062】
このように回転軸20A,20B,20Cがその一端部(端面21)において支持枠板70Bに対して高い位置精度や直角度精度で接合固定されているため、その各回転軸20A,20B,20Cにそれぞれ回転可能に支持されるはすば歯車71〜73も正確な位置で、しかも正確な姿勢で回転するようになる。
【0063】
なお、この駆動伝達装置7においては、上記3つの回転軸20A,20B,20Cのすべてをその一端部(端面21)が貫通孔を形成した支持枠板70Bに溶接により接合固定したが、必要により、その一部の回転軸だけをそのような接合固定するようにしても構わない。
【0064】
また、駆動伝達装置7は、回転動力を伝達する回転体として、はすば歯車以外の種類の歯車や、回転伝達用のベルトを支持するロールなどの他の回転体を適用したものであってよく、その場合においても、その歯車やロール等の他の回転体を回転可能に支持する回転軸を上記したような接合固定を行う接合構造部を採用するとよい。
【0065】
さらに、駆動伝達装置7は、感光体52以外の回転物を回転させる回転動力を伝達するための装置として使用することも可能である。
【0066】
この他、実施の形態2では、画像形成装置1として、単色のトナー像を形成するタイプのもの(プリンタ)を例示したが、その画像形成装置は、複数のトナー像から構成されるカラー画像を形成するタイプのプリンタ、複写機、ファクリミリ等に代表される画像形成装置であってもよい。また、トナー像を形成して用紙9に転写するまでの方式についても、従来公知の他の方式(例えば中間転写方式など)を採用することが可能である。また、画像形成装置1は、トナー像を形成する方式のものに限らず他の画像形成方式を採用する画像形成装置であってもよく、例えば、インクジェット方式を採用する画像形成装置でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施の形態1に係る接合構造物及び歯車支持装置の概要を示す概略断面図である。
【図2】図1の構造物及び装置の接合部分を板金側から見たときの状態を示す説明図である。
【図3】図1の接合構造物の製作工程及び器具を示す概略断面説明図である。
【図4】図3の溶接作業時における状態を示す概略断面説明図である。
【図5】板金に形成する貫通孔の他の構成例(板金側から見たときの状態)を示す説明図である。
【図6】接合固定する回転軸の他の構成例を示す概略断面図である。
【図7】本発明の構成を採用しない接合構造物の一例(要部)を示す概略断面説明図である。
【図8】本発明の構成を採用しない接合構造物の他の例(要部)を示す概略断面説明図である。
【図9】実施の形態2に係る(接合構造物等を採用した)画像形成装置の概要を示す説明図である。
【図10】図9の画像形成装置で採用している駆動伝達装置を示す平面図である。
【図11】図10の駆動伝達装置における回転軸の接合固定の構成などを示す要部概略断面図である。
【符号の説明】
【0068】
1…接合構造物、4…歯車支持装置(回転体支持装置)、5…画像形成装置、7…駆動伝達装置、10…板金(板状部材)、12…貫通孔を含む表面部分、15,16…貫通孔、20,20A,20B,20C…回転軸(棒状部材)、21…端面、30,31〜33…溶接部分、40…歯車(回転体)、70B…支持枠板(板状部材)、71〜73…はすば歯車(回転体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接用の貫通孔が形成された板状部材と、
前記板状部材の貫通孔を含む表面の部分に、端面が接触して溶接により接合固定された棒状部材とを有し、
前記板状部材の貫通孔を前記棒状部材の端面の面積よりも狭い開口面積で且つ当該端面の略中央部に位置するように形成しているとともに、
前記板状部材の貫通孔の少なくとも一部分と前記棒状部材の端面の少なくとも一部とを溶接していることを特徴とする接合構造物。
【請求項2】
前記板状部材の貫通孔が、1回の溶接作業で当該貫通孔の全周部分の溶接がされる開口面積で形成されている請求項1に記載の接合構造物。
【請求項3】
前記棒状部材がストレートな棒形状からなる請求項1又は2に記載の接合構造物。
【請求項4】
前記棒状部材が回転体を回転可能に支持する回転軸である請求項1〜3のいずれかに記載の接合構造物を含み、
その回転軸に回転体が支持されていることを特徴とする回転体支持装置。
【請求項5】
回転動力の伝達に用いられる回転体を回転可能に支持する棒状部材の回転軸を板状部材に接合固定する接合構造部の少なくとも1部が、請求項1〜3のいずれかに記載の接合構造物で構成されていることを特徴とする駆動伝達装置。
【請求項6】
回転動力を伝達する駆動伝達装置の少なくとも一部が、請求項5に記載の駆動伝達装置で構成されていることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−170846(P2008−170846A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−5478(P2007−5478)
【出願日】平成19年1月15日(2007.1.15)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】