説明

接合部材およびその製造方法

【課題】 電気的および熱的に接続するための接続材料において、高熱伝導性、高密着性、環境調和型の要件を満足する接続材料を実現する。
【解決手段】 この接続材料は、金属箔の少なくとも一つの表面に、有機保護膜によって被覆された表面を有する粒子径1〜100nmの金属微粒子が付着していることを特徴とする。このような、複合シート材は、蒸着装置を用いて、金属材料を蒸発させ、有機保護膜材料蒸気中で冷却することにより、表面に有機保護膜が形成されている金属微粒子を形成し、これを金属箔の表面に付着させることによって形成することができる。または、有機保護膜が表面に形成されている金属微粒子を含有する分散液を、金属箔表面に塗布し乾燥することによっても得られる。この材料は、半導体装置のダイマウント材として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属微粒子層と金属箔とを少なくとも備えた複合シート材からなる接合部材およびその製造方法に関するものであり、特に電気的・熱的な接続材料として用いるのに適した接合部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電子部品と基板の間の電気的・熱的な接続材料として、はんだ材や導電性の樹脂系ペーストが知られている。
【0003】
従来のはんだ材としては、例えば、鉛を含有する高融点はんだ(Pb−5wt%Sn)や、例えばAu−20Sn、Sn−8.5Sbなどの非鉛系のはんだ材がある。
【0004】
また、従来の導電性の樹脂系ペーストとしては、銀、金等の金属粒子と樹脂を混練したペーストが用いられている。具体的には、導電性の樹脂系ペーストとして、銀ペーストを例にとると、例えば大きさが3〜10μm程度の球形もしくはフレーク状(燐片状)の銀粒子を70〜90wt%と、エポキシやフェノール等の熱硬化性樹脂を5〜20wt%と、テルピネオールやブチルカルビトール、エチレングリコール等の溶剤5〜10wt%で構成される。
【0005】
前述の電気的・熱的な接続材料として代表的な、はんだ材や、導電性の樹脂系ペーストに要求される項目としては、高耐熱性、高電気・熱伝導性、高密着性などがあり、さらに近年環境問題に対する関心が高まり、鉛などの有害物質を含まない鉛フリー材等のような環境調和型の材料が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記公知の電気的・熱的接続材料において、鉛を含有する高融点はんだ(Pb−5wt%Sn)は、接合の電気的・熱的な特性において優れた性質を有しているが、環境にとって好ましくない鉛成分を含むことから、その使用が制限されることを余儀なくされている。
【0007】
他のはんだ材料であるAu−20Sn、Sn−8.5Sb等のはんだ材は、鉛を含有していない点において好ましい材料であるが、Au−20Snは応力緩和性に乏しく、はんだ接合を行った後、歪みが残留してクラックの発生を生起するおそれがあるばかりでなく、高価であるという不都合がある。また、Sn−8.5Sbはんだ材は、Sbが有害であること等の課題がある。
【0008】
また、主として銀と樹脂材料とからなる銀ペーストは、耐熱温度が300℃と高いため、鉛フリー化と耐熱性の課題は解決でき、また応力緩和性にも優れている特徴を有している。しかしながら、前述した従来の銀ペーストの組成では、はんだ材と比較して、電気抵抗が高く(10μΩcm以上)、熱伝導率が低い(10〜20W/mk)という課題がある。一般に、銀ペーストの硬化後の銀粒子含有率は多いもので90wt%程度であり、残りの10wt%は熱伝導率を下げる要因となる樹脂で構成される。また、銀ペーストの電気・熱伝導のパスは、銀粒子同士および、銀粒子と被接合材の機械的接触によるため、伝導のパスが不安定で、はんだのように被接合材と全面で金属接合しているものと比較し、接触界面での抵抗が大きい。
【0009】
従来の銀ペーストは、銀粒子自体では密着性を持たないので、前述したように10wt%程度の樹脂が必要である。このような材料を用いた接続においては、例えば樹脂の含有率が5wt%以下となってしまった場合、銀ペーストの硬化後に、銀ペースト内や接続部材との界面等でクラックが発生し、密着力確保ができないという問題があった。熱伝導性を向上させるために樹脂の添加量を減らして銀粒子の含有量を増加させると、硬化後の銀ペーストの強度確保、接続部材との密着性の確保ができないという課題があった。
【0010】
このように、従来の接続材料では、高熱伝導性、高密着性、環境調和型である、という必要項目を全て満たすことができなかった。
本発明は、前記課題を解決する接続材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の本発明は、金属箔の少なくとも一つの表面に、有機保護膜によって被覆された表面を有する粒子径1〜100nmの金属微粒子が固定されている金属微粒子層を有することを特徴とする複合シート材である。
【0012】
前記第1の本発明において、金属微粒子層は、金属箔の両面に形成されているものであることが好ましい。また、金属微粒子層の厚さは、0.1〜5μmの範囲であることが好ましい。
【0013】
前記第1の本発明において、前記金属微粒子および前記金属箔が、それぞれ同一のもしくは異なる金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属の合金であることが好ましい。
【0014】
また前記第1の本発明において、前記金属箔を構成する金属元素の格子定数と前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の差が、前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の20%以内で、かつ前記金属箔を構成する金属元素のイオン化エネルギーが9eV以下であることが好ましい。
【0015】
第2の本発明は、減圧した不活性ガス雰囲気下で、金属蒸気と有機保護膜材料の蒸気とを混合することにより、表面部分が前記有機保護膜で被覆された金属微粒子を含有する微粒子組成物を製造する工程と、
前記表面が有機保護膜で被覆された金属微粒子を含有する微粒子組成物を、金属箔表面に析出させる工程からなることを特徴とする複合シート材の製造方法である。
【0016】
第3の本発明は、有機保護膜により被覆された金属微粒子と有機溶媒とを含む分散液を、金属箔の表面に付与し、前記金属微粒子を前記有機保護膜材料もしくは前記有機溶媒の表面張力により前記金属箔に付着させる工程と、
前記形成された膜から有機溶媒を揮発させて、前記有機保護膜により被覆された金属微粒子で構成された厚さ0.1〜5μmの膜を形成する工程からなることを特徴とする複合シート材の製造方法である。
【0017】
前記第2および第3の本発明において、前記金属微粒子、および前記金属箔が、それぞれ金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属の合金であることが好ましい。
【0018】
さらに前記第2および第3の本発明において、前記金属箔を構成する金属元素の格子定数と前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の差が、前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の20%以内で、かつ前記金属箔を構成する金属元素のイオン化エネルギーが9eV以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明のシート材を接続材料として用いることにより、接合層と接合界面における電気的、熱的伝導の向上と機械的な強度を確保し、高い放熱特性が得られる接合体を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
[複合シート材]
以下、本発明における実施の態様である複合シート材について詳細に説明する。なお、以下の記載において、複合シート材とは、金属箔と金属微粒子層を備えた本発明の接合部材をいう。
図1が本実施の形態の複合シート材の構造を説明する断面図である。図1において、10が、本実施の形態の複合シート材であり、この複合シート材10は、金属箔11と、その表面の少なくとも1面に、有機保護膜12bが被覆されている金属微粒子12aを含有する金属微粒子層12が形成されているものである。そして、前記有機保護膜で被覆された金属微粒子は、前記有機保護膜材料の表面張力などの分子間力によって相互に結合しており、安定して取り扱えることができる。
【0021】
前記金属微粒子と前記有機保護膜との配合の比率は、重量比にして、100:(1〜40)の範囲が好ましい。有機保護膜の比率が、この範囲より少なくなると、分子間力が十分でないため、安定した複合シート材を得ることが困難になる。一方、有機保護膜は融着作用自体には関与しないので、この比率が、前記範囲より多くなると、複合シート材を使用する際に有機保護膜が金属微粒子と金属箔との融着に悪影響を及ぼす。
【0022】
前記金属箔11は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属からなる合金で構成されており、厚さ1〜50μmの金属箔である。金属箔11の厚さが、前記範囲を下回った場合、その機械的強度が不十分で取り扱いが困難となり実用的ではない。一方、金属箔の厚さが前記範囲を上回った場合、その厚みが増加したとしても、特性の改善が期待できるわけではなく、不経済である。
【0023】
前記金属微粒子層12は、有機保護剤12bにより被覆された粒子径1〜100nmの、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属の合金で構成され、この金属微粒子12aは、その表面の有機保護剤12bの表面張力により金属微粒子が相互に付着した構造となっている。この金属微粒子12aの粒子径が、前記範囲を下回ったものは、製造が極めて困難であり、不経済である。一方、粒子径が前記範囲を上回った場合、微粒子の常温融着現象が発揮されなくなり、本発明の効果を実現することができない。
【0024】
本複合シート材において、金属微粒子と、金属箔を構成するそれぞれの金属材料の組み合わせとしては、金属微粒子を構成する元素と、金属箔を構成する元素の格子定数のさが、金属微粒子を構成する元素の格子定数の20%以内とすることが好ましい。格子定数の差が、20%を越えた場合、この複合シート材を用いて接合を行う際に、前記金属箔と前記金属微粒子との界面で接合の歪みが残留し、クラック発生による電気抵抗もしくは熱抵抗の増加、あるいは機械的破断等の不具合を引き起こすおそれがある。
【0025】
また、前記複合シート材の金属箔は、9eV以下のイオン化エネルギーを有する元素であることが好ましい。このような金属として、銀、銅、白金、パラジウム、アルミニウム、ニッケル、コバルト等がある。金属箔のイオン化エネルギーが9eVを越える金などの場合、前記金属箔と、金属微粒子間の融着が困難となり、本発明の効果を実現することができない。
【0026】
以上の点から、本実施の形態の複合シート材においては、金属箔と金属微粒子を構成する金属の組み合わせとしては、それぞれが同一の金属から構成されていること、あるいは、金属微粒子の融着現象により金属箔と金属微粒子との金属接合が可能な組み合わせが好ましい。
【0027】
前記複合シート材において、表面に形成されている金属微粒子は、常温で相互にあるいはこの金属微粒子と接触する金属表面と融着し焼結する性質を有しているが、金属微粒子の表面に被覆している有機保護膜がこれを抑止している。そこで、この有機保護膜を除去することによって、常温融着の性能を発揮し、焼結体を形成することになる。本実施の形態の複合シート材は、この特性を利用して、電気的・熱的な接合に用いるものである。この複合シート材の応用については、後述する。
【0028】
上述したように、本発明の複合シート材は、金属箔の両面に金属微粒子が付着した層を持つ構造をとっており、本シート材は、金属箔、金属微粒子の材料選択により鉛不含有かつ高融点の金属で構成することが可能であるため、鉛フリー化と耐熱性の課題は解決でき、かつ接続材料として用いたとき、接続部材とのいずれの界面においても金属接合しているため、接続部材との密着性は高く、高い電気・熱伝導性を有する。
【0029】
[複合シート材:変形例]
前記複合シート材の実施の形態においては、金属箔の両面に金属微粒子層を有する例を示したが、この金属微粒子層は必ずしも金属箔の両面に形成されている必要はなく、金属箔の一面にのみ金属微粒子層を形成したものであってもよい。金属微粒子層を形成していない面は、金属箔のまま用いてもよいし、絶縁材料層などの層を形成してもよい。さらに、他の部材が配設されていてもよい。また、特殊な形状が形成されていてもよい。
この複合シート材の使用方法については後述する。
【0030】
前記複合シート材を製造するには、蒸着装置を用いて金属箔の表面に、有機保護膜を形成した金属微粒子を付着させる方法と、有機保護膜を表面に形成した金属微粒子を含む塗布剤を用いて、金属箔表面に塗布剤を塗布して金属微粒子を含有する層を形成する方法がある。以下それぞれの方法について詳述する。
【0031】
[複合シート材の製造方法1:蒸着方法]
以下、前記複合シート材を製造する第1の方法について説明する。
この方法は、蒸着装置を用いて、有機保護膜を表面に形成した金属微粒子を生成し、これを金属箔の表面に付着させるものである。
この方法において用いる複合シート材の製造装置の詳細を図2に示す。図2において、20がその内部を真空に維持できるようになっているチャンバーであり、その内部に、金属箔支持部材21が配置されている。そして、この金属箔支持部材21には、その表面に金属微粒子層を形成する金属箔22が支持されている。このチャンバー20には、蒸発室25および配管23がバルブ24を介して接続されており、配管23を介して、有機保護膜材料およびキャリアガスを、蒸発室25を経由してチャンバー20に導入できるようになっている。前記蒸発室25内には、ボート26が配置されており、その内部に金属27を配置することができるようになっている。このボート26は、図示しない加熱装置によって加熱され、ボート26内に配置されている金属微粒子の原料となる金属27を蒸発させることができるようになっている。また、チャンバー20は、排気バルブ28を介して図示しない真空装置によって真空に維持できるようになっている。
【0032】
前記した装置は、図2に見られるように、チャンバー20を中心として左右対称に構成することにより、金属箔22の両面に金属微粒子層を形成することができるようになっている。この場合に、金属箔支持部材21および隔壁29によりチャンバー20内を左右の室に隔離し、相互に気密に保持することによって、金属箔22の両表面にそれぞれ異なる種類の金属微粒子層を形成することができる。
【0033】
以下、この装置を用いて複合シート材を製造する方法について詳述する。
まず、排気装置を駆動し、バルブ24を開いてHeのような不活性ガス供給源から、配管23を経由してチャンバー20内に不活性ガスを供給する。これにより、チャンバー20内を不活性ガス雰囲気、圧力0.5Torr程度に維持する。
【0034】
次に、ボート26に近接して配置されている図示しない加熱装置によって、ボート26内に配置した金属微粒子の原料となる金属27を融点以上の温度で加熱することで蒸発させ、金属蒸気を発生させる。金属27は、加熱する際に、気化しやすいように粒状のものを用いるのが望ましい。
【0035】
次に、チャンバー20内で金属微粒子を被覆する有機保護膜材料である2−メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ジエチルメチルアミン、2−ジメチルアミノメタノール、メチルジエタノールアミン、アルキルアミン、カルボン酸アミド、アミドカルボン酸塩等のアミン化合物の内、一つもしくは複数の有機化合物の蒸気を前述の金属上記と混合することにより、表面部分が有機保護膜で被覆された金属微粒子が得られる。
この有機保護膜材料は、前記バルブ24を通過する前に前記不活性ガスに混合して供給してもよいし、別な供給経路を設けて、蒸発室25内部で、不活性ガスと混合するとともに、金属蒸気と接触させて金属微粒子表面に膜形成してもよい。
【0036】
次に、この有機分散膜で被覆された金属微粒子を、同チャンバー内に予め設置した、厚さ1〜50μm程度の金属箔22表面に析出させることで、有機分散膜で被覆された粒子径1〜100nmの金属微粒子が両面に付着した金属箔が得られる。
【0037】
金属微粒子を析出させる際の金属箔の温度は、金属微粒子が融着するのを防ぐため、金属微粒子を覆う有機保護膜が蒸発などにより離散する温度以下でなければならず、0〜50℃であることが望ましい。また、金属微粒子層の厚さは、バルブ24、24a、28、28aによって、有機化合物の蒸気、流出する排気の流量を変えることで調整可能となる。
【0038】
金属箔11としては、1枚宛チャンバー20内に供給し、バッチ方式によって、金属微粒子層を形成してもよいし、図3に示すように、リール32、33に巻き取った長尺の金属箔31を準備し、ロール状の金属箔を順次繰り出して、その表面34に連続的に金属微粒子層を形成してもよい。これによって金属微粒子の付着した金属箔はチャンバー外に回収し、所要の形状に切断成形することで金属微粒子付着複合シート材を形成することができる。なお、図3において、(a)は、金属箔繰り出し装置の正面図であり、(b)は、その側面図である。
【0039】
[複合シート材の製造方法2]
前記複合シート材を製造する第2の方法は、有機化合物保護剤を表面に形成した金属微粒子を溶剤中に分散させて形成した金属微粒子分散液を用い、金属箔の表面にこの金属微粒子分散液を付与し乾燥させることによって製造する方法である。
以下に、その工程について詳述する。
本製造方法では、金属箔に金属微粒子層を形成するために金属微粒子分散液を用いる。この金属微粒子分散液中の金属微粒子は、1〜10nmの粒子径を有するものを用いる。金属微粒子は粒子径が10nm以下程度になると、常温で融着する性質を有するようになり好ましい。本実施の形態においては、常温での金属微粒子の融着を防ぐために、金属微粒子の表面にアミン化合物による有機保護膜が形成されている。金属微粒子の粒子径が10nm以上であり、常温で融着せず保護膜を必要としない場合であっても、後の加熱加圧工程で金属微粒子間、金属微粒子と被接合部との融着が起きる範囲で有れば良く、100nm以下であることが望ましい。さらに、粘度調整用の溶媒、もしくはチクソ性の調整用の有機溶媒(表面活性剤やシリカ粉末等の微粒子添加物)を混練することで、ペースト粘度とチクソトロピック性のレオロジーを調整し、スクリーン印刷、ディスペンス、もしくはインクジェット法により金属箔表面に付与することが可能となる。
【0040】
金属微粒子を被覆するアミン化合物と、金属微粒子を分散させる有機溶媒の選択、組み合わせに関しては、金属微粒子がアミン化合物からなる有機保護膜で被覆された状態を維持するため、互いに溶け合わず、かつ、後の乾燥工程におけて溶媒を揮発させる際、先に有機保護膜が蒸発などにより離散しないようにするため、アミン化合物有機保護膜材料の沸点が、溶媒の沸点より高くなければならない。
【0041】
前記金属微粒子を被覆する有機保護膜材料としては、2−メチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、ジエチルメチルアミン、2−ジメチルアミノメタノール、メチルジエタノールアミン、アルキルアミン、カルボン酸アミド、アミドカルボン酸塩等のアミン化合物の内、1つもしくは複数のアミン化合物を混合したものが望ましく、また、粘度調整用の溶剤は、長鎖アルカンであるヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、トリメチルペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン;あるは、ベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、ドデシルベンゼン、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、シクロヘキサノール、テルピネオール等が望ましい。
【0042】
次に、ペースト状の前記金属微粒子分散液を前記金属箔に10μm以下に塗布した後、溶媒を揮発させシート表面を乾燥させることで金属微粒子が付着した金属箔が得られる。金属箔へのペースト塗布方法は、表面に均一に膜厚10μm以下に均一に塗布できる方法として、スクリーン印刷、ディスペンス、インクジェット法、ディップ式塗布等の方法が望ましい。
その後、前記溶媒の揮発する温度以上、かつ金属微粒子を被覆する前記アミン化合物有機保護膜材料の沸点以下で加熱し、溶媒を揮発させ、シート表面を乾燥させる。
次いで、金属微粒子が付着した金属箔を乾燥後、成形することで金属微粒子付着複合シート材が完成する。
【0043】
[複合シート材の応用:その1]
上記工程により作製された金属微粒子が付着した複合シート材を一例としてパワートランジスタのダイマウント材として適用した例を以下に詳細に示す。
【0044】
図4が、本実施の形態の半導体装置の概略断面図である。
図4において、半導体素子43は、前記金属微粒子が付着した複合シート材42を介して、リードフレーム41のダイパッド表面に接合されている。
半導体素子53の寸法は、例えば2mm平方、厚さ0.3mm程度のものであり、接続面である半導体回路形成面の裏面には、金や銀の蒸着膜もしくは金や銀等の金属メッキが施こされている。この半導体素子53の寸法は、金属微粒子が付着した複合シート材52を接合材として用いたとき、半導体素子53とリードフレーム51の熱膨張係数に起因する応力を緩和できる程度の小面積であることが望ましい。リードフレーム51としては、例えば5mm×50mm、厚さ0.1〜1mm程度の銅のコア材に、銀や金等の電気メッキ処理等により、3〜20μm程度のメッキが施されているものを用いることができる。このリードフレーム51の寸法は、半導体素子53と金属微粒子が付着した複合シート材52を付与できる面積があれば良い。金属微粒子が付着した複合シート材は、予め前記半導体素子と同じ程度の面積に切断したものを用いる。
リードフレーム表面のメッキは、以下の工程の熱処理温度で、銅が酸化されてしまうことを防止するためであるが、銅無垢で使用することも可能である。
【0045】
次に、上記部材を用いたパワートランジスタの製造工程の例を、その工程概略図である図5を用いて説明する。
【0046】
まず、図5(a)に示すように、リードフレーム51のダイパッド51a上に、例えば厚さ10μmの金属微粒子の付着した金属箔からなる複合シート材52をマウントする。この工程は、固定されたリードフレーム51に、複合シート材52を載置する。この際、複合シート材の自重で圧力がかかるため、基本的には、圧力付与は不要であるが、複合シート材の形状を整えるためには、加圧してもよい。このときの、加圧力としては、1kPa〜1MPa程度の圧力で十分である。この工程によって、リードフレーム51のダイパッド51a表面と、複合シート材52の表面は、複合シート材52の表面に存在する有機保護膜材料の分子間力によって付着している。
【0047】
続いて、図5(b)に示すように、前記複合シート材52の表面に、半導体素子53をマウントする。この工程において、前記複合シート材52の表面に半導体素子53を載置し、1kPa〜1MPaの圧力で、加圧することが好ましい。これによって、複合シート材52と半導体素子53の間も、有機保護膜材料の分子間力によって付着している。
【0048】
その後、図5(c)に示すように、半導体装置組み立て体を金属箔の両面に付着した金属微粒子が融着するよう、加熱もしくは加熱・加圧する。この加熱もしくは加熱・加圧は、リードフレーム51をリードフレームに接して配置された加熱ヒーター55で加熱し、半導体素子53に接して配置された加熱したヒーターツール54を用いて、半導体素子53をリードフレーム51側に0.5〜20MPaで加圧する。加熱・加圧時間は金属微粒子の融着が十分に進行する範囲であり、1〜120minの範囲が好ましい。加熱ヒーター55およびヒーターツール54の温度は、200〜350℃程度であることが望ましい。本方式に限らず、熱と圧力を加える工程があれば良い。
【0049】
本ダイマウント材中の金属微粒子は、200℃前後で金属微粒子を覆う保護膜が揮発し、金属微粒子同士の融着が進行する。硬化前に粒子径が1〜20nmであった金属微粒子が硬化後に粒子径10〜100nmに成長し、金属微粒子同士が互いに融着していることが、SEMもしくはTEMで確認できる。また、金属微粒子と、半導体素子に蒸着された金、銀およびリードフレームにメッキされた金、銀の界面においても融着現象が確認できる。
【0050】
次に、図5(d)に示すように、例えばφ20μmの金ワイヤ56を用いて、半導体素子53とリードフレーム51の端子部51b間を電気的に接続するワイヤボンディングを行う。この時、リードフレームは260〜300℃に加熱され、ワイヤボンディング時に、半導体素子には応力が加わるが、前記金属微粒子付着シートはワイヤボンディングに耐えうる密着強度を有する。
【0051】
その後、図5(e)に示すように、前記リードフレーム51、ダイマウント材(複合シート材52)、半導体素子53、および金ワイヤ56を覆うように、例えばエポキシ樹脂57で、トランスファモールドする。モールド条件は、10〜20Mpaで、170〜220℃、40〜60secで行うことができる。
【0052】
これらの工程によって、半導体装置を製造することができる。このプロセスに依れば、金属箔表面に存在していた金属微粒子は加熱・加圧工程により互いに融着し、90〜99.9wt%の粒子径20nm〜1μmの互いに融着している金属微粒子と残りが有機物にて構成される。
【0053】
[複合シート材の応用:その2]
以下、本実施の形態においては、前記金属箔の一面にのみ金属微粒子層を形成した複合シート材を使用する例を示す。図6が使用例を示す概略断面図である。
図6(a)は、金属箔61の一表面に金属微粒子層62を形成し、この金属微粒子層62に接して、電子部品等の部材63a,63bが接合されている。このような構造体は、近接させることのできない2つの部材を接続するのに有利である。
図6(b)は、金属箔61の所要部分のみに金属粒子層62a,62bを形成し、その金属微粒子層に、同じく電子部品63a,63b等を搭載するものである。
図6(c)は、金属箔61の表面に金属微粒子層62を形成し、その裏面には、電子部品などの他の部材64を接続しているものである。この構造体は、筐体等構造部材に接続部材を取り付けることができる点で、電子機器などの組み立ての柔軟性が改善される。
図6(d)は、表面に金属微粒子層62を形成した金属箔61の裏面に電気絶縁材料層65を形成したものであり、この構造体によれば、電気的ショートの危険性を回避することのできる接合部材を実現することができる。
図6(e)は、一表面に金属部粒子層62を形成した金属箔61を、金属微粒子層62が外側に位置するように屈曲させ、その表面の金属微粒子層62を電子部品などの部材63a,63bと接続するものである。この構造体によれば、接合面が相対しているが、接して配置することのできない部材間の接続に適している。
以上に、本発明の接合部材の応用について、種々説明したが、これらの構造体以外に本発明の趣旨を損なわない限り、他の構造体に適用することができることはもちろんである。
【0054】
また、以上の説明では、接続対象物として、電子部品などの熱伝導性および電気伝導性が求められるものを例示したが、本発明の接合部材は、こればかりではなく、接合層が、上記接合構造を実現できる表面を有する物質であれば、適用可能であり、その利用範囲は何ら限定されることがないことはもちろんである。
【0055】
以上の説明で明らかにしたように、本発明の効果をまとめると、以下の通りである。加熱・加圧工程で金属微粒子が、加熱温度での低温融着効果により、金属微粒子間、および金属微粒子と半導体素子に蒸着された金属およびリードフレームにメッキされた金属の間で融着し金属接合するため、従来技術と比較し熱的・電気的な導通の他、高い密着強度が得られる。
【0056】
なお上記で示した金属微粒子、金属粒子、金属箔の元素は、金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムの中の一種類、もしくは2種類以上の合金であっても良いが、金属微粒子とチップ裏面、リードフレーム表面に蒸着した金属が接合する際、金属微粒子がバルク金属に拡散することで密着が得られるため、金属微粒子が拡散しやすいよう、金属微粒子の金属種と、蒸着金属の金属種の組み合わせを考えなければならない。この場合、例えば格子定数差10%以内、バルク金属のイオン化エネルギーが低い金属であることが望ましく、例えば金属微粒子が銀であった場合、蒸着金属は銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムに限定され、蒸着金属が金であった場合、高い密着力は期待できない。
【0057】
上記本実施の形態では、本発明のダイマウント材をパワートランジスタに適用した例を示したが、これ以外にも、パワーLED、高集積システムLSI、高速メモリーチップ等のような、電気伝導、および熱伝導を必要とする金属間接合に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係わる複合シート材の一部断面図。
【図2】本発明に係わる留複合シート材の製造装置の一例を示す概略図
【図3】本発明に係わる複合シート材の製造装置の一部分を示す図
【図4】本発明に係わる複合シート材を使用した半導体装置の概略断面図
【図5】本発明に係わる復合シート材の使用例である半導体装置の製造方法の工程図
【図6】本発明に係わる複合シート材の他の使用例を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0059】
10…複合シート材
11…金属箔
12…金属微粒子層
12a…金属微粒子
12b…有機保護膜
20…チャンバー
21…金属箔支持部材
22…金属箔
23…配管
24…バルブ
25…蒸発室
26…ボート
27…金属
28…排気バルブ
29…隔壁
31…金属箔
32,33…リール
34…金属箔表面
41…リードフレーム
42…ダイマウント材(複合シート材)
43…半導体素子
51…リードフレーム
51a…ダイパッド
51b…端子部
52…ダイマウント材(複合シート材)
53…半導体素子
54…ヒーターツール
55…加熱ヒーター
56…ワイヤ
57…封止樹脂
61…金属箔
62…金属微粒子層
63…電子部品等
64…他の部材
65…絶縁材料層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔の少なくとも一つの表面に、有機保護膜によって被覆された表面を有する粒子径1〜100nmの金属微粒子が固定されている金属微粒子層を有することを特徴とする接合部材。
【請求項2】
前記金属微粒子層が、前記金属箔の両面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の接合部材。
【請求項3】
前記金属微粒子層の厚さが、0.1〜5μmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合部材。
【請求項4】
前記金属微粒子および前記金属箔が、それぞれ同一のもしくは異なる金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属の合金であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接合部材。
【請求項5】
前記金属箔を構成する金属元素の格子定数と前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の差が、前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の20%以内で、かつ前記金属箔を構成する金属元素のイオン化エネルギーが9eV以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の接合部材。
【請求項6】
減圧した不活性ガス雰囲気下で、金属蒸気と有機保護膜材料の蒸気とを混合することにより、表面部分が前記有機保護膜で被覆された金属微粒子を含有する微粒子組成物を製造する工程と、
前記表面が有機保護膜で被覆された金属微粒子を含有する微粒子組成物を、金属箔表面に析出させる工程からなることを特徴とする接合部材の製造方法。
【請求項7】
有機保護膜により被覆された金属微粒子と有機溶媒とを含む分散液を、金属箔の表面に付与し、前記金属微粒子を前記有機保護膜材料もしくは前記有機溶媒の表面張力により前記金属箔に付着させる工程と、
前記形成された膜から有機溶媒を揮発させて、前記有機保護膜により被覆された金属微粒子で構成された厚さ0.1〜5μmの膜を形成する工程からなることを特徴とする接合部材の製造方法。
【請求項8】
前記金属微粒子、および前記金属箔が、それぞれ金、銀、銅、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、錫、インジウムから選ばれた1種類の金属、もしくは2種類以上の金属の合金であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の接合部材の製造方法。
【請求項9】
前記金属箔を構成する金属元素の格子定数と前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の差が、前記金属微粒子を構成する金属元素の格子定数の20%以内で、かつ前記金属箔を構成する金属元素のイオン化エネルギーが9eV以下であることを特徴とする請求項6ないし請求項8のいずれかに記載の接合部材の製造方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−73550(P2006−73550A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−251270(P2004−251270)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】