説明

接着剤層付き基材の製造方法

【課題】意図した箇所に対して選択的に塗布液の塗布が可能であり、被着体への密着性がよく、かつ、塗布量の点で効率よく塗布が可能な塗布方法による接着剤層付き基材の製造方法を提供すること。
【解決手段】第1の電極基板100の表面に立設された構造体103の上面に、基材110の表面に形成された熱可塑性材料層111を接触させる工程と、熱可塑性材料層111を加熱して、構造体103と熱可塑性材料層111とを貼り合わせる工程と、熱可塑性材料層111を加熱した状態で、第1の電極基板100から基材110を剥離することにより、熱可塑性材料層111を構造体103の上面に転写する工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤層付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な部分に塗布液を塗布する技術として、例えば、スクリーン印刷法や、インクジェット法などが知られている。これらの技術は、プリント回路や、液晶ディスプレイなどの製造に用いられている。
【0003】
微細な部分に塗布液を塗布する一例として、2枚の基材の間隔を一定に保って貼り合わせるために基材に立設された構造体(隔壁、スペーサーまたはリブとも称される)の上面に塗布液として接着剤を塗布する用途が挙げられる。この場合、被着体である構造体および基材は、接着剤を介して固定される。
【0004】
特許文献1では、電気泳動表示パネルのスペーサーに接着剤を塗布する方法として、表面に接着剤が付着された転写ロールを回転駆動し、この転写ロールとスペーサーが形成された基板とを相対移動させることにより、スペーサーの上面に接着剤を塗布する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2では、電気泳動表示パネルのスペーサーに接着剤を塗布する方法として、標準状態では固体であり、特定の条件下でのみ接着性を発現するホットメルト接着剤を転写する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−184893号公報
【特許文献2】特開2008−225063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、転写ロールを用いる方法では、ぬれ性が高い塗布液を使うほど、塗布液が所望の塗布部分以外に濡れ広がるという事態が起こり得る。また、塗布の際に、塗布液の飛沫が飛散して、意図しない場所に塗布液が塗布される事態が起こり得る。あるいは、LCDや電気泳動表示パネルのように、塗布液以外のインクや媒体をセルに充填して使う場合には、この媒体と塗布液が相溶する、または、媒体中に塗布液が溶出するという事態が起こり得る。
【0008】
また、接着剤を転写する方法では、転写元基材への接着剤の残りが多く、接着剤の無駄が発生するという事態が起こり得る。また、転写した接着剤の密着性が弱いという事態が起こり得る。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、特に、塗布液以外の媒体と塗布液とが接触する箇所において、意図した箇所に対して選択的に塗布液の塗布が可能であり、被着体への密着性がよく、かつ、塗布量の点で効率よく塗布が可能な塗布方法による接着剤層付き基材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の接着剤層付き基材の製造方法は、第1の基材の表面に、構造体を形成する工程と、第2の基材の表面に、熱可塑性材料の塗膜を形成する工程と、第1の基材の表面に立設された構造体の上面に、第2の基材の表面に形成された熱可塑性材料層を接触させる工程と、熱可塑性材料層を加熱して、構造体と熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程と、熱可塑性材料層を加熱した状態で、第1の基材から第2の基材を剥離することにより、熱可塑性材料層を構造体の上面に転写する工程と、を有することを特徴とする。
【0011】
本発明の接着剤層付き基材の製造方法においては、構造体と熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程において、加熱温度は、熱可塑性材料の軟化点以上であることが好ましい。
【0012】
本発明の接着剤層付き基材の製造方法においては、熱可塑性材料層を構造体の上面に転写する工程において、加熱温度は、熱可塑性材料の軟化点以上であることが好ましい。
【0013】
本発明の接着剤層付き基材の製造方法においては、熱可塑性材料層を構造体の上面に転写する工程において、第1の基材の温度よりも、第2の基材の温度の方が高いことが好ましい。
【0014】
本発明の接着剤層付き基材の製造方法においては、構造体と熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程において、第1の基材と第2の基材を押し付けるように外側から荷重をかけることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、意図した箇所に対して選択的に塗布液の塗布が可能であり、被着体への密着性がよく、かつ、塗布量の点で効率よく塗布が可能な塗布方法による接着剤層付き基材の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態に係る接着剤層付き基材の製造方法を説明する図。
【図2】実施の形態に係る接着剤層付き基材の製造方法の一例を説明する図。
【図3】熱可塑性材料層の転写量と接着剤層との関係を示す模式図。
【図4】実施の形態に係る接着剤層付き基材を用いた電気泳動表示媒体の製造方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者は、接着剤として熱可塑性材料を用いると共に、転写法による接着剤層の製造工程において、熱可塑性材料層が形成されたフィルムを基板上に形成された構造体の上面側に貼り合わせる際と、構造体から剥離する際の2回にわたって、熱可塑性材料層を加熱により軟化させることにより、構造体への熱可塑性材料の転写量を増やすことができ、また、この接着剤層から接着剤が塗布液以外の媒体中に溶けだすことを抑制できることを見出した。
以下に、本発明の接着剤層付き基材の製造方法の一例について説明する。
【0018】
本実施の形態で示す接着剤層付き基材の製造方法は、第1の基材の表面に、構造体を形成する工程と、第2の基材の表面に、熱可塑性材料の塗膜を形成する工程と、第1の基材の表面に立設された構造体の上面に、第2の基材の表面に形成された熱可塑性材料層を接触させる工程と、熱可塑性材料層を加熱して、構造体と熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程と、熱可塑性材料層を加熱した状態で、第1の基材から第2の基材を剥離することにより、熱可塑性材料層を構造体の上面に転写する工程と、を有している。
以下に、各工程について図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
<セル形成工程>
セル形成工程において、第1の電極基板100上に立設した絶縁性の構造体103からなる複数のセル104を形成する(図1(a)参照)。複数のセル104は、立設した構造体103によりそれぞれ分離されており、円形、矩形(長方形、正方形)、六角形等のさまざまな形状で設けることができる。また、構造体103は、「リブ」または「スペーサー」などと呼ばれることがある。
【0020】
第1の電極基板100は、電極を有する基板であればよい。例えば、第1の電極基板100は、第1の基材101上に第1の電極層102を設けた構成とすることができる。この場合、構造体103は、第1の電極層102上に形成する。
【0021】
第1の基材101は、ガラス、石英、サファイア、MgO、LiF、CaF等の透明な無機材料、フッ素樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルサルフォン等の有機高分子のフィルムまたはセラミック等を用いて形成することができる。
【0022】
第1の電極層102は、ITO、ZnO、SnO等の透明導電性材料や、アルミニウム(Al)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)等の金属を用いて形成することができる。また、PODET/PVSやPODET/PSSなどの導電性ポリマーや、酸化チタン系、酸化亜鉛系、酸化スズ系などの透明導電材料を用いてもよい。これらの材料を用いて、蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の方法により第1の電極層102を形成することができる。
【0023】
また、第1の電極層102の形状は、対向電極となる第2の電極層の形状に応じて適宜選択することができる。なお、第1の電極層102は、第1の基材101に接して設けてもよいし、第1の基材101上に電気泳動表示媒体を駆動する素子(トランジスタ等)を設けて、当該素子上に設けてもよい。
【0024】
電気泳動表示媒体において、第1の電極基板100が前面側電極基板となる場合には、第1の電極基板100を介して電気泳動インクで形成される文字等の表示が視認される。したがって、第1の基材101および第1の電極層102は、透光性を有する材料で形成することが好ましい。
【0025】
構造体103は、PETフィルム等の樹脂材料を用いて形成することができる。例えば、一定の厚みを有するPETフィルムなどの合成樹脂にレーザー加工を施して、正方形や六角形、円形等の形状を形成することにより、複数のセル104を形成することができる。また、第1の電極層102上に絶縁層を形成した後、当該絶縁層をフォトリソグラフィ法によりパターニングすることにより、複数のセル104を形成することもできる。他にも、第1の電極層102上に熱可塑性の樹脂を形成し、ホットエンボスのような方法で井桁状の構造体103からなるセル104を形成することも可能である。
【0026】
<熱可塑性材料層形成工程>
続いて、熱可塑性材料層形成工程において、フィルム状の基材110表面に、熱可塑性材料の塗膜を形成し、熱可塑性材料層111を形成する。
【0027】
熱可塑性材料は、基材110表面に塗布する段階では液状であり、塗膜形成後に溶媒を除去すると熱可塑性材料だけが残るような材料が好ましい。
【0028】
熱可塑性材料層111としては、ホットメルト接着剤、使用温度域で固体のパラフィンワックス、ポリエチレン樹脂などを用いることができる。
【0029】
<接着剤転写工程>
続いて、接着剤転写工程において、転写法によって構造体103の上面に接着剤層112を形成する(図1(c)参照)。
【0030】
まず、フィルム状の基材110の表面に形成された熱可塑性材料層111を、構造体103の上面に接触させる(図1(a),(b)参照)。その後、熱可塑性材料層111の温度が軟化点以上となるように加熱しながら、熱可塑性材料層111と構造体103の上面とを貼り合わせる。
【0031】
ここでは、第1の電極基板100側を選択的に加熱することにより、熱可塑性材料層111を加熱する。したがって、熱可塑性材料層111は、第1の電極基板100に近い部分が軟化点に達した熱可塑性材料層111aとなり、第1の電極基板100から離れている部分が軟化点に達しない熱可塑性材料層111bとなる(図2(a)参照)。熱可塑性材料層111のうち、構造体103と接する部分が軟化点に達した熱可塑性材料層111aとなるため、構造体103への熱可塑性材料層111の密着性をあげることができる。
【0032】
なお、接着剤転写工程において、熱可塑性材料層111を軟化させるタイミングは、固化状態の熱可塑性材料層111を構造体103の上面に接触させた後でもよいし、熱可塑性材料層111を構造体103の上面に接触させる前でもよい。ただし、待機位置で熱可塑性材料層111の層厚が乱れる可能性があるため、接触直前ないしは接触させた後に軟化させることが好ましい。
【0033】
さらに、この貼り合わせ工程において、構造体103と熱可塑性材料層111とを押しつけるように、基材110の外側から荷重をかけてもよい。例えば、熱可塑性材料層111と構造体103の上面が接触するように、基材110と第1の電極基板100とをローラー状の押圧体で押しつけることで、外側から荷重をかけることができる。外側から荷重をかけることで、構造体103と熱可塑性材料層111との密着性をあげることができる。
【0034】
その後、基材110を構造体103の上面から剥離することにより、熱可塑性材料層111の一部が構造体103の上面に転写され、構造体103の上面に接着剤層112が形成される(図1(c)参照)。なお、剥離時に、熱可塑性材料層111は、熱可塑性材料の軟化点以上の温度に加熱されている。
【0035】
ここでは、基材110側を選択的に加熱することにより、熱可塑性材料層111を加熱する。したがって、熱可塑性材料層111は、基材110に近い部分が軟化点に達した熱可塑性材料層111aとなり、基材110から離れている部分が軟化点に達しない熱可塑性材料層111bとなる(図2(b)参照)。熱可塑性材料層111のうち、構造体103と接する部分が軟化点に達しない熱可塑性材料層111bとなるため、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量を増やすことができる。構造体103への熱可塑性材料層111の転写量が多いほど、接着剤層112の膜厚は厚くなり、それに伴い接着力も大きくなる。
【0036】
この剥離工程において、第1の電極基板100よりも基材110の温度を高くすることで、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量を増やすことができる。基材110は選択的に加熱されているため、通常、第1の電極基板100よりも温度は高くなる。より一層、温度差をつけるために第1の電極基板100を選択的に冷却してもよい。
【0037】
このように、接着剤転写工程において、熱ラミネート装置等を用いて熱可塑性材料の転写を行うことによって、接着剤層112が形成される位置ずれを抑制するとともに、生産性を向上することができる。
【0038】
接着剤層112の厚さは、基材110上に形成された熱可塑性材料層111の厚さや材種、熱ラミネート装置の温度、ローラー状の押圧体の荷重などで決定される。なお、押圧体と第1の電極基板100との距離、あるいは押圧体と第1の電極基板100を保持する土台との距離を調整するスペーサーを介在させることにより、接着剤層112として所望の厚さを得ることができる。
【0039】
図3は、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量と、構造体103の上面に形成された接着剤層112との関係を示す模式図である。図3(a)は、構造体103の上面全体を覆うように、熱可塑性材料層111が転写された場合の接着剤層112を示している。
【0040】
図3(b)は、図3(a)に示す場合と比較して、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量が少ない場合の接着剤層112を示している。接着剤層112は、少なくとも構造体103上面全体の面積の1/4を覆っていれば、接着剤層112としての機能を発揮することができる。この場合、少ない熱可塑性材料層111の量で、構造体への密着性がよい接着剤層112を形成することができる。
【0041】
図3(c)は、図3(a)に示す場合と比較して、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量が多い場合の接着剤層112を示している。接着剤層112は、接着剤幅d2が、構造体幅d1の2倍より短い、すなわち、d2<d1×2という関係を満たしていれば、接着剤層112としての機能を発揮することができる。この場合、接着剤層112の接着力をより向上させることができる。
【0042】
以上説明したように、実施の形態に係る接着剤層付き基材の製造方法によれば、熱可塑性材料層111の温度が軟化点以上となるように加熱しながら、熱可塑性材料層111と構造体103の上面とを貼り合わせるため、構造体103への熱可塑性材料層111の密着性をあげることができる。また、熱可塑性材料層111の温度が軟化点以上となるように加熱しながら、熱可塑性材料層111を構造体103上面から剥離するため、構造体103への熱可塑性材料層111の転写量を増やすことができる。この結果、構造体103への密着性がよく、かつ、接着力の低下を抑制することが可能な接着剤層付き基材を製造することができる。
【0043】
以下では、上記工程により得られた接着剤層付き基材を用いた電気泳動表示媒体の製造方法の一例について説明する。
【0044】
<電気泳動インク充填工程>
電気泳動インク充填工程において、第1の電極基板100上に形成された各セル104に、電気泳動インク120を充填する(図4(a)参照)。電気泳動インク120を充填する方法としては、例えば、ダイコーターなどによるコーティングや、スクリーン印刷などを用いた印刷法、あるいはインクジェットやディスペンサーによる充填などの各種方法を用いることができる。
【0045】
なお、電気泳動インク120をセル104に充填する前に、構造体103の上面に形成された接着剤層112を固化させる必要がある。接着剤層112を固化させるには、例えば、接着剤転写工程後に、接着剤層112を冷却すればよい。このように、電気泳動インク120を充填する前に接着剤層112を固化させることにより、電気泳動インク120が接着剤層112に触れた場合であっても、電気泳動インク120中に接着剤層112が溶けだすことを抑制することができる。
【0046】
接着剤層112を固化させるタイミングは、接着剤転写工程において基材110を構造体103の上面から剥がした後であって、電気泳動インク充填工程において電気泳動インク120を充填する前とする。
【0047】
電気泳動インク120は、少なくとも1種類以上の電気泳動粒子を含むものであればよい。例えば、正に帯電した白粒子と、負に帯電した黒粒子と、これらの粒子を分散させる分散媒から形成することができる。白粒子は、酸化チタン等の白色顔料や、白色の樹脂粒子、または白色に着色された樹脂粒子等を用いることができる。黒粒子は、チタンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料や、黒色に着色された樹脂粒子等を用いることができる。これら粒子は、コントラスト表示可能な範囲でさまざまな色の粒子を任意に用いることも可能であり、白と赤、白と青、黄色と黒などの組合せとすることもできる。また、白粒子のみ、または黒粒子のみといった1種類の帯電粒子のみを用いる構成とすることもできる。
【0048】
<基板貼り合わせ工程>
基板貼り合わせ工程では、第1の電極基板100と第2の電極基板200とを対向配置し、接着剤層112を介して構造体103の上面と第2の電極基板200とを接着することにより、電気泳動インク120をセル104に封止する(図4(b)参照)。このとき、接着剤層112を加熱処理によって接着可能な状態まで軟化させてから、第2の電極基板200に接着させる。つまり、電気泳動インク充填工程の前に一度固化させた接着剤層112を、再度軟化させることになる。
【0049】
電気泳動インク120をセル104に封止するには、例えば、接着剤層112と第2の電極基板200とを接触させた後に、接着剤層112を軟化点以上の温度とし、ローラー状の押圧体で第1の電極基板100と第2の電極基板200とを、連続的に押しつけて貼り合わせた後(熱圧着させた後)に、接着剤層112を冷却して固化すればよい。
【0050】
第2の電極基板200は、電極が設けられた基板で形成すればよい。例えば、第2の基材201上に第2の電極層202を設けた構成とすることができる。なお、第2の基材201は、上記第1の基材101の説明で示した材料のうち、いずれかの材料を用いて形成すればよい。また、第2の電極層202は、上記第1の電極層102の説明で示した材料のうち、いずれかの材料を用いて形成すればよい。
【0051】
電気泳動表示媒体において、第2の電極基板200が前面側電極基板となる場合には、第2の電極基板200を介して電気泳動インクで形成される文字等の表示が視認される。したがって、第2の基材201および第2の電極層202は、透光性を有する材料で形成することが好ましい。
【0052】
なお、基板貼り合わせ工程において、接着剤層112を軟化させる温度(T2)は、電気泳動インク120の沸点(T3)より低くする(T3>T2)ことが好ましい。電気泳動インク120の沸点以上の温度を接着剤層112に加えた場合、電気泳動インク120が揮発し、減量するためである。したがって、熱可塑性材料層111の軟化点が、電気泳動インク120の沸点より小さくなるように、それぞれの材料を選択することが好ましい。
【0053】
また、基板貼り合わせ工程において、接着剤層112を軟化させる温度(T2)は、接着剤転写工程において熱可塑性材料層111を転写可能な状態まで軟化させる温度(T1)より低くする(T1>T2)ことが好ましい。これは、接着剤転写工程においては、熱可塑性材料層111の層内部まで十分に溶解させ、基材110から剥離させるために、高い温度(T1)を加えることが好ましい一方、基板貼り合わせ工程においては、接着剤層112の形状維持が要求されるため、溶融させない温度(T2)で接着剤層112を軟化させる必要があるからである。
【0054】
さらに、転写の確実性を高める点からは、構造体103と熱可塑性材料層111の濡れ性を、基材110と熱可塑性材料層111の濡れ性より大きくすることが好ましい。すなわち、構造体103と熱可塑性材料層111の界面の接触角(θ)が、基材110と熱可塑性材料層111の界面の接触角(θ)以下となる(θ≦θ)ように、それぞれの材料を選択することが好ましい。
【0055】
構造体103の上面に形成された接着剤層112と、第2の電極基板200とを接着させることにより、セル104が密閉されるため、電気泳動インク120に含まれる泳動粒子の凝集あるいは偏在を抑制することが可能となる。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の効果を明確にするために行った実施例について説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
<熱可塑性材料層形成工程>
コンマロールを用いて、基材(剥離剤付きPETフィルム)上に、溶剤で希釈した熱可塑性材料(ホットメルト樹脂)を膜厚12μmに塗布した後、乾燥させた。
【0058】
<セル形成工程>
ラミネーターを用いて、第1の電極基板(ITO−PETフィルム)に、アクリレート系レジストフィルムを貼り合わせた後、フォトレジスト法により構造体を形成した。
【0059】
<接触工程>
第1の電極基板の表面に設けられた構造体の上面に、基材表面の熱可塑性材料層を接触させた。
【0060】
<接着剤転写工程>
第1の電極基板および基材を120度の熱ラミネーターに通し、加熱された状態のまま基材を引き剥がすことにより、基材表面に形成された熱可塑性材料層の一部を、構造体の上面に転写した。構造体の上面に転写された接着剤層の膜厚は、約6〜8μmであった。
【0061】
<電気泳動インク充填工程>
次に、構造体の上面に形成された熱可塑性材料を硬化した後、ITO−PETフィルムにダイコーターを用いて電気泳動インクを塗布することにより、構造体からなるセルに電気泳動インクを充填した。電気泳動インクを塗布した後に、構造体の上面を観察した結果、構造体の上面に形成された熱可塑性材料は相溶・流出せずに残存していることが確認できた。
【0062】
次に、電気泳動インクを塗布した部分(セル形成部)の外周に紫外線硬化型接着剤を形成した。
【0063】
<基板貼り合わせ工程>
次に、電気泳動インクが塗布されたITO−PETフィルムと第2の電極基板(FPC基板)とを80℃の熱ラミネーターに通して貼り合わせた後、セル形成部の外周に紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化することにより電気泳動表示パネルを作製した。
【符号の説明】
【0064】
100 第1の電極基板
101 第1の基材
102 第1の電極層
103 構造体
104 セル
110 基材
111 熱可塑性材料層
111a 軟化点に達した熱可塑性材料層
111b 軟化点に達しない熱可塑性材料層
112 接着剤層
120 電気泳動インク
200 第2の電極基板
201 第2の基材
202 第2の電極層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基材の表面に、構造体を形成する工程と、
第2の基材の表面に、熱可塑性材料の塗膜を形成する工程と、
前記第1の基材の表面に立設された前記構造体の上面に、前記第2の基材の表面に形成された熱可塑性材料層を接触させる工程と、
前記熱可塑性材料層を加熱して、前記構造体と前記熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程と、
前記熱可塑性材料層を加熱した状態で、前記第1の基材から前記第2の基材を剥離することにより、前記熱可塑性材料層を前記構造体の上面に転写する工程と、を有する接着剤層付き基材の製造方法。
【請求項2】
前記構造体と前記熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程において、前記加熱温度は、前記熱可塑性材料の軟化点以上である、請求項1に記載の接着剤層付き基材の製造方法。
【請求項3】
前記熱可塑性材料層を前記構造体の上面に転写する工程において、前記加熱温度は、前記熱可塑性材料の軟化点以上である、請求項1または請求項2に記載の接着剤層付き基材の製造方法。
【請求項4】
前記熱可塑性材料層を前記構造体の上面に転写する工程において、前記第1の基材の温度よりも、前記第2の基材の温度の方が高い、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の接着剤層付き基材の製造方法。
【請求項5】
前記構造体と前記熱可塑性材料層とを貼り合わせる工程において、前記第1の基材と前記第2の基材を押し付けるように外側から荷重をかける、請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の接着剤層付き基材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−40522(P2012−40522A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−184979(P2010−184979)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】