説明

接着強固な金属−セラミック複合材、およびその製造方法

本発明は材料学の分野に関し、例えば変形加工用具または切断工具に適用することができる、接着強固な金属−セラミック複合材に関する。本発明の課題は、セラミックと金属との強固かつ耐久性のある結合を有する、接着強固な金属−セラミック複合材の記載である。この課題は、金属成分とセラミック成分とから成り、かつ素材接合式、または素材接合式かつ摩擦接合式に相互に結合されている接着強固な金属−セラミック複合材により解決される。この際、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が結合面の範囲に存在し、そしてこれらの成分を未焼結成形体として複合材に加工し、これらの成分は共焼結されている。この課題はさらに、それぞれ少なくとも1の金属成分と少なくとも1のセラミック成分とを一体的な未焼結成形体として結合させ、かつ少なくともセラミック成分を焼結させるために、共に温度処理工程に供するという方法により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は材料学の分野に関し、かつ例えば変形加工工具、切断工具に適用できる、または外科用器具もしくは歯科用部材として医療に適用できる、接着強固な金属−セラミック複合材、およびその製造方法に関する。
【0002】
その高い硬度、耐熱性、および耐摩耗性、ならびに高い耐薬品性が理由で、酸化ジルコニウムはすでに様々な適用領域でセラミック構造材料として利用されている。
【0003】
新たな種類の適用可能性を達成するため、新規な特性の組み合わせを創り出すため、およびそれぞれの材料の欠点を補うために、複合材料が製造される。
【0004】
従ってこれらの材料を相互に、耐久性の高い形で、かつ機械的に安定的に結合させる接合方法を保証することは、非常に重要である。
【0005】
素材接合式の接合技術は、機械的な、または形状接合式の結合に比べて均一な力伝達、ならびに気密性、および構成的に有利な結合形態という利点をもたらす(Wielage,B.:Technische Keramik,Vulkanverlag,Essen,初版、1988年、158〜161p)。
【0006】
従来技術より、接合技術方法(活性ろう付け)(Wielage,B.; Ashoff,D.:Aktivloeten von Ingenieurkeramik.Hart− und Hochtemperaturloeten.Vortraege des 9.Dortmunder Hochschulkolloquiumus,6/7.1990年12月、Dortmund:Deutscher Verlag fuer Schweisstechnik,15〜20p)でセラミックと金属とから成る多成分構成部材を製造することは公知である。さらに歯科技術においては、金属製基礎構造体上でセラミックを焼くことにより、外装されたインプラント義歯が製造される(Eichner,K.;Kappert,H.F.:Zahnaerztliche Werkstoffe und ihre Verarbeitung,Band 1−Grundlagen und Verarbaitung,Benetzbarkeit und Verbundbildende Eigenschaften.Georg Thieme Verlag(2000年)、356〜357p)。
【0007】
プラスチック加工領域に由来する、適用範囲の広い成形法である多成分射出成形は、ニア・ネット・シェイプに、および形状可変に製造可能である。DE19652223A1には、熱可塑性成形により製造された複合材成形体が記載されている。この成形体は少なくとも2のセラミック材料および/または粉末状冶金材料と、少なくとも1の熱可塑性バインダーとから成り、かつ成形体の内部に、材料組成が異なる、および/または熱可塑性もしくは熱硬化性バインダー中の材料の粒子含分が異なる、体積部分量が存在することによって特徴付けられる。
【0008】
US2003/0062660には同様に、多成分粉末射出成形を介した2またはそれ以上の成分から成る成形部材の製造、選択的にはセラミック粉末材料、および/または金属粉末材料からの製造が、記載されている。
【0009】
DE102004006954A1には、粉末射出成形により製造された少なくとも1の成分と、他の方法で粉末射出成形体として製造された少なくとも1の第二の成分とから構成されている、素材複合材の製造方法が記載されている。従ってこの際例えば、少なくとも2の成分を脱脂前、または焼結前に接触させて接合することができ、この際引き続いた焼結の間に、粉末射出成形により製造した成形体を、他の方法により粉末射出成形体として製造した成形体上に加熱接合する。
【0010】
素材接合式の接合技術とは、活性ろう付け(Aktivloeten)である。セラミック表面は別種の結合比(イオン結合と共有結合)が原因で、金属材料(金属結合)と比較して金属溶融物で濡れないため、非常に反応性が高い元素、例えばチタン、ジルコニウム、またはハフニウムを含むろう合金を使用する。いわゆる活性ろう付け成分は、活性金属とセラミック間の連続的な化学反応によりセラミック表面の電離を引き起こし、この反応がいわゆるろう/セラミック境界面における反応層の形成につながる。これらの化学的相互作用によりろうのベース金属による濡れが可能になり、従ってろう付け複合材を製造することができる。生じた反応層の特性(密度、硬度、熱膨張性、および弾性率E)は、複合材料の特性に大いに影響を与える。例えば2段階のろう付けの際に必要となるセラミック表面の金属化工程は、なくてよい。活性ろう付けのための最初の試験は、すでに50年以上実施されている。今日までこの方法は、パワーエレクトロニクスにおいて、特に電子管、真空スイッチ、過電圧保護器、およびサイリスターカバーの製造において、機械構造物において、ならびにエネルギー技術、例えば金属製軸へのセラミック製ターボチャージャーのろう付け、ろう付けされたセラミック製切断機、セラミック製熱交換器、セラミック製マイクロ反応器(Moritz,T.ら:Int.J.Appl.Ceram.Technol.,6(2005)2,521〜528)、燃焼室内張り、または核融合装置の領域における構造物に対して、許容性が認められている(Lugscheider,E.;Tilmann,W.:Werkstoffe und Innovationen,5(1992)5/6,44〜48)。
【0011】
セラミック/セラミック複合材、またはセラミック/金属複合材を実現すべき活性ろう付けについては、以下の要求が課される:
−ろうによるセラミックおよび金属の良好な濡れ、
−結合させる部材間の可能な限り高い接着性の達成、
−立体的な変形による応力分解のためのろうの高い延性、
−充分な熱的安定性、および
−濡れを起こすが、しかし同時に、その使用の間にダメージを与えてしまう、活性金属とセラミックとの化学的相互作用を防止する、セラミック表面における可能な限り薄い反応層の形成。
【0012】
ZrO2(MgOとY23で安定化されている)と、ZrO2自体との、および鋼との活性ろう付け結合は、公知である(Krappitz,H.ら:Konferenz−Einzelberichte:DVS−Berichte,Bd.125(1989),80〜85p,DVS−Verlag Duesseldorf)。
【0013】
セラミックに対する比較的高い線熱膨張係数(10.4×10-6-1)を理由として、構造物用セラミックである酸化ジルコニウムセラミックは、鋼との複合材に対する選択肢となる素材である(430鋼の線熱膨張係数=10.0・・・11.5×10-6-1)。
【0014】
記載されている活性ろう付け法の欠点は、高真空の存在が必要となることと、ろう材料、通常は銅もしくは銅/銀ベースのろうが非常に高価なことである。接合面にろうを施与する際、とりわけ円形板金またはリング面を接合させたい場合には、切りくず(Verschnitt)を考慮しなければならない。さらなる問題は、ろう付け工程の間の、双方の接合対象の固定である。
【0015】
さらにDE10327708A1には、レーザーを用いた、非酸化物のセラミックから成る成形体である、気密性の高い、および耐熱性の高い化合物を製造するためのろう付け法が記載されている。この際、酸化イットリウム、および/または酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素、およびケイ素から成るろうを使用し、このろうをレーザー作用のもと接合表面で溶かし、そして保護ガス雰囲気無しで、または真空で、すでに焼結された2の非酸化物セラミックの素材結合体にする。
【0016】
実施されている方法の欠点は何よりも、比較的単純な、平らな接合平面を相互に結合させることしかできないことにある。と言うのもそうしなければ、接合の間にろうが流れ去ってしまうからである。
【0017】
金属−セラミック複合材システムは、金属の有利な特性(引張強度)と、セラミックの有利な特性(高い硬度、耐薬品性、生体適合性)と結びつける。歯科技術的適用においては、事前に完成させた金属製台座にセラミック物質を焼き付ける。金属−セラミック間の焼き付け工程で達成可能な濡れ性は、接着強固な素材複合材の実現のための基本的な基準である(Krappitz,H.ら:Konferenz−Einzelbericht:DVS−Berichte,Bd.125(1989),80〜85p,DVS−Verlag Duesseldorf)。金属−セラミック間の素材結合を得るためには、いわゆる接着性酸化物形成剤(これらはNi、Cr、Be、Mn、Ti、またはSiであってよい)を使用する。空気中での温度処理がこれらの元素を酸化させ、その結果金属製台座の表面に生成する酸化物により、セラミックに対する化学的な結合が可能になる。金属製台座の合金中に充分な量の接着性酸化物形成剤が存在しない場合には、接着性酸化物形成剤を加える(Strietzel,R.:Metall−Keramik−Systeme,Physikalische Eigenschaften Teil I.Dental Labor,LIII(2005)5,847〜851)。接着性酸化物形成剤は、熱処理の際に金属製台座の内部からその表面に拡散し、そしてそこで酸化層を形成することができる(Siebert,G/K.ら:Deutsche Zahnaerztliche Zeitschrift Z(1985)40,1163−1168;Walter,M.:Deutsche Zahnaerztliche Zeitschrift Z(1989)44,248−253)。とりわけケイ素については、基本的な結合形成特性が証明されている。酸素に対する高い親和性が原因で、この元素はSiO2のポリマー鎖間にO2架橋を形成し、従って金属−セラミック間の結合に貢献すると考えられている。
【0018】
従来技術より公知の、接着性酸化物形成剤を用いた結合方法は、最終的に歯科医療の金属−セラミック複合材に関連し、そして特に歯科用合金に適合されている。相応する複合材の製造は、材料技術的に、例えば工程技術的に多段階であり、かつ外装された歯科用インプラントに限定されている。
【0019】
本発明の課題は、結合させるべきセラミック−金属間の境界面の種類、形態、構造にかかわらず、強固かつ持続力のある結合を有する、接着強固な金属−セラミック複合材の記載、および該複合材を製造するための、簡便かつ低コストの方法である。
【0020】
この課題は、請求項に記載した発明により解決される。有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0021】
本発明による接着強固な金属−セラミック複合材は、少なくとも1の金属成分と、少なくとも1のセラミック成分とから成り、この際両成分は焼結工程においてほぼ同程度の収縮を示し、かつ結合面において素材接合式に、または素材接合式かつ摩擦接合式に相互に結合されており、この際複合材の少なくとも1つの成分は複合材製造前、およびその製造後に、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物を結合面の範囲に含み、かつこの際これらの成分は、少なくとも未焼結成形体として複合材に加工されており、かつ共焼結されている。
【0022】
有利にはこの金属成分は、鋼、鋼合金、または特殊鋼から成る。
【0023】
同様に有利には、このセラミック成分は、ZrO2、Al23、スピネル、酸化アルミニウムで強化された酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム、磁器、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムから成る。
【0024】
さらに有利には、この結合が少なくとも1MPaの強度を有している。
【0025】
また有利には、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウムが元素の形で、および/またはこれらの有機化合物が結合形成前に、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で結合表面の範囲に存在している。
【0026】
また有利には、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウムが純粋な元素の形で、および/またはこれらの有機化合物が結合形成後に酸化物、混合酸化物、または両成分の元素から生成している金属間化合物の形で結合表面の範囲に存在している。
【0027】
同様に有利には、金属成分およびセラミック成分が、その都度粉末として使用されており、かつ複合材未焼結成形体に加工されている。
【0028】
また有利には、金属成分およびセラミック成分からその都度未焼結成形体が製造されており、この後これらが、一体的な未焼結成形体に結合されている。
【0029】
さらに有利には、セラミック成分焼結のための条件下で共焼結が実施されている。
【0030】
また有利には、結合面の範囲に比較的高濃度のケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が純粋な元素の形、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で存在している。
【0031】
また有利には、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形での、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物の濃度が、両成分における、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形での、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物の濃度より少なくとも5%高い。
【0032】
さらに有利には、結合面の範囲は、両成分の直接表面、およびまた表面に直接連続する範囲を含む。
【0033】
また有利には、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で濡れを起こす材料として、成分の結合表面上、およびその間に存在し、かつ同時にケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で結合面の範囲において表面より下に存在し、かつ/またはケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、そこで1またはそれ以上の金属成分の構成要素、および/またはセラミック成分の構成要素と化学的に結合している。
【0034】
同様に有利にはこの複合材が、複数の異なる金属成分、および/またはセラミック成分から成る。
【0035】
また有利には前記複合材が、同一の、または異なる金属成分とセラミック成分との間に、種類と形態の点で異なって構成された複数の結合面を有する。
【0036】
さらに有利には、両成分は焼結条件下、≦1%の差異の収縮係数を示す。
【0037】
本発明による、接着強固な金属−セラミック複合材の製造方法は、それぞれ少なくとも1の金属成分、およびセラミック成分を一体的な未焼結成形体として結合させ、かつ少なくともセラミック成分の焼結のため、共に温度処理に供する。
【0038】
有利には、>1000℃の温度で温度処理を実施する。
【0039】
同様に有利には、>1300℃の温度で温度処理を実施する。
【0040】
また有利には、金属成分、および/またはセラミック成分を粉末としてその都度個々の基礎構造体に加工するか、または一体的な未焼結成形体に加工する。
【0041】
さらに有利には、個々の金属未焼結成形体、およびセラミック未焼結成形体を、一体的な未焼結成形体に加工する。
【0042】
また有利には、金属粉末とセラミック粉末とから一体的な未焼結成形体を製造し、かつ同時に温度処理を実施する。
【0043】
同様に有利には、この温度処理を水素雰囲気下、または水素含有雰囲気下で実施する。
【0044】
そしてまた有利には、この温度処理を真空下で実施する。
【0045】
本発明による、結合させるべき金属材料とセラミック材料との複合材は有利には、セラミック粉末と金属粉末とを粒状プレス体(Pressgranulat)、熱可塑性物質、または懸濁液に加工するという方法で得られる。有利には両方の粉末状出発材料を素材複合材に加工する。これは例えば、
−両方の粒状プレス体を相互に層状にプレスするか、または
−両方の熱可塑性物質を多成分射出成形により同時に、または連続的に相互に結合させるか、またはすでに予備成形した一成分の一部にその都度他の熱可塑性物質を吹き付けるか、または
−懸濁液から注型した両材料のシートを相互に、積層、および/または接着、および/またはプレス加工により相互に結合させるか、または
−懸濁液から注型したシートに、他の材料の熱可塑性物質を吹き付けるか、または
−懸濁液から注型したシートと、他の材料の粒状体とをプレス成形して複合材成形体にする
ことによって行うことができる。
【0046】
一体的な未焼結成形体に成形した両方の材料成分を、共に脱脂し、この際脱脂を熱的に、溶媒抽出により、触媒による分解により、または上記の方法の組み合わせにより行うことができる。この後にこの素材複合材を温度処理工程に供し、このことが少なくともセラミック/金属成分の焼結につながる。
【0047】
この結合形成は、温度上昇の間、および一体的な未焼結成形体の焼結工程の間に、または粉末状出発物質の圧縮、および同時の温度上昇の間に行い、この際金属粉末および/またはセラミック粉末はケイ素、および/または有機のケイ素化合物を>0〜10%、好ましくは鋼を0.6%、およびZrO2を0.03%含む(例えば表1と2を参照)。この際、少なくとも1つの粉末または成分が、ケイ素、および/または1の有機ケイ素化合物を含むことが保証されていなければならない。ケイ素、および/またはケイ素化合物が、温度上昇/焼結工程の間、金属−セラミック間の境界面に分散する。そこでケイ素、および/またはケイ素化合物がセラミック表面、および/または金属表面を濡らし、そしてセラミックの構成要素、および/または金属の構成要素との結合が起こり得る。結合対象が酸化ジルコニウムセラミックと鋼である場合は、結合面の範囲にケイ化ジルコニウムを形成することができる。このような反応により、結合対象であるセラミックと金属との間の接着強固な複合材の実現が可能になる。ケイ素、または有機ケイ素化合物の存在は、出発物質へのドープによって行うことができるか、または有機ケイ素前駆体を出発物質に添加することにより行うことができる。さらに様々な有機ケイ素化合物が粉末の構成要素として、またはバインダーの構成要素として存在していてよい。方法にもよるが、このようなバインダー構成要素は(選択的には粉末の構成要素であっても)、好適には接合帯域に対して直接隣接するところで局所的に濃度上昇されていてよく、例えば、(1または複数のシランによって)変性されたバインダー組成物において、多層法でそれ自体粉末と同一の充填を実現させるシートであってよい。
【0048】
接着強固で焼結安定性の、金属−セラミック複合材のための革新的な方法を得ることが、本研究の中心である。構成部材における両方の異種材料の物理的特性の組合せ(加工しにくい−可延性、絶縁性−電導性、非磁性−磁性、など)は、機能性密度(Funktionsdichte)を高め、このことにより必要とされる形状的サイズを最小化することができる。
【0049】
高度なオートメーション化度、幅広い適用性、高い寸法安定性、およびニア・ネット・シェイプの構成部材製造を理由として、粉末技術的なルートにおいて多成分の粉末射出成形は、金属−セラミック複合材の技術的な実現のための選択肢とみなされる。セラミック射出成形体と金属射出成形体(原料)との間の接合工程(Coshaping)は、その場で連続的に、または付加的に型に射出することにより行うことができる。引き続き複合材の射出成形体を、一体的な未焼結成形体として双方の接合対象に共通の脱脂、および焼結(Cofiring)に供する。
【0050】
以下、本発明を複数の実施例に基づいて、より詳しく説明する。
【0051】
実施例1
(鋼原料/ZrO2原料、ドープ元素として鋼中にSi)
【表1】

鋼原料:17−4PH型;充てん率55体積%
セラミック原料:
粉末:Y5−5型のZrO2(Yが3mol%)
粉末製造者:United Ceramics Ltd.
充てん率:60体積%
【表2】

【0052】
使用する鋼粉末17−4PHは、ケイ素で合金化されている(表1、および表2参照)。原料製造のために、セラミック粉末としてY5−5型のZrO2と、熱可塑性バインダーとを、温度作用下、および剪断エネルギーの作用下、剪断ローラ式コンパクターで混合する。同じ方法で、鋼粉末から射出成形原料の製造を行う。均質化した粉末−バインダー混合物を粒状化し、そしてこの形態で射出成形工程に供給する。鋼成分の射出、およびセラミック成分の射出は、2成分射出成形機で連続的に行った。両方の射出成形体を重ね合わせ、そして共に脱脂し(空気雰囲気、400℃)、そして共焼結し(H2−雰囲気、1450℃)、この際生成する複合材成形体からバインダー相を取り除き、そして同程度の収縮で、接合対象に相応する材料密度に適合させて密接に焼結させる。
【0053】
焼結処理後、温度変化に耐久性のある、少なくとも1.2MPaの4点曲げ強度を有する、鋼−セラミック複合材が得られる。接合帯域の切断試料において、電子顕微鏡下でレントゲン図により部分的に証明可能な異相構成要素(ケイ化ジルコニウム)による、一貫して密着した結合帯域(濡れを起こしたため)を認めることができる。
【0054】
実施例2
(粉末状の添加剤としてSi)
複合材製造のために、鋼粉末430で充填した原料を使用する。この際、使用される鋼粉末は、ケイ素で合金化されている。セラミック原料製造のために、セラミック粉末として1%のケイ素を添加したY5−5型のZrO2を、温度作用下、および剪断エネルギー作用下で、剪断ローラ式コンパクターで熱可塑性バインダーと混合する。同じ方法で、射出成形原料の製造を鋼粉末から行う。均質化された粉末−バインダー混合物を粒状化し、そしてこの形態で射出成形工程に供給する。鋼成分の射出、およびセラミック成分の射出は、2成分射出成形機で連続的に行った。両方の射出成形体を重ね合わせ、そして共に脱脂する(空気雰囲気、400℃)、そして共焼結し(H2−雰囲気、1450℃)、この際生成する複合材成形体からバインダー相を取り除き、そして同程度の収縮で、接合対象に相応する材料密度に適合させて密接に焼結させる。
【0055】
焼結処理後、温度変化に耐久性のある、少なくとも1.5MPaの4点曲げ強度を有する、鋼−セラミック複合材が得られる。接合帯域の切断試料において、電子顕微鏡下でレントゲン図により部分的に証明可能な異相構成要素(ケイ化ジルコニウム)による、一貫して密着した結合帯域(濡れを起こしたため)を認めることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1の金属成分と、少なくとも1のセラミック成分とから成る、接着強固な金属−セラミック複合材であって、この際に両成分が焼結条件においてほぼ同程度の収縮を示し、かつそれらの結合面において素材接合式に、または素材接合式かつ摩擦接合式に相互に結合されており、この際に複合材の少なくとも1の成分が複合材製造前、およびその製造後にケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物を結合面の範囲に含み、かつこの際これらの成分が少なくとも未焼結成形体として複合材に加工されており、かつ共焼結されている、接着強固な金属−セラミック複合材。
【請求項2】
前記金属成分が、鋼、鋼合金、または特殊鋼から成る、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
前記セラミック成分が、ZrO2、Al23、スピネル、酸化アルミニウムで強化された酸化ジルコニウム、酸化ジルコニウムで強化された酸化アルミニウム、磁器、ヒドロキシアパタイト、リン酸三カルシウムから成る、請求項1に記載の複合材。
【請求項4】
前記結合が少なくとも1MPaの強度を有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項5】
ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウムが純粋な元素の形で、および/またはこれらの有機化合物が、結合形成前に酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で結合面の範囲に存在している、請求項1に記載の複合材。
【請求項6】
ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、結合形成後に純粋な元素、酸化物、混合酸化物または、両成分の元素から生成している金属間化合物の形で結合面の範囲に存在している、請求項1に記載の複合材。
【請求項7】
金属成分およびセラミック成分を、その都度粉末として使用し、かつこれらの成分が複合材未焼結成形体に加工されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項8】
金属成分とセラミック成分とからその都度、未焼結成形体が製造されており、その後これらの未焼結成形体が一体的な未焼結成形体に結合されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項9】
セラミック成分を焼結するための条件で共焼結が実施されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項10】
結合面の範囲において比較的高い濃度のケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で存在する、請求項1に記載の複合材。
【請求項11】
純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形での、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物の濃度が、両成分における純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形での、ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物の濃度よりも少なくとも5%高い、請求項10に記載の複合材。
【請求項12】
結合面の範囲が、両成分の直接的な表面、およびまたその表面に直接連続する範囲を含む、請求項1に記載の複合材。
【請求項13】
ケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で、濡れを起こす材料として結合される成分の表面上、およびその間に存在し、かつ同時にケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、純粋な元素、酸化物、混合酸化物、または金属間化合物の形で、結合面の範囲において表面より下に存在し、かつ/またはケイ素、ベリリウム、チタン、クロム、ニッケル、マンガン、ハフニウム、バナジウム、ジルコニウム、アルミニウム、および/またはこれらの有機化合物が、その場所で金属成分の、および/またはセラミック成分の1または複数の構成要素と化学的に結合されている、請求項1に記載の複合材。
【請求項14】
前記複合材が、複数の異なる金属成分、および/またはセラミック成分から成る、請求項1に記載の複合材。
【請求項15】
前記複合材が、異なる方法と形態で形成された、同一の、または異なる金属成分とセラミック成分との間の結合面を複数有する、請求項1に記載の複合材。
【請求項16】
両成分が焼結条件において≦1%の差異の収縮差を示す、請求項1に記載の複合材。
【請求項17】
それぞれ少なくとも1の金属成分と、少なくとも1のセラミック成分とを一体的な未焼結成形体として結合させ、かつ少なくともセラミック成分を焼結させるために共に温度処理に供する、請求項1から16までのいずれか1項に記載の、接着強固な金属−セラミック複合材の製造方法。
【請求項18】
前記温度処理を、>1000℃の温度で実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記温度処理を、>1300℃の温度で実施する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記金属成分、および/または前記セラミック成分を粉末として、その都度個々の基礎構造体に、または一体的な未焼結成形体に加工する、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
個々の金属未焼結成形体とセラミック未焼結成形体とを、一体的な未焼結成形体に加工する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
金属粉末とセラミック粉末とから一体的な未焼結成形体を製造し、かつ同時に温度処理を実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
水素雰囲気下、または水素含有雰囲気下で前記温度処理を実施する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
真空下で前記温度処理を実施する、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2010−513705(P2010−513705A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−540759(P2009−540759)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2007/063745
【国際公開番号】WO2008/071720
【国際公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【出願人】(594102418)フラウンホーファー−ゲゼルシャフト ツル フェルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシュング エー ファウ (63)
【氏名又は名称原語表記】Fraunhofer−Gesellschaft zur Foerderung der angewandten Forschung e.V.
【住所又は居所原語表記】Hansastrasse 27c, D−80686 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】