説明

接着性オレフィン系重合体組成物およびそれを用いてなる積層体

【課題】金属の種類に因らず、オレフィン系重合体層と強固な接着力を有し、且つ、接着耐久性を有する接着性オレフィン系重合体組成物を得ること、および当該接着性オレフィン系重合体組成物を用いてなる金属層とオレフィン系重合体層を得ることを目的とする
【解決手段】本発明は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)100重量部に対して、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩(B)を0.001〜3重量部含むことを特徴とする接着性オレフィン系重合体組成物および当該接着性オレフィン系重合体組成物を用いてなる被覆積層体または積層体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層とオレフィン系重合体層とを接着するに好適な接着性オレフィン系重合体組成物および当該接着性オレフィン系重合体組成物を用いてなる金属層とオレフィン系重合体層との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
金属を腐食や汚損等から保護する方法の一つとして、金属表面に樹脂を被覆する方法が採られている。かかる樹脂による被覆は、金属素材を用いる各種部品や構造材、例えば鋼板、鋼管材、日用雑貨類、包装材、各種パネルや内装材、各種ケーシング等の分野において広く行われている。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂は、熱融着等の加工が容易で、耐水性、耐湿性、衛生的特性に優れかつ安価という利点があることから被覆材として好ましいが、非極性のため本質的に金属との接着性が弱く、一旦金属と融着させても剥離してしまうことがある。この欠点を改良する方法として、ポリオレフィン系樹脂に極性基を導入して接着性を向上させる方法、例えば、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の不飽和カルボン酸でグラフト変性し、これを接着層としてポリオレフィン系樹脂と金属基材を接着する方法、あるいは、変性ポリオレフィン系樹脂そのもので金属基材表面を被覆する方法が知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0004】
しかしながら、変性ポリオレフィン系樹脂を用いても、被着体である金属の種別によって、あるいは用途による積層の方法や使用環境によって、接着力やその耐久性で満足できなくなる場合もあることから、それに応じた種々の改良方法がこれまでに考案されている。例えば、無水マレイン酸等でグラフト変性されたポリオレフィンに水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等のアルミニウム化合物を配合した組成物を接着剤として、短時間の加熱、加圧による接着性を向上させる方法(特許文献3)、金属層の表面に、クロメート処理層、エポキシプライマー層、無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂層、ポリオレフィン樹脂被覆層を順次積層して、鋼材とポリオレフィンの接着性およびその耐久性を向上させる方法(特許文献4)、無水マレイン酸等でグラフト変性されたポリオレフィンと未変性ポリオレフィンの組成物にポリイソシアネートやエポキシ樹脂やフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を配合した組成物を接着剤として、ポリオレフィンと金属の積層体の耐水接着性を高める方法(特許文献5)、また、無水マレイン酸等でグラフト変性されたポリオレフィンに酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の金属化合物を配合した組成物を接着剤としてアルミニウムに対する接着力を向上させる方法(特許文献6)などが提案されている。
【0005】
このように接着力を改良する方法として種々の方法が提案されてきているが、用途によっては、更なる接着力の向上、あるいは、金属の種類に因らず強い接着力が得られる接着性樹脂組成物が求められており、また、金属表面に特段の表面処理やプライマー層形成を施すことなく、簡便なプロセスで、強い接着力を有する積層体を製造する方法の開発も望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公昭40−23032号公報
【特許文献2】特公昭42−10757号公報
【特許文献3】特公昭62−28197号公報
【特許文献4】特許第3163908号公報
【特許文献5】特開2001−71413号公報
【特許文献6】特開2005−146178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属の種類に因らず、オレフィン系重合体層と強固な接着力を有し、且つ、接着耐久性を有する接着性オレフィン系重合体組成物を得ること、および当該接着性オレフィン系重合体組成物を用いてなる金属層とオレフィン系重合体層を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)100重量部に対して、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩(B)を0.001〜3重量部含むことを特徴とする接着性オレフィン系重合体組成物である。
【0009】
また、本発明は、金属層の少なくとも一部に、前記接着性オレフィン系重合体組成物が被覆されてなることを特徴とする被覆積層体である。
さらに、本発明は、金属層とオレフィン系重合体層を含む積層体であって、金属層とオレフィン系重合体層とが、前記接着性オレフィン系重合体組成物で接合されていることを特徴とする積層体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物は、金属の種類に因らず、金属層と積層した際の接着強度に優れ、且つ、例えば、60℃の水中に7日間浸漬した後でも接着強度が低下しない、即ち、耐久接着性を有する。
【0011】
また、本発明の接着性オレフィン系重合体組成物を被覆してなる被覆積層体、および、当該接着性オレフィン系重合体組成物を接着剤に用いてなる金属層とオレフィン系重合体層との積層体は、接着強度に優れ、且つ、上記と同様に耐久接着性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<オレフィン系重合体>
本発明に係る不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)の原料となるオレフィン系重合体は、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等のα−オレフィンの単独重合体、あるいは2種以上のα−オレフィンの共重合体であって、具体的には、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(所謂LLDPE)、高密度ポリエチレンなどのエチレンを主体とするエチレン系重合体;プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・ブロック共重合体などのプロピレンを主体とするプロピレン系重合体;1−ブテン単独重合体、1−ブテン・エチレンランダム共重合体、1−ブテン・プロピレンランダム共重合体などの1−ブテンを主体とする1−ブテン系重合体;4−メチル−1−ペンテン単独重合体、4−メチル−1−ペンテン・1−デセンランダム共重合体などの4−メチル−1−ペンテンを主体とする4−メチル−1−ペンテン系重合体;低結晶性あるいは非晶性のエチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体などの低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体;等のオレフィン系重合体を挙げることができる。かかるオレフィン系重合体は、単独でも2種以上オレフィン系重合体の組成物であってもよい。
【0013】
本発明に係るオレフィン系重合体は、公知の方法で得ることができ、例えば、遷移金属触媒の存在下にα−オレフィンを単独重合するか、または2種以上のα−オレフィンを気相または液相下で共重合することにより得ることができる。また、用いる触媒や重合方法などには特に制約はなく、例えばチタン(Ti)系、クロム系(Cr)系またはジルコニウム(Zr)系などの遷移金属触媒成分を含むチーグラー型触媒、フィリップス型触媒またはメタロセン型触媒などを使用し、気相法、溶液法、バルク重合法などの重合法により重合することができる。また高圧ラジカル重合法、中・低圧重合法などの重合法により重合することができる。
【0014】
<エチレン系重合体>
本発明に係るエチレンを主体とするエチレン系重合体としては、密度が0.910〜0.940g/cm3、好ましくは0.915〜0.935g/cm3、特に好ましくは0.920〜0.930g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある線状低密度ポリエチレン、密度が0.910〜0.925g/cm3、好ましくは0.910〜0.920g/cm3、特に好ましくは0.910〜0.915g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある高圧法低密度ポリエチレン、および、密度が0.945g/cm3以上、好ましくは0.945〜0.970g/cm3、特に好ましくは0.953〜0.960g/cm3、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が通常、0.1〜30g/10分、好ましくは0.5〜20g/10分、特に好ましくは1.0〜15g/10分の範囲にある高密度ポリエチレンが好ましく用いられる。
【0015】
<プロピレン系重合体>
本発明に係るプロピレンを主体とするプロピレン系重合体としては、プロピレン単独重合体、融点が通常135〜155℃の範囲にあるプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・1−ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体などのプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン単独重合体あるいはプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体と非晶性あるいは低結晶性のプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体との組成物からなるプロピレン・ブロック共重合体などが挙げられる。本発明に係るプロピレン系重合体は、通常、MFR(ASTM D 1238による温度;230℃、荷重;2.16kg)が0.1〜100g/10分、好ましくは0.5〜50g/10分、特に好ましくは1.0〜10g/10分の範囲にある。
【0016】
<低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体>
本発明に係る低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体は、密度が0.865〜0.910g/cm3未満、好ましくは0.870〜0.900g/cm3の範囲にあるエチレンあるいはプロピレンを主体とするランダム共重合体であり、通常、MFR(ASTM D 1238による温度;190℃、荷重;2.16kg)が0.01〜20g/10分、好ましくは0.05〜20g/10分の範囲にある。これら低結晶性あるいは非晶性オレフィン系重合体としては、具体的には、具体的には、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ヘキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体、プロピレン・1−ヘキセン共重合体などを例示できる。
【0017】
<オレフィン系重合体(A)>
本発明に係る不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)(以下、単に「オレフィン系重合体(A)」と呼ぶ場合がある。)は、上記オレフィン系重合体を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体でグラフト変性してなる変性オレフィン系重合体である。
【0018】
本発明に係るオレフィン系重合体(A)は、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量が上記範囲にある限り、特に限定はされず、直接上記オレフィン系重合体を不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体のグラフト量が0.05〜15重量%の範囲になるようにグラフト変性した変性オレフィン系重合体、あるいは不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体が上記範囲より高濃度でグラフト変性された変性オレフィン系重合体と未変性のオレフィン系重合体との組成物であって、不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%の範囲で含むようにしたオレフィン系重合体の組成物であってもよい。
【0019】
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基の含有量が、0.05重量%未満では、金属層との接着強度不十分であり、一方、グラフト量が15重量%を超える重合体は、グラフト反応時に分子量低下を引き起こし易くなり、樹脂組成物の強度の低下を及ぼす虞がある。
【0020】
本発明に係るオレフィン系重合体(A)は、好ましくは不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.1〜10重量%の範囲で含む。
本発明に係るオレフィン系重合体(A)を構成する不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体としては、カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物、カルボン酸基を有する化合物とアルキルアルコールとのエステル、無水カルボン酸基を1以上有する不飽和化合物等を挙げることができ、不飽和基としては、ビニル基、ビニレン基、不飽和環状炭化水素基などを挙げることができる。具体的な化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、無水ハイミック酸、クロトン酸、イソクロトン酸、4−メチルシクロヘキセ−4−エン−1,2−ジカルボン酸無水物、α−エチルアクリル酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、エンドシス−ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸(ナジック酸〔商標〕)、ビシクロ[2.2.2]オクト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、1,2,3,4,5,8,9,10−オクタヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸無水物、2−オクタ−1,3−ジケトスピロ[4.4]ノン−7−エン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、マレオピマル酸、テトラヒドロフタル酸無水物、x−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、x−メチル−ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルネン−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物などをあげることができる。また、不飽和カルボン酸の誘導体としては、酸無水物、酸ハライド、アミド、イミド、エステル等の誘導体であり、具体的には、塩化マレニル、マレイミド、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジメチル、グリシジルマレエート等が挙げられる。これらの中では不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物が好ましく、特に無水マレイン酸または無水ハイミック酸が好ましい。これら不飽和カルボン酸および/またはその誘導体は、単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
【0021】
オレフィン系重合体を不飽和カルボン酸および/またはその誘導体でグラフト変性する方法は、公知の種々の方法を採用することができる。具体的には、例えば、押出機を使用して、オレフィン系重合体を溶融し、そこに不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法、あるいはオレフィン系重合体を溶媒に溶解して溶液とし、そこに不飽和カルボン酸またはその誘導体を添加してグラフト反応させる方法などが挙げられる。いずれの場合にも前記不飽和カルボン酸および/またはその誘導体を効率よくグラフト共重合させるためには、ラジカル開始剤の存在下にグラフト反応を実施することが好ましい。グラフト反応は、通常60〜350℃の条件で行われる。ラジカル開始剤の使用割合は変性前のオレフィン系重合体100重量部に対して、通常0.001〜1重量部の範囲である。
【0022】
ラジカル開始剤としては、有機ペルオキシドが好ましく、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ペルオキシドベンゾエート)ヘキシン−3、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、2,5−ジメチル−2.5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペル−sec−オクトエート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレートおよびtert−ブチルペルジエチルアセテートなどが挙げられる。その他アゾ化合物、例えばアゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどを用いることもできる。
【0023】
<芳香族化合物又はその金属塩(B)>
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(B)は、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩(B)である。
【0024】
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(B)としては、例えば、一般式(1)〜(3)で表される少なくとも1種の化合物を例示できる。
【0025】
【化1】

【0026】
【化2】

【0027】
【化3】

[各式中Aは単環式もしくは縮合多環式の芳香族基を表し、各置換基は任意の炭素上に結合していることを意味する。a、b、c、dはそれぞれ0〜4の整数で、そのうち少なくともa、b、cのいずれか一つは1以上の整数である。一般式(1)においては1≦a+b+c+d≦6となる置換基の数を意味する。一般式(2)においては0≦a+b+d≦5、一般式(3)においては0≦a+b+d≦4となる置換基の数を意味する。一般式(2)のM1は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表し、一般式(3)のM2は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表す。一般式(2)のnは1〜3の整数を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(B)は、より具体的には一般式(4)〜(6)で表される少なくとも1種の芳香族化合物が挙げられる。
【0028】
【化4】

[式中a、b、c、dはそれぞれ0〜4の整数で、そのうち少なくともa、b、cのいずれか一つは1以上の整数であり、1≦a+b+c+d≦6となる置換基の数を意味する。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
【0029】
【化5】

【0030】
【化6】

[各式中a、b、dはそれぞれ0〜4の整数で、一般式(5)においては0≦a+b+d≦5、一般式(6)においては0≦a+b+d≦4となる置換基の数を意味する。一般式(5)のM1は金属元素 K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表し、一般式(6)のM2は金属元素K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuを表す。一般式(5)のnは1〜3の整数を表す。Rは、炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン、ニトロ基、シアノ基、アルコキシ基、アセチル基、アセチルオキシ基からなる群より選ばれる置換基であり、複数個置換される場合は同一でも異なっていても良い。]
【0031】
本発明に係る芳香族化合物又はその金属塩(B)としては、具体的には、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p-t-ブチルフェノール、o−クロロフェノール、m−クロロフェノール、p−クロロフェノール、o−ヒドロキシアセトフェノン、p−ヒドロキシアセトフェノン、o−ニトロフェノール、p−ニトロフェノール、o−シアノフェノール、m−シアノフェノール、p−シアノフェノール、2−ブロモ−4−シアノフェノール、アニリン、p−クロロアニリン、p−ブロモアニリン、o−アミノアセトフェノン、m−アミノアセトフェノン、p−アミノアセトフェノン、m−ニトロアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2−メトキシ−4−ニトロアニリン、安息香酸、o−アセチル安息香酸、p−アセチル安息香酸、o-クロロ安息香酸、o−ブロモ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、o-シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、p−シアノ安息香酸、2−フルオロ−4−メトキシ安息香酸、2−フルオロ−5−メチル安息香酸、1−ナフトエ酸、2−ナフトエ酸、1−ナフトール、2−ナフトール、1−アミノナフタレン、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、ピロガロール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、o−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、o−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、o−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−アミノフェノール、4−アミノレゾルシン、2−アミノレゾルシン、5−アミノレゾルシン、2−アミノハイドロキノン、2,4−ジアミノフェノール、2,5−ジアミノフェノール、4,5−ジアミノフェノール、3,4−ジアミノフェノール、3,5−ジアミノフェノール、4,6−ジアミノレゾルシン、2,4,6−トリアミノフェノール、2,4,6−トリヒドロキシアニリン、2,3−ジアミノ安息香酸、2,5−ジアミノ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノ−4−メトキシ安息香酸、2−アミノ−6−フルオロ安息香酸、2−アミノ−3−ニトロ安息香酸、2,3−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、2,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,6−ジヒドロキシ安息香酸、3,4−ジヒドロキシ安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,3,4−トリヒドロキシ安息香酸、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシフタル酸、4−ヒドロキシフタル酸、3,6−ジヒドロキシフタル酸、3−アミノフタル酸、4−アミノフタル酸、2−アミノ−5−ヒドロキシ安息香酸、3−アミノ−4−ヒドロキシ安息香酸、4−アミノ−3−ヒドロキシ安息香酸、5−アミノ−2−ヒドロキシ安息香酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−3−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジアミノナフタレン、1,8−ジアミノナフタレン、2,3−ジアミノナフタレン、5−アミノ−1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等が挙げられる。また本発明に用いられる化合物(B)として、安息香酸、フタル酸、ナフトエ酸およびそれらの誘導体の、K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cu等の金属塩も挙げることができる。これらの化合物(B)は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
<接着性オレフィン系重合体組成物>
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物は、前記不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)100重量部に対して、前記芳香族化合物又はその金属塩(B)を0.001〜3重量部、好ましくは0.005〜1重量部含む組成物である。
【0033】
芳香族化合物又はその金属塩(B)の含有量が0.001重量部未満の組成物は、金属層との接着強度が劣り、一方、3重量部を超える組成物は、金属層との接着強度が劣る虞がある。
【0034】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物には本発明の目的を損なわない範囲で通常用いられる酸化防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、滑剤、核剤、顔料、無機物あるいは有機物等の充填材、オレフィン系重合体以外の重合体、ゴムなどを添加することができる。
【0035】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物は、前記不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)と前記芳香族化合物又はその金属塩(B)を前記範囲で、種々公知の方法で、混合することにより得られる。具体的な方法の例としては、オレフィン系重合体に不飽和カルボン酸またはその誘導体を反応させて前記オレフィン系重合体(A)を製造する際に、グラフト反応を行う押出機内もしくは溶液系中に前記芳香族化合物又はその金属塩(B)を添加して接着性オレフィン系重合体組成物を得る方法、あるいは、オレフィン系重合体(A)に芳香族化合物又はその金属塩(B)を添加して溶融混練する方法、あるいはオレフィン系重合体(A)と芳香族化合物又はその金属塩(B)を有機溶媒中に均質に溶解もしくは分散させる方法によって得ることができる。
【0036】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物を接着剤として用いる場合は、当該組成物を溶融成形して、ペレット、フィルム、シートに加工した状態として用いることができる。また、本発明の接着性オレフィン系重合体組成物を有機溶媒中に均質に溶解もしくは分散した液の状態で用いることもできる。また、該溶液もしくは分散液を濃縮乾固し裁断もしくは粉砕する方法等で粉粒体化して用いることもできる。更には、その有機溶媒に溶解もしくは分散した状態で金属層などの被接着層に塗工した後、乾燥してもよい。
【0037】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物を溶解もしくは分散させるための有機溶媒としては、オレフィン系重合体(A)を溶解あるいは分散し得る溶媒であれば、特に限定されないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族系炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロへキサン等の脂環族炭化水素、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、プロパンジオール、フェノール等のアルコール、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトンペンタノン、ヘキサノン、イソホロン、アセトフェノン等のケトン系溶媒、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等のセルソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、ギ酸ブチル等のエステル類、トリクロルエチレン、ジクロルエチレン、クロルベンゼン等のハロゲン化炭化水素等を挙げることができる。これらの中では、芳香族炭化水素および脂肪族炭化水素が好ましい。
【0038】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物は、いずれの金属層に対しても接着剤として用い得る。具体的には例えば、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、錫(Sn)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、チタン(Ti)、銅(Cu)、銀(Ag)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)の単体あるいはこれらの金属成分を2種以上含む合金に対して適用可能である。合金の例としては、ジュラルミン等のアルミニウム合金、青銅、白銅、黄銅等の銅合金、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼等の鋼材、ハステロイ、インコネル等のニッケル合金、その他マグネシウム合金といったものが挙げられる。また、用いられる金属層は、亜鉛メッキ鋼板、錫メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、ニッケルメッキ鋼板、アルミニウムメッキ鋼板、錫メッキ銅箔、亜鉛メッキ銅板等のメッキ基材や、銅/ニッケル、ニッケル/アルミニウム、アルミニウム/ステンレス等のクラッド材の様な複合金属基材であってもよい。金属層の形状も、箔、板、棒、パイプ、チャンネル材、H型材、ワイヤ、リング、その他各種形状の金属部品等のいかなる形状のものであってもよい。これらの金属層は、耐食性向上等のため、金属層の表面をリン酸処理、クロム酸処理またはリン酸/クロム酸処理、クロメート処理等の公知の表面処理を行っていてもよい。また、金属層の表面を清浄化しておくため、通常の脱脂、洗浄処理を施されていてもよい。脱脂、洗浄の方法は、脱グリス剤、脱脂肪溶媒を含浸させた清浄な脱脂綿、綿布等で清拭する方法、あるいはこれらの溶媒中での超音波洗浄、アルカリ脱脂など、この種の処理に適用されるいかなる方法でもよい。
【0039】
<被覆積層体>
本発明の被覆積層体は、前記金属層の少なくとも一部に前記接着性オレフィン系重合体組成物が被覆されてなる積層体である。
【0040】
本発明の被覆積層体は、金属層の少なくとも一部に、前記接着性オレフィン系重合体組成物の粉末、フィルム、シート、溶融物、溶液または分散体を用いて、従来公知の手段により製造することができる。
【0041】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物の粉末を用いて、金属層を被覆するする方法としては、流動浸漬塗装法、静電粉末塗装またはその他の粉末塗装法など、種々公知の方法を用い得る。例えば、流動浸漬塗装法を用いる場合は、接着性オレフィン系重合体組成物の粉末を入れた流動床の中に接着性オレフィン系重合体組成物の融点以上に加熱した金属層を浸漬し、金属層の表面に接着性オレフィン系重合体組成物を融着させて、被覆することにより得られる。
【0042】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物のフィルムまたはシートとして用いる場合は、箔、板、またはパイプなどの形状の金属層の少なくとも一部に、フィルムまたはシート状の接着性オレフィン系重合体組成物を貼り合わせ、これを加熱することにより熱接着して被覆することができる。金属層にフィルムまたはシート状の接着性オレフィン系重合体組成物を貼り合わせる際には、同時に所定の圧力を加えて被覆することが好ましい。またその他の方法として、接着性オレフィン系重合体組成物の溶融物を、金属層の表面に押出しコーティングする方法、板材の金属層と接着性オレフィン系重合体組成物とをプレス成形する方法、成形機金型内に金属層を挿入して接着性オレフィン系重合体組成物を射出成形する、所謂インサート成形などにより、金属層に接着性オレフィン系重合体組成物を被覆する方法を採り得る。
【0043】
有機溶媒中に、本発明の接着性オレフィン系重合体組成物を均質に溶解もしくは分散した液状の状態で用いる場合、箔、板、ワイヤ、その他の形状の金属層に該液を塗布して加熱し、乾燥することにより製造し得る。
【0044】
<積層体>
本発明の積層体は、前記金属層とオレフィン系重合体層を含む積層体であって、金属層とオレフィン系重合体層とが、前記接着性オレフィン系重合体組成物で接合されてなる積層体である。
【0045】
本発明の積層体を構成するオレフィン系重合体層は、本発明に係る不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)の原料として用いる前記オレフィン系重合体と同一範疇のオレフィン系重合体である。
【0046】
本発明の積層体は、前記方法で得られた被覆積層体の接着性オレフィン系重合体組成物層上に、オレフィン系重合体を積層する方法により得ることができる。
接着性オレフィン系重合体組成物層上に、オレフィン系重合体を積層する方法としては、特に限定はされず、種々公知の方法を採用し得る。例えば、フィルムまたはシート状のオレフィン系重合体を積層して、加熱、あるいは加熱・圧着する方法、接着性オレフィン系重合体組成物層上に、オレフィン系重合体を溶融押出しラミネートする方法、被覆積層体を金型内に挿入した後、接着性オレフィン系重合体組成物層上に、オレフィン系重合体を射出成形する方法などを採り得る。
【0047】
また、金属層の表面に接着性オレフィン系重合体組成物とオレフィン系重合体とを共押出しラミネートする方法、金属層の表面に接着性オレフィン系重合体組成物を押出しラミネートした後、引続き、接着性オレフィン系重合体組成物層上に、オレフィン系重合体を押出しラミネートする方法、あるいは、金属層とフィルムあるいはシート状の接着性オレフィン系重合体組成物およびフィルムあるいはシート状オレフィン系重合体を重ねて溶融・圧着する方法などを採り得る。
【0048】
本発明の積層体を構成する接着性オレフィン系重合体組成物層とオレフィン系重合体層は、それぞれ異なるオレフィン系重合体であってもよいが、同種のオレフィン系重合体、例えば、接着性オレフィン系重合体組成物層として、変性エチレン系重合体を用いる場合は、オレフィン系重合体としてもエチレン系重合体を用い、接着性オレフィン系重合体組成物層として、変性プロピレン系重合体を用いる場合は、オレフィン系重合体としてもプロピレン系重合体を用いれば、接着性オレフィン系重合体組成物層とオレフィン系重合体層との相溶性がよいので好ましい。
【実施例】
【0049】
以下に実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
<アルミニウム積層体>
[比較例1]
無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを剥離用のポリイミドフィルムを介して2枚の鏡面板にはさみ込み、熱プレス機を用いて温度:190℃、圧力:10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着用フィルムを用意した。次いで、当該接着用フィルムを幅:2cm、長さ:10cmのサイズに切り出し、当該接着用フィルムを、同じサイズで厚み:200μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(190℃のMFRが5.0g/10分、密度が0.93g/cm3)の上下に1枚ずつ重ね合わせ、さらにその3層のフィルムに、同じ幅で長さ:20cm、厚み:200μmのアルミニウム板(JIS,H,4000(A1050P))を上下に1枚ずつ重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、温度:140℃、圧力:0.1MPaで60秒間熱接着を行い、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、上下のアルミニウム板を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離し、接着強度(剥離強度)を測定した。接着強度は4.8kN/mであった。結果を表1に示す。
【0050】
[実施例1]
攪拌翼、冷却還流管を備えた四つ口フラスコに、無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレット:100重量部と、安息香酸:0.05重量部、およびm−キシレン:300重量部を装入した。次いで、四つ口フラスコをヒーターと温度調節機を備えた油浴で温度:140℃で1時間攪拌して均一な溶液を調製した。次いで、当該溶液を150℃に加熱して濃縮し、濃縮液をガラス基板にキャストした後、オーブン中150℃で1時間乾燥して接着性オレフィン系重合体組成物のプレフィルムを得た。当該プレフィルムを熱プレス機を用いて、温度:190℃、圧力:10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを得た。次いで、当該接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを幅:2cm、長さ:10cmのサイズに切り出し、当該フィルムを、同じサイズで厚み200μmのポリエチレンフィルム(190℃のMFRが5.0g/10分、密度が0.93g/cm3)の上下に1枚ずつ重ね合わせ、さらにその3層のフィルムに、同じ幅で長さ:20cm、厚み:200μmのアルミニウム板(JIS,H,4000(A1050P))を上下に1枚ずつ重ね合わせ、ヒートシール機を用いて、温度:140℃、圧力:0.1MPaで60秒間熱接着を行い、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、上下のアルミニウム板を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離し、接着強度を測定した。接着強度(初期接着強度)は11.0kN/mであった。結果を表1に示す。
【0051】
[比較例2、実施例2〜42]
実施例1で用いた安息香酸を、表1に記載した化合物(安息香酸を含む)およびその量に替える以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体の接着強度(初期接着強度)を表1に示す。
【0052】
【表1】

[比較例3]
比較例1で用いた無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットに替えて、無水マレイン酸を0.25重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを用いる以外は、比較例1と同様に行い、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体の接着強度(初期接着強度)を表2に示す。
【0053】
[実施例43]
実施例1で用いた無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレンに替えて、無水マレイン酸を0.25重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを用いる以外は、実施例1と同様に行い、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体の接着強度(初期接着強度)を表2に示す。
【0054】
[実施例44〜49]
実施例43で用いた安息香酸を、表2に記載した化合物(安息香酸を含む)およびその量に替える以外は、実施例1と同様にして、アルミニウム積層体を得た。得られたアルミニウム積層体の接着強度(初期接着強度)を表2に示す。
【0055】
【表2】

<ステンレス積層体>
[比較例4]
比較例1で用いたグラフト変性した線状低密度ポリエチレンを用い、比較例1と同様の方法で、幅:2.5cm、長さ:10cmの無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレンからなる接着用フィルムを作製した。次いで、接着用フィルムを、同じ幅で長さ:15cm、厚み:200μmの線状低密度ポリエチレンフィルム(190℃のMFRが5.0g/10分、密度が0.93g/cm3)と、同じ幅で長さ:15cm、厚み:800μmのステンレス板(JIS,G,4305,NO.4処理(SUS304))で挟んで積層し、ヒートシール機を用いて、140℃、0.1MPaで30秒間熱接着を行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、フィルム層を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離し、ステンレス積層体の接着強度を測定した。接着強度は3.7kN/mであった。結果を表3に示す。
【0056】
[実施例50]
実施例1で用いた安息香酸の量を、0.001重量部に替える以外は実施例1と同様に行い接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを得た。次いで、比較例2で用いた接着用フィルムに替えて、得られた接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを用い、比較例2と同様な方法で、ステンレス積層体を作製し、当該積層体の接着強度を測定した。得られたステンレス積層体の接着強度(初期接着強度)は5.4kN/mであった。結果を表3に示す。
【0057】
[実施例51〜66]
実施例50で用いた安息香酸を、表3に記載した化合物(安息香酸を含む)およびその量に替える以外は実施例50と同様に行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体の接着強度(初期接着強度)を表3に示す。
【0058】
【表3】

[比較例5]
比較例4で用いた無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットに替えて、無水マレイン酸を0.25重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを用いる以外は、比較例4と同様に行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体の接着強度(初期接着強度)を表4に示す。
【0059】
[実施例67]
実施例50で用いた無水マレイン酸を0.5重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットに替えて、無水マレイン酸を0.25重量%グラフト変性した線状低密度ポリエチレン(190℃のMFRが4.5g/10分、密度が0.92g/cm3)のペレットを用いる以外は、比較例4と同様に行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体の接着強度(初期接着強度)を表4に示す。
【0060】
[実施例68〜73]
実施例67で用いた安息香酸を、表3に記載した化合物(安息香酸を含む)およびその量に替える以外は実施例67と同様に行い、ステンレス積層体を得た。得られたステンレス積層体の接着強度(初期接着強度)を表4に示す。
【0061】
【表4】

<銅箔積層体>
[比較例6]
無水マレイン酸を0.1重量%グラフト変性したプロピレン単独重合体(230℃のMFRが3.0g/10分、密度が0.91g/cm3)のペレットを剥離用のポリイミドフィルムを介して2枚の鏡面板にはさみ込み、熱プレス機により190℃、10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着用フィルムを用意した。次いで、当該接着用フィルムを幅:2cm、長さ:10cmのサイズに切り出し、同じサイズで厚み:200μmのプロピレン単独重合体からなるフィルム(230℃のMFRが3.0g/10分、密度が0.91g/cm3)の上下に1枚ずつ重ね合わせ、さらにその3層のフィルムに、同じ幅で長さ:15cm、厚み:18μmの電解銅箔(三井金属社製:3EC−III)を上下に1枚ずつ銅箔の鏡面を接着用フィルムと重ね合わせ、ヒートシール機を用い、温度:200℃、0.1MPaで30秒間熱接着を行った。得られた銅箔積層体を島津製オートグラフ(AGS−500B)のチャックに固定し、上下の銅箔を引っ張り、剥離角度:180°、剥離速度:200mm/分で剥離し、接着強度を測定した。接着強度は0.3kN/mであった。結果を表5に示す。
【0062】
[実施例74]
攪拌翼、冷却還流管を備えた四つ口フラスコに、無水マレイン酸を0.1重量%グラフト変性したプロピレン単独重合体(230℃のMFRが3.0g/10分、密度が0.91g/cm3)のペレット:100重量部と、安息香酸:0.05重量部、およびm−キシレン:300重量部を装入した。次いで、四つ口フラスコをヒーターと温度調節機を備えた油浴で温度:140℃で1時間攪拌して均一な溶液を調製した。次いで、当該溶液を150℃に加熱して濃縮し、濃縮液をガラス基板にキャストした後、オーブン中150℃で1時間乾燥して接着性オレフィン系重合体組成物のプレフィルムを得た。当該プレフィルムを、熱プレス機を用いて、温度:190℃、圧力:10MPaで20分間加熱、加圧して、厚み:100μmの接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを得た。次いで、比較例3で用いた接着性フィルムに替えて、前記接着性オレフィン系重合体組成物フィルムを用いる以外は、比較例3と同様に行い、銅箔積層体を得た。得られた銅箔積層体の接着強度(初期接着強度)は1.1kN/mであった。結果を表5に示す。
【0063】
[実施例75〜96]
実施例74で用いた安息香酸に替えて、表3に記載した化合物(安息香酸を含む)およびその量に替える以外は実施例74と同様に行い、銅箔積層体を作製した。得られた銅箔積層体の接着強度(初期接着強度)を表5に示す。
【0064】
【表5】

<耐久接着強度>
[実施例97]
実施例1で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度12.1kN/mであり、初期接着強度である11.0kN/mと同等の接着強度を示し、耐久接着強度にも優れることが確認できた。
【0065】
[実施例98]
実施例10で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度12.2kN/mであり、初期接着強度である6.0kN/mに較べ、耐久接着強度が増していることが確認できた。
【0066】
[実施例99]
実施例15で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度12.2kN/mであり、初期接着強度である9.7kN/mに較べ、耐久接着強度が増していることが確認できた。
【0067】
[実施例100]
実施例17で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度11.3kN/mであり、初期接着強度である7.0kN/mに較べ、耐久接着強度が増していることが確認できた。
【0068】
[実施例101]
実施例18で得られたアルミニウム積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例1に記載の方法で、アルミニウム積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度11.8kN/mであり、初期接着強度である6.6kN/mに較べ、耐久接着強度が増していることが確認できた。
【0069】
[実施例102]
実施例50で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例50に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度5.4kN/mであり、初期接着強度である5.4kN/mと同じ接着強度を示し、耐久接着強度にも優れることが確認できた。
【0070】
[実施例103]
実施例58で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例50に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度5.8kN/mであり、初期接着強度である5.8kN/mと同じ接着強度を示し、耐久接着強度にも優れることが確認できた。
【0071】
[実施例104]
実施例62で得られたステンレス積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例50に記載の方法で、ステンレス積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度5.2kN/mであり、初期接着強度である4.9kN/mと同等の接着強度を示し、耐久接着強度にも優れることが確認できた。
【0072】
[実施例105]
実施例81で得られた銅箔積層体を、60℃に保温した水中に7日間浸漬した後、水分を拭き取り、常温で一日乾燥させた後、実施例74に記載の方法で、銅箔積層体の接着強度(耐久接着強度)を測定した。その結果、耐久接着強度0.6kN/mであり、初期接着強度である0.6kN/mと同じ接着強度を示し、耐久接着強度にも優れることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明の接着性オレフィン系重合体組成物およびそれを用いてなる積層体は、鋼板、鋼管材、日用雑貨類、包装材、各種パネルや内装材、各種ケーシング等の分野における、ポリオレフィンと金属とを接着する接着剤、またはヒートシール剤として、あるいは金属部材の塗料の原料、またはプライマーとして有効に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和カルボン酸及び/又はその誘導体からなるグラフト基を0.05〜15重量%含むオレフィン系重合体(A)100重量部に対して、置換された単環又は縮合多環式の芳香族化合物又はその金属塩であって、該芳香族化合物がアミノ基、水酸基、カルボン酸基から選択される1種乃至3種の基で1〜6個置換されている(但し、未置換の炭素原子が他の任意の置換基で置換されていることを妨げない。)芳香族化合物又はその金属塩(B)を0.001〜3重量部含むことを特徴とする接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項2】
芳香族化合物又はその金属塩(B)が、置換された単環の芳香族化合物又はその金属塩であることを特徴とする請求項1記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
芳香族化合物又はその金属塩(B)が、少なくとも1個のカルボン酸基で置換されていることを特徴とする請求項1記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項4】
芳香族化合物の金属塩(B)を構成する金属元素が、K、Ba、Sr、Ca、Na、Mg、Al、Mn、Zn、Cr、Fe、Co、Ni、Sn、Cuから選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項1記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項5】
芳香族化合物の金属塩(B)を構成する金属元素が、Na、Al、Mg、Cuから選択されるいずれか1種であることを特徴とする請求項4記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項6】
オレフィン系重合体(A)が、無水マレイン酸グラフト変性エチレン系重合体又は無水マレイン酸グラフト変性プロピレン系重合体を含むことを特徴とする請求項1記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項7】
芳香族化合物又はその金属塩(B)が、置換されていてもよい安息香酸又はそのNa、Al、Mg、Cuから選択されるいずれか1種の金属塩であることを特徴とする請求項1記載の接着性オレフィン系重合体組成物。
【請求項8】
金属層の少なくとも一部に、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の接着性オレフィン系重合体組成物が被覆されてなることを特徴とする被覆積層体。
【請求項9】
金属層とオレフィン系重合体層を含む積層体であって、金属層とオレフィン系重合体層とが、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の接着性オレフィン系重合体組成物で接合されていることを特徴とする積層体。
【請求項10】
金属層がAl、Fe、Ni、Cr、Sn、Mg、Zn、Mn、Co、Ti、Cu、Ag、Mo、Wの単体又はこれら成分を2種以上含む合金であることを特徴とする請求項8または9記載の被覆積層体または積層体。

【公開番号】特開2011−21063(P2011−21063A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−165006(P2009−165006)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】