説明

接着複合コアセルベートならびにその作製および使用方法

接着複合コアセルベートの合成について、本明細書中に記載される。接着複合コアセルベートは、1種以上のポリカチオン、1種以上のポリアニオン、および1種以上の多価カチオンの混合物から構成される。接着複合コアセルベート中のポリカチオンおよびポリアニオンは、硬化時に、共有結合によって互いに架橋される。接着複合コアセルベートは、従来の生体接着剤と比べて、いくつかの所望の特徴を有し、水ベースの用途において有効である。本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、基質に適用される場合、水において良好な界面張力を示す(すなわち、それらはビードアップすることなく界面上に広がる)。さらに、複合コアセルベートの分子間架橋能は、接着複合コアセルベートの結合力を高める。接着複合コアセルベートは、生体接着剤および薬剤送達デバイスのような極めて多数の生物学的用途を有する。特に、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、水面下用途および、例えば生理的状態など、水が存在する状況において特に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2008年1月24日に出願された米国仮特許出願第61/023,173号明細書に基づく優先権を主張する。本願は、その教示内容のすべてに対して、その全体が参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
骨折は、今日の社会において重大な健康問題である。骨折自体に加え、多くのさらなる健康リスクが骨折に関連している。例えば、関節内骨折は、関節表面に広がり、軟骨表面を断片化する骨損傷である。軟骨表面の骨折は、身体を衰弱させる外傷後関節炎につながることが多い。外傷後関節炎の発症における主な決定因子は、損傷時に放たれるエネルギーの量、外傷後関節炎に対する患者の遺伝的素因(またはその欠如)、ならびに低減の精度および維持であると考えられる。3つの予後因子のうち、整形外科の介護士によって制御可能な唯一の因子は、低減の達成および維持である。関節表面(軟骨)および骨幹端(軟骨の直下の骨の部分)の粉砕損傷(Comminuted injuries)は、低減された(調整された)位置で維持することが特に困難である。これは、この領域内での質およびタイプに関係する。それはまた、チタンまたはステンレス鋼製インプラントでの固定の制限に関係する。
【0003】
現在、ステンレス鋼およびチタン製インプラントは、主な固定方法であるが、それらのサイズおよびそれらを設置するのに必要なドリリングは、骨および軟骨のより小さい断片の正確な操作および低減に干渉することが多い。種々の骨接着剤が、機械的固定の代替として試験されている。これらは、4つのカテゴリ、すなわち、ポリメチルメタクリル酸塩(PMMA)、フィブリンをベースとする接着剤、リン酸カルシウム(CP)セメント、およびCP樹脂複合材に分類される。PMMAセメントは、人工補綴物(protheses)の固定において使用されるものであり、周知の欠点を有し、その最も重大なものの1つは、発熱凝結反応からの発熱が隣接骨組織を殺滅しうる点である。また、骨への結合が弱いことで、PMMAによる人工補綴物の固定が奏功しない主因である非感染の弛緩(aseptic loosening)が生じる。
【0004】
血液凝固タンパク質フィブリノーゲンに基づくフィブリン接着剤は、1970年代以降、骨移植片の固定および軟骨の修復についての試験がなされており、いまだ広く有効活用されていない。フィブリン接着剤の欠点の1つは、それらがプールされたヒトドナー血から製造されることである。そのようなものとして、それらは、感染を伝播させるというリスクを有するのであれば、潜在的には供給に限界を来たしうる。
【0005】
CPセメントは、1つ以上の形態のCP、例えば、リン酸4カルシウム、リン酸2カルシウム無水物、およびβ−リン酸3カルシウムの粉末である。粉末が水と混合される場合、それは、1つ以上の形態のCP結晶、例えばハイドロキシアパタイトのエンタングルメントを通じて凝結し、硬化するペーストを形成する。CPセメントの利点は、等温凝結、認められた生体適合性、骨伝導性を含み、かつそれらは、治癒の間でのハイドロキシアパタイト形成におけるCaおよびPO4用のリザーバとして役立つ。主な欠点は、CPセメントがもろく、低い機械力を有し、ひいては小さい関節セグメントの安定的低減にとって望ましくない点である。CPセメントは、ほとんどの場合、骨空隙充填剤として使用される。CPセメントの不十分な機械的特性は、CP粒子とポリマーの複合セメントをもたらしている。微粒子相およびポリマー相の体積分率を変化させることにより、接着剤のモジュラスおよび力は、天然骨のそれらに向けて調整することが可能であり、それはまた我々に開かれている手段(avenue)である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
骨折に関連する健康全体への影響および現行の固定方法の不完全な状態を考えると、新しい固定方法が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
接着複合コアセルベートの合成が、本明細書中に記載される。接着複合コアセルベートは、1種以上のポリカチオン、1種以上のポリアニオン、および1種以上の多価カチオンの混合物から構成される。ポリカチオンおよびポリアニオンは、硬化時、共有結合によって互いに架橋される。接着複合コアセルベートは、従来の接着剤と比べて、いくつかの所望の特徴を有し、それは水ベースの用途に有効である。本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、基質に適用される場合、水中で低い界面張力を示す(すなわち、それらはビードアップ(beaded up)することなく界面に広がる)。さらに、複合コアセルベートの分子間架橋能は、接着複合コアセルベートの結合力を増大させる。接着複合コアセルベートは、生体接着剤および薬剤送達デバイスとして、多数の生物学的用途を有する。特に、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、水面下用途および、例えば生理的状態など、水が存在する状況において特に有用である。
【0008】
本発明の利点は、以下の説明において部分的に示され、その説明から部分的に明らかとなるか、または下記の態様の実施によって学ばれうる。下記の利点は、特に添付の特許請求の範囲において規定される要素および組み合わせにより、実現され、達成されるであろう。前述の概要および以下の詳細な説明の双方は、例示的で説明的なものにすぎず、かつ制限されるものでないことは理解されるべきである。
【0009】
添付の図面は、本明細書に援用され、その一部を構成するものであり、下記のいくつかの態様を図示する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】pH依存性のコアセルベート構造および接着機構のモデルを示す。(A)ポリアミン(赤)と低い電荷密度で対をなすポリリン酸塩(黒)は、nmスケールの複合体を形成する。複合体は実効(net)正電荷を有する。(B)極めて高い電荷密度のポリリン酸塩は、二価カチオン(緑の記号)が存在する場合、よりコンパクトなより低い電荷密度のポリアミンによって結合されたネットワークを形成する。共重合体上の実効電荷は負である。(C)O2による3,4−ジヒドロキシフェノール(D)の酸化または酸化剤の添加により、キノン(Q)と第1級アミン側鎖の間で架橋が開始する。コアセルベートは、静電相互作用を通じてハイドロキシアパタイト表面、3,4−ジヒドロキシフェノール側鎖に接着し、かつマトリックスタンパク質にキノン媒介性の共有カップリングをすることが可能である。
【図2】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図3】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図4】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図5】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図6】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図7】本発明におけるポリカチオンおよびポリアニオンならびに本発明において有用な合成ポリカチオンおよびポリアニオンとして使用することが可能な、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成されるいくつかのタンパク質配列を示す。
【図8】DOPA架橋の異なる機構を示す。
【図9】本明細書中に記載の複合コアセルベートの小さい「スポット溶接」を適用し、骨折(A)、小さい骨損傷(B)、または骨組織に結合する合成足場(C)を修復するための二本の注射器システムを示す。
【図10】模倣共重合体(mimetic copolymer)の構造および紫外/可視による特徴づけを示す。(A)Pc3類似体1は、88.4mol%のリン酸塩、9.7mol%のドーパマイド、および0.1mol%のFITC側鎖を有した。Pc1類似体2は、8.1mol%のアミン側鎖を有した。残りは、どちらの場合もアクリルアミドサブユニットであった。(B)3,4−ジヒドロキシフェノールのカテコール型に特有である280nmでの単一のピークが、1のスペクトルにおいて認められた。NaIO4での酸化後、キノン型に対応する395nmでのピークが認められ、3,4−ジヒドロキシフェノールを有するポリマーの想定されるレドックス挙動が確認された。
【図11】混合された高分子電解質のpH依存性の複合体コアセルベーションを示す。(A)低いpHで、等量のアミンおよびリン酸塩側鎖を有する1および2の50mg/mlの混合物が、安定なコロイド状PECを形成した。pHが上昇するにつれて、ポリマーは凝集し、濃厚液体の複合コアセルベート相が生じた。pH10で、共重合体は、溶液に入り、酸化的架橋によって清澄なヒドロゲルが生じた。(B)共重合体の側鎖密度から計算された、pHの関数としての共重合体側鎖の実効電荷。(C)PECの直径(円)は、pH範囲2〜4にわたって約3倍増加した。pH4を超えると、複合体は凝集し、それらのサイズは測定できなかった。ゼータ電位(四角)は、計算された実効電荷に合致し、pH3.6付近でゼロであった。
【図12】接着複合コアセルベートの液体特性を示す。1および2の溶液は、pH7.4で等量のアミンおよびリン酸塩側鎖を含有した。
【図13】高分子電解質および二価カチオンの相図を示す。アミン対リン酸塩側鎖比およびリン酸塩側鎖対二価カチオン比は、一定のpH8.2で変化した。溶液の状態は、グレースケールで表される。コアセルベート相の質量(mg)は、暗灰色の四角で示される。アスタリスクで示される組成物を使用し、結合力が試験された。
【図14】コアセルベートが結合した骨の結合力、剛性率、および寸法安定性を示す。(A)リン酸塩側鎖に対する二価カチオン比が0〜0.4になった時、破壊時の結合力が約50%増大し、剛性が2倍になった。市販のシアノアクリル酸塩接着剤で結合された湿った標本が参照として使用された(すべての条件においてn=6)。(B)4か月間PBS中(pH7.2)に完全に浸した接着された骨標本の結合はあまり増大しなかった。
【図15】酸化(pH7.2)の前後におけるドーパミン共重合体の紫外−可視スペクトルを示す。酸化前に認められたカテコールのピークがキノン型に変換された。左上:p(DMA[8]−Aam[92])。左下:p(AEMA[30]−DMA[8])。右:ドーパミン共重合体の酸化架橋によるハイドロゲルの形成。(A)p(DMA[8]−Aam[92])。(B)p(EGMP[92]−DMA[8])。(C)p(AEMA[30]−Aam[70])と混合されたp(DMA[8]−Aam[92])。(D)p(AEMA[30]−Aam[70])と混合されたp(EGMP[92]−DMA[8])。括弧付きの数は、側鎖のmol%を示す。矢印は、方向スペクトルが経時的に変化していることを示す。
【図16】ポリ(EGMP[92]−DMA[8])におけるドーパミン酸化のpH依存性を示す。矢印は、方向スペクトルが経時的に変化することを示す。上:pH5.0。時間的経過(差し込み図)。下:pH6.0。
【図17】(A)ヒト包皮線維芽細胞、(B)ヒト気管線維芽細胞、および(C)ラット初代星状細胞と、接着剤との直接的接触を示す(赤の自動蛍光チャンク、白のアスタリスク)。細胞の形態、フィブロネクチン分泌、および運動性は、接着剤の不在下で成長している細胞と区別できない。緑=中間フィラメントタンパク質。赤=分泌されたフィブロネクチン。青=DAPIで染色された核。
【図18】ラット頭蓋冠欠陥モデルの複数の断片を示す。(A)欠陥の発生。(B)骨キャップの断片化。(C)欠陥のある断片の代置。(D)骨接着剤の適用。(E〜F)接着剤の硬化(暗色化)。断片は、EおよびFではしっかりと固定される。
【図19】接着複合コアセルベートの形成に対するpHおよび正規化された実効電荷の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本化合物、組成物、物品、デバイス、および/または方法が開示され、説明される前に、下記の態様が、当然変化しうることから、特定の化合物、合成方法、または用途に限定されないことは理解されるべきである。本明細書で使用される用語が、あくまで特定の態様を説明することを目的とし、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0012】
以下に続く本明細書および特許請求の範囲においては、多くの用語に対して参照がなされることになり、それらは以下の意味を有するように定義されるものとする。
【0013】
単数形「a」、「an」および「the」は、本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、文脈上他に明示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意する必要がある。それ故、例えば、「薬学的担体(a pharmaceutical carrier)」への言及は、2つ以上のかかる担体の混合物などを含む。
【0014】
「任意選択の(optional)」または「場合により(optionally)」は、その後に説明される事象または環境が生じうるかまたは生じえないことと、説明が事象または環境が生じる事例およびそれが生じない事例を含むことを意味する。例えば、語句「場合により置換された低級アルキル」は、低級アルキル基が置換されうるかまたは置換されえないことと、説明が未置換低級アルキルおよび置換がある場合の低級アルキルの双方を含むことを意味する。
【0015】
範囲は、本明細書中で、「約(about)」1つの特定の値、および/または「約」もうひとつの特定の値として表されうる。かかる範囲が表される場合、別の態様は、一方の特定の値および/または他方の特定の値を含む。同様に、値が「約」を前に付けて使用することによって近似値として表される場合、特定の値が別の態様を形成することが理解されるであろう。さらに、範囲の各々の終点が、他方の終点と関係して、また他方の終点と関係なく有意であることが理解されるであろう。
【0016】
本明細書および結末の特許請求の範囲における、組成物または物品における特定の要素または成分の重量部への言及は、重量部が表される組成物または物品における、要素または成分と任意の他の要素または成分の間の重量関係を意味する。それ故、2重量部の成分Xと5重量部の成分Yを含有する化合物において、XおよびYは2:5の重量比で存在し、かつ追加的成分が化合物中に含有されるか否かに無関係にかかる比で存在する。
【0017】
成分の重量パーセントは、他に具体的に述べられない限り、成分が含まれる調合物または組成物の総重量を基準とする。
【0018】
本願全体を通じて使用されるR1、R2、R3、R4、R5、X、m、およびnなどの変数は、他に述べられない限り、予め規定される場合と同じ変数である。
【0019】
本明細書で使用される用語「アルキル基」は、1〜25個の炭素原子の分岐または未分岐の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、テトラデシル、ヘキサデシル、エイコシル、テトラコシルなどである。より長鎖のアルキル基の例として、限定はされないが、オレイン酸基またはパルミチン酸基が挙げられる。「低級アルキル」基は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基である。
【0020】
本明細書中に記載の化合物のいずれかは、薬学的に許容される塩でありうる。一態様では、薬学的に許容される塩は、遊離酸を適量の薬学的に許容される塩基で処理することによって調製される。代表的な薬学的に許容される塩基は、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化第一鉄、水酸化亜鉛、水酸化銅、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、リジン、アルギニン、ヒスチジンなどである。一態様では、反応は、室温など、約0℃〜約100℃の温度で、単独でまたは不活性の水溶性有機溶媒と組み合わせて、水中で行われる。特定の態様では、適用可能である場合、使用される塩基に対する本明細書中に記載の化合物のモル比は、任意の特定の塩に対して所望される比を得るように選択される。例えば、遊離酸出発材料のアンモニウム塩を調製する場合、出発材料は約1当量の薬学的に許容される塩基で処理され、中性塩が得られうる。
【0021】
別の態様では、化合物が塩基性基を有する場合、それは例えばHCI、HBr、またはH2SO4などの酸でプロトン化され、カチオン性塩が生成されうる。一態様では、化合物と酸または塩基との反応は、室温など、約0℃〜約100℃の温度で、単独でまたは不活性の水溶性有機溶媒と組み合わせて、水中で行われる。特定の態様では、適用可能である場合、使用される塩基に対する本明細書中に記載の化合物のモル比は、任意の特定の塩に対して所望される比を得るように選択される。例えば、遊離酸出発材料のアンモニウム塩を調製する場合、出発材料は約1当量の薬学的に許容される塩基で処理され、中性塩が得られうる。
【0022】
接着複合コアセルベートおよびその用途が本明細書中に記載される。一般に、複合体は、所望されるpHで安定な水性複合体を生成するための、カチオンとアニオンのバランスの取れた割合での混合物である。接着複合コアセルベートは、少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり、かつポリカチオンおよび/またはポリアニオンは複合コアセルベートの硬化時に互いに架橋される。コアセルベートの各成分およびそれを作製するための方法は、下に説明される。
【0023】
接着複合コアセルベートは、個々のポリマー成分が相全体を通じて拡散する動的構造を有する会合液体である。複合コアセルベートは、粘弾性ポリマー溶液ではなく、粘性粒子分散体のようにレオロジー的に挙動する。上記のように、接着複合コアセルベートは、水面下のまたは湿らされた基質に適用される場合、水中で低い界面張力を示す。換言すれば、複合コアセルベートは、ビードアップではなく界面上に一様に広がる。さらに、分子間架橋時、接着複合コアセルベートは、強力な不溶性の粘着性材料を形成する。
【0024】
それに対し、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートに対する前駆体でありうる高分子電解質複合体(PEC)は小さいコロイド状粒子である。例えば、図11Aを参照すると、pH3.1および4.2でのPECの溶液は、約300nmの直径を有するコロイド状粒子の乳状溶液として存在する。pHを7.2および8.1に上昇させるとき、PECは凝集し、濃縮ポリマーの液相(コアセルベート相)および希釈平衡相になる。本態様では、PECは、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートに変換されうる。
【0025】
高分子電解質複合体と接着複合コアセルベートの間の相挙動における差異の典型的モデルは、図1に示される。低いpHで、逆に帯電した高分子電解質は静電的に会合し、懸濁液を安定化させる正の実効表面電荷を有するナノ複合体になり、PEC1が生成される。pHの増加とともに、複合体の実効電荷は正から負に変化するが、実効中性に近い状態を保持する。PECは、緩やかな(loose)沈殿相を形成することが可能であり、pHをさらに上昇させることによって複合コアセルベート2に変換されうる(図1)。したがって、特定の態様では、多価カチオンのpHおよび/または濃度を調整することにより、PECの複合コアセルベートへの変換が「誘起される」可能性がある。例えば、PECは4以下のpHで生成することが可能であり、また、PECのpHを7.0以上、7.0〜9.0、または8.0〜9.0に上昇させると、PECを複合コアセルベートに変換させることが可能である。それに続くポリカチオンとポリアニオンの間での架橋(例えば、図1Cに示される酸化および共有架橋)は、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートの形成をもたらす。
【0026】
ポリカチオンおよびポリアニオンは、硬化時、2つのポリマー間を架橋し、新しい共有結合および本明細書中に記載の接着複合コアセルベートの生成を可能にする基を有する。架橋の機構は、架橋基の選択に応じて変化しうる。一態様では、架橋基は、求電子剤および求核剤でありうる。例えば、ポリアニオンは、1つ以上の求電子基を有し、かつポリカチオンは、求電子基と反応して新しい共有結合を生成することが可能な1つ以上の求核基を有しうる。求電子基の例として、限定はされないが、無水物基、エステル、ケトン、ラクタム(例えば、マレイミドおよびスクシンイミド)、ラクトン、エポキシド基、イソシアネート基、およびアルデヒドが挙げられる。求核基の例が下記に示される。
【0027】
一態様では、架橋可能な基は、酸化剤の存在下で酸化を受けることが可能な、ヒドロキシルで置換された芳香族基を含む。一態様では、ヒドロキシルで置換された芳香族基は、例えば、DOPAおよびカテコール(3,4ジヒドロキシフェノール)などのジヒドロキシフェノールまたはハロゲン化ジヒドロキシフェノール基である。例えば、DOPAの場合、それはドーパキノンに酸化されうる。ドーパキノンは、隣接DOPA基または別の求核基のいずれかと反応することが可能な求電子基である。酸素あるいは、限定はされないが、過酸化物、過ヨウ素酸塩、または遷移金属酸化剤(例えば、NaIO4またはFe+3化合物)を含む他の添加剤などの酸化剤の存在下で、ヒドロキシルで置換された芳香族基は酸化されうる。別の態様では、架橋は、アジド基による光活性化架橋を介して、ポリカチオンとポリアニオンの間で生じうる。このタイプの架橋の間に、新しい共有結合が再び形成される。
【0028】
酸化された架橋剤の安定性は変化しうる。例えば、酸化可能な架橋剤を有する本明細書中に記載のホスホノを含有するポリアニオンは、溶液中で安定であり、それ自体と架橋しない。これは、ポリカチオン上に存在する求核基と、酸化された架橋剤との反応を可能にする。これは本発明の所望の特徴であり、それは分子間結合の形成、また最終的には強力な接着剤の形成を可能にする。有用な求核基の例として、限定はされないが、置換または未置換アミノ基およびイミダゾール基などの、ヒドロキシル、チオール、および窒素を有する基が挙げられる。例えば、リジン、ヒスチジン、および/またはシステインの残基は、ポリカチオンに取り込まれ、求核基を導入しうる。この例は図8に示される。DOPA残基1が酸化され、ドーパキノン残基2が形成されうる。ドーパキノンは、反応性中間体であり、別のポリマーまたは同じポリマー上のDOPA残基と架橋(すなわち反応)し、di−DOPA基が生成されうる。あるいは、ドーパキノン残基は、Michael型付加を介して、例えば、アミノ、ヒドロキシル、またはチオール基などの求核剤と反応し、新しい共有結合が形成されうる。図8を参照すると、リシル基、システイニル基、およびヒスチジル基がドーパキノン残基と反応し、新しい共有結合が生成される。DOPAが適切な架橋であるが、例えばチロシンなどの他の基が本発明で使用することが可能である。本明細書中に記載の接着複合コアセルベートの使用に関する架橋の重要性が、下で考察されることになる。
【0029】
他の態様では、ポリカチオンおよび/またはポリアニオン上に存在する架橋剤は、遷移金属イオンと配位複合体を形成しうる。例えば、遷移金属イオンはポリカチオンとポリアニオンの混合物に付加される可能性があり、ここでは両ポリマーは、遷移金属イオンと配位することが可能な架橋剤を有する。配位および解離の速度は、架橋剤、遷移金属イオン、およびpHの選択によって制御されうる。したがって、上記の共有架橋に加え、架橋は、静電、イオン、または他の非共有結合を通じて生じうる。例えば、鉄、銅、バナジウム、亜鉛、およびニッケルなどの遷移金属イオンが、本発明で使用されうる。
【0030】
ポリカチオンおよびポリアニオンは、一般に、特定のpHで、複数の荷電可能な基を有するポリマー骨格から構成される。同基は、ポリマー骨格に対してペンダントであり、および/またはポリマー骨格内部に取り込まれうる。ポリカチオンは、カチオン基またはpHの調整によってカチオン基に容易に変換可能な基を有する任意の生体適合性ポリマーである。一態様では、ポリカチオンはポリアミノ化合物である。アミノ基は、ポリマー骨格の分岐または一部である。アミノ基は、プロトン化され、選択されるpHでカチオン性アンモニウム基を生成しうる第1級、第2級、または第3級アミノ基でありうる。例えば、アミノ基は、ポリカチオンに結合したリジン、ヒスチジン、またはイミダゾールの残基から得られうる。任意のアニオン性対イオンは、カチオン性ポリマーと併用することが可能である。対イオンは、組成物の本質的成分と物理的かつ化学的に競合可能であるべきであり、それ以外では生成物の性能、安定性または審美性を過度に損なうことがない。かかる対イオンの非限定例として、ハロゲン化物(例えば、塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物)、硫酸塩およびメチル硫酸塩が挙げられる。
【0031】
ポリカチオンは、合成高分子または天然(すなわち生物から生成される)でありうる。一態様では、ポリカチオンが天然である場合、ポリカチオンは、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)から生成される正に帯電したタンパク質である。図2〜6は、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成される数種のセメントタンパク質のタンパク質配列を示す(Zhaoら、「Cement Proteins of the tube building polychaete Phragmatopoma californica」、J.Biol.Chem.(2005年)280:42938−42944頁)。表1は、各タンパク質のアミノ酸のモル%を提供する。図2〜5を参照すると、Pc1、Pc2、およびPc4〜Pc8はポリカチオンであり、ここではポリマーは中性pHでカチオン性である。タンパク質中に存在するアミノ酸のタイプをおよび数は、所望される溶液特性が得られるように変化しうる。例えば、表1を参照すると、Pc1がリジン(13.5モル%)で富化される一方、Pc4およびPc5はヒスチジン(各々、12.6および11.3モル%)で富化される。
【表1】

【0032】
ポリカチオンが合成高分子である場合、種々の異なるポリマーを使用することが可能であるが、ポリマーは生体適合性であり、細胞および組織に対して非毒性であることが望ましい。一態様では、ポリカチオンは、1つ以上のペンダントアミノ基を有するポリアクリル酸塩を含む。例えば、骨格は、限定はされないが、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミドなどを含むアクリル酸塩モノマーの重合から得られるホモポリマーまたは共重合体でありうる。一態様では、ポリカチオンの骨格はポリアクリルアミドである。他の態様では、ポリカチオンはブロック共重合体であり、ここで共重合体のセグメントまたは部分は、共重合体を生成するのに使用されるモノマーの選択に依存して、カチオン基を有する。
【0033】
一態様では、ポリカチオンは、ポリアミノ化合物である。別の態様では、ポリアミノ化合物は、10〜90モル%の第3級アミノ基を有する。さらなる態様では、ポリカチオンポリマーは、式I
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3は、独立して水素またはアルキル基であり、Xは、酸素またはNR5であり(ここでR5は、水素またはアルキル基である)、かつmは1〜10である)の少なくとも1つの断片またはその薬学的に許容される塩を有する。別の態様では、R1、R2、およびR3は、メチルであり、かつmは2である。式Iを参照すると、ポリマー骨格は、−CH2−C(R1)−C(O)X−から構成され、それはアクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミド、またはメタクリルアミドの残基である。式Iの(CH2m−NR23の残りの部分はペンダントアミノ基である。図3(構造CおよびD)および図6(4および7)は、式Iの断片を有するポリカチオンの例を示し、ここでポリマー骨格は、アクリルアミドおよびメタクリル酸塩残基から構成される。一態様では、ポリカチオンは、カチオン性第3級アミンモノマー(2−ジメチルアミノ−エチルメタクリル酸)およびアクリルアミドの遊離基重合生成物であり(分子量は10〜20kdである)、かつ15〜30mol%の濃度の第3級モノマーを有する。図4(構造EおよびF)および図6(5)は、本明細書で有用なポリカチオンの例を提供し、ここでイミダゾール基は、ポリマー骨格(構造F)に直接的に結合するかまたはポリマー骨格にリンカーを介して(構造Eにメチレンリンカーを介して)間接的に結合する。
【0034】
ポリカチオンと同様に、ポリアニオンは、合成高分子または天然でありうる。一態様では、ポリアニオンが天然である場合、ポリアニオンは、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)から生成される負に帯電したタンパク質である。図2および7は、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)によって生成される2つのタンパク質(Pc3aおよびPc3b)の配列を示す(Zhaoら、「Cement Proteins of the tube building polychaete Phragmatopoma californica」、J.Biol.Chem.(2005年)280:42938−42944頁)。表1を参照すると、Pc3aおよびPc3bは、本質的にポリホスホセリンから構成され、それは中性pHでアニオン性である。
【0035】
ポリアニオンが合成高分子である場合、それは一般に、アニオン基またはpHの調整によってアニオン基に容易に変換可能な基を有する任意の生体適合性ポリマーである。アニオン基に変換可能な基の例として、限定はされないが、カルボン酸塩、スルホン酸塩、ホスホン酸塩、ボロン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、またはリン酸塩が挙げられる。上で考察した検討事項が満たされる場合、任意のカチオン性対イオンは、アニオン性ポリマーと併用することが可能である。
【0036】
一態様では、ポリアニオンはポリリン酸塩である。別の態様では、ポリアニオンは、10〜90モル%のリン酸基を有するポリリン酸塩化合物である。さらなる態様では、ポリアニオンは、1つ以上のペンダントリン酸基を有するポリアクリル酸塩を含む。例えば、骨格は、限定はされないが、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、アクリルアミドなどを含むアクリル酸塩モノマーの重合から得られるホモポリマーまたは共重合体でありうる。一態様では、ポリアニオンの骨格はポリアクリルアミドである。他の態様では、ポリアニオンはブロック共重合体であり、ここで共重合体のセグメントまたは部分は、共重合体を生成するのに使用されるモノマーの選択に依存して、アニオン基を有する。さらなる態様では、ポリアニオンは、ヘパリン硫酸塩、ヒアルロン酸、キトサンおよび、典型的には当該技術分野で使用される他の生体適合性および生体分解性ポリマーでありうる。
【0037】
一態様では、ポリアニオンはポリリン酸塩である。別の態様では、ポリアニオンは、式II
【化2】

(式中、R4は、水素またはアルキル基であり、かつmは1〜10である)を有する少なくとも1つの断片またはその薬学的に許容される塩を有するポリマーである。別の態様では、R4はメチルであり、かつnは2である。式Iと同様、式IIのポリマー骨格は、アクリル酸塩またはメタクリル酸塩の残基から構成される。式IIの残りの部分は、ペンダントリン酸基である。図7(構造B)は、式IIの断片を有する、本明細書で有用なポリアニオンの例を示し、ここでポリマー骨格は、アクリルアミドおよびメタクリル酸塩残基から構成される。一態様では、ポリアニオンは、重合生成物のエチレングリコールメタクリル酸リン酸塩(ethylene glycol methacrylate phosphate)およびアクリルアミドであり(分子量は、10,000〜50,000、好ましくは30,000である)、かつリン酸基を45〜90mol%の量で有する。
【0038】
上記のように、ポリカチオンおよびポリアニオンは、架橋可能な基を有する。例えば、ポリアニオンは、酸化を受けうる1つ以上の基を含むことが可能であり、ポリカチオンは、酸化された架橋剤と反応して新しい共有結合を生成することが可能な1つ以上の求核剤を有する。図6におけるポリマー3および7は、ポリアニオンおよびポリカチオンにそれぞれ取り込まれたDOPA残基の例を提供する。これらのポリマーの各々においては、ペンダントDOPA残基を有するアクリル酸塩は、適切なモノマーと重合され、ペンダントDOPA残基を有するポリアニオン3およびポリカチオン7が生成される。
【0039】
ポリカチオンは天然化合物(例えば、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)由来のタンパク質)でありえ、かつポリアニオンは合成化合物であると考えられる。別の態様では、ポリカチオンは合成化合物でありえ、かつポリアニオンは天然化合物(例えば、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)由来のタンパク質)である。さらなる態様では、ポリアニオンおよびポリカチオンは、いずれも合成化合物である。
【0040】
接着複合コアセルベートはまた、1種以上の多価カチオン(すなわち、+2以上の電荷を有するカチオン)を有する。一態様では、多価カチオンは、1種以上のアルカリ土類金属から構成される二価カチオンでありうる。例えば、二価カチオンは、Ca+2およびMg+2の混合物でありうる。他の態様では、+2以上の電荷を有する遷移金属イオンは、多価カチオンとして使用することが可能である。pHに加え、多価カチオンの濃度は、コアセルベート形成の速度および範囲を決定しうる。理論に縛られたくないが、流体中での粒子間の弱い結合力は、過剰な負の表面電荷を架橋する多価カチオンによって媒介されうる。本明細書で使用される多価カチオンの量は変化しうる。一態様では、量は、ポリアニオンおよびポリカチオン中に存在するアニオン基およびカチオン基の数に基づく。実施例においては、接着複合コアセルベートの生成に関する多価カチオンの量および他の物理的状態の選択について述べられる。
【0041】
接着複合コアセルベートは、多数の異なる方法で合成されうる。一態様では、ポリカチオン、ポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンは、互いに混合され、接着複合コアセルベートが生成されうる。適量の多価カチオンをポリアニオンおよびポリカチオンの混合に添加することにより、接着複合コアセルベートが生成されうる。別の態様では、接着複合コアセルベートは、
(a)少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを混合するステップを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり、かつポリカチオンおよび/またはポリアニオンは、互いに架橋することが可能な少なくとも1つの基を含む、高分子電解質複合体を調製するステップと、
(b)高分子電解質複合体のpH、少なくとも1種の多価カチオンの濃度、またはこれらの組み合わせを調整し、接着複合コアセルベートを生成するステップと、
を含むプロセスによって生成されうる。
【0042】
本態様では、高分子電解質複合体は、接着複合コアセルベートに変換される。接着複合コアセルベートをその場で生成するための方法は下記に説明される。
【0043】
本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、生体セメントおよび送達デバイスとしての用途に対して極めて多数の利点を有する。例えば、コアセルベートは、低い初期粘度、1より大きい比重(ほぼ水の重量に相当)を有し、水性環境下で低い界面張力を有し、これらのすべてが、湿った表面へのその接着能に寄与する。接着複合コアセルベートの結合機構(すなわち架橋)についてのさらなる利点は、凝結の間での低い発熱を含み、それは生体組織に対する損傷を阻止する。原位置での発熱重合による発熱を回避するため、成分は予備重合されうる。これは、接着複合コアセルベートの、上記のように極めて温和な条件下での分子間架橋能からして、ほとんど当然のことである。
【0044】
本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、多数の異なる生体基質に適用されうる。基質は、インビトロまたはインビボで接触されうる。接着複合コアセルベート内部での架橋の速度は、例えばpHおよび酸化剤または架橋を促進する他の作用剤の存在によって制御されうる。接着複合コアセルベートを基質に適用するための1つのアプローチは、図9に見出されうる。図9に示される技術は、本明細書中で「スポット溶接」と称され、そこでは接着複合コアセルベートが基質の明確な特定の領域で適用される。一態様では、接着複合コアセルベートはその場で生成されうる。図9Aを参照すると、注射器を使用して、低いpH(例えば5)の、ポリカチオンおよびポリアニオンから構成される、予備形成された安定なPEC溶液1が、より高いpH(例えば10)の、酸化剤から構成される硬化溶液2とともに基質に同時適用される。混合時、硬化溶液は、基質の表面上でポリマーを架橋することにより、接着複合コアセルベートを同時に生成する。
【0045】
別の態様では、図9Bを参照すると、ポリアニオン3およびポリカチオン4の溶液が基質に同時に適用される。溶液のうちの一方は、接着複合コアセルベートを生成するように、他方よりも高いpHを有する。図9Bを参照すると、ポリアニオン3はポリカチオン溶液4よりpHが低いが、ポリアニオンは、ポリカチオンより高いpHを有する溶液中に存在しうるとも考えられる。より高いpHを有する溶液は、架橋を促進するように、酸化剤を含みうる。
【0046】
図9Cは、スポット溶接の別の態様を示す。本態様では、基質は、特定のpHで、ポリカチオンを用いて準備される(primed)。次いで、接着複合コアセルベートをその場で生成するため、より高いpHでのポリアニオンの溶液がポリカチオンに適用される。また、基質は、最初にポリアニオン、次いでポリカチオンを用いて準備することが可能であると考えられる。次いで、酸化剤を複合コアセルベートに別々に適用することで、架橋が促進され、接着複合コアセルベートが生成されうる。あるいは、基質が準備された後に適用される溶液は、接着複合コアセルベートが形成され、次いでその場で架橋されるように、酸化剤を含有しうる。
【0047】
本明細書中に記載の接着複合コアセルベートを使用し、多数の異なる骨折および骨破壊を修復することが可能である。コアセルベートは、いくつかの機序により骨(および他のミネラル)に接着する(図1Cを参照)。骨のハイドロキシアパタイトのミネラル相(Ca5(PO43(OH))の表面は、正および負電荷双方のアレイである。ポリアニオン上の負の基(例えばリン酸基)は正の表面電荷と直接的に相互作用しうるか、またはそれはポリカチオンおよび/または多価カチオン上のカチオン基を介して負の表面電荷に架橋しうる。同様に、ポリカチオンと負の表面電荷との直接的相互作用であっても接着に寄与することになる。さらに、ポリカチオンおよび/またはポリアニオンがカテコール部分を含有する場合、それらはコアセルベートの湿りやすいハイドロキシアパタイトへの接着を促進しうる。他の接着機構は、酸化されていない架橋剤(例えばDOPAまたは他のカテコール)のハイドロキシアパタイトへの直接的結合を含む。あるいは、酸化された架橋剤は、骨マトリックスタンパク質の求核側鎖にカップリングしうる。
【0048】
かかる破壊の例として、完全骨折、不完全骨折、線状骨折、横骨折、斜骨折、圧迫骨折、らせん骨折、粉砕骨折、圧縮骨折(compacted fracture)、または開放性骨折が挙げられる。一態様では、骨折は、関節内骨折または頭蓋顔面骨折である。関節内骨折などの骨折は、軟骨表面に広がり、それを断片化する骨損傷である。接着複合コアセルベートは、かかる骨折の低減の維持を補助し、一層の低侵襲手術を可能にし、手術室時間を低減し、コストを削減し、かつ外傷後関節炎のリスクを低減することによって転帰の改善をもたらす場合がある。
【0049】
他の態様では、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートを使用し、細かく粉砕された骨折の小片を結合することが可能である。本態様では、骨折した骨の小片は、既存の骨に接着することが可能である。小片の低減を、機械式固定具でそれらに穴を開けることによって維持することは極めて困難である。断片の数の減少および増加により、問題が増える。一態様では、ひび全体の充填ではなく骨折を直すことを目的として、接着複合コアセルベートまたはその前駆体を少量で注射し、上記のようにスポット溶接をもたらすことが可能である。小さい生体適合性のスポット溶接であれば、周囲組織の治癒への干渉を最小化し、必ずしも生体分解性である必要がないことになる。これに関していえば、それは永久的に移植されたハードウェアに類似することになる。
【0050】
他の態様では、接着複合コアセルベートを使用し、例えば軟骨、靱帯、腱、軟組織、器官、およびこれらの物質の合成誘導体などの骨および他の組織に対する足場を固定することが可能である。本明細書中に記載の複合体およびスポット溶接技術を使用し、足場の開発が検討される。本明細書中に記載の接着複合コアセルベートから構成される小さい接着性タック(adhesive tack)であれば、足場の内外への細胞の泳動または小分子の輸送に干渉しないことになる。特定の態様では、足場は、骨および組織の成長または修復を促進する1種以上の薬剤を含有しうる。例えば、足場は、薬剤でコーティングされうるか、あるいは、薬剤は、薬剤が経時的に足場から溶出するように足場内部に取り込まれうる。
【0051】
本明細書中に記載の接着複合コアセルベートおよび方法は、極めて多数の歯科用途を有する。例えば、接着複合コアセルベートを使用し、歯冠を固定するため、またはインプラントおよび義歯を設置するため、歯における破損またはひびを修復することが可能である。本明細書中に記載のスポット溶接技術を使用し、接着複合コアセルベートまたはその前駆体を口腔(例えば、顎、歯の部分)における特定の場所に適用し、次いでインプラントを基質に付着させることが可能である。
【0052】
他の態様では、接着複合コアセルベートは、金属基質を骨に接着させうる。例えば、酸化チタン、ステンレス鋼、または他の金属から作製されるインプラントは、骨折した骨の修復に一般に使用される。接着複合コアセルベートまたはその前駆体は、基質を骨に接着させる前に、金属基質、骨、またはその双方に適用することが可能である。特定の態様では、ポリカチオンまたはポリアニオン上に存在する架橋基は、酸化チタンと強力な結合を形成しうる。例えば、DOPAが、湿った酸化チタン表面に強力に結合しうることは示されている(Leeら、PNAS 103:12999頁(2006年))。それ故、骨片への結合に加え、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートは、金属基質の骨への結合を促進することが可能であり、それは骨の修復および回復を促進しうる。
【0053】
また、本明細書中に記載の接着複合コアセルベートが1種以上の生物活性物質をカプセル化しうると考えられる。生物活性物質は、複合体が骨に適用される場合、骨の成長および修復を促進することになる任意の薬剤でありうる。放出の速度は、複合体の調製に使用される材料の選択および生物活性物質(それが塩である場合)の帯電によって制御することが可能である。
【実施例】
【0054】
次の実施例がここに記載され、請求される化合物、組成物、および方法がいかに作られ、評価されるかについての完全な開示および説明を当業者に提供するために示され、純粋に例示的であるように意図され、かつ発明者がその発明であると見なす範囲を限定するように意図されていない。数(例えば、量、温度など)に対する精度を保証するための努力がなされているが、一部の誤りや逸脱は考慮されるべきである。他に指定がない限り、部は重量部であり、温度は℃であるかまたは周囲温度であり、かつ圧力は大気圧またはその近傍である。反応条件、例えば、成分濃度、所望される溶媒、溶媒混合物、温度、圧力ならびに、上記プロセスから得られる生成物の純度および収率を最適化するのに使用可能な他の反応範囲および条件の極めて多数の変形および組み合わせがある。かかるプロセス条件を最適化するには、合理的かつ日常的な実験が必要となるにすぎない。
【0055】
模倣共重合体の合成および特徴づけ
Pc3類似体。DOPA類似モノマー(ドーパミンメタクリルアミド、DMA)を、公開された手順を少し改良することで調製した(Lee B.P.、Huang K.、Nunalee FN.、Shull KR.、Messersmith PB. 「Synthesis of 3,4−dihydroxyphenylalanine(DOPA) containing monomers and their co−polymerization with PEG−diacrylate to form hydrogels.」 J Biomater Sci Polym編、2004年;15(4):449−464頁)。つまり、ホウ酸塩−ドーパミン複合体を、pH>9で塩化メタクリロイルと反応させた。酸性化によってホウ酸塩−カテコール結合を破壊した後、生成物を酢酸エチルで洗浄し、ヘキサンから再結晶化し、1H NMR(400MHz、DMSO−TMS):d8.8−8.58(2H,(OH)2−Ar−)、7.92(1H,−C(=O)−NH−)、6.64−6.57(2H,C6HH2(OH)2−)、6.42(1H,C62H(OH)2−)、5.61(1H,−C(=O)−C(−CH3)=CHH)、5.30(1H,−C(=O)−C(−CH3)=CHH)、3.21(2H,C63(OH)2−CH2−CH2(NH)−C(=O)−)、2.55(2H,C63(OH)2−CH2−CH2(NH)−C(=O)−)、1.84(3H,−C(=O)−C(−CH3)=CH2)によって検証した。
【0056】
重合前に、モノアクリルオキシエチルリン酸(MAEP,Polysciences)を、MeOHで希釈し、ヘキサンで抽出し、ジエンを除去した。共重合体1を、90mol% MAEP、8mol% DMA、2mol%アクリルアミド(Aam,Polysciences)、および0.1mol% FITC−メタクリルアミドを、MeOH中、5wt%の最終モノマー濃度で混合することによって調製した。遊離基重合をアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)で開始させ、密封アンプル中、60℃で24時間処理した。同様の手順を用い、図2〜7に示されるようにポリマー3〜7を作製した。共重合体1(図10)を、Sephadex LH−20カラム(Sigma−Aldrich)上、MeOH中でのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって回収させ、回転蒸発によって濃縮し、DI水に溶解し、凍結乾燥させた。
【0057】
1の分子量および多分散指数(PDI)を、小角度光散乱検出器(Brookhaven BI−MWA)および屈折率モニター(Brookhaven BI−DNDC)に接続されたPLgelカラム(Polymer Labs)上、DMF中のSECによって測定した。カラムを、ポリスチレン標準で較正した。1の分子量は245kdaであり、ここでPDIは1.9であった。ドーパミン側鎖濃度および反応性を、紫外/可視分光法(e280=2600M-1cm-1)によって検証した。リン酸塩側鎖濃度を、自動滴定装置(Brinkmann Titrando 808)を使用する、0.005M NaOHでの適定によって測定した。1の紫外/可視スペクトルは、ドーパミンのカテコール型に特有の、280nmでの単一の吸収ピークを有した(図10B)。pH5.0での1:1のモル比のNaIO4対1の添加により、DOPAカテコールがドーパキノンに酸化され、予想通り、395nm付近で吸収ピークが認められた。ドーパキノンのピークは、pH<5で数時間安定であった。
【0058】
Pc1類似体。Pc1のリジン側鎖を、N−(3−アミノプロピル)メタクリルアミド塩酸塩(APMA,Polysciences)で模倣した。共重合体2(図10)を、10mol%のAPMAおよび90mol%のAamをDI水に溶解し、N2で脱気し、2mol%のポリ硫化アンモニウム(Polysciences)との重合を開始させることによって合成した。重合は、密封アンプル中、50℃で24時間進行した。ポリマーを、3日間の水に対する透析によって回収し、次いで凍結乾燥した。第1級アミン側鎖のmol%を、d13.45(3H,−CH3)とd51.04(1H,RC(=O)CHR2)の比から、1H NMR(400MHz、DMSO−TMS)によって判定した。2の分子量およびPDIを、Superose 6カラム(Pharmacia)上、PBS(20mM PO4、300mM NaCl、pH7.2)中のSECによって測定した。カラムを、ポリ−2−ヒドロキシプロピルメタクリル酸塩標準で較正した。2の分子量は165kdであり、PDIは2.4であった。
【0059】
コアセルベートの形成および特徴づけ 2の5wt%の水溶液を、1の5wt%の水溶液に、標的のアミン/リン酸塩比に達するまで、攪拌しながら滴下添加した。全共重合体濃度は50mg/mlであった。30分間混合後、pHをNaOH(6M)で調整した。高分子電解質複合体(PEC)の形成をもたらすpH(<4)での組成物を、DI H2O中で1mg/mlに希釈し、PECのゼータ電位およびサイズ分布を、Zeta−Sizer 3000HS(Malvern Instruments)で測定した。より高いpHで、コアセルベート組成物を、微量遠心管(Eppendorf)で、2500rpmで、25℃で2分間遠心分離し、コアセルベート相を回収した。両相の容量を測定した。コアセルベート相を凍結乾燥させ、秤量し、それらの質量および濃度を判定した。
【0060】
pH範囲3〜10にわたり、1:1のモル比のリン酸塩対アミン側鎖(50mg/mlの結合濃度)で混合した1および2の相挙動を図11Aに示す。イオン化可能な全側鎖濃度に対して正規化した、共重合体の正味電荷計算値を図11Bに示す。還元剤のアスコルビン酸塩を、DOPAに対して1:5のモル比で添加し、O2によるDOPAの酸化と、それに続く上昇したpHでの架橋を遅らせた。低いpHで、高分子電解質は、コロイド状高分子電解質複合体(PEC)の安定な乳状溶液を形成した。動的光散乱によって測定したpH2.1でのPECの平均直径は、狭い分散度で360nmであり、pH4.0で1080nmまで拡大した(図11C)。pH3.6での正から負へのゼータ電位のクロスオーバーは、複合体の計算されたpH依存性の正味電荷と適合した(図11B)。複合体が凝集したことから、粒子サイズをpH4超で正確に測定できなかった。実効電荷がリン酸塩側鎖の脱プロトン化によって増加したことから、共重合体は凝集して濃厚な第2相となった。pH5.1で、分離した相は、緩やかな低密度の沈殿物の特性を有した。pH7.2および8.3で、濃厚相は、凝集性液体の複合コアセルベートの特性を有した(図12)。共重合体は、コアセルベート相において、約3倍濃縮され、それぞれ148および153mg/mlになった。pH9.5で、高分子電解質混合物は、濃厚な非液体イオン性ゲルを形成した。pH10で、共重合体は、溶液中に入り、ドーパキノンおよびアミン側鎖を介して自発的に架橋し、清澄なヒドロゲルになった。
【0061】
キレート剤EDTAを用いて二価カチオンを抽出した結果、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)の管の圧縮力が50%低下し、接着性が10倍低下し、かつ接着剤の多孔質構造が崩壊した。模倣高分子電解質の相挙動に対する二価カチオンの効果を、0:1〜1:1の範囲の二価カチオン対リン酸塩側鎖比とともに1:1〜0:1の範囲のアミン対リン酸塩側鎖比で、1および2を混合し、コアセルベート相図を作成することによって検討した(図13)。pHを、海水のpHである8.2で固定し、二価カチオンを、元素分析による測定で、天然接着剤におけるMg2+/Ca2+比に近似する、Mg2+およびCa2+の4:1の混合物として添加した。最高質量のコアセルベート(暗灰色の四角)が、より高いアミン対リン酸塩側鎖比およびより低い二価カチオン対リン酸塩側鎖比を有する混合物中で生じた。より低いポリアミン比を有する混合物は、より高い二価カチオン/リン酸塩側鎖比であっても清澄であった(白色の四角)。より高いアミン/リン酸塩比および二価カチオン/リン酸塩比で、溶液は、わずかに沈殿物を伴って混濁していたが(薄灰色の四角)、PECを含有する溶液と比べてそれほど混濁していなかった(中間灰色の四角)。
【0062】
機械的結合試験。結合試験標本(約1cm3)を、地元の食料品店から得たウシ大腿骨から帯のこで切断し、320グリットのサンドペーパーで磨き、−20℃で保存した。DOPA側鎖に対して1:2のモル比のNaIO4を、2つの湿らせた骨標本各々の1面に一様に適用した。1cm2の骨界面間の空間を完全に満たすのに十分な容量40mlの試験コアセルベート溶液をピペットで適用し、骨標本を互いに圧締し、少し過剰な接着剤を搾り出し、クランプし、すぐにPBS(20mM PO4、150mM NaCl、pH7.4)に浸したガーゼで包んだ。適用したコアセルベートは、アスコルビン酸塩を、DOPAに対して1:5のモル比で含有し、早期架橋を阻止した。結合された標本を、100%の湿度を維持するために含浸スポンジを有する密封容器内で、37℃で少なくとも24時間インキュベートした。参照標本を、全く同様に、40mlのLoctite 401強力瞬間接着剤と結合させた。比較用に利用可能な硬組織用の医療用接着剤が全くないことから、市販の非医療グレードのシアノアクリル酸塩を使用した。機械的試験を、1kgのロードセルを使用してカスタム製の材料試験システムで実施した。機器を制御し、LabView(National Instruments)を使用してデータを得た。1つの骨の結合対を、結合界面から1mm横方向にクランプした。第2の骨を、結合界面での1mm横方向に位置するダルブレード(dull blade)に対して0.02mm/sのクロスヘッド速度で圧迫した。湿った標本を解き放って(unwrapped)乾燥を阻止した直後、結合力試験を室温で実施した。試験後、破壊モードについて結合を試験した。結合面積を、紙面上で骨接触表面の輪郭を追跡し、トレースを切り抜き、その面積を切り抜かれた紙の重量から判定することによって測定した。少なくとも6つの標本を、各条件について試験した。
【0063】
破壊時の剛性率および力を、図13において、アスタリスクの印が付いた3つのコアセルベート組成物で湿らしながら結合されたウシ皮質骨標本で測定した。3つの組成物中でのコアセルベート密度は、二価カチオン比(それぞれ120、125、および130mg/mlに対する)の増加とともに増加した。完全に水和した標本の剛性率および結合力の双方は、二価カチオン濃度の増加とともに増大し、市販のシアノアクリル酸塩接着剤で結合された湿らせた骨の力が37%に達した(図14A)。臨床用途で比較用の骨接着剤が全くないことから、シアノアクリル酸塩接着剤を基準点として使用した。模倣接着剤の力はまた、350kPaであると想定される天然フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)接着剤、および時期に応じて320〜750kPaの範囲であると想定されるムラサキガイ足接着剤の力の約1/3である。ほぼすべての場合、接着結合することなく、両方の骨界面上に接着剤が残り、それは組成物がハイドロキシアパタイトと強力な界面結合を形成することを示唆した。結合は寸法的に安定的であり、pH7.2のPBSへの完全な浸漬後、数か月間、大した縮小も腫脹も生じなかった(図14B)。硬化および水への長期間の暴露の間での寸法の安定性は、有用な骨接着剤のための重要な要件である。
【0064】
ドーパミン媒介性の共重合体架橋。1:1のモル比でのNaIO4対3の溶液の添加により、その直後、量的に、DOPA(280nm)がドーパキノン(392nm)へと酸化された。反応性キノンがdiDOPA共有架橋を形成すると、数分以内にキニーネのピークが崩壊し、広い一般的吸収が生じた(図15、左上)。キノンと第1級アミンの間の架橋により(図15、左下)、diDOPA架橋より広い一般的吸収が生じた。したがって、ドーパミンの酸化および架橋の化学反応は、ドーパミン共重合体における想定通りの挙動であった。ドーパミン共重合体は、酸化架橋の結果として、ハイドロゲルを迅速に形成した(図15、AおよびC)。酸化されたホスホドーパミン(phosphodopamine)3は、自らゲル化しなかったが(図15B)、4と混合されるとき、迅速にゲル化した(図15D)。PO4共重合体間でのdiDOPA分子間架橋は阻害されたが、DOPA−アミン分子間架橋は阻害されなかった。これは、合成接着剤を調合し、送達するのに有用でありうる架橋制御機構を提供する。
【0065】
pHに誘起されるDOPA媒介性架橋。DOPA酸化のpH依存性および動態を検討するため、ドーパミン共重合体の架橋をUV−Vis分光法によって評価した。p(EGMP[92]−DMA[8])(3)の場合の結果を図16に示す。化学量論量のNaIO4の添加後、経時的に紫外−可視スペクトルが得られた。pH5.0(上)で、ドーパキノンの吸光度(398nm)は約15分以内で最大であり、数時間安定性を維持した(差し込み図)。pH6.0で、398nmでの吸光度は1分経過しないうちにピークに達し、広い吸光度に至り、310および525nmでピークが認められた。ゲルが形成しないことから、広い吸光度はドーパキノン架橋によるものではない(図16)。比較として、6は、低いpHで酸化され、架橋されたが、速度は有意により低かった(図示しない)。
【0066】
結果は、ホスホドーパミン共重合体中で、ドーパキノンが低いpHで安定であり、diDOPA架橋がより高いpHで阻害されたことを示す。ポリアミンの存在下で、共有架橋が分子間アミン−DOPA結合の方に導かれた。それが合成接着剤の制御送達および凝結への経路を提示することから、これは重要な観察である。
【0067】
インビトロ細胞毒性。3および4の溶液(各々、40wt%)を低いpHで混合し、高分子電解質複合体を形成した。溶液を、NaIO4で部分的に酸化し、無菌のガラス製カバースリップへの適用直前にNaOHで塩基性化した。接着剤で処理したカバースリップを、培養プレートウェルの底部に置き、血清を含有する培地中のヒト包皮線維芽細胞、ヒト気管線維芽細胞、およびラット初代星状細胞を、30K細胞/ウェルで別々のウェルに添加した(図17)。24時間後、細胞を4%パラホルムアルデヒドで固定し、次いで中間フィラメントタンパク質ビメンチンについて免疫染色し、細胞形態を画像化し(緑、A〜B)、細胞周囲フィブロネクチンについて、ECM分泌を評価し(赤、B)、グリア線維性タンパク質について、一次星状細胞形態を画像化し(緑、C)、DAPIについて、核を画像化した(青、C)。接着剤の顆粒塊(granular globs)は、オレンジがかった赤に自己蛍光した(A〜C)。
【0068】
代表的画像(図17)においては、すべての細胞種が、接着剤を伴わなくてもガラス上で成長する細胞と区別できない形態を有した。細胞は、正常な運動性を有し、いくつかの場合、接着剤に直に接触するプロセスに至った。毒性は全く認められなかった。
【0069】
ラット頭蓋冠欠陥モデル。断片化された欠陥の発生および接着複合コアセルベートでの修復については、図18A〜Fに示される。雄Sprague Dawleyラット(256〜290g)(Harlan)を、ケタミン(65mg/kg)、キシラジン(7.5mg/kg)、およびアセプロマジン(0.5mg/kg)の混合物で麻酔した。最深度の麻酔で、目を眼軟膏で覆い、頭部の毛をそり、頭皮をイソプロパノールおよびブタジエンで消毒した。定位フレームで前処理したラットの場合、約5000RPMで動作する圧縮空気駆動式ドリルを、定位の目の細かいマニピュレーターを使用して下げた。無菌生理食塩水またはPBSを開頭術部位で連続的に適用する間、カスタム製のトレフィンツールを(実験において使用した年齢のラットの頭蓋骨の厚さとして予め測定した)600μに下げた。結果は頭蓋骨を通る丸い正確な穴で、下部の硬膜または脈管系に対する効果はほとんど認められなかった(図18A〜B)。骨プラグは、細い曲線状の鉗子で回復し、止血鉗子および精巧な骨鉗子を使用して断片に破壊された(図18B)。骨片を欠陥部に戻し(図18C)、5μlの試験接着剤(骨折の適用の直前に混合された3および4)をマイクロピペッタで適用した(図18D)。低粘度の接着溶液(送達の直前に硬化溶液と混合した予備成形PECS)は、容易かつ巧妙に骨折部に逃れた。5分以内に断片は十分に固定され、それらは変位することなく、鉗子で厳密に穿刺することができた。接着剤は、硬化するにつれて、茶褐色に変化し続けた(図18E〜F)。
【0070】
本願全体を通して、様々な出版物が参照される。本明細書中に記載の化合物、組成物および方法をより完全に説明するため、これらの出版物のそれら全体にわたる開示内容は、本明細書で参照により本願に援用される。
【0071】
様々な修飾および変形が、本明細書中に記載の化合物、組成物および方法に対してなされうる。本明細書中に記載の化合物、組成物および方法の他の態様は、本明細書の考察ならびに本明細書で開示される化合物、組成物および方法の実行についての検討事項から自明であろう。明細書および例が典型的なものと考えられることが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは、合成化合物であり、かつ前記ポリカチオンおよび/またはポリアニオンは、架橋するときに互いに架橋される、接着複合コアセルベート。
【請求項2】
前記ポリカチオンは、ポリアミノ化合物を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項3】
前記ポリカチオンは、1つ以上のペンダントアミノ基を含むポリアクリル酸塩を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項4】
前記ポリカチオンは、1つ以上のペンダントイミダゾール基を含むポリアクリル酸塩を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項5】
前記ポリカチオンは、式I
【化1】

(式中、R1、R2、およびR3は、独立して水素またはアルキル基であり、Xは酸素またはNR5(R5は水素またはアルキル基である)であり、かつmは1〜10である)を含む少なくとも1つの断片またはその薬学的に許容される塩を含むポリマーを含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項6】
1、R2、およびR3はメチルであり、XはNHであり、かつmは2である、請求項5に記載のコアセルベート。
【請求項7】
前記ポリカチオンは、フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)から生成される正に帯電したタンパク質を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項8】
前記ポリアミノ化合物は、10〜90モル%の第1級、第2級、または第3級アミノ基を含む、請求項2に記載のコアセルベート。
【請求項9】
前記ポリアニオンは、1つ以上の硫酸塩、スルホン酸塩、カルボン酸塩、ホウ酸塩、ボロン酸塩、ホスホン酸塩、またはリン酸基を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項10】
前記ポリアニオンは、ポリリン酸塩化合物を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項11】
前記ポリアニオンは、1つ以上のペンダントリン酸基を含むポリアクリル酸塩を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項12】
前記ポリアニオンは、式II
【化2】

(式中、R4は水素またはアルキル基であり、かつnは1〜10である)を含む少なくとも1つの断片またはその薬学的に許容される塩を含むポリマーを含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項13】
4はメチルであり、かつnは2である、請求項12に記載のコアセルベート。
【請求項14】
前記ポリリン酸塩化合物は、10〜90モル%のリン酸基を含む、請求項11に記載のコアセルベート。
【請求項15】
前記ポリアニオンは、ポリホスホセリンを含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項16】
前記ポリアニオンは、前記フラグマトポマ・カリフォルニカ(P.californica)遺伝子から生成されるポリホスホセリンを含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項17】
前記多価カチオンは、1種以上の遷移金属イオンまたは希土類金属を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項18】
前記多価カチオンは、1種以上の二価カチオンを含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項19】
前記多価カチオンは、Ca+2およびMg+2を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項20】
前記組成物は、生体適合性でありかつ生体分解性である、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項21】
前記組成物は、前記複合体中にカプセル化された1種以上の生物活性物質をさらに含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項22】
互いに架橋することが可能な前記基は同じであるかまたは異なる、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項23】
前記ポリカチオン上の前記架橋基は求核基を含み、かつ前記ポリアニオン上の前記架橋基は求電子基を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項24】
前記ポリカチオンおよびポリアニオン上の前記架橋基は、酸化を受けることが可能なヒドロキシル芳香族化合物を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項25】
前記ポリアニオン上の前記架橋基は、DOPA残基またはカテコール残基を含み、かつ前記ポリカチオンは、前記架橋基と反応して共有結合を形成することが可能な求核基を含む、請求項1に記載のコアセルベート。
【請求項26】
(a)少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを混合するステップを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり、かつ前記ポリカチオンおよび/またはポリアニオンは、互いに架橋することが可能な少なくとも1つの基を含む、高分子電解質複合体を調製するステップと、
(b)前記高分子電解質複合体のpH、少なくとも1種の二価カチオンの濃度、またはこれらの組み合わせを調整し、前記接着複合コアセルベートを生成するステップと、
を含むプロセスによって生成される接着複合コアセルベート。
【請求項27】
前記コアセルベートはその場で生成される、請求項26に記載のコアセルベート。
【請求項28】
ステップ(a)は4未満のpHで実施され、かつステップ(b)は前記pHを上昇させるステップを含む、請求項26に記載のコアセルベート。
【請求項29】
ステップ(b)は、前記高分子電解質複合体の前記pHを7.0以上のpHに上昇させるステップを含む、請求項26に記載のコアセルベート。
【請求項30】
ステップ(b)の後、前記ポリカチオンおよびポリアニオンの間での前記架橋を促進するため、前記複合コアセルベートを酸化剤と接触させるステップをさらに含む、請求項26に記載のコアセルベート。
【請求項31】
前記酸化剤は、O2、NaIO4、過酸化物、または遷移金属酸化剤を含む、請求項30に記載のコアセルベート。
【請求項32】
少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり、かつ前記ポリカチオンおよび/またはポリアニオンは、互いに架橋することが可能な少なくとも1つの基を含む、高分子電解質複合体。
【請求項33】
少なくとも1種のポリカチオン、少なくとも1種のポリアニオン、および少なくとも1種の多価カチオンを含み、ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり、かつ前記ポリカチオンおよび/またはポリアニオンは、互いに架橋することが可能な少なくとも1つの基を含む、複合コアセルベート。
【請求項34】
接着複合コアセルベートを基質に適用するための方法であって、前記基質に、(1)第1のpHを有する請求項26に記載の高分子電解質複合体および(2)第2のpHを有する酸化剤を含む溶液を同時に適用するステップを含み、ここで前記第2のpHは前記第1のpHより高い、方法。
【請求項35】
接着複合コアセルベートを基質に適用するための方法であって、前記基質に、(1)第1のpHを有するポリカチオンを含む第1の溶液および(2)第2のpHを有するポリアニオンを含む第2の溶液を同時に適用するステップを含み、ここで(i)前記第1のpHが7未満である場合、前記第2のpHは7を超え;(ii)前記第1のpHが7を超える場合、前記第2のpHは7未満であり;(iii)ここで少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり;(iv)前記ポリアニオンは、前記ポリカチオンと架橋することが可能な少なくとも1つの基を含み;(v)前記第1の溶液および/または前記第2の溶液は少なくとも1種の多価カチオンを含み;かつ(vi)前記第1の溶液および/または第2の溶液は酸化剤を含み、ここで前記第1の溶液および第2の溶液の混合時、前記ポリアニオンおよびポリカチオンは互いに架橋し、前記接着複合コアセルベートを生成する、方法。
【請求項36】
接着複合コアセルベートを基質に適用するための方法であって、(1)前記基質に、ポリカチオンを含む第1の溶液を適用するステップと、その後、(2)ポリアニオンおよび酸化剤を含む第2の溶液を適用するステップと、を含み、ここで(i)少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり;(ii)前記ポリアニオンは、前記ポリカチオンと架橋することが可能な少なくとも1つの基を含み;(iii)前記第1の溶液および/または前記第2の溶液は、少なくとも1種の多価カチオンを含み;かつ前記第2の溶液のpHは前記第1の溶液のpHより大きく、ここで前記ポリアニオンおよびポリカチオンは互いに架橋し、前記接着複合コアセルベートを生成する、方法。
【請求項37】
基質に接着剤を適用するための方法であって、(1)前記基質に、ポリアニオンを含む第1の溶液を適用するステップと、その後、(2)ポリカチオンおよび酸化剤を含む第2の溶液を適用するステップと、を含み、ここで(i)少なくとも1種のポリカチオンまたはポリアニオンは合成化合物であり;(ii)前記ポリアニオンは、前記ポリカチオンと架橋することが可能な少なくとも1つの基を含み;(iii)前記第1の溶液および/または前記第2の溶液は、少なくとも1種の多価カチオンを含み;かつ前記第2の溶液のpHは前記第1の溶液のpHより大きく、ここで前記ポリアニオンおよびポリカチオンは互いに架橋し、前記接着複合コアセルベートを生成する、方法。
【請求項38】
前記基質は骨または移植可能なデバイスを含む、請求項34〜37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
被検体における骨折を修復するための方法であって、前記骨折した骨を、請求項1〜31のいずれか一項に記載の接着複合コアセルベートと接触させるステップを含む、方法。
【請求項40】
前記方法はインビトロである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記方法はインビボである、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記骨折は、完全骨折、不完全骨折、線状骨折、横骨折、斜骨折、圧迫骨折、らせん骨折、粉砕骨折、圧縮骨折(compacted fracture)、または開放性骨折を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項43】
前記骨折は関節内骨折を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項44】
前記骨折は頭蓋顔面骨折を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項45】
前記方法は、骨の骨折片を既存の骨に接着させるステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物は60秒以内に固まる、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
金属基質を被検体の骨に接着させるための方法であって、前記骨を、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップと、前記金属基質を前記コーティングされた骨に適用するステップと、を含む、方法。
【請求項48】
骨−組織足場を被検体の骨に接着させるための方法であって、前記骨および組織を請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物と接触させるステップと、前記骨−組織足場を前記骨および組織に適用するステップと、を含む、方法。
【請求項49】
前記組織は、軟骨、靱帯、腱、軟組織、器官、またはその合成誘導体を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記足場は、前記骨および組織の成長または修復を促進する1種以上の薬剤を含む、請求項48に記載の方法。
【請求項51】
歯におけるひびを修復するための方法であって、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を前記ひびに適用するステップを含む、方法。
【請求項52】
歯科インプラントを固定するための方法であって、請求項1〜31のいずれか一項に記載の組成物を口腔の基質に適用するステップと、前記歯科インプラントを前記基質に結合させるステップと、を含む、方法。
【請求項53】
前記歯科インプラントは歯冠または義歯を含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
1種以上の生物活性物質を送達するための方法であって、請求項1〜31のいずれか一項に記載のコアセルベートを被検体に投与するステップを含む、方法。
【請求項55】
(1)高分子骨格、(2)前記骨格に結合された1つ以上のリン酸基、および(3)酸化剤の存在下で酸化を受けることが可能な、前記骨格に結合された1つ以上のヒドロキシル芳香族基を含むポリマー。
【請求項56】
前記高分子骨格は、アクリル酸塩の重合から得られる、請求項55に記載のポリマー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18A】
image rotate

【図18B】
image rotate

【図18C】
image rotate

【図18D】
image rotate

【図18E】
image rotate

【図18F】
image rotate

【図19】
image rotate


【公表番号】特表2011−510152(P2011−510152A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−544295(P2010−544295)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/083311
【国際公開番号】WO2009/094060
【国際公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(505191906)ユニバーシティ オブ ユタ リサーチ ファンデーション (5)
【Fターム(参考)】