説明

接続ピンと薄板製構成部材との間の電気的な接続のための装置

本発明は、接続ピンと薄板製構成部材との間の解離可能な電気的な接続のための装置に関する。接続ピンと薄板製構成部材との間の堅牢な電気接続部を形成するために、本発明に基づく構成では、薄板製構成部材に少なくとも1つの貫通孔を設けてあり、貫通孔内に接続部材のスリーブを導電可能に取り付けてあり、スリーブはばね部材を包囲しており、接続ピンは組み付け状態でスリーブ内のばね部材によって受容されていて、ばね部材及びスリーブを介して薄板製構成部材と電気的に接続されている。スリーブ内に装着されたばね部材によって、装置は高い耐電流性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接続ピンと薄板製構成部材との間の解離可能な電気的な接続のための装置に関する。
【0002】
電気的な装置若しくは電気機器のケーシング要素として使用される薄板部材は、たいていは電気的な接続装置を必要としている。この場合に電気的な接続装置は、例えば接地用接続装置若しくは静電気放電装置として用いられる。特に接地用接続装置は、装置若しくは機器の耐用年数にわたって過電流の際の良好な接続を保証する安全装置として形成されていなければならない。従来は種々の接続手段、例えばねじ結合部、差し込み結合部、若しくは溶着された或いはリベット止めされた接続部材などを用いている。
【0003】
国際公開WO 00/28799号パンフレットに記載の手段では、電気的な扁平構成ユニットの導電性のフロント部材は位置決め兼接続部材を介して、構成ユニット支持体の案内レール及び横方向結合レールに電気的に接続されるようになっている。電気的な扁平構成ユニットを支持する構成ユニット支持体は、扁平構成ユニットの差し込みのための組み付けスペースを備えている。この場合に、導電性の材料から成っていて相対して配置された横方向結合レールを用いてある。横方向結合レールは、組み付けスペース内への扁平構成ユニットの挿入案内のための案内レールを保持している。案内レールは、導電性の材料から成る接点受容部の装着のための保持装置を有しており、接点受容部を横方向結合レールに低抵抗で接続するようになっている。接点受容部は所定の接触領域で導電性のフロント部材に接続される。フロント部材は、構成ユニット支持体の差し込み側に向かって突出する位置決め兼接続部材を有しており、位置決め兼接続部材は、組み付けスペース内への扁平構成ユニットの挿入に際して接点受容部の接触領域と電気的に低抵抗でかつ高い導電性でもって接続されるようになっている。さらに接点受容部内には、該接点受容部と位置決め兼接続部材との間の付加的な接続部材としてのかご形ばねを組み込むようになっている。
【0004】
公知の前述の接続装置は、必要な構成部材の数の多いことに基づき極めて煩雑で、かつ構成部材の高い製造コスト及び組み立てコストを必要とするものである。特に構造の複雑な接点受容部の製造には高価な特殊金型を用いなければならず、このような特殊金型によっては製造個数の多い場合にしか経済的な製造は行われない。ベース部材及び/又はカバー部材にすでに扁平構成ユニット用の案内レールを統合してある、つまり組み込んである支持装置の接地用接続は、前述の公知の接続装置では不可能である。
【0005】
本発明の課題は、冒頭に述べた形式の装置を改善して、該装置によって薄板製構成部材の耐久性のある電気的な接続を可能にすることである。
【0006】
接続ピンと薄板製構成部材との間の堅牢な電気接続部を形成するために、本発明に基づく構成では、薄板製構成部材に少なくとも1つの貫通孔を設けてあり、貫通孔内に接続部材のスリーブを導電可能に取り付けてあり、スリーブはばね部材を包囲しており、接続ピンは組み付け状態でスリーブ内のばね部材によって受容されていて、ばね部材及びスリーブを介して薄板製構成部材と導電可能に、つまり電気的に接続されている。本発明に基づく装置は、スリーブ内に装着されたばね部材によって高い耐電流性を有している。
【0007】
誤った組み付けを避けるために本発明の有利な実施態様に基づき、スリーブは円筒状(シリンダー状)のスリーブ本体、及びスリーブ本体の端面側に配置されたストッパー(フランジ)を有しており、薄板製構成部材の貫通孔は、スリーブのスリーブ本体に対応する内径を有している。
【0008】
本発明の別の実施態様に基づき、スリーブは、ストッパーとスリーブ本体との間に環状の溝を備えていて、薄板製構成部材の貫通孔内へのスリーブの圧入によって前記溝の領域で薄板製構成部材と結合されており、これによって耐久性のある電気接続部(電気的な結合部)並びに薄板製構成部材内でのスリーブの確実な座着を達成している。
【0009】
さらにスリーブを薄板製構成部材と解離可能に接続若しくは結合するために、本発明の実施態様に基づき、円筒状のスリーブ本体は雄ねじを有しており、スリーブは薄板製構成部材の貫通孔内へのねじ込みによって薄板製構成部材に結合されている。
【0010】
内側のストッパーの方向での接続ピンの運動の際のばね部材(ばね要素)の移動を確実に阻止するために、スリーブは内径の異なる2つの区分(領域)を有しており、両方の区分間の移行部はばね部材のための内側のストッパーとして形成されており、この場合にばね部材は、スリーブの内径の大きい方の区分に配置されている。これによってばね部材は、接続ピンの差し込みの際にも接続ピンの抜き出しの際にもばね部材の移動運動を確実に防止されるようになっている。内側のストッパーと相対する側でばね部材に続けて若しくは隣接して止め輪を設けてあると、接続ピンの、前記内側のストッパーから離れる方向での運動に際しても、ばね部材はその移動運動を確実に防止されるようになっている。
【0011】
止め輪(確保リング、固定リング又はロックリングとも称される)を、特に簡単でしかも摩擦力によって堅く結合され若しくは固定されるものとして構成するために、円筒状の止め輪は、長手方向(軸線方向)にスリットの切られた締め付けスリーブ若しくはスナップスリーブ(スナップリング)として形成されている。
【0012】
止め輪の組み付けの際に止め輪の位置を正確に規定するために、スリーブは1つの実施態様では止め輪の領域に、ばね部材の領域における内径よりも大きな内径を有しており、つまり止め輪とばね部材との間に段部を設けてある。さらに止め輪の内径は、接続ピンが止め輪内を貫通でき、かつ接続ピンの挿入長さ若しくは挿入深さが止め輪によって制限されないように大きく選ばれている。
【0013】
本発明の有利な実施態様に基づき、薄板製構成部材は、構成ユニット支持体のベース部材及び/又はカバー部材であり、若しくは構成ユニット支持体のベース部材の一部分及び/又はカバー部材の一部分であり、ベース部材若しくはカバー部材の、垂直方向へ延びる前側(正面側)の縁曲げ部分若しくは壁部分に、1つ若しくは複数の接続部材の受容のための1つ若しくは複数の貫通孔を有しており、これによって、スリーブを機械的に頑丈にかつ電気的に確実にベース部材及び/又はカバー部材と結合することのできる経済的な薄板製構成部材が得られている。
【0014】
ばね部材を備えたスリーブの受容のための貫通孔の位置は、本発明のさらに有利な実施態様に基づき、構成ユニット支持体内へ挿入される扁平構成ユニットのフロント部材に対する接続ピンの位置と合致しており、これによって、接続ピンとベース部材及び/又はカバー部材との間の導電性で耐電流性の高い頑丈な結合部が得られるようになっている。
【0015】
次に本発明を図示の実施例に基づき詳細に説明する。図面において、
図1は、薄板製構成部材及び接続ピンの斜視図であり、
図2は、接続部材のスリーブ並びにばね部材の側面及び正面図であり、
図3は、組み込まれたばね部材及び止め輪を備える接続部材及び該接続部材の前に位置する接続ピンの縦断面図であり、
図4は、図3の止め輪の側面及び端面図であり、
図5は、スリーブの装着された薄板製構成部材の断面図である。
【0016】
図1には、薄板製構成部材40を斜視図で示してあり、薄板製構成部材は使用状態で水平に位置するベース面43を有しており、ベース面(ベース平面部)は垂直な縁曲げ部42へ移行している。このような薄板製構成部材40は例えば、扁平構成ユニットのための受容装置のベースプレートとして構成ユニット支持体内に設けられるようになっているものである。ベース面43は、図示省略の扁平構成ユニットの受容のための案内部材(図示省略)を有している。
【0017】
垂直な縁曲げ部42内に接続部材1を装着してあり、接続部材内に接続ピン50を挿入するようになっている。接続ピン50は、例えば扁平構成ユニット(図示省略)のフロントプレート(正面プレート)と接続するために、構成ユニット支持体の案内部内へ扁平構成ユニットを挿入した状態で、接続部材1内に押し込まれるようになっている。接続部材1の横に孔44を設けてある。該孔を介して構成要素例えば、接続ピンの備えられる扁平構成ユニットのいわゆるフロント部材が、ねじによって固定されるようになっている。
【0018】
図2には、スリーブ10並びにばね部材20が正面若しくは端面及び側面を示してある。この場合に矢印は、スリーブ10内へのばね部材20の組込み方向を表している。スリーブ10は円筒状のスリーブ本体13から成っており、スリーブ本体は端面側で溝12を介してストッパー11へ移行している。ばね部材20は、前側及び後側の円筒状の区分21,23並びに該両方の区分(領域)間に位置するばね接続薄片部分22から成っている。
【0019】
接続部材1の組立状態を図3に示してあり、図3は図2のB−B線に沿った断面図である。この場合にばね部材20はスリーブ10内に完全に差し込まれていて、後ろ側から止め輪30によって確保され、つまりロックされている。ばね部材20及び止め輪30の位置決めのために、スリーブ10は異なる複数の内径で形成されており、つまり互いに異なる直径の区分間にばね部材20のための内側のストッパー14,15を形成してある。ばね部材20は、ストッパー11と逆の側からスリーブ10内への組み立てに際して、前側若しくは正面側のストッパー14まで差し込まれる。次いで止め輪30を挿入するようになっている。止め輪の挿入の後に、接続ピン50は前側から接続部材1内に差し込まれる。この場合にばね接続薄片部分22が、接続ピン50に対する良好な電気接続を保証している。止め輪30は、ばね部材20が接続ピン50の差し込みに際してスリーブ10から押し出されてしまうことを阻止している。
【0020】
図4は、止め輪30の有利な実施例を示している。止め輪30は円筒状の輪郭を有しており、この場合に止め輪の外径はスリーブ10の内径よりもわずかに大きくなっている。止め輪30の周壁は、長手方向(長手方向)に延びる1つの開口部31を有している。スリーブ10内への止め輪30の挿入に際して、止め輪30は止め輪のばね力に抗して圧縮され、すなわち前記開口部(スリット)の幅は減少され、つまり狭められる。ばね力(開拡力)によって止め輪30はスリーブ10内に摩擦力で保持され、つまり摩擦結合される。
【0021】
図5は、図1の薄板製構成部材40及び該薄板製構成部材に圧入装着された接続部材1の断面を示している。接続部材1を図5で左側から、つまり前側若しくは正面側から薄板製構成部材40の貫通孔41内へ冷間変形させつつ、つまり弾性変形させつつ押し込む、つまり圧入する圧入装着によって、薄板製構成部材40と接続部材1とは互いに形状結合され、つまり互いに形状による束縛を受けるようになっている。この場合に薄板製構成部材40の上側のプレート状部分と下側のプレート状部分との間の垂直な部分は、スリーブ10の溝12の領域でスリーブのストッパー11の後ろ側に接触し、つまり係合している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】薄板製構成部材及び接続ピンの斜視図
【図2】接続部材のスリーブ並びにばね部材の側面及び正面図
【図3】組み込まれたばね部材及び止め輪を備える接続部材の縦断面図
【図4】図3の止め輪の側面及び端面図
【図5】スリーブの装着された薄板製構成部材の断面図
【符号の説明】
【0023】
1 接続部材、 10 スリーブ、 12 溝、 20 ばね部材、 30 止め輪、 40 薄板製構成部材、 50 接続ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続ピンと薄板製構成部材との間の解離可能な電気的な接続のための装置において、薄板製構成部材(40)に少なくとも1つの貫通孔(41)を設けてあり、貫通孔(41)内に接続部材(1)のスリーブ(10)を導電可能に取り付けてあり、スリーブ(10)はばね部材(20)を包囲しており、接続ピン(50)は組み付け状態でスリーブ(10)内のばね部材(20)によって受容されていて、ばね部材(20)及びスリーブ(10)を介して薄板製構成部材(40)と電気的に接続されていることを特徴とする、接続ピンと薄板製構成部材との間の電気的な接続のための装置。
【請求項2】
スリーブ(10)は円筒状のスリーブ本体(13)、及びスリーブ本体の端面側のストッパー(11)を有しており、薄板製構成部材(40)の貫通孔(41)は、前記スリーブ本体に対応する内径を有している請求項1に記載の装置。
【請求項3】
スリーブ(10)は、ストッパー(11)とスリーブ本体(13)との間に溝(12)を備えていて、薄板製構成部材(40)の貫通孔内への圧入によって溝(12)の領域で薄板製構成部材(40)と結合されている請求項2に記載の装置。
【請求項4】
円筒状のスリーブ本体(13)は雄ねじを有しており、スリーブ(10)は雄ねじによるねじ結合を介して薄板製構成部材(40)と結合されている請求項2に記載の装置。
【請求項5】
スリーブ(10)は内径の異なる2つの区分を有しており、両方の区分間の移行部はばね部材(20)のための内側のストッパー(14)として形成されており、ばね部材(20)は、スリーブの内径の大きい方の区分内に配置されている請求項1から4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
スリーブの内側のストッパー(14)と相対する側でばね部材(20)に接続して止め輪(30)を設けてある請求項1から5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
止め輪(30)は、長手方向にスリットの切られた締め付けスリーブとして形成されている請求項1から6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
スリーブ(10)は止め輪(30)の領域に、ばね部材(20)の領域における内径よりも大きな内径を有している請求項1から7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
薄板製構成部材(40)は、構成ユニット支持体のベース部材及び/又はカバー部材であり、若しくは構成ユニット支持体のベース部材の一部分及び/又はカバー部材の一部分であり、ベース部材若しくはカバー部材の、垂直方向へ延びる前側の縁曲げ部分に、1つ若しくは複数の接続部材(1)の受容のための1つ若しくは複数の貫通孔(41)を有している請求項1から8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
ばね部材(20)を備えたスリーブ(10)の受容のための貫通孔(41)の位置は、構成ユニット支持体内へ挿入される扁平構成ユニットのフロント部材に対する接続ピン(50)の位置と合致している請求項1から9のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−519424(P2008−519424A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540525(P2007−540525)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011336
【国際公開番号】WO2006/050804
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(502137570)リッタル アールイーエス エレクトロニック システムズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (6)
【氏名又は名称原語表記】RITTAL RES Electronic Systems GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Auf dem Stuetzelberg, D−35745 Herborn, Germany
【Fターム(参考)】