説明

接続構造体の製造方法及び異方性導電材料

【課題】接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る接続構造体1の製造方法は、第1の接続対象部材2の上面2aに、導電性粒子5を含む異方性導電材料を塗布し、異方性導電材料層3Aを形成する工程と、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3Bの粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内であるように、異方性導電材料層3AをBステージ化する工程と、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4をさらに積層する工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の導電性粒子を含む異方性導電材料を用いた接続構造体の製造方法であって、例えば、フレキシブルプリント基板、ガラス基板及び半導体チップなどの様々な接続対象部材の電極間を、導電性粒子を介して電気的に接続する接続構造体の製造方法、並びに異方性導電材料に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト、異方性導電インク及び異方性導電粘接着剤等の異方性導電材料が広く知られている。これらの異方性導電材料では、ペースト、インク又は樹脂中に複数の導電性粒子が分散されている。
【0003】
上記異方性導電材料は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、又は半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用されている。
【0004】
上記異方性導電材料の一例として、下記の特許文献1には、エポキシ樹脂と、ゴム状ポリマー粒子と、熱活性な潜在性エポキシ硬化剤と、高軟化点ポリマー粒子と、導電性粒子とを含有する異方性導電材料が開示されている。この異方性導電材料により、例えば、半導体チップの電極とガラス基板の電極とを電気的に接続する際には、ガラス基板上に、導電性粒子を含む異方性導電材料を配置する。次に、半導体チップを積層して、加熱及び加圧する。これにより、異方性導電材料を硬化させて、かつ導電性粒子を介して電極間を電気的に接続し、接続構造体を得る。
【0005】
また、下記の特許文献2には、25℃及び2.5pmでの粘度をη1、25℃及び20rpmでの粘度をη2としたときに、下記式(A)及び(B)を満たす異方性導電接着剤が開示されている。
【0006】
50Pa・s≦η2≦200Pa・s ・・・式(A)
1.5≦η1/η2≦4.3 ・・・式(B)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−345010号公報
【特許文献2】特開2003−064330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1,2に記載のような従来の異方性導電材料では、上記電極間の電気的な接続の際に、ガラス基板上に塗布された異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子が、硬化前に大きく流動することがある。このため、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できないことがある。さらに、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を配置できなかったり、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続されたりすることがある。このため、得られた接続構造体の導通信頼性が低いことがある。
【0009】
本発明の目的は、接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を高めることができる接続構造体の製造方法、並びに異方性導電材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の広い局面によれば、第1の接続対象部材の上面に、導電性粒子を含む異方性導電材料を塗布し、異方性導電材料層を形成する工程と、該異方性導電材料層に光を照射することにより、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内となるように、上記異方性導電材料層をBステージ化する工程と、Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、第2の接続対象部材をさらに積層する工程とを備える、接続構造体の製造方法が提供される。
【0011】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、上記異方性導電材料として、硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有する異方性導電材料が用いられる。
【0012】
本発明に係る接続構造体の製造方法のある特定の局面では、上記異方性導電材料として、光硬化性化合物と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が用いられる。
【0013】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに他の特定の局面では、上記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料が用いられる。
【0014】
本発明に係る接続構造体の製造方法のさらに別の特定の局面では、上記異方性導電材料として、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有し、上記導電性粒子の含有量が1〜19重量%の範囲内である異方性導電材料が用いられる。
【0015】
本発明に係る接続構造体の製造方法の別の特定の局面では、上記第1の接続対象部材の上面に電極が設けられており、上記第2の接続対象部材の下面に電極が設けられており、第1,第2の接続対象部材の電極を、上記導電性粒子を介して電気的に接続する。
【0016】
本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有し、光の照射により硬化が進行されて、Bステージ化した後の粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内である。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る接続構造体の製造方法では、異方性導電材料層に光を照射することにより、上記異方性導電材料層の硬化を進行させて、粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内となるように、上記異方性導電材料層をBステージ化するので、異方性導電材料層及び該異方性導電材料層に含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。従って、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。このため、第1,第2の接続対象部材の電極間を電気的に接続した場合に、導通信頼性を高めることができる。例えば、接続されるべき上下の電極間を導電性粒子により容易に接続でき、かつ接続されてはならない隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続されるのを抑制できる。
【0018】
本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有し、光の照射により硬化が進行されて、Bステージ化した後の粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内であるので、例えば、異方性導電材料を塗布対象部材に塗布し、Bステージ化することにより、異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子の流動を抑制できる。従って、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に配置できる。従って、本発明に係る異方性導電材料が電極間の電気的な接続に用いられた場合に、導通信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体を模式的に示す部分切欠正面断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法の各工程を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法において、ディスペンサーと光照射装置とを備える複合装置を用いて、Bステージ化された異方性導電材料層を形成する方法を説明するための模式的な正面図である。
【図4】図4(a)及び(b)は、Bステージ化された異方性導電材料層を形成する方法の変形例を説明するための模式的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図1に、本発明の一実施形態に係る接続構造体の製造方法により得られた接続構造体の一例を模式的に部分切欠正面断面図で示す。
【0022】
図1に示す接続構造体1は、第1の接続対象部材2の上面2aに、硬化物層3を介して、第2の接続対象部材4が接続された構造を有する。硬化物層3は接続部である。硬化物層3は、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を硬化させることにより形成されている。第1の接続対象部材2の上面2aには、複数の電極2bが設けられている。第2の接続対象部材4の下面4aには、複数の電極4bが設けられている。電極2bと電極4bとが、1つ又は複数の導電性粒子5により電気的に接続されている。
【0023】
接続構造体1では、第1の接続対象部材2としてガラス基板が用いられており、第2の接続対象部材4として半導体チップが用いられている。第1,第2の接続対象部材は、特に限定されない。第1,第2の接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板及びガラス基板等の回路基板等が挙げられる。
【0024】
図1に示す接続構造体1は、例えば、以下のようにして得ることができる。
【0025】
図2(a)に示すように、電極2bを上面2aに有する第1の接続対象部材2を用意する。次に、第1の接続対象部材2の上面2aに、複数の導電性粒子5を含む異方性導電材料を塗布し、第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料層3Aを形成する。このとき、電極2b上に、1つ又は複数の導電性粒子5が配置されていることが好ましい。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、異方性導電材料層3Aに光を照射することにより、異方性導電材料層3Aの硬化を進行させる。異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する。第1の接続対象部材2の上面2aに、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成する。
【0027】
異方性導電材料層3Aの硬化を進行させて、異方性導電材料層3AをBステージ化する際には、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの粘度(以下、η3と略記することがある)が2000〜3500Pa・sの範囲内であるように、異方性導電材料層3AをBステージ化する。上記粘度η3を上記範囲内にすることにより、異方性導電材料層の流動を充分に抑制できる。このため、電極2b,4b間に、導電性粒子5が配置されやすくなる。さらに、第1の接続対象部材2又は第2の接続対象部材4の外周面よりも側方の領域に、異方性導電材料層が意図せずに流動するのを抑制できる。
【0028】
異方性導電材料層及び導電性粒子5の流動をより一層抑制する観点からは、上記粘度η3の好ましい下限は2250Pa・s、好ましい上限は3250Pa・sである。上記粘度η3の測定温度の好ましい下限は20℃、好ましい上限は30℃である。上記粘度η3の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
【0029】
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を塗布しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。塗布と光の照射とが上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を塗布してから光を照射するまでの時間は、0〜3秒の範囲内であることが好ましく、0〜2秒の範囲内であることがより好ましい。
【0030】
第1の接続対象部材2の上面2aに、異方性導電材料を塗布しながら、異方性導電材料層3Aに光を照射することが好ましい。さらに、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を照射することも好ましい。塗布及び光の照射が上記のように行われた場合には、異方性導電材料層の流動をより一層抑制できる。このため、得られた接続構造体1の導通信頼性をより一層高めることができる。第1の接続対象部材2の上面2aに異方性導電材料を塗布してから光を照射するまでの時間は、0〜3秒の範囲内であることが好ましく、0〜2秒の範囲内であることがより好ましい。
【0031】
光の照射により異方性導電材料層3AをBステージ化させる場合には、異方性導電材料層3Aの硬化を適度に進行させるための光照射強度は、例えば、0.1〜100mW/cm程度である。
【0032】
光を照射する際に用いる光源は特に限定されない。該光源としては、例えば、波長420nm以下に充分な発光分布を有する光源等が挙げられる。また、光源の具体例としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、及びメタルハライドランプ等が挙げられる。
【0033】
次に、図2(c)に示すように、Bステージ化された異方性導電材料層3Bの上面3aに、第2の接続対象部材4を積層する。第1の接続対象部材2の上面2aの電極2bと、第2の接続対象部材4の下面4aの電極4bとが対向するように、第2の接続対象部材4を積層する。
【0034】
さらに、第2の接続対象部材4の積層の際に、異方性導電材料層3Bに熱を付与することにより、異方性導電材料層3Bをさらに硬化させ、硬化物層3を形成する。ただし、第2の接続対象部材4の積層の前に、異方性導電材料層3Bに熱を付与してもよい。さらに、第2の接続対象部材4の積層の後に、異方性導電材料層3Bに熱を付与し完全に硬化させることが好ましい。
【0035】
熱の付与により異方性導電材料層3Bを硬化させる場合には、異方性導電材料層3Bを充分に硬化させるための加熱温度の好ましい下限は160℃、好ましい上限は250℃、より好ましい上限は200℃である。
【0036】
異方性導電材料層3Bを硬化させる際に、加圧することが好ましい。加圧によって電極2bと電極4bとで導電性粒子5を圧縮することにより、電極2b,4bと導電性粒子5との接触面積を大きくすることができる。このため、導通信頼性を高めることができる。
【0037】
異方性導電材料層3Bを硬化させることにより、第1の接続対象部材2と第2の接続対象部材4とが、硬化物層3を介して接続される。また、電極2bと電極4bとが、導電性粒子5を介して電気的に接続される。このようにして、図1に示す接続構造体1を得ることができる。本実施形態では、光硬化と熱硬化とが併用されているため、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
【0038】
接続構造体1を得る際に、異方性導電材料層3Aに光を照射し、Bステージ化された異方性導電材料層3Bを形成した後、異方性導電材料層3Bに熱を付与することが好ましい。
【0039】
異方性導電材料層3Aを形成し、該異方性導電材料層3AをBステージ化する際に、図3(a)に示す複合装置が好適に用いられる。
【0040】
図3(a)に示す複合装置11は、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続された光照射装置13とを備える。ディスペンサー12は、内部に異方性導電材料を充填するためのシリンジ12aと、該シリンジ12aの外周面を把持している把持部12bとを備える。光照射装置13は、光照射装置本体13aと、光照射部13bとを備える。複合装置11では、把持部12bと光照射装置本体13aとが接続されている。従って、ディスペンサー12と光照射装置13との距離を小さくすることができ、すなわち、ディスペンサー12の吐出部と、光照射部13bとの距離を小さくすることができる。さらに、ディスペンサー12と光照射装置13とを同じ速度で容易に移動させることができる。なお、シリンジ12aと光照射装置本体13aとが直接接続されていてもよい。
【0041】
図3(a)に示すように、塗布及び光の照射の際には、複合装置11を矢印Aの方向に移動させながら、第1の接続対象部材2の上面2aに、シリンジ12aから異方性導電材料を塗布し、異方性導電材料層3Aを形成する。また、塗布しながら、ディスペンサー12に接続された光照射装置13の光照射部13bから、矢印Bで示すように異方性導電材料層3Aに光を照射する。
【0042】
第1の接続対象部材2の上面2aに形成された異方性導電材料層3A及び該異方性導電材料層3Aに含まれている導電性粒子5の流動をより一層抑制する観点からは、ディスペンサー12と光照射装置13とを移動させながら、塗布と光の照射とが行われることが好ましい。さらに、光の照射までの時間を高精度に制御する観点からは、ディスペンサー12と光照射装置13とは同じ速度で移動されることが好ましい。ただし、複合装置11を移動させずに、台31を矢印Aの方向に移動させてもよい。
【0043】
図4(a)に示すように、ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いてもよい。光照射装置21は、光照射装置13と同様に、光照射装置本体21aと、光照射部21bとを備える。光照射装置21は、光照射装置13よりも、広い領域に光を照射することができるように構成されている。
【0044】
ディスペンサー12と、該ディスペンサー12に接続されていない光照射装置21とを用いる場合には、例えば、図4(a)に示すように、第1の接続対象部材2の上方に光照射装置21を配置する。次に、第1の接続対象部材2と光照射装置21との間においてディスペンサー12を矢印Aの方向に移動させながら、第1の接続対象部材2の上面2aに、シリンジ12aから異方性導電材料を塗布し、異方性導電材料層3Aを形成する。次に、図4(b)に示すように、異方性導電材料の塗布が終了した後、第1の接続対象部材2の上方に配置された光照射装置21の光照射部21bから、異方性導電材料層3Aに光を照射する。光の照射は、例えば異方性導電材料の塗布と同時又は塗布の直後に行われる。
【0045】
光照射装置21は、塗布の際に、第1の接続対象部材2の上方に配置されていることが好ましい。この場合には、塗布の後に、光を速やかに照射できる。塗布の後に、異方性導電材料層3Aの全領域に一括して光を照射することが好ましい。この場合には、異方性導電材料層3Aをより一層均一にBステージ化することができる。
【0046】
図3(a)又は図4(a)に示す装置の使用により、第1の接続対象部材2の上面2aへの異方性導電材料の塗布と同時に、又は塗布の直後に、異方性導電材料層3Aに光を容易に照射できる。
【0047】
本発明に係る接続構造体の製造方法は、例えば、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、又は半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))等に使用できる。なかでも、本発明に係る接続構造体の製造方法は、COG用途に好適である。本発明に係る接続構造体の製造方法は、半導体チップとガラス基板との接続に好適に用いられる。ただし、本発明に係る接続構造体の製造方法の用途は、上述した用途に限定されない。
【0048】
COG用途では、特に、半導体チップとガラス基板との電極間を、異方性導電材料の導電性粒子により確実に接続することが困難なことが多い。例えば、COG用途の場合には、半導体チップの隣り合う電極間、及びガラス基板の隣り合う電極間の間隔が10〜20μm程度であることがあり、微細な配線が形成されていることが多い。微細な配線が形成されていても、本発明に係る接続構造体の製造方法により、半導体チップとガラス基板との電極間を高精度に接続することができ、導通信頼性を高めることができる。
【0049】
さらに、COG用途の場合には、異方性導電材料中の導電性粒子の含有量を多くしなければならないことがある。従って、圧着の際に、導通接点が多くなって導電性粒子の反発力が大きくなり、圧着時の圧力を高くする必要があることがある。このため、電極又は導電性粒子がつぶれて、導通信頼性が低くなりやすい。しかしながら、本発明に係る接続構造体の製造方法の使用により、導通信頼性を充分に高めることができる。
【0050】
本発明に係る接続構造体の製造方法で用いられる異方性導電材料は、特に限定されない。上記異方性導電材料が、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有する場合には、第1の接続対象部材2の上面2aに塗布された異方性導電材料又は該異方性導電材料に含まれている導電性粒子の流動をより一層抑制することができる。従って、上記異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有することが好ましい。
【0051】
上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料であってもよい。また、上記異方性導電材料は、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料であってもよい。
【0052】
異方性導電材料及び該異方性導電材料に含まれている導電性粒子の流動をより一層抑制し、異方性導電材料により形成された硬化物層及び導電性粒子を特定の領域に容易に配置する観点からは、本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有することが好ましい。
【0053】
さらに、本発明に係る異方性導電材料は、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有し、本発明に係る異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は1〜19重量%の範囲内であることが好ましい。この場合には、異方性導電材料が電極間の電気的な接続に用いられた場合に、導通信頼性をより一層高めることができる。例えば、接続されるべき上下の電極間を導電性粒子にさらに一層容易に接続でき、かつ接続されてはならない隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続されるのをより一層抑制できる。
【0054】
以下、上記異方性導電材料に含まれている各成分の詳細を説明する。
【0055】
(硬化性化合物)
上記硬化性化合物は特に限定されない。上記硬化性化合物として、従来公知の硬化性化合物を用いることができる。上記硬化性化合物は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0056】
上記硬化性化合物としては、光及び熱硬化性化合物、光硬化性化合物、並びに熱硬化性化合物が挙げられる。上記光及び熱硬化性化合物は、光硬化性と熱硬化性とを有する。上記光硬化性化合物は、例えば光硬化性を有し、かつ熱硬化性を有しない。上記熱硬化性化合物は、例えば光硬化性を有さず、かつ熱硬化性を有する。
【0057】
上記硬化性化合物は、光及び熱硬化性化合物を含むか、又は光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことが好ましい。上記硬化性化合物は、光硬化性化合物及び熱硬化性化合物の内の少なくとも一種を含んでいなくてもよく、上記光及び熱硬化性化合物に加えて、光硬化性化合物及び熱硬化性化合物の内の少なくとも一種をさらに含んでいてもよい。上記硬化性化合物が上記光及び熱硬化性化合物を含まない場合には、上記硬化性化合物は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことが好ましい。
【0058】
異方性導電材料の硬化を容易に制御する観点からは、上記硬化性化合物は、上記光及び熱硬化性化合物と、光硬化性化合物及び熱硬化性化合物の内の少なくとも一種とを含むか、又は光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことが好ましい。上記硬化性化合物は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを含むことがより好ましい。
【0059】
上記硬化性化合物は特に限定されない。上記硬化性化合物としては、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、(メタ)アクリル化合物、フェノール化合物、アミノ化合物、不飽和ポリエステル化合物、ポリウレタン化合物、シリコーン化合物及びポリイミド化合物等が挙げられる。上記(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0060】
光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを併用する場合には、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との使用量は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物との種類に応じて適宜調整される。上記異方性導電材料は、光硬化性化合物と熱硬化性化合物とを重量比で、5:95〜60:40で含むことがより好ましく、20:80〜40:60で含むことが更に好ましい。
【0061】
上記異方性導電材料では、25℃及び2.5rpmでの粘度をη1とし、かつ25℃及び5rpmでの粘度をη2としたときに、上記η2が20Pa・s以上200Pa・s以下であり、かつ上記η1の上記η2に対する比(η1/η2)が0.9以上1.1以下であることが好ましい。
【0062】
上記η2及び上記比(η1/η2)を上記範囲内に容易に制御する観点からは、上記硬化性化合物は、結晶性樹脂を含むことが好ましい。
【0063】
上記結晶性樹脂は、特に限定されず、結晶性を有していればよい。上記結晶性樹脂としては、例えば、ナフタレン骨格構造に上記光及び熱硬化性の官能基を有する樹脂、並びにレゾルシン骨格構造に上記光及び熱硬化性の官能基を有する樹脂等が挙げられる。
【0064】
上記η2及び上記比(η1/η2)を上記範囲内に容易に制御する観点からは、上記硬化性化合物100重量部中、上記結晶性樹脂の含有量の好ましい下限は80重量部、より好ましい下限は90重量部である。
【0065】
[熱硬化性化合物]
異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ化合物及びエピスルフィド化合物(チイラン基含有化合物)の内の少なくとも一種を含むことが好ましく、エピスルフィド化合物を含むことがより好ましい。異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量部中、上記エピスルフィド化合物の含有量の好ましい下限は10重量部、より好ましい下限は20重量部、好ましい上限は50重量部、より好ましい上限は40重量部である。
【0066】
上記エポキシ化合物及び上記エピスルフィド化合物はそれぞれ、芳香族環を有することが好ましい。上記芳香族環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、テトラセン環、クリセン環、トリフェニレン環、テトラフェン環、ピレン環、ペンタセン環、ピセン環及びペリレン環等が挙げられる。なかでも、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環であることがより好ましい。
【0067】
エピスルフィド化合物は、エポキシ基ではなくチイラン基を有するので、低温で速やかに硬化させることができる。すなわち、チイラン基を有するエピスルフィド化合物は、エポキシ基を有するエポキシ化合物と比較して、チイラン基に由来してより一層低い温度で硬化可能である。
【0068】
低温でより一層速やかに硬化させる観点からは、上記エピスルフィド化合物は、下記式(1)、(2)、(5)、(7)又は(8)で表される構造を有することが好ましく、下記式(1)又は(2)で表される構造を有することがより好ましい。
【0069】
【化1】

【0070】
上記式(1)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R3、R4、R5及びR6の内の水素ではない基は下記式(3)で表される基を表す。
【0071】
上記式(1)中のR3、R4、R5及びR6の4個の基の全てが水素であってもよい。R3、R4、R5及びR6の4個の基の内の1個又は2個が下記式(3)で表される基であり、かつR3、R4、R5及びR6の4個の基の内の下記式(3)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0072】
【化2】

【0073】
上記式(3)中、R7は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0074】
【化3】

【0075】
上記式(2)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の水素ではない基は、下記式(4)で表される基を表す。
【0076】
上記式(2)中のR53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の全てが水素であってもよい。R53、R54、R55、R56、R57及びR58の6個の基の内の1個又は2個が下記式(4)で表される基であり、かつR53、R54、R55、R56、R57及びR58の内の下記式(4)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0077】
【化4】

【0078】
上記式(4)中、R59は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0079】
【化5】

【0080】
上記式(5)中、R101及びR102はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の6〜8個の基は水素を表す。
【0081】
上記式(5)中のR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の水素ではない基は、下記式(6)で表される基を表す。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の全てが水素であってもよい。R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の8個の基の内の1個又は2個が下記式(6)で表される基であり、かつR103、R104、R105、R106、R107、R108、R109及びR110の内の下記式(6)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0082】
【化6】

【0083】
上記式(6)中、R111は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0084】
【化7】

【0085】
上記式(7)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0086】
【化8】

【0087】
上記式(8)中、R3及びR4はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0088】
上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、チイラン基(エピスルフィド基)を少なくとも2つ有する。また、チイラン基を有する基が、ベンゼン環又はナフタレン環に結合されている。このような構造を有するので、異方性導電材料を加熱することにより、異方性導電材料を低温で速やかに硬化させることができる。なお、本明細書において、低温とは200℃以下の温度を意味する。
【0089】
上記式(1)、(2)、(5)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、上記式(1)、(2)、(5)、(7)又は(8)中のチイラン基がエポキシ基である化合物に比べて、反応性が高い。これは、チイラン基はエポキシ基よりも、開環しやすく、反応性が高いためである。上記式(1)、(2)、(5)、(7)又は(8)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は反応性が高いので、異方性導電材料を低温で速やかに硬化させることができる。特に、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は反応性がかなり高いので、異方性導電材料を低温で速やかに硬化させることができる。
【0090】
上記式(1)中のR1及びR2、上記式(2)中のR51及びR52、上記式(3)中のR7、及び上記式(4)中のR59、上記式(5)中のR101及びR102、上記式(6)中のR111、上記式(7)中のR1及びR2、上記式(8)中のR3及びR4は、炭素数1〜5のアルキレン基である。該アルキレン基の炭素数が5を超えると、上記エピスルフィド化合物の硬化速度が遅くなる傾向がある。
【0091】
上記式(1)中のR1及びR2、上記式(2)中のR51及びR52、上記式(3)中のR7、及び上記式(4)中のR59、上記式(5)中のR101及びR102、上記式(6)中のR111、上記式(7)中のR1及びR2、上記式(8)中のR3及びR4はそれぞれ、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。
【0092】
上記(1)で表される構造は、下記式(1A)で表される構造であることが好ましい。下記式(1A)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。
【0093】
【化9】

【0094】
上記式(1A)中、R1及びR2はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0095】
上記式(1)で表される構造は、下記式(1B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性により一層優れている。
【0096】
【化10】

【0097】
上記(2)で表される構造は、下記式(2A)で表される構造であることが好ましい。下記式(2A)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性に優れている。
【0098】
【化11】

【0099】
上記式(2A)中、R51及びR52はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0100】
上記式(2)で表される構造は、下記式(2B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(2B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物は、硬化性により一層優れている。
【0101】
【化12】

【0102】
上記エポキシ化合物は特に限定されない。エポキシ化合物として、従来公知のエポキシ化合物を使用できる。上記エポキシ化合物は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0103】
上記エポキシ化合物としては、エポキシ基を有するフェノキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フルオレン型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、アダマンタン骨格を有するエポキシ樹脂、トリシクロデカン骨格を有するエポキシ樹脂、及びトリアジン核を骨格に有するエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0104】
上記エポキシ化合物の具体例としては、例えばエピクロルヒドリンと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂又はビスフェノールD型エポキシ樹脂等とから誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、並びにエピクロルヒドリンとフェノールノボラック又はクレゾールノボラックとから誘導されるエポキシノボラック樹脂が挙げられる。グリシジルアミン、グリシジルエステル、並びに脂環式又は複素環式等の1分子内に2個以上のオキシラン基を有する各種のエポキシ化合物を用いてもよい。
【0105】
上記硬化性化合物は、上記式(1)、(2)、(5)、(7)又は(8)で表される構造におけるチイラン基をエポキシ基に置き換えた構造を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。この場合に、上記式(3)、(4)及び(6)で表される構造も、チイラン基をエポキシ基に置き換えた構造であることが好ましい。上記硬化性化合物は、下記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記硬化性化合物は、上記式(1)又は(2)で表されるエピスルフィド化合物と、下記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物とを含んでいることが好ましい。
【0106】
【化13】

【0107】
上記式(11)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の2〜4個の基は水素を表し、R13、R14、R15及びR16の内の水素ではない基は下記式(13)で表される基を表す。
【0108】
上記式(11)中のR13、R14、R15及びR16の4個の基の全てが水素であってもよい。R13、R14、R15及びR16の4個の基の内の1個又は2個が下記式(13)で表される基であり、かつR13、R14、R15及びR16の4個の基の内の下記式(13)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0109】
【化14】

【0110】
上記式(13)中、R17は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0111】
【化15】

【0112】
上記式(12)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の4〜6個の基は水素を表し、R63、R64、R65、R66、R67及びR68の内の水素ではない基は、下記式(14)で表される基を表す。
【0113】
上記式(12)中のR63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の全てが水素であってもよい。R63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の1個又は2個が下記式(14)で表される基であり、かつR63、R64、R65、R66、R67及びR68の6個の基の内の下記式(14)で表される基ではない基は水素であってもよい。
【0114】
【化16】

【0115】
上記式(14)中、R69は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0116】
上記式(11)中のR11及びR12、上記式(12)中のR61及びR62、上記式(13)中のR17、及び上記式(14)中のR69は、炭素数1〜5のアルキレン基である。該アルキレン基の炭素数が5を超えると、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物の硬化速度が遅くなりやすい。
【0117】
上記式(11)中のR11及びR12、上記式(12)中のR61及びR62、上記式(13)中のR17、及び上記式(14)中のR69はそれぞれ、炭素数1〜3のアルキレン基であることが好ましく、メチレン基であることがより好ましい。上記アルキレン基は直鎖構造を有するアルキレン基であってもよく、分岐構造を有するアルキレン基であってもよい。
【0118】
上記(11)で表される構造は、下記式(11A)で表される構造であることが好ましい。下記式(11A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、市販されており、容易に入手できる。
【0119】
【化17】

【0120】
上記式(11A)中、R11及びR12はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0121】
上記式(11)で表される構造は、下記式(11B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(11B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテルである。レゾルシノールジグリシジルエーテルは市販されており、容易に入手できる。
【0122】
【化18】

【0123】
上記(12)で表される構造は、下記式(12A)で表される構造であることが好ましい。下記式(12A)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0124】
【化19】

【0125】
上記式(12A)中、R61及びR62はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0126】
上記式(12)で表される構造は、下記式(12B)で表される構造であることがより好ましい。下記式(12B)で表される構造を有するエポキシ化合物は、容易に入手できる。
【0127】
【化20】

【0128】
上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物と、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物との混合物(以下、混合物Aと略記することがある)の合計100重量%中、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が10〜50重量%、かつ上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物の含有量が90〜50重量%であることが好ましく、上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が20〜30重量%、かつ上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物の含有量が80〜70重量%であることがより好ましい。
【0129】
上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が少なすぎると、上記混合物Aの硬化速度が遅くなる傾向がある。上記式(1)又は(2)で表される構造を有するエピスルフィド化合物の含有量が多すぎると、上記混合物Aの粘度が高くなりすぎたり、上記混合物Aが固体になったりすることがある。
【0130】
上記混合物Aの製造方法は特に限定されない。この製造方法として、例えば、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物を用意し、該エポキシ化合物の一部のエポキシ基をチイラン基に変換する製造方法が挙げられる。
【0131】
上記混合物Aの製造方法は、硫化剤を含む第1の溶液に、上記式(11)又は(12)で表されるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を連続的又は断続的に添加した後、硫化剤を含む第2の溶液を連続的又は断続的にさらに添加する方法が好ましい。この方法により、上記エポキシ化合物の一部のエポキシ基をチイラン基に変換できる。この結果、上記混合物Aを得ることができる。上記硫化剤としては、チオシアン酸塩類、チオ尿素類、ホスフィンサルファイド、ジメチルチオホルムアミド及びN−メチルベンゾチアゾール−2−チオン等が挙げられる。上記チオシアン酸塩類としては、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム及びチオシアン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0132】
上記硬化性化合物は、下記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の単量体、該エポキシ化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0133】
【化21】

【0134】
上記式(21)中、R1は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(22)で表される構造を表し、R4は水素原子、炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(23)で表される構造を表す。
【0135】
【化22】

【0136】
上記式(22)中、R5は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0137】
【化23】

【0138】
上記式(23)中、R6は炭素数1〜5のアルキレン基を表す。
【0139】
上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物は、不飽和二重結合と、少なくとも2個のエポキシ基とを有することを特徴とする。上記式(21)で表される構造を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料を低温で速やかに硬化させることができる。
【0140】
上記硬化性化合物は、下記式(31)で表される構造を有する化合物の単量体、該化合物が少なくとも2個結合された多量体、又は該単量体と該多量体との混合物を含んでいてもよい。
【0141】
【化24】

【0142】
上記式(31)中、R1は水素原子もしくは炭素数1〜5のアルキル基又は下記式(32)で表される構造を表し、R2は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X1は酸素原子又は硫黄原子を表し、X2は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0143】
【化25】

【0144】
上記式(32)中、R4は炭素数1〜5のアルキレン基を表し、X3は酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0145】
上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物は、例えば、以下のようにして合成できる。
【0146】
原料化合物である、水酸基を有するフルオレン化合物と、エピクロルヒドリンと、水酸化ナトリウムと、メタノールとを混合し、冷却し、反応させる。その後、水酸化ナトリウム水溶液を滴下する。滴下の後、さらに反応させ、反応液を得る。次に、反応液に水とトルエンとを加え、トルエン層を取り出す。トルエン層を水で洗浄した後、乾燥し、水と溶媒とを除去する。このようにして、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物を容易に得ることができる。なお、原料化合物である、水酸基を有するフルオレン化合物は、例えばJFEケミカル社等から市販されている。
【0147】
また、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するチイラン基含有化合物は、上記式(31)で表される構造を有する化合物に相当するエポキシ化合物のエポキシ基を、チイラン基に変換することにより合成できる。例えば、上記硫化剤を含む溶液に、原料化合物であるエポキシ化合物又は該エポキシ化合物を含む溶液を添加した後、上記硫化剤を含む溶液をさらに添加することにより、エポキシ基をチイラン基に容易に変換できる。
【0148】
上記硬化性化合物は、窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物を含んでいてもよい。上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、下記式(41)で表されるエポキシ化合物、又は下記式(42)で表されるエポキシ化合物であることが好ましい。このような硬化性化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、異方性導電材料の硬化物の耐熱性をより一層高めることができる。
【0149】
【化26】

【0150】
上記式(41)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表し、Zはエポキシ基又はヒドロキシメチル基を表す。R21〜R23は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0151】
【化27】

【0152】
上記式(42)中、R1〜R3はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を示し、p、q及びrはそれぞれ1〜5の整数を表し、R4〜R6はそれぞれ炭素数1〜5のアルキレン基を表す。R1〜R3は同一であってもよく、異なっていてもよい。p、q及びrは同一であってもよく、異なっていてもよい。R4〜6は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0153】
上記窒素原子を含む複素環を有するエポキシ化合物は、トリグリシジルイソシアヌレート、又はトリスヒドロキシエチルイソシアヌレートトリグリシジルエーテルであることが好ましい。これらの硬化性化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をさらに一層速くすることができる。
【0154】
上記硬化性化合物は、芳香族環を有するエポキシ化合物を含むことが好ましい。芳香族環を有するエポキシ化合物の使用により、異方性導電材料の硬化速度をより一層速くし、異方性導電材料を塗布しやすくすることができる。異方性導電材料の塗布性をより一層高める観点からは、上記芳香族環は、ベンゼン環、ナフタレン環又はアントラセン環であることが好ましい。上記芳香族環を有するエポキシ化合物としては、レゾルシノールジグリシジルエーテル又は1,6−ナフタレンジグリシジルエーテルが挙げられる。なかでも、上記式(11B)で表される構造を有するレゾルシノールジグリシジルエーテルが特に好ましい。レゾルシノールジグリシジルエーテルの使用により、異方性導電材料の硬化速度を速くし、異方性導電材料を塗布しやすくすることができる。
【0155】
[光硬化性化合物]
本発明に係る硬化性化合物は、光の照射によっても硬化するように、光硬化性化合物を含有していてもよい。光の照射により硬化性化合物を半硬化させ、硬化性化合物の流動性を低下させることができる。
【0156】
上記光硬化性化合物としては特に限定されず、(メタ)アクリル樹脂及び環状エーテル基含有樹脂等が挙げられる。
【0157】
上記(メタ)アクリル樹脂として、例えば、(メタ)アクリル酸と水酸基を有する化合物とを反応させて得られるエステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネートに水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が好適に用いられる。
【0158】
上述した光硬化性化合物以外の光硬化性化合物が含まれる場合には、該光硬化性化合物は、架橋性化合物であってもよく、非架橋性化合物であってもよい。
【0159】
上記架橋性化合物の具体例としては、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸ビニル、ジビニルベンゼン、ポリエステル(メタ)アクリレート、及びウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0160】
上記非架橋性化合物の具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びテトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0161】
[光及び熱硬化性化合物]
上記硬化性化合物が例えば熱硬化性化合物及び光重合性化合物を含む場合には、異方性導電材料の硬化を容易に制御したり、接続構造体の導通信頼性をより一層高めたりする観点からは、上記硬化性化合物は、エポキシ基及びチイラン基の内の少なくとも一種の基と、(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物を含むことが好ましい。上記硬化性化合物は、エポキシ基と、(メタ)アクリロイル基とを有する光及び熱硬化性化合物(以下、部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂ともいう)を含むことが好ましい。上記(メタ)アクリロイルは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。上記(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0162】
上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂は、例えば、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られる。エポキシ基の20%以上が(メタ)アクリロイル基に変換され(転化率)、部分(メタ)アクリル化されていることが好ましい。エポキシ基の50%が(メタ)アクリロイル基に変換されていることがより好ましい。
【0163】
異方性導電材料の硬化性を高める観点からは、上記硬化性化合物100重量%中、上記部分(メタ)アクリレート化エポキシ樹脂の含有量の好ましい下限は0.1重量%、より好ましい下限は0.5重量%、好ましい上限は2重量%、より好ましい上限は1.5重量%である。
【0164】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレート、クレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、カルボン酸無水物変性エポキシ(メタ)アクリレート、及びフェノールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0165】
(熱硬化剤)
上記熱硬化剤は特に限定されない。上記熱硬化剤として、従来公知の熱硬化剤を用いることができる。上記熱硬化剤としては、イミダゾール硬化剤、アミン硬化剤、フェノール硬化剤、ポリチオール硬化剤及び酸無水物等が挙げられる。上記熱硬化剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0166】
異方性導電材料を低温でより一層速やかに硬化させることができるので、上記熱硬化剤は、イミダゾール硬化剤、ポリチオール硬化剤又はアミン硬化剤であることが好ましい。また、異方性導電材料の保存安定性を高めることができるので、潜在性の硬化剤が好ましい。該潜在性の硬化剤は、潜在性イミダゾール硬化剤、潜在性ポリチオール硬化剤又は潜在性アミン硬化剤であることが好ましい。上記熱硬化剤は、ポリウレタン樹脂又はポリエステル樹脂等の高分子物質で被覆されていてもよい。
【0167】
上記イミダゾール硬化剤としては、特に限定されず、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジン及び2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾリル−(1’)]−エチル−s−トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。
【0168】
上記ポリチオール硬化剤としては、特に限定されず、トリメチロールプロパン トリス−3−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス−3−メルカプトプロピオネート及びジペンタエリスリトール ヘキサ−3−メルカプトプロピオネート等が挙げられる。
【0169】
上記アミン硬化剤としては、特に限定されず、ヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、メタフェニレンジアミン及びジアミノジフェニルスルホン等が挙げられる。
【0170】
上記熱硬化剤の含有量は特に限定されない。上記熱硬化剤が含有される場合に、上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、上記熱硬化剤の含有量の好ましい下限は5重量部、より好ましい下限は10重量部、好ましい上限は30重量部、より好ましい上限は20重量部である。上記熱硬化剤の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、異方性導電材料を充分に熱硬化させることができる。
【0171】
(光硬化開始剤)
上記光硬化開始剤は特に限定されない。上記光硬化開始剤として、従来公知の光硬化開始剤を用いることができる。上記光硬化開始剤は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0172】
上記光硬化開始剤としては、特に限定されず、アセトフェノン光硬化開始剤、ベンゾフェノン光硬化開始剤、チオキサントン、ケタール光硬化開始剤、ハロゲン化ケトン、アシルホスフィノキシド及びアシルホスフォナート等が挙げられる。
【0173】
上記アセトフェノン光硬化開始剤の具体例としては、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、及び2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン等が挙げられる。上記ケタール光硬化開始剤の具体例としては、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0174】
上記光硬化開始剤の含有量は特に限定されない。上記光硬化開始剤が含有される場合に、上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、上記光硬化開始剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、より好ましい下限は0.2重量部、好ましい上限は2重量部、より好ましい上限は1重量部である。上記光硬化開始剤の含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、異方性導電材料を適度に光硬化させることができる。異方性導電材料に光を照射し、Bステージ化することにより、異方性導電材料の流動を抑制できる。
【0175】
(導電性粒子)
上記異方性導電材料に含まれている導電性粒子として、例えば、電極間を電気的に接続できる従来公知の導電性粒子が用いられる。上記導電性粒子は、外表面に導電層を有する粒子であることが好ましい。上記導電性粒子は、導電層の表面に絶縁粒子が付着していたり、導電層の表面が絶縁層により被覆されていたりしてもよい。この場合には、電極の接続の際の加圧により、絶縁粒子又は絶縁層が取り除かれる。
【0176】
上記導電性粒子としては、例えば、有機粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子、もしくは金属粒子等の表面が導電層で被覆された導電性粒子、並びに実質的に金属のみで構成される金属粒子等が挙げられる。上記導電層は特に限定されない。上記導電層としては、金層、銀層、銅層、ニッケル層、パラジウム層又は錫を含有する導電層等が挙げられる。
【0177】
上記異方性導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は1〜19重量%の範囲内であることが好ましい。上記導電性粒子の含有量のより好ましい下限は5重量%、より好ましい上限は15重量%、更に好ましい上限は10重量%である。上記導電性粒子の含有量が上記範囲内にある場合には、接続されるべき上下の電極間に導電性粒子を容易に配置できる。さらに、接続されてはならない隣接する電極間が複数の導電性粒子を介して電気的に接続され難くなる。すなわち、隣り合う電極間の短絡を防止できる。
【0178】
(他の成分)
上記異方性導電材料は、溶剤を含有していてもよい。該溶剤の使用により、異方性導電材料の粘度を容易に調整できる。さらに、例えば、上記硬化性化合物が固形である場合に、固形の硬化性化合物に溶剤を添加し、溶解させることにより、硬化性化合物の分散性を高めることができる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、メチルセロソルブ、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、n−ヘキサン、テトラヒドロフラン及びジエチルエーテル等が挙げられる。
【0179】
異方性導電材料の硬化物の接着力を高めることができるので、上記異方性導電材料は、接着力調整剤を含有することが好ましい。接着力をより一層高める観点からは、上記接着力調整剤は、シランカップリング剤であることが好ましい。
【0180】
上記異方性導電材料は、フィラーを含有することが好ましい。該フィラーの使用により、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を抑制できる。
【0181】
上記η2及び上記比(η1/η2)を好適な範囲に制御するために、フィラーは、表面処理されていることが好ましく、親水性フィラーであることが好ましい。
【0182】
上記フィラーは特に限定されない。上記フィラーとしては、シリカ、窒化アルミニウム及びアルミナ等が挙げられる。上記フィラーは1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0183】
上記親水性フィラーとは、表面が親水基で覆われているフィラーを示す。該親水基としては、水酸基、アミノ基、アミド基、カルボキシレート基及びカルボキシル基等の極性基、並びにカルボキシレートイオン基、スルホン酸イオン基及びアンモニウムイオン基等のイオン性基等が挙げられる。上記親水性フィラーとしては、従来の上記フィラーが親水性表面処理剤で表面処理された親水性フィラーが挙げられる。
【0184】
上記親水性表面処理剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコアルミネート系カップリング剤、Al、TiO、ZrO、シリコーン及びステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。中でも、上記親水性表面処理剤として、シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0185】
上記フィラーの含有量は特に限定されない。上記硬化性化合物の合計100重量部に対して、上記フィラーの含有量の好ましい下限は5重量部、より好ましい下限は15重量部、好ましい上限は70重量部、より好ましい上限は50重量部である。上記フィラーの含有量が上記好ましい下限及び上限を満たすと、異方性導電材料の硬化物の潜熱膨張を充分に抑制でき、更に異方性導電材料中にフィラーを充分に分散させることができる。
【0186】
(異方性導電材料の他の詳細)
上記異方性導電材料の製造方法としては、特に限定されず、上記硬化性化合物と、上記熱硬化剤及び上記光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、上記導電性粒子と、必要に応じて添加される他の成分とを配合し、遊星式攪拌機等を用いて充分に混合する製造方法が挙げられる。
【0187】
上記異方性導電材料の25℃及び2.5rpmでの粘度は、20〜200Pa・sの範囲内であることが好ましい。すなわち、塗布前の上記異方性導電材料の25℃及び2.5rpmでの粘度は、20〜200Pa・sの範囲内であることが好ましい。この場合には、例えば基板等の塗布対象部材(第1の接続対象部材)上に異方性導電材料を塗布した後に、硬化前の異方性導電材料の流動をより一層抑制できる。さらに、電極と導電性粒子との間の樹脂成分を容易に取り除くことができ、電極と導電性粒子との接触面積を大きくすることができる。さらに、塗布対象部材(第1の接続対象部材)の表面が凹凸である場合に、該凹凸の表面に異方性導電材料を充分に充填させることができ、硬化後にボイドが生じ難くなる。また、異方性導電材料中において導電性粒子が沈降し難くなり、導電性粒子の分散性を高めることができる。
【0188】
上記異方性導電材料について、光の照射により硬化が進行されて、Bステージ化した後の粘度(以下、η3’と略記することがある)は2000〜3500Pa・sの範囲内であることが好ましい。異方性導電材料層及び導電性粒子の流動をより一層抑制する観点からは、上記粘度η3’のより好ましい下限は2250Pa・s、より好ましい上限は3250Pa・sである。上記粘度η3’の測定温度の好ましい下限は20℃、好ましい上限は30℃である。上記粘度η3’の測定温度は25℃であることが特に好ましい。
【0189】
上記異方性導電材料は、25℃及び2.5rpmでの粘度をη1とし、かつ25℃及び5rpmでの粘度をη2としたときに、上記η2が20Pa・s以上200Pa・s以下であり、かつ上記η1の上記η2に対する比(η1/η2)が0.9以上1.1以下であることが好ましい。すなわち、上記異方性導電材料は、下記式(X)及び(Y)をいずれも満たすことが好ましい。
【0190】
20Pa・s≦η2≦200Pa・s ・・・式(X)
0.9≦η1/η2≦1.1 ・・・式(Y)
【0191】
特開2003−064330号公報に記載のような従来の異方性導電材料を、ディスペンサー等により塗布対象部材に塗布する際に、安定に塗布できないことがある。特許文献2に記載のような粘度特性を示す異方性導電材料では、塗布の開始直後に粘度が大きく低下し、異方性導電材料が部分的に多量に塗布されることがある。このため、塗布幅が一定にならず、結果として、異方性導電材料により形成された硬化物層の幅又は厚みにばらつきが生じやすい。これに対して、上記異方性導電材料において、上記η2及び上記比(η1/η2)が特定の上記範囲内にあることにあることによって、異方性導電材料を、ディスペンサー等により塗布対象部材に塗布する際に、より一層安定にかつ均一に塗布できる。さらに、塗布の開始直後に粘度が大きく低下することなく、異方性導電材料が部分的に多量に塗布されるのを抑制できる。このため、塗布幅を一定にすることができ、結果として、異方性導電材料により形成された硬化物層の幅又は厚みにばらつきが生じ難くなる。
【0192】
異方性導電材料をより一層均一に塗布する観点からは、上記η2の好ましい下限は50Pa・s、より好ましい下限は100Pa・s、好ましい上限は180Pa・s、より好ましい上限は150Pa・sである。
【0193】
上記η2及び上記比(η1/η2)は、硬化性化合物として結晶性樹脂を用いたり、親水性を高めるために表面処理されたフィラーを用いたりすることにより、調整可能である。上記η2及び上記比(η1/η2)を上記範囲内に容易に制御する観点からは、上記硬化性化合物は、結晶性樹脂を含むことが好ましい。
【0194】
上記異方性導電材料を硬化させる方法としては、異方性導電材料に光を照射した後、異方性導電材料を加熱する方法、並びに異方性導電材料を加熱した後、異方性導電材料に光を照射する方法が挙げられる。また、光硬化の速度及び熱硬化の速度が異なる場合などには、光の照射と加熱とを同時に行ってもよい。なかでも、異方性導電材料に光を照射した後、異方性導電材料を加熱する方法が好ましい。光硬化と熱硬化との併用により、異方性導電材料を短時間で硬化させることができる。
【0195】
(接続構造体)
上述のようにして、異方性導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0196】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を電気的に接続している接続部とを備えており、該接続部が上記異方性導電材料により形成されていることが好ましい。上記接続部は、上記異方性導電材料が硬化した硬化物層である。
【0197】
以下、本発明について、実施例および比較例を挙げて具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0198】
(実施例1)
(1)エピスルフィド化合物含有混合物の調製
攪拌機、冷却機及び温度計を備えた2Lの容器内に、エタノール250mLと、純水250mLと、チオシアン酸カリウム20gとを加え、チオシアン酸カリウムを溶解させ、第1の溶液を調製した。その後、容器内の温度を20〜25℃の範囲内に保持した。次に、20〜25℃に保持された容器内の第1の溶液を攪拌しながら、該第1の溶液中に、レゾルシノールジグリシジルエーテル160gを5mL/分の速度で滴下した。滴下後、30分間さらに攪拌し、エポキシ化合物含有混合液を得た。
【0199】
次に、純水100mLと、エタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液を用意した。得られたエポキシ基含有混合液に、得られた第2の溶液を5mL/分の速度で添加した後、30分攪拌した。攪拌後、純水100mLとエタノール100mLとを含む溶液に、チオシアン酸カリウム20gを溶解させた第2の溶液をさらに用意し、該第2の溶液を5mL/分の速度で容器内にさらに添加し、30分間攪拌した。その後、容器内の温度を10℃に冷却し、2時間攪拌し、反応させた。
【0200】
次に、容器内に飽和食塩水100mLを加え、10分間攪拌した。攪拌後、容器内にトルエン300mLをさらに加え、10分間攪拌した。その後、容器内の溶液を分液ロートに移し、2時間静置し、溶液を分離させた。分液ロート内の下方の溶液を排出し、上澄み液を取り出した。取り出された上澄み液にトルエン100mLを加え、攪拌し、2時間静置した。更に、トルエン100mLをさらに加え、攪拌し、2時間静置した。
【0201】
次に、トルエンが加えられた上澄み液に、硫酸マグネシウム50gを加え、5分間攪拌した。攪拌後、ろ紙により硫酸マグネシウムを取り除いて、溶液を分離した。真空乾燥機を用いて、分離された溶液を80℃で減圧乾燥することにより、残存している溶剤を除去した。このようにして、エピスルフィド化合物含有混合物を得た。
【0202】
クロロホルムを溶媒として、得られたエピスルフィド化合物含有混合物のH−NMRの測定を行った。この結果、エポキシ基の存在を示す6.5〜7.5ppmの領域のシグナルが減少し、エピスルフィド基の存在を示す2.0〜3.0ppmの領域にシグナルが現れた。これにより、レゾルシノールジグリシジルエーテルの一部のエポキシ基がエピスルフィド基に変換されていることを確認した。また、H−NMRの測定結果の積分値より、エピスルフィド化合物含有混合物は、レゾルシノールジグリシジルエーテル70重量%と、上記式(1B)で表される構造を有するエピスルフィド化合物30重量%とを含有することを確認した。
【0203】
(2)異方性導電ペーストの調製
得られたエピスルフィド化合物含有混合物30重量部に、熱硬化剤としてのアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、光硬化性化合物としてのエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部と、硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーとしての平均粒子径0.25μmのシリカ20重量部及び平均粒子径0.5μmのアルミナ20重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物100重量%中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0204】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0205】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、導電性粒子の含有量が10重量%である異方性導電ペーストを得た。
【0206】
(3)接続構造体の作製
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0207】
また、図3(a)に示すようなディスペンサーと、該ディスペンサーに接続された光照射装置としての紫外線照射ランプとを備える複合装置を用意した。
【0208】
複合装置を移動させながら、上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。さらに、複合装置を移動させて、異方性導電ペーストを塗布しながら、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて、420nmの紫外線を光照射強度が50mW/cmとなるように照射し、光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化した。塗布してから、すなわち塗布された異方性導電ペーストが上記透明ガラス基板に接したときから、異方性導電ペースト層に光が照射されるまでの時間Tは、0.5秒であった。
【0209】
次に、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて、Bステージ化された異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0210】
(実施例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、エポキシアクリレートをウレタンアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL8804」)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして接続構造体を得た。
【0211】
(実施例3)
異方性導電ペーストの作製の際に、エポキシアクリレートをナフタレン型エポキシ樹脂(結晶性樹脂、DIC社製「HP−4032」)に変更したこと、並びに光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物を用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。
【0212】
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0213】
上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。塗布の際及び塗布の後に光を照射しなかった。
【0214】
次に、透明ガラス基板を120度に熱したホットプレート上に5分間静置させて、熱重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化した。
【0215】
次に、異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0216】
(実施例4)
図3(a)に示す複合装置にかえて、図4(a)に示すディスペンサーと、該ディスペンサーに接続されていない光照射装置としての紫外線照射ランプとを用いて、異方性導電ペーストの塗布が終了した直後に光を照射したこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。塗布してからに光が照射されるまでの時間Tは、2秒であった。
【0217】
(比較例1)
異方性導電ペーストの作製の際に、エポキシアクリレートと、光重合開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物とを用いなかったこと以外は実施例1と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペースト100重量%中、導電性粒子の含有量は10重量%であった。
【0218】
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0219】
上記透明ガラス基板の上面に、ディスペンサーのシリンジから、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗布し、異方性導電ペースト層を形成した。塗布の際及び塗布の後に光を照射しなかった。
【0220】
次に、異方性導電ペースト層の上面に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0221】
(比較例2)
熱重合によりBステージ化しなかったこと以外は実施例3と同様にして、接続構造体を得た。
【0222】
(実施例1〜4及び比較例1〜2の評価)
(1)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で、得られた異方性導電ペースト(塗布前の異方性導電ペーストの粘度)の粘度を測定した。
【0223】
(2)Bステージ化された異方性導電ペースト層の粘度
光重合によって異方性導電ペースト層をBステージ化させた後であって、Bステージ化された異方性導電ペースト層の上面に半導体チップを積層する直前のBステージ化された異方性導電ペースト層の粘度を、レオメーター(Anton Paar社製)を用いて、25℃及び2.5rpmの条件で測定した。
【0224】
(3)リークの有無
得られた接続構造体を用いて、隣り合う電極20個においてリークが生じているか否かを、テスターで測定した。
【0225】
(4)ボイドの有無
得られた接続構造体において、異方性導電ペースト層により形成された硬化物層にボイドが生じているか否かを、透明ガラス基板の下面側から目視により観察した。
【0226】
結果を下記の表1に示す。
【0227】
【表1】

【0228】
(参考例1)
実施例1で得られた異方性導電材料を用意した。
【0229】
L/Sが30μm/30μmのITO電極パターンが上面に形成された透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが30μm/30μmの銅電極パターンが下面に形成された半導体チップを用意した。
【0230】
上記透明ガラス基板上に、得られた異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層に紫外線照射ランプを用いて紫外線を照射し、光重合によって異方性導電ペースト層を半硬化させ、Bステージ化した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、3MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で完全硬化させ、接続構造体を得た。
【0231】
(参考例2)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を5重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が5重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0232】
(参考例3)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を15重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が15重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0233】
(参考例4)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を1重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が1重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0234】
(比較例3)
比較例1で得られた異方性導電材料を用意した。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0235】
(比較例4)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を20重量%となるように用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が20重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0236】
(比較例5)
異方性導電ペーストの調製の際に、導電性粒子を上記配合物100重量%中での含有量を0.1重量%となるように用いた以外は実施例1と同様にして、導電性粒子の含有量が0.1重量%である異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は参考例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0237】
(参考例1〜4及び比較例3〜5の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜2と同様に、上記(1)粘度(塗布前の粘度)、上記(3)リークの有無及び上記(4)ボイドの有無について評価を実施した。
【0238】
結果を下記の表2に示す。
【0239】
【表2】

【0240】
上記表2に示すように、参考例1〜4の異方性導電ペーストでは、リークが無く、ボイドも見られなかった。
【0241】
比較例3の異方性導電ペーストでは、紫外線の照射時に光重合により半硬化しなかったため、加圧及び加熱時に異方性導電ペーストが半導体チップの外周面よりも側方に多く流れた。このため、ガラス基板と半導体チップとの間における異方性導電ペーストの充填が不十分であり、ボイドが見られた。
【0242】
比較例4では、導電性粒子の含有量が多すぎたため、接続されてはならい隣り合う電極間が複数の導電性粒子を介して接続され、リークが発生したと考えられる。
【0243】
比較例5の異方性導電ペーストでは、リーグが無く、ボイドも見られなかった。しかし、導電性粒子の含有量が少なすぎたため、電極間に導電性粒子が配置されていない箇所が多くみられた。
【0244】
(参考例5)
レゾルシノール型エポキシ樹脂(結晶性樹脂、ナガセケムテックス社製「EX−201」)16重量部に、ナフタレン型エポキシ樹脂(結晶性樹脂、DIC社製「HP−4032」)14重量部と、熱硬化剤としてのアミンアダクト(味の素ファインテクノ社製「PN−23J」)5重量部と、光硬化性樹脂としてのエポキシアクリレート(ダイセル・サイテック社製「EBECRYL3702」)5重量部と、光硬化開始剤としてのアシルホスフィンオキサイド系化合物(チバ・ジャパン社製「DAROCUR TPO」)0.1重量部と、硬化促進剤としての2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーとしての平均粒子径0.25μmのシリカ30重量部とを配合し、さらに平均粒子径3μmの導電性粒子を配合物中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0245】
なお、用いた上記導電性粒子は、ジビニルベンゼン樹脂粒子の表面にニッケルめっき層が形成されており、かつ該ニッケルめっき層の表面に金めっき層が形成されている金属層を有する導電性粒子である。
【0246】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0247】
(参考例6)
レゾルシノール型エポキシ樹脂の添加量を16重量部から25重量部に変更し、かつナフタレン型エポキシ樹脂14重量部をビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製「エピコート1001」)5重量部に変更したこと以外は参考例5と同様にして、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0248】
(比較例6)
ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製「jER1001」)30重量部に、ポリグリシジルアミン(東都化成社製「YH−434」)30重量部と、熱硬化剤としてのジシアンジアミド(JER社製「DICY−7」)10重量部と、硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール1重量部と、フィラーとしてのシリカ(日本アエロジル工業社製「アエロジルRY200」)5重量部とを配合し、さらに参考例5と同じ導電性粒子を配合物中での含有量が10重量%となるように添加した後、遊星式攪拌機を用いて2000rpmで5分間攪拌することにより、配合物を得た。
【0249】
得られた配合物を、ナイロン製ろ紙(孔径10μm)を用いてろ過することにより、異方性導電ペーストを得た。得られた異方性導電ペーストを用いたこと以外は実施例1と同様にして、接続構造体を得た。
【0250】
(参考例5〜6及び比較例6の評価)
実施例1〜4及び比較例1〜2と同様に、上記(3)リークの有無及び上記(4)ボイドの有無について評価を実施した。また、下記の(1A)粘度、(5)塗布幅のばらつき及び(6)硬化物層の厚みについても評価を実施した。
【0251】
(1A)粘度
E型粘度計(東機産業社製)を用いて、得られた異方性導電ペーストの25℃及び2.5rpmでの粘度η1と、25℃及び5rpmでの粘度η2とを測定した。
【0252】
(5)塗布幅のばらつき
得られた異方性導電ペーストをノズル径1.1mmのシリンジに充填し、ディスペンサーを用いて、圧力300Pa、塗布厚み30μm、移動スピード10mm/s、塗布ライン距離20mm及び塗布幅1mmの条件で、異方性導電ペーストをガラス基板上に塗布した。
【0253】
異方性導電ペーストの塗布開始地点から2mmの距離、5mmの距離、10mmの距離の各地点での塗布幅を、測長機能付きのマイクロスコープで測定した。
【0254】
(6)硬化物層の高さ(厚み)
上記(5)の評価と同様にして、異方性導電ペーストをガラス基板上に塗布した。塗布の直後に紫外線を照射し、異方性導電ペーストの光硬化を開始させた。さらに、紫外線の照射から10秒後に、異方性導電ペーストが塗布されたガラス基板を150℃のオーブン内に5分間入れ、異方性導電ペーストを熱硬化させた。異方性導電ペーストの硬化により形成された硬化物層の高さを、マイクロメーターで測定した。
【0255】
結果を下記の表3に示す。
【0256】
【表3】

【0257】
参考例5〜6の異方性導電ペーストは、安定的に塗布でき、塗布幅はほぼ一定であった。さらに、参考例5の異方性導電ペーストでは、塗布時に異方性導電ペーストの流れが抑制されたため、得られた硬化物層の厚みが30μmであった。
【0258】
比較例6の異方性導電ペーストでは、塗布圧力が一定であるにもかかわらず、塗布量が変化し、塗布幅にばらつきが生じた。
【符号の説明】
【0259】
1…接続構造体
2…第1の接続対象部材
2a…上面
2b…電極
3…硬化物層(接続部)
3a…上面
3A…異方性導電材料層
3B…Bステージ化された異方性導電材料層
4…第2の接続対象部材
4a…下面
4b…電極
5…導電性粒子
11…複合装置
12…ディスペンサー
12a…シリンジ
12b…把持部
13…光照射装置
13a…光照射装置本体
13b…光照射部
21…光照射装置
21a…光照射装置本体
21b…光照射部
31…台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の接続対象部材の上面に、導電性粒子を含む異方性導電材料を塗布し、異方性導電材料層を形成する工程と、
前記異方性導電材料層に光を照射することにより、前記異方性導電材料層の硬化を進行させて、粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内となるように、前記異方性導電材料層をBステージ化する工程と、
Bステージ化された異方性導電材料層の上面に、第2の接続対象部材をさらに積層する工程とを備える、接続構造体の製造方法。
【請求項2】
前記異方性導電材料として、硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有する異方性導電材料を用いる、請求項1に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項3】
前記異方性導電材料として、光硬化性化合物と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いる、請求項2に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項4】
前記異方性導電材料として、熱硬化性化合物と、熱硬化剤と、導電性粒子とを含む異方性導電材料を用いる、請求項2又は3に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項5】
前記異方性導電材料として、硬化性化合物と、熱硬化剤と、光硬化開始剤と、導電性粒子とを含有し、前記導電性粒子の含有量が1〜19重量%の範囲内である異方性導電材料を用いる、請求項2〜4のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項6】
前記第1の接続対象部材の上面に電極が設けられており、前記第2の接続対象部材の下面に電極が設けられており、第1,第2の接続対象部材の電極を、前記導電性粒子を介して電気的に接続する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の接続構造体の製造方法。
【請求項7】
硬化性化合物と、熱硬化剤及び光硬化開始剤の内の少なくとも一種と、導電性粒子とを含有し、
光の照射により硬化が進行され、Bステージ化した後の粘度が2000〜3500Pa・sの範囲内である、異方性導電材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−71107(P2011−71107A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−185140(P2010−185140)
【出願日】平成22年8月20日(2010.8.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】