説明

接続端子

【課題】電気接続箱等のハウジングへの挿入性を良好とする。
【解決手段】音叉状端子3の突出方向前方を非接触で横切る第1保護部11と、その第1保護部11の両端をスタビライザ5,5に夫々接続する一対の第2保護部12,12と、を備えて音叉状端子3の外側を同一平面上で囲み、音叉状端子3の使用時には切断除去されるプロテクタ10を連設する一方、スタビライザ5と第2保護部12との接続部分に横断面V字状のノッチ14を形成して、ノッチ14の位置でプロテクタ10を切断除去可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用の電気接続箱に用いられるバスバー等の接続端子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用の電気接続箱に用いられるバスバーは、特許文献1に開示のように、基板部の一端に、バッテリに接続される電線を圧着するバレルからなる電線圧着部を備える一方、基板部の他端に、複数の音叉状端子を所定間隔をおいて並列に突設したものとなっている。特にここでは、電線圧着部に電線を圧着して電気接続箱に収容するまでのワイヤハーネス製造工程において、音叉状端子が外力によって変形することを防止するために、音叉状端子を挟む左右両側に、四角形の透孔を備えた位置決め部を延長する格好で、音叉状端子の突出量以上となる端子変形防止板を突設する構成を採用している。この位置決め部は、バスバーを電気接続箱に収容する際に、電気接続箱のハウジングに形成された収容溝に差し込まれて位置決めされるもので、このとき透孔には、収容溝に設けられた矢尻状の係止片(ランス)が係止してバスバーを抜け止めするようになっている。
そして、同文献1には、当該端子変形防止板の端部間を架橋部によって連結することで、音叉状端子を側方及び上方から保護する例が開示されている(同文献図5)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−19259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように架橋部を設けると、バスバーを使用する際には架橋部を切断除去する必要があり、この切断除去は端子変形防止板の部分で行われている。よって、バスバー使用の際には、切断除去によって残る端子変形防止板の切断端部から係止片が乗り上がって位置決め部の透孔まで達することになるが、この乗り上がりの際に切断端部と係止片とが干渉しやすく、挿入性が悪くなって電気接続箱の組立に係る作業性の低下を招くおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、架橋部の切断端部から係止片が乗り上がる場合であっても、挿入性を良好にして電気接続箱等の組み立てに係る作業性を向上させることができる接続端子を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、分岐端子の突出方向前方を非接触で横切る第1保護部と、その第1保護部の両端を位置決め部に夫々接続する一対の第2保護部と、を備えて分岐端子の外側を同一平面上で囲み、分岐端子の使用時には切断除去されるプロテクタを連設する一方、位置決め部とプロテクタの第2保護部との接続部分に横断面V字状の溝を形成して、溝の位置でプロテクタを切断除去可能としたことを特徴とするものである。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、プロテクタをより簡単に切断除去可能とするために、位置決め部を、使用する際に位置決め部に係止させる係止片の幅を少なくとも有する帯状としたことを特徴とするものである。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、位置決め部の挿入性の一層の向上を図るために、位置決め部における第2保護部との接続端の幅を溝の形成長さよりも大きくして、溝の両側に、第2保護部の両側へ非接触で突出し、突出端が半円形状となる突部を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、横断面V字状の溝によって位置決め部の切断端部がテーパ状となるため、当該端部から係止片が乗り上がる際の干渉が緩和され、挿入性が良好となる。よって、電気接続箱等の組み立てに係る作業性が向上する。
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、位置決め部が幅狭となって手でも簡単にプロテクタを折り取ることができる。
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加えて、係止片が両側の突部によって位置決め部の端部へスムーズに案内されるため、挿入性の一層の向上が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、接続端子の一例であるバスバーの斜視図、図2はバスバーの説明図で、右が正面、左が側面、下が底面となっている。このバスバー1は、導電性金属板をプレス加工してなり、背景技術で説明したものと同様に、自動車用の電気接続箱へ電源分配用に設けられる。2は、バスバー1の下端で長手方向の中央に突設される圧着部で、バッテリに接続される図示しない電線が圧着される。一方、バスバー1の上端には、先端中央から切込み4を夫々形成した分岐端子としての音叉状端子3,3・・が、所定間隔をおいて複数個(ここでは11個)並列に突設されている。
【0009】
また、バスバー1の上端において、音叉状端子3,3・・の左右両側には、位置決め部となる帯状のスタビライザ5,5が、音叉状端子3と平行に形成されると共に、スタビライザ5の上方部分には、四角形状の透孔6が形成されている。このスタビライザ5は、上端が音叉状端子3の上端よりも低くなるように形成され、バスバー1を電気接続箱に収容する際に、電気接続箱のハウジングに形成された収容溝に差し込まれて位置決めされるもので、このとき透孔6には、収容溝に設けられた矢尻状の係止片(ランス)が係止してバスバー1を抜け止めするようになっている。
【0010】
さらに、バスバー1において音叉状端子3の下方には、補強リブ7が形成されている。この補強リブ7は、プレス機の金型による半押しでバスバー1の一方の面側へ突出形成されるもので、左右のスタビライザ5,5を除く音叉状端子3,3・・の形成領域に亘って長手方向に形成される横リブ8と、その横リブ8の中央から圧着部2の根元部分まで下向きに形成される縦リブ9とからなるT字状となっている。
【0011】
そして、バスバー1の上端側には、プロテクタ10が設けられている。このプロテクタ10は、音叉状端子3の上方を非接触で左右方向に横切る第1保護部11と、その第1保護部11の両端から下方に連設されて左右のスタビライザ5に夫々接続される一対の第2保護部12,12とからなり、第1保護部11には、音叉状端子3,3の間で下向きに突出する突起13,13・・が複数個並列に突設されている。
また、第2保護部12は、透孔6と略同じ幅でスタビライザ5と接続され、スタビライザ5の上端との間には、図5(A)に示すように、横断面がV字状のノッチ(溝)14が、後述する係止片17の幅よりも若干大きい長さで夫々刻設されて、ノッチ14,14の位置でプロテクタ10を折り取れるようになっている。さらに、ここではスタビライザ5の上端の幅がノッチ14の形成長さよりも大きく設定されて、ノッチ14の両側に、第2保護部12の両側へ非接触で突出し、突出端が半円形状となる突部15,15が形成されている。
【0012】
一方、突起13は、図3に示すように、音叉状端子3,3の上端間を結ぶ線Lを越えて先端が下方へ突出するように形成されている。これにより、左右方向(音叉状端子3の並設方向)で見て突起13と音叉状端子3とがオーバーラップし、両者の間に上下方向での隙間が生じないようになっている。また、各音叉状端子3の上端部は、一対の面取部16,16によって上端へ行くほど幅が狭くなるテーパ状に形成されて、突起13の先端を、左右に隣接する音叉状端子3,3の面取部16,16の間に位置させて、音叉状端子3とその間に突出する突起13との間に隙間Sを確保するようにしている。
【0013】
以上の如く構成されたバスバー1においては、周知のプレス機によってプロテクタ10が連設された状態で製造される。従って、音叉状端子3はプロテクタ10によって上方及び左右両側が保護された格好となる。特に、プロテクタ10の第1保護部11に設けた突起13により、音叉状端子3,3・・と第1保護部11との間には、他のバスバーが入り込む隙間は生じていないため、プレス機から排出された際にそのまま積み重ねるように製品受け箱等に収納されても、音叉状端子3が他のバスバーと干渉するおそれは非常に少なくなる。
【0014】
そして、電気接続箱に組み込む際には、左右のノッチ14,14の部分で第2保護部12,12をスタビライザ5,5から折り取るようにしてプロテクタ10を取り除くと、図4に示すように音叉状端子3,3・・が露出して使用可能となる。
このとき、ノッチ14,14によってプロテクタ10の切断除去が簡単に行えると共に、切断除去した後のスタビライザ5の上端(切断端部)は、図5(B)のように、上端へ向かって先細りとなるテーパ状となるため、電気接続箱のハウジングに差し込む際に係止片17が乗り上がりやすくなり、挿入性が向上する。また、突部15,15がノッチ14から上方へ突出する格好となるため、両側の突部15,15によって係止片17がスムーズにスタビライザ5の上端へ案内されることになる。
【0015】
一方、バスバー1には、横リブ8が設けられているので、音叉状端子3,3・・が多数並設されて左右方向に長くなっても強度が確保でき、変形のおそれが少なくなる。特に、横リブ8は、スタビライザ5,5に達しない長さで形成されているため、スタビライザ5,5による位置決め機能に影響を与えることなく強度アップが達成可能となっている。加えて、ここでは縦リブ9も設けられているので、圧着部2の根元部分での強度も高くなり、全体に変形に強いバスバー1が得られる。
【0016】
このように、上記形態のバスバー1によれば、音叉状端子3の突出方向前方を非接触で横切る第1保護部11と、その第1保護部11の両端をスタビライザ5,5に夫々接続する一対の第2保護部12,12と、を備えて音叉状端子3の外側を同一平面上で囲み、音叉状端子3の使用時には切断除去されるプロテクタ10を連設する一方、スタビライザ5と第2保護部12との接続部分に横断面V字状のノッチ14を形成して、ノッチ14の位置でプロテクタ10を切断除去可能としたことで、スタビライザ5,5の切断端部がテーパ状となり、当該端部から係止片17が乗り上がる際の干渉が緩和され、挿入性が良好となる。よって、電気接続箱の組み立てに係る作業性が向上する。
【0017】
特にここでは、スタビライザ5を、使用する際にスタビライザ5に係止させる係止片17の幅を少なくとも有する帯状としているので、スタビライザ5が幅狭となって手でも簡単にプロテクタ10を折り取ることができる。
また、スタビライザ5における第2保護部12との接続端の幅をノッチ14の形成長さよりも大きくして、ノッチ14の両側に、第2保護部12の両側へ非接触で突出し、突出端が半円形状となる突部15,15を設けたことで、係止片17が両側の突部15,15によってスタビライザ5の端部へスムーズに案内されるため、挿入性の一層の向上が期待できる。
【0018】
なお、上記形態では、スタビライザと第2保護部との接続部の前後両面に夫々ノッチを形成しているが、係止片が乗り上がる側の面のみにノッチを形成しても差し支えない。また、突部も、ノッチの左右両側でなく、何れか一方にのみ設けるようにしてもよい。
さらに、プロテクタの形状も上記形態に限らず、突起の数の増減や突起の省略は可能である。
一方、分岐端子も、数の増減は勿論、先端に面取部を設けない形状であってもよい。
その他、上記形態では、下端に圧着部を備えて電線が圧着されるバスバーで説明しているが、下端に基板への接続端子部を突設したヒューズ用のバスバー等、他の接続端子であっても本発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】バスバーの斜視図である。
【図2】バスバーの説明図で、右が正面、左が側面、下が底面を夫々示す。
【図3】バスバーの部分拡大図である。
【図4】プロテクタを切断除去したバスバーの斜視図である。
【図5】(A)はノッチ部分の説明図、(B)はスタビライザへの係止片の係止状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1・・バスバー、2・・圧着部、3・・音叉状端子、5・・スタビライザ、6・・透孔、7・・補強リブ、8・・横リブ、9・・縦リブ、10・・プロテクタ、11・・第1保護部、12・・第2保護部、13・・突起、14・・ノッチ、15・・突部、16・・面取部、17・・係止片、S・・隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属板で形成され、所定形状で突出する分岐端子を所定間隔をおいて複数並設し、前記分岐端子の並設方向で前記複数の分岐端子の両外側に、前記分岐端子と平行な一対の位置決め部を形成した接続端子であって、
前記分岐端子の突出方向前方を非接触で横切る第1保護部と、その第1保護部の両端を前記位置決め部に夫々接続する一対の第2保護部と、を備えて前記分岐端子の外側を同一平面上で囲み、前記分岐端子の使用時には切断除去されるプロテクタを連設する一方、
前記位置決め部とプロテクタの第2保護部との接続部分に横断面V字状の溝を形成して、前記溝の位置で前記プロテクタを切断除去可能としたことを特徴とする接続端子。
【請求項2】
前記位置決め部を、使用する際に前記位置決め部に係止させる係止片の幅を少なくとも有する帯状としたことを特徴とする請求項1に記載の接続端子。
【請求項3】
前記位置決め部における前記第2保護部との接続端の幅を前記溝の形成長さよりも大きくして、前記溝の両側に、前記第2保護部の両側へ非接触で突出し、突出端が半円形状となる突部を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の接続端子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−245825(P2009−245825A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92470(P2008−92470)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】