説明

接続部材、防水接続構造

【課題】電線と端子との接続箇所における防水性を高めることが可能な接続部材、及びこれを利用した防水接続構造を提供すること。
【解決手段】端子に接続される端子接続部と、電線を巻き込むように変形することによって前記電線の芯線に圧着されるセレーションと、前記電線を巻き込むように変形することによって前記電線の絶縁被覆を圧着して保持するインシュレーションバレルと、が直列状に形成された平板状の接続部材であって、前記インシュレーションバレルには、前記電線の延出方向に向けて厚さが薄くなるテーパー部が形成されていることを特徴とする、接続部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線と端子とを接続させる接続部材、及びこれを利用した防水接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電線をアース端子等に接続させるための部材として、端子との接続部、セレーション、インシュレーションバレルが直列状に形成された平板状の接続部材が用いられている。端子との接続部は、例えばリング状に形成され、これによって複数の接続部材を重ねてボルトにより端子に接続することが可能となる。
【0003】
このような接続構造においては、特に芯線部分に対して水の侵入を防止する必要があるため、例えば電線を巻き込んで圧着した状態のセレーションやインシュレーションバレル等をモールド樹脂で封止した防水接続構造が採用される。
【0004】
特許文献1には、アース用端子金具と電線との接続部分をモールド樹脂によって包囲させ、モールド樹脂によって電線の芯線内への浸水を防止する構造について記載されている。この構造は、被覆電線の先端部導体に端子金具を圧着して形成された圧着部に、圧着部の底面を除く両側面と上面の三方に高粘度シール樹脂を被覆して構成されるものとしている。
【0005】
また、特許文献2には、複数の電線を束ねてアース用端子金具に接続し、接続部分をモールド樹脂で包囲したアース用端子金具の防水構造について記載されている。この構造では、複数の電線を、アース用端子金具との接続位置から、モールド樹脂の外面における導出位置に向かって電線同士が離間するように配索し、モールド樹脂の外面では各電線が他の電線とは離間した位置から導出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−167821号公報
【特許文献2】特開2005−005201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記従来の防水接続構造では、電線にかけられる力Fによって接続部材とモールド樹脂の境界面等に応力が集中し、更に温度変化に対する伸び量の相違によって力が作用する結果、モールド樹脂にクラック(割れ)が生じるおそれがある。この結果、クラックが芯線の露出箇所にまで達し、電線と端子との接続箇所における防水性を実現することができない場合がある。図1は、従来の防水接続構造において、モールド樹脂にクラックCRが生じる様子を示す図である。従来の防水接続構造は、端子に接続される接続部A、セレーションB、インシュレーションバレルC、モールド樹脂Dを有し、セレーションBが電線Eの芯線Eaを、インシュレーションバレルCが電線Eの絶縁被覆Ebを保持する構造となっている。
【0008】
本発明は、1側面によれば、電線と端子との接続箇所における防水性を高めることが可能な接続部材、及びこれを利用した防水接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の第1の態様は、
端子に接続される端子接続部と、
電線を巻き込むように変形することによって前記電線の芯線に圧着されるセレーションと、
前記電線を巻き込むように変形することによって前記電線の絶縁被覆を圧着して保持するインシュレーションバレルと、
が直列状に形成された平板状の接続部材であって、
前記インシュレーションバレルには、前記電線の延出方向に向けて厚さが薄くなるテーパー部が形成されていることを特徴とする、
接続部材である。
【0010】
この本発明の第1の態様によれば、インシュレーションバレルに、前記電線の延出方向に向けて厚さが薄くなるテーパー部が形成されているため、セレーションとインシュレーションバレルを封止したモールド樹脂において、当該接続部材との境界面に応力が集中することを緩和することができる。この結果、電線と端子との接続箇所における防水性を高めることができる。
【0011】
本発明の第1の態様において、
前記テーパー部は、例えば、前記インシュレーションバレルの前記電線を巻き込む側に斜面を設けることによって形成される。
【0012】
本発明の第2の態様は、
本発明の第1の態様の接続部材に前記電線が接続された状態で、前記セレーション及びインシュレーションバレルを樹脂で封止したことを特徴とする、
防水接続構造である。
【0013】
この本発明の第2の態様によれば、本発明の第1の態様の接続部材を用いているため、電線と端子との接続箇所における防水性を高めることができる。
【0014】
本発明の第1の態様において、
前記端子接続部は、例えばアース端子に接続される。
【0015】
また、本発明の第1の態様において、
前記端子接続部は、例えばリング状に形成され、他の接続部材と共にまとめてボルト等によりアース端子に接続することが可能である。
【0016】
また、本発明の第1の態様において、
前記端子接続部と、前記セレーションと、前記インシュレーションバレルとは、例えば導電性金属を平板状に打ち抜くことによって形成される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、1側面によれば、電線と端子との接続箇所における防水性を高めることが可能な接続部材、及びこれを利用した防水接続構造を提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来の防水接続構造において、モールド樹脂にクラックが生じる様子を示す図である。
【図2】本発明の一実施例に係る接続部材10の形状の一例を示す図である。
【図3】接続部材10が電線50に接続され、接続箇所がモールド樹脂60で封止された防水接続構造1を示す図である。
【図4】本実施例の防水接続構造1を実現した接続部材10が、他の接続部材と共にまとめてボルト70によりアース端子80に接続される様子を示す図である。
【図5】本実施例の防水接続構造1を実現した接続部材10が、平板状のアース端子(アース板)80に接続される様子を示す図である。
【図6】本実施例の接続部材10が電線50に接続され、防水接続構造1が形成される際の手順を示すフローチャートである。
【図7】インシュレーションバレル40における内側に傾斜を設けることによってテーパー部42を形成する場合の接続部材10の形状の一例を示す図である。
【図8】インシュレーションバレル40における内側と外側の双方に傾斜を設けることによってテーパー部42を形成する場合の接続部材10の形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら実施例を挙げて説明する。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の一実施例に係る接続部材、及びこれを利用した防水接続構造について説明する。
【0021】
図2は、本発明の一実施例に係る接続部材10の形状の一例を示す図である。図2(A)は、接続部材10を上面視によって示す図であり、図2(B)は接続部材10のA−A線における断面図である。
【0022】
図示するように、接続部材10は、例えばアース端子に接続される端子接続部20と、セレーション30と、インシュレーションバレル40と、が直列状に形成された平板状の接続部材である。接続部材10は、例えば、真ちゅう等の導電性の板材を図2(A)に示す形状に打ち抜くこと等によって形成される。
【0023】
端子接続部20は、例えばリング状に形成され、他の接続部材と共にまとめてボルト等によりアース端子に接続することが可能となっている。
【0024】
セレーション30は、内側(後述するように電線50を巻き込む側)に帯状の凹凸部32が形成された部位である。
【0025】
インシュレーションバレル40には、図2(B)に示すように、テーパー部42が形成されている。テーパー部42は、インシュレーションバレル40における内側(同上)に傾斜を設けることによって形成され、電線50の導出方向(図2におけるX方向)に向けてインシュレーションバレル40の厚さが薄くなるようにしている。
【0026】
図3は、接続部材10が電線50に接続され、接続箇所がモールド樹脂60で封止された防水接続構造1を示す図である。
【0027】
図示するように、セレーション30は、絶縁被覆54が剥がされて露出した芯線52が載置された状態で電線50側に曲げ加工され、芯線52をくるむように芯線52を保持する。この際に、セレーション30の凹凸部32によって電線50の酸化物が破壊され、電線50と接続部材10が電気的及び機械的に良好に接続される。
【0028】
インシュレーションバレル40は、電線50が載置された状態で電線50側に曲げ加工され、絶縁被覆54の上から電線50を保持する。
【0029】
モールド樹脂60は、例えばエポキシ樹脂を主成分に、シリカ充填材等を加えた熱硬化性素材であり、上記のようにセレーション30やインシュレーションバレル40が電線50を保持した状態で、セレーション30及びインシュレーションバレル40を覆うように注入及び形成される。
【0030】
図4は、本実施例の防水接続構造1を実現した接続部材10が、他の接続部材10#と共にまとめてボルト70によりアース端子80に接続される様子を示す図である。図4に示す他の接続部材10#は、本実施例の防水接続構造1を採用していない。このように、本実施例の接続部材10及び防水接続構造1は、他の態様の接続部材とまとめてアース端子80に接続されることが可能である。
【0031】
また、図5は、本実施例の防水接続構造1を実現した接続部材10が、平板状のアース端子(アース板)80に接続される様子を示す図である。図5に示すような構造では、電線50が図中Z方向等にある程度の力で引っ張られる場合があり、この場合、モールド樹脂60に対して曲げ応力が作用することがある。
【0032】
従来の構成では、係る曲げ応力によって、前述したようにモールド樹脂にクラックが生じるおそれがある。この結果、クラックが芯線の露出箇所にまで達し、電線と端子との接続箇所における防水性を実現することができない場合がある。
【0033】
これを防止するために、モールド樹脂を十分に大きくすることも考えられるが、モールド樹脂の大きさは装置設計の段階で制限されている場合が多く、無制限にモールド樹脂を大きくするのは困難であるのが現状である。
【0034】
これに対し、本実施例の接続部材10では、インシュレーションバレル40に、電線50の延出方向に向けて厚さが薄くなるテーパー部42が形成されているため、セレーション30とインシュレーションバレル40を封止したモールド樹脂60において、接続部材10との境界面に応力が集中することを緩和することができる。図3に示すように、接続部材10とモールド樹脂60の境界面αは、図1に占めす従来構造と比較して、図中Y方向に関して短くなっている。
【0035】
また、接続部材10とモールド樹脂60の図3におけるX方向の境界面を長くとることができるため、仮にモールド樹脂60にクラックが生じた場合でも、水等が芯線52に至るまでの距離を長くすることができるため、芯線52まで水等が侵入する可能性を低くすることができる(図3における破線を参照)。この結果、電線50とアース端子80の接続箇所における防水性を高めることができる。
【0036】
以下、本実施例の接続部材10が電線50に接続され、防水接続構造1が形成される際の手順について簡単に説明する。図6は、本実施例の接続部材10が電線50に接続され、防水接続構造1が形成される際の手順を示すフローチャートである。
【0037】
まず、電線50の先端において、一定幅の絶縁被覆54が剥がされる(S100)。
【0038】
次に、絶縁被覆54が剥がされて露出した芯線52がセレーション30に当接し、絶縁被覆54が残った箇所がインシュレーションバレル40に当接するように、電線50を接続部材10に載置する(S110)。
【0039】
次に、セレーション30を電線50側に折り曲げ、セレーション30が芯線52をくるむように、セレーション30を芯線52に押圧する(S120)。
【0040】
次に、インシュレーションバレル40を電線50側に折り曲げ、インシュレーションバレル40が電線50をくるむように、インシュレーションバレル40を絶縁被覆54の上から電線50に押圧する(S130)。
【0041】
S120及びS130の手順は、人がペンチ等で行ってもよいし、工作機械によって行ってもよい。
【0042】
S120及びS130の手順が終了すると、例えば型枠に電線50が接続された接続部材10を収容し、セレーション30及びインシュレーションバレル40を覆うように、モールド樹脂60を注入してセレーション30及びインシュレーションバレル40を封止する(S140)。
【0043】
加熱処理等を経てモールド樹脂60が固まると、接続部材10及び電線50を型枠から取り出す(S150)。
【0044】
係る手順を経ることによって、本実施例の防水接続構造1が完成する。防水接続構造1を先端部に備える電線50は、所望のアース端子80にボルト等によって接続することができる。
【0045】
以上説明した本実施例の接続部材10によれば、電線と端子の接続箇所における防水性を高めることができる。
【0046】
また、これを利用した防水接続構造1によれば、所望の端子に接続することによって、電線と端子の接続箇所における防水性を高めることができる。
【0047】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【0048】
例えば、本発明の接続部材及びこれを利用した防水接続構造は、電線をアース端子に接続する用途に限らず、信号線を信号端子に接続する等、他の用途に適用することが可能である。
【0049】
また、テーパー部42は、インシュレーションバレル40における内側(電線50を巻き込む側)に傾斜を設けることによって形成されるものとしたが、インシュレーションバレル40における外側(電線50を巻き込む側と反対側)に傾斜を設けることによって形成されるものとしてもよい。図7は、インシュレーションバレル40における内側に傾斜を設けることによってテーパー部42を形成する場合の接続部材10の形状の一例を示す図である。
【0050】
また、テーパー部42は、インシュレーションバレル40における内側と外側の双方に傾斜を設けることによって形成されるものとしてもよい。図8は、インシュレーションバレル40における内側と外側の双方に傾斜を設けることによってテーパー部42を形成する場合の接続部材10の形状の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1 防水接続構造
10 接続部材
20 端子接続部
30 セレーション
32 凹凸部
40 インシュレーションバレル
42 テーパー部
50 電線
52 芯線
54 絶縁被覆
60 モールド樹脂
70 ボルト
80 アース端子
CR クラック
F 力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子に接続される端子接続部と、
電線を巻き込むように変形することによって前記電線の芯線に圧着されるセレーションと、
前記電線を巻き込むように変形することによって前記電線の絶縁被覆を圧着して保持するインシュレーションバレルと、
が直列状に形成された平板状の接続部材であって、
前記インシュレーションバレルには、前記電線の延出方向に向けて厚さが薄くなるテーパー部が形成されていることを特徴とする、
接続部材。
【請求項2】
請求項1に記載の接続部材であって、
前記テーパー部は、前記インシュレーションバレルの前記電線を巻き込む側に斜面を設けることによって形成されることを特徴とする、
接続部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の接続部材に前記電線が接続された状態で、前記セレーション及びインシュレーションバレルを樹脂で封止したことを特徴とする、
防水接続構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2013−98160(P2013−98160A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243380(P2011−243380)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】