説明

接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための流動層触媒

【課題】ナフサの接触分解によってエチレンおよびプロピレンを製造する反応において、比較的高い反応温度ならびに低温における活性および選択性が高い触媒を提供する。
【解決手段】担体と、化学量論比に基づく以下の化学式:Mo1.0VaAbBcCdOX[式中、AはVIII族、IB族、IIB族、VIIB族、VIB族、IA族およびIIA族から選択される元素であり、Bは希土類元素から選択される元素であり、CはBiおよび/またはPであり、aは0.01〜0.5であり、bは0.01〜0.5であり、cは0.01〜0.5であり、dは0〜0.5であり、Xは触媒中の元素の原子価を満たす酸素原子の総数を表す。]の組成物を含み、使用される触媒担体の量は触媒の重量を基準にして20〜80wt%である、流動層触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解(クラッキング)によるエチレンおよびプロピレン製造のための流動層触媒、特にナフサの接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための流動層触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
最近は蒸気熱分解が最も一般的なエチレンおよびプロピレンの製造方法であり、ナフサは最もよく使用される原料である。しかしナフサの蒸気熱分解には、高い反応温度、厳密な工程条件、装置(特に炉管材料)に対する高度な要求、放出される大量のCO2および大きな損失を含む短所がある。上記の短所をもたらさない適切な分解触媒を探し出すことは、ますます注目を集める問題になっている。
【0003】
Royal Philips Electronics(米国)の米国特許第4620051号および同第4705769号では、活性成分としての酸化マンガンまたは酸化第二鉄、希土類元素Laおよびアルカリ土類金属Mgを含む酸化物触媒が、C3およびC4原料の分解に使用されている。このMn,Mg/Al2O3触媒は実験室で固定層反応器に入れられ、温度は700℃であり、水対ブタンのモル比は1:1であり、ブタン転化率は80%に達し得、エチレンおよびプロピレン選択率はそれぞれ34%および20%である。前記二つの特許では、ナフサおよび流動層反応器も使用できると主張されている。
【0004】
Enichem SPA(イタリア)の中国特許出願公開第1317546A号は、蒸気熱分解反応用の化学式12CaO・7Al2O3の触媒に関する。ナフサを原料とすることができ、作業温度は720〜800℃であり、圧力は1.1〜1.8気圧であり、接触時間は0.07〜0.2秒であり、エチレンおよびプロピレン収率は43%に達しうる。
【0005】
ソビエト(USSR)特許1298240.1987では、軽石またはセラミックに担持されたZr2O3が使用され、温度は660〜780℃であり、中ぐらいの装置の空間速度は2〜5h-1であり、水対ナフサの重量比は1:1である。原料はN-パラフィンC7-17、シクロヘキサンおよび直留ガソリンであり、エチレン収率は46%、プロピレン収率は8.8%に、それぞれ達しうる。
【0006】
中国特許出願公開第1480255A号では、原料ナフサを温度780℃で接触分解することによるエチレンおよびプロピレン製造用の酸化物触媒が発表されており、この場合、エチレンおよびプロピレン収率は47%に達しうる。
【0007】
要約すれば、接触分解によってエチレンおよびプロピレンを製造する現在の技術は、比較的高い反応温度を必要とするが、エチレンおよびプロピレンの収率はそれほど増加しない。
【特許文献1】米国特許第4620051号
【特許文献2】米国特許第4705769号
【特許文献3】中国特許出願公開第1317546A号
【特許文献4】ソビエト特許1298240.1987
【特許文献5】中国特許出願公開第1480255A号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決すべき技術的課題は、高い反応温度ならびに低温における触媒の低い活性および乏しい選択性を含む先行技術の接触分解方法の欠点を解消することである。本発明は、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための新規流動層触媒を提供する。前記触媒は低い反応温度、優れた触媒活性、ならびにエチレンおよびプロピレンに対する高い選択性という利点を持つ。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決法を採用する:接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための流動層触媒であって、SiO2、Al2O3、分子篩および複合分子篩から選択される少なくとも1つの担体と、化学量論比に基づく以下の化学式:
Mo1.0VaAbBcCdOX
[式中、
AはVIII族、IB族、IIB族、VIIB族、VIB族、IA族およびIIA族から選択される少なくとも1つの元素であり、
Bは希土類元素から選択される少なくとも1つであり、
CはBiおよびPから選択される少なくとも1つであり、
aは0.01〜0.5であり、
bは0.01〜0.5であり、
cは0.01〜0.5であり、
dは0〜0.5であり、
Xは触媒中の元素の原子価を満たす酸素原子の総数を表す。]
の組成物とを含み、
分子篩はZSM-5、Y、ベータ、MCM-22、SAPO-34およびモルデナイトの少なくとも1つであり、複合分子篩はZSM-5、Y、ベータ、MCM-22、SAPO-34およびモルデナイトの少なくとも二つの分子篩を一緒に成長させた複合材料であり、
使用される触媒担体の量は触媒の重量を基準にして20〜80wt%である、
流動層触媒。
【0010】
この技術的解決法では、aは好ましくは0.01〜0.3であり、bは好ましくは0.01〜0.3であり、cは好ましくは0.01〜0.3であり、dは好ましくは0.01〜0.3である。VIII族の元素は好ましくはFe、CoおよびNiから選択される少なくとも1つであり、IB族の元素は好ましくはCuおよびAgから選択される少なくとも1つであり、IIB族の元素は好ましくはZnであり、VIIB族の元素は好ましくはMnおよびReから選択される少なくとも1つであり、VIB族の元素は好ましくはCr、MoおよびWから選択される少なくとも1つであり、IA族の元素は好ましくはLi、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、IIA族の元素は好ましくはCa、Mg、SrおよびBaから選択される少なくとも1つである。希土類元素は好ましくはLaおよびCeから選択される少なくとも1つである。Crが触媒の一成分である場合、Mo:Crの比は化学量論比に基づいて1:0.01〜0.5である。好ましい触媒担体では、分子篩がZSM-5、ゼオライトY、モルデナイトおよびゼオライトベータから選択される少なくとも1つであり、複合分子篩はZSM-5/モルデナイト、ZSM-5/ゼオライトYおよびZSM-5/ゼオライトベータから選択される少なくとも1つである。前記分子篩および前記複合分子篩のシリカ-アルミナモル比SiO2/Al2O3は10〜500、好ましくは20〜300である。使用される触媒担体の量は、好ましくは、触媒の重量を基準にして30〜50wt%である。
【0011】
接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造用の本発明の流動層触媒は、重油、経由、軽質ガソリン、接触分解ガソリン、ガスオイル、コンデンセート油、C4オレフィンまたはC5オレフィンの接触分解に有用である。
【0012】
本発明の触媒は以下の工程によって製造される。原料Moはモリブデン酸アンモニウムまたはリンモリブデン酸に由来し、Vはメタバナジウム酸アンモニウムまたは五酸化バナジウムに由来し、Biは硝酸ビスマスに由来し、A元素は対応する硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酸化物または可溶性ハロゲン化物に由来し、B元素は対応する硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、酸化物または可溶性ハロゲン化物に由来し、リンはリン酸、リン酸三アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸水素アンモニウムに由来する。成分元素および担体を含むスラリーを温度70〜80℃の水浴で5時間にわたって加熱環流し、スラリーを噴霧乾燥し、得られた粉末を温度600〜750℃のマッフル炉で3〜10時間にわたって焼結することにより、触媒を成形する。
【0013】
本発明では、低温吸着性、酸化還元性および二元官能性酸性および塩基性錯体形成部位を持つ一連の遷移金属および希土類金属であって、比較的高い低温活性を持ち、原料に対して酸化触媒作用を果たすものを使用する。本触媒は、600〜650℃という比較的低い温度で、ナフサを接触分解する反応に使用され、最高45.3%というエチレンおよびプロピレンの総収率をもたらし、より良い技術的効果が達成される。
【0014】
該当する触媒を、ナフサを原料として試験し、評価する(具体的指標については表1参照)。反応温度は600〜650℃の範囲にあり、触媒の負荷は0.5〜2gナフサ/g触媒・hであり、水対ナフサの重量比は1.5〜3:1である。流動層反応器の内径は39mmであり、反応圧は0〜0.2MPaである。
【表1】

【0015】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに例示する。
【実施例】
【0016】
実施例1
硝酸ビスマス5.89gを計量し、1:1濃硝酸10mlに溶解して、黄色溶液を得た。モリブデン酸アンモニウム30gを計量し、水200mlに溶解した。次に、モリブデン酸アンモニウム水溶液を硝酸ビスマス溶液に加えた。得られた混合溶液を撹拌して溶液(I)を調製した。
【0017】
メタバナジウム酸アンモニウム3gを計量し、水100mlに加えた。次に、そのメタバナジウム酸アンモニウムと水との混合物に、80%リン酸2mlを滴下し、シュウ酸3gを加えた。得られた混合物を、メタバナジウム酸アンモニウムが完全に溶解するまで加熱することにより、溶液(II)を調製した。
【0018】
硝酸コバルト7.86g、硝酸セリウム5.58gおよび硝酸カルシウム6.72gを計量し、水250mlに溶解して溶液(III)を得た。
【0019】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。シリカ26gを計量し、混合溶液に加えた。得られた溶液を5時間還流し、成形のために噴霧乾燥機で乾燥した。得られた粉末を篩分けし、マッフル炉に入れた。次に、温度を740℃に上昇させた。粉末を5時間焼結した。それを冷却した後、触媒を篩分けした。
【0020】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Ca0.17Ce0.08OX+30.6%担体によって表された。
【0021】
触媒の活性を以下の条件下で評価した:内径39mmの流動層反応器、反応温度650℃、圧力0.15MPa、水対ナフサの重量比3:1、触媒の充填量20g、および負荷1gナフサ/g触媒・h。気体生成物をガスクロマトグラフィーのために集めた。生成物分布を表2に示す。
【表2】

【0022】
実施例2
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸第二鉄10.91g、硝酸ニッケル3.73g、硝酸ランタン5.85gおよび硝酸カリウム1.1gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0023】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に酸化アルミニウム26gを加えた。
【0024】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Fe0.16Ni0.08K0.06La0.08OX+30.06%担体によって表された。
【0025】
触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物分布を表3に示す。
【表3】

【0026】
実施例3
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸コバルト7.86g、硝酸バリウム1.68g、硝酸セリウム2.79gおよび硝酸カリウム1.30gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0027】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に二酸化ケイ素30gおよび酸化アルミニウム1.5gを加えた。
【0028】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Ba0.04K0.04Ce0.08OX+37.5%担体によって表された。
【0029】
触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率29.89%、プロピレン収率7.37%およびエチレン+プロピレン収率37.25%。
【0030】
実施例4
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸コバルト3.73g、硝酸銅3.10g、硝酸セリウム2.79gおよび硝酸カリウム1.30gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0031】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に二酸化ケイ素15gおよびシリカ-アルミナ比150のH-ZSM-5分子篩11gを加えた。
【0032】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.08Cu0.08K0.08Ce0.04OX+34.3%担体によって表された。触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率25.55%、プロピレン収率16.73%およびエチレン+プロピレン収率42.28%。
【0033】
実施例5
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸コバルト7.86g、硝酸亜鉛0.8gおよび硝酸ランタン5.85gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0034】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に二酸化ケイ素20gおよびシリカ-アルミナ比20のH-モルデナイト6gを加えた。
【0035】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Zn0.02La0.08OX+32.7%担体によって表された。触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率28.57%、プロピレン収率13.69%およびエチレン+プロピレン収率42.26%。
【0036】
実施例6
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸コバルト7.86g、硝酸銅3.10gおよび硝酸ランタン5.85gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0037】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に酸化アルミニウム18gおよびシリカ-アルミナ比30のH-ゼオライトベータ8gを加えた。
【0038】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Cu0.08La0.08OX+31.8%担体によって表された。触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率28.85%、プロピレン収率12.58%およびエチレン+プロピレン収率41.43%。
【0039】
実施例7
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸コバルト7.86g、硝酸クロム6.39g、硝酸セリウム5.86gおよび硝酸カリウム2.60gを計量し、水250mlに溶解することにより、溶液(III)を調製した。
【0040】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に酸化アルミニウム18gおよびシリカ-アルミナ比40のH-ZSM-5分子篩8gを加えた。
【0041】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Cr0.09K0.15Ce0.08OX+30.6%担体によって表された。触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率33.74%、プロピレン収率10.37%およびエチレン+プロピレン収率44.01%。
【0042】
実施例8
溶液(I)および(II)を実施例1に記載した手順に従って調製した。硝酸第二鉄10.91gg、硝酸亜鉛0.80gおよび酸化ランタン2.2gを計量し、水250mlに溶解した。その混合物に、沈殿物が完全に溶解するまで、適切な量の硝酸を滴下することにより、溶液(III)を調製した。
【0043】
溶液(I)、(II)および(III)を混合した。混合溶液を加熱撹拌した後、その溶液に二酸化ケイ素10g、酸化アルミニウム1g、シリカ-アルミナ比200のH-ZSM-5分子篩10gおよびシリカ-アルミナ比30のH-モルデナイト5gを加えた。
【0044】
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Fe0.16Zn0.02La0.08OX+33.0%担体によって表された。触媒の活性を実施例1に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率32.29%、プロピレン収率8.22%およびエチレン+プロピレン収率40.51%。
【0045】
実施例9
メタバナジウム酸アンモニウム3gを計量し、水100mlに加えた。次に、そのメタバナジウム酸アンモニウムと水との混合物に、80%リン酸2mlを滴下し、シュウ酸3gを加えた。得られた混合物を、メタバナジウム酸アンモニウムが完全に溶解するまで加熱することにより、溶液(I)を調製した。
【0046】
モリブデン酸アンモニウム30g、硝酸第二鉄7.61g、硝酸クロム10.88gおよび硝酸ランタン4.08gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を得た。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えたところ、沈殿物が生成した。
【0047】
溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。二酸化ケイ素16g、酸化アルミニウム2g、シリカ-アルミナ比40のH-MCH-22分子篩8gおよびシリカ-アルミナ比30のH-ゼオライトベータ7gを計量し、混合溶液に加えた。得られた混合物を5時間還流し、成形のために噴霧乾燥機で乾燥した。
【0048】
得られた粉末を篩分けし、マッフル炉に入れた。次に、温度を740℃に上昇させた。粉末を約5時間焼結した。それを冷却した後、触媒を粉砕機で粉末に粉砕し、100メッシュのふるいに通した。
【0049】
得られた触媒は化学式:Mo1.0V0.15P0.10Fe0.11Cr0.16La0.06OX+34.1%担体によって表された。
【0050】
触媒の活性を以下の条件下で評価した:内径39mmの流動層反応器、反応温度650℃、圧力0.15MPa、水対ナフサの重量比3:1、触媒の充填量20g、および負荷1gナフサ/g触媒・h。気体生成物をガスクロマトグラフィーのために集めた。生成物分布を表4に示す。
【表4】

【0051】
実施例10
メタケイ酸ナトリウム284gを計量し、蒸留水300gに溶解して溶液Aを調製した。硫酸アルミニウム33.3gを計量し、蒸留水100gに溶解して溶液Bを調製した。溶液Bを溶液Aにゆっくり加えた。混合溶液を激しく撹拌した。次に、エチレンジアミン24.4gを混合溶液に加えた。しばらく撹拌した後、希硫酸を混合溶液に加えてpHを11.5に調節した。Si:Al:エチレンジアミン:H2Oが1:0.1:0.4:40になるように、ゾルのモル比率を制御した。混合溶液をオートクレーブに入れ、40時間にわたって温度を180℃に保った。次に、それを取り出し、水で洗浄し、乾燥し、焼結することにより、ZSM-5およびモルデナイトから構成される複合分子篩を製造した。濃度5%の硝酸アンモニウム溶液を70℃での交換に2回使用した後、焼結を行なった。交換段階および焼結段階を2回繰り返して、H-ZSM-5/モルデナイト複合分子篩を製造した。
【0052】
溶液(I)を実施例9に記載した手順に従って調製した。
【0053】
モリブデン酸アンモニウム30g、硝酸第二鉄7.61g、硝酸亜鉛5.88gおよび硝酸セリウム5.60gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を調製した。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えた後、溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。次に、二酸化ケイ素16g、酸化アルミニウム2g、および上で製造したシリカ-アルミナ比20のH-ZSM-5/モルデナイト複合分子篩18gを混合溶液に加えた。
【0054】
得られた触媒は化学式:Mo1.0V0.15P0.10Fe0.11Zn0.12Ce0.08OX+37.8%担体によって表された。
【0055】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。生成物分布ならびにエチレンおよびプロピレンの収率を表5に示す。
【表5】

【0056】
実施例11
メタケイ酸ナトリウム284gを計量し、蒸留水300gに溶解して溶液Aを調製した。硫酸アルミニウム33.3gを計量し、蒸留水100gに溶解して溶液Bを調製した。溶液Bを溶液Aにゆっくり加えた。混合溶液を激しく撹拌した。次に、エチレンジアミン24.4gを混合溶液に加えた。しばらく撹拌した後、希硫酸を混合溶液に加えてpHを約11に調節した。ゼオライトY種結晶5gを混合溶液に加えた。Si:Al:エチレンジアミン:H2Oが1:0.1:0.4:40になるように、ゾルのモル比率を制御した。混合溶液をオートクレーブに入れ、36時間にわたって温度を170℃に保った。次に、それを取り出し、水で洗浄し、乾燥し、焼結することにより、ZSM-5およびゼオライトYから構成される複合分子篩を製造した。濃度5%の硝酸アンモニウム溶液を70℃での交換に2回使用した後、焼結を行なった。交換段階および焼結段階を2回繰り返して、H-ZSM-5/ゼオライトY複合分子篩を製造した。
【0057】
溶液(I)を実施例9に記載した手順に従って調製した。
モリブデン酸アンモニウム30g、硝酸第二鉄7.61g、硝酸ニッケル7.29g、硝酸ランタン5.60gおよび硝酸カルシウム5.18gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を調製した。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えた後、溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。次に、二酸化ケイ素16g、酸化アルミニウム2g、および上で製造したシリカ-アルミナ比20のH-ZSM-5/ゼオライトY複合分子篩18gを混合溶液に加えた。
得られた触媒は化学式:Mo1.0V0.15P0.10Fe0.11Ni0.15Ca0.13La0.08OX+35.2%担体によって表された。
【0058】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率25.97%、プロピレン収率15.52%およびエチレン+プロピレン収率41.49%。
【0059】
実施例12
メタケイ酸ナトリウム284gを計量し、蒸留水300gに溶解して溶液Aを調製した。硫酸アルミニウム33.3gを計量し、蒸留水100gに溶解して溶液Bを調製した。溶液Bを溶液Aにゆっくり加えた。混合溶液を激しく撹拌した。次に、エチレンジアミン24.4gおよび水酸化テトラエチルアンモニウム10gを混合溶液に加えた。しばらく撹拌した後、希硫酸を混合溶液に加えてpHを約12に調節した。ゼオライトベータ種結晶5gを混合溶液に加えた。Si:Al:エチレンジアミン:H2Oが1:0.1:0.4:40になるように、ゾルのモル比率を制御した。混合溶液をオートクレーブに入れ、40時間にわたって温度を160℃に保った。次に、それを取り出し、水で洗浄し、乾燥し、焼結することにより、モルデナイトおよびゼオライトベータから構成される複合分子篩を製造した。濃度5%の硝酸アンモニウム溶液を70℃での交換に2回使用した後、焼結を行なった。交換段階および焼結段階を2回繰り返して、モルデナイト/ゼオライトベータ複合分子篩を製造した。
【0060】
溶液(I)を実施例9に記載した手順に従って調製した。
モリブデン酸アンモニウム30g、硝酸第二鉄7.61g、硝酸ニッケル7.29g、硝酸セリウム5.44gおよび硝酸銅6.30gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を調製した。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えた後、溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。次に、二酸化ケイ素16g、酸化アルミニウム2g、および上で製造したシリカ-アルミナ比20のモルデナイト/ゼオライトベータ複合分子篩18gを混合溶液に加えた。
得られた触媒は化学式:Mo1.0V0.15P0.10Fe0.11Ni0.15Cu0.15Ce0.07OX+35.2%担体によって表された。
【0061】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率29.53%、プロピレン収率12.69%およびエチレン+プロピレン収率42.22%。
【0062】
実施例13
溶液(I)を実施例9に記載した手順に従って調製した。
モリブデン酸アンモニウム30g、硝酸コバルト5.49g、硝酸亜鉛5.60g、硝酸セリウム5.44gおよび硝酸カリウム1.10gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を調製した。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えた後、溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。次に、二酸化ケイ素14g、酸化アルミニウム2g、上で製造したシリカ-アルミナ比20のH-ZSM-5/モルデナイト複合分子篩12gおよびシリカ-アルミナ比150のH-ZSM-5分子篩8gを混合溶液に加えた。
得られた触媒は化学式:Mo1.0V0.15P0.10Co0.11Zn0.11K0.06Ce0.07OX+36.7%担体によって表された。
【0063】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率36.53%、プロピレン収率8.59%およびエチレン+プロピレン収率45.12%。
【0064】
実施例14
溶液(I)を実施例9に記載した手順に従って調製した。
リンモリブデン酸30g、硝酸ビスマス5.89g、硝酸コバルト5.49g、硝酸ニッケル5.32g、硝酸セリウム5.44gおよび50%硝酸マンガン溶液10.81gを計量し、水250mlに溶解して溶液(II)を調製した。リン酸二アンモニウム2.24gを水100mlに溶解した。そのリン酸二アンモニウム水溶液を溶液(II)に加えた後、溶液(I)を溶液(II)に加えた。混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。次に、二酸化ケイ素30gおよび酸化アルミニウム2gを混合溶液に加えた。
得られた触媒は化学式:Mo1.0Bi0.07V0.13P0.17Co0.1Ni0.1Mn0.16Ce0.07OX+30.3%担体によって表された。
【0065】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。生成物の収率は以下のとおりであった:エチレン収率36.12%、プロピレン収率6.67%およびエチレン+プロピレン収率42.79%。
【0066】
実施例15
混合溶液(I)およびリン酸二アンモニウム含有混合溶液(II)を実施例14に記載した手順に従って調製した。前記混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。シリカ-アルミナ比150のH-ZSM-5分子篩36gを混合溶液に加えた。同じ方法による成形後に、化学式:Mo1.0Bi0.07V0.13P0.17Co0.1Ni0.1Mn0.16Ce0.07OX+30.3%担体によって表される触媒を得た。
【0067】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。得られた生成物において、エチレン収率は36.54%、プロピレン収率は7.84%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は44.38%であった。
【0068】
実施例16
混合溶液(I)およびリン酸二アンモニウム含有混合溶液(II)を実施例14に記載した手順に従って調製した。前記混合溶液を温度70〜80℃の水浴で加熱撹拌した。シリカ-アルミナ比30のH-ZSM-5/モルデナイト複合分子篩36gを混合溶液に加えた。同じ方法による成形後に、化学式:Mo1.0Bi0.07V0.13P0.17Co0.1Ni0.1Mn0.16Ce0.07OX+30.3%担体によって表される触媒を得た。
【0069】
前記触媒の活性を実施例9に記載した条件下で評価した。得られた生成物において、エチレン収率は37.27%、プロピレン収率は8.24%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は45.51%であった。
【0070】
実施例17
混合溶液を実施例1に記載した手順に従って調製した。シリカ-アルミナ比150のH-ZSM-5分子篩5gおよび二酸化ケイ素10gを混合溶液に担体として加えた。化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Ca0.17Ce0.08OX+20.2%担体によって表される触媒を同じ方法に従って製造した。それを実施例1に記載した方法によって検査し、評価した。エチレン収率は15.25%、プロピレン収率は30.68%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は45.93%であった。
【0071】
実施例18
混合溶液を実施例1に記載した手順に従って調製した。蒸留水500gを加えて混合溶液を希釈した。シリカ-アルミナ比20のH-ZSM-5/モルデナイト複合分子篩60g、シリカ-アルミナ比200のH-ZSM-5分子篩100g、シリカ-アルミナ比30のゼオライトベータ40gおよび二酸化ケイ素22gを、希釈した混合溶液に加えた。化学式:Mo1.0Bi0.07V0.15Co0.16Ca0.17Ce0.08OX+79.2%担体によって表される触媒を実施例1に記載した方法に従って調製した。それを実施例1に記載した方法によって検査し、評価した。エチレン収率は14.43%、プロピレン収率は32.17%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は46.60%であった。
【0072】
実施例19
実施例1で製造した触媒を使用した。沸点350℃未満の経由を反応材料として使用した。実施例1に記載した条件下で評価を行なった。エチレン収率は29.14%、プロピレン収率は10.55%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は39.69%であった。
【0073】
実施例20
実施例1で製造した触媒を使用した。混合C4(パラフィン:オレフィン=1:1)を反応材料として使用した。以下の条件下で評価を行なった:温度550℃、水/油比3:1および実施例1に記載した空間速度と同じ空間速度。エチレン収率は12.73%、プロピレン収率は39.13%、そしてエチレンおよびプロピレンの総収率は51.86%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための流動層触媒であって、SiO2、Al2O3、分子篩および複合分子篩から選択される少なくとも1つの担体と、化学量論比に基づく以下の化学式:
Mo1.0VaAbBcCdOX
[式中、
AはVIII族、IB族、IIB族、VIIB族、VIB族、IA族およびIIA族から選択される少なくとも1つの元素であり、
Bは希土類元素から選択される少なくとも1つであり、
CはBiおよびPから選択される少なくとも1つであり、
aは0.01〜0.5であり、
bは0.01〜0.5であり、
cは0.01〜0.5であり、
dは0〜0.5であり、
Xは触媒中の元素の原子価を満たす酸素原子の総数を表す。]
の組成物とを含み、
分子篩はZSM-5、Y、ベータ、MCM-22、SAPO-34およびモルデナイトの少なくとも1つであり、複合分子篩はZSM-5、Y、ベータ、MCM-22、SAPO-34およびモルデナイトの少なくとも二つの分子篩を一緒に成長させた複合材料であり、
使用される触媒担体の量は触媒の重量を基準にして20〜80wt%である、
流動層触媒。
【請求項2】
aが0.01〜0.3であり、bが0.01〜0.3であり、cが0.01〜0.3であり、dが0.01〜0.3であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項3】
VIII族の元素がFe、CoおよびNiから選択される少なくとも1つであり、IB族の元素がCuおよびAgから選択される少なくとも1つであり、IIB族の元素がZnであり、VIIB族の元素がMnおよびReから選択される少なくとも1つであり、VIB族の元素がCr、MoおよびWから選択される少なくとも1つであり、IA族の元素がLi、NaおよびKから選択される少なくとも1つであり、IIA族の元素がCa、Mg、SrおよびBaから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項4】
希土類元素がLaおよびCeから選択される少なくとも1つであることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項5】
触媒担体中の分子篩がZSM-5、ゼオライトY、モルデナイトおよびゼオライトベータの少なくとも1つであり、複合分子篩がZSM-5/モルデナイト、ZSM-5/ゼオライトYおよびZSM-5/ゼオライトベータの少なくとも1つであることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項6】
前記分子篩および前記複合分子篩のシリカ-アルミナモル比SiO2/Al2O3が10〜500であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項5に記載の流動層触媒。
【請求項7】
前記分子篩および前記複合分子篩のシリカ-アルミナモル比SiO2/Al2O3が20〜300であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項6に記載の流動層触媒。
【請求項8】
使用される触媒担体の量が触媒の重量を基準にして30〜50wt%であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項9】
Crが触媒の一成分である場合に、Mo:Crの比が化学量論比に基づいて1:0.01〜0.5であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。
【請求項10】
重油、経由、軽質ガソリン、接触分解ガソリン、ガスオイル、コンデンセート油、C4オレフィンまたはC5オレフィンの接触分解に有用であることを特徴とする、接触分解によるエチレンおよびプロピレン製造のための請求項1に記載の流動層触媒。

【公開番号】特開2007−50404(P2007−50404A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−221462(P2006−221462)
【出願日】平成18年8月15日(2006.8.15)
【出願人】(501329404)中國石油化工股▲分▼有限公司 (13)
【出願人】(506278668)中國石油化工股▲分▼有限公司上海石油化工研究院 (2)
【Fターム(参考)】