説明

推定方法

【課題】床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法を提供する。
【解決手段】家具等の測定対象の水平面もしくは鉛直面の周縁、ならびに、測定対象が配置される床面に、互いに異なるマークが付された複数のマーカを貼付し(ステップS101)、測定対象および床面を異なる撮影位置から複数回撮影し(ステップS102)、コンピュータが備える計算装置が、撮影により得られた複数の撮影画像においてマーカが撮影された領域に配置されるマーカ画像の大きさ、位置、向きに基づいて、複数の撮影画像のそれぞれについて、当該撮影画像を撮影した撮影位置、測定対象の大きさ、床面に対する測定対象の位置および向きを推定する(ステップS103〜S105)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、所定の文字や図形、模様が印刷されたマーカを現実世界の種々の物品に貼付してから当該物品およびその周辺を撮影した画像において、当該マーカが撮影された位置に当該マーカに対応付けられる仮想的なキャラクターや各種の情報を合成するAR(Augmented Reality)技術が提案されている。このようなAR技術は、後述する特許文献1等に開示されている。
【0003】
一方で、テーブルや食器棚を含む各種の家具を交換して購入しようとする場合等には、現在の部屋の状況をディジタルカメラで撮影して家具店に持参し、購入候補の家具の見本と対比する手法がとられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−048484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現在の部屋の状況に家具がマッチするか否か等を、さらに詳細に検討したい場合がある。このため、交換対象となっている古い家具が、撮影された画像において、どの位置に撮影されているか等の情報を推定しなければならない。
【0006】
本発明は、以上のような課題を解決するもので、床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点に係る推定方法は、床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定し、前記測定対象の水平面もしくは鉛直面の周縁、ならびに、床面に、互いに異なるマークが付された複数のマーカを貼付する貼付工程、測定対象および床面を異なる撮影位置から複数回撮影する撮影工程、コンピュータが備える計算装置が、撮影により得られた複数の撮影画像においてマーカが撮影された領域に配置されるマーカ画像の大きさ、位置、向きに基づいて、複数の撮影画像のそれぞれについて、当該撮影画像を撮影した撮影位置、測定対象の大きさ、床面に対する測定対象の位置および向きを推定する推定工程を備えるように構成する。
【0008】
また、本発明の推定方法は、コンピュータが備える計算装置が、複数の撮影画像のそれぞれについて、推定された撮影位置から、測定対象にかえて床面上に配置されるべき候補対象を撮影したと仮定した候補画像を生成し、当該撮影画像に、当該生成された候補画像を合成することにより、測定対象にかえて候補対象を床面に置いた様子をあらわす想像画像を生成する生成工程をさらに備えるように構成することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る推定方法の処理の制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。なお、以下にあげる実施形態は、説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。したがって、当業者であれば、これらの各要素または全要素を、これと均等なものに置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例1】
【0012】
図1は、本実施形態に係る推定方法の処理の制御の流れを示すフローチャートである。以下、本図を参照して説明する。
【0013】
本推定方法が開始されると、ユーザは、まず、あらかじめ用意されたAR用のマーカを、交換対象となる家具の天板や側面、床面、壁面等に貼付する(ステップS101)。
【0014】
このマーカは、家具店が提供するものとし、各マーカは、「家具天板貼付用」「家具側面貼付用」「床面貼付用」「壁面用」などが区別できるように、種類ごとに互いに異なる模様とするのが典型的である。
【0015】
「家具天板貼付用」「家具側面貼付用」のマーカは、できるだけその家具の縁や角の近くに貼付することが望ましい。
【0016】
そして、ユーザは、当該家具や床、壁に貼付されたマーカができるだけ画像のフレームに入るように、ディジタルカメラやカメラ付携帯電話で、部屋の様子を、複数回撮影して(ステップS102)、そして、撮影された複数の撮影画像を家具店に持参する。
【0017】
家具店では、当該画像をユーザから受け取って、以下の処理を、所定のソフトウェアが実行されるコンピュータに実行させる。すなわち、AR技術を用いて、撮影された複数の撮影画像において、マーカの種類、位置、向きがどのように配置されているかを画像認識技術により推定し(ステップS103)、これらの推定結果から、各マーカの相対的な位置関係や、撮影位置、撮影方向を推定する(ステップS104)。
【0018】
ついで、各マーカの相対的な位置を種類ごとに分類し、家具の大きさや向き、床や壁、撮影位置や撮影方向に対する相対的な位置関係、ならびに、撮影画像において家具が撮影されている位置を推定する(ステップS105)。
【0019】
この推定には、床と壁に貼付されたマーカの貼付面は、互いに直交し、床と家具天板に貼付されたマーカの貼付面は、互いに平行であり、家具天板と家具側面に貼付されたマーカの貼付面は、互いに直交することや、家具用のマーカが家具の縁や角に貼付されている、という事実を利用することができる。
【0020】
これらの推定には、特許文献1に開示されるようなAR技術を適用することができる。一般的なAR技術の推定に加えて、複数のマーカが用いられていること、さらなる制約条件が存在することから、最尤推定を行うことにより、精度の高い推定が可能となる。
【0021】
なお、上記のAR技術による推定においては、マーカの本当の色彩と、撮影画像における色彩や明るさを対比することにより、光源の色や明るさの推定を行うことも可能である。
【0022】
次に、家具店では、ユーザの選択に基づいて、購入候補となる家具の3次元モデルを選択する(ステップS106)。この3次元モデルは、現実の家具を仮想空間内に実現したものであり、形や色が現実の家具に合わせて設定されたものである。
【0023】
ついで、仮想空間内において、選択された3次元モデルを、ステップS105において推定された家具の位置や向きに配置し、各撮影画像について、ステップS105において推定された撮影位置ならびに撮影方向から見た様子の想像画像を、3次元グラフィックス技術により生成する(ステップS107)。
【0024】
この際に、光源の色や明るさについての推定がされていれば、その情報を採用して、生成される想像画像に色彩フィルタ処理を適用しても良い。
【0025】
そして、各撮影画像に、生成された想像画像を合成して表示し(ステップS108)、本処理を終了する。
【0026】
ユーザが交換しようと考えている古い家具を隠すように、購入候補となる家具の想像画像が描画されるので、ユーザは、購入候補となる家具が自分の部屋に配置されたときに、雰囲気がマッチするか否かなどを、詳細に検討できるようになる。
【0027】
なお、家具の位置や大きさが推定できることから、撮影画像において、家具が撮影されている領域を、色の共通性などを元に除去することも可能である。除去した後に、各種の画像補間技術を適用して、「交換対象の家具のない部屋の様子」を生成し、その後に想像画像を合成することとしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に配置される測定対象の大きさ、ならびに、当該床面に対する当該測定対象の位置および向きを推定する推定方法であって、
前記測定対象の水平面もしくは鉛直面の周縁、ならびに、前記床面に、互いに異なるマークが付された複数のマーカを貼付する貼付工程、
前記測定対象および前記床面を異なる撮影位置から複数回撮影する撮影工程、
コンピュータが備える計算装置が、前記撮影により得られた複数の撮影画像において前記マーカが撮影された領域に配置されるマーカ画像の大きさ、位置、向きに基づいて、前記複数の撮影画像のそれぞれについて、当該撮影画像を撮影した撮影位置、前記測定対象の大きさ、前記床面に対する前記測定対象の位置および向きを推定する推定工程
を備えることを特徴とする推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の推定方法であって、
前記コンピュータが備える計算装置が、前記複数の撮影画像のそれぞれについて、前記推定された撮影位置から、前記測定対象にかえて前記床面上に配置されるべき候補対象を撮影したと仮定した候補画像を生成し、当該撮影画像に、当該生成された候補画像を合成することにより、前記測定対象にかえて前記候補対象を前記床面に置いた様子をあらわす想像画像を生成する生成工程
をさらに備えることを特徴とする推定方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−2282(P2011−2282A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144074(P2009−144074)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(509171438)シミュレーション・リサーチ・ラボ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】