説明

推進工法用ヒューム管の鉄筋籠及びこの鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管の製造方法

【課題】大深度、曲線推進工法に対応可能な強度を有する推進工法用ヒューム管用鉄筋籠及びこの鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管を実現する。
【解決手段】縦筋3及びら筋4に異形棒鋼を用い、断面円形の鉄筋籠をほぼ2分割した半円形状の鉄筋籠2を成形し、該半円形状の一対の鉄筋籠2を円形に組み立てた時に、該鉄筋籠2の半径方向一方端部は他方端部と一部オーバーラップして接合可能に、半円形状鉄筋籠2の半径方向一方端部には一方連結部6を、他方端部には他方連結部7を同曲率で延設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大深度、曲線推進工法に対応可能な強度を有する推進工法用ヒューム管の鉄筋籠及びこの鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、推進工法用ヒューム管を製造する際の鉄筋籠を製作する自動編成機は、縦筋に普通鉄筋をら旋状に巻いて製作している(非特許文献1参照)。
【非特許文献1】狩野春一監修・著 「建築材料・工法ハンドブック」地人書館発行 昭和44年4月10日、p535図8・6・4管の配図筋図
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来、推進工法用ヒューム管を製造する際、鉄筋籠を製作する自動編成機は、一本の鉄筋籠を製作する途中でら筋のピッチを変更することが困難である。そのため、型枠に鉄筋籠を配置する際に、管に埋め込まれる注入孔などの部材部分が鉄筋とぶつかってしまって邪魔になるという問題点がある。このため、鉄筋を広げる方法、あるいは鉄筋を切断して、更に当該部分を補強する方法など対策がとられていた。
【0004】
また、近年、地下に埋設される下水管路や通信・電力管路の推進工法施工は、地下空間の過密化、交通量の増大にともない大深度・長距離化し、曲線施工も増えており、これに伴って(1)大深度化による土圧の増大、(2)曲線施工による側圧の増大(3)長距離化による推力の増大等により、過大な荷重が作用し、ひび割れ、破損事故などが増えている、という問題点がある。
【0005】
これらの問題を解決するため、a.鉄筋量を増やすこと、b.管厚を厚くすること。c.鋼管を巻くこと。d.ガラス繊維などで補強すること。e.レジンコンクリート管とすること等様々な工夫がされている。
【0006】
しかし、前記aの場合において、外圧に対する強度を増大させるには、鉄筋量を増やす必要があるが、普通鉄線の場合、鉄筋の開きと骨材寸法の関係、また、通常、ヒューム管に使われる鉄筋籠は普通鉄線を使用し、自動編成機により軸方向鉄筋の外側にら筋を巻きつけて製作するため、ら筋のピッチを編成機の能力以上に小さくすることが出来ないことから、鉄筋比は1%程度が限度である。
前記bの場合において、管厚を厚くする方法は、管外径を同じにすると流量が減少し、内径を同じにした場合は1サイズ大きい掘削機を使用しなければならず、施工費が高くなり非常に不経済である、という問題点がある。
前記c、d、e場合は、製品が高価になる、という問題点がある。
【0007】
上記問題点に鑑み、本発明の解決しょうとする課題は、大深度、曲線推進工法に対応可能な強度を有する推進工法用ヒューム管の鉄筋籠及びこの鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管の製造方法とする点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の、請求項1の発明に係る推進工法用ヒューム管の鉄筋籠は、
縦筋及びら筋に異形棒鋼を用い、断面円形の鉄筋籠をほぼ2分割した半円形状の鉄筋籠を成形し、該半円形状の一対の鉄筋籠を円形に組み立てた時に、該鉄筋籠の半径方向一方端部は他方端部と一部オーバーラップして接合可能に、半円形状鉄筋籠の半径方向一方端部には一方連結部を、他方端部には他方連結部を同曲率で延設したこと、を特徴としている。
なお、前記縦筋は軸方向に配筋される鉄筋を指し、ら筋は円周方向に配筋される鉄筋を指している。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の推進工法用ヒューム管の鉄筋籠において、
推進工法用ヒューム管の補強が必要な部分には、密に配置可能なピッチで縦筋又はら筋を配置することを特徴としている。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1記載の推進工法用ヒューム管の鉄筋籠において、
注入孔設置部近傍の縦筋又はら筋は、該注入孔設置部近傍を空けた間隔に配筋することを特徴としている。
【0011】
請求項4に係る推進工法用ヒューム管の鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管の製造方法は、
請求項1乃至3における同径の一対の半円状鉄筋籠を円形に組立てて溶着して内側鉄筋籠を形成し、この内側鉄筋籠の径より大きい径の一対の半円状鉄筋籠を円形に組立てて溶着して外側鉄筋籠に形成した後、型枠内には前記外側鉄筋籠の内側に前記内側鉄筋籠を配置して遠心成形することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
請求項1の発明によれば、
(1)鉄筋籠は異形棒鋼で製作し、鉄筋籠を内筋と外筋から構成される複鉄筋に配置して製作されているため、鉄筋比を3%程度まで上げることが出来る。その結果、外圧強度が飛躍的に向上し、鋼複合管に比べ原価を30%程度低減できる。
【0013】
(2)ひび割れ荷重が現在規格化されている1種管の3倍を超える強さのコンクリート管の製造が可能になり、安価に容易に提供できる。
【0014】
(3)異形棒鋼の 鉄筋籠を複鉄筋として製作するため、異形棒鋼の表面節やリブの凹凸への付着が大きいことで、複鉄筋に囲まれたコンクリートの拘束力を増大させ、外圧に対する管のひずみ量を小さくすることができる。従って、ひび割れ強度を向上させることができる。
【0015】
(4)2個の鉄筋籠は位置合わせ縦筋を基準にして位置合わせして円形の籠に組み立てるため、鉄筋籠の位置決めが簡単かつ容易にでき、推進用ヒューム管の製造効率を向上させることができる。
【0016】
(5)鉄筋籠はほぼ円形状鉄筋籠を2分割した形態に製作したため、円形に組み立てた場合は鉄筋籠の移動や輸送が容易となり、組み立て前の半円形鉄筋籠の場合は積み重ねて保管できる(図5参照)ため保管場所も面積を取らない。
【0017】
(6)異形棒鋼の鉄筋で製作された鉄筋籠は、普通鉄線で製作した鉄筋籠より、剛性が高いため、円形に組み立てた鉄筋籠は扁平せず円形を保つ。その結果、製造の際に工場内を移動させるとき、転がしての移動が容易となり、作業効率を向上させることが出来る。
【0018】
(7)遠心成形による製管を行う際、従来の鉄筋籠では剛性が低く変形を生じ易かったが、異形棒鋼の鉄筋で製作した鉄筋籠は剛性が高いため、遠心成形時の変形がなく、所定の位置に鉄筋を配置することができる。
【0019】
次に、請求項2の発明によれば、ら筋及び縦筋の鉄筋配置を自由に設定出来るため、推進力の影響により破損し易い管端部付近の鉄筋径を大きくすることやピッチを小さくすることにより必要な箇所に集中的に、経済的に鉄筋による補強をすることが可能となる。
【0020】
また、請求項3の発明によれば、注入孔など設置箇所に対応してら筋及び縦筋の間隔を自由に変更して配置組み立てできるため、製造時に鉄筋を切断する等の加工を加える必要がなく、効率的な製造が可能となる。
【0021】
さらに、請求項4の発明によれば、製造時において鉄筋に加工を加える必要なく、効率的な製造を可能とし、また、鉄筋を自由に配置して、推進力の影響により破損し易い管端部付近の鉄筋径を大きくすることやピッチを小さくして、必要な箇所に集中的に、経済的に鉄筋による補強をすることが可能な鉄筋籠を2重に配置することにより、大深度、曲線推進工法に対応可能な強度を有する推進工法用ヒューム管が製作できる。
端部連結部の溶接箇所は内側鉄筋籠の接合部より90度ずらして配置するため、溶接箇所が内外鉄筋籠で重ならないように配筋して強度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の実施例を、図1〜図7を参照して説明する。
図1、図2、図3に示したように、本発明の鉄筋籠は、推進工法用ヒューム管1の製造に用いるもので、縦筋3及びら筋4に異形棒鋼を用い、断面円形の鉄筋籠をほぼ2分割した半円形状の鉄筋籠2を成形したものである。
また、該半円形状の一対の鉄筋籠2を円形に組み立てた時に、該鉄筋籠2の半径方向一方端部は他方端部と一部オーバーラップして接合可能に、半円形状鉄筋籠2の半径方向一方端部には一方連結部6を、他方端部には他方連結部7を同曲率で延設している。
なお、図2のように、一方連結部6を長く形成し、他方連結部7を短く形成、いずれか一方の連結部を長く、又は短くしても良い。また、一方連結部6、他方連結部7は、一対の半円形状の鉄筋籠2を位置合わせ可能な長さに設定してもよいものである。
【0023】
半円形状の鉄筋籠2は、保管時は図5のように積み重ねた状態で保管できる。
前記鉄筋籠2は、図4のような異形棒鋼を複鉄筋として配置しているため、コンクリートとの関係では該異形棒鋼の節19やリブ20の凹凸による付着が大きい。従って、複鉄筋に囲まれたコンクリートの拘束力を増大し、外圧に対する管のひずみ量を小さくすることができ、ひび割れ強度を向上させることができる。
【0024】
鉄筋比を比較すると、普通鉄線の場合は、鉄筋の開きと骨材寸法の関係、自動編成機の能力の関係等から鉄筋比は1%が限度であるが、本発明の鉄筋籠2により、鉄筋比を3%程度とすることができるため、ひび割れ荷重を現在規格化されている1種管の3倍を超える強さの推進用ヒューム管1の製造が可能になる。
【0025】
推進工法用ヒューム管1の補強が必要な部分には、密に配置可能なピッチで縦筋3又はら筋4を配置するのがよい。
【0026】
また、図1等のように、注入孔設置部24近傍の縦筋3又はら筋4は、該注入孔設置部24近傍を空けて所定間隔に配筋するのがよい。符号24は推進工法用ヒューム管1の管内面である。
【0027】
次に、推進工法用ヒューム管の鉄筋籠を使用した推進工法用ヒューム管の製造方法は、
図1、図2、図6、図7に図示したように、前記同径の一対の半円状鉄筋籠2を円形に組立て、連結部6,7を溶着して内側鉄筋籠9を形成し、この内側鉄筋籠9の径より大きい径の一対の半円状鉄筋籠2を円形に組立て、連結部6,7を溶着して外側鉄筋籠10に形成した後、型枠11内には前記外側鉄筋籠10の内側に前記内側鉄筋籠9を配置して遠心成形する。
この場合、型枠10は、上下には上型枠12、下型枠13、左右長さ方向は、埋め込みカラー22側にカラー側型枠14を、指し口23側に指し口型枠15を配置して成形を行う。
【0028】
また、製造の際には、内側鉄筋籠9と外側鉄筋籠10のそれぞれの接合部5における強度を強力にするため、内側鉄筋籠9と外側鉄筋籠10の接合部5の溶接箇所は図2に図示したように、90度回転をずらして配置するのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】aは一対の半円形状鉄筋籠を組み付けた時の側面図、bは同正面図。
【図2】半円形状鉄筋籠の拡大正面図。
【図3】半円形状鉄筋籠の、組立前と組立後の一部側面図。
【図4】半円形状鉄筋籠の、使用する異形棒鋼の断面図、正面図。
【図5】鉄筋籠保管時の正面図。
【図6】推進工法用ヒューム管製造時における型枠の正面図。
【図7】推進工法用ヒューム管製造時における型枠の一部断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 推進工法用ヒューム管
2 鉄筋籠
3 縦筋
4 ら筋
5 接合部
6 一方連結部
7 他方連結部
9 内側鉄筋籠
10 外側鉄筋籠
11 型枠
12 上型枠
13 下型枠
14 カラー側型枠
15 差し口側型枠
16 台
17 地面
18 異形棒鋼
19 節
20 リブ
21 コンクリート管内面
22 埋め込みカラー
23 差し口
24 注入孔設置部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦筋及びら筋に異形棒鋼を用い、断面円形の鉄筋籠をほぼ2分割した半円形状の鉄筋籠を成形し、該半円形状の一対の鉄筋籠を円形に組み立てた時に、該鉄筋籠の半径方向一方端部は他方端部と一部オーバーラップして接合可能に、半円形状鉄筋籠の半径方向一方端部には一方連結部を、他方端部には他方連結部を同曲率で延設したこと、を特徴とする推進工法用ヒューム管の鉄筋籠。
【請求項2】
推進工法用ヒューム管の補強が必要な部分には、密に配置可能なピッチで縦筋又はら筋を配置することを特徴とする請求項1記載の推進工法用ヒューム管の鉄筋籠。
【請求項3】
注入孔設置部近傍の縦筋又はら筋は、該注入孔設置部近傍を空けた間隔に配筋することを特徴とする請求項1記載の推進工法用ヒューム管の鉄筋籠。
【請求項4】
請求項1乃至3における同径の一対の半円状鉄筋籠を円形に組立てて溶着して内側鉄筋籠を形成し、この内側鉄筋籠の径より大きい径の一対の半円状鉄筋籠を円形に組立てて溶着して外側鉄筋籠に形成した後、型枠内には前記外側鉄筋籠の内側に前記内側鉄筋籠を配置して遠心成形することを特徴としている。

【図1】
image rotate



【図2】
image rotate



【図3】
image rotate



【図4】
image rotate



【図5】
image rotate



【図6】
image rotate



【図7】
image rotate


【公開番号】特開2005−28768(P2005−28768A)
【公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−271263(P2003−271263)
【出願日】平成15年7月7日(2003.7.7)
【出願人】(000224215)藤村ヒューム管株式会社 (24)
【Fターム(参考)】