説明

推進点火筒

膨張可能な乗員拘束システム用のガス発生器(10)が提供される。ガス発生器(10)は、筒(20)内のプロペラント(24)に着火するために、側面にタッチホール(26)を有する推進点火筒(20)を備える。プロペラント(24)は、発射物(50)を、筒(20)を通じて格納ガスキャニスタ(32)の破裂可能なシール(36)に向かって駆動する。シール(36)を破裂させた後、発射物(50)は、筒(20)の基部端部(21)とガスキャニスタ(32)との間に積極的に保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この特許出願は、2002年11月15日に出願され、本明細書に参照として組み入れられる米国仮出願No.60/426,894の出願日の利益を享受する。
【0002】
技術分野
本発明は、概して自動車に使用される膨張可能な乗員拘束システムに関し、より詳細には、ガス格納容器から膨張ガスを解放してエアバッグを膨張させるために、点火式駆動発射物を用いるガス発生器に関する。
【0003】
発明の背景
膨張可能な安全拘束デバイスは、多くの新しい自動車の標準的な機器となった。多くのデザインが長年開発され、種々の構成要素が組み込まれている。典型的なデザインとしては、膨張可能なエアバッグまたは緩衝体は、折り畳まれた状態で搭載され、オンボードの電気作動システムからの作動信号に応答して車両乗員を保護するために膨張される。このシステムと一般に関連付けられたガス発生器またはインフレータは、エアバッグを充満するための膨張ガスを供給する。典型的にインフレータは、かかるシステムにおいて最も重く最も複雑な構成要素である。重量および製造時の複雑さを減じることは、自動車産業にとって望ましいことが多く、したがって、インフレータのパーツの数および複雑さを減少させることは望ましい。
【0004】
種々のインフレータのデザインおよび方法が用いられている。例えば、多くのシステムは、燃焼して膨張ガスをエアバッグに向かって急速に供給する、着火可能なガス生成物または燃焼物(pyrotechnic)を利用している。多くの有効なデザインが知られているが、燃焼物およびその燃焼で得られる粒状物質に関連する本質的に熱いガスには、特異な問題がある。例えば、熱い燃焼ガスは、システムの物質、特にエアバッグ、への損傷を防ぐため、および車両乗員への潜在的な害を和らげるために冷却しなければならない。ガス生成物の燃焼により有毒な煙が生成し得るので、制限基準および業界基準を遵守するレベルのガス生成となるようにガス生成組成物を調節しなければならない。
【0005】
その他のシステムは、シールを破裂させることで解放されてエアバッグへと向かう、キャニスタまたはボトル内の格納された加圧ガスを利用している。格納されたガスの有利な点としては、膨張ガスが低温であること、粒子状物質が出ないことが含まれる。しかし、加圧ガスを制御解放するためのシステムであって、迅速に反応し、信頼性の高いものを開発することは難しいとされてきた。1つのアプローチとして、加圧ガスのキャニスタ上のシールを破裂させるために、点火式駆動発射物が組み合わされてきた。かかるシステムにおいて、搭載された作動システムは、ガス生成物に着火して、発射物を対象のシールに向かって駆動するための作動ガスを提供する。これらのシステムは、迅速かつ信頼性の高い格納ガスを解放する効果的な手段を提供する。しかしながら、比較的高い速度が発射物に必要とされ、発射物が意図された機能を果たした後の装置内における発射物の変形および反動が、関連する機器に修復し難い損傷を与えることがある。
【0006】
設計者にとってさらなる課題は、発射物を駆動させるために用いられる燃焼装薬(pyrotechnic charge)への着火に関する。エアバッグをうまく展開させることが、発射物を駆動するための比較的小さい燃焼装薬に対する正確かつ信頼性の高い着火に依存する場合において、信頼性の高い、反復性のある所作を提供するシステムを設計することが望ましい。
【0007】
発明の概要
本発明は、自動車用の膨張可能な乗員保護システムに用いられるガス発生器を提供する。このガス発生器は、好ましくは、中に加圧ガスを格納してなり、破裂可能なシールを端部に有するガスキャニスタを具備する。また、側面にタッチホールが形成されてなる長尺の推進点火筒が提供され、これは、その中に配置される多量のプロペラントを含む。発射物がこの筒の中に配置され、プロペラントが着火されると、筒の中を移動可能となる。プロペラントの着火により、発射物を破裂可能なシールに向かって駆動させ、加圧ガスをキャニスタから流出させてエアバッグを膨張させる。
【0008】
図1を参照して、好適に構築された本発明の態様によるインフレータ10を示す。インフレータ10は、クラッシュまたは急激な車両減速の際に、車両乗員に対する衝撃を緩和するためのエアバッグ(図示せず)を迅速に膨張するためにガスを供給するように当該技術分野で公知の形態で動作可能である。インフレータ10の全ての構成パーツは、容易に商業利用できるか、或いは公知の材料から公知の方法で形成することができる。インフレータ10は、好ましくは実質的に円筒中空の金属管である第一ボディ部12と、同じく好ましくは実質的に円筒形である、加圧ガスキャニスタまたは加圧ガスボトルを備えた第二ボディ部32とを備える。キャニスタ32は、多くの加圧ガスキャニスタのうちいずれでもよく、これらは全て商業利用可能である。同じく好ましくは実質的に円筒形であり、内方に延在する壁面を有するコネクタ34は、第一ボディ部12と第二ボディ部32との間に配置されることが好ましく、また、好ましくは当該技術分野において公知の方法を用いてそれぞれのボディ部に摩擦溶接される。
【0009】
コネクタを間に介すことなく、第一ボディ部12を第二ボディ部32に直接取り付けた態様も考えられることを理解されたい。種々の構成要素12、32、34は、いずれの順番で組み立てられてもよく、いずれのタイプの溶接、ネジ止め、プレス嵌めなど、いずれの形式で取り付けられてもよい。隔壁またはノズルシール部材36は、好ましくはキャニスタの加圧された内部と第一ボディ部12の内部13とを隔離する。好適な態様において、隔壁36は、コネクタ34にレーザ溶接されるが、他の連結手段についても本発明の範囲を逸脱することなく用いることができることを理解されたい。さらに、本発明は種々の加圧ガスキャニスタに適用可能なので、第一ボディ部12に取り付けられるキャニスタの形状およびシールの形態が、図1に図示される態様のものと著しく異なることがあってもよいことを当業者は理解するであろう。
【0010】
点火筒20は、第一ボディ部12内に配置され、好ましくはフランジ21および管22を備える。点火筒20は、好ましくは深絞りスタンプその他の適当な公知の方法によって形成する。点火筒20は溶接、または螺合などの他の手段で取り付けてもよいが、好ましくは、レッジ(ledge、段部)35に合わせてボディ部12にプレス嵌めする。
【0011】
図2および図3を参照して、点火筒20の側面図および端面図をそれぞれ示す。フランジ21は、好ましくは管22回りに放射状に配備される複数の開口26を含む。図1において、管22は、断面円筒形として示すが、本発明の範囲を逸脱することなく他の形状を有するように構築されてもよいことを理解されたい。図1に戻ると、発射物50は、点火筒20の管22内に配置され、好ましくは燃焼装薬24に隣接して配置される。発射物50は好ましくは金属であり、先細の、またはその他尖鋭の端部51を含むが、異なる構成および材料も本発明の範囲を逸脱することなく用いられてもよい。燃焼装薬24は、公知のガス生成ブースタプロペラント(gas generator booster propellant)のいずれでもよく、好ましくはそのままで(in situ)硬化するものである。本明細書に参照として組み入れる米国公開No.2002−0079680−A1は、模範的な方法について記載する。ガス生成物24は、管22内に配置され、好ましくは管22の内部と第1ボディ部12の内部スペース13とを連結するタッチホール26を介して着火可能である。好ましくはタブレット状のガス生成物が、容器または筒20内の金属メッシュフィルタの中に位置する態様も考えられる。
【0012】
イニシエータアセンブリ14は、好ましくは第一ボディ部12の側のボディ穴15に配置する。好適な態様において、イニシエータアセンブリ14は、着火器またはスクイブ16、いずれかの適当な既知の着火器、および保持器18を備える。イニシエータアセンブリ14は、好ましくは溶接、例えば抵抗溶接、されて穴15に保持され、着火器16が第一ボディ部12の内部13に向かって延在するように配置する。穴15内にイニシエータアセンブリ14を溶接するのではなく、プレス嵌めされても、接着剤または他の手段で固定されてもよいことを理解されたい。着火器16は、好ましくは従来の形態の車両電気作動システムに連結され、搭載されたコンピュータからの信号に応答して、インフレータ10を作動可能とする。
【0013】
好適な態様において、着火器16が起動すると、着火器16自体の中に位置するか、またはスペース13の近傍に配置されたプロペラントが着火される。プロペラントの着火により、タッチホールを横切るか、またはタッチホールと流通する火炎前部が形成され、管22内のブースタプロペラント24に着火する。ガス生成物24が活性化されると、管22内の急速なガス生成により、発射物50を管22を通じて隔壁36に向かって駆動させる力が加わる。隔壁36は、好ましくは発射物50によって開口され得る比較的薄い金属材料で形成される。発射物50の先細の端部51は、隔壁36を突き刺し、それによりキャニスタ32の内部とボディ部12の内部13との流通をコネクタ34の開口38およびフランジ21の開口を介して確立する。その結果、関連のエアバッグを膨張するための加圧ガスがキャニスタ32から供給される。好適な態様において、ボディ部12の膨張開口(図示せず)により、スペース13とエアバッグの内部とを流通させる。既知の多種のフィルタ、破裂フィルム、アウトプットエンハンサ(output enhancer)などが、所望により流出する膨張ガスの流路に配置されてもよい。さらに、種々の開口パターンおよび膨張ガスの分散手段が、ボディ部12に内部形成されてもよい。
【0014】
さらに本発明は、インフレータの作動後に使用済みの発射物50を捕獲するための一体フランジトラップ(integral flange trap)を提供する。発射物50が隔壁36に向かって駆動され、隔壁を破裂させた後、発射物は、好ましくはフランジ21とコネクタ34との間のスペースに積極的に保持される。
一態様において、フランジ21は、ボディ部12に対してキー係合しており、単一の向きで挿入ができるようになる。かかる態様において、フランジ21は、好ましくはボディ部12に挿入する際にタッチホール26が着火器16に向かって方向付けされるように管22に対して成形される。この特徴により筒20の適切な位置決めが容易になり、次いでタッチホール26を着火器16に近接するように位置決めすることによって、ガス生成物24の着火が容易になり、着火器16の作動から、火炎前部がガス生成物24に比較的簡単に届くようにできる。フランジ21は、例えば非円形の周縁を有して、所望の一方向の向きでボディ部12と係合することができるように形成されていてもよい。代わりに、筒20とボディ部12との間に螺合を利用する態様においては、構成要素は、筒20がボディ部12に完全に螺入されたときにタッチホール26が着火器16に対して並ぶようにネジ山が設けられる。
【0015】
イニシエータアセンブリ14をインフレータ10の側面であって、穴15の中に位置決めすること、および抵抗溶接を用いることによって、本発明は、イニシエータハウジングと管の端部との間に溶接点がなくともインフレータを製造することができる。さらに、本発明は、先行のデザインのものよりも少ないパーツを使用するとともに、使用済みの発射物を積極的に捕獲する。最後に、このデザインは比較的低価格であり、組み立てが容易であり、かつ先行のデザインのものと比して高い信頼性を有する。
【0016】
本明細書の記載は、説明のみを目的とするものであって、いかなる様にも本発明の範囲を限定するように解すべきではない。したがって、上述したように、また、添付の請求の範囲にあるとおり、本明細書に開示された態様に対して本発明の範囲を逸脱することなく、当業者によって多種の改変がなされ得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の好適な態様のインフレータの部分断面図である。
【図2】本発明の推進点火筒の断面図である。
【図3】本発明の推進点火筒の端面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用の膨張可能な乗員保護システムに用いられるガス発生器であって:
中に加圧ガスを格納してなり、破裂可能なシールを端部に有するガスキャニスタ;
側面にタッチホールが形成されてなる長尺の推進点火筒;
前記推進点火筒内に配置され、前記タッチホールを横切る火炎の前部を介して着火可能な多量のプロペラント;および
前記推進点火筒内に配置され、前記プロペラントが着火されると前記推進点火筒の中を移動可能となる発射物を備え、
プロペラントの着火により前記発射物を前記破裂可能なシールに向かって駆動させ、前記加圧ガスを前記ガスキャニスタから流出させてエアバッグを膨張させる、前記ガス発生器。
【請求項2】
推進点火筒を取り囲むように推進点火筒に取り付けられる、実質的に円筒形のボディ;および
前記ボディの側面に配置され、タッチホールと実質的に並ぶイニシエータアセンブリであって、推進点火筒内のプロペラントに着火するために、火炎の前部を生成するように動作可能である、前記イニシエータアセンブリをさらに備えた、請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
イニシエータアセンブリ内に格納された多量のプロペラントをさらに含む、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項4】
ガスキャニスタおよび円筒形のボディの両方に取り付けられた連結部材であって、破裂可能なシールと実質的に並ぶ中央開口を有する前記連結部材をさらに備えた、請求項2に記載のガス発生器。
【請求項5】
推進点火筒が、その端部から外方に延在するフランジを具備し、該フランジは、連結部材と協動してシールが破裂した後に発射物を保持する、請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
推進点火筒がボディと係合するときに、タッチホールがイニシエータアセンブリと実質的に並ぶように、フランジがボディと係合する、請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
フランジがボディに対してキー係合し、それによりフランジとボディの係合が単一の半径方向の向きに限定される、請求項6に記載のガス発生器。
【請求項8】
完全に螺合することによりタッチホールがイニシエータと並ぶように、フランジがボディによってネジ受けされる、請求項6に記載のガス発生器。
【請求項9】
自動車用の膨張可能な乗員保護システムに用いられるガス発生器であって:
中に加圧ガスを格納してなり、破裂可能なシールを放出端部に有するガスキャニスタ;
破裂可能なシールに向かって配向された開口部を有する基部端部を備えた長尺の推進点火筒;
前記推進点火筒内に配置される、多量の着火可能なプロペラント;および
前記推進点火筒内に配置され、前記プロペラントが着火されると前記推進点火筒の中を移動可能となる発射物を備え、
プロペラントが着火されると、前記発射物が前記破裂可能なシールに向かって駆動させられ、前記破裂可能なシールを破裂させて、前記加圧ガスを解放してエアバッグを膨張させ、その後に前記発射物が前記基部端部と放出端部との間に保持される、前記ガス発生器。
【請求項10】
推進点火筒の回りに配置されたボディ部材、およびガスキャニスタと前記ボディ部材とを連結する連結部材をさらに備え、前記連結部材は、破裂可能なシールと実質的に並ぶ中央開口を備えた内方に延在する壁面を有する、請求項9に記載のガス発生器。
【請求項11】
推進点火筒が実質的に円筒形であり;
基部端部が、内方に延在する壁面とは反対側に配置された実質的に平面のフランジを具備し、シールが破裂した後に、発射物が壁面と前記フランジとの間に保持される、請求項10に記載のガス発生器。
【請求項12】
膨張可能な拘束緩衝体、および
前記緩衝体に膨張ガスを供給するように動作可能であるガス発生器を備えた、自動車用の乗員保護システムであって、前記ガス発生器が:
その中に加圧ガスを格納してなり、破裂可能なシールを有する、実質的に円筒形の第一のボディ;
前記第一のボディに取り付けられ、前記破裂可能なシールと実質的に並ぶ中央開口を有する連結部材;
前記連結部材に取り付けられた実質的に円筒形の第二のボディ;
前記第二のボディの内部に配置された推進点火筒であって、基部端部から延在するフランジ、および前記破裂可能なシールに向かって配向された開口部を有する、前記推進点火筒;
前記推進点火筒の内部を移動可能な発射物;および
前記推進点火筒内に配置され、前記発射物を駆動させるために着火可能なプロペラント組成物を備え、
前記プロペラントが活性化されると、前記発射物が、前記推進点火筒を通じて前記破裂可能なシールに向かって駆動され、それにより、前記第一のボディの内容物が自由となり、その後に前記発射物が前記フランジと前記連結部材との間に保持される、前記自動車用の乗員保護システム。
【請求項13】
第二のボディが、側方側に沿って取り付けられたイニシエータアセンブリを具備する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
推進点火筒が、実質的に円筒形であり、側方側に沿って、イニシエータアセンブリと実質的に並ぶタッチホールを具備する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
フランジが複数の放射状に配置された開口を有し、それにより破裂可能なシールが破裂すると、第一のボディの内部と第二のボディの内部とが流通する、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
第一のボディの内部と膨張可能な拘束緩衝体との間が流通するように、第一のボディが複数の開口を有する、請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−506274(P2006−506274A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−553843(P2004−553843)
【出願日】平成15年11月17日(2003.11.17)
【国際出願番号】PCT/US2003/036769
【国際公開番号】WO2004/045909
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(399042247)オートモーティブ システムズ ラボラトリー インコーポレーテッド (28)
【Fターム(参考)】