説明

推進装置付きケーブルまたはチューブから構成された器具

本発明はケーブルまたはチューブ3で構成された器具1に関する。ケーブルまたはチューブを空洞内で移動させる推進装置4をケーブルまたはチューブの末端に設け、推進装置はケーブルまたはチューブの縦方向に直角の面に位置するドーナツ形状にする。ドーナツ形状の推進装置の少なくとも一部はドーナツの面にあるドーナツ体の閉じた軸の回りに回転可能な少なくとも1つの金網6によって外側が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はケーブルまたはチューブと前記ケーブルまたはチューブを空洞内で移動させる推進装置とから構成された器具に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の器具は管、チューブまたは下水管システムなどの工業用チューブ構造内の移動に使用される。しかし、この種の器具は、空洞が食道、胃、小腸または血管に形成されるときは、医療適用にも使用できる。その他には、膀胱、気管、大腸、十二指腸、耳道および鼻が挙げられる。他の可能な空所には腹腔、胸腔、鼻および曲腔、硬膜、中空骨などがある。
【0003】
ここでいう発明による器具は結腸検査として使用する方法によってさらに明確にされる。しかし、本発明は医療器具のみに限定されるものではなく、考えられる上記の器具もすべて発明の範囲内となる。
【0004】
腸の病気にかかった患者には結腸検査が通常行われる。この検査では最初、患者は下痢液を服用され、その後で大腸が空にされる。次いで1.5m長さの細いチューブが挿入される。この目的に使用される公知の結腸鏡の末端には、器具を腸内に挿入する導管と光源付きのカメラが設けられる。麻酔の間に生じる合併症の可能性の観点から、結腸検査は原則として患者に意識のあるときに行われる。
【0005】
結腸鏡の欠点は、離れたところから長い細いチューブを介して末端が挿入されることにある。末端が腸壁の突起部分に当たり、押し込み力によってチューブが座屈する可能性が生じる。チューブが座屈するとき、腸壁に相当の力が作用して痛みの原因になる。最悪の場合には腸壁に穴が開くことがあり、命を脅かす状態にもなりかねない。
【0006】
先行技術には結腸鏡を患者の大腸内で移動させることで起こる問題を少なくするため別の様々な解決策が開示される。例えば特許文献1、2,3,4,5および6に開示されるように膨張体を使用して移動するスライディング・システムがある。他の公知のシステムには吸着カップを使用するもの(例えば特許文献7および8を参照)、車輪を使用するもの(特許文献9を参照)、または結腸鏡の長さにわたって延びるベルトを使用するもの(特許文献10,11,12および13参照)がある。
【0007】
これら公知のシステムには、大腸壁の粘液層の存在によって腸壁が十分に把持できないという問題点がある。
【特許文献1】US3,895,637
【特許文献2】US4,676,228
【特許文献3】US4,690,131
【特許文献4】US5,337,732
【特許文献5】US5,398,670
【特許文献6】US5,454,364
【特許文献7】US5,906,591
【特許文献8】US6,309,346B1
【特許文献9】US6,648,814B2
【特許文献10】US6,695,771
【特許文献11】US5,562,601
【特許文献12】US6、071,234
【特許文献13】US6,224,544
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
空洞壁を十分に把持することが制限される特に医療適用に器具を使用するため、改良された推進が空洞で実現できる序文に記載された種類の器具を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため発明による器具は、推進装置がほぼ前記ケーブルまたはチューブの縦方向に直角の面に位置したドーナツ形状をなし、ドーナツ形状の推進装置(4)の少なくとも一部は、軸がドーナツの面に位置しドーナツ体の閉じた軸の回りに回転可能な少なくとも1つの金網で外側が形成されたことを特徴とする。ドーナツ形状は一般に円形のサイクロトロン形状を表すものと理解されるが、本発明ではこの形状には完全な円形でない形状も含まれる。圧縮によって、推進装置は上から見てコーナーの丸い四角形または三角形形状にすることもできる。
【0010】
発明によって提供される完全に新規なこのアプローチは推進装置と空洞壁、特に大腸の壁との間に十分な摩擦を与える推進装置を提供する。この推進装置は、壁を覆う粘液層を切り開き、壁に沿って回転しているとき、腸壁に対し十分な牽引力を発生しうる金網によって支援される。
【0011】
さらに、発明の範囲に存在する可能性には1つ以上のドーナツ形状推進装置の使用が含まれることが注目される。同様に、器具は自動移動に適するように構成することができる。このために、推進装置には1つ以上のモータを設けることができる。
【0012】
発明のさらなる態様によると、ドーナツを形成する少なくとも1つの金網は調節可能なアームによってケーブルまたはチューブに取り付けられたものであることが好ましい。この実施形態において、器具を空洞内で移動させる間、空洞の様々な内径に適合させるためにドーナツの直径を調節する調節可能なアームが使用される。
【0013】
これが実施される第1の適切な実施形態は、調節可能なアームが金網の軸に連結された牽引ワイヤと、これらの牽引ワイヤを取り囲み一方側のケーブルまたはチューブから他方側の金網の軸にわたって延びるばねとから構成されたことを特徴とする。牽引ワイヤとこれらの牽引ワイヤの周りに設けられたばねとの相互作用を通し、牽引ワイヤを弛緩または緊張させることで金網の直径は簡単に調節できる。
【0014】
金網のドーナツ直径の調節が行える別の実施形態は、ケーブルまたはチューブにスリーブが設けられて前記スリーブにアームの第1の端部がヒンジで取り付けられ、かつ第1の端部の反対側ではアームの第2の端部が少なくとも1つの金網に連結されることを特徴とする。この作用については以下に示す図面の記載で詳細に説明される。
【0015】
少なくとも1つの金網を回転始動するために、例えばこの金網の内部に駆動装置を設けることが実際に考えられる。しかし、特に医療適用に関連する場合は、少なくとも1つの金網は、ケーブルまたはチューブの基端部のある体外に位置する駆動装置に連結されるのが好ましい。この実施形態は、駆動装置および付属品の配置が常設位置に固定され、一方患者に挿入される部分は非耐久部分として構成される適用に特に適する。
【0016】
駆動装置と少なくとも1つの金網との連結は、ケーブルまたはチューブ内を、またはケーブルまたはチューブに沿って延びてドーナツ形状推進装置の外側の周りに案内された牽引ワイヤを使用して実施されることが好ましい。このように牽引ワイヤはドーナツの外周の周りをこれに摩擦接触しながら動くので、牽引ワイヤを調節すると、ドーナツの面にあるドーナツ体の閉じた軸の周りにドーナツが対応して回転する結果となる。
【0017】
ケーブルまたはチューブの柔軟性にもかかわらず推進装置の座屈のない駆動を実現するために、牽引ワイヤはボーデンケーブルによって案内するのが好ましい。
少なくとも1つの金網が、ドーナツの面に位置する本体軸の周りにねじれ剛性を有するとさらに有利となる。
【0018】
推進装置の少なくとも1つの金網は、金属ワイヤ(例えば、ばね鋼)、プラスチックワイヤおよびニチノールワイヤからなる群から選択された編み込みワイヤを構成するのが好ましい。
【0019】
特に医療目的のために、器具は金網形態のステント(stent)で適切に構成される。
以下、発明は典型的な実施形態によって図面を参照してさらに説明するが、この実施形態は特許請求の範囲を限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
まず図1を参照するに際して、器具は結腸鏡として実施され符号1を付して示される。
肛門2から挿入される結腸鏡1は末端に横切る推進装置4を有するケーブル3を備える。図1に明確に示すように、器具1の推進装置4の直径はケーブルまたはチューブ3の直径よりも大きく、大腸5の直径はこの大きい直径に自動的に適合する。
【0021】
また図1に明確に示すように、推進装置4はケーブルまたはチューブ3の縦方向に直角に向かう面にあるドーナツのように形成され、このドーナツ形状推進装置は外側が金網6で形成される。以下に説明するように、この金網6は、ドーナツの面に存在する軸であるドーナツ体の閉じた軸の周りに回転可能である。
【0022】
図2は、推進装置4の金網6の直接近傍に位置する発明による器具1の部分を示す。簡単に表現するため、金網6は上記ドーナツが認識できる形状の実体面として示される。調節可能なアーム7を介して、このドーナツはケーブルまたはチューブ3に取り付けられる。
【0023】
図2および3に表される実施形態では、これらの調節可能なアーム7は金網6の1つ以上の軸8に連結された牽引ワイヤ9として実施され、ばね10は前記牽引ワイヤを取り囲み、一方側のケーブルまたはチューブ3と他方側の金網6の軸8との間に延びる。結腸鏡の端部の断面を表す図3は、この実施形態で軸8が3つの分離した金網6の間の結合要素を形成することを示す。図2および3は最小直径となる金網6の構成を示す。牽引ワイヤ9を緩めてばね10を開放すると、推進装置をともに形成する金網6の直径は拡大するので、この推進装置4は推進装置4が収納される直径が可変の空洞壁に簡単に適合する。
【0024】
図4および5は推進装置4の別の実施形態を示し、それぞれ大きい直径(図4)と小さい直径(図5)の推進装置であって、直径の調節が異なった方法で実現される。この実施形態において図4および5に実際には示されないケーブルまたはチューブにはスリーブ11が固定して取り付けられ、このスリーブ11にアーム7の第1の端部12がヒンジで取り付けられ、一方、アーム7の第1の端部12の反端側に位置する第2の端部13は少なくとも1つの金網6に結合される。大きい直径(図4)と小さい直径(図5)との間のアーム7の調節はアーム7に隣接する可動の第2のスリーブ14を調節することで行われる。この実施形態には3つの分離した金網6を設けることもできる。実際、この数は要求によって変更することができる。明瞭性を保つため、金網6を駆動する図2に示す牽引ワイヤで以下に述べる牽引ワイヤは図4および5の実施形態には示さない。
【0025】
発明の別の態様は、少なくとも1つの金網6がケーブルまたはチューブ3の基端に位置する駆動装置であるか、この駆動装置に連結されるという事実に関する。すなわち、結腸鏡の図示する適用において駆動装置は体外に位置する。これを実現する方法は当該分野の専門家には自明であるので、図面を使用してさらに説明することは省略する。
【0026】
前述のように駆動装置を基端に設けると、少なくとも1つの金網6はケーブルまたはチューブ3内で、あるいはケーブルまたはチューブ3に沿って延びる牽引ワイヤ14を介してその駆動装置に連結され、ドーナツ形状の推進装置4の外側の周りに案内されるという利点が生じる。このことは図2に明瞭に示される。また図2に示すように、牽引ワイヤ16をボーデンケーブル15内に通すと有利となる。
【0027】
上述したことから明らかなように、発明による器具は特許請求の範囲に記載された発明の精神から逸脱することなく様々な方法で変更できる。例えば、3つの分離した金網6は図3または図4に示すように個々の駆動装置が設けられるので、これらの金網6の回転速度を適合させて検査される空洞の曲り部に追従するための簡単な方法が備わる。
【0028】
少なくとも1つの金網6は金属ワイヤで作るのが好ましいが、種々の材料で作ることができる。特に医療適用の発明による器具を使用する場合は金網としてはステントを使用するのが非常に実用的である。
【0029】
発明およびそれによる保護の範囲は上記の典型的な実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された器具に割り当てられたすべての可能な使用に関する。
本発明に帰着するリサーチはオランダ科学アカデミーからの補助金で可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】結腸鏡として実施された挿入状態における発明による器具を示す。
【図2】図1に示す結腸鏡端部の第1の実施形態を概略的に表した側面図を示す。
【図3】図2に示される結腸鏡一部の断面図を示す。
【図4】図1に示す結腸鏡の断面端部の第1の位置における第2の実施形態の詳細を示す。
【図5】図4に示す結腸鏡の端部の第2の位置における詳細を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルまたはチューブ(3)と前記ケーブルまたはチューブ(3)を空洞(5)内で移動させるための少なくとも1つの推進装置(4)とから構成された器具(1)において、
推進装置(4)はほぼ前記ケーブルまたはチューブ(3)の縦方向に直角の面に位置したドーナツ形状をなし、
ドーナツ形状の推進装置(4)の少なくとも一部は、軸がドーナツの面に位置しドーナツ体の閉じた軸の回りに回転可能な少なくとも1つの金網(6)で外側が形成されたことを特徴とする器具(1)。
【請求項2】
推進装置(4)は電動の駆動装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の器具(1)。
【請求項3】
ドーナツを形成する少なくとも1つの金網(6)は調節可能なアーム(7)によってケーブルまたはチューブ(3)に取り付けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の器具(1)。
【請求項4】
調節可能なアーム(7)は金網(6)の軸(8)に連結された牽引ワイヤ(9)と、一方側のケーブルまたはチューブ(3)から他方側の金網(6)の軸にわたって牽引ワイヤ(9)を取り囲むばね(10)とから構成されたことを特徴とする請求項3に記載の器具(1)。
【請求項5】
ケーブルまたはチューブ(3)にスリーブ(11)が設けられて前記スリーブ(11)にアーム(7)の第1の端部(12)がヒンジで取り付けられ、かつ第1の端部(12)の反対側ではアーム(7)の第2の端部(13)が少なくとも1つの金網(6)に連結されたことを特徴とする請求項3に記載の器具(1)。
【請求項6】
少なくとも1つの金網(6)はケーブルまたはチューブ(6)の基端に配置された駆動装置に連結されたことを特徴とする請求項1または請求項3ないし5のいずれか1項に記載の器具(1)。
【請求項7】
少なくとも1つの金網(6)は、ケーブルまたはチューブ(3)内を、またはケーブルまたはチューブ(3)に沿って延びてドーナツ形状推進装置(4)の外側の周りに案内された牽引ワイヤ(14)で駆動装置に連結されたことを特徴とする請求項3に記載の器具(1)。
【請求項8】
牽引ワイヤはボーデンケーブルによって案内されたことを特徴とする請求項7に記載の器具(1)。
【請求項9】
少なくとも1つの金網はドーナツの面に位置する本体軸の周りにねじれ剛性を有することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の器具(1)。
【請求項10】
金網(6)は金属ワイヤ、プラスチックワイヤおよびニチノールワイヤからなる群から選択された編み込みワイヤを構成することを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の器具(1)。
【請求項11】
器具は医療目的に使用され、少なくとも1つの金網はステントであることを特徴とする請求項10に記載の器具(1)。
【請求項12】
器具(1)は結腸鏡であることを特徴とする請求項11に記載の器具(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−509778(P2008−509778A)
【公表日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527078(P2007−527078)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/NL2005/000564
【国際公開番号】WO2006/019291
【国際公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(500292149)テクニッシェ ユニヴァージテート デルフト (14)
【Fターム(参考)】