説明

揮発性有機化合物の回収プロセス

【課題】 VOCの連続回収を図るとともに、吸着剤の効率のよい使用方法および効率のよい再生方法によって、簡便な機能を用い、保守を軽減しエネルギー効率が高くかつ信頼性の高いコンパクトなVOCの回収プロセスを提供すること。
【解決手段】 吸着剤を充填した少なくとも3基の吸着塔および揮発性有機化合物を回収する冷却凝縮手段を有し、水分および揮発性有機化合物を含む空気から該揮発性有機化合物を回収するプロセスにおいて、少なくとも、所定の工程を含むとともに、前記吸着塔の内の少なくともある期間、少なくとも2基の吸着塔の再生工程を重畳的に実施し、残りの吸着塔を吸着工程に供し、これらの工程を順次切り換えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性有機化合物の回収プロセスに関するもので、詳細には、各種工場において使用される溶剤などの揮発性有機化合物(以下「VOC」という。)と水分を含む空気からVOCを回収するプロセスに有用である。以下、VOCと水分を含む空気を「試料空気」という。
【0002】
ここで、VOCについて幾つかの定義がある。例えば、WHOは有機性室内汚染化学物質を沸点により、下表1のように、VVOC、VOC、SVOC、POMに分類され、VOCとしては、シクロヘキサノン、トルエン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルエチルケトン(MEK)、酢酸エチルなどが該当し、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類はVVOCに属し、可塑剤の多くはSVOCに分類されることとなる。しかし、一般には、これらを含めてVOCと呼ばれ、本特許においてもこの広い意味で使用する。
【0003】
〔表1〕

【背景技術】
【0004】
従来から、VOCは、各種化学工場、電気電子機器製造工場あるいは機械製造工場などにおいて試料空気として排出され、環境規制、環境保全あるいは溶剤のリサイクルなどの観点から、該試料空気を処理して回収することが強く要請されている。
【0005】
しかしながら、こうした試料空気には、VOC以外にも水分などVOCとよく似た物理的性質を有する物質が含まれることが多く、VOCを水分などと効率よく分離することは必ずしも容易ではなく、従前より種々の工夫・改善が試みられ、実施されている。
【0006】
例えば、図5に例示するように、有機物及び水分を含有するガスを、吸着剤を充填した相対的低温条件の吸着工程にある吸着塔51に導いて有機物を除去し、有機物が除去された水分含有ガスとして系外に放出し、有機物を吸着した吸着剤は再生工程において相対的高温条件で有機物を脱離させて再生し、この吸着剤再生工程から出る脱離ガスを、吸湿剤を充填した脱湿塔52において温度スイング法あるいは圧力スイング法により水分を除去し、得られる高濃度有機物含有乾燥ガスを液化器53に導いて冷却及び/又は加圧して液化させて有機物を回収する方法が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
【特許文献1】特開平8−299740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、近年の高効率化・省エネルギー化の要請から、こうしたVOCの回収プロセスに対しても、益々選択性の高い回収あるいはパージガスなど系外からの補助材料の加熱冷却処理の効率化の要求が高まってきている。従来の方法では、こうした要求への十分な対応が困難であった。
【0009】
具体的には、上記図5に示す例にあっては、吸着剤を充填した吸着塔と吸湿剤を充填した脱湿塔の2種類が使用され、それに伴い複数の加熱手段や切換機構を要するなどシステムが複雑となる問題があった。また、系外からのパージガスを常時使用するために、加熱パージによる吸着剤の再生時に供給する空気の加熱エネルギーあるいはパージによる吸着剤の冷却時に供給する空気の冷却エネルギーが余分に必要となる。つまり、少量のガスによる効率のよいパージ方法が課題となっている。
【0010】
また、再生ガスに空気を使用する場合には、吸着剤の加熱再生つまり吸着剤からのVOCの脱離時のパージガス中に存在するVOCの濃度が高くなり、多くの場合、爆発範囲に入る危険性を回避する制約から効率的な再生が出来ないことがある。さらに、VOCの種類によっては、空気中での加熱再生による変性を避けるために加熱温度に制約が生じることから、十分な再生ができないことがある。これら問題を避けるため再生ガスとして不活性ガスの使用が有効となる。と同時に、不活性ガスの常時供給は上記のエネルギーの増大とともにコスト面での負担も大きくなり、効率のよいパージ方法が課題となる。
【0011】
本発明の目的は、水分およびVOCを含む試料空気からのVOCの回収において、VOCの連続回収を図るとともに、吸着剤の効率のよい使用方法および効率のよい再生方法によって、簡便な機能を用い、保守を軽減しエネルギー効率が高くかつ信頼性の高いコンパクトなVOCの回収プロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下に示すVOCの回収プロセスにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0013】
本発明は、吸着剤を充填した少なくとも3基の吸着塔および揮発性有機化合物を回収する冷却凝縮手段を有し、水分および揮発性有機化合物を含む空気から該揮発性有機化合物を回収するプロセスにおいて、少なくとも、
1)水分および揮発性有機化合物を含む空気から、主として揮発性有機化合物を吸着し、水分を含む空気を系外に放出する吸着工程(A)と、
2)再生工程(E)にある他の吸着塔からの再生ガスを用いて主として水分をパージし、吸着剤の加熱再生処理を行う再生工程(B)と、
3)他の吸着塔の再生工程(F)にある間、再生ガスの流通を停止し、該再生ガスを迂回させる再生工程(C)と、
4)再生ガスを循環的に用いて主として揮発性有機化合物をパージし、吸着剤の加熱再生処理を行う再生工程(D)と、
5)再生工程(B)にある他の吸着塔からの再生ガスを流通させ、主として水分を吸着除去するとともに、吸着剤の冷却再生処理を行う再生工程(E)と、
6)再生工程(C)にある他の吸着塔を迂回した再生ガスを流通させるとともに、吸着剤の冷却処理を行う再生工程(F)と、
を含むとともに、少なくともある期間、前記吸着塔の内の少なくとも2基の吸着塔の再生工程を重畳的に実施し、残りの吸着塔を吸着工程に供し、これらの工程を順次切り換えることを特徴とする。
【0014】
VOCのような多様な物質が混在する連続的回収プロセスにおいては、回収効率を上げるために上述のような種々の改善が必要とされるが、本発明においては、さらに、十分な吸着塔の再生処理、つまり吸着工程に入る時点で、吸着塔の入口附近を除き、VOCの残留が殆どない状態を作ることが、回収効率の向上に非常に有効であることを見出したもので、少なくとも3基の吸着塔を準備し、少なくともある期間、少なくとも2基の吸着塔の再生工程を重畳的に実施し、残りの吸着塔を吸着工程に供する回収プロセスの機構単位を1つの組み合せとして循環的に作動させるとともに、再生ガスの循環使用における循環経路を工夫することによって、飛躍的に高い回収効率が可能となった。
つまり、吸着工程、加熱による再生工程(加熱再生工程)および冷却による再生工程(冷却再生工程)を担う吸着塔を、工程を重畳させながら順に入れ替えることによって、冷却再生工程(E)に導入された再生ガスは、次の吸着塔での加熱再生工程(B)にそのまま利用することによって、先のステップでの加熱再生工程(D)にあった吸着塔の余熱の利用を可能とし、かつ再生ガスの使用量も大幅に軽減することができることから、エネルギー効率の大幅な向上を図ることが可能となった。さらに、再生工程(D)および(F)にある吸着塔を、再生ガスを用いて循環的再生することによって、非常に効率のよいVOCの回収が可能となった。なお、「再生ガス」とは、上記再生工程(B)〜(F)において、吸着塔のいずれかを流通したガスをいい、試料空気を用いる場合や系外から導入される不活性ガスなどのガスを用いる場合がある。また、「冷却凝縮手段」とは、冷却して凝縮機能を有する手段のみならず、広く、冷却機能を有する手段とさらに冷却して凝縮機能を有する手段を組合せて使用する手段、あるいは、それぞれを独立して使用可能な手段を含むものとする。
従って、VOCの連続回収を図るとともに、一層吸着剤の効率のよい使用方法および効率のよい再生方法が可能となり、簡便な機能の、エネルギー効率が高くかつ信頼性の高いコンパクトなVOCの回収プロセスを提供することが可能となった。
【0015】
本発明は、上記揮発性有機化合物の回収プロセスであって、前記吸着剤として疎水性吸着剤を使用し、再生ガスとして不活性ガスを使用することを特徴とする。
【0016】
吸着法によるVOCの回収効率は、吸着剤の特性と個々のVOCの多くの物性に依存する。吸着剤の一般的傾向として、吸着能は温度の関数で低温ほど大きく高温では低い。一方、VOCの物性からは、一般に沸点が吸着温度に比較して高い程吸着は容易である。この基準によれば、水分(沸点100℃)が共存する場合には、MEK(沸点80℃)や酢酸エチル(沸点77℃)などに比較して水分の方が吸着し易いことになる。本発明は水分が極性分子であることを利用し、VOCの吸着能が大きく水分を殆ど吸着することのない疎水性の吸着剤を選定することによって、VOCの選択的吸着分離を可能にしたものである。特に、疎水性吸着剤は、脱着においても優先的に水分を脱着する特性を有することから、再生工程にこうした特性を活かすことによって、一層のVOCの選択的吸着分離が可能となる。
また、再生ガスとしては清浄化した試料空気を利用することも可能であるが、吸着剤の加熱再生つまり吸着剤からのVOCの脱離時のパージガス中に存在するVOCの濃度が高くなり、多くの場合、爆発範囲に入る危険性を回避する制約から効率的な再生ができないことがある。さらに、VOCの種類によっては、空気中での加熱再生による変性を避けるために加熱温度に制約が生じることから、十分な再生ができないことがある。これら問題を避けるため、再生ガスとして不活性ガスを用いることが好ましい。こうした選定を行うことによって、VOCの回収プロセスの一層の安全性確保を図るものである。
【0017】
本発明は、上記揮発性有機化合物の回収プロセスであって、前記冷却凝縮手段において、前記再生工程(D)にある吸着塔からの再生ガスを、冷却器で冷却後、冷熱回収手段を経由して凝縮器に導入し、該再生ガス中に含まれる揮発性有機化合物を回収除去することを特徴とする。
【0018】
吸着によるVOC回収方法は、多量の空気中に含まれたVOCを吸着剤に固定し、別途再生ガスで脱着させ、より濃度の高いガスに濃縮し、冷却凝縮法などと組み合わせ除去するとの方式である。特に、VOCとともに水分が共存する場合には、脱着に際しては、吸着剤を比較的低温の再生ガスで加熱するとはじめに水分が選択に脱着し、再生工程(B)において、ほとんどの水分は脱着し終わる。これに、僅かのVOCが同伴するが、再生工程(D)におけるVOCの冷却凝縮により、殆ど水分を含まないVOCの回収ができる。また、冷熱回収手段を経由することにより、冷却に要するエネルギーを軽減できる。このような巧妙な方法によって、VOCと水分が含まれた空気であっても非常に選択性の高くエネルギー効率の高いVOCの分離回収が可能となる。
【0019】
本発明は、上記揮発性有機化合物の回収プロセスであって、前記再生工程(B)の少なくとも一部あるいは全てにおいて、再生工程(B)にある吸着塔からの再生ガスに含まれる水分を水分凝縮器で除去することを特徴とする。
【0020】
上記のように、本発明のVOC回収プロセスにおいては、VOCとともに水分が共存する場合であっても、効率的にVOCを選択分離することが可能である。しかしながら、VOCの組成によっては、水分の再生工程(E)にある吸着塔での吸着に負担となったり、再生ガス中に含まれる水分が無視できず、冷却凝縮手段におけるVOCの回収効率に影響を及ぼす場合がある。本発明は、こうした場合が想定される場合に、水分凝縮器を設けることによって、未然にこうした状態を回避し、高いVOCの回収効率を保持することが可能となる。なお「水分凝縮器」とは、冷却して、液化のみならず固化を含む方法により水分を除去をするものをいう。
【0021】
本発明は、上記揮発性有機化合物の回収プロセスであって、前記吸着工程(A)、再生工程(E)および再生工程(F)のガス流れ方向を下から上へとり、再生工程(B)および再生工程(D)のガスの流れ方向を上から下へとることを特徴とする。
【0022】
吸着法による精製において吸着塔出口寄りの部分が充分に再生されていることは重要である。十分に再生されたときは、吸着塔は入り口から出口に向け飽和領域が進行し僅かな遷移領域を介して殆ど不純ガス成分を含まない精製されたガスが吸着塔を出て行くので、吸着塔は全体的に有効に利用される。一方、吸着塔出口側よりの部分が充分に再生されていないときは、吸着塔の中間部が未使用であっても精製されたガスが吸着塔上部の残留不純物を脱着し、出口に不純ガス成分が出現するともはや吸着塔の使用ができなくなり吸着塔全体が有効に使用されない可能性がある。一般に、吸着工程において被精製ガスは、下方から上方にとられるのは一般的である。これは、後続の再生初期などで脱着不純物が液体状態に戻ることがあり、重力の影響で下部に流れ落ちたときこれが出口側に回り込むことを避ける配慮からである。吸着を利用しての分離においては、低温ほど吸着能は高く、吸着塔下部は上部に比較し温度が低い。また、吸着分離においては、加熱再生工程が必須となる。このとき、吸着塔上部は下部に比較し温度が高く十分に加温されることから、ガス流れ方向を上方から下方にすると、上記吸着時の出口(上方)寄りの部分の再生を十分に行うことが可能となる。従って、加熱工程は上から下に向けた再生ガスの流れ方向が有効である。冷却再生工程では、水分やVOCの再吸着に使用されるので、下から上に向けた再生ガスの流れ方向が有効である。さらに、上記のように、冷却再生工程(E)に導入された再生ガスは、次の吸着塔での加熱再生工程(B)にそのまま利用する場合に、先のステップでの加熱再生工程(D)にあった吸着塔の最も高温にされた部分が上部にあり、この余熱が次の吸着塔での加熱再生工程(B)に利用されるので効果的である。本発明においては、これらの機能を利用し、一層迅速なかつ均一な吸着機能および脱着機能の実現を図ることができる。
【0023】
本発明は、上記揮発性有機化合物の回収プロセスであって、加熱手段を用いた前記加熱再生処理において、廃熱回収熱交換器を介して再生ガスを前記冷却凝縮手段へ導入し、該冷却凝縮手段からの再生ガスを前記廃熱回収熱交換器に導入するとともに、該再生ガスを前記加熱手段に導入することを特徴とする。
【0024】
再生工程において用いる再生ガスは、加熱再生処理を行う吸着塔においては、高温状態で多量のVOCを脱着させる一方、VOC凝縮器においては極低温状態にまで低下させることによって大半のVOCを回収する。つまり、循環する再生ガスに対しては、その循環流路において、こうした大きな温度差を付加するために用いる大きなエネルギーの授受が行われる。本発明は、廃熱回収熱交換器を、冷却凝縮手段と加熱手段の中間の最適位置に設けて、こうしたエルギーの授受を効率的にかつ簡便に行うことによって、両者の負荷を軽減することが可能となる。ひいては、VOCの回収システム全体のエネルギー効率を大幅に向上させることができる。特に、工程の切り換え時の両方の工程が交差するときには一層効果的である。
【発明の効果】
【0025】
このように、本発明によれば、水分およびVOCを含む試料空気からのVOCの回収において、VOCの連続回収を図るとともに、吸着剤の効率のよい使用方法および効率のよい再生方法によって、簡便な機能を用い、保守を軽減しエネルギー効率が高くかつ信頼性の高いVOCの回収プロセスを提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明は様々な試料空気の条件(流量やVOCの種類やその組成など)に適用可能であるので、操作温度などの数値例は典型的な値を示す。
【0027】
本発明に係るVOCの回収プロセスは、吸着剤を充填した少なくとも3基の吸着塔および揮発性有機化合物を回収する冷却凝縮手段を有し、少なくともある期間、その内の少なくとも2基の吸着塔の再生工程を重畳的に実施し、残りの吸着塔を吸着工程に供し、これらの工程を順次切り換えることによって、再生工程において循環使用される再生ガス中の濃縮された揮発性有機化合物を効果的に回収することを特徴とする。
【0028】
<本発明に係るVOCの回収プロセスの1の構成例>
図1に、本発明に係るVOCの回収プロセスの1の構成を例示する(第1構成例)。
ここでは、吸着塔を4基設けて動作させる場合について説明する。むろん3基以上の場合であれば何基でもよく、特に試料空気の流量が多いときには、多数の吸着塔を使用するほど、吸着工程にある吸着塔の割合が多くなり、より効率的なVOCの回収プロセスを構成することが可能となる。
【0029】
S1〜S4は内部に吸着剤が充填された吸着塔、1は試料空気を系内に導入する第一ブロア、2は再生ガスを冷却する冷却器、3は主としてVOCを凝縮し回収するVOC凝縮器、4は再生ガスを移送する第二ブロア、5は吸着工程における吸着塔S1〜S4からの試料空気を集合管から排出するスタック、6は再生工程における再生ガス加熱用の再生ガス加熱器を示している。また、V1a〜V1e、V2a〜V2e、V3a〜V3e、V4a〜V4eは、各吸着塔を吸着・再生の各工程に対応して試料空気あるいは再生ガスの流路の切り換えを行う制御弁、Vaは別途系外から再生ガス(パージガス)を用いる場合に導入する制御弁、VbおよびVcは再生ガスの供給に際しVOC凝縮器を通過するかバイパスするかの切換を行う制御弁、VdおよびVeは再生ガスの供給に際し再生ガス加熱器6を通過するかバイパスするかの制御を行う制御弁、Vfは特定の吸着塔を迂回し再生ガスの循環供給するためのバイパスへの切換を行う制御弁を示している。
【0030】
このとき、上記各手段及び付帯する配管及び弁などの試料流路を構成する部材は断熱構造を形成し、所定の温度に保持されることが好ましい。また、第一ブロア、第二ブロアの駆動用電動機を回転数制御するとその風量を変更でき、その結果、再生ガスの昇圧、加熱、冷却などに要するエネルギーの節約ができて好ましい。なお、本実施例では、加熱手段にバイパス弁Veを付ける例を示しているが、これを用いないで、加熱手段の機能を停止すること、つまり、電気あるいはスチーム等の供給を停止することで代えてもよい。
【0031】
また、これらの各要素は、試料空気の吸着工程、再生ガスによる再生工程に対応して、所定のシーケンスに従い、所定の制御手段(図示せず)によって、その作動を管理・制御する。なお、図1では図示していないが、本システムの安定な稼動を確保するために、所定の位置に、温度計、圧力計、分析計および流量計などの測定手段、冷却流体や加熱流体および圧力調整器を適宜配設し、これらの出力および機能を上記同様、制御手段によって管理・制御している。
【0032】
図1の構成例においては、加熱用流路とともに、吸着塔迂回用のバイパス流路を設けた点に特徴がある。加熱再生工程(D)にある吸着塔に対し、他の吸着塔を通過していない再生ガスを供給し、冷却器2を介してVOC凝縮器3において効率よくVOCを回収することができる。また、冷却再生工程(F)にある吸着塔に対し、他の吸着塔を通過していない再生ガスを、冷却器2を経由した直後に供給することによって、汚染防止を図りつつ効果的な冷却再生を行うことができる。再生ガスの流路を分岐して、加熱用流路として再生ガス加熱器6および制御弁Vdを設けるとともに、バイパス流路として制御弁Veを設けている。つまり、制御弁Vdを開とすることで加熱用流路を形成し、制御弁Veを開とすることでバイパス流路を形成する。また、制御弁Vfを開とすることでバイパス流路によって再生ガスが吸着塔を迂回して循環流路を形成する。
【0033】
吸着剤としては、基本的にVOCの吸着能力が高く水分の吸着能力が低ければ特に限定はされないが、比較的こうした能力の差の大きい活性炭を用いることが好ましい。さらにこうした能力の差の大きい、いわゆる疎水性吸着剤が好ましく、具体的には、疎水性ゼオライトが該当する。ここで、疎水性ゼオライトとは、一般にシリカ/アルミナ(SiO/Al)比が大きいものをいい、水を吸着しにくい特性を有する。例えば、SiO/Al比が15以上のもの、特には50〜500程度のものが好ましい。また、吸着剤の形状は、一般には、径3〜5mm程度のペレット状、粒状体あるいはハニカム形状などにより圧力損失が小さく、かつ吸着面積の大きな条件で使用することが好ましい。
【0034】
また、吸着剤として疎水性吸着剤を選択することによって、本発明特有の効果を得ることが可能となる。一般に、吸着法によるVOCの回収効率は、吸着剤の特性と個々のVOCの多くの物性に依存する。例えば、吸着剤の吸着能は、吸着分子のサイズと細孔分布の関係、吸着剤と吸着分子の化学的親和性またこれと関連するが吸着分子の極性などに依存する。また、吸着剤の一般的傾向として、吸着能は温度の関数で低温ほど大きく、高温では低い。一方VOCの物性からは、一般に沸点が吸着温度に比較して高い程吸着は容易である。代表的なVOCとして沸点を記すと、シクロヘキサノン:156℃、トルエン:111℃、MIBK:116℃、MEK:80℃、酢酸エチル:77℃、などとなる。シクロヘキサノン、トルエンあるいはMIBKなどは吸着による精製は容易である。また、MEKや酢酸エチルなどは精製が比較的難しいことが分かる。しかし、後者のVOCを沸点のみで比較すれば水分(沸点100℃)の方が吸着し易いことになるが、水分が極性分子であることから、疎水性の吸着剤を選べば、VOCの吸着能が大きく水分を殆ど吸着することなく、VOCの吸着分離ができる。脱着においても優先的に水分を脱着する特性を有することから、再生工程にこうした特性を活かすことによって、一層のVOCの選択的吸着分離が可能となる。本発明はこうした特性を利用することによって、効率的なVOCの回収を図ったものである。
【0035】
吸着塔S1〜S4は、内部に上記吸着剤が充填され、低温条件(通常約20〜40℃程度)での主としてVOCの吸着、中温条件(通常約100〜130℃程度)での僅かな水分などの脱着、および高温条件(通常約140〜200℃程度)でのVOCの脱着を繰り返し行われる。吸着塔S1〜S4の温度調整方法は、塔内部に加熱部あるいは冷却部を有して自己完結的に温度調整を行う方法、外部から加熱媒体あるいは冷却媒体を供給する方法、あるいは再生ガス流路に加熱器や冷却器を設けて吸着塔の再生時に加熱された再生ガスや冷却された再生ガスを導入することによって温度調整する方法などがある。
【0036】
図1においては、吸着塔S1〜S4のいずれにも繋がる流路同士を、再生ガス加熱器を有する加熱用流路あるいはバイパス流路を介して接続し、加熱用流路とバイパス流路の切換機能を有することを特徴とする方法を例示している。
【0037】
つまり、加熱手段を各吸着塔に設ける構成も可能であるが、装置の大型化、コストの上昇を招くことから、必要な再生ガスのみ加熱処理を行うことが好ましい。本発明は、別途再生ガス加熱器を配設し、加熱再生工程にある吸着塔に供給される再生ガスを予め加熱することによって、吸着塔自体に加熱機能を有する必要をなくし、複数の吸着塔含むVOC回収プロセス全体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0038】
また、吸着塔S1〜S4への試料空気あるいは再生ガスの流れ方向に関し、図1に例示するように、吸着工程および冷却再生工程にある吸着塔については下から上とし、加熱再生工程にある吸着塔については、上から下とすることが好ましい。
【0039】
つまり、一般に吸着塔内部における再生工程直前の吸着しているVOCの分布状態は、図2(a)のような試料空気入口側に高濃度のVOCが吸着していることから、図2(b)のように、試料空気と逆方向から再生ガスを流すことによって先に高濃度VOCを脱着することができ短時間に処理することが可能となる。また、吸着を利用しての分離では、一般にVOCが下方から上方に流される。VOCの吸着は、下方の入り口から上方の出口に向かって進行し、最終的に吸着塔が破過し、VOCが出口から問題となる濃度で出て行くようになると使用限界となる。ただし、吸着塔の再生工程において吸着塔の上部が十分に再生されていないと、吸着塔の破過が早期に起こり吸着塔の吸着剤が十分に使用できないことがある。これは再生ガスの冷却凝縮後残留するVOC分の濃度とも関連し、比較的低沸点のVOCが含まれる場合に顕著である。つまり、吸着塔の上部が十分に加温され再生が十分になされるので、加熱工程は上から下に向けた再生ガスの流れ方向が有効である。また、冷却再生工程にあっては、吸着塔上部のより温度の高いガスを上部から供出する方が冷却効率は高いことから、下から上へのガスの流れが好ましい。特に、冷却再生工程の始めはこの余熱を利用して、他の加熱再生工程への再生を可能とし、最終的には、次の吸着工程において導入される吸着塔下部の温度をより低温化し、吸着効率を上げることが可能となる。従って、本構成によって、これらの機能を利用するが可能となり、一層迅速なかつ均一な吸着機能および脱着機能の実現を図ることができる。このように、多くの点に配慮した、本発明の再生方法が有効である。
【0040】
冷却器2は、再生ガスを20〜40℃程度に冷却するもので、水冷式の熱交換器を用いることができる。また、本構成の吸着工程においては、吸着剤での水分の吸着量が少なく、大部分の水分がスタック5から排出されることから、VOCの回収効率の面では、凝縮排水処理を行う必要はなく、図1において例示したように、冷却器2を介してVOC凝縮器3に再生ガスが導入することによって、十分水分の影響もなくVOCの回収機能が働く点においても優れている。つまり、多量の空気中に含まれたVOCを吸着剤に固定し、再生ガスで脱着させて、より濃度の高いガスに濃縮し、冷却凝縮手段と組み合わせ除去する本方式においては、VOCとともに水分が共存する場合であっても、脱着に際しては、吸着剤を加熱するとはじめに水分が選択に脱着し、これに僅かのVOCが同伴するが、再生工程(B)において、ほとんどの水分は脱着し終わり、冷却器2を介した循環流路において処理される。従って、再生工程(C)におけるVOCの冷却凝縮により、殆ど水分を含まないVOCの回収ができる。このような方法によって、VOCと水分が含まれた空気であっても非常に選択性の高い、VOCの分離回収が可能となる。
【0041】
また、冷却器2の後で分岐して凝縮器3と並列に、水分凝縮器を設けることも可能である。約10℃程度まで冷却し、再生ガス中の水分を凝縮トラップして排水除去することによって、再生工程(E)にある吸着塔への水分再吸着量を減らすことが可能となる。
【0042】
上記のように、本発明のVOC回収プロセスにおいては、VOCとともに水分が共存する場合であっても、効率的にVOCを選択分離することが可能である。
【0043】
VOC凝縮器3は、再生ガスを−40〜−10℃程度にフレオン冷凍機で冷却される。凝縮されたVOCを凝縮器3内の流路からトラップして取り出すことによって、VOCの回収を行うことができる。回収されたVOCは、その後精製され再度各種溶剤の原料として利用することが可能である。また、一旦冷却された再生ガスは、10℃程度に戻すことが好ましいことから、図1に例示するような循環される冷媒によるか、あるいは冷却器2に導入される高温の再生ガスと熱交換することによって冷熱回収し、エネルギー効率の向上を図ることが可能となる。
【0044】
再生ガス加熱器6は、再生ガスを高温状態(約220℃程度)に加熱するもので、発熱抵抗体式やスチームなど熱媒体による熱交換式などを適用することが可能である。加熱状態の切り換えは、印加電圧の切り換えや熱媒体の温度あるいは供給量の切り換えなどによって行われる。
再生工程にある吸着塔に供給される再生ガスを予め加熱することによって、吸着塔自体に加熱機能を有する必要をなくし、複数の吸着塔含むVOC回収プロセス全体のコンパクト化を図るとともに、接続する流路を設定することによって任意の構成が可能となり汎用性のあるVOC回収プロセスを形成することができる。
【0045】
なお、図1では、制御弁Vaを介して別途系外から再生ガス(パージガス)を用いる場合を例示した。一般には、プロセスの運転条件を、こうした限界を超える条件で操作しないことから、系外からのパージガスの導入をせずに、試料空気をそのまま再生ガスとして利用することも可能であるが、VOCの種類によっては、再生ガス中のVOC濃度が爆発限界あるいはその他の許限界を超える可能性がある場合があり、プロセスの安全性の確保の観点から再生ガスとして窒素ガスのような不活性ガスを用いることが好ましい。
【0046】
<第1構成例に基づくVOCの回収プロセスの動作手順>
(1)上記第1構成例に基づくVOCの回収プロセスの動作について、まず、1つの吸着塔(「該吸着塔」という。)における各工程の内容を説明する。
【0047】
(1−1)吸着工程(A)
回収プロセス稼動時においては、図1に示す第一ブロア1で昇圧した試料空気を回収プロセスに導入する。このとき、VOCおよび水分を含む試料空気は、まずフィルタ(図示せず)によって清浄され、また必要なら水冷却器(図示せず)により冷却された後、吸着塔S1〜S4のいずれか2基または3基の該吸着塔に導入され、主としてVOCを吸着分離して大気に放出される。該吸着塔においては、温度約20〜40℃程度、圧力約2〜8kPaG程度に設定される。
【0048】
(1−2)再生工程(B)
次に、回収プロセス稼動時には、第二ブロア4で昇圧された再生ガスを回収プロセスにおいて機能させる。ここで、再生ガスは、系外から導入するか、上記VOCを吸着処理した試料空気を使用するかを問わないが、系外から導入する場合は不活性ガスが好ましい。不活性ガスを用いるときは再生工程の最初に吸着塔内の残留空気を不活性ガスで置換する操作を行うこと多いが、一般的に良く知られたことであるので詳述しない。このとき、再生ガスを冷却器2に導入し、さらに後述する再生工程(E)に切り換った吸着塔に導入した後、該吸着塔に導入することによって、該吸着塔の再生を行う。つまり、再生工程(E)に切り換った吸着塔の直前の工程は高温の加熱再生工程に係った状態にあり、その塔上部からの高温のガスの余熱によって、該吸着塔においては、温度約100〜130℃程度の加温を確保することができる。再生ガスは、回収プロセス内部において循環使用される。
【0049】
(1−3)再生工程(C)
次に、該吸着塔について再生ガス停止状態を作る。つまり、制御弁Vfを作動させて該吸着塔を迂回するバイパスを形成し、該吸着塔に流通していた再生ガスを停止し、内部温度の安定化など、次の高温の加熱再生に備える。一方、冷却器2を介して低温状態にされた再生ガスは、再生工程(F)にある吸着塔に導入することによって、再生工程(F)にある吸着塔の冷却再生を行う。また、この再生ガスは、回収プロセス内部において循環使用される。
【0050】
(1−4)再生工程(D)
次に、冷却器2を介してVOC凝縮器3に導入して大半のVOCを除去した後の再生ガスを、再生ガス用加熱器6によって高温状態(約220℃)にして該吸着塔に導入する。これによって、該吸着塔の高度の再生を行うことができる。
このとき、再生ガスは、多量のVOCを含んだ状態で、冷却器2を介して極低温(約−40〜−10℃程度)のVOC凝縮器3に導入される。ここで、大半のVOCを凝縮液化させ、溶剤として回収する。また、再生ガスは、上記(1−2)同様、回収プロセス内部において循環使用される。
【0051】
(1−5)再生工程(E)
次に、再生工程(B)にある吸着塔からの再生ガスを、冷却器2に導入して低温状態にした後、該吸着塔に導入して、冷却再生を行う。同時に、主として残留した水分を除去することによって、再生工程(B)にある吸着塔への清浄な再生ガスを供給するとともに、前工程で高温状態になった塔内部の余熱を加熱源として供給している。このとき、再生ガスは再生工程(B)にある吸着塔と該吸着塔の間を循環し、中温状態の再生工程(B)にある吸着塔において脱着した水分を該吸着塔において一部吸着除去することも可能となる。
【0052】
(1−6)再生工程(F)
次に、制御弁Vfを作動させて再生工程(C)にある吸着塔を迂回するバイパスを形成し、冷却器2を介して低温状態にされた再生ガスを該吸着塔に導入し、該吸着塔の冷却再生を行う。このとき、再生ガスは、冷却器2と該吸着塔の間を循環し、該吸着塔を冷却する。なお、再生工程(C)にある吸着塔には再生ガスが導入されず、次の高温の加熱再生(再生工程(D))に備える。
【0053】
以上の回収プロセスにおいて、該吸着塔について1サイクルの時間および各工程の個々の時間については、処理する試料空気に含まれるVOCの成分の種類や組成などによって大きく異なるが、各工程の時間比率として、4基の場合、[B]+[C]+[D]=100とした場合、[B]=[E]=30、[C]=[F]=15、[D]=55、再生工程全体を145、吸着工程を255とするのが代表的な値である。
【0054】
なお、以上の回収プロセスでの再生工程(D)を複数の工程に分解し、加熱手段の設定値を変更する、あるいは最終工程では加熱手段の機能を停止(あるいは、再生ガスを加熱手段のバイパス流路に切り換えても良い)するような拡張も可能である。
【0055】
また、吸着工程(A)から再生工程(B)への切り替えは、単純に前もってタイマで設定しておき、それに従うようにすることもできるが、吸着工程(A)にある塔の出口の、あるいはスタックへの集合管において、集合後のVOC濃度を分析計でモニタしておき、規定値になるまで、吸着工程(A)を続ける方式も可能である。この方式を採用すると再生の頻度を少なくでき、エネルギーを節約できて好ましい。
【0056】
以上のように、本発明に係るVOC回収方法は、多量の空気中に含まれたVOCを吸着剤に固定し、別途再生ガスで脱着させ、より濃度の高いガスに濃縮し、冷却凝縮法などと組み合わせ除去するとの方式である。このとき、疎水性吸着剤を用いた場合であっても、VOCの吸着固定ができると同時に僅かの水分も吸着される。しかしながら、脱着に際しても疎水性の特性から、吸着剤を加熱するとはじめに水分が選択に脱着し始め、初期段階でほとんどの水分は脱着し終わる。その後、さらに高い温度で加熱することあるいは加熱を継続することによって、高濃度のVOCの脱着が生じることから、この再生ガスを冷却凝縮することにより、殆ど水分を含まないVOCの回収ができる。こうしたメカニズムに注目して編み出された巧妙な方法が本発明の要点である。
【0057】
(2)上記各工程の内容については、特定の吸着塔を中心に説明したが、回収プロセス全体としての機能や、各工程における流路の動作が図3(1)〜(5)および表2に基づいて理解できる。表2は、回収プロセスにおける吸着塔S1〜S4の機能別の工程を例示している。
【0058】
〔表2〕

【0059】
システム全体としては、第1〜12プロセス(P1〜P12)が循環的に実行される。再生工程(E)および(F)は、次の吸着塔の再生工程(B)および(C)とそれぞれ重畳している。従って、再生工程(B),(C),(D)の3プロセスを単位として吸着塔の切換えが進行することが分かる。
【0060】
以上の第1〜12プロセスによって、各吸着塔S1〜S4での吸着工程、加熱再生工程および冷却再生工程を全て完了することになり、本回収プロセスの機能単位となる。実際の回収プロセスの実行にあっては、試料空気の性状に合せて、こうしたプロセスの機能単位を繰り返す回数、吸着工程の時間、あるいは再生工程の時間比率、などを設定することによって、最も効率的なVOCの回収を行うことができる。また、加熱用流路の共有によるエネルギー効率の向上および2つの吸着塔の利用による多量のVOCの回収を行うことが可能となる。
【0061】
<その他の構成例>
(1)本発明に係るVOCの回収プロセスにおいて、4基の吸着塔と廃熱回収熱交換器7を用いた場合の構成を、図4に例示する(第2構成例)。
【0062】
基本的な構成および機能は、第1構成例と同様であるが、工程(D)にある吸着塔からの再生ガスの廃熱を上記、廃熱回収熱交換器7を通し回収し、第二ブロア4からの再生ガスの予熱を行い、加熱器6の熱負荷を軽減することができる点に特徴がある。
【0063】
こうした構成を、第1構成例と同様に他の要素を作動することによって、簡便でエネルギー効率が高くかつコンパクトな装置などに好適である。
【0064】
(2)本発明に係るVOCの回収プロセスを構成する吸着塔としては、3基またはそれ以上の吸着塔の機能を1つまたはそれ以上の円筒状の回転式吸着体として集合し、動作させることも可能である(第3構成例)。
【0065】
基本的な構成は、第1構成例と同様であるが、回転式吸着体を放射状の境界線で仕切った6つの領域に分け、それぞれに、工程(A)〜(F)の機能を持たせるよう接続し、該回転式吸着体を一定速度で回転することによって、上記各工程を順次循環的に切換することを特徴とする。複数の吸着塔を一体化し、流路の簡素化、制御弁の低減を図ることによって、VOCの回収プロセス全体の簡素化およびコンパクト化を図ることができる。なお、大容量の試料空気を処理する場合には複数の回転式吸着体の組合せも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係るVOCの回収プロセスの基本構成を例示する説明図。
【図2】本発明に係る吸着塔内部におけるVOCの分布状態を例示する説明図。
【図3A】第1構成例に基づくVOCの回収プロセスの動作手順を例示する説明図。
【図3B】第1構成例に基づくVOCの回収プロセスの動作手順を例示する説明図。
【図4】第2構成例の構成を示す説明図。
【図5】従来技術に係るVOCの回収方法を例示する説明図。
【符号の説明】
【0067】
1 第一ブロア
2 冷却器
3 VOC凝縮器
4 第二ブロア
5 スタック
6 再生ガス用加熱器
7 廃熱回収熱交換器
S1〜S4 吸着塔
V1a〜V1e、V2a〜V2e、V3a〜V3e、V4a〜V4e、Va〜Vf 制御弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤を充填した少なくとも3基の吸着塔および揮発性有機化合物を回収する冷却凝縮手段を有し、水分および揮発性有機化合物を含む空気から該揮発性有機化合物を回収するプロセスにおいて、少なくとも、
1)水分および揮発性有機化合物を含む空気から、主として揮発性有機化合物を吸着し、水分を含む空気を系外に放出する吸着工程(A)と、
2)再生工程(E)にある他の吸着塔からの再生ガスを用いて主として水分をパージし、吸着剤の加熱再生処理を行う再生工程(B)と、
3)他の吸着塔の再生工程(F)にある間、再生ガスの流通を停止し、該再生ガスを迂回させる再生工程(C)と、
4)再生ガスを循環的に用いて主として揮発性有機化合物をパージし、吸着剤の加熱再生処理を行う再生工程(D)と、
5)再生工程(B)にある他の吸着塔からの再生ガスを流通させ、主として水分を吸着除去するとともに、吸着剤の冷却再生処理を行う再生工程(E)と、
6)再生工程(C)にある他の吸着塔を迂回した再生ガスを流通させるとともに、吸着剤の冷却処理を行う再生工程(F)と、
を含むとともに、少なくともある期間、前記吸着塔の内の少なくとも2基の吸着塔の再生工程を重畳的に実施し、残りの吸着塔を吸着工程に供し、これらの工程を順次切り換えることを特徴とする揮発性有機化合物の回収プロセス。
【請求項2】
前記吸着剤として疎水性吸着剤を使用し、再生ガスとして不活性ガスを使用することを特徴とする請求項1記載の揮発性有機化合物の回収プロセス。
【請求項3】
前記冷却凝縮手段において、前記再生工程(D)にある吸着塔からの再生ガスを、冷却器で冷却後、冷熱回収手段を経由して凝縮器に導入し、該再生ガス中に含まれる揮発性有機化合物を回収除去することを特徴とする請求項1または2記載の揮発性有機化合物の回収のプロセス。
【請求項4】
前記再生工程(B)の少なくとも一部あるいは全てにおいて、再生工程(B)にある吸着塔からの再生ガスに含まれる水分を、水分凝縮器で除去することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の揮発性有機化合物の回収プロセス。
【請求項5】
前記吸着工程(A)、再生工程(E)および再生工程(F)のガス流れ方向を下から上へとり、再生工程(B)および再生工程(D)のガスの流れ方向を上から下へとることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の揮発性有機化合物の回収プロセス。
【請求項6】
加熱手段を用いた前記加熱再生処理において、廃熱回収熱交換器を介して再生ガスを前記冷却凝縮手段へ導入し、該冷却凝縮手段からの再生ガスを前記廃熱回収熱交換器に導入するとともに、該再生ガスを前記加熱手段に導入することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の揮発性有機化合物の回収プロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−50379(P2007−50379A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−238663(P2005−238663)
【出願日】平成17年8月19日(2005.8.19)
【出願人】(000109428)日本エア・リキード株式会社 (53)
【Fターム(参考)】