説明

揺動選別装置

【課題】
揺動選別装置の分配供給樋おいて、藁屑類と穀粒と分離選別し藁屑類だけを機外へ排出する。
【解決手段】
揺動選別板(15,…)の後側の供給側(15a)上方に一体的に設けられている分配供給樋(16)で混合米を揺動選別板(15,…)に分配供給するように構成し、分配供給樋(16)には穀粒を漏下し藁屑類を右側の揺上側(15c)に移送する選別移送板(31)を設ける。選別移送体(31)の移送終端部の右側に藁屑類貯溜室(32)を設け、分配供給樋(16)には揺動選別板(15,…)の揺動方向である左右方向に対して交叉する前後方向に開口している藁屑類排出用の藁屑類排出口(16a)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、揺動選別装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
混合米タンクの混合米を揺動選別板の上方に一体的に設けられている渡し樋に供給し、分配ケースを経て揺動選別板に供給する籾摺選別機において、渡し樋に設けた選別移送体により穀粒と藁屑類とを分離選別し、選別移送体で分離した藁屑類を渡し樋から排出するようにしたものは、公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−53273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のものでは、選別移送体で分離した藁屑類を揺動選別板の揺上側への揺動方向に移送し渡し樋の開口部から排出する構成である。従って、揺動選別作業を一旦停止した後に再開すると、再起動時の揺動作用により渡し樋の開口部から藁屑類と一緒に穀粒が排出される不具合が発生し、清掃作業が煩わしく、また、機体内に穀粒を残しておくと、ねずみが住みつくような不具合が発生することがあった。
【0005】
そこで、本発明は、渡し樋から藁屑類と共に穀粒が排出されるのを防止し、このような不具合を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、このような従来技術のもつ問題点を解決するために、次の技術的手段を講じた。
請求項1の発明は、揺動選別板(15)を前後方向及び左右方向共に傾斜させて配設し、揺動選別板(15)を左右方向斜め上下の往復揺動をさせて混合米を籾と玄米とに分離選別する揺動選別装置において、前記揺動選別板(15)の供給側(15a)の上方に一体的に設けられている渡し樋(16)で混合米タンク(24)からの混合米を受けて前記揺動選別板(15)に供給するように構成し、前記渡し樋(16)には穀粒を漏下し藁屑類を移送する選別移送板(31)を設け、前記選別移送板(31)の移送終端側には藁屑類貯溜室(32)を設け、該藁屑類貯溜室(32)の後側には藁屑類排出口(16a)を設けたことを特徴とする揺動選別装置とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記選別移送板(31)を穀粒の漏下する多孔板(31a)で構成し、この多孔板(31a)を移送終端側に向けて斜め下り傾斜に構成し、多孔板(31a)の移送終端側に前記藁屑類貯溜室(32)を設け、前記藁屑類貯溜室(32)には穀粒戻し樋(32a)を設け、該穀粒戻し樋(32a)には前側が高く前記藁屑類排出口(16a)に近づく後側ほど低くなる傾斜面を形成したことを特徴とする揺動選別装置の藁屑類排出装置とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1の発明によると、藁屑類貯溜室(32)の後側に藁屑類排出口(16a)を設けたことで、渡し樋(16)内の選別移送板(31)で穀粒から分離選別した藁屑類を、渡し樋(16)における左右方向の揺動方向に対して交叉する方向に排出するようにしたので、揺動選別板(15)の再起動時に生じる左右方向への揺動時にも藁屑類排出口(16a)から穀粒の排出を防止しながら藁屑類を排出することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の前記効果に加えて、選別移送板(31)を穀粒の漏下する多孔板(31a)で構成し、多孔板(31a)の移送終端側を斜め下り傾斜に構成し、多孔板(31a)の移送終端側に設けている藁屑類貯溜室(32)には穀粒戻し樋(32a)を設け、穀粒戻し樋(32a)には前側が高く後側ほど低くなる傾斜面を構成したので、藁屑類貯溜室(32)の藁屑類の後側への移動を円滑にし、藁屑類排出口(16a)から藁屑類を円滑に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】籾摺選別機の全体側面図。
【図2】混合米選別部の斜視図。
【図3】渡し樋の背面図。
【図4】渡し樋の側面図。
【図5】混合米選別部の斜視図。
【図6】混合米選別部の斜視図。
【図7】混合米選別部の斜視図。
【図8】混合米選別部の正面図、選別移送板の斜視図。
【図9】渡し樋の正面図。
【図10】渡し樋の正面図。
【図11】渡し樋の正面図、側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に示すこの発明の実施例について説明する。
まず、図1に基づきこの発明を具備する籾摺選別機の全体構成について説明する。
籾摺選別機は、籾摺部1と、摺落米を風選する摺落米風選部2と、風選後の混合米を籾・玄米に分離選別する揺動型混合米選別部3と、摺落米風選部2の混合米を混合米選別部3に揚穀する混合米揚穀機4と、混合米選別部3の選別玄米を機外へ取り出す玄米揚穀機5等により構成している。
【0012】
籾摺部1は、籾ホッパ6,籾摺ロ−ル7を内装している籾摺室8等で構成し、籾ホッパ6には籾シャッタ40を設けている。籾摺落米風選部2は、摺落米風選箱体9,摺落米風選路10,粃受樋11,摺落米受樋12,吸引フアン13,排塵筒14等で構成している。
【0013】
次に、揺動選別板15を備えた混合米選別部3について説明する。
揺動選別板15の板面には選別用の凹凸を形成し、図2に示すように、前後方向の後側を高い供給側15aとし、前側を低い排出側15bとし、左右方向の右側を高い揺上側15cとし、左側を低い揺下側15dとして、揺動選別板15の前後方向及び左右方向を共に傾斜した構成とし、揺動選別板15を揺動装置15e,15eにより、左右方向斜め上下に往復揺動するように構成している。
【0014】
摺落米受樋12に選別された混合米は、混合米揚穀機4により揚穀されて混合米タンク24に供給され、更に、渡し樋16及び分配ケース17を経て、揺動選別板15における供給側15aの揺下側15dに供給される構成である。揺動選別板15に供給された混合米は、粒形の大小,比重の大小,摩擦係数の大小等により分離選別され、比重の重い小形の玄米は揺上側15cに偏流分布し、玄米に比較して大きく比重の軽い籾は揺下側15dに偏流分布し、その中間部には分離されない籾・玄米の混合米が偏流分布しつつ選別される。このように選別された穀粒は、揺動選別板15の排出側15bに対向して設けている玄米仕切板18及び籾仕切板19により仕切られて取り出される構成である。
【0015】
玄米仕切板18により仕切られて取り出された選別玄米は、玄米取出樋20,玄米流路21,玄米揚穀機5を経て機外に取り出される。また、玄米仕切板18と籾仕切板19により仕切られて取り出された選別混合米は、混合米取出樋22,混合米流路23を経て摺落米受樋12に流入し、次いで、混合米揚穀機4で揚穀され、混合米タンク24,渡し樋16,分配ケース17を経由して、揺動選別板15に供給され再選別される。また、籾仕切板19で仕切られた選別籾は籾取出樋25に取り出され、籾流路26,籾揚穀機27を経由して籾摺部1に揚穀還元され、再度籾摺される構成である。
【0016】
次に、図2〜図4に基づき混合米選別部3の渡し樋16に設けた穀粒と藁屑類との分離選別構成について説明する。
揺動選別板15の後側の供給側15a上方には渡し樋16を一体的に設け、渡し樋16には選別移送板31を設け、選別移送板31で藁屑類を除去した穀粒を均し弁51で均し、分配ケース17を経て各揺動選別板15に均等に供給するように構成している。
【0017】
この渡し樋16は底板、前後側板、左右左側及び上板により偏平な箱型に構成し、この渡し樋16を揺動選別板15の後側である供給側15aにおける上方の右側の揺上側15cから左側の揺下側15dに左右方向全幅に跨がるように配設している。この渡し樋16内の左右方向中間部から右側の揺上側15aに向けて選別移送板31を配設している。この選別移送板31は、右側の揺上側15cを下位になるように下り傾斜に構成している。また、選別移送板31の底面と、側面下部には穀粒が通過できる程度の孔31aを多数形成する。
【0018】
しかして、選別移送板31の傾斜上位側に穀粒が供給されると、孔31aから穀粒が漏下し、渡し樋16の流下面に落下し、穀粒と藁屑類とを分離選別するようにしている。
また、渡し樋16内には選別移送板31の移送終端側の傾斜下位側に対向して藁屑類貯溜室31を設けている。この藁屑類貯溜室32を渡し樋15の右側板に沿って前後方向に長く構成し、その長手方向が揺動選別板15の揺動方向に対して交差する前後方向に沿うようにしている。また、渡し樋16の後側板、すなわち藁屑類貯溜室32の後端部には底板よりも少し高い位置に藁屑類排出口16aを構成している。
【0019】
藁屑類貯溜室32の底部には前後方向に沿わせて底面がV字型の穀粒戻し樋32aを設け、この穀粒戻し樋32aを前側の排出側15bが高く後側の供給側15aが低くなる傾斜面に構成し、この穀粒戻し樋32aには左右方向に沿うように穀粒の漏下するスリット32bを多数設け、穀粒戻し樋32aの後側端部を藁屑類排出口16aに臨ませている。
【0020】
また、揺動選別板15の供給側15aの後側面に藁屑類排出案内筒33を一体的に取り付け、その上端部を藁屑類排出口16aに臨ませ、その下端部を下方に延長している。そして、揺動選別板15の供給側15a及び藁屑類排出案内筒33の後側部を機体カバー35により被覆している。機体カバー35の下部には藁屑類排出樋34を設け、藁屑類排出口16aから藁屑類排出案内筒33を経て流下した藁屑類を藁屑類排出樋34で受けるようにしている。
【0021】
前記構成によると、渡し樋16内における選別移送板31の移送終端側に、穀粒戻し樋32aを備えた藁屑類貯溜室32を配設し、この藁屑類貯溜室32の長手方向を揺動選別板15の揺動方向である左右方向に対して交差する前後方向に沿わせているので、揺動選別板15の再起動時に生じる強い揺動作用時にも、藁屑類排出口16aから混合米が飛び出し難く、起動後、揺動が安定してから屑類案貯溜室32の穀粒戻し樋32aに溜っている藁屑類を後側の藁屑類排出口16aから円滑に排出し、混合米を分配ケース17に供給することができる。
【0022】
また、揺動選別板15の供給側15aの後側に藁屑類排出案内筒33を配置しているので、左右方向に揺動している揺動選別板15の供給側15aから後方に突出移動することがなく、藁屑類排出案内筒33をコンパクトに纏めることができる。
【0023】
次に、図5について説明する。渡し樋16の後側板に、藁屑類排出口16aの形成されているプレート16bを上下調節自在に取り付けるように構成し、藁屑類排出口16aを高く調節することにより、穀粒の藁屑類排出口16aからの飛散を抑制しながら、藁屑類を排出することができる。
【0024】
次に、図6について説明する。
選別移送板31上に藁屑類を右側の傾斜低位側で且つ前側に向けて案内するガイド板37を設けている。選別移送板31に対してガイド板37の後側部を左側の傾斜高位側に、ガイド板37の前側部を右側の傾斜低位側に位置するように平面視で傾斜させて配設し、ガイド板37の下端部と選別移送板31との間に間隙を形成し、穀粒及び藁屑類が通過するように構成し、この傾斜角度を緩急に調節可能に構成している。なお、このようなガイド板37を複数設けてもよい。
【0025】
前記構成によると、選別移送板31上の穀粒及び藁屑類を渡し樋16の藁屑類排出口16aから前側に遠く離れた位置に案内することができ、穀粒の藁屑類排出口16aからの飛散を抑制することができる。また、ガイド板37により藁屑類を藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aの前側の傾斜高位側に迅速に案内し、次いで、藁屑類を傾斜面に沿って後側の低位側に案内し、藁屑類排出口16aから円滑に排出することができる。
【0026】
次に、図7について説明する。選別移送板31上に藁屑類を右側の傾斜低位側の藁屑類排出口16aに案内するガイド板37を設けている。このガイド板37の前側部を選別移送板31の右側の傾斜下位側の終端側近傍に位置させ、ガイド板37の後側部を藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aの上方を通り越して藁屑類貯溜室32の右側端部に位置するように平面視で傾斜させて配設し、ガイド板37の傾斜角度を調節可能に構成している。前記構成によると、左右方向の揺動運動により跳ね上げられた藁屑類を藁屑類排出口16aに案内し円滑に排出することができる。
【0027】
次に、図8について説明する。
選別移送板31の右側の傾斜下位側に対向して藁屑類貯溜室32を設け、この藁屑類貯溜室32の底部にV字型の溝を備えた穀粒戻し樋32aを設け、この穀粒戻し樋32aには藁屑類排出口16aに近づく後側ほど低くなる傾斜面を形成している。そして、この穀粒戻し樋32aには左右方向に沿うように穀粒の漏下するスリット32b,…を形成している。前記構成によると、揺動選別板15の再起同時に、藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aのスリット32b,…から穀粒を漏下して渡し樋16に戻し、藁屑類と穀粒の分離を良好にしながら、藁屑類を藁屑類排出口16aから円滑に排出することができる。
【0028】
次に、図9について説明する。
選別移送板31の右側の傾斜下位側に対向して藁屑類貯溜室32を設け、この藁屑類貯溜室32には底部にV字型の溝を備えた穀粒戻し樋32aを設け、穀粒戻し樋32aには左右方向に沿うように穀粒の漏下するスリット32a,…を形成する。そして、この藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aの上方には右側から上方に屈曲して延出したガイド板40を臨ませている。前記構成によると、揺動選別板15の再起同時に、穀粒戻し樋32aのスリット32b,…から穀粒を漏下して渡し樋16に戻し、藁屑類をガイド板40で藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aの傾斜低位側に案内し、穀粒と藁屑類との分離を良好にしながら、藁屑類を藁屑類排出口16aから円滑に排出することができる。
【0029】
なお、図10に示すように、前記ガイド板40の先端部40aを下方へ曲げるように構成してもよい。
また、図11に示すように、藁屑類貯溜室32の穀粒戻し樋32aの底部上方に前記ガイド板40を設けるにあたり、開閉蓋41にガイド板49を一体的に取り付け、開閉蓋41とガイド板49を渡し樋16に一体的に着脱自在に取り付けるようにする。このようにすると、渡し樋16から開閉蓋41とガイド板40を一緒に取り外すことができて、選別移送板31や藁屑類貯溜室32の清掃作業を容易に行なうことができる。
【符号の説明】
【0030】
1 籾摺部
3 混合米選別部
15 揺動選別板
15a 供給側
15b 排出側
15c 揺上側
15d 揺下側
16 渡し樋
16a 藁屑類排出口
24 混合米タンク
31 選別移送板
31a 多孔板
32 藁屑類貯溜室
32a 穀粒戻し樋
33 藁屑類排出案内筒
35 カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揺動選別板(15)を前後方向及び左右方向共に傾斜させて配設し、揺動選別板(15)を左右方向斜め上下の往復揺動をさせて混合米を籾と玄米とに分離選別する揺動選別装置において、前記揺動選別板(15)の供給側(15a)の上方に一体的に設けられている渡し樋(16)で混合米タンク(24)からの混合米を受けて前記揺動選別板(15)に供給するように構成し、前記渡し樋(16)には穀粒を漏下し藁屑類を移送する選別移送板(31)を設け、前記選別移送板(31)の移送終端側には藁屑類貯溜室(32)を設け、該藁屑類貯溜室(32)の後側には藁屑類排出口(16a)を設けたことを特徴とする揺動選別装置。
【請求項2】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記選別移送板(31)を穀粒の漏下する多孔板(31a)で構成し、この多孔板(31a)を移送終端側に向けて斜め下り傾斜に構成し、多孔板(31a)の移送終端側に前記藁屑類貯溜室(32)を設け、前記藁屑類貯溜室(32)には穀粒戻し樋(32a)を設け、該穀粒戻し樋(32a)には前側が高く前記藁屑類排出口(16a)に近づく後側ほど低くなる傾斜面を形成したことを特徴とする揺動選別装置の藁屑類排出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−218262(P2011−218262A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87895(P2010−87895)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】