説明

搬送ローラおよびフィルム現像処理装置

【課題】 フィルム現像装置に含まれる全ての導電性を有するローラに対して接地することなく、イエローかぶりによるプリント不良の発生を軽減する。
【解決手段】 フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における入口ローラ42と、上部ターンローラ43とは、導電性を有する。また、上記ローラ(上部コロ16a、下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43)が、フィルムFに当接する当接部は、フィルムFの画面領域の外側である側縁部にのみ当接する。このとき、フィルムFの画面領域に対向する位置では、上記ローラがフィルムFに対して当接しない非当接部が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを搬送する搬送ローラおよびこれらを備えたフィルム現像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カメラの操作性向上や簡便化などを目的として、フィルム自体に情報を入力することが行われている。この入力手段として磁気記録が用いられており、磁気記録層を有するフィルムが提案されている。そして、このようなフィルムでは、静電気等で付着したゴミ等による入出力エラーを防止するために、帯電した電気を放電させやすくするための導電層を設けている。しかし、前述の導電層を有するフィルムは、搬送するためのローラと接触した際に、放電(静電気放電)して火花を発生させることがある。この現象によりフィルムが感光し、プリント不良を発生させることがあった。
【0003】
そこで、特許文献1のフィルム現像処理装置では、フィルムを搬送するために接触するローラに導電性のローラを使用し、これを接地(アース)することにした。
【特許文献1】特開平6−222545号公報(平成6年8月12日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のフィルム現像処理装置では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、火花の発生を防止してイエローかぶりによるプリント不良の発生を軽減するためには、フィルム現像処理装置に含まれる導電性を有する全てのローラを接地する必要があり、これには非常にコストがかかっていた。
【0005】
本発明の課題は、フィルム現像処理装置に含まれる全ての導電性を有するローラに対して接地することなく、イエローかぶりによるプリント不良の発生を軽減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る搬送ローラは、フィルムを搬送する導電性の搬送ローラであって、フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置するフィルムの側縁部のみと当接する当接部を介してフィルムを搬送する。
ここでは、搬送ローラが、導電性の材質より形成されており、その搬送ローラがフィルムに当接する当接部は、フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置する側縁部にのみ当接する。
【0007】
ここで、高感度フィルム等、導電性を有するフィルムが搬送される場合において、帯電したフィルムは、搬送ローラに当接するとその帯電した電気を放電し(静電気放電)、場合によっては火花が発生する。この火花は、フィルムを感光(イエローかぶり)され、この感光されたフィルムを現像すると黄色の点となって現れるようになる。また、イエローかぶりが発生したフィルムをプリントすると、イエローかぶりの部分が青色となって現れる不具合を発生させる。
【0008】
通常、このようなフィルムを搬送する搬送ローラは、その直径が搬送ローラの軸方向(以下、軸方向とする)において一定である。このため、搬送ローラは、フィルム全体、つまり、画面領域にも当接することになる。しかし、上述したように、帯電したフィルムが搬送ローラと当接した際に静電気を放電し、フィルムの画面領域、つまりプリントされる領域において火花が発生する可能性がある。すると、画面領域にイエローかぶりが発生することとなり、プリントするとフィルムのイエローかぶりの部分が青い点となって現れてプリント不良となってしまう。このため、このようなイエローかぶりの発生を防止するために、全ての搬送ローラに対して接地(アース)して、フィルムに帯電した電気を逃がしてやる必要があった。
【0009】
本発明の搬送ローラでは、その外周面が、フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置する側縁部にのみ当接する。このとき、フィルムの画面領域に対向する位置では、搬送ローラがフィルムに対して当接しない非当接部が形成される。
これにより、帯電したフィルムが搬送ローラに当接した際に静電気を放電し、火花が発生したとしても、その位置は画面領域の外側となる。つまり、このフィルムをプリントしても、イエローかぶりによる影響はなくプリント不良は発生しない。
【0010】
この結果、イエローかぶりによるプリント不良の発生を防止することができ、静電気放電による火花の発生を防止するために全ての搬送ローラに対して接地(アース)する必要がないためコストを低減することができる。
【0011】
第2の発明に係る搬送ローラは、第1の発明に係る搬送ローラであって、直径が、軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されている。
ここでは、搬送ローラの直径が、軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されている。
ここで、搬送ローラによって搬送されるフィルムにはフィルム幅の異なる複数種類のフィルムが存在する。
これにより、フィルムの搬送時の搬送ローラとフィルムの軸方向における位置関係は、フィルムの画面領域が、搬送ローラの中央部に対して対向するように位置する。このとき、フィルムの画面領域に対向する位置における搬送ローラの直径は、搬送ローラがフィルムに当接する当接部の位置における搬送ローラの直径よりも小さい。このため、この部分に搬送ローラがフィルムに対して当接しない非当接部が形成される。
【0012】
この結果、フィルム幅の異なる複数種類のフィルムが搬送されても、搬送ローラが、フィルムの画面領域の外側である側縁部のみに当接し、フィルムの画面領域に当接しないようにすることが可能となる。また、搬送ローラがフィルムに当接する当接部の状態が、例えば、正面からみてローラの軸方向において中央部側に下がるように傾斜している状態では、当接部が軸方向におけるフィルムの移動を拘束するフィルムのガイドの役目を果たし、軸方向におけるフィルムの蛇行を防止することが可能となる。
【0013】
なお、例えば、搬送ローラの直径が、軸方向において中央部から両端部に向かって段階的に大きくなるように形成することも可能である。フィルム幅に合わせて1段階直径を大きくすることで、その1段階大きくした段差が側壁となり、フィルムのガイドの役目を確実にする。
【0014】
第3の発明に係る搬送ローラは、第1または第2の発明に係る搬送ローラであって、フィルムは、導電性の材質を含んでいる。
ここでは、搬送されるフィルムが導電性を有している。
ここで、導電性を有さないフィルムは帯電しにくいので、搬送ローラとの当接によって静電気が放電し、火花が発生することは非常に稀である。しかし、導電性の材質を有するフィルムは帯電しやすく、搬送ローラとの当接によって帯電した静電気が放電し、火花を発生する頻度が増加する。
【0015】
これにより、導電性フィルムを使用した場合に、静電気放電による火花の発生を防止する効果が大きくなる。
また、高感度フィルムについては、通常のフィルムに比べて帯電される帯電量が多いので、静電気放電による火花の発生を防止する効果はさらに大きくなる。
【0016】
第4の発明に係る搬送ローラは、第1から第3の発明のいずれか1つに係る搬送ローラであって、フィルムの乳剤面側に当接してフィルムを搬送する。
ここでは、フィルムの乳剤面側に当接する搬送ローラの直径が、搬送ローラの軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されている、または、搬送ローラの軸方向において中央部から両端部に向かって段階的に大きくなるように形成されている。
これにより、画面領域の乳剤面に直接搬送ローラと当接することがなくなり、当接による画面領域の損傷を防止することが可能となる。
この結果、プリントされる画像を高品質なものにすることができる。
【0017】
第5の発明に係るフィルム現像処理装置は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る搬送ローラを複数備えている。
ここでは、フィルム現像処理装置における搬送ローラが、導電性の材質より形成されており、その搬送ローラがフィルムに当接する当接部は、フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置する側縁部にのみ当接する。
【0018】
ここで、高感度フィルム等、導電性を有するフィルムが搬送される場合において、帯電したフィルムは、搬送ローラに当接するとその帯電した電気を放電し(静電気放電)、場合によっては火花が発生する。この火花は、フィルムを感光(イエローかぶり)され、この感光されたフィルムを現像すると黄色の点となって現れるようになる。また、イエローかぶりが発生したフィルムをプリントすると、イエローかぶりの部分が青色となって現れる不具合を発生させる。
【0019】
通常、このようなフィルムを搬送する搬送ローラは、その直径が搬送ローラの軸方向において一定である。このため、搬送ローラは、フィルム全体、つまり、画面領域にも当接することになる。しかし、上述したように、帯電したフィルムが搬送ローラと当接した際に静電気を放電し、フィルムの画面領域、つまりプリントされる領域において火花が発生する可能性がある。すると、画面領域にイエローかぶりが発生することとなり、プリントするとフィルムのイエローかぶりの部分が青い点となって現れてプリント不良となってしまう。このため、このようなイエローかぶりの発生を防止するために、全ての搬送ローラに対して接地(アース)して、フィルムに帯電した電気を逃がしてやる必要があった。
【0020】
本発明のフィルム現像処理装置における搬送ローラでは、その外周面が、フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置する側縁部にのみ当接する。このとき、フィルムの画面領域に対向する位置では、搬送ローラがフィルムに対して当接しない非当接部が形成される。
これにより、帯電したフィルムが搬送ローラに当接した際に静電気を放電し、火花が発生したとしても、その位置は画面領域の外側となる。つまり、このフィルムをプリントしても、イエローかぶりによる影響はなくプリント不良は発生しない。
【0021】
この結果、イエローかぶりによるプリント不良の発生を防止することができ、静電気放電による火花の発生を防止するために全ての搬送ローラに対して接地(アース)する必要がないためコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
第1の発明に係る搬送ローラによれば、イエローかぶりによるプリント不良の発生を防止することができ、静電気放電による火花の発生を防止するために全ての搬送ローラに対して接地(アース)する必要がないためコストを低減することができる。
第2の発明に係る搬送ローラによれば、フィルム幅の異なる複数種類のフィルムが搬送されても、搬送ローラが、フィルムの画面領域の外側である側縁部のみに当接し、フィルムの画面領域に当接しないようにすることが可能となる。また、軸方向におけるフィルムの蛇行を防止することが可能となる。
【0023】
第3の発明に係る搬送ローラによれば、導電性フィルムを使用した場合に、静電気放電による火花の発生を防止する効果が大きくなる。
第4の発明に係る搬送ローラによれば、画面領域の乳剤面に直接搬送ローラと当接することがなくなり、当接による画面領域の損傷を防止することが可能となるので、プリントされる画像を高品質なものにすることができる。
【0024】
第5の発明に係るフィルム現像処理装置によれば、イエローかぶりによるプリント不良の発生を防止することができ、静電気放電による火花の発生を防止するために全ての搬送ローラに対して接地(アース)する必要がないためコストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の一実施形態に係るフィルム現像処理装置1について、図1〜図6を用いて説明すれば以下の通りである。
[フィルム現像処理装置1全体の構成]
本実施形態に係るフィルム現像処理装置1は、図1に示すように、フィルムカートリッジ11からフィルムFを引き出し、各処理槽に順に浸漬させながら現像処理を行って乾燥させるフィルム現像処理装置である。そして、フィルム現像処理装置1は、フィルム引出部10と、フィルム現像処理部30と、フィルム乾燥部50とを備えている。
【0026】
フィルム引出部10は、フィルムカートリッジ11からフィルムFを引き出し、カッター13によってフィルムカートリッジ11から切り離されたフィルムFをフィルム現像処理部30まで搬送する。
フィルム現像処理部30は、後段で詳述する各種処理液で満たされた処理槽ユニット31において、フィルムFを各種処理液に浸漬させながら順に搬送させ、現像、漂白、定着安定といった処理を行う。そして、フィルム乾燥部50にフィルムFを送り出す。
【0027】
フィルム乾燥部50は、処理槽ユニット31に浸漬されたフィルムFを、スクイズ機構60において処理液を除去したあと、下流側の乾燥室51において乾燥させる。そして、フィルムFをフィルム現像処理装置1の外部へ排出する。
[フィルム引出部10の構成]
フィルム引出部10は、図2に示すように、フィルムカートリッジ11、保持部12、カッター13、下部圧接ローラ14、センターローラ(搬送ローラ)15、コロ(搬送ローラ)16およびフィルム検出センサ17等を有している。
【0028】
フィルムカートリッジ11は、保持部12によって保持されており、スプール軸(図示せず)に取り付けられて給送方向に回転し、収納されたフィルムFを送り出す。
カッター13は、フィルムFの終端部分を切断し、フィルムカートリッジ11からフィルムFを切り離す。
下部圧接ローラ14は、対向する位置に配置されたセンターローラ15との間においてフィルムFを圧接して搬送する。下部圧接ローラ14およびセンターローラ15は、その直径が、ローラの軸方向に対して一定であり、NBR(ニトリルゴム)によって形成されている。
【0029】
コロ16は、フィルムFの搬送時に常時フィルムと当接する位置に配置された下部コロ16bと、フィルムFの搬送においては、長尺方向における端部のみが稀に接触するように配置された上部コロ16aによって構成されている。コロ16については、後段で詳述する。
フィルム検出センサ17は、フィルムFの先端および終端の通過を検出する。
【0030】
(コロ16の説明)
上部コロ16aと、下部コロ16bとは、その直径Lが、それぞれのローラの軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されており、図3に示すように、正面からみたときに中央部を凹部とする半径Rが500mmの弧を形成する、いわゆる鼓形状を有している。また、上部コロ16aと、下部コロ16bとは、体積抵抗率が1000Ω・cmの導電性の材質であるPP(ポリプロピレン)によって形成されている。
【0031】
フィルムFの搬送時の下部コロ16bとフィルムFとの軸方向における位置関係は、図4に示すように、フィルムFの画面領域が、下部コロ16bの中央部に対して対向するように位置する。このとき、フィルムFの画面領域に対向する位置における下部コロ16bの直径L2は、下部コロ16bがフィルムFに当接する当接部の位置における直径L1よりも小さい。このため、この部分に下部コロ16bがフィルムFに対して当接しない非当接部が形成される。すなわち、フィルムFの画面領域の位置においては、フィルムFと下部コロ16bの外周面との間にL1−L2の隙間が形成され、この隙間が非当接部を形成する要因となる。また、上部コロ16aにおいても同様の関係となる。
【0032】
[フィルム現像処理部30の構成]
フィルム現像処理部30は、図1に示すように、処理槽ユニット31と、フィルム搬送経路39と、入口ラック41(図2参照)等を有している。
処理槽ユニット31は、現像液が充填された現像処理槽32と、漂白液が充填された漂白処理槽33と、定着液が充填された定着処理槽34・35と、安定液が充填された安定処理槽36〜38で構成されている。
【0033】
フィルム搬送経路39は、上記の各処理液中を搬送するために各処理槽32〜38の内部と、処理槽ユニット31を順に搬送するために処理槽ユニット31の上部とに設けられている。
入口ラック41は、図2に示すように、フィルム引出部10から送り出されたフィルムFを現像処理槽32に導くための搬送経路であり、入口ローラ42(搬送ローラ)と、上部ターンローラ43(搬送ローラ)を有している。
【0034】
(入口ローラ42の説明)
入口ローラ42は、その直径Lが、入口ローラ42の軸方向において中央部から両端部に向かって段階的に大きくなるように形成されている。その直径Lは、図5に示すように、直径Lが一番小さくなる中央部を240フィルムの画面領域幅D1を確保して一段階大きくなる。次に、240フィルムの幅D2を確保して一段階大きくなり、その次に135フィルム幅D3を確保して一段階大きくなるといった段付き形状を有している。また、入口ローラ42は、体積抵抗率が1000Ω・cmの導電性の材質であるPPによって形成されている。
【0035】
例えば、135型フィルムFが搬送される際は、図6に示すように、入口ローラ42の軸方向において135型フィルムFの画面領域に対向する位置における入口ローラ42の直径L4は、入口ローラ42がフィルムFに当接する当接部の直径L3よりも小さい。このため、入口ローラ42が、135型フィルムFの画面領域に当接することはない。また、240型フィルムFが入口ローラ42に当接する際も上記と同様の関係(240型フィルムの画面領域に対向する位置:L5、240型フィルムとの当接部:L4)が保たれ、入口ローラ42が240型フィルムFの画面領域に当接することはない。
【0036】
(上部ターンローラ43の説明)
上部ターンローラ43は、その直径Lが、上部ターンローラ43の軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されており、図3に示すように、正面からみたときに中央部を凹部とする半径Rが500mmの弧を形成される、いわゆる鼓形状をしている。また、上部ターンローラ43は、体積抵抗率が1000Ω・cmの導電性の材質であるPPによって形成されている。
【0037】
フィルムFの搬送時の上部ターンローラ43とフィルムFとの軸方向における位置関係は、図4に示すように、フィルムFの画面領域の外側である側縁部よりも画面領域の方が、上部ターンローラ43の中央部側に位置する。このとき、フィルムFの画面領域に対向する位置における上部ターンローラ43の直径L2は、上部ターンローラ43がフィルムFに当接する当接部の位置における直径L1よりも小さい。このため、この部分に上部ターンローラ43がフィルムFに当接しない非当接部が形成される。すなわち、フィルムFの画面領域の位置においては、フィルムFと上部ターンローラ43の外周面との間にL1−L2の隙間が形成され、この隙間が非当接部を形成する要因となる。
【0038】
[フィルム乾燥部50の構成]
フィルム乾燥部50は、図1に示すように、スクイズ機構60と、乾燥室51と、ブロワ52と、搬送経路54とを有している。
スクイズ機構60は、処理槽ユニット31における処理液を除去(スクイズ)するための機構である。そして、スクイズ機構60は、駆動ローラ61および従動ローラ62から構成され、駆動ローラ61と対向する位置に配置された従動ローラ62の間にフィルムFを圧接することにより、フィルムFに付着した処理液を除去する。
【0039】
乾燥室51は、現像処理されたフィルムFを乾燥するために設けられており、乾燥室51に温風を吹き出すためのブロワ52と、複数の搬送ローラから形成されるフィルムFを搬送する搬送経路54等で構成されている。フィルム乾燥部50の搬送経路に用いられる搬送ローラ53は、耐熱性を考慮して、発泡性シリコンゴムにより形成されている。
[フィルム現像処理装置1の特徴]
(1)
本実施形態のフィルム現像処理装置1において、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における入口ローラ42と、上部ターンローラ43とは、導電性を有する。また、上記ローラ(上部コロ16a、下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43)が、フィルムFに当接する当接部は、フィルムFの画面領域の外側である側縁部にのみ当接する。このとき、フィルムFの画面領域に対向する位置では、上記ローラがフィルムFに対して当接しない非当接部が形成される。
【0040】
通常、このようなフィルムを搬送するローラは、その直径がローラの軸方向において一定である。このため、これらの搬送ローラの外周面は、フィルム全体、つまり、画面領域にも当接することになる。しかし、帯電したフィルムがこれらの搬送ローラに当接した際に静電気を放電し、フィルムの画面領域、つまりプリントされる領域において火花が発生する可能性がある。すると、画面領域にイエローかぶりが発生し、プリントするプリント不良が発生してしまうおそれがある。このため、導電性を有するこれらのすべての搬送ローラに対して接地(アース)して、フィルムに帯電した電気を逃がし、火花の発生を防止する必要があった。
【0041】
本実施形態のフィルム現像処理装置1において、上記ローラがフィルムFに当接する当接部は、フィルムFの画面領域の外側の側縁部にのみ当接し、当接部よりそれらのローラの直径Lが小さくなる非当接部は、フィルムFの画面領域には当接しない。
これにより、帯電したフィルムFがこれらの上記ローラに当接した際に静電気を放電し、火花が発生したとしても、その位置は画面領域の外側となる。つまり、このフィルムFをプリントしても、イエローかぶりによる影響はなくプリント不良は発生しない。
【0042】
この結果、イエローかぶりによるプリント不良の発生を防止することができ、静電気放電による火花の発生を防止するために導電性を有する上記ローラに対して接地(アース)する必要がないためコストを低減することができる。
(2)
本実施形態のフィルム現像処理装置1では、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における上部ターンローラ43とは、その直径Lが、軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されている。
【0043】
これにより、フィルムFの搬送時の上記ローラ(上部コロ16a、下部コロ16b、上部ターンローラ43)とフィルムFとの位置関係は、フィルムFの画面領域が、上記ローラの中央部に対向するように位置する。このとき、フィルムFの画面領域の位置における上記ローラの直径Lは、上記ローラがフィルムFに当接する当接部の位置における直径Lよりも小さい。このため、フィルムFの画面領域と上記ローラの中央部との間に隙間が生じ、この部分に上記ローラがフィルムFに当接しない非当接部を形成する。
【0044】
この結果、フィルム幅の異なる複数種類のフィルムFが搬送されても、上記ローラが、フィルムFの画面領域の外側である側縁部のみに当接し、フィルムFの画面領域に当接しないようにすることが可能となる。
(3)
本実施形態のフィルム現像処理装置1では、フィルム現像処理部30における上部ターンローラ43は、その直径Lが、上部ターンローラ43の軸方向において中央部から両端部に向かって段階的に大きくなるように形成している。
【0045】
これにより、上部ターンローラ43の軸方向においてフィルムFの画面領域に対向する位置における上部ターンローラ43の直径Lは、上部ターンローラ43がフィルムFに当接する当接部よりも必然的に小さくなるので、上部ターンローラ43がフィルムFに当接しない非当接部を形成する。さらに、240型フィルムの幅に合わせてその直径Lを1段階大きくすることによって、その1段階大きくした段差が側壁W(図5参照)となり、フィルムFのガイドの役目を果たすことになる。そして、この側壁Wが、上部ターンローラ43の軸方向におけるフィルムFの移動を拘束する。
【0046】
この結果、フィルム幅の異なる複数種類のフィルムFが搬送されても、上部ターンローラ43が、フィルムFの画面領域の外側である側縁部のみに当接し、フィルムFの画面領域に当接しないようにすることが可能となる。さらに、上部ターンローラ43の軸方向における移動を拘束するので、上部ターンローラ43の軸方向におけるフィルムFの蛇行を防止することが可能となる。
【0047】
(4)
本実施形態のフィルム現像処理装置1において、搬送されるフィルムFは導電性の材質を有している。
これにより、本実施形態のフィルム現像処理装置1において、イエローかぶりが発生しやすい導電層を含むフィルムを使用した場合でも、静電気放電によるプリント不良の発生を防止することができる。なお、フィルムは、導電性を有するので帯電した静電気が放電したときにスパークが生じやすい。
【0048】
また、高感度フィルムについては、通常のフィルムに比べて帯電される帯電量が多いので、静電気放電による火花の発生を防止する必要性が大きい。
(5)
本実施形態のフィルム現像処理装置1において、下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43が、フィルムFの乳剤面側と当接してフィルムFを搬送する。
【0049】
これにより、上記ローラ(下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43)が、フィルムFの乳剤面が塗布されている位置に直接当接することがなくなりフィルムFのプリント面側の損傷を防止することが可能となる。
(6)
本実施形態のフィルム現像処理装置1では、フィルムFの終端をカッター13にてカット後、圧着搬送ローラ対14・15から下流側に搬送される。そして、フリーになったフィルムFの終端部において静電気が帯電し万が一スパークが発生しても、本実施形態のフィルム現像処理装置1では画面領域に影響はない。本発明の搬送ローラは、フィルム現像処理部30における処理槽ユニット31の処理液にフィルムFを搬送する手前(直前)の入口ローラ42、上部ターンローラ43において特に有用である。
【0050】
(7)
本実施形態のフィルム現像処理装置1において、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における入口ローラ42と、上部ターンローラ43とは、PPにより形成されている。
これにより、PPは導電性を有しているため、フィルムFが上記ローラ(上部コロ16a、下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43)に当接した時に、フィルムFに帯電した電気をスムーズに上記ローラに導くことが可能となり、フィルムFの帯電を軽減することができる。
【0051】
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)
上記実施形態では、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における上部ターンローラ43の形状を、その直径が、軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成されており、図3に示すように、正面から見たときに中央部を凹部とする半径が500mmの弧から形成される鼓形状の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
正面から見たときに中央部を凹部とする半径Rの大きさは、搬送される複数種類のフィルムFの中で最も小さな幅のフィルムFが、上記ローラに当接する場合において、画面領域と当接しない非当接部を確実に形成できるような半径Rの大きさであればよい。
また、正面から見たときに中央部を凹部とする形状は弧形状でなく、図7に示すように、直線形状のローラ70であってもよい。この場合においても、上記に記述したように、画面領域と当接しない非当接部を形成できるので、上記と同様の効果を得ることができる。
【0053】
(B)
上記実施形態では、フィルム現像処理部30における入口ローラ42の形状を240型フィルムと135型フィルムに対応した形状の例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、240型フィルムと、135型フィルムと、120型フィルムに対応するような形状など、搬送されるフィルムFの種類によって形状を形成してもよい。
【0054】
(C)
上記実施形態では、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における上部ターンローラ43とにいわゆる鼓形状のローラを採用し、フィルム現像処理部30における入口ローラ42にいわゆる段付き形状のローラを採用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0055】
例えば、上記ローラ(上部コロ16a、下部コロ16b、入口ローラ42、上部ターンローラ43)の全てに段付き形状のローラを採用してもよいし、下部コロ16bと、入口ローラ42とに段付き形状のローラ、上部コロ16aと、上部ターンローラ43とに鼓形状のローラを採用してもよい。あるいは、上記実施形態とは異なる組合せで、各ローラを構成してもよい。
【0056】
(D)
上記実施形態では、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における入口ローラ42と、上部ターンローラ43とが、体積抵抗率1000Ω・cmの導電性材料によって形成される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0057】
例えば、体積抵抗率800Ω・cmなど、体積抵抗率1000Ω・cm以下の導電性を有する材料によって形成してもよい。
(E)
上記実施形態では、フィルム引出部10における上部コロ16aと、下部コロ16bと、フィルム現像処理部30における入口ローラ42と、上部ターンローラ43とが導電性の材質であるPPにより形成される例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0058】
例えば、上記ローラの材質にPOM(ポリアセタール樹脂)、PST(ポリスチレン)を使用する等、導電性を有する材質によって形成してもよい。
また、例えば、上部コロ16aと、下部コロ16bとにPP、入口ローラ42にPOM、上部ターンローラ43にPSTより形成したローラを使用する等、フィルム現像処理装置1に含まれる搬送ローラの形成に関して、導電性の材質を自由に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の搬送ローラは、接地することなく、静電気発生によるプリント不良の発生を軽減するという効果を奏することから、搬送ローラが、感光材料に当接するような搬送機構を有する装置に対して広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本実施形態に係わるフィルム現像処理装置の一例を示す図。
【図2】フィルム引出部からフィルム現像処理部までのローラの配置を示した説明図。
【図3】ローラの形状の一例を示す正面図。
【図4】図3のローラとフィルムとの関係を示した正面図。
【図5】ローラの形状の一例を示す正面図。
【図6】図5のローラとフィルムとの関係を示した正面図。
【図7】ローラの形状の一例を示す正面図。
【符号の説明】
【0061】
1 フィルム現像処理装置
10 フィルム引出部
11 フィルムカートリッジ
12 保持部
13 カッター
14 下部圧接ローラ
15 センターローラ
16 コロ(搬送ローラ)
16a 上部コロ(搬送ローラ)
16b 下部コロ(搬送ローラ)
17 フィルム検出センサ
30 フィルム現像処理部
31 処理槽ユニット
32 現像処理槽
33 漂白処理槽
34 定着処理槽
35 定着処理槽
36 安定処理槽
37 安定処理槽
38 安定処理槽
39 フィルム搬送経路
41 入口ラック
42 入口ローラ(搬送ローラ)
43 上部ターンローラ(搬送ローラ)
50 フィルム乾燥部
51 乾燥室
52 ブロワ
53 搬送ローラ
54 搬送経路
60 スクイズ機構
61 駆動ローラ
62 従動ローラ
70 ローラ
F フィルム
R 半径
L 直径
L1 直径
L2 直径
L3 直径
L4 直径
L5 直径
D1 240型フィルム画面領域幅
D2 240型フィルム幅
D3 135型フィルム幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを搬送する導電性の搬送ローラであって、
前記フィルムの幅方向において画面領域の外側に位置する前記フィルムの側縁部のみと当接する当接部を介して前記フィルムを搬送する搬送ローラ。
【請求項2】
直径が、軸方向において中央部から両端部に向かって大きくなるように形成された、
請求項1に記載の搬送ローラ。
【請求項3】
前記フィルムは、導電性の材質を含んでいる、
請求項1または2に記載の搬送ローラ。
【請求項4】
前記フィルムの乳剤面側に当接して前記フィルムを搬送する、
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送ローラ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の搬送ローラを複数備えたフィルム現像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24967(P2007−24967A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−203283(P2005−203283)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】