搬送台車移動システム、搬送ライン及び搬送方法
【課題】ベース部品に対する下方と、ベース部品に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者によって同時間帯に行うことができる搬送台車移動システムを提供すること。
【解決手段】搬送台車移動システム1は、ベース部品8を載置する搬送台車3を、複数台連続して組付作業工程に移動させるよう構成してある。互いに隣接する搬送台車3間においては、搬送台車3Aの複数のポスト44Dと、搬送台車3Bの複数のポスト44Cとに、上方作業台7が架け渡してある。搬送台車3が移動する床面2には、上方作業台7に対する、搬送台車3の移動方向Dの左右両側に、固定作業台15が設置してある。搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、下方作業台5と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、ベース部品8に対して作業者Mが作業できるよう構成してある。
【解決手段】搬送台車移動システム1は、ベース部品8を載置する搬送台車3を、複数台連続して組付作業工程に移動させるよう構成してある。互いに隣接する搬送台車3間においては、搬送台車3Aの複数のポスト44Dと、搬送台車3Bの複数のポスト44Cとに、上方作業台7が架け渡してある。搬送台車3が移動する床面2には、上方作業台7に対する、搬送台車3の移動方向Dの左右両側に、固定作業台15が設置してある。搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、下方作業台5と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、ベース部品8に対して作業者Mが作業できるよう構成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の組付ラインのワーク搬送を行う搬送台車移動システム、搬送ライン及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組付ラインにおいては、ベース部品となるメインボディを搬送台車上に載置し、搬送台車を移動させながらメインボディに対して種々の組付部品の組付を行っている。例えば、特許文献1の自動車などの組立て用搬送装置においては、搬送台車の走行経路内の部品組付け作業を行う特定区間の下側に、この特定区間の始端位置から終端位置まで搬送台車と同期して走行可能な同期走行台車を設け、この同期走行台車上に移載装置を搭載し、移載装置によってエンジン等の組付け部品を、搬送台車上の車体に対して組付け容易な高さまで持ち上げることが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2の車体位置補正搬送システムにおいては、搬送台車に載置した車体を複数の工程へ搬送する際に、搬送台車にリフト機構を搭載しておき、リフト機構によって搬送台車上の車体の高さを変更できるようにすることが開示されている。
さらに、例えば、特許文献3の昇降機能付き搬送台車においては、左右のガイドポストを用いて受部材により車体を支持して搬送することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248657号公報
【特許文献2】特開平9−309473号公報
【特許文献3】特開2009−1182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車のメインボディ(車体)等においては、種々の組付部品を組み付ける組付高さが異なるため、各組付工程において、工場の床面に対するメインボディの搬送高さを変更する必要が生じる。例えば、内装部品を組み付けるトリム工程においては、メインボディを床面付近で搬送する一方、足回りの部品、燃料タンク等を組み付けるシャシー工程においては、メインボディを高い位置に持ち上げて搬送する必要がある。
そして、従来の自動車の組付ラインにおいては、メインボディに対する下方と、メインボディに対する上方及び側方との上下2段における組付作業を、異なる作業者が同時に行うことができる工夫はなされていない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ベース部品に対する下方と、ベース部品に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者によって同時間帯に行うことができる搬送台車移動システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース部品を載置する搬送台車を、複数台連続して作業工程に移動させるよう構成した搬送台車移動システムにおいて、
上記搬送台車は、上記ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、該ベース台車部に配設した下方作業台とを備えており、
上記複数のポストは、上記ベース台車部における一方側部分に立設した複数の一方側ポストと、上記ベース台車部における他方側部分に立設した複数の他方側ポストとからなり、
互いに隣接する上記搬送台車間においては、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部とに、上方作業台が架け渡してあり、
上記搬送台車が移動する床面には、上記上方作業台に対する、上記搬送台車の移動方向の左右両側に、固定作業台が設置してあり、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、上記下方作業台と、上記上方作業台及び上記固定作業台との上下2段の作業台において、上記ベース部品に対して作業者が作業できるよう構成したことを特徴とする搬送台車移動システムにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の搬送台車移動システムにおいては、ベース台車部に下方作業台を配設しており、ベース台車部に立設した複数の一方側ポスト及び複数の他方側ポストに対しては、ベース部品を位置決めを行って載置する。そして、下方作業台においては、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物が存在せず、作業者は、下方作業台を足場としてベース部品に対する下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0009】
また、本発明の搬送台車移動システムにおいては、搬送台車を複数台連続して移動させる際に、互いに隣接する搬送台車間において、一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部と、他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部とに上方作業台を架け渡す。そして、作業者は、上方作業台を足場としてベース部品に対する上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
また、上方作業台に対する左右両側には、固定作業台が設置してあり、作業者は、固定作業台から、ベース部品に対して前後に位置する上方作業台へ移動することができ、固定作業台と上方作業台との間を自由に移動することができる。
【0010】
このように、本発明においては、搬送台車が複数台連続して移動する際に、下方作業台と、上方作業台及び固定作業台との上下2段の作業台において、作業者は、ベース部品に対して組付部品の組付等の作業を行うことができる。なお、下方作業台において作業する作業者と、上方作業台及び固定作業台において作業する作業者とは、別々の者とすることができる。
それ故、本発明の搬送台車移動システムによれば、ベース部品に対する下方と、ベース部品に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者によって同時間帯に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例にかかる、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車移動システムを、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例にかかる、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車移動システムを、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、搬送台車移動システムを上方から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例にかかる、他の搬送台車移動システムを上方から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例にかかる、搬送台車のベース台車部を下方から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例にかかる、搬送台車の作業台車部(下方作業台)を上方から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例にかかる、未使用中の上方作業台を移動させる状態を示す説明図。
【図8】実施例にかかる、第1移動状態と第2移動状態とを形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図9】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図10】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図11】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で拡大して示す説明図。
【図12】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図13】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図14】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で拡大して示す説明図。
【図15】実施例にかかる、搬送台車移動システムを自動車生産ライン用の搬送ラインに採用したときの配置関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した本発明の搬送台車移動システムにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記上方作業台の作業床面は、上記ベース部品の下面よりも高い位置にあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、地震が発生した際に、上方作業台によってベース部品が複数のポストから落下することを防止することができる。
【0013】
また、上記複数の一方側ポストの上部には、一方側ステーがそれぞれ設けてあり、上記複数の他方側ポストの上部には、他方側ステーがそれぞれ設けてあり、上記上方作業台は、互いに隣接する上記搬送台車間において、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ステーの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ステーの上部とに対して着脱可能に架け渡してあることが好ましい(請求項3)。
【0014】
この場合には、上方作業台は、ベース部品の上方及び側方に対して作業者が作業する必要がないときは、複数の他方側ポスト及び複数の一方側ポストから取り外しておくことができる。つまり、作業者が下方作業台においてのみ作業を行う作業工程においては、搬送台車から上方作業台を取り外すと共に、搬送台車が移動する床面に固定作業台を設置しないことができる。これにより、上方作業台を使用しないときには、下方作業台の足場を明るくすることができる。
また、この場合には、上方作業台を複数の他方側ポスト及び複数の一方側ポストから取り外した状態において地震が発生した際に、一方側ステー及び他方側ステーがあることによって、ベース部品が複数のポストから一方側又は他方側へ落下してしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部と、上記複数の他方側ポストの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部とを有しており、上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する上記搬送台車間においては、上記一方側の搬送台車における上記他方側延設部と、上記他方側の搬送台車における上記一方側延設部とが当接して、上記下方作業台を互いに連続させていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、一方側延設部と他方側延設部との形成長さを適宜設定することにより、複数台連続して移動させる搬送台車間の間隔を適切に確保することができる。そして、この搬送台車間の間隔に応じて、上方作業台の前後方向の形成幅を設定することができる。
【0016】
また、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストと上記複数の他方側ポストとに対して昇降可能に支持されると共に上記ベース台車部に対する上側において作業者の足場を形成する作業台車部であり、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、かつ、上記複数の一方側ポスト及び上記複数の他方側ポストに対して上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成するよう構成してあり、上記上方作業台は、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第1移動状態を形成する場合には、上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部から取り外しておき、一方、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第2移動状態を形成する場合には、必要に応じて上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部に取り付けておくことが好ましい(請求項5)。
【0017】
この場合の搬送台車は、ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、ベース部品に対する作業者の作業高さ範囲が異なる複数の作業工程へ連続して移動させることができる。
具体的には、搬送台車は、複数のポストを立設してなるベース台車部と、複数のポストに対して昇降可能に支持される作業台車部とを備えている。そして、作業者がベース部品の上方及び側方から作業する工程においては、搬送台車は、第1移動状態を形成し、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させると共に作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0018】
また、搬送台車の第1移動状態を形成する際には、上方作業台は、一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部及び他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部から取り外しておく。これにより、上方作業台が作業台車部を足場として作業する作業者の障害物になることを避けることができる。
【0019】
ここで、床下ピットは、工場の床面から掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドにデッキ(高台)を設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させる状態は、ベース台車部又は床下ピットのいずれかにコロを設けて形成することができる。これと同様に、作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、作業台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0020】
一方、作業者がベース部品の下方から作業する工程においては、搬送台車は、第2移動状態を形成し、作業台車部をベース台車部の上側に載置した状態でベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0021】
また、搬送台車の第2移動状態を形成する際には、上方作業台は、必要に応じて一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部及び他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部に取り付けておく。これにより、ベース部品に対する下方へは、下方作業台としての作業台車部における作業者が作業することができ、ベース部品に対する上方及び側方へは、上方作業台における作業者が作業することができる。
【0022】
ここで、床面直下は、工場の床面から若干掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドに高さが低めのデッキを設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、ベース台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0023】
こうして、搬送台車は、ベース台車部と作業台車部との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポストにベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者の作業高さ範囲が異なる複数の作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車間でのベース部品の移載、搬送台車とリフト搬送装置等との間でのベース部品の移載等を不要にすることができ、各作業工程におけるベース部品の搬送管理を簡単にすることができる。
【0024】
また、搬送台車自体に、作業台車部を設けて作業者の足場を形成していることにより、搬送台車を移動させる如何なる作業工程においても、作業者の足場を適切に確保することができる。
さらに、搬送台車には、作業台車部を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の作業工程において、同じ搬送台車を使用することができ、搬送台車を移動させる搬送ライン全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0025】
また、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させることが好ましい(請求項6)。
この場合には、作業台車部の作業床面と、工場の床面又はデッキとの間に段差が形成されず、作業者がこれらの間を円滑に歩くことができる。そのため、作業者による作業性を向上させることができる。
【0026】
また、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態、及び上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記ベース台車部と、上記床下ピット及び上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあり、上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記作業台車部と上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には、ベース台車部に対して作業台車部を容易に昇降させることができ、複数のコロによって、ベース台車部及び作業台車部を安定して転がり接触させることができる。上記コロは、車輪、ローラ、ボール等の転がり部材によって構成することができる。
【0027】
また、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されることが好ましい(請求項8)。
この場合には、簡単な方法により、搬送ラインにおいて複数の搬送台車を同時に連続して移動させることができる。
【0028】
また、本発明の異なる側面は、上記搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ラインにある(請求項9)。
【0029】
本発明の搬送ラインは、ピットラインと床面ラインとに対し、第1移動状態又は第2移動状態を形成して搬送台車を移動させて、ベース部品に対する種々の組付部品の組付作業を行うようにしたものである。そして、本発明の搬送ラインにおいては、搬送台車は、移載装置によって持ち上げてピットラインと床面ラインとの間を移動させることができる。これにより、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。それ故、搬送台車自体及び搬送台車を移動させる搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【0030】
また、本発明の異なる他の側面は、上記搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法にある(請求項10)。
【0031】
本発明の搬送方法においては、上記搬送ラインの発明と同様に、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。それ故、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の搬送台車移動システムに係る実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の搬送台車移動システム1は、図1に示すごとく、ベース部品8を載置する搬送台車3を、複数台連続して組付作業工程に移動させるよう構成してある。
搬送台車3は、ベース部品8を位置決めを行って載置するための複数のポスト44を立設してなるベース台車部4と、ベース台車部4に配設した下方作業台5とを備えている。複数のポスト44は、ベース台車部4における一方側部分に立設した複数の一方側ポスト44Cと、ベース台車部4における他方側部分に立設した複数の他方側ポスト44Dとからなる。
【0033】
互いに隣接する搬送台車3間においては、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部とに、上方作業台7が架け渡してある。搬送台車3が移動する床面2には、上方作業台7に対する、搬送台車3の移動方向Dの左右両側に、固定作業台15が設置してある。搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、下方作業台5と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、ベース部品8に対して作業者Mが作業できるよう構成してある。
【0034】
以下に、本例の搬送台車移動システム1、搬送ライン100及び搬送方法につき、図1〜図15を参照して詳説する。
図1は、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車3を前後方向Lから見た状態で示し、図2は、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車3を左右方向Wから見た状態で示す。本例において、前後方向Lとは、メインボディ8の前後方向及びこれを載置する搬送台車3の前後方向のことをいう。左右方向Wとは、メインボディ8の左右方向及びこれを載置する搬送台車3の左右方向のことをいう。図1〜図15において、数字の符号の後のA〜Dのアルファベットの符号はカッコ書きで示す。
【0035】
図1、図2に示すごとく、本例のベース部品8は、自動車のメインボディ8であり、本例の搬送台車移動システム1は、自動車生産ラインに用いるものである。搬送台車3が搬送するメインボディ8には、全長が異なる種々の車種のものがある。
図8に示すごとく、本例の下方作業台5は、複数の一方側ポスト44Cと複数の他方側ポスト44Dとに対して昇降可能に支持されると共にベース台車部4に対する上側において作業者Mの足場を形成する作業台車部5として形成されている。
【0036】
本例の搬送台車3は、固定作業台15及び上方作業台7を利用する際には、搬送台車3に載置するメインボディ8の左右方向Wを移動方向D(台車進行方向)に向けて移動する。そのため、搬送台車3の一方側及び他方側の方向は、搬送台車3及びメインボディ8の前後方向Lとなる。
【0037】
複数台連続して移動する搬送台車3は、図9、図10に示すごとく、ベース台車部4が床下ピット21との間で転がり接触すると共に作業台車部5が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第1移動状態301と、図12、図13に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第2移動状態302とのいずれかを形成する。搬送台車3は、複数のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、第1移動状態301と第2移動状態302とを切り替えて形成し、いずれの移動状態301、302を形成する際にも、ベース台車部4及び作業台車部5を床面2内に収容して移動させるよう構成してある。
【0038】
図1、図13に示すごとく、本例の上方作業台7は、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部とに対して着脱可能である。上方作業台7は、図9、図10に示すごとく、複数台連続して移動する搬送台車3において第1移動状態301を形成する場合には、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部から取り外しておき、一方、図1、図2に示すごとく、複数台連続して移動する搬送台車3において第2移動状態302を形成する場合には、必要に応じて一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部に取り付けておく。
つまり、作業者Mが下方作業台5においてのみ作業を行う組付作業工程においては、搬送台車3から上方作業台7を取り外すと共に、搬送台車3が移動する床面に固定作業台15を設置しないことができる。これにより、上方作業台7を使用しないときには、下方作業台5の足場を明るくすることができる。
【0039】
図3、図5、図6に示すごとく、本例のベース台車部4からは、前後左右に2本ずつ並んで上方へ向けて4本のポスト44が立設してある。4本のポスト44のうちの2本の前方ポスト44Aは、ベース台車部4に固定してあり、4本のポスト44のうちの2本の後方ポスト44Bは、ベース台車部4に対して前後方向Lにスライドするよう構成してある。2本の後方ポスト44Bは、それぞれベース台車部4の左右に配置したスライド機構42によって前後方向Lへスライド可能である。本例のスライド機構42は、前後方向Lに配設した2本のリニヤガイドを用いて構成されており、リニヤガイドは、ベース台車部4に取り付けたレールと、レールに対して転がり接触するスライダーとからなる。
【0040】
図11、図14に示すごとく、作業台車部5は、4本のポスト44に対して転がり接触して昇降可能である。各ポスト44には、作業台車部5に配設したローラ53が接触しており、作業台車部5は、ローラ53によって昇降可能である。
作業台車部5には、4本のポスト44をそれぞれ挿通配置する貫通穴52が形成されている。前後方向Lにスライドする2本の後方ポスト44Bを挿通配置する各貫通穴52は、前後方向Lに長く形成されている(図6参照)。
【0041】
図6、図11、図14に示すごとく、2本の前方ポスト44Aの上端部に設けたブラケット441には、メインボディ8の位置決めを行うための位置決めピン45及びメインボディ8の下部を受ける加重受け46がそれぞれ設けてある。すべての車種のメインボディ8の下部には、位置決めピン45を差し込むための位置決め穴が形成されている。また、後側2本のポスト44Bの上端部に設けたブラケット441には、メインボディ8の下部を受ける加重受け46が設けてある。
2本の後方ポスト44Bは、載置するメインボディ8の車種に応じて、スライド機構42によって前後方向Lのスライド位置を変更し、ロック機構43によってスライド位置が固定される。
【0042】
図3に示すごとく、本例のメインボディ8は、その前後方向Lを搬送台車3の前後方向Lに合わせて、搬送台車3の4本のポスト44に載置する。搬送台車3は、その前後方向L及び左右方向Wへ移動可能である。搬送台車3は、図5、図6に示すごとく、4本のポスト44に載置するメインボディ8の前後方向Lに平行な第1進行方向D1と、4本のポスト44に載置するメインボディ8の左右方向Wに平行な第2進行方向D2とに切り替えて移動可能である。
【0043】
本例の搬送台車3の第1移動状態301は、図9、図10に示すごとく、ベース台車部4に設けた複数のコロとしてのローラ41が床下ピット21に設けたレール211上を転がり接触すると共に、床面2又は床面直下22に設けた複数のコロとしてのローラ221が作業台車部5の下面に対して転がり接触する状態に形成される。また、搬送台車3の第2移動状態302は、図12、図13に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4に設けた複数のコロとしてのローラ41が床面直下22に設けたレール222上を転がり接触する状態に形成される。
【0044】
なお、図示は省略するが、ベース台車部4に複数のローラ41を設ける代わりに、ベース台車部4が転がり接触する床下ピット21、床面2又は床面直下22に複数のローラを設けることもできる。また、床面2又は床面直下22に複数のローラ221を設ける代わりに、作業台車部5に複数のローラを設けることもできる。
【0045】
図5は、ベース台車部4の下面を示す図である。同図に示すごとく、ベース台車部4の下面には、ベース台車部4をレール211、222に対して転がり接触させるための複数のローラ41が突出している。ベース台車部4には、その下面の左右位置において前後方向Lに向けて複数のローラ41Aが配列してあり、その下面の前後位置において左右方向Wに向けて複数のローラ41Bが配列してある。
【0046】
本例においては、図12、図13に示すごとく、搬送台車3の第2移動状態302は、搬送台車3及びメインボディ8の左右方向Wを搬送台車3の移動方向Dに向けて形成する。
図1、図2に示すごとく、2本の一方側ポスト44Cの上部には、メインボディ8が搬送台車3の一方側へ落下しないようガイドする一方側ステー73Aがそれぞれ設けてあり、2本の他方側ポスト44Dの上部には、メインボディ8が搬送台車3の他方側へ落下しないようガイドする他方側ステー73Bがそれぞれ設けてある。上方作業台7は、必要に応じて、互いに隣接する搬送台車3間において、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ステー73Bの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ステー73Aの上部とに対して着脱可能に架け渡す。
【0047】
上方作業台7の作業床面は、メインボディ8の下面よりも高い位置にある。これにより、地震が発生した際に、上方作業台7によってメインボディ8が複数のポスト44から落下することを防止することができる。
一方側ステー73A及び他方側ステー73Bは、第2移動状態302を形成した搬送台車3を移動させる全組付作業工程において、2本の一方側ポスト44Cの上部又は2本の他方側ポスト44Dの上部に設けておく。これにより、上方作業台7を2本の他方側ポスト44D及び2本の一方側ポスト44Cから取り外したときでも、地震が発生した際にメインボディ8が一方側又は他方側へ落下してしまうことを防止することができる。
【0048】
図1、図14に示すごとく、2本の一方側ステー73A及び2本の他方側ステー73Bのうちのいずれか2本における上端と、この上端に対向する上方作業台7の下面との対向位置には、上方作業台7の位置決めを行うためのピン及びピン穴731が設けてある。また、すべての落下防止ステー73には、上方作業台7を受ける受け部732が形成してある。
図2に示すごとく、固定作業台15は、上方作業台7を用いてメインボディ8の上方及び側方から組付作業を行う工程の一部に設けることができる。固定作業台15は、作業者Mの足場となる床板151を設けた架台によって形成されている。
本例の固定作業台15は、搬送台車3の移動方向Dをメインボディ8の左右方向Wとしているため、移動方向Dに対する左右両側として、メインボディ8の前側及び後側に隣接して設置される。
【0049】
図2、図3に示すごとく、上方作業台7は、その移動方向Dに対する左右両側の端部に、固定作業台15の上方に位置する階段部72を設け、各階段部72の間に、各階段部72よりも上方に位置する床板部71を設けてなる。そして、床板部71の高さをできるだけ高くして、作業台車部5(下方作業台5)上で作業する作業者Mの上方スペースを確保している。
【0050】
本例の固定作業台15の先端部の上面には、上方作業台7における各階段部72を転がり接触させる複数のコロとしてのローラ16が設けてある。これにより、複数台の搬送台車3が移動する際に、固定作業台15における複数のローラを上方作業台7に対して転がり接触させることにより、上方作業台7の移動を安定させることができる。
なお、ローラ16は、上方作業台7における各階段部72の下側に設けることもできる。
【0051】
また、上方作業台7は、左右両側の固定作業台15に対して架け渡す際には、図4に示すごとく、メインボディ8の前後に位置する部分73と、メインボディ8の左右に位置する部分74とを連結して、メインボディ8の周りを囲むように形成することもできる。
また、上方作業台7は、図7に示すごとく、搬送台車3に架け渡して使用しないときには、床面2から掘り下げた床面直下25に配設したレール26上を移動させることができる。
【0052】
図2、図3に示すごとく、作業台車部5(下方作業台5)の前後方向Lの幅は、ベース台車部4の前後方向Lの幅よりも大きくなっており、複数台の搬送台車3が移動する際には、作業台車部5の前後両側の端部分が固定作業台15の下方を移動する。
搬送台車3の第2移動状態302を形成し、固定作業台15及び上方作業台7を用いる場合には、作業台車部5(下方作業台5)の作業床面50から上方作業台7の床板部71の下面までの高さは、例えば、1650〜1800mmの高さにすることができる。
また、同図に示すごとく、搬送台車3の第2移動状態302を形成し、固定作業台15及び上方作業台7を用いる場合には、上方作業台7によって作業者Mが落下するおそれのある開口スペースを塞ぐようにしている。
【0053】
また、図1、図13に示すごとく、作業台車部5(下方作業台5)は、複数の一方側ポスト44Cの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部55Aと、複数の他方側ポスト44Dの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部55Bとを有している。
搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する搬送台車3間においては、一方側の搬送台車3Aにおける他方側延設部55Bと、他方側の搬送台車3Bにおける一方側延設部55Aとが当接して、下方作業台5を互いに連続させるよう構成されている。
一方側延設部55Aと他方側延設部55Bとの形成長さを適宜設定することにより、複数台連続して移動させる搬送台車3間の間隔を適切に確保することができる。そして、この搬送台車3間の間隔に応じて、上方作業台7の前後方向Lの形成幅を設定することができる。
【0054】
本例の搬送台車3は、メインボディ8に対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ラインに適用して、搬送ライン100を構成している。
図15に示すごとく、この自動車生産ラインは、メインボディ8に対して種々の内装部品の組付を行うトリム工程101と、メインボディ8に対して種々の足回り部品、エンジン、燃料タンク、タイヤ等の主要部品の組付を行うシャシー工程102と、メインボディ8に対して種々の電装部品の組付、オイル・ガスの注入等を行うファイナル工程103とを有している。搬送台車3は、メインボディ8を保持してすべての工程に一巡して移動し、組付が終わったメインボディ8である完成車を送り出した後、再び始めのトリム工程101に循環して移動するよう構成されている。
【0055】
トリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103の各工程において、搬送台車3は、各工程におけるラインの上流側に配設したドライブローラ23によって駆動されて、複数台が連なってレール211、222上を移動するよう構成してある。ドライブローラ23は、各工程のラインの最も上流側に位置する搬送台車3におけるベース台車部4の左右に回転接触して、ベース台車部4を挟み込んで送り出すよう構成されている。
【0056】
搬送ライン100には、図9、図10に示すごとく、第1移動状態301を形成して搬送台車3を移動させるピットライン11と、図12、図13に示すごとく、第2移動状態302を形成して搬送台車3を移動させる床面ライン12とがある。
図15に示すごとく、トリム工程101及びファイナル工程103は、ピットライン11によって形成してあり、シャシー工程102は、床面ライン12によって形成してある。搬送台車3は、トリム工程101及びファイナル工程103においては、ピットライン11を第1進行方向D1に移動し、シャシー工程102においては、床面ライン12を第2進行方向D2に移動する。
【0057】
なお、図9〜図11においては、搬送台車3がピットライン11を第1進行方向D1に移動する場合を示し、図12〜図14、図1、図2においては、搬送台車3が床面ライン12を第2進行方向D2に移動する場合を示す。なお、シャシー工程102においては、搬送台車3は、床面ライン12を第1進行方向D1に移動することもできる。
搬送台車3は、ピットライン11、床面ライン12のいずれにおいても、第1進行方向D1、第2進行方向D2のいずれの方向に移動することもできる。
【0058】
また、搬送台車3は、いずれの工程101、102、103においても、ドライブローラ23によって駆動され、各進行方向D1、D2に連なって移動する。そして、本例の搬送ライン100は、4本のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車3をピットライン11、床面ライン12及びこれらの間を連続して移動させるよう構成してある。
また、図9〜図14に示すごとく、搬送台車3は、第1移動状態301と第2移動状態302とのいずれの移動状態301、302を形成する際にも、作業台車部5の作業床面50を工場の床面2又は床面2に設けたデッキ24(図2、図12参照)と略同一面にして移動する。
【0059】
図15に示すごとく、搬送台車3は、各工程101、102、103間を移動する際には、移載装置61、62、64によって持ち上げられて運搬される。移載装置61、62、64は、搬送台車3のベース台車部4と作業台車部5とをそれぞれ持ち上げ、ベース台車部4と作業台車部5との相対高さ関係が異なる第1移動状態301又は第2移動状態302を形成して、搬送台車3をピットライン11又は床面ライン12に載置するよう構成されている。
本例の搬送ライン100は、トリム工程101、シャシー工程102、ファイナル工程103の各工程において搬送台車3を往復移動させるよう構成されている。
【0060】
トリム工程101に搬入する搬送台車3には、種々の組付部品を組み付ける前のメインボディ8を位置決めを行って載置する。搬送台車3は、移載装置の1つである搬入側昇降装置61によって持ち上げられ、トリム工程101を形成する一方のピットライン11Aに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Aを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Bへ送り出すよう構成されている。
【0061】
次いで、搬送台車3は、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、トラバース装置63によって第2進行方向D2へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cに載置される。次いで、搬送台車3は、メインボディ8を保持した状態を維持して、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cの一方側へ第2進行方向D2に移動する。次いで、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cを一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ運搬された後、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動する。このトラバース装置63は、一方の床面ライン12Cを第2進行方向D2に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第1進行方向D1に移動させた後、他方の床面ライン12Dへ送り出すよう構成されている。
【0062】
次いで、搬送台車3は、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動したときには、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Eを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Fへ送り出すよう構成されている。
【0063】
次いで、搬送台車3が、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、種々の組付部品の組付が完了したメインボディ8を搬送台車3から取り出す。また、搬送台車3は、移載装置の1つである搬出側昇降装置62によって持ち上げられ、循環ライン65に載置される。そして、循環ライン65においてメインボディ8を保持しない空の搬送台車3を第2進行方向D2へ移動させ、再び種々の組付部品の組付前のメインボディ8を搬送台車3に保持させて、トリム工程101へ搬入させる。
その後、複数の搬送台車3は、何度もトリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103を循環させることができる。
【0064】
図1〜図3に示すごとく、本例の搬送台車3の第2移動状態302は、シャシー工程102において形成し、シャシー工程102の一部において固定作業台15及び上方作業台7を配設して、メインボディ8の上方及び側方から作業者Mによる組付作業を可能にしている。上方作業台7は、搬送台車3が固定作業台15の設置位置に近づいたときに移載装置等によって互いに隣接する搬送台車3間に取り付け、搬送台車3が固定作業台15の設置位置を通過した後に移載装置等によって互いに隣接する搬送台車3間から取り外す。
【0065】
シャシー工程102は、本来は、メインボディ8の下方から作業者Mが組付作業をするために形成した工程である。これに対し、固定作業台15及び上方作業台7を用いることにより、本来はトリム工程101又はファイナル工程103においてメインボディ8の上方及び側方から組付作業を行う組付部品等について、シャシー工程において行うことができる。図15において、シャシー工程102において固定作業台15を配設するレイアウトの一例を2点鎖線で示す。これにより、トリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103の全体の工程の長さを適切に調整することができ、工場内のレイアウトの自由度を増やすことができる。
シャシー工程102において、搬送台車3間から取り外した上方作業台7は、図7に示すごとく、床面直下25に配設したレール26上を移動させて、上方作業台7を搬送台車3間に取り付ける位置まで循環させることができる。
【0066】
本例の搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、メインボディ8に対する作業者Mの作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程へ連続して移動させることができるものである。
作業者Mがメインボディ8の上方、側方から作業するトリム工程101及びファイナル工程103においては、搬送台車3は、図9、図10に示したように、第1移動状態301を形成し、ベース台車部4における複数のローラ41を、工場の床面2から掘り下げた床下ピット21のレール211上を転がり接触させると共に、作業台車部5の下面を床面直下22に設けた複数のローラ221上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
【0067】
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50を床面2と略同一面にして、複数のポスト44のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者Mの足場に障害物がほとんど存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者Mの足場を適切に確保することができる。そして、作業者Mは、作業台車部5を足場としてメインボディ8の上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0068】
また、搬送台車3の第1移動状態301を形成する際には、上方作業台7は、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部から取り外しておく。これにより、上方作業台7が作業台車部5を足場として作業する作業者Mの障害物になることを避けることができる。
【0069】
一方、作業者Mがメインボディ8の下方から作業するシャシー工程102においては、搬送台車3は、図12、図13に示したように、第2移動状態302を形成し、作業台車部5をベース台車部4の上側に載置した状態で、ベース台車部4における複数のローラ41を、床面直下22に設けたレール222上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2に設けたデッキ24内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50をデッキ24と略同一面にして、複数のポスト44以外のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者Mの足場にほとんど障害物が存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者Mの足場を適切に確保することができる。そして、作業者Mは、作業台車部5を足場としてメインボディ8の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0070】
また、搬送台車3の第2移動状態302を形成する際には、図1〜図3に示したように、上方作業台7は、必要に応じて一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部に取り付けておく。これにより、メインボディ8に対する下方へは、下方作業台5としての作業台車部5における作業者Mが作業することができ、メインボディ8に対する上方及び側方へは、上方作業台7における作業者Mが作業することができる。そして、作業者Mは、固定作業台15から、メインボディ8に対して前後に位置する上方作業台7へ移動することができ、固定作業台15と上方作業台7との間を自由に移動することができる。
【0071】
このように、本例の搬送台車移動システム1においては、シャシー工程102の一部において、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、作業台車部5(下方作業台5)と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、作業者Mは、メインボディ8に対して組付部品の組付等の作業を行うことができる。なお、下方作業台5において作業する作業者Mと、上方作業台7及び固定作業台15において作業する作業者Mとは、別々の者とすることができる。
それ故、本例の搬送台車移動システム1によれば、シャシー工程102の一部において、メインボディ8に対する下方と、メインボディ8に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者Mによって同時間帯に行うことができる。
【0072】
また、本例の搬送台車3は、ベース台車部4と作業台車部5との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者Mの組付作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車3の間でのメインボディ8の移載、搬送台車3とリフト搬送装置等との間でのメインボディ8の移載等を不要にすることができ、各組付作業工程におけるメインボディ8の搬送管理を簡単にすることができる。
【0073】
また、搬送台車3自体に、作業台車部5を設けて作業者Mの足場を形成していることにより、搬送台車3を移動させる如何なる組付作業工程においても、作業者Mの足場を適切に確保することができる。また、本例の搬送台車3においては、スライド機構42を、2本の後方ポスト44Bの上端部に設けておらず、2本の後方ポスト44Bの下端部に設けている。これにより、作業台車部5よりも上側にスライド機構42が存在せず、作業者Mの足元に障害物が存在しないようにして、その作業性を向上させることができる。
さらに、搬送台車3には、作業台車部5を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車3の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の組付作業工程において、同じ搬送台車3を使用することができ、搬送台車3を移動させる搬送ライン100の全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0074】
それ故、本例の搬送台車移動システム1によれば、複数のポスト44に対してメインボディ8を位置決めを行って載置したまま、搬送台車3を複数の組付作業工程の間を連続して移動させることができ、搬送台車3自体及び搬送台車3を使用する搬送ライン100の構造を極めて簡単にすることができる。
【0075】
なお、床下ピット21にレール211を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサをベース台車部4に設けると共に、床下ピット21に、ベース台車部4に設けたセンサによって検知されるセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
また、これと同様に、床面2又は床面直下22にレール222を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサをベース台車部4に設けると共に、床面2又は床面直下22にセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
また、センサは、作業台車部5に設け、これに対向する部分にセンサ検知ラインを設けることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1 搬送台車移動システム
100 搬送ライン
101 トリム工程
102 シャシー工程
103 ファイナル工程
11 ピットライン
12 床面ライン
15 固定作業台
2 床面
21 床面掘下ピット
22 床面直下
23 ドライブローラ
3 搬送台車
3A 一方側の搬送台車
3B 他方側の搬送台車
301 第1移動状態
302 第2移動状態
4 ベース台車部
41 ローラ
42 スライド機構
44 ポスト
5 作業台車部(下方作業台)
55A 一方側延設部
55B 他方側延設部
7 上方作業台
73A 一方側ステー
73B 他方側ステー
8 ベース部品(メインボディ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、工場の組付ラインのワーク搬送を行う搬送台車移動システム、搬送ライン及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の組付ラインにおいては、ベース部品となるメインボディを搬送台車上に載置し、搬送台車を移動させながらメインボディに対して種々の組付部品の組付を行っている。例えば、特許文献1の自動車などの組立て用搬送装置においては、搬送台車の走行経路内の部品組付け作業を行う特定区間の下側に、この特定区間の始端位置から終端位置まで搬送台車と同期して走行可能な同期走行台車を設け、この同期走行台車上に移載装置を搭載し、移載装置によってエンジン等の組付け部品を、搬送台車上の車体に対して組付け容易な高さまで持ち上げることが開示されている。
【0003】
また、例えば、特許文献2の車体位置補正搬送システムにおいては、搬送台車に載置した車体を複数の工程へ搬送する際に、搬送台車にリフト機構を搭載しておき、リフト機構によって搬送台車上の車体の高さを変更できるようにすることが開示されている。
さらに、例えば、特許文献3の昇降機能付き搬送台車においては、左右のガイドポストを用いて受部材により車体を支持して搬送することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248657号公報
【特許文献2】特開平9−309473号公報
【特許文献3】特開2009−1182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、自動車のメインボディ(車体)等においては、種々の組付部品を組み付ける組付高さが異なるため、各組付工程において、工場の床面に対するメインボディの搬送高さを変更する必要が生じる。例えば、内装部品を組み付けるトリム工程においては、メインボディを床面付近で搬送する一方、足回りの部品、燃料タンク等を組み付けるシャシー工程においては、メインボディを高い位置に持ち上げて搬送する必要がある。
そして、従来の自動車の組付ラインにおいては、メインボディに対する下方と、メインボディに対する上方及び側方との上下2段における組付作業を、異なる作業者が同時に行うことができる工夫はなされていない。
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、ベース部品に対する下方と、ベース部品に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者によって同時間帯に行うことができる搬送台車移動システムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ベース部品を載置する搬送台車を、複数台連続して作業工程に移動させるよう構成した搬送台車移動システムにおいて、
上記搬送台車は、上記ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、該ベース台車部に配設した下方作業台とを備えており、
上記複数のポストは、上記ベース台車部における一方側部分に立設した複数の一方側ポストと、上記ベース台車部における他方側部分に立設した複数の他方側ポストとからなり、
互いに隣接する上記搬送台車間においては、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部とに、上方作業台が架け渡してあり、
上記搬送台車が移動する床面には、上記上方作業台に対する、上記搬送台車の移動方向の左右両側に、固定作業台が設置してあり、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、上記下方作業台と、上記上方作業台及び上記固定作業台との上下2段の作業台において、上記ベース部品に対して作業者が作業できるよう構成したことを特徴とする搬送台車移動システムにある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明の搬送台車移動システムにおいては、ベース台車部に下方作業台を配設しており、ベース台車部に立設した複数の一方側ポスト及び複数の他方側ポストに対しては、ベース部品を位置決めを行って載置する。そして、下方作業台においては、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物が存在せず、作業者は、下方作業台を足場としてベース部品に対する下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0009】
また、本発明の搬送台車移動システムにおいては、搬送台車を複数台連続して移動させる際に、互いに隣接する搬送台車間において、一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部と、他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部とに上方作業台を架け渡す。そして、作業者は、上方作業台を足場としてベース部品に対する上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
また、上方作業台に対する左右両側には、固定作業台が設置してあり、作業者は、固定作業台から、ベース部品に対して前後に位置する上方作業台へ移動することができ、固定作業台と上方作業台との間を自由に移動することができる。
【0010】
このように、本発明においては、搬送台車が複数台連続して移動する際に、下方作業台と、上方作業台及び固定作業台との上下2段の作業台において、作業者は、ベース部品に対して組付部品の組付等の作業を行うことができる。なお、下方作業台において作業する作業者と、上方作業台及び固定作業台において作業する作業者とは、別々の者とすることができる。
それ故、本発明の搬送台車移動システムによれば、ベース部品に対する下方と、ベース部品に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者によって同時間帯に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例にかかる、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車移動システムを、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図2】実施例にかかる、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車移動システムを、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図3】実施例にかかる、搬送台車移動システムを上方から見た状態で示す説明図。
【図4】実施例にかかる、他の搬送台車移動システムを上方から見た状態で示す説明図。
【図5】実施例にかかる、搬送台車のベース台車部を下方から見た状態で示す説明図。
【図6】実施例にかかる、搬送台車の作業台車部(下方作業台)を上方から見た状態で示す説明図。
【図7】実施例にかかる、未使用中の上方作業台を移動させる状態を示す説明図。
【図8】実施例にかかる、第1移動状態と第2移動状態とを形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図9】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図10】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図11】実施例にかかる、第1移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で拡大して示す説明図。
【図12】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車を、左右方向から見た状態で示す説明図。
【図13】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車を、前後方向から見た状態で示す説明図。
【図14】実施例にかかる、第2移動状態を形成した搬送台車の一部を、前後方向から見た状態で拡大して示す説明図。
【図15】実施例にかかる、搬送台車移動システムを自動車生産ライン用の搬送ラインに採用したときの配置関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述した本発明の搬送台車移動システムにおける好ましい実施の形態につき説明する。
本発明において、上記上方作業台の作業床面は、上記ベース部品の下面よりも高い位置にあることが好ましい(請求項2)。
この場合には、地震が発生した際に、上方作業台によってベース部品が複数のポストから落下することを防止することができる。
【0013】
また、上記複数の一方側ポストの上部には、一方側ステーがそれぞれ設けてあり、上記複数の他方側ポストの上部には、他方側ステーがそれぞれ設けてあり、上記上方作業台は、互いに隣接する上記搬送台車間において、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ステーの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ステーの上部とに対して着脱可能に架け渡してあることが好ましい(請求項3)。
【0014】
この場合には、上方作業台は、ベース部品の上方及び側方に対して作業者が作業する必要がないときは、複数の他方側ポスト及び複数の一方側ポストから取り外しておくことができる。つまり、作業者が下方作業台においてのみ作業を行う作業工程においては、搬送台車から上方作業台を取り外すと共に、搬送台車が移動する床面に固定作業台を設置しないことができる。これにより、上方作業台を使用しないときには、下方作業台の足場を明るくすることができる。
また、この場合には、上方作業台を複数の他方側ポスト及び複数の一方側ポストから取り外した状態において地震が発生した際に、一方側ステー及び他方側ステーがあることによって、ベース部品が複数のポストから一方側又は他方側へ落下してしまうことを防止することができる。
【0015】
また、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部と、上記複数の他方側ポストの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部とを有しており、上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する上記搬送台車間においては、上記一方側の搬送台車における上記他方側延設部と、上記他方側の搬送台車における上記一方側延設部とが当接して、上記下方作業台を互いに連続させていることが好ましい(請求項4)。
この場合には、一方側延設部と他方側延設部との形成長さを適宜設定することにより、複数台連続して移動させる搬送台車間の間隔を適切に確保することができる。そして、この搬送台車間の間隔に応じて、上方作業台の前後方向の形成幅を設定することができる。
【0016】
また、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストと上記複数の他方側ポストとに対して昇降可能に支持されると共に上記ベース台車部に対する上側において作業者の足場を形成する作業台車部であり、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、かつ、上記複数の一方側ポスト及び上記複数の他方側ポストに対して上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成するよう構成してあり、上記上方作業台は、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第1移動状態を形成する場合には、上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部から取り外しておき、一方、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第2移動状態を形成する場合には、必要に応じて上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部に取り付けておくことが好ましい(請求項5)。
【0017】
この場合の搬送台車は、ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、ベース部品に対する作業者の作業高さ範囲が異なる複数の作業工程へ連続して移動させることができる。
具体的には、搬送台車は、複数のポストを立設してなるベース台車部と、複数のポストに対して昇降可能に支持される作業台車部とを備えている。そして、作業者がベース部品の上方及び側方から作業する工程においては、搬送台車は、第1移動状態を形成し、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させると共に作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0018】
また、搬送台車の第1移動状態を形成する際には、上方作業台は、一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部及び他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部から取り外しておく。これにより、上方作業台が作業台車部を足場として作業する作業者の障害物になることを避けることができる。
【0019】
ここで、床下ピットは、工場の床面から掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドにデッキ(高台)を設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床下ピットとの間で転がり接触させる状態は、ベース台車部又は床下ピットのいずれかにコロを設けて形成することができる。これと同様に、作業台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、作業台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0020】
一方、作業者がベース部品の下方から作業する工程においては、搬送台車は、第2移動状態を形成し、作業台車部をベース台車部の上側に載置した状態でベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させて、両台車部を一体的に移動させる。これにより、複数のポスト以外に作業者の足場に障害物を存在させることなく、かつ工場の床面との間に大きな段差を形成することなく、作業台車部によって作業者の足場を適切に確保することができる。そして、作業者は、作業台車部を足場としてベース部品の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0021】
また、搬送台車の第2移動状態を形成する際には、上方作業台は、必要に応じて一方側の搬送台車における複数の他方側ポストの上部及び他方側の搬送台車における複数の一方側ポストの上部に取り付けておく。これにより、ベース部品に対する下方へは、下方作業台としての作業台車部における作業者が作業することができ、ベース部品に対する上方及び側方へは、上方作業台における作業者が作業することができる。
【0022】
ここで、床面直下は、工場の床面から若干掘り下げて形成することができ、工場の床面において搬送台車が移動する箇所の両サイドに高さが低めのデッキを設けて、この両サイドのデッキよりも低くして形成することもできる。
また、ベース台車部を床面又は床面直下との間で転がり接触させる状態は、ベース台車部と、床面又は床面直下とのいずれかにコロを設けて形成することができる。
【0023】
こうして、搬送台車は、ベース台車部と作業台車部との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポストにベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者の作業高さ範囲が異なる複数の作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車間でのベース部品の移載、搬送台車とリフト搬送装置等との間でのベース部品の移載等を不要にすることができ、各作業工程におけるベース部品の搬送管理を簡単にすることができる。
【0024】
また、搬送台車自体に、作業台車部を設けて作業者の足場を形成していることにより、搬送台車を移動させる如何なる作業工程においても、作業者の足場を適切に確保することができる。
さらに、搬送台車には、作業台車部を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の作業工程において、同じ搬送台車を使用することができ、搬送台車を移動させる搬送ライン全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0025】
また、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させることが好ましい(請求項6)。
この場合には、作業台車部の作業床面と、工場の床面又はデッキとの間に段差が形成されず、作業者がこれらの間を円滑に歩くことができる。そのため、作業者による作業性を向上させることができる。
【0026】
また、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態、及び上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記ベース台車部と、上記床下ピット及び上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあり、上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記作業台車部と上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあることが好ましい(請求項7)。
この場合には、ベース台車部に対して作業台車部を容易に昇降させることができ、複数のコロによって、ベース台車部及び作業台車部を安定して転がり接触させることができる。上記コロは、車輪、ローラ、ボール等の転がり部材によって構成することができる。
【0027】
また、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されることが好ましい(請求項8)。
この場合には、簡単な方法により、搬送ラインにおいて複数の搬送台車を同時に連続して移動させることができる。
【0028】
また、本発明の異なる側面は、上記搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ラインにある(請求項9)。
【0029】
本発明の搬送ラインは、ピットラインと床面ラインとに対し、第1移動状態又は第2移動状態を形成して搬送台車を移動させて、ベース部品に対する種々の組付部品の組付作業を行うようにしたものである。そして、本発明の搬送ラインにおいては、搬送台車は、移載装置によって持ち上げてピットラインと床面ラインとの間を移動させることができる。これにより、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。それ故、搬送台車自体及び搬送台車を移動させる搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【0030】
また、本発明の異なる他の側面は、上記搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法にある(請求項10)。
【0031】
本発明の搬送方法においては、上記搬送ラインの発明と同様に、複数のポストにメインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車をピットライン、床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることができる。それ故、搬送台車自体及び搬送台車を使用する搬送ラインの構造を極めて簡単にすることができる。
【実施例】
【0032】
以下に、本発明の搬送台車移動システムに係る実施例につき、図面を参照して説明する。
本例の搬送台車移動システム1は、図1に示すごとく、ベース部品8を載置する搬送台車3を、複数台連続して組付作業工程に移動させるよう構成してある。
搬送台車3は、ベース部品8を位置決めを行って載置するための複数のポスト44を立設してなるベース台車部4と、ベース台車部4に配設した下方作業台5とを備えている。複数のポスト44は、ベース台車部4における一方側部分に立設した複数の一方側ポスト44Cと、ベース台車部4における他方側部分に立設した複数の他方側ポスト44Dとからなる。
【0033】
互いに隣接する搬送台車3間においては、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部とに、上方作業台7が架け渡してある。搬送台車3が移動する床面2には、上方作業台7に対する、搬送台車3の移動方向Dの左右両側に、固定作業台15が設置してある。搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、下方作業台5と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、ベース部品8に対して作業者Mが作業できるよう構成してある。
【0034】
以下に、本例の搬送台車移動システム1、搬送ライン100及び搬送方法につき、図1〜図15を参照して詳説する。
図1は、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車3を前後方向Lから見た状態で示し、図2は、上下2段の作業台を形成する際の搬送台車3を左右方向Wから見た状態で示す。本例において、前後方向Lとは、メインボディ8の前後方向及びこれを載置する搬送台車3の前後方向のことをいう。左右方向Wとは、メインボディ8の左右方向及びこれを載置する搬送台車3の左右方向のことをいう。図1〜図15において、数字の符号の後のA〜Dのアルファベットの符号はカッコ書きで示す。
【0035】
図1、図2に示すごとく、本例のベース部品8は、自動車のメインボディ8であり、本例の搬送台車移動システム1は、自動車生産ラインに用いるものである。搬送台車3が搬送するメインボディ8には、全長が異なる種々の車種のものがある。
図8に示すごとく、本例の下方作業台5は、複数の一方側ポスト44Cと複数の他方側ポスト44Dとに対して昇降可能に支持されると共にベース台車部4に対する上側において作業者Mの足場を形成する作業台車部5として形成されている。
【0036】
本例の搬送台車3は、固定作業台15及び上方作業台7を利用する際には、搬送台車3に載置するメインボディ8の左右方向Wを移動方向D(台車進行方向)に向けて移動する。そのため、搬送台車3の一方側及び他方側の方向は、搬送台車3及びメインボディ8の前後方向Lとなる。
【0037】
複数台連続して移動する搬送台車3は、図9、図10に示すごとく、ベース台車部4が床下ピット21との間で転がり接触すると共に作業台車部5が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第1移動状態301と、図12、図13に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4が床面2又は床面直下22との間で転がり接触して両台車部4、5を一体的に移動させる第2移動状態302とのいずれかを形成する。搬送台車3は、複数のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、第1移動状態301と第2移動状態302とを切り替えて形成し、いずれの移動状態301、302を形成する際にも、ベース台車部4及び作業台車部5を床面2内に収容して移動させるよう構成してある。
【0038】
図1、図13に示すごとく、本例の上方作業台7は、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部とに対して着脱可能である。上方作業台7は、図9、図10に示すごとく、複数台連続して移動する搬送台車3において第1移動状態301を形成する場合には、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部から取り外しておき、一方、図1、図2に示すごとく、複数台連続して移動する搬送台車3において第2移動状態302を形成する場合には、必要に応じて一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部に取り付けておく。
つまり、作業者Mが下方作業台5においてのみ作業を行う組付作業工程においては、搬送台車3から上方作業台7を取り外すと共に、搬送台車3が移動する床面に固定作業台15を設置しないことができる。これにより、上方作業台7を使用しないときには、下方作業台5の足場を明るくすることができる。
【0039】
図3、図5、図6に示すごとく、本例のベース台車部4からは、前後左右に2本ずつ並んで上方へ向けて4本のポスト44が立設してある。4本のポスト44のうちの2本の前方ポスト44Aは、ベース台車部4に固定してあり、4本のポスト44のうちの2本の後方ポスト44Bは、ベース台車部4に対して前後方向Lにスライドするよう構成してある。2本の後方ポスト44Bは、それぞれベース台車部4の左右に配置したスライド機構42によって前後方向Lへスライド可能である。本例のスライド機構42は、前後方向Lに配設した2本のリニヤガイドを用いて構成されており、リニヤガイドは、ベース台車部4に取り付けたレールと、レールに対して転がり接触するスライダーとからなる。
【0040】
図11、図14に示すごとく、作業台車部5は、4本のポスト44に対して転がり接触して昇降可能である。各ポスト44には、作業台車部5に配設したローラ53が接触しており、作業台車部5は、ローラ53によって昇降可能である。
作業台車部5には、4本のポスト44をそれぞれ挿通配置する貫通穴52が形成されている。前後方向Lにスライドする2本の後方ポスト44Bを挿通配置する各貫通穴52は、前後方向Lに長く形成されている(図6参照)。
【0041】
図6、図11、図14に示すごとく、2本の前方ポスト44Aの上端部に設けたブラケット441には、メインボディ8の位置決めを行うための位置決めピン45及びメインボディ8の下部を受ける加重受け46がそれぞれ設けてある。すべての車種のメインボディ8の下部には、位置決めピン45を差し込むための位置決め穴が形成されている。また、後側2本のポスト44Bの上端部に設けたブラケット441には、メインボディ8の下部を受ける加重受け46が設けてある。
2本の後方ポスト44Bは、載置するメインボディ8の車種に応じて、スライド機構42によって前後方向Lのスライド位置を変更し、ロック機構43によってスライド位置が固定される。
【0042】
図3に示すごとく、本例のメインボディ8は、その前後方向Lを搬送台車3の前後方向Lに合わせて、搬送台車3の4本のポスト44に載置する。搬送台車3は、その前後方向L及び左右方向Wへ移動可能である。搬送台車3は、図5、図6に示すごとく、4本のポスト44に載置するメインボディ8の前後方向Lに平行な第1進行方向D1と、4本のポスト44に載置するメインボディ8の左右方向Wに平行な第2進行方向D2とに切り替えて移動可能である。
【0043】
本例の搬送台車3の第1移動状態301は、図9、図10に示すごとく、ベース台車部4に設けた複数のコロとしてのローラ41が床下ピット21に設けたレール211上を転がり接触すると共に、床面2又は床面直下22に設けた複数のコロとしてのローラ221が作業台車部5の下面に対して転がり接触する状態に形成される。また、搬送台車3の第2移動状態302は、図12、図13に示すごとく、作業台車部5を上側に載置した状態でベース台車部4に設けた複数のコロとしてのローラ41が床面直下22に設けたレール222上を転がり接触する状態に形成される。
【0044】
なお、図示は省略するが、ベース台車部4に複数のローラ41を設ける代わりに、ベース台車部4が転がり接触する床下ピット21、床面2又は床面直下22に複数のローラを設けることもできる。また、床面2又は床面直下22に複数のローラ221を設ける代わりに、作業台車部5に複数のローラを設けることもできる。
【0045】
図5は、ベース台車部4の下面を示す図である。同図に示すごとく、ベース台車部4の下面には、ベース台車部4をレール211、222に対して転がり接触させるための複数のローラ41が突出している。ベース台車部4には、その下面の左右位置において前後方向Lに向けて複数のローラ41Aが配列してあり、その下面の前後位置において左右方向Wに向けて複数のローラ41Bが配列してある。
【0046】
本例においては、図12、図13に示すごとく、搬送台車3の第2移動状態302は、搬送台車3及びメインボディ8の左右方向Wを搬送台車3の移動方向Dに向けて形成する。
図1、図2に示すごとく、2本の一方側ポスト44Cの上部には、メインボディ8が搬送台車3の一方側へ落下しないようガイドする一方側ステー73Aがそれぞれ設けてあり、2本の他方側ポスト44Dの上部には、メインボディ8が搬送台車3の他方側へ落下しないようガイドする他方側ステー73Bがそれぞれ設けてある。上方作業台7は、必要に応じて、互いに隣接する搬送台車3間において、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ステー73Bの上部と、他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ステー73Aの上部とに対して着脱可能に架け渡す。
【0047】
上方作業台7の作業床面は、メインボディ8の下面よりも高い位置にある。これにより、地震が発生した際に、上方作業台7によってメインボディ8が複数のポスト44から落下することを防止することができる。
一方側ステー73A及び他方側ステー73Bは、第2移動状態302を形成した搬送台車3を移動させる全組付作業工程において、2本の一方側ポスト44Cの上部又は2本の他方側ポスト44Dの上部に設けておく。これにより、上方作業台7を2本の他方側ポスト44D及び2本の一方側ポスト44Cから取り外したときでも、地震が発生した際にメインボディ8が一方側又は他方側へ落下してしまうことを防止することができる。
【0048】
図1、図14に示すごとく、2本の一方側ステー73A及び2本の他方側ステー73Bのうちのいずれか2本における上端と、この上端に対向する上方作業台7の下面との対向位置には、上方作業台7の位置決めを行うためのピン及びピン穴731が設けてある。また、すべての落下防止ステー73には、上方作業台7を受ける受け部732が形成してある。
図2に示すごとく、固定作業台15は、上方作業台7を用いてメインボディ8の上方及び側方から組付作業を行う工程の一部に設けることができる。固定作業台15は、作業者Mの足場となる床板151を設けた架台によって形成されている。
本例の固定作業台15は、搬送台車3の移動方向Dをメインボディ8の左右方向Wとしているため、移動方向Dに対する左右両側として、メインボディ8の前側及び後側に隣接して設置される。
【0049】
図2、図3に示すごとく、上方作業台7は、その移動方向Dに対する左右両側の端部に、固定作業台15の上方に位置する階段部72を設け、各階段部72の間に、各階段部72よりも上方に位置する床板部71を設けてなる。そして、床板部71の高さをできるだけ高くして、作業台車部5(下方作業台5)上で作業する作業者Mの上方スペースを確保している。
【0050】
本例の固定作業台15の先端部の上面には、上方作業台7における各階段部72を転がり接触させる複数のコロとしてのローラ16が設けてある。これにより、複数台の搬送台車3が移動する際に、固定作業台15における複数のローラを上方作業台7に対して転がり接触させることにより、上方作業台7の移動を安定させることができる。
なお、ローラ16は、上方作業台7における各階段部72の下側に設けることもできる。
【0051】
また、上方作業台7は、左右両側の固定作業台15に対して架け渡す際には、図4に示すごとく、メインボディ8の前後に位置する部分73と、メインボディ8の左右に位置する部分74とを連結して、メインボディ8の周りを囲むように形成することもできる。
また、上方作業台7は、図7に示すごとく、搬送台車3に架け渡して使用しないときには、床面2から掘り下げた床面直下25に配設したレール26上を移動させることができる。
【0052】
図2、図3に示すごとく、作業台車部5(下方作業台5)の前後方向Lの幅は、ベース台車部4の前後方向Lの幅よりも大きくなっており、複数台の搬送台車3が移動する際には、作業台車部5の前後両側の端部分が固定作業台15の下方を移動する。
搬送台車3の第2移動状態302を形成し、固定作業台15及び上方作業台7を用いる場合には、作業台車部5(下方作業台5)の作業床面50から上方作業台7の床板部71の下面までの高さは、例えば、1650〜1800mmの高さにすることができる。
また、同図に示すごとく、搬送台車3の第2移動状態302を形成し、固定作業台15及び上方作業台7を用いる場合には、上方作業台7によって作業者Mが落下するおそれのある開口スペースを塞ぐようにしている。
【0053】
また、図1、図13に示すごとく、作業台車部5(下方作業台5)は、複数の一方側ポスト44Cの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部55Aと、複数の他方側ポスト44Dの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部55Bとを有している。
搬送台車移動システム1は、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する搬送台車3間においては、一方側の搬送台車3Aにおける他方側延設部55Bと、他方側の搬送台車3Bにおける一方側延設部55Aとが当接して、下方作業台5を互いに連続させるよう構成されている。
一方側延設部55Aと他方側延設部55Bとの形成長さを適宜設定することにより、複数台連続して移動させる搬送台車3間の間隔を適切に確保することができる。そして、この搬送台車3間の間隔に応じて、上方作業台7の前後方向Lの形成幅を設定することができる。
【0054】
本例の搬送台車3は、メインボディ8に対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ラインに適用して、搬送ライン100を構成している。
図15に示すごとく、この自動車生産ラインは、メインボディ8に対して種々の内装部品の組付を行うトリム工程101と、メインボディ8に対して種々の足回り部品、エンジン、燃料タンク、タイヤ等の主要部品の組付を行うシャシー工程102と、メインボディ8に対して種々の電装部品の組付、オイル・ガスの注入等を行うファイナル工程103とを有している。搬送台車3は、メインボディ8を保持してすべての工程に一巡して移動し、組付が終わったメインボディ8である完成車を送り出した後、再び始めのトリム工程101に循環して移動するよう構成されている。
【0055】
トリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103の各工程において、搬送台車3は、各工程におけるラインの上流側に配設したドライブローラ23によって駆動されて、複数台が連なってレール211、222上を移動するよう構成してある。ドライブローラ23は、各工程のラインの最も上流側に位置する搬送台車3におけるベース台車部4の左右に回転接触して、ベース台車部4を挟み込んで送り出すよう構成されている。
【0056】
搬送ライン100には、図9、図10に示すごとく、第1移動状態301を形成して搬送台車3を移動させるピットライン11と、図12、図13に示すごとく、第2移動状態302を形成して搬送台車3を移動させる床面ライン12とがある。
図15に示すごとく、トリム工程101及びファイナル工程103は、ピットライン11によって形成してあり、シャシー工程102は、床面ライン12によって形成してある。搬送台車3は、トリム工程101及びファイナル工程103においては、ピットライン11を第1進行方向D1に移動し、シャシー工程102においては、床面ライン12を第2進行方向D2に移動する。
【0057】
なお、図9〜図11においては、搬送台車3がピットライン11を第1進行方向D1に移動する場合を示し、図12〜図14、図1、図2においては、搬送台車3が床面ライン12を第2進行方向D2に移動する場合を示す。なお、シャシー工程102においては、搬送台車3は、床面ライン12を第1進行方向D1に移動することもできる。
搬送台車3は、ピットライン11、床面ライン12のいずれにおいても、第1進行方向D1、第2進行方向D2のいずれの方向に移動することもできる。
【0058】
また、搬送台車3は、いずれの工程101、102、103においても、ドライブローラ23によって駆動され、各進行方向D1、D2に連なって移動する。そして、本例の搬送ライン100は、4本のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、搬送台車3をピットライン11、床面ライン12及びこれらの間を連続して移動させるよう構成してある。
また、図9〜図14に示すごとく、搬送台車3は、第1移動状態301と第2移動状態302とのいずれの移動状態301、302を形成する際にも、作業台車部5の作業床面50を工場の床面2又は床面2に設けたデッキ24(図2、図12参照)と略同一面にして移動する。
【0059】
図15に示すごとく、搬送台車3は、各工程101、102、103間を移動する際には、移載装置61、62、64によって持ち上げられて運搬される。移載装置61、62、64は、搬送台車3のベース台車部4と作業台車部5とをそれぞれ持ち上げ、ベース台車部4と作業台車部5との相対高さ関係が異なる第1移動状態301又は第2移動状態302を形成して、搬送台車3をピットライン11又は床面ライン12に載置するよう構成されている。
本例の搬送ライン100は、トリム工程101、シャシー工程102、ファイナル工程103の各工程において搬送台車3を往復移動させるよう構成されている。
【0060】
トリム工程101に搬入する搬送台車3には、種々の組付部品を組み付ける前のメインボディ8を位置決めを行って載置する。搬送台車3は、移載装置の1つである搬入側昇降装置61によって持ち上げられ、トリム工程101を形成する一方のピットライン11Aに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、トリム工程101の一方のピットライン11Aの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Aを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Bへ送り出すよう構成されている。
【0061】
次いで、搬送台車3は、トリム工程101の他方のピットライン11Bの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、トラバース装置63によって第2進行方向D2へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cに載置される。次いで、搬送台車3は、メインボディ8を保持した状態を維持して、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cの一方側へ第2進行方向D2に移動する。次いで、シャシー工程102の一方の床面ライン12Cを一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ運搬された後、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動する。このトラバース装置63は、一方の床面ライン12Cを第2進行方向D2に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第1進行方向D1に移動させた後、他方の床面ライン12Dへ送り出すよう構成されている。
【0062】
次いで、搬送台車3は、シャシー工程102の他方の床面ライン12Dの他方側へ第2進行方向D2に移動したときには、トラバース装置63によって第1進行方向D1へ移動した後、移載装置としての方向転換装置64によって持ち上げられると共に90°方向転換されて、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eに載置される。搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置して、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ第1進行方向D1に移動する。次いで、ファイナル工程103の一方のピットライン11Eの一方側へ移動した搬送台車3は、トラバース装置63によって運搬された後、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動する。このトラバース装置63は、一方のピットライン11Eを第1進行方向D1に移動する搬送台車3を受け取り、この搬送台車3を、第2進行方向D2に移動させた後、他方のピットライン11Fへ送り出すよう構成されている。
【0063】
次いで、搬送台車3が、ファイナル工程103の他方のピットライン11Fの他方側へ第1進行方向D1に移動したときには、種々の組付部品の組付が完了したメインボディ8を搬送台車3から取り出す。また、搬送台車3は、移載装置の1つである搬出側昇降装置62によって持ち上げられ、循環ライン65に載置される。そして、循環ライン65においてメインボディ8を保持しない空の搬送台車3を第2進行方向D2へ移動させ、再び種々の組付部品の組付前のメインボディ8を搬送台車3に保持させて、トリム工程101へ搬入させる。
その後、複数の搬送台車3は、何度もトリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103を循環させることができる。
【0064】
図1〜図3に示すごとく、本例の搬送台車3の第2移動状態302は、シャシー工程102において形成し、シャシー工程102の一部において固定作業台15及び上方作業台7を配設して、メインボディ8の上方及び側方から作業者Mによる組付作業を可能にしている。上方作業台7は、搬送台車3が固定作業台15の設置位置に近づいたときに移載装置等によって互いに隣接する搬送台車3間に取り付け、搬送台車3が固定作業台15の設置位置を通過した後に移載装置等によって互いに隣接する搬送台車3間から取り外す。
【0065】
シャシー工程102は、本来は、メインボディ8の下方から作業者Mが組付作業をするために形成した工程である。これに対し、固定作業台15及び上方作業台7を用いることにより、本来はトリム工程101又はファイナル工程103においてメインボディ8の上方及び側方から組付作業を行う組付部品等について、シャシー工程において行うことができる。図15において、シャシー工程102において固定作業台15を配設するレイアウトの一例を2点鎖線で示す。これにより、トリム工程101、シャシー工程102及びファイナル工程103の全体の工程の長さを適切に調整することができ、工場内のレイアウトの自由度を増やすことができる。
シャシー工程102において、搬送台車3間から取り外した上方作業台7は、図7に示すごとく、床面直下25に配設したレール26上を移動させて、上方作業台7を搬送台車3間に取り付ける位置まで循環させることができる。
【0066】
本例の搬送台車3は、メインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持して、メインボディ8に対する作業者Mの作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程へ連続して移動させることができるものである。
作業者Mがメインボディ8の上方、側方から作業するトリム工程101及びファイナル工程103においては、搬送台車3は、図9、図10に示したように、第1移動状態301を形成し、ベース台車部4における複数のローラ41を、工場の床面2から掘り下げた床下ピット21のレール211上を転がり接触させると共に、作業台車部5の下面を床面直下22に設けた複数のローラ221上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
【0067】
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50を床面2と略同一面にして、複数のポスト44のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者Mの足場に障害物がほとんど存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者Mの足場を適切に確保することができる。そして、作業者Mは、作業台車部5を足場としてメインボディ8の上方及び側方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0068】
また、搬送台車3の第1移動状態301を形成する際には、上方作業台7は、一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部から取り外しておく。これにより、上方作業台7が作業台車部5を足場として作業する作業者Mの障害物になることを避けることができる。
【0069】
一方、作業者Mがメインボディ8の下方から作業するシャシー工程102においては、搬送台車3は、図12、図13に示したように、第2移動状態302を形成し、作業台車部5をベース台車部4の上側に載置した状態で、ベース台車部4における複数のローラ41を、床面直下22に設けたレール222上を転がり接触させて、両台車部4、5を一体的に移動させる。
このとき、ベース台車部4及び作業台車部5は、いずれも床面2に設けたデッキ24内に収容して移動させることができる。また、本例の搬送台車3は、作業台車部5の作業床面50をデッキ24と略同一面にして、複数のポスト44以外のほとんどの部分を床面2内に収容して移動することができる。これにより、作業者Mの足場にほとんど障害物が存在せず、かつ床面2との間にほとんど段差を形成することなく、作業台車部5によって作業者Mの足場を適切に確保することができる。そして、作業者Mは、作業台車部5を足場としてメインボディ8の下方から組付部品の組付等の作業を行うことができる。
【0070】
また、搬送台車3の第2移動状態302を形成する際には、図1〜図3に示したように、上方作業台7は、必要に応じて一方側の搬送台車3Aにおける複数の他方側ポスト44Dの上部及び他方側の搬送台車3Bにおける複数の一方側ポスト44Cの上部に取り付けておく。これにより、メインボディ8に対する下方へは、下方作業台5としての作業台車部5における作業者Mが作業することができ、メインボディ8に対する上方及び側方へは、上方作業台7における作業者Mが作業することができる。そして、作業者Mは、固定作業台15から、メインボディ8に対して前後に位置する上方作業台7へ移動することができ、固定作業台15と上方作業台7との間を自由に移動することができる。
【0071】
このように、本例の搬送台車移動システム1においては、シャシー工程102の一部において、搬送台車3が複数台連続して移動する際に、作業台車部5(下方作業台5)と、上方作業台7及び固定作業台15との上下2段の作業台において、作業者Mは、メインボディ8に対して組付部品の組付等の作業を行うことができる。なお、下方作業台5において作業する作業者Mと、上方作業台7及び固定作業台15において作業する作業者Mとは、別々の者とすることができる。
それ故、本例の搬送台車移動システム1によれば、シャシー工程102の一部において、メインボディ8に対する下方と、メインボディ8に対する上方及び側方との上下2段における作業を、別々の作業者Mによって同時間帯に行うことができる。
【0072】
また、本例の搬送台車3は、ベース台車部4と作業台車部5との相対的高さ関係を変更することにより、複数のポスト44にメインボディ8を位置決めを行って載置した状態を維持したまま、作業者Mの組付作業高さ範囲が異なる複数の組付作業工程に移動させることができる。そのため、複数の搬送台車3の間でのメインボディ8の移載、搬送台車3とリフト搬送装置等との間でのメインボディ8の移載等を不要にすることができ、各組付作業工程におけるメインボディ8の搬送管理を簡単にすることができる。
【0073】
また、搬送台車3自体に、作業台車部5を設けて作業者Mの足場を形成していることにより、搬送台車3を移動させる如何なる組付作業工程においても、作業者Mの足場を適切に確保することができる。また、本例の搬送台車3においては、スライド機構42を、2本の後方ポスト44Bの上端部に設けておらず、2本の後方ポスト44Bの下端部に設けている。これにより、作業台車部5よりも上側にスライド機構42が存在せず、作業者Mの足元に障害物が存在しないようにして、その作業性を向上させることができる。
さらに、搬送台車3には、作業台車部5を昇降させるための機構は設けていない。これにより、搬送台車3の構造を極めて簡単にすることができる。また、複数の組付作業工程において、同じ搬送台車3を使用することができ、搬送台車3を移動させる搬送ライン100の全体の構造を極めて簡単にすることができる。
【0074】
それ故、本例の搬送台車移動システム1によれば、複数のポスト44に対してメインボディ8を位置決めを行って載置したまま、搬送台車3を複数の組付作業工程の間を連続して移動させることができ、搬送台車3自体及び搬送台車3を使用する搬送ライン100の構造を極めて簡単にすることができる。
【0075】
なお、床下ピット21にレール211を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサをベース台車部4に設けると共に、床下ピット21に、ベース台車部4に設けたセンサによって検知されるセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
また、これと同様に、床面2又は床面直下22にレール222を設ける以外にも、電磁センサ等のセンサをベース台車部4に設けると共に、床面2又は床面直下22にセンサ検知ラインを設け、センサによって搬送経路を検知しながら搬送台車3を移動させることもできる。
また、センサは、作業台車部5に設け、これに対向する部分にセンサ検知ラインを設けることもできる。
【符号の説明】
【0076】
1 搬送台車移動システム
100 搬送ライン
101 トリム工程
102 シャシー工程
103 ファイナル工程
11 ピットライン
12 床面ライン
15 固定作業台
2 床面
21 床面掘下ピット
22 床面直下
23 ドライブローラ
3 搬送台車
3A 一方側の搬送台車
3B 他方側の搬送台車
301 第1移動状態
302 第2移動状態
4 ベース台車部
41 ローラ
42 スライド機構
44 ポスト
5 作業台車部(下方作業台)
55A 一方側延設部
55B 他方側延設部
7 上方作業台
73A 一方側ステー
73B 他方側ステー
8 ベース部品(メインボディ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部品を載置する搬送台車を、複数台連続して作業工程に移動させるよう構成した搬送台車移動システムにおいて、
上記搬送台車は、上記ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、該ベース台車部に配設した下方作業台とを備えており、
上記複数のポストは、上記ベース台車部における一方側部分に立設した複数の一方側ポストと、上記ベース台車部における他方側部分に立設した複数の他方側ポストとからなり、
互いに隣接する上記搬送台車間においては、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部とに、上方作業台が架け渡してあり、
上記搬送台車が移動する床面には、上記上方作業台に対する、上記搬送台車の移動方向の左右両側に、固定作業台が設置してあり、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、上記下方作業台と、上記上方作業台及び上記固定作業台との上下2段の作業台において、上記ベース部品に対して作業者が作業できるよう構成したことを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記上方作業台の作業床面は、上記ベース部品の下面よりも高い位置にあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数の一方側ポストの上部には、一方側ステーがそれぞれ設けてあり、
上記複数の他方側ポストの上部には、他方側ステーがそれぞれ設けてあり、
上記上方作業台は、互いに隣接する上記搬送台車間において、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ステーの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ステーの上部とに対して着脱可能に架け渡してあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部と、上記複数の他方側ポストの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部とを有しており、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する上記搬送台車間においては、上記一方側の搬送台車における上記他方側延設部と、上記他方側の搬送台車における上記一方側延設部とが当接して、上記下方作業台を互いに連続させていることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストと上記複数の他方側ポストとに対して昇降可能に支持されると共に上記ベース台車部に対する上側において作業者の足場を形成する作業台車部であり、
上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、かつ、上記複数の一方側ポスト及び上記複数の他方側ポストに対して上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成するよう構成してあり、
上記上方作業台は、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第1移動状態を形成する場合には、上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部から取り外しておき、一方、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第2移動状態を形成する場合には、必要に応じて上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部に取り付けておくことを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、
上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態、及び上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記ベース台車部と、上記床下ピット及び上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあり、
上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記作業台車部と上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、
該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ライン。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、
上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法。
【請求項1】
ベース部品を載置する搬送台車を、複数台連続して作業工程に移動させるよう構成した搬送台車移動システムにおいて、
上記搬送台車は、上記ベース部品を位置決めを行って載置するための複数のポストを立設してなるベース台車部と、該ベース台車部に配設した下方作業台とを備えており、
上記複数のポストは、上記ベース台車部における一方側部分に立設した複数の一方側ポストと、上記ベース台車部における他方側部分に立設した複数の他方側ポストとからなり、
互いに隣接する上記搬送台車間においては、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部とに、上方作業台が架け渡してあり、
上記搬送台車が移動する床面には、上記上方作業台に対する、上記搬送台車の移動方向の左右両側に、固定作業台が設置してあり、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、上記下方作業台と、上記上方作業台及び上記固定作業台との上下2段の作業台において、上記ベース部品に対して作業者が作業できるよう構成したことを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記上方作業台の作業床面は、上記ベース部品の下面よりも高い位置にあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数の一方側ポストの上部には、一方側ステーがそれぞれ設けてあり、
上記複数の他方側ポストの上部には、他方側ステーがそれぞれ設けてあり、
上記上方作業台は、互いに隣接する上記搬送台車間において、一方側の上記搬送台車における上記複数の他方側ステーの上部と、他方側の上記搬送台車における上記複数の一方側ステーの上部とに対して着脱可能に架け渡してあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストの位置よりもさらに一方側先端へ延設された一方側延設部と、上記複数の他方側ポストの位置よりもさらに他方側先端へ延設された他方側延設部とを有しており、
上記搬送台車が複数台連続して移動する際に、互いに隣接する上記搬送台車間においては、上記一方側の搬送台車における上記他方側延設部と、上記他方側の搬送台車における上記一方側延設部とが当接して、上記下方作業台を互いに連続させていることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記下方作業台は、上記複数の一方側ポストと上記複数の他方側ポストとに対して昇降可能に支持されると共に上記ベース台車部に対する上側において作業者の足場を形成する作業台車部であり、
上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部が床下ピットとの間で転がり接触すると共に上記作業台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第1移動状態と、上記作業台車部を上側に載置した状態で上記ベース台車部が床面又は床面直下との間で転がり接触して両台車部を一体的に移動させる第2移動状態とのいずれかを形成し、かつ、上記複数の一方側ポスト及び上記複数の他方側ポストに対して上記ベース部品を位置決めを行って載置した状態を維持して、上記第1移動状態と上記第2移動状態とを切り替えて形成するよう構成してあり、
上記上方作業台は、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第1移動状態を形成する場合には、上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部から取り外しておき、一方、上記複数台連続して移動する搬送台車において上記第2移動状態を形成する場合には、必要に応じて上記一方側の搬送台車における上記複数の他方側ポストの上部及び上記他方側の搬送台車における上記複数の一方側ポストの上部に取り付けておくことを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項6】
請求項5に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記第1移動状態と上記第2移動状態とのいずれの移動状態を形成する際にも、上記作業台車部の作業床面を工場の床面又は該床面に設けたデッキの上面と略同一面にして移動させることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記作業台車部は、上記複数のポストに対して転がり接触して昇降可能であり、
上記ベース台車部が上記床下ピットとの間で転がり接触する状態、及び上記ベース台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記ベース台車部と、上記床下ピット及び上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあり、
上記作業台車部が上記床面又は上記床面直下との間で転がり接触する状態は、上記作業台車部と上記床面又は上記床面直下とのいずれかに複数のコロを設けて形成してあることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムにおいて、上記複数台連続して移動する搬送台車は、上記ベース台車部の左右に回転接触して該ベース台車部を挟み込んで送り出すドライブローラによって駆動されることを特徴とする搬送台車移動システム。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送ラインであって、
該搬送ラインには、上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとがあり、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させるよう構成したことを特徴とする搬送ライン。
【請求項10】
請求項5〜8のいずれか一項に記載の搬送台車移動システムを用い、上記ベース部品としての自動車のメインボディに対して種々の組付部品の組付を行う自動車生産ライン用の搬送方法であって、
上記第1移動状態を形成して上記搬送台車を移動させるピットラインと、上記第2移動状態を形成して上記搬送台車を移動させる床面ラインとを形成しておき、
上記搬送台車を移載装置によって持ち上げて上記ピットラインと上記床面ラインとの間を移動させることにより、上記複数のポストに上記メインボディを位置決めを行って載置した状態を維持して、上記搬送台車を上記ピットライン、上記床面ライン及びこれらの間を連続して移動させることを特徴とする搬送方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−35754(P2012−35754A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177637(P2010−177637)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】
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