説明

搬送据付装置

【課題】 搬送物の据付位置での据付作業に際して、搬送物の水準調整や垂直度調整を容易にし、搬送物の据付作業における時間短縮を可能にする。
【解決手段】 搬送物Yを載置させる台部3と、この台部3の両端部を保持する保持部1と、この保持部1に連結されるキャスタ2と、保持部1とキャスタ2との間に設けられて、台部3に載置された搬送物Yの高さ位置を調整する高さ調整機構とを備えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、搬送据付装置に関し、特に、重量物などの搬送物の搬送およびその後の据付に際しての利用に向く搬送据付装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
重量物などの搬送物の搬送およびその後の据付に際しての利用に向く搬送据付装置としては、従来から種々の提案があるが、たとえば、特許文献1に開示の重量物移動据え付け作業用台車にあっては、キャスタ付きの枠用支柱と水平梁材とで枠体を構成し、並行する一対の水平梁材に一対のチェーンブロック用支柱を少なくとも二ヶ所設け、このチェーンブロック用支柱間に搬送物載置用の水平な専用梁材を着脱自在に架設し、チェーンブロック用支柱の上端部にチェーンブロックを有し、チェーンブロックが搬送物を吊るループ状のチェーンを昇降させる。
【0003】
それゆえ、この作業用台車によれば、搬送物を専用梁材に載せてキャスタ利用で枠体ごと据付場所まで移動し、専用梁材に載せられてループ状のチェーンが掛け回されている搬送物をチェーンブロックの作動によるチェーンの引き上げで吊り上げ、この態勢からの専用梁材を引き抜き、次いで、チェーンブロックの作動でチェーンを下げて搬送物を降ろし、その後、搬送物を据付位置に設けることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08−282502号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した特許文献1に開示の作業用台車にあっては、据付位置に降ろされる搬送物における水準調整や垂直度調整を据付位置に降ろした後に実施しなければならない不具合がある。
【0006】
すなわち、上記した作業用台車では、搬送物を据付位置に降ろす際に、搬送物をチェーンで吊るが、このチェーンで吊られた状態のときに、搬送物における水準や垂直度が調整されないと、据付位置に降ろされた搬送物の水準や垂直度は調整済みの状態にならない。
【0007】
そのため、上記した作業用台車で搬送物が据付位置に降ろされた後に、あるいは、搬送物が据付位置に降ろされる際に、簡易リフトで搬送物を吊るなどしながら作業員が楔などの調整部材を利用して搬送物の水準を調整したり垂直度を調整したりすることになり、搬送物の据付作業に手間を要す不利を招く。
【0008】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、搬送物の据付位置での据付作業に際して、搬送物の水準調整や垂直度調整を容易にし、搬送物の据付作業における時間短縮を可能にする搬送据付装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した目的を達成するために、この発明による搬送据付装置の構成を、搬送物を載置させる台部と、この台部の両端部を保持する保持部と、この保持部に連結されるキャスタと、上記保持部と上記キャスタとの間に設けられて、上記台部に載置された搬送物の高さ位置を調整する高さ調整機構とを備えてなるとする。
【0010】
それゆえ、この発明にあっては、高さ調整機構が保持部とキャスタとの間に設けられて、台部に載置された搬送物の高さ位置を調整可能にする。これにより、台部に載置された搬送物を所定の据付位置に据え付ける際に、その据付位置で搬送物における水準調整および垂直度調整を容易に実践できる。
【発明の効果】
【0011】
その結果、この発明によれば、搬送物の据付位置での据付作業に際して、搬送物の水準調整や垂直度調整を容易にし、従来の作業用台車に比較して、搬送物の据付作業における時間短縮を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】この発明による搬送据付装置の利用状態例を示す正面図である。
【図2】この発明による搬送据付装置の利用状態例を示す側面図である。
【図3】この発明による搬送据付装置の利用状態例を示す拡大側面図である。
【図4】この発明による搬送据付装置の利用状態例を示す拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明する。図示するところでは、この発明による搬送据付装置は、重量物たる搬送物の据付場所への搬送作業および据付位置における搬送物の据付作業に際して利用される。
【0014】
このとき、搬送物は、プラットホームP(図1,図2参照)に保安設備としてのホームドアを設けるホームドアユニットYとされるが、凡そホームドアと同様に機能するその他のゲートやドア柵を設けるゲートユニットやドア柵ユニットであっても良く、さらには、たとえば、舞台に移動可能に設けられる音響反射板であっても良い。
【0015】
すなわち、図示する実施形態にあって、搬送据付装置は、工場などで組み立てられたホームドアユニットYをプラットホームPの据付場所まで搬送する作業を可能にし、また、その後のホームドアユニットYをプラットホームPの据付位置に降ろす作業を可能にする。据付位置に降ろされたホームドアユニットYは、プラットホームPに固定されて、プラットホームPに保安設備としてのホームドアを設けることになる。
【0016】
ホームドアユニットYは、詳しくは図示しないが、図1および図2に示すように、プラットホームPの据付位置に固定状態に定着される箱体Bと、この箱体Bに収容されると共にこの箱体Bに対して図1中の正面側から見る横方向に出没するパネル状に形成のドア体Dとを有する。
【0017】
ちなみに、箱体Bは、骨組Fと、この骨組Fに分離可能に保持されて骨組Fおよび骨組Fの言わば内側に格納されるドア体Dを外部から視覚的に遮断する外装体Cとを有する。
【0018】
このとき、骨組Fは、プラットホームPの据付位置に固定状態に定着されることからして、所定の自己支持性を有するようにいわゆる剛体に形成され、ドア体Dおよび外装体Cの保持を可能にする。特に、この発明による搬送据付装置の利用を可能にする観点から、骨組Fは、図1中で左右方向となる軸線方向に延在される下桁部材F1を有する。
【0019】
それゆえ、この箱体Bにあっては、骨組Fにおける下桁部材F1が後述する架台Lにおける台部3に担持されることで、架台L、つまり、台部3に載置される。
【0020】
また、このホームドアユニットYにあって、ドア体Dの箱体Bに対する移動機構については、任意の構成を選択でき、図示しないが、たとえば、箱体Bに保持される駆動源におけるギアがドア体Dに固定状態に保持される無端状のタイミングベルトに噛合し、ギアが回動すると共にタイミングベルトが回転してドア体Dが移動する構成とされる。
【0021】
ちなみに、このホームドアユニットYを架台Lで据付場所まで搬送する際、および、ホームドアユニットYが架台Lから降ろされて据付位置に据え付けられるまでは、外装体Cが骨組Fから外され、外装体Cに対する傷付きを回避し、また、ホームドアユニットYの搬送および据付の各作業の妨げにならないようにする。
【0022】
なお、ホームドアユニットYの据付位置への据付後に、たとえば、ドア体Dの移動機構に対するメンテナンスを実行する際には、外装体Cが骨組Fから部分的にあるいは全面的に外される。
【0023】
そして、ホームドアユニットYの据付場所は、詳しくは図示しないが、鉄道の駅におけるプラットホームPで、また、据付位置は、プラットホームPにおける線路側のホーム端P1(図2参照)寄りの位置となる。
【0024】
つまり、鉄道の駅におけるプラットホームPにホームドアを設ける際には、ホームドアユニットYにおける箱体BとプラットホームPにおけるホーム端P1との間に人間が一人立てるか立てない程の空間を有するように、プラットホームPにおけるホーム端P1に接近した状態にホームドアが設けられる。
【0025】
そのため、この発明による搬送据付装置にあっては、詳しくは後述するが、ホームドアユニットYを据付位置に降ろす際に、プラットホームPにおける線路側のホーム端P1寄りの言わば限られた据付位置にそのまま降ろせるように配慮している。
【0026】
なお、図1,図2および図3に示すところにあって、骨組Fは、プラットホームPへの据え付け前の状態を示している。したがって、下桁部材F1を連設させる支柱部材F2の下端がプラットホームPの上端から浮き上がった状態にあるが、プラットホームPへの据え付け後は、骨組Fの下端とプラットホームPの上端との間に出現する空間が部分的にあるいは全面的に適宜の手段で埋められる。
【0027】
ところで、この発明による搬送据付装置は、図1および図2に示すように、架台Lを有し、この架台Lは、図1で左右方向となる進行方向の前後に位置決めされる一対とされる。
【0028】
このとき、図示するところでは、前後の架台Lが互いに分離されているが、この発明が意図するところからすると、前後の架台Lが適宜の連結手段で分離可能に連結されても良い。そして、前後の架台Lが分離されている場合には、架台Lの取り扱いや持ち運びで有利となる。
【0029】
そして、架台Lは、保持部1,キャスタ2および台部3で構成される。架台Lの軸線方向が図2中で左右方向となる上記の進行方向を横切る方向とされるとき、保持部1は、軸線方向の両端部に設けられ、この保持部1にキャスタ2が保持されることで架台Lの移動を可能にする。
【0030】
このとき、架台Lにあっては、高さ調整機構を有し、この高さ調整機構は、図3中で下端部となる一端部がキャスタ2に固定されると共に保持部1に螺装される螺条軸24と、この螺条軸24の図3中で上端部となる他端部に設けられて、保持部1に対してこの螺条軸24を回転させる操作部たる操作ハンドル25とを有してなる。
【0031】
それゆえ、この高さ調整機構にあっては、ホームドアユニットYの高さを調整する際に、操作部たる操作ハンドル25を回転操作することで、螺条軸24を回転させることが可能になり、これにより、螺条軸24を螺装させる保持部1が昇降される。
【0032】
また、台部3は、保持部1の上端より低い高さ位置であって、一対の保持部1の間に設けられ、ホームドアユニットYを載置させる。
【0033】
このとき、架台Lにおける台部3は、保持部1の上端に比較して上端の高さ位置を低くするから、架台Lの重心位置を低くすると共に、台部3に載置されるホームドアユニットYにおける重心位置を低くでき、図1および図2に示すようないわゆる立てた状態を呈するホームドアユニットYを安定した状態に載置させることが可能になる。
【0034】
一方、架台Lにおける保持部1および台部3は、ホームドアユニットYの搬送時などに折れ曲がるなどしない機械的強度を有するように、たとえば、鋼材で形成される。
【0035】
このとき、台部3にあっては、その上端を平坦にすべく、軸線方向を横切る方向の断面を横長の矩形にする。これにより、台部3に載置されるホームドアユニットYにおける安定を得易くする。
【0036】
また、保持部1にあっては、上記したように、高さ調整機構を有して、キャスタ2の連結位置の高低調整を可能にするように形成されるが、キャスタ2におけるロックナット21(図3参照)の保持部1に対する接触性を向上させる上で、上端が平坦に形成される、つまり、矩形に形成される。
【0037】
このことからすると、架台Lにおける保持部1および台部3は、鋼製の角パイプで形成されて、曲げや捻りに対する剛性を高くすると共に、また、外観を良くする上からして同様の幅寸法を有するように形成されるのが良い(図4参照)。
【0038】
上記の架台Lにあって、保持部1における台部3側の端部と、この台部3における保持部1側の端部とが上下方向に配設される繋部4(図3参照)で連結され、このとき、繋部4の上端部が保持部1の端部に固定状態に連設されるのに対して、繋部4の下端部が台部3の端部に着脱自在に連結される。
【0039】
これによって、たとえば、架台LによってホームドアユニットYが所定の据付け位置に据え付けられた後に、架台Lを撤去する際に架台L全体を移動させたりせずして、台部3と繋部4とを分離することによりいわゆる分解して撤去でき、撤去作業を容易にする。
【0040】
しかも、その際に、この発明にあっては、保持部1がキャスタ2を有すると共に繋部4をも一体に有するから、この保持部1が台部3から分離されて架台LがホームドアユニットYの下方から撤去されるときには、いわゆる棒状になる台部3をホームドアユニットYの下方にあって架台Lの進行方向を横切る方向に引き抜くようにして撤去することが可能になり、撤去作業における作業性を向上させる。
【0041】
なお、台部3と繋部4との分離自在な連結を実現する手段については、任意の構成が選択されて良いが、図示するところでは、ピン41(図4参照)を利用する連結構造からなり、ピン41を台部3と繋部4との連結部から抜き取るとき、両者の分離が可能とされる。なお、ピン41は、紛失防止用の索材42(図3参照)で保持部1に連結される。
【0042】
ところで、図示するところでは、架台Lは、保持部1と台部3とを繋部4で着脱自在に連結してなるとしたが、この架台Lが機能するところを勘案すると、この架台Lにあって、保持部1と台部3とが一体に連結されてなるとしても良い。
【0043】
すなわち、上記したところでは、保持部1に一体的に設けられた繋部4が台部3に着脱自在に連結されるとしたが、この繋部4が台部3にも一体的に設けられてなるとしても良い。
【0044】
この場合には、保持部1と台部3とが繋部4を介して一体になるので、たとえば、上記したように、保持部1と台部3とが繋部4を介して着脱自在とされることによる保持部1あるいは台部3たるいわゆる部材の紛失を危惧しなくて済み、架台Lの保管や搬送を容易にする上で有利になる。
【0045】
また、保持部1と台部3とが繋部4を介して一体に形成されるので、保持部1と台部3とが繋部4を介して着脱自在に形成される場合に比較して、架台Lを形成するのにあって部材点数を少なくすると共に、架台Lを頑丈に形成することが可能になる利点がある。
【0046】
ちなみに、保持部1と台部3とが一体に形成される場合に架台LをホームドアユニットYの下方に位置決め、あるいは、ホームドアユニットYの下方から撤去する際には、架台Lを架台Lの進行方向に移動させるようにすれば良い。
【0047】
一方、キャスタ2は、前記したように、保持部1に対する連結位置の高低調整を自在にするように設けられ、したがって、キャスタ2が保持部1に対する連結位置を高くする場合には、架台Lにおいて台部3の高さ位置を高くでき、たとえば、台部3に載せたホームドアユニットYの搬送時に台部3の底面が地面などに接触する不具合の招来を回避でき、搬送性を良くする。
【0048】
また、キャスタ2が保持部1に対する連結位置を低くする場合には、架台Lにおいて台部3の高さ位置を低くでき、たとえば、台部3へのホームドアユニットYの載置作業、および、台部3からのホームドアユニットYの降ろし作業を容易にすると共に、台部3の重心位置およびこの台部3に載置されるホームドアユニットYの重心位置を低くすることが可能になり、ホームドアユニットYの搬送時における安定性を得易くする。
【0049】
そして、一対の架台Lにおいて、計四ヶ所となる保持部1の各キャスタ2が各保持部1において連結位置の高低調整を自在にするから、選択された保持部1がキャスタ2を介して高低調整されることで、台部3上から据付位置に降ろされるホームドアユニットYにおける水準調整や垂直度調整を可能にする。
【0050】
そしてまた、キャスタ2は、図3に示すように、車輪22と、この車輪22を枢支するブラケット23と、このブラケット23の上端に下端部が回転自在に連結され螺条軸24と、この螺条軸24の上端部に連結される操作部たる操作ハンドル25とを有する。
【0051】
そして、この螺条軸24は、上下方向に延びる軸線をブラケット23が枢支する車輪22の車軸位置に対して水平方向に偏芯させる(図1参照)と共に、ロックナット21(図3参照)の螺装下に保持部1に螺装される。
【0052】
ちなみに、螺条軸24にあって、図3中で下端部となる一端部は、キャスタ2におけるブラケット23の上端に回転自在に連結されるから、この一端部にネジが切られていなくても良い。
【0053】
保持部1は、下端に固着されたナット11を有し、このナット11が螺条軸24を螺装させ、したがって、言わば固定状態にある保持部1に対して螺条軸24が回動されると、この螺条軸24が保持部1に対して昇降する。
【0054】
それゆえ、このキャスタ2にあっては、保持部1に螺装される螺条軸24の下端部に車輪22を有するブラケット23が回転自在に連結されるから、架台Lの走行時における方向転向を可能にする。
【0055】
そして、このキャスタ2にあっては、螺条軸24がブラケット23に枢支される車輪22に対して偏芯されてなるから、操作ハンドル25の回動で螺条軸24を回動するときに、車輪22が連れ運動しない、すなわち、車輪22が水平方向に回転せずして、螺条軸24の保持部1に対する昇降が可能になる。
【0056】
なお、上記のロックナット21は、これを締め付けている間、たとえば、ホームドアユニットYの搬送中などに螺条軸24が保持部1に対して回動することを阻止するが、その限りには、任意に構成されて良い。図示するところでは、ロックナット21は、操作レバー21a(図1および図4参照)を有して、この操作レバー21aによるロックナット21の回動を可能にすると共に、スパナなどの工具の利用せずして回動操作できるように配慮されている。
【0057】
操作ハンドル25は、図示するところでは、握り(符示せず)付きの丸ハンドルからなるが、その機能するところからすれば、たとえば、バーハンドルとされても良いことはもちろんである。
【0058】
以上からすれば、高さ調整機構が一端部をキャスタ3に固定させる螺条軸24と、この螺条軸24の他端部に設けられる操作部たる操作ハンドル25とを有する構成とするから、簡単な構成で搬送物の高さ位置を調整できる。
【0059】
ところで、上記した架台Lにおける台部3について、図示するところでは、台部3が図3中で左右方向となるその軸線方向の長さ寸法をこの台部3に載置されるホームドアユニットYにおける台部3の軸線方向に沿う幅寸法より大きくする。
【0060】
また、台部3は、この台部3に載置されるホームドアユニットYをこの台部3に連結させる連結機構5を有する。
【0061】
台部3がその長さ寸法をこの台部3に載置されるホームドアユニットYにおける幅寸法より大きくするから、ホームドアユニットYにおける幅寸法が区々となる場合にも、その載置を可能にする。
【0062】
また、台部3が連結機構5を有するから、この連結機構5で台部3に載置されたホームドアユニットYの台部3に対する一体的な連結が可能になり、それゆえ、架台LでホームドアユニットYを搬送するとき、ホームドアユニットYを押しての安定した搬送を実現し得て、たとえば、作業者が深い前傾姿勢を執るなどして台部3、すなわち、架台Lを直接押す場合に比較して、作業者における肉体的負担を少なくする。
【0063】
ところで、連結機構5は、台部3に設けられて間にホームドアユニットYをこのホームドアユニットYの幅方向から挟持する一対の挟持体51を有し、この一対の挟持体51のいずれか一方あるいは両方が台部3の軸線方向に沿って台部3に移動自在に設けられる。
【0064】
これによって、台部3に載置されるホームドアユニットYを台部3の軸線方向にいずれか一方側、たとえば、図3に示すところでは、右側の保持部1側に片寄らせることが可能になり、片寄った位置の下方の限られた据付位置にホームドアユニットYを降ろすことが可能になる。
【0065】
このとき、図2および図3に示すところでは、図中の右側の連結機構5が図中の左側の連結機構5に対向するように設けられるが、これに代えて、図3および図4中に一点鎖線図で示すように、右側の連結機構5が左側の連結機構5と同じ方向を向くように設けられるとしても良い。
【0066】
この場合には、台部3上にあって、ホームドアユニットYを台部3の右側の保持部1に隣接するように一層片寄らせることが可能になり、その分、右側の保持部1側の下方たる限られた据付位置にホームドアユニットYを降ろすことが可能になる。
【0067】
挟持体51は、図示するところにあって、台部3の軸線を横切る方向に配設される本体部51aと、この本体部51aの図4中で上下端部となる両端部から図3中で上方に立上る立上部51bと、この立上部51bから図3中および図4中で左右方向に延びる鍔部51cを有する。
【0068】
そして、この挟持体51にあって、本体部51aが台部3を挟んで対向する受部材52に連結されることで、台部3に固定的に連結されるとし、このとき、互いに対向する立上部51bが間にあるホームドアユニットYを構成する骨組Fの一対となる下桁部材F1を挟持するとし、さらに、鍔部51cが下桁部材F1の上昇を阻止している。
【0069】
このとき、挟持体51における本体部51aと、この本体部51aに対向する受部材52とは、受部材52側から本体部51a側に貫通するボルト53で連結され、このボルト53に螺装された操作ナット54の回動で両者間の締め付けおよびその解除が可能とされる。
【0070】
それゆえ、前記したが、上記の挟持体51を有する連結機構5にあっては、挟持体51が受部材52と共に台部3の軸線方向に沿って移動されるとき、幅寸法の異なるホームドアユニットYの挟持を可能にする。また、同じく前記したように、たとえば、図3に示すところにあって、右側の保持部1側に片寄らされたホームドアユニットYを台部3に一体的に連結することが可能になり、搬送後のホームドアユニットYを右側の保持部1側に片寄った位置の下方の限られた据付位置に降ろすことが可能になる。
【0071】
ちなみに、上記した挟持体51は、鍔部51cを有して、この鍔部51cによる下桁部材F1の上昇阻止を実現するが、ホームドアユニットYが、たとえば、200kgを超える重量物であること鑑みると、この鍔部51cがなくても良いと言える。
【0072】
つまり、台部3に載置されているホームドアユニットYは、重量が200kgを超えることから、台部3との間における摩擦抵抗を大きくすることになり、これを超える外力作用がない限りに台部3上で移動することはなく、したがって、下桁部材F1の上昇を阻止する構成がなくても良いからである。
【0073】
以上のように、この発明の搬送据付装置にあっては、進行方向に前後の一対とされる架台Lがキャスタ2を有するから、キャスタ2による架台Lの走行が可能になり、また、キャスタ2が架台Lに対する高さ位置の調整を可能にするから、架台Lの高さ位置を低くすることで、架台Lの重心位置を低くでき、架台LへのホームドアユニットYの載置作業および架台Lからの重量物の降ろし作業を容易にする。
【0074】
そして、キャスタ2が架台Lに対する高さ位置の調整を可能にして架台Lの重心位置を低くできるから、架台Lに載置されるホームドアユニットYの重心位置も低くでき、ホームドアユニットYの搬送時における安定性を得易くする。
【0075】
そして、一対の架台Lにおいて、計四ヶ所となる保持部1がキャスタ2を介して高さ位置をそれぞれ調整自在にするから、選択された保持部1が高低調整されることで、据付位置に降ろすホームドアユニットYにおける水準調整や垂直度調整を可能にし得る。
【0076】
また、架台Lがその軸線方向の長さ寸法を載置されるホームドアユニットYにおける幅寸法より大きくすると共に、ホームドアユニットYをこの架台Lに連結させる連結機構5を有するから、幅寸法を区々にするホームドアユニットYを載置できると共に、連結機構5で載置されたホームドアユニットYの架台Lに対する一体的な連結が可能になる。
【0077】
さらに、連結機構5が台部3に設けられて間にホームドアユニットYを挟持する一対の挟持体51のいずれか一方あるいは両方を移動自在にするから、架台Lに載置されるホームドアユニットYをいずれか一方側に片寄らせることが可能になり、片寄った位置の下方の限られた据付位置にホームドアユニットYを降ろすことが可能になる。
【0078】
以上のように形成されたこの発明による搬送据付装置にあっては、以下のように作動してホームドアユニットYの搬送作業および搬送後の据付作業を可能にするが、それに先立ち、ホームドアユニットYにあっては、箱体Bにおける外装体Cの傷付きを回避するため、外装体Cを外す。
【0079】
外装体Cが外されたホームドアユニットYにおける骨組Fの下方に、前後で一対となる架台Lを構成する各台部3をホームドアユニットYの下方にあって架台Lの進行方向を横切る方向に差し込み、このホームドアユニットYの下方に差し込まれた台部3に連結機構5によってホームドアユニットYを一体的に連結する。
【0080】
連結機構5によってホームドアユニットYを一体的に連結された台部3の両端部に繋部4を介して保持部1を連結すると共に、この台部3に保持部1が連結された態勢をピン41の差し込み連結で保障する。
【0081】
この態勢から、キャスタ2における螺条軸24の回転で保持部1を上昇させて、台部3が地上などに干渉するのを避けてから、ホームドアユニットYを押して据付け場所まで搬送する。
【0082】
据付場所に搬送されたホームドアユニットYは、計4ヶ所となるキャスタ2における螺条軸24を回転して各保持部1を昇降させることで、ホームドアユニットYにおける水準調整および垂直度調整がなされる。
【0083】
水準調整および垂直度調整が終了したホームドアユニットYは、その状態のまま、キャスタ2における螺条軸24の回転による保持部1の下降でプラットホームPにおける所定の据付位置に降ろされる。
【0084】
プラットホームPにおける所定の据付位置に降ろされたホームドアユニットYは、いわゆる固定作業でプラットホームPに固定されて据え付けされるが、事前にホームドアユニットYにおける水準調整および垂直度調整が実践されているから、据付作業が容易になる。
【0085】
ホームドアユニットYの所定位置への据付作業が終了した後は、連結機構5のいわゆる解除でホームドアユニットYと架台Lとが分離可能とされる。
【0086】
ホームドアユニットYと分離された架台Lにおいては、台部3の両端部から保持部1が外されて保持部1と台部3とが分離され、棒状となった台部3は、ホームドアユニットYの下方から抜き出される。
【0087】
ホームドアユニットYの下方から取り出された台部3とキャスタ2付の保持部1は、再度の利用に供される。
【0088】
その結果、この発明の搬送据付装置によれば、所定の据付場所へのホームドアユニットYの搬送作業を可能にする一方で、特に、ホームドアユニットYにおける水準調整および垂直度調整を可能にすると共に、従来の作業台車に比較して、ホームドアユニットYの据付作業における作業時間を短縮できる。
【0089】
前記したところでは、ホームドアユニットYの据付場所がプラットホームP、特に、鉄道の駅におけるプラットホームPとされたが、このプラットホームについては、その機能するところを鑑みると、たとえば、遊戯施設などにおけるプラットフォームとされても良く、さらには、立ち入り制限が必要な出入り口や階段に続く歩廊とされても良い。
【0090】
また、前記したところでは、高さ調整機構は、一端部をキャスタ2に連結させると共に保持部1に対して回動自在とされる螺条軸24を有し、この螺条軸24を回転させることで、保持部1を上下動させるとしたが、この高さ調整機構が機能するところを勘案すると、その他の構成、たとえば、螺条軸24を廃止し、キャスタ2と保持部1との間に上下方向に伸縮するジャッキ装置を設ける構成とされても良い。
【0091】
そして、前記したところでは、連結機構5を構成する支持体51が架台Lにおける台部3に言わば分離可能に設けられながら、台部3と一緒に取り扱われる、つまり、架台Lの一部を構成するが、上記したように、搬送物たるホームドアユニットYを所定の据付位置に設置することを鑑みると、このホームドアユニットYの据付に際して、支持体51が架台Lから分離されてプラットホームPに連結される取付金具として利用されても良い。
【符号の説明】
【0092】
1 保持部
2 キャスタ
3 台部
4 繋部
5 連結機構
11 ナット
21 ロックナット
21a 操作レバー
22 車輪
23 ブラケット
24 螺条軸
25 操作ハンドル
41 ピン
42 索材
51 挟持体
51a 本体部
51b 立上部
51c 鍔部
52 受部材
53 ボルト
54 操作ナット
B 箱体
C 外装体
D ドア体
F 骨組
F1 下桁部材
F2 支柱部材
L 架台
P プラットホーム
P1 ホーム端
Y ホームドアユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送物を載置させる台部と、
この台部の両端部を保持する保持部と、
この保持部に連結されるキャスタと、
上記保持部と上記キャスタとの間に設けられて、上記台部に載置された搬送物の高さ位置を調整する高さ調整機構とを備えてなることを特徴とする搬送据付装置。
【請求項2】
上記高さ調整機構が、
一端部を上記キャスタに連結させると共に上記保持部に対して回動自在とされる螺条軸と、
この螺条軸の他端部に設けられてこの螺条軸を回転させる操作部とを有してなる請求項1に記載の搬送据付装置。
【請求項3】
上記台部が、
この台部の高さ位置を上記保持部の高さ位置より低くして、この保持部に保持されてなる請求項1に記載の搬送据付装置。
【請求項4】
一端が上記保持部に固定保持されると共に他端が上記台部に着脱自在に連結されあるいは固定保持される繋部を備えてなる請求項1,請求項2または請求項3に記載の搬送据付装置。
【請求項5】
上記台部に載置された搬送物を挟持する挟持体を有すると共に上記台部に移動自在に設けられて、上記挟持体で挟持された搬送物と上記台部とを連結する連結機構を備えてなる請求項1,請求項2,請求項3または請求項4に記載の搬送据付装置。
【請求項6】
上記連結機構が、
上記台部を挟んで上記挟持体に対向した位置に設けられる受部材と上記挟持体とを貫通して連結するボルトと、
このボルトに螺装されて回動時に上記受部材および上記挟持体を締め付けるまたは締め付けを解除する操作ナットとを備えてなる請求項5に記載の搬送据付装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−158248(P2012−158248A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19363(P2011−19363)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】