説明

搬送装置、搬送方法、描画装置、及び描画方法

【課題】搬送される媒体の搬送方向に略直交する方向における位置が、所定の位置からずれることを抑制することができる搬送装置、搬送方法、描画装置、及び描画方法を提供する。
【解決手段】搬送装置は、媒体に当接して搬送力を伝達する搬送力伝達手段を備え、搬送力によって規定される方向に媒体を搬送する搬送装置であって、搬送力伝達手段は、駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、回動軸まわりに第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、大径部の、回動軸の軸方向における位置を移動させる大径部移動手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、描画対象物などの媒体を搬送して描画領域などの所定の位置に供給する搬送装置、及び搬送方法、当該搬送装置又は搬送方法を用いて描画対象物を描画位置に供給し、供給された描画対象物の所望の位置に液状体を配置することで、描画対象物に画像などを描画する描画装置、及び描画方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液状体を液滴として吐出し、任意の位置に着弾させることによって、所定の量の液状体を所定の位置に精度よく配置する液状体吐出装置が知られている。当該液状体吐出装置を用いて、被描画媒体の被描画面における所定の位置に液状体を配置することで、画像などの所定の形状を描画する描画装置が知られている。
このような描画装置においては、被描画媒体を、描画装置における所定の位置に正確に供給することが必要である。しかし、被描画媒体が供給される際に、微小量ではあるが、蛇行する場合があった。被描画媒体が蛇行することに起因して、描画実施位置において、被描画媒体の供給方向と交差する方向における被描画媒体の位置が、描画装置に対して、規定された位置からずれる可能性があった。当該位置ずれが、被描画媒体を搬送するたびに、不規則に発生することで、画像の形状がくずれるなど、描画品質の低下をきたす可能性があった。
【0003】
特許文献1には、弾性円筒体よりなるロール胴およびロール胴内壁を支持する加圧室をそなえ、加圧室は、隔壁で区画された複数室と、各室内に充填する流体の圧力調整手段とからなるクラウン可変式搬送ロールが開示されている。特許文献1に開示された装置は、機構が簡単で装置スペースをとらず、またクラウン量を変化させる際の応答性が高くかつその変化量の大きな搬送ロールの提案を目的としている。
特許文献2には、ウエブの蛇行検知部、電空レギュレータ、電空レギュレータの制御配管が一方の隔室に接続されたエアーシリンダ、エアーシリンダのピストンに連結された蛇行修正用ローラ、エアーシリンダの他方の隔室に連結された圧縮空気供給源からなるウエブ蛇行修正装置が開示されている。特許文献2に開示された装置は、当該構成によって、エアーシリンダの正確制御によりウエブの蛇行修正を正確且つ迅速に行う安価なウエブ蛇行修正装置の提供を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−20420号公報
【特許文献2】特開平7−137898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置においては、クラウン形状の最大径位置は、複数室の位置によって予め定まってしまうため、最大径位置を必ずしも任意の位置に移動することはできない。したがって、蛇行に対応して補正する際には必ずしも適切な補正量が得られないという課題があった。
特許文献2に開示されている装置においては、蛇行修正用ローラをウエブの流動方向と交差する方向に移動する必要がある。このため、流動方向と交差する方向に、蛇行修正用ローラ全体を動かすことができる動力が必要である。当該力はウエブを流動させる力にくらべて大きいため、強力な駆動源が必須となるという課題があった。また、重い蛇行修正用ローラ全体を動かすことから、応答速度が充分ではない可能性が高いという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかる搬送装置は、媒体に当接して搬送力を伝達する搬送力伝達手段を備え、前記搬送力によって規定される方向に前記媒体を搬送する搬送装置であって、前記搬送力伝達手段は、駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、前記大径部の、前記回動軸の軸方向における位置を移動させる大径部移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本適用例にかかる搬送装置によれば、搬送力伝達手段における外径が第1ローラー体より大きい部分である大径部の、回動軸の軸方向における位置を移動させることができる。搬送力伝達手段は、大径部の外径が他の部分より大きい、いわゆるクラウンローラーである。クラウンローラーによって駆動されるベルトなどは、駆動方向に直角な方向において、その中心部分がクラウン部で駆動される位置に誘導される。搬送力伝達手段を用いて搬送される媒体は、搬送方向に直交する方向において、当該方向おける媒体の中心部分が大径部に当接して搬送される位置に誘導されて搬送される。本適用例にかかる搬送装置によれば、大径部移動手段によって、大径部の、回動軸の軸方向における位置を移動させることが可能である。このため、媒体を搬送する際に、搬送方向に直交する方向における媒体の位置を調整することができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかる搬送装置は、前記媒体の面方向に略平行であり、前記媒体の搬送方向に略直交する方向における、前記媒体の端の位置を検出する媒体位置検出手段と、前記媒体位置検出手段の検出結果に基づいて前記大径部移動手段を制御して、前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を制御する位置制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この搬送装置によれば、媒体位置検出手段によって、搬送方向に略直交する方向における媒体の端の位置を検出することができる。このため、搬送される媒体が蛇行した場合には、媒体の端の位置ずれとして検出することができる。媒体位置検出手段の検出結果に基づいて、位置制御手段を制御することによって、大径部の回動軸方向における位置を制御することで、蛇行による位置ずれを補正することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかる搬送装置は、前記第1ローラー体が、略同じ外径の円柱形状を有し、前記回動軸まわりに一体に回動可能な2個の副ローラー体を備え、前記第2ローラー体は、前記2個の副ローラー体のそれぞれの副ローラー体の間に配設されており、前記回動軸まわりに、前記副ローラー体と一体に回動可能であり、前記回動軸の軸方向に、前記副ローラー体に対して相対移動可能であり、前記大径部移動手段は、前記第2ローラー体を、前記副ローラー体に対して、前記回動軸の軸方向に相対移動させるとともに、任意の位置に保持することが好ましい。
【0012】
この搬送装置によれば、2個の副ローラー体の間に第2ローラー体が配設されており回動軸まわりに一体に回動する。すなわち、2個の副ローラー体と第2ローラー体とで、いわゆるクラウンローラーが形成されている。大径部移動手段によって、第2ローラー体が回動軸の軸方向に相対移動させられることで、クラウンローラーにおけるクラウン部を回動軸の軸方向に移動させることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかる搬送装置は、前記第1ローラー体が、略円柱形状を有し、外周壁の周方向に、全周にわたって形成された複数の溝部を有し、前記第2ローラー体は、環形状の中空部と環形状の外形形状とを有する複数の環状部材を備え、前記複数の環状部材のそれぞれの環状部材は、ゴム状弾性体で形成されており、前記複数の溝部のそれぞれの溝部に勘合しており、前記大径部移動手段は、前記中空部に接続されており、前記中空部内の圧力をそれぞれの前記環状部材ごとに調整可能であることが好ましい。
【0014】
この搬送装置によれば、環状部材は、ゴム状弾性体で形成されており、環形状の中空部と環形状の外形形状とを有しており、中空部内の圧力を、大径部移動手段によって調整可能である。この構成により、中空部内の圧力を調整することによって、外形形状の外径を変えることができる。第1ローラー体の溝に勘合した環状部材の外径を変えることで、円柱形状の第1ローラー体からの、環状部材の突出量を変えることができる。円柱形状の第1ローラー体から環状部材が突出していることで、いわゆるクラウンローラーが形成されている。当該クラウンローラーは、それぞれの環状部材がクラウン部のように機能することによる作用を媒体に及ぼすような機能を有する。複数の環状部材が第1ローラー体から突出していることで、複数の環状部材のそれぞれの環状部材がクラウン部のように機能することによる作用が合成された作用を媒体に及ぼすような機能を有する。媒体の搬送方向に略直交する方向における位置は、それぞれの環状部材が存在することによって媒体に加えられる力の合力によって定まる位置となる。環状部材ごとに中空部内の圧力を調整することによって環状部材ごとに第1ローラー体からの突出量を調整することで、媒体の搬送方向に略直交する方向における位置を調整することができる。
【0015】
[適用例5]本適用例にかかる搬送方法は、駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、を備える搬送力伝達手段を媒体に当接させることによって搬送力を伝達し、前記搬送力によって規定される方向に前記媒体を搬送する搬送手段を用いて、前記媒体を搬送する搬送方法であって、前記搬送力伝達手段における前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を調整する大径部位置調整工程を有することを特徴とする。
【0016】
本適用例にかかる搬送方法によれば、大径部位置調整工程において、搬送力伝達手段における外径が第1ローラー体より大きい部分である大径部の、回動軸の軸方向における位置を調整することができる。搬送力伝達手段は、大径部の外径が他の部分より大きい、いわゆるクラウンローラーである。クラウンローラーによって駆動されるベルトなどは、駆動方向に直角な方向において、その中心部分がクラウン部で駆動される位置に誘導される。搬送力伝達手段を用いて搬送される媒体は、搬送方向に直交する方向において、当該方向おける媒体の中心部分が大径部に当接して搬送される位置に誘導されて搬送される。本適用例にかかる搬送方法によれば、大径部位置調整工程によって、大径部の、回動軸の軸方向における位置を調整することが可能である。このため、媒体を搬送する際に、搬送方向に直交する方向における媒体の位置を調整することができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかる搬送方法は、前記媒体の面方向に略平行であり、前記媒体の搬送方向に略直交する方向における前記媒体の端の位置を検出する媒体位置検出工程をさらに有し、前記大径部位置調整工程では、前記媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、前記大径部の前記回動軸方向における位置を調整することが好ましい。
【0018】
この搬送方法によれば、媒体位置検出工程において、搬送方向に略直交する方向における媒体の端の位置を検出する。搬送される媒体が蛇行した場合には、この媒体位置検出工程によって、媒体の端の位置ずれとして検出することができる。大径部位置調整工程では媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、大径部の回動軸方向における位置を調整する。これにより、蛇行による位置ずれを補正することができる。
【0019】
[適用例7]本適用例にかかる描画装置は、液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、前記被描画媒体に当接することよって搬送力を伝達する搬送力伝達手段を備え、前記搬送力によって規定される方向に前記被描画媒体を搬送する搬送手段と、を備える描画装置であって、前記搬送力伝達手段は、駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、前記大径部の、前記回動軸の軸方向における位置を移動させる大径部移動手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
本適用例にかかる描画装置によれば、搬送手段は、搬送力伝達手段における外径が第1ローラー体より大きい部分である大径部の、回動軸の軸方向における位置を移動させることができる。搬送力伝達手段は、大径部の外径が他の部分より大きい、いわゆるクラウンローラーである。クラウンローラーによって駆動されるベルトなどは、駆動方向に直角な方向において、その中心部分がクラウン部で駆動される位置に誘導される。搬送力伝達手段を用いて搬送される被描画媒体は、搬送方向に直交する方向において、当該方向おける被描画媒体の中心部分が大径部に当接して搬送される位置に誘導されて搬送される。本適用例にかかる描画装置の搬送手段によれば、大径部移動手段によって、大径部の、回動軸の軸方向における位置を移動させることが可能である。このため、被描画媒体を搬送する際に、搬送方向に直交する方向における被描画媒体の位置を調整することができる。
【0021】
[適用例8]上記適用例にかかる描画装置は、前記被描画媒体の面方向に略平行であり、前記被描画媒体の搬送方向に略直交する方向における、前記被描画媒体の端の位置を検出する媒体位置検出手段と、前記媒体位置検出手段の検出結果に基づいて前記大径部移動手段を制御して、前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を制御する位置制御手段と、をさらに備えることが好ましい。
【0022】
この描画装置によれば、媒体位置検出手段によって、搬送方向に略直交する方向における被描画媒体の端の位置を検出することができる。このため、搬送される被描画媒体が蛇行した場合には、被描画媒体の端の位置ずれとして検出することができる。媒体位置検出手段の検出結果に基づいて、位置制御手段によって、大径部の回動軸方向における位置を制御することで、蛇行による位置ずれを補正することができる。
【0023】
[適用例9]本適用例にかかる描画方法は、駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、を備える搬送力伝達手段を被描画媒体に当接させることよって搬送力を伝達し、前記搬送力によって規定される方向に前記被描画媒体を搬送する搬送手段を用いて前記被描画媒体を搬送し、液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段を用いて描画する描画方法であって、前記搬送力伝達手段における前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を調整する大径部位置調整工程を有することを特徴とする。
【0024】
本適用例にかかる描画方法によれば、大径部位置調整工程において、搬送力伝達手段における外径が第1ローラー体より大きい部分である大径部の、回動軸の軸方向における位置を調整することができる。搬送力伝達手段は、大径部の外径が他の部分より大きい、いわゆるクラウンローラーである。クラウンローラーによって駆動されるベルトなどは、駆動方向に直角な方向において、その中心部分がクラウン部で駆動される位置に誘導される。搬送力伝達手段によって搬送される被描画媒体は、搬送方向に直交する方向において、当該方向おける被描画媒体の中心部分が大径部に当接して搬送される位置に誘導されて搬送される。本適用例にかかる描画方法によれば、大径部位置調整工程によって、大径部の、回動軸の軸方向における位置を調整することが可能である。このため、被描画媒体を搬送する際に、搬送方向に直交する方向における被描画媒体の位置を調整することができる。
【0025】
[適用例10]上記適用例にかかる描画方法は、前記被描画媒体の面方向に略平行であり、前記被描画媒体の搬送方向に略直交する方向における前記被描画媒体の端の位置を検出する媒体位置検出工程をさらに有し、前記大径部位置調整工程では前記媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、前記大径部の前記回動軸方向における位置を調整することが好ましい。
【0026】
この描画方法によれば、媒体位置検出工程において、搬送方向に略直交する方向における被描画媒体の端の位置を検出する。搬送される被描画媒体が蛇行した場合には、この媒体位置検出工程によって、被描画媒体の端の位置ずれとして検出することができる。大径部位置調整工程では媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、大径部の回動軸方向における位置を調整する。これにより、被描画媒体が蛇行することによって位置ずれが生じた場合、当該蛇行による位置ずれを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図。(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図。
【図2】(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図。(b)は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図。
【図3】媒体送りローラーの構成、及びフィルムの位置ずれの補正を実施するための構成を示す説明図。
【図4】媒体送りローラーの構成、及びフィルムの位置ずれの補正を実施するための構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、搬送装置、搬送方法、描画装置、及び描画方法について、図面を参照して説明する。本実施形態は、被描画媒体の一例である帯状のフィルムに画像を描画する工程で用いられる描画装置及び描画方法を例に説明する。
【0029】
<描画装置>
最初に、フィルム10に描画する描画装置1の構成について、図1を参照して説明する。図1は、描画装置の概略構成を示す模式図である。図1(a)は、描画装置の概略構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、描画装置の概略構成を示す模式側面図である。フィルム10が、媒体又は被描画媒体に相当する。
【0030】
図1に示すように、描画装置1は、液滴吐出ヘッド20を有するヘッド機構部2と、供給排出機構部3と、機能液供給部(図示省略)と、メンテナンス装置部5と、を備えている。
ヘッド機構部2が備える液滴吐出ヘッド20は、インクジェット方式の液滴吐出ヘッドであり、紫外線硬化性を有する機能液を液滴として、描画対象物に向けて吐出する。供給排出機構部3は、液滴吐出ヘッド20から吐出された液滴を着弾させる描画対象物であるフィルム10を描画位置に配置し、描画した後フィルム10を描画位置から移動させる。機能液供給部は、液滴吐出ヘッド20への機能液の供給を行う。メンテナンス装置部5は、液滴吐出ヘッド20の保守を行う。
描画装置1は、また、これら各機構部等を総括的に制御する描画装置制御部8(図3参照)を備えている。液滴吐出ヘッド20が、吐出手段に相当する。ヘッド機構部2が、描画手段に相当する。機能液が、液状体に相当する。供給排出機構部3が、搬送装置、又は搬送手段に相当する。
【0031】
供給排出機構部3は、供給リール31と、巻取リール32と、吸着ユニット30と、アイドラローラー37と、アイドラローラー38と、Y軸走査機構42と、撮像カメラ52と、を備えている。
Y軸走査機構42は、Y軸ガイドレール42aとY軸スライダー42bと、をそれぞれ1対備えている。吸着ユニット30は、吸着テーブル33と、テーブル台43と、テーブル昇降機構44と、供給ローラー34と、従動ローラー34aと、媒体送りローラー36と、従動ローラー36aと、を備えている。各リール、及び各ローラーは、それぞれ回動軸まわりに回動可能であり、それぞれの回動軸は互いに略平行である。
フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向をX軸方向と表記し、フィルム10の送り方向をY軸方向と表記する。
【0032】
Y軸走査機構42のY軸ガイドレール42aは、吸着テーブル33を挟んでX軸方向の両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、Y軸方向に延在している。Y軸スライダー42bは、Y軸駆動モーターを介して、Y軸ガイドレール42aに、Y軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。
2本のY軸ガイドレール42aのそれぞれに支持されたY軸スライダー42bには、吸着ユニット30のテーブル台43の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれY軸スライダー42bに固定されたテーブル台43は、Y軸スライダー42bに支持されて、2本のY軸ガイドレール42aの間に差渡されている。テーブル台43は、Y軸駆動モーターによって、Y軸ガイドレール42aに沿って、Y軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0033】
吸着ユニット30の吸着テーブル33は、テーブル台43に固定されたテーブル昇降機構44に固定されている。テーブル昇降機構44は、吸着テーブル33を、テーブル台43に対して、X軸方向及びY軸方向と直交する方向であるZ軸方向に昇降可能であって、吸着テーブル33の吸着面33aの位置がZ軸方向の所定の位置である吸着位置、及び吸着位置よりテーブル台43に近い退避位置に保持可能に支持している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aのZ軸方向における所定の位置は、後述する供給ローラー34の外周及び媒体送りローラー36の外周に接する面の位置に略一致する位置である。
【0034】
供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、図示省略した支持部材を介してテーブル台43に固定されている。供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側に配設されている。フィルム10は、Y軸方向に略平行に供給され、供給ローラー34及び従動ローラー34aは、フィルム10の供給方向における吸着テーブル33の上流側に配設されており、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aは、吸着テーブル33の下流側に配設されている。
テーブル台43は、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能に支持されている。吸着テーブル33と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸走査機構42によってY軸方向に摺動自在であって、Y軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0035】
供給排出機構部3が備える供給リール31と、アイドラローラー37と、吸着ユニット30と、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向に沿ってこの順で並んで配置されている。吸着ユニット30において、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとは、Y軸方向に沿ってこの順で並んで配置されている。したがって、供給排出機構部3において、供給リール31と、アイドラローラー37と、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、吸着テーブル33と、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、アイドラローラー38と、巻取リール32とは、Y軸方向に沿って、この順で並んで配置されている。
【0036】
供給リール31には、帯状のフィルム10が巻かれており、供給モーターによって供給リール31が回動させられることによって、フィルム10が繰り出される。
従動ローラー34aは、外周が供給ローラー34の外周に接しており、付勢装置によって、供給ローラー34に押し付けられている。供給ローラー34は供給モーターによって回動させられ、供給ローラー34に当接している従動ローラー34aは、供給ローラー34に従って回動する。供給リール31から供給されたフィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に挟まれて、従動ローラー34aによって供給ローラー34に押し付けられており、供給ローラー34の回動による外周の回動長さに略同等の長さが供給される。
【0037】
アイドラローラー37は、回動軸が軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。アイドラローラー37は、フィルム10における、供給リール31と、供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分に、当該付勢力によって、当接している。アイドラローラー37が付勢された状態で当接することで、供給リール31とアイドラローラー37との間、及びアイドラローラー37と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、供給ローラー34と従動ローラー34aとの間に供給されて挟まれる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、供給ローラー34におけるフィルム10の供給速度と、供給リール31におけるフィルム10の繰り出し速度との差によって、供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー37の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による供給リール31と供給ローラー34及び従動ローラー34aとの間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0038】
従動ローラー36aは、外周が媒体送りローラー36の外周に接しており、付勢装置によって、媒体送りローラー36に押し付けられている。媒体送りローラー36は媒体送りモーターによって回動させられ、媒体送りローラー36に当接している従動ローラー36aは、媒体送りローラー36に従って回動する。供給ローラー34の回動によって供給されたフィルム10は、媒体送りローラー36と従動ローラー36aとの間に挟まれて、従動ローラー36aによって媒体送りローラー36に押し付けられている。これにより、媒体送りローラー36の回動による外周の回動長さに略同等の長さが送られる。
【0039】
媒体送りローラー36による送り量は、供給ローラー34による供給量より多く設定されている。媒体送りモーターから媒体送りローラー36への動力伝達機構にはトルク制御機構が組み込まれている。媒体送りローラー36において供給ローラー34より早く送ることができるフィルム10は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分が、トルク制御機構によって制御されたトルクに応じた張力で張られる。
媒体送りローラー36は、外径がローラー部361(図3参照)の外径より大きいクラウン部材363(図3参照)を備えている。クラウン部材363を回動軸の軸方向(X軸方向)に移動することによって、フィルム10の供給ローラー34と媒体送りローラー36との間の部分の、X軸方向の位置ずれを補正する。媒体送りローラー36の構成の詳細、及びフィルム10の位置ずれの補正については、後述する。媒体送りローラー36が、搬送力伝達手段に相当する。
【0040】
フィルム10における供給ローラー34と媒体送りローラー36との間で張られた部分には、吸着テーブル33の吸着面33aが臨んでいる。上述した吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aの位置は、媒体送りローラー36の外周及び供給ローラー34の外周に接する面の位置に略一致している。吸着位置に位置する吸着テーブル33の吸着面33aは、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間に張られたフィルム10に、描画装置1の設計値では概ね接している。
【0041】
吸着テーブル33は、吸着面33aにフィルム10を吸着する。吸着面33aは平坦な面であり、フィルム10における吸着面33aに吸着された部分は平坦な状態に維持される。
吸着方法としては、大気吸引装置を設けて負圧によって吸着する方法や、帯電及び除電装置を設けて静電気によって吸着する方法などを用いることができる。
【0042】
巻取リール32は、巻取モーターによって回動させられる。媒体送りローラー36から送り出されたフィルム10は、回動する巻取リール32に巻き取られる。
アイドラローラー38は、回動軸が回動軸の軸方向に交差する方向に揺動可能であり、揺動方向の一方に付勢されている。フィルム10における、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aと、巻取リール32との間の部分に、アイドラローラー38が付勢された状態で当接することで、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとアイドラローラー38との間、及びアイドラローラー38と巻取リール32との間の部分が、略弛みなく張られている。これにより、フィルム10は、巻取リール32に巻き取られる際の状態が略平坦に維持され易くなっている。また、媒体送りローラー36におけるフィルム10の送り速度と、巻取リール32におけるフィルム10の巻取り速度との差によって、媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量が変動する。しかし、弛み量の変動に追従してアイドラローラー38の位置が変わることで、略弛みなく張られた状態が維持される。吸着ユニット30の移動による媒体送りローラー36と巻取リール32との間の部分の弛み量の変動についても、同様にして、略弛みなく張られた状態が維持される。
【0043】
このような状態で、フィルム10は、供給リール31から巻取リール32まで送られ、途中の吸着テーブル33に吸着された部分に描画が実施される。フィルム10が送られる方向は、互いに略平行である各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に略直交する方向である。各リール、及び各ローラーの回動軸の軸方向に平行な方向がX軸方向と表記する方向であり、フィルム10の送り方向がY軸方向と表記する方向である。
【0044】
ヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11と、硬化ユニット6と、を備えている。
X軸走査機構11は、X軸ガイドレール11aとX軸スライダー11bと支持柱台11dとを、それぞれ1対備えており、さらにガイドレール支持柱11cを4本備えている。
一対の支持柱台11d,11dは、X軸方向において吸着テーブル33を挟んで両側にそれぞれ1個ずつ配設されており、上述した一対のY軸ガイドレール42a,42aを間に挟む位置に配設されている。一方のY軸ガイドレール42aと支持柱台11dとの間には、メンテナンス装置部5が配設されている。
【0045】
2本のガイドレール支持柱11cが、1個の支持柱台11dの上に、支持柱台11dのY軸方向の両端において、それぞれ1本ずつ立設されている。1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの供給リール31の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。もう1個のX軸ガイドレール11aは、支持柱台11dの巻取リール32の側の端にそれぞれ立設されたガイドレール支持柱11cに差渡されて、吸着テーブル33の上方で、X軸方向に延在している。
【0046】
X軸スライダー11bは、X軸駆動モーターを介して、X軸ガイドレール11aに、X軸方向に摺動自在であって、任意の位置に保持可能に支持されている。2本のX軸ガイドレール11aのそれぞれに支持されたX軸スライダー11bには、ヘッドキャリッジ22のブリッジプレート27の一端がそれぞれ固定されている。両端がそれぞれX軸スライダー11bに固定されたブリッジプレート27は、X軸スライダー11bに支持されて、2本のX軸ガイドレール11aの間に差渡されている。ブリッジプレート27は、X軸駆動モーターによって、X軸ガイドレール11aに沿って、X軸方向に摺動自在であって、X軸方向における任意の位置に保持可能である。
【0047】
ヘッドキャリッジ22は、ブリッジプレート27と、サブキャリッジ28と、ヘッドユニット21とを備えている。サブキャリッジ28は、ブリッジプレート27の略中央に懸吊されている。ヘッドユニット21は、サブキャリッジ28の下に固定されている。ヘッドユニット21が備える液滴吐出ヘッド20は、吐出ノズル24(図2参照)が形成されたノズル基板25(図2参照)が吸着テーブル33の吸着面33aが臨む状態で保持されている。
【0048】
供給排出機構部3が備える撮像カメラ52は、図示省略した支持部材を介して、X軸ガイドレール11aに固定されている。撮像カメラ52は、吸着テーブル33側を撮影可能に設置されており、供給排出機構部3によって送られるフィルム10の、X軸方向における端を含む範囲を撮影可能である。
【0049】
硬化ユニット6は、支持枠(図示省略)と、UVLED(Ultraviolet Light Emitting Diode)61aと、LED筐体62aと、UVLED61bと、LED筐体62bと、を備えている。UVLED61a及びUVLED61bは、紫外線を射出するLEDである。
LED筐体62aは、サブキャリッジ28の主走査方向(X軸方向)側の側面に支持枠を介して固定されている。LED筐体62aには、UVLED61aが、吸着面33aの側に紫外線を射出する状態で固定されている。UVLED61b及びLED筐体62bは、X軸方向(主走査方向)における、UVLED61a及びLED筐体62aの反対側で、UVLED61a及びLED筐体62aと同様に、サブキャリッジ28の側面に固定されている。すなわち、硬化ユニット6は、X軸方向(主走査方向)において、ヘッドユニット21を挟んで両側に、ヘッドユニット21に関して略対称な状態で、配設されている。硬化ユニット6は、X軸走査機構11によって、ヘッドユニット21と一体に、主走査方向に移動させられる。
【0050】
X軸走査機構11によってヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20をX軸方向に走査させ、Y軸走査機構42によってフィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分をY軸方向に走査させる。これにより、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24を臨ませることができる。同様に、UVLED61a及びUVLED61bを、フィルム10における吸着テーブル33に吸着保持された部分の略全面に対して、臨ませることができる。
X軸走査機構11が、主走査手段に相当する。Y軸走査機構42が、副走査手段に相当する。
【0051】
吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10の描画対象部分を、Y軸方向の吐出位置まで移動させて停止させ、ヘッドユニット21のX軸方向の移動に同調させて、描画用の機能液を液滴として吐出させる。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、吐出されて描画対象部分に着弾させられた機能液に紫外線を照射する。
【0052】
ヘッドユニット21をX軸方向に移動させる主走査と、吸着テーブル33に吸着保持されたフィルム10をY軸方向に移動させる改行(副走査)とを制御することにより、吸着テーブル33の吸着面33aに吸着されたフィルム10上の任意の位置にヘッドユニット21を対向させる。それと共に、ヘッドユニット21の液滴吐出ヘッド20から吐出した機能液の液滴を着弾させることで、所望する描画などを行うことが可能である。並行して、ヘッドユニット21に並設された硬化ユニット6から、画像を構成する機能液に紫外線を照射して略硬化させることで、描画された画像などを略固定することが可能である。
ヘッド機構部2とY軸走査機構42とが、描画手段に相当する。
【0053】
<液滴吐出ヘッド、及びヘッドユニット>
次に、液滴吐出ヘッド20及びヘッドユニット21について、図2を参照して説明する。図2は、液滴吐出ヘッド及びヘッドユニットの概略構成を示す図である。図2(a)は、液滴吐出ヘッドの概略構成を示す外観斜視図であり、図2(b)は、ヘッドユニットの概略構成を示す平面図である。図2に示したX軸、Y軸、及びZ軸の軸方向は、ヘッドユニット21が描画装置1に装着された状態において、図1に示したX軸、Y軸、及びZ軸の軸方向と一致している。
【0054】
図2(a)に示したように、液滴吐出ヘッド20は、ノズル基板25を備えている。ノズル基板25には、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aが2列形成されている。吐出ノズル24から機能液を液滴として吐出し、対向する位置にある描画対象物などに着弾させることで、当該位置に機能液を配置する。ノズル列24Aは、液滴吐出ヘッド20が描画装置1に装着された状態で、図1に示したY軸方向に延在している。ノズル列24Aにおいて吐出ノズル24は等間隔のノズルピッチで並んでおり、2列のノズル列24A間で、吐出ノズル24の位置がY軸方向に半ノズルピッチずれている。したがって、液滴吐出ヘッド20としては、Y軸方向に半ノズルピッチ間隔で機能液の液滴を配置することができる。
【0055】
図2(b)に示したように、ヘッドユニット21は、ユニットプレート23と、ユニットプレート23に搭載された9個の液滴吐出ヘッド20と、を有している。液滴吐出ヘッド20は、図示省略したヘッド保持部材を介してユニットプレート23に固定されている。固定された液滴吐出ヘッド20は、ヘッド本体がユニットプレート23に形成された孔(図示省略)に遊嵌して、ノズル基板25が、ユニットプレート23の面より突出した位置に位置している。図2(b)は、ノズル基板25の側から見た図である。9個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向に分かれて、それぞれ3個ずつの液滴吐出ヘッド20を有するヘッド組20Aを3群、形成している。それぞれの液滴吐出ヘッド20のノズル列24Aは、ヘッドユニット21が描画装置1に取り付けられた状態において、Y軸方向に延在している。
【0056】
一つのヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において、互いに隣り合う液滴吐出ヘッド20の、一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方の液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。ヘッド組20Aが有する3個の液滴吐出ヘッド20において、全ての吐出ノズル24のX軸方向の位置を同じにすると、吐出ノズル24は、Y軸方向に半ノズルピッチの等間隔で並ぶ。すなわち、X軸方向の同じ位置において、それぞれの液滴吐出ヘッド20が有するそれぞれのノズル列24Aを構成する吐出ノズル24から吐出された液滴は、設計上では、Y軸方向に等間隔に並んで一直線上に着弾する。
【0057】
一つのヘッド組20Aが備える3個の液滴吐出ヘッド20が有する6列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列は、例えば180個の6倍、1080個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約75.5mmである。液滴吐出ヘッド20は、Y軸方向において互いに重なるため、X軸方向に階段状に並んでヘッド組20Aを構成している。
【0058】
ヘッドユニット21が有する3つのヘッド組20Aは、それぞれが有する1本のノズル列とみなせるノズル列が、Y軸方向において、ノズル列24Aの半ノズルピッチずれて位置する位置に、配設されている。言い換えると、それぞれのヘッドユニット21は、互いに隣り合うヘッド組20Aを構成する液滴吐出ヘッド20の、一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24に対して、もう一方のヘッド組20Aにおける液滴吐出ヘッド20の端の吐出ノズル24が、Y軸方向において、半ノズルピッチずれた位置に、配設されている。
【0059】
一つのヘッドユニット21が備える3つのヘッド組20Aにおける9個の液滴吐出ヘッド20が有する18列のノズル列24Aは、1本のノズル列として扱うこともできる。当該ノズル列を「ユニットノズル列240A」と表記する。ユニットノズル列240Aは、例えば180個の18倍、3240個の吐出ノズル24を有し、Y軸方向におけるノズルピッチは、70μmであり、Y軸方向の両端の吐出ノズル24の中心間距離(ノズル列長さ)は、約226.7mmである。即ち、一つのヘッドユニット21の吐出ノズル24から一滴ずつ吐出させて、X軸方向が同じ位置になるように着弾させると、3240個の点が70μmのピッチ間隔で連なる直線が形成される。
【0060】
<媒体送りローラー>
次に、媒体送りローラー36、及び媒体送りローラー36を用いるフィルム10の位置ずれの補正について、図3を参照して説明する。図3は、媒体送りローラーの構成、及びフィルムの位置ずれの補正を実施するための構成を示す説明図である。図3に示したX軸の軸方向は、媒体送りローラー36が描画装置1に取り付けられた状態において、図1に示したX軸の軸方向と一致している。
【0061】
図3に示すように、媒体送りローラー36は、ローラー部361と、ローラー部362と、クラウン部材363と、係止軸364と、クラウンモーター365と、ボールねじ367と、ねじ軸受371と、ねじ軸受372と、を備えている。
【0062】
ローラー部361とローラー部362とは、略円柱形状の外形形状を有している。クラウン部材363は、円柱形状の軸方向における中央部が端部に比べて径が大きくなっており、略樽型の形状を有している。クラウン部材363の両側の端の外径は、ローラー部361及びローラー部362の外径と略同じである。クラウン部材363の中央部は、ローラー部361及びローラー部362の外径と比べて、径が大きくなっている。
ローラー部361とクラウン部材363とローラー部362とは、円柱形状と樽型形状との中心軸が同軸になる相対位置で、この順で並んでいる。ローラー部361とクラウン部材363とローラー部362とで共通の軸である、円柱形状又は樽型形状の中心軸を、送りローラー軸と表記する。
【0063】
係止軸364は、一端がローラー部361に、他の一端がローラー部362に、それぞれ固定されている。媒体送りローラー36は、複数の係止軸364を備えており、ローラー部361とローラー部362とは、それぞれに一端が固定された複数の係止軸364を介して、一体にされている。係止軸364の軸方向は、送りローラー軸の軸方向と同一である。クラウン部材363は、複数の係止軸364に、軸方向に摺動自在に係止されており、複数の係止軸364に係止されることで、周方向の相対移動が止められている。クラウン部材363は、ローラー部361とローラー部362との間で、送りローラー軸の軸方向(図3にaで示した矢印の方向)に移動可能である。
ローラー部361とローラー部362とは、互いに接続された反対側の端を回動可能に支持されており、ローラー部361は図示省略した媒体送りモーターに接続されている。媒体送りモーターによって、ローラー部361とクラウン部材363とローラー部362とが、送りローラー軸の軸まわりに、一体に回動させられる。送りローラー軸が、媒体送りローラー36の回動中心軸であり、上述したように、媒体送りローラー36の回動中心軸の軸方向は、X軸方向である。
【0064】
ボールねじ367は、ボールねじ軸368とボールねじナット369とを備えている。ボールねじナット369は、クラウン部材363の中心部分に固定されている。ボールねじナット369には、ボールねじ軸368が螺合している。ボールねじ軸368は両端をそれぞれ、ねじ軸受371又はねじ軸受372に、軸まわりに回動自在であって、軸方向の移動を禁止されて軸止されている。ねじ軸受371はローラー部361に、ねじ軸受372はローラー部362に、それぞれ固定されており、ボールねじ軸368は、軸方向が複数の係止軸364の軸方向と平行に支持されている。
【0065】
ボールねじ軸368が回動させられると、ボールねじナット369が、ボールねじ軸368の軸方向に移動させられる。ボールねじ軸368の軸方向は送りローラー軸の軸方向であり、ボールねじナット369はクラウン部材363に固定されており、クラウン部材363は送りローラー軸の軸方向に移動可能に支持されている。このため、ボールねじ軸368が回動させられることによって、クラウン部材363が、送りローラー軸の軸方向に移動させられる。
【0066】
クラウンモーター365は、ローラー部361の内部に固定されている。クラウンモーター365の出力軸366は、ボールねじ軸368に接続されている。クラウンモーター365を駆動させることで、ボールねじ軸368を回動させて、ボールねじナット369を移動させることができる。すなわち、クラウンモーター365を駆動させることで、ボールねじナット369を移動させて、クラウン部材363を移動させることができる。また、クラウンモーター365を停止させて、停止状態を維持させることで、クラウン部材363のローラー部361及びローラー部362に対する位置を維持させることができる。
ローラー部361とローラー部362との、それぞれが副ローラー体に相当し、ローラー部361とローラー部362とが、第1ローラー体に相当する。クラウン部材363が、第2ローラー体に相当する。クラウン部材363の中央部の径が大きくなっている部分が、大径部に相当する。ボールねじ367とクラウンモーター365とが、大径部移動手段に相当する。
【0067】
クラウンモーター365は、描画装置制御部8が備えるクラウン位置制御部81と電気的に接続されている。クラウンモーター365は、クラウン位置制御部81によって制御されて、駆動させられる。
【0068】
供給排出機構部3が備える撮像カメラ52も、クラウン位置制御部81と電気的に接続されている。上述したように、撮像カメラ52は、供給排出機構部3によって送られるフィルム10の、X軸方向における端を含む範囲を撮影可能である。吸着テーブル33がヘッドユニット21に臨む位置に位置している状態では、撮像カメラ52は、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間で張られた状態のフィルム10の、X軸方向における端を撮影可能である。
【0069】
供給ローラー34と媒体送りローラー36とを駆動させてフィルム10を送る際には、クラウン位置制御部81は、撮像カメラ52によって、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間で張られた状態のフィルム10の、X軸方向における端を撮影する。撮影された画像から、フィルム10の端の位置を取得する。取得した端の位置を基準位置と比較して、フィルム10の蛇行などによるX軸方向の位置ずれの有無を判定する。
位置ずれが生じていた場合には、フィルム10の位置を補正する。フィルム10の位置の補正は、クラウン部材363のX軸方向における位置を調整することによって実施する。上述したように、クラウンモーター365を駆動させ、ボールねじ軸368を介してクラウン部材363を移動させる。位置ずれ量に対するクラウン部材363の適切な位置は、実験などによって、搬送される部材ごとに、求めておくことが好ましい。
撮像カメラ52が、媒体位置検出手段に相当する。クラウン位置制御部81が、位置制御手段に相当する。
【0070】
<他の媒体送りローラー>
次に、媒体送りローラー36とは異なる媒体送りローラー380、及び媒体送りローラー380を用いるフィルム10の位置ずれの補正について、図4を参照して説明する。図4は、媒体送りローラーの構成、及びフィルムの位置ずれの補正を実施するための構成を示す説明図である。図4に示したX軸の軸方向は、媒体送りローラー380が描画装置1と同様の描画装置に取り付けられた状態において、図1に示したX軸の軸方向と一致している。
【0071】
図4に示すように、媒体送りローラー380は、ローラー部381と、クラウン環383と、クラウン環384と、を備えている。
ローラー部381は、円柱形状の外形形状を有している。円柱の外径は、媒体送りローラー36のローラー部361及びローラー部362の外径と略同等である。ローラー部381には、ローラー溝382と、給排気流路389と、が形成されている。
ローラー溝382は、円柱形状の側面に、周方向に円柱を一周して形成されている。ローラー部381には、2本のローラー溝382が、形成されている。2本のローラー溝382は、ローラー部381の軸方向における中心位置に関して互いに対称な位置に、それぞれ形成されている。
給排気流路389は、気体が流動可能な流路であり、ローラー部381の内部に形成されている。給排気流路389は、両端が、ローラー溝382の底又はローラー部381の端面にそれぞれ開口している。給排気流路389は、2本のローラー溝382のそれぞれに連通する給排気流路389がそれぞれ1本、形成されている。
【0072】
クラウン環383及びクラウン環384は、ゴム状弾性体で構成されており、環形状を有し、内部に環形状の中空部385又は中空部386が形成されている。クラウン環383及びクラウン環384は、ローラー溝382に勘合している。
ローラー溝382に勘合したクラウン環383及びクラウン環384の、ローラー溝382の底に開口した給排気流路389の開口に対応する位置には、中空部385又は中空部386に連通する接続孔が形成されている。接続孔と給排気流路389とは、図示省略した中継部材を介して接続されており、中空部385又は中空部386と、給排気流路389とが、連通している。
【0073】
給排気流路389のもう一端は、ローラー部381の端面において、接続部が回動可能な接続部材を介して、圧力管388の一端に接続されている。圧力管388のもう一方の端は、圧力ポンプ387に接続されている。
【0074】
圧力ポンプ387から、圧力管388及び給排気流路389を介して、中空部385又は中空部386に圧縮気体を送ることで、中空部385又は中空部386内の圧力を高くすることができる。中空部385又は中空部386内の圧力を高くすることで、クラウン環383又はクラウン環384を膨張させて、環を大きくすることができる。クラウン環383及びクラウン環384は、ローラー溝382に勘合しており、環の内径はローラー溝382の底に当たって規制されるため、環の外径が大きくなる。環の外径が大きくなることで、クラウン環383及びクラウン環384の外周は、ローラー部381の円柱面より突出する。
ローラー部381が、第1ローラー体に相当する。ローラー溝382が、溝部に相当する。クラウン環383及びクラウン環384が、第2ローラー体に相当し、クラウン環383とクラウン環384とのそれぞれが、環状部材に相当する。圧力ポンプ387が、大径部移動手段に相当する。
【0075】
圧力ポンプ387は、描画装置制御部108が備えるクラウン環制御部82と電気的に接続されている。圧力ポンプ387は、クラウン環制御部82によって制御されて、駆動させられる。
【0076】
供給排出機構部3が備える撮像カメラ52も、クラウン環制御部82と電気的に接続されている。上述したように、撮像カメラ52は、供給排出機構部3によって送られるフィルム10の、X軸方向における端を含む範囲を撮影可能である。吸着テーブル33がヘッドユニット21に臨む位置に位置している状態では、撮像カメラ52は、供給ローラー34と媒体送りローラー380との間で張られた状態のフィルム10の、X軸方向における端を撮影可能である。
【0077】
供給ローラー34と媒体送りローラー380とを駆動させてフィルム10を送る際には、クラウン環制御部82は、撮像カメラ52によって、供給ローラー34と媒体送りローラー380との間で張られた状態のフィルム10の、X軸方向における端を撮影する。撮影された画像から、フィルム10の端の位置を取得する。取得した端の位置を基準位置と比較して、フィルム10の蛇行などによるX軸方向の位置ずれの有無を判定する。位置ずれが生じていた場合には、フィルム10の位置を補正する。フィルム10の位置の補正は、クラウン環383及びクラウン環384の環の外径を調整することによって実施する。位置ずれ量に対するクラウン環383及びクラウン環384の環の外径の適切な値は、実験などによって、搬送される部材ごとに、求めておくことが好ましい。
撮像カメラ52が、媒体位置検出手段に相当する。クラウン環制御部82が、位置制御手段に相当する。
【0078】
ローラー部381の円柱面からクラウン環383又はクラウン環384の外周が突出していることで、いわゆるクラウンローラーが形成される。当該クラウンローラーは、ローラー部381の円柱面から突出したクラウン環383又はクラウン環384がクラウン部のように機能することによる作用をフィルム10に及ぼすような機能を有する。媒体送りローラー380は、クラウン環383又はクラウン環384がクラウン部のように機能することによる作用を合成した作用をフィルム10に及ぼすような機能を有する。
【0079】
例えば、図4(a)に示したクラウン環383及びクラウン環384のように、中空部385及び中空部386内の圧力を同様に高くすることで、クラウン環383及びクラウン環384の環の外周を、ローラー部381の円柱面から均等に突出させる。この場合、媒体送りローラー380は、クラウン部の外径が最大の部分が、クラウン環383とクラウン環384との中央に位置するクラウンローラーのように機能する。
【0080】
例えば、図4(b)に示したクラウン環383及びクラウン環384のように、中空部385内と中空部386内との圧力を互いに異ならせることで、クラウン環383の環の外径とクラウン環384の環の外径とを互いに異ならせる。これにより、ローラー部381の円柱面からの突出量を、クラウン環383の環の外周とクラウン環384の環の外周とで互いに異ならせる。この場合、媒体送りローラー380は、クラウン環383の環の外周の円柱面からの突出量と、クラウン環384との環の外周の円柱面からの突出量と、を案分した位置に、クラウン部の外径が最大の部分が位置するクラウンローラーのように機能する。
図4(b)に示した例では、クラウン環384の突出量が微小であり、ほとんど、クラウン環383のみが突出した状態である。この場合、媒体送りローラー380は、あたかも、クラウン環383の部分がクラウン部であるクラウンローラーのように機能する。
【0081】
例えば、図4(c)に示したクラウン環383及びクラウン環384のように、中空部385及び中空部386内の圧力を低くすることで、クラウン環383及びクラウン環384の環の外径を、ローラー部381の外径より小さくする。この場合、媒体送りローラー380は、円柱形状の外形を有するローラーとして機能する。
【0082】
搬送される部材の位置ずれ量に対する、クラウン環383及びクラウン環384の環の外径の適切な値は、実験などによって、搬送される部材ごとに、求めておくことが好ましい。
【0083】
以下、実施形態による効果を記載する。本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)媒体送りローラー36は、クラウン部材363と、ローラー部361及びローラー部362を備え、ローラー部361とローラー部362との間に配設されたクラウン部材363の中央部は、ローラー部361及びローラー部362の外径と比べて、径が大きくなっている。この構成により、媒体送りローラー36は、いわゆるクラウンローラーとして機能する。媒体送りローラー36は、搬送されるフィルム10を、フィルム10の幅方向の中心部分がクラウン部材363の中央部に当接する状態で搬送することができる。
【0084】
(2)媒体送りローラー36において、クラウン部材363は、ローラー部361とローラー部362との間で、送りローラー軸の軸方向に移動可能である。この構成により、クラウン部材363を軸方向に移動させることで、フィルム10の幅方向の位置を移動させることができる。これにより、フィルム10の幅方向の位置を、任意の位置に移動させることができる。
【0085】
(3)媒体送りローラー36においては、クラウン部材363を軸方向に移動させることで、フィルム10の幅方向の位置を移動させることができる。媒体送りローラー36のような媒体送りローラーの全体を移動させる構成にくらべて、移動させる物体が小さいため、容易に移動させることができる。また、移動させるための駆動源や移動機構を小型にすることができる。駆動源や移動機構が小型になることで、設置するために必要な領域が抑制され、配置しやすくすることができる。
【0086】
(4)クラウン位置制御部81は、撮像カメラ52によって、供給ローラー34と媒体送りローラー36との間で張られた状態のフィルム10の、X軸方向における端を撮影する。撮影された画像から、フィルム10の端の位置を取得して、所定の位置からのずれの有無を検出することができる。
【0087】
(5)媒体送りローラー380は、ローラー部381と、クラウン環383と、クラウン環384と、を備え、クラウン環383又はクラウン環384の外径を、ローラー部381の外径より大きくすることができる。外径が大きいクラウン環383又はクラウン環384を、ローラー部381より突出させることで、媒体送りローラー380を、クラウン環383又はクラウン環384がクラウン部であるクラウンローラーのように機能させることができる。
【0088】
(6)クラウン部として機能するクラウン環383又はクラウン環384は外径を変えることが可能であり、クラウン部の外径を変えることで、媒体送りローラー380のクラウンローラーとしての特性を変えることができる。フィルム以外の、厚さが異なる部材や、剛性が異なる部材などのように特性が異なる被搬送媒体であっても、被搬送媒体の特性に対応したクラウンローラーを形成することができる。
【0089】
(7)クラウンローラーとしての媒体送りローラー380におけるクラウン部の位置は、クラウン部のように機能するクラウン環383の外径とクラウン環384の外径との関係によって定まる。クラウン環383の外径とクラウン環384の外径とを調整することで、クラウンローラーとしての媒体送りローラー380におけるクラウン部の位置を調整することができる。
媒体送りローラー380は、搬送されるフィルム10を、フィルム10の幅方向の中心部分が、クラウン環383とクラウン環384とで定まるクラウン部の位置に当接する状態で搬送することができる。
クラウン環383の外径とクラウン環384の外径との関係を調整することで、フィルム10の幅方向における、クラウン環383とクラウン環384とで定まるクラウン部の位置を移動させることができる。
【0090】
(8)フィルム10に描画を実施する際には、被描画領域は、全面が吸着テーブル33に吸着されている。これにより、フィルム10の被描画領域を平坦に維持して、被描画領域に皺ができるなどの平坦な状態が維持されないことに起因して、描画形状精度や描画位置精度などが損なわれることを抑制することができる。
【0091】
(9)フィルム10への描画は、吸着テーブル33によって、被描画領域を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、被描画領域を吸着した吸着テーブル33をY軸方向に移動させることによって実施する。これにより、改行に際しても被描画領域を吸着した状態が維持されるため、改行することに起因して被描画領域が変形することを抑制することができる。改行するための力は直接フィルム10に加えられることはないため、改行するための力によって被描画領域が変形することを実質的になくすることができる。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら好適な実施形態について説明したが、好適な実施形態は、前記実施形態に限らない。実施形態は、要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論であり、以下のように実施することもできる。
【0093】
(変形例1)前記実施形態においては、描画領域の下流側に配設された媒体送りローラー36や媒体送りローラー36と同様に用いられる媒体送りローラー380が、クラウン部の位置が可変のクラウンローラーである搬送力伝達手段であった。しかし、搬送力伝達手段が、描画領域の下流側に配設される搬送用ローラーであることは必須ではない。例えば、供給ローラー34のように、媒体搬送機構において、描画領域の上流側に配設される媒体搬送機構の構成要素であってもよい。
【0094】
(変形例2)前記実施形態においては、撮像カメラ52を用いて供給排出機構部3によって送られるフィルム10の端を含む範囲を撮影することによって、フィルム10の端の位置を検出していた。しかし、媒体位置検出手段が撮像カメラ52のような撮像装置であることは必須ではない。媒体位置検出手段は、フォトインターラプターのようなセンサーを用いても良い。
【0095】
(変形例3)前記実施形態においては、フィルム10への描画は、吸着テーブル33によって、被描画領域を吸着して実施していた。しかし、描画装置が、フィルム10のような媒体を保持する吸着テーブル33のような保持手段を備えることは必須ではない。例えば、供給ローラー34及び従動ローラー34aと、媒体送りローラー36及び従動ローラー36aとの間で張られることによって平坦に維持された部分に描画する構成であってもよい。
【0096】
(変形例4)前記実施形態においては、媒体送りローラー36を備える供給排出機構部3は、描画装置1を構成する装置であって、被描画媒体であるフィルム10を搬送し、保持する装置であった。しかし、搬送される媒体が被描画媒体であることも、搬送力伝達手段を備える搬送装置を備える装置が描画装置であることも、必須ではない。搬送される媒体は、型抜きされてシールなどが形成される連続紙などであってもよい。搬送力伝達手段を備える搬送装置を備える装置は、型抜き装置などであってもよい。
【0097】
(変形例5)前記実施形態においては、描画走査は、吸着テーブル33によって、被描画領域を吸着して実施し、改行は、Y軸走査機構42によって、フィルム10の被描画領域を吸着した吸着テーブル33をY軸方向に移動させることによって実施していた。しかし、被描画媒体を保持した吸着テーブル33のような保持手段を移動させることによって改行を実施することは必須ではない。描画装置は、ヘッドユニット21などの吐出手段を移動させることによって改行を実施する構成であってもよい。
【0098】
(変形例6)前記実施形態においては、描画装置1の供給排出機構部3は、巻取リール32を備えており、描画済みのフィルム10は巻取リール32に巻き取られていた。しかし、描画装置が巻取リールを備えることも、連続媒体の描画済みの部分を巻き取ることも、必須ではない。例えば、切断装置を設け、描画済みの部分を所定の長さに切断する、描画装置の構成、及び描画方法であってもよい。あるいは、型抜き装置を設け、描画済みの連続媒体から製品部分のみを型抜きし、製品以外の部分を切断したり巻き取ったりする、搬送装置又は描画装置の構成、及び搬送方法又は描画方法であってもよい。
【0099】
(変形例7)前記実施形態においては、描画対象として、連続媒体としてのフィルム10を搬送し描画する搬送装置又は描画装置、及び搬送方法又は描画方法を例にして説明したが、描画対象がフィルム10のような連続媒体であることは必須ではない。描画対象は、一枚の描画対象に、保持手段によって吸着保持される被描画領域が1個所ある、いわゆる単票紙のような媒体であってもよい。描画装置は、当該媒体を描画位置に対して供給及び排出できる搬送手段を備える装置であってもよい。
【0100】
(変形例8)前記実施形態においては、描画装置1のヘッド機構部2は、ヘッドキャリッジ22と、X軸走査機構11とを備えていた。当該X軸走査機構11によってヘッドキャリッジ22をX軸方向に走査させ、ヘッドキャリッジ22が備える液滴吐出ヘッド20の吐出ノズル24から機能液を吐出させて、フィルム10に描画していた。しかし、描画装置が吐出ノズルを連続媒体に対して主走査方向に相対移動させる装置を備えることは必須ではない。描画装置は、連続媒体の幅方向の略全体に亘って液滴を吐出可能に吐出ノズルが配設された、いわゆるラインヘッドを備える構成であってもよい。この場合、硬化ユニットは、連続媒体の送り方向において、ラインヘッドの下流側の直近に設けることが好ましい。ラインヘッドの下流側の直近に配設された硬化ユニットから紫外線を照射することで、機能液を、配置された直後に硬化させることができる。
【0101】
(変形例9)前記実施形態においては、描画装置1は硬化ユニット6を備えていたが、描画装置が硬化ユニット6のような硬化手段を備えることは必須ではない。硬化促進を必要とせずに適切な硬化速度が実現できるような機能液を用い、硬化促進は実施しない描画装置であってもよい。
【0102】
(変形例10)前記実施形態においては、機能液の種類については特に記載しなかったが、描画装置においては、色が異なるなど種類の異なる機能液を吐出してもよい。色が異なる複数種類の機能液を吐出することでカラー描画も可能である。機能液の種類は、複数のヘッドユニットを備えてヘッドユニットごとに異ならせてもよいし、ヘッド組ごとに異ならせてもよいし、液滴吐出ヘッドごとに異ならせてもよいし、ノズル列ごとに異ならせてもよい。吐出ノズルごとに機能液を個別に供給できる液滴吐出ヘッドを用いて、吐出ノズルごとに異なる機能液を吐出してもよい。なお、カラー描画を実施するためには、同じ着弾位置に、複数の、例えば色が異なる機能液を着弾させることができる構成のヘッドユニット又は液滴吐出ヘッドを用いたり、走査方法を用いたりすることが好ましい。
【0103】
(変形例11)前記実施形態においては、媒体送りローラー36は、第2ローラー体に相当するクラウン部材363を移動させるための大径部移動手段として、ボールねじ367とクラウンモーター365とを備えていた。クラウン部材363のような第2ローラー体を軸方向に移動させて保持する構成は、他の構成であってもよい。例えば、シャフトモーターのようなリニアモーターなどを用いることができる。
【0104】
(変形例12)前記実施形態においては、描画装置1はヘッドユニット21を1個備えていたが、描画装置が備えるヘッドユニットが1個であることは必須ではない。描画装置が備えるヘッドユニットは、いくつであってもよい。
【0105】
(変形例13)前記実施形態においては、ヘッドユニット21は液滴吐出ヘッド20を9個備えていたが、ヘッドユニットが備える吐出ヘッドが9個であることは必須ではない。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、いくつであってもよい。ヘッドユニットが備える吐出ヘッドは、複数であってもよいし、1個であってもよい。
【0106】
(変形例14)前記実施形態においては、液滴吐出ヘッド20は、多数の吐出ノズル24が略一直線状に並んだノズル列24Aを2列備えていたが、吐出ヘッドが備えるノズル列は何列であってもよい。また、液滴吐出ヘッド20が備える吐出ノズル24は、ノズル列24Aの延在方向において互いの位置がずれていたが、吐出ヘッドは、ノズル列の延在方向において、略同一位置に位置する吐出ノズルを複数備える構成であってもよい。
【0107】
(変形例15)前記実施形態においては、硬化ユニット6は、ヘッドユニット21と一体に移動可能に構成されていた。しかし、硬化促進手段が移動可能であることも、硬化促進手段が吐出手段と一体に移動可能であることも、必須ではない。硬化促進手段を吐出手段とは離して配置する構成であってもよい。
【0108】
(変形例16)前記実施形態においては、搬送力伝達手段としての媒体送りローラー380は、環状部材としてのクラウン環383及びクラウン環384を備えていた。しかし、環状部材を備える搬送力伝達手段が備える環状部材が2個であることは必須ではない。搬送力伝達手段が備える環状部材は、3個以上であってもよい。複数の環状部材は、恰もクラウンローラーのクラウン部のように機能するが、環状部材の数を多くすることで、環状部材によって恰も形成されるクラウン部の位置や形状を、より精密に制御することができる。
【符号の説明】
【0109】
1…描画装置、2…ヘッド機構部、3…供給排出機構部、8…描画装置制御部、10…フィルム、20…液滴吐出ヘッド、21…ヘッドユニット、24…吐出ノズル、24A…ノズル列、31…供給リール、32…巻取リール、33…吸着テーブル、34…供給ローラー、36…媒体送りローラー、52…撮像カメラ、81…クラウン位置制御部、82…クラウン環制御部、108…描画装置制御部、361,362…ローラー部、363…クラウン部材、364…係止軸、365…クラウンモーター、368…ボールねじ軸、369…ボールねじナット、371,372…ねじ軸受、380…媒体送りローラー、381…ローラー部、382…ローラー溝、383,384…クラウン環、385,386…中空部、387…圧力ポンプ、388…圧力管、389…給排気流路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体に当接して搬送力を伝達する搬送力伝達手段を備え、前記搬送力によって規定される方向に前記媒体を搬送する搬送装置であって、
前記搬送力伝達手段は、
駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、
外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、
前記大径部の、前記回動軸の軸方向における位置を移動させる大径部移動手段と、を備えることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
前記媒体の面方向に略平行であり、前記媒体の搬送方向に略直交する方向における、前記媒体の端の位置を検出する媒体位置検出手段と、
前記媒体位置検出手段の検出結果に基づいて前記大径部移動手段を制御して、前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を制御する位置制御手段と、をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記第1ローラー体は、略同じ外径の円柱形状を有し、前記回動軸まわりに一体に回動可能な2個の副ローラー体を備え、
前記第2ローラー体は、前記2個の副ローラー体のそれぞれの副ローラー体の間に配設されており、前記回動軸まわりに、前記副ローラー体と一体に回動可能であり、前記回動軸の軸方向に、前記副ローラー体に対して相対移動可能であり、
前記大径部移動手段は、前記第2ローラー体を、前記副ローラー体に対して、前記回動軸の軸方向に相対移動させるとともに、任意の位置に保持することを特徴とする、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記第1ローラー体は、略円柱形状を有し、外周壁の周方向に、全周にわたって形成された複数の溝部を有し、
前記第2ローラー体は、環形状の中空部と環形状の外形形状とを有する複数の環状部材を備え、前記複数の環状部材のそれぞれの環状部材は、ゴム状弾性体で形成されており、前記複数の溝部のそれぞれの溝部に勘合しており、
前記大径部移動手段は、前記中空部に接続されており、前記中空部内の圧力をそれぞれの前記環状部材ごとに調整可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項5】
駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、を備える搬送力伝達手段を媒体に当接させることによって搬送力を伝達し、前記搬送力によって規定される方向に前記媒体を搬送する搬送手段を用いて、前記媒体を搬送する搬送方法であって、
前記搬送力伝達手段における前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を調整する大径部位置調整工程を有することを特徴とする搬送方法。
【請求項6】
前記媒体の面方向に略平行であり、前記媒体の搬送方向に略直交する方向における前記媒体の端の位置を検出する媒体位置検出工程をさらに有し、
前記大径部位置調整工程では、前記媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、前記大径部の前記回動軸方向における位置を調整することを特徴とする、請求項5に記載の搬送方法。
【請求項7】
液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段と、前記被描画媒体に当接することよって搬送力を伝達する搬送力伝達手段を備え、前記搬送力によって規定される方向に前記被描画媒体を搬送する搬送手段と、を備える描画装置であって、
前記搬送力伝達手段は、
駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、
外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、
前記大径部の、前記回動軸の軸方向における位置を移動させる大径部移動手段と、を備えることを特徴とする描画装置。
【請求項8】
前記被描画媒体の面方向に略平行であり、前記被描画媒体の搬送方向に略直交する方向における、前記被描画媒体の端の位置を検出する媒体位置検出手段と、
前記媒体位置検出手段の検出結果に基づいて前記大径部移動手段を制御して、前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を制御する位置制御手段と、をさらに備えることを特徴とする、請求項7に記載の描画装置。
【請求項9】
駆動源によって回動軸まわりに回動させられる第1ローラー体と、外径が前記第1ローラー体の外径より大きい大径部を有し、前記回動軸まわりに前記第1ローラー体と一体に回動させられる第2ローラー体と、を備える搬送力伝達手段を被描画媒体に当接させることよって搬送力を伝達し、前記搬送力によって規定される方向に前記被描画媒体を搬送する搬送手段を用いて前記被描画媒体を搬送し、液状体を吐出する吐出手段を備え、前記吐出手段から吐出された前記液状体を前記被描画媒体に着弾させることによって、前記液状体を前記被描画媒体に配置して、前記液状体からなる画像を描画する描画手段を用いて描画する描画方法であって、
前記搬送力伝達手段における前記大径部の前記回動軸の軸方向における位置を調整する大径部位置調整工程を有することを特徴とする描画方法。
【請求項10】
前記被描画媒体の面方向に略平行であり、前記被描画媒体の搬送方向に略直交する方向における前記被描画媒体の端の位置を検出する媒体位置検出工程をさらに有し、
前記大径部位置調整工程では前記媒体位置検出工程における検出結果に基づいて、前記大径部の前記回動軸方向における位置を調整することを特徴とする、請求項9に記載の描画方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−46254(P2012−46254A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186920(P2010−186920)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】