説明

搬送装置

【課題】搬送距離が大きく、かつ構造が簡易で低コストな搬送装置を提供する。
【解決手段】第1ベルト23が巻回されてなる第1コンベアを上面に有する固定部2と、第1ベルトの下側部分に固定され第1ベルトから上方に延びる支持部材6と、支持部材に支持されて固定部の上方に配置され、かつ第2ベルトが巻回されてなる第2コンベアを上面に有する第1可動部3と、第2ベルトの上側部分に固定されて第1可動部の上方に配置され、搬送物を載置可能な第2可動部4とを有し、第2ベルトと第1ベルトの対向部分の一部8が互いに固定され、第1可動部は第1ベルトの進退方向に摺動可能であり、第2可動部は第1可動部に対し摺動可能であり、第1可動部が固定部に対して距離L摺動したとき、第2可動部は第1可動部に対して距離2Lだけ摺動し、第2可動部が固定部に対して距離3L摺動する搬送装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品を所定位置から移動運搬する搬送手段として、コンベア、電動又はエアシリンダ、多関節ロボット等が用いられている。しかし、外気を遮断した空間内でガラス基板等の精密部品を搬送する必要がある有機ELディスプレイパネル等の生産工程においては、従来の搬送手段では次のような問題がある。
まず、コンベアは、搬送先まで広範囲に設置する必要があり、生産ライン等の限られたスペースに設置することが難しい。又、有機ELディスプレイパネル等の生産では、搬送先である次工程に搬送装置の一部が残ったままであると、次工程での処理プロセスが搬送装置に施され、搬送装置が前工程に戻った際に前工程での処理に影響を与えることがある。そのため、有機ELディスプレイパネル等の搬送装置は、搬送先に搬送後に搬送装置全体が元の位置に戻る必要があるが、コンベアはこの条件を満足しない。さらに、コンベアのベルトやコロが搬送物に当接してキズ等を生じたり、搬送時の振動が大きいという問題もある。
又、シリンダは、外筒と同じ長さのピストンが進退する構造上、搬送距離が長くなるとシリンダも長くなり、設置スペースが大きくなる。
多関節ロボットは汎用性が高いが、構造が複雑で高価である。
【0003】
このようなことから、不動部から可動部が摺動突出し、可動部上の物品を移動・搬送するコンパクトで簡易な構造が提案されている(特許文献参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2004-238137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した特許文献1記載の技術は、不動部上に可動部を1個以上載置し、可動部を前方に順次繰り出すことで、搬送距離を増やすようになっている。例えば、不動部上に可動部を3個載置した場合、各可動部を繰り出すことで、繰り出し量の3倍の距離を移動(搬送)することができる(特許文献1の図3)。
本発明は、この技術をさらに改良し、2個の可動部を固定部上に載置するだけで、繰り出し量の3倍の距離を移動(搬送)可能な機構を提案するものであり、同じ搬送距離で可動部の個数が特許文献1記載の技術より少なくなるので、構造をさらに簡易にしてコストダウンが図られる。
すなわち本発明は、搬送距離が大きく、かつ構造が簡易で低コストな搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明の搬送装置は、一対のローラ間に第1ベルトが巻回されてなる第1コンベアを上面に有する固定部と、前記第1ベルトの下側部分に固定され、前記第1ベルトから上方に延びる支持部材と、前記支持部材に支持されて前記固定部の上方に配置され、かつ一対のローラ間に第2ベルトが巻回されてなる第2コンベアを上面に有する第1可動部と、前記第2ベルトの上側部分に固定されて前記第1可動部の上方に配置され、搬送物を載置可能な第2可動部とを有し、前記第2ベルトは、前記第1ベルトと平行でかつ前記第1ベルトの上側部分に対向し、その対向部分の一部が互いに固定され、前記第1可動部は、前記第1ベルトの進退方向に沿って前記固定部に対し摺動可能であり、前記第2可動部は、前記第2ベルトの進退方向に沿って前記第1可動部に対し摺動可能であり、前記第1可動部が前記固定部に対し距離Lだけ摺動したとき、前記第2可動部は前記第1可動部に対し距離2Lだけ摺動し、前記第2可動部が前記固定部に対して距離3L摺動可能である。
このような構成とすると、第1ベルトの下側部分をLだけ前進させると第1可動部がLだけ前進し、第1ベルトの上側部分がLだけ後退する。しかしながら、第2ベルトから見ると、第1可動部が相対的に前進した分だけ、第1ベルトと繋がっている第2ベルト下側の後退量が増えて2L(L+L)となる。従って、第2ベルトの上側部分に固定されている第2可動部は、第1可動部に対して2Lだけ前進し、固定部に対しては合計3L(L+2L)だけ前進することになる。
【0007】
前記第2可動部の上面に、別の前記搬送装置の固定部が固定されていてもよい。
このような構成とすると、下側搬送装置の第2可動部上の搬送装置においても上記した第1コンベアの繰り出し量の3倍の移動量が第2可動部に生じるため、合計6倍の移動量を生じさせることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、搬送距離が大きく、かつ構造が簡易で低コストな搬送装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る搬送装置を含む製造ラインの斜視図である。この図において、有機ELディスプレイパネルの製造ラインは、パネルとなるガラス基板100を搬送する搬送チャンバー300と、ドアバルブ500を介して搬送チャンバー300に隣接するプロセスチャンバー400とを備えている。搬送チャンバー300内には本発明の実施形態に係る搬送装置50が配置され、搬送装置50の上部には前工程で所定寸法に切り出したガラス基板100が載置されている。搬送装置50は、搬送チャンバーの出口310からガラス基板100をプロセスチャンバー400に搬送し、プロセスチャンバー400内の基板受け取り機構410に渡すようになっている。そして、プロセスチャンバー400内で基板受け取り機構410上に載置されたガラス基板100に対し、画素や各種膜の成膜や封止等のプロセス処理が施される。
プロセスチャンバー400内では、例えば真空蒸着等が施されるため、ガラス基板100搬送後に搬送装置50はプロセスチャンバー400から搬送チャンバー300内に完全に戻っている必要がある。
【0010】
搬送装置50は、搬送チャンバー300に固定される矩形板状の固定部2と、固定部2の上方に配置される矩形板状の第1可動部3と、第1可動部3の上方に配置される矩形板状の第2可動部4とを備え、第2可動部4上に搬送物(ガラス基板)100が載置されている。
固定部2の上面には長手方向に沿って第1コンベア20が設置され、第1コンベア20の図示しないベルトの下側部分に箱型の支持部材6が固定され、支持部材6は固定部2の上方に延びている。そして、第1可動部3の下面が支持部材6の上面に支持されている。又、固定部2上面には第1コンベア20に沿い、かつ第1コンベア20の両側に第1レール24が配置され、支持部材6の下面が第1レール24上に載置されて第1レール24に沿って摺動可能になっている。
従って、駆動ギヤ320の駆動により、第1コンベア20が固定部2の長手方向に沿って進退すると、第1可動部3が第1コンベア20の進退方向に摺動するようになっている。
【0011】
又、第1可動部3の上面には、第1コンベア20と平行でかつ第1コンベア20の上側にかぶさるように第2コンベア30が設置され、第2コンベア30の図示しないベルトの上側部分に第2可動部4の下面が固定されている。さらに、第1可動部3の上面には第2コンベア30に沿い、かつ第2コンベア30の両側に第2レール34が配置され、第2可動部4の下面が第2レール34上に載置されて第2レール34に沿って摺動可能になっている。
従って、駆動ギヤ320の駆動により、第2コンベア30が第1可動部3の長手方向に沿って進退すると、第2可動部4が第2コンベア30の進退方向に摺動するようになっている。
【0012】
第1コンベア20及び第2コンベア30の進退方向は、搬送チャンバー300からプロセスチャンバー400へのガラス基板100の搬送方向Tに一致するので、第1コンベア20及び第2コンベア30の進退によって第1可動部3及び第2可動部4が摺動し、ガラス基板100が搬送される。又、第1コンベア20及び第2コンベア30が元の位置に戻ると、第2可動部4は完全に搬送チャンバー300内の初期位置に戻り、プロセスチャンバー400内に残らないようになっている。
【0013】
次に、図2を参照して本発明の実施形態に係る搬送装置50の詳細な構成について説明する。図2において、第1コンベア20は、一対のローラ21、22間に第1ベルト23が巻回されてなり、第1ベルト23の下側部分の右端に支持部材6の下面が固定されている。ローラ21、22はそれぞれ支持脚21a、22aに軸支されている。
又、第2コンベア30は、一対のローラ31、32間に第2ベルト33が巻回されてなり、第2ベルト33の下側部分の左端は、固定部材8を介して第1ベルト23の上側部分の左端に互いに固定されている。さらに、第2ベルト33の上側部分の右端は、取付け部材35を介して第2可動部4の下面に固定されている。ローラ31、32はそれぞれ支持脚31a、32aに軸支されている。
なお、第2ベルト33が第1ベルト23に近接して対向するよう、第1可動部3における第2コンベア30の配置部分に矩形状の切り抜き3hが形成され、第2ベルト33の進退を邪魔しないようになっている。
【0014】
第1ベルト23及び第2ベルト33は、例えばスチールベルト、樹脂製ベルトとすることができる。又、第1ベルト23と支持部材6の固定、第2ベルト33と第2可動部4の固定、及び第1ベルト23と第2ベルト33の固定は、ボルト等で行うことができるがこれに限られない。
又、支持部材6は第1ベルト23との固定位置から第1ベルト23の両側端より外側に水平に延びた後、上方に立ち上がるアーム部6aを形成し、アーム部6a上端に第1可動部3の下面が支持されている。従って、支持部材6が第1ベルト2の進退を邪魔しないようになっている。
【0015】
図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。この図において、支持部材6下面の2つの脚6bに凹部が設けられ、この凹部が第1レール24に被さるようになっている。同様に、第2可動部4下面の2つの脚4bに凹部が設けられ、この凹部が第2レール34に被さるようになっている。上記各凹部には、例えばローラ又はベアリングが配置され、各レールとの転がり摩擦を低減し、スムースな摺動を行えるようになっている。
なお、第1ベルト23と第2ベルト33は固定部材8で固定されているので、ローラ21、22のいずれか、又は第1可動部3の側面を駆動ギヤ320で駆動させると、第1ベルト23の進退に応じて第2ベルト33が進退する。従って、ローラ31、32の駆動を制御する必要はない。
【0016】
図4は、第1コンベア20、第2コンベア30の進退に伴って、第1可動部3及び第2可動部4が進退(摺動)する状態を示す工程図である。なお、図4において、左方向への移動を「前進」、右方向への移動を「後退」と適宜称する。
まず、初期位置で、支持部材6が第1コンベア20の右端に位置し、固定部材8が第1コンベア20の左端に位置し、取付け部材35が第2コンベア30の右端に位置している。このときの位置を基準とする(図4(a))。
次に、第1コンベア20を駆動させ、第1ベルト23の下側部分が左にL/2だけ前進するようにする(図4(b))。このとき、第1ベルト23の下側部分の前進につれて支持部材6及び第1可動部3がL/2だけ前進する。一方、第1ベルト23の上側部分は右にL/2だけ後退するので、固定部材8もL/2後退する。しかしながら、第1ベルト23の下側部分の前進につれて固定部材8で固定されている第1可動部3がL/2前進したため、第2ベルト33の上側は元の位置からL(第1可動部3の移動距離の2倍)だけ左に前進することになる。従って、第2ベルト33の上側部分に固定されている取付け部材35(及び第2可動部4)は、Lだけ前進することになる。
【0017】
つまり、第1ベルト23をL/2だけ駆動させると、第1可動部3がL/2前進すると共に、第2ベルト33がLだけ進退することに起因して第2可動部4が第1可動部3上でLだけ相対的に前進するので、第2可動部4は固定部2に対して3/2L(L/2+L)前進することになる。さらに第1ベルト23を駆動量Lだけ駆動すると、上記と同様の議論により、第2可動部4は固定部2に対して3Lだけ前進する(図4(c))。
このように、2個の可動部を固定部上に載置するだけで、最上部の第2可動部は、第1コンベアの繰り出し量(駆動量)Lの3倍の移動(搬送)量が得られる。
【0018】
又、本発明において、第2可動部の上面に、本発明に係る別の搬送装置の固定部を固定してもよい。このようにすると、下側搬送装置の第2可動部上の搬送装置においても上記した第1コンベアの繰り出し量Lの3倍の移動量が第2可動部に生じるため、合計として6倍の移動量を生じさせることができる。さらに、搬送装置を3台以上積層してもよい。
【0019】
本発明は上記した実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る搬送装置を含む製造ラインの斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る搬送装置の構成の斜視図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】第1可動部及び第2可動部が摺動する状態を示す工程図である。
【符号の説明】
【0021】
2 固定部
3 第1可動部
4 第2可動部
6 支持部材
20 第1コンベア
21、22 ローラ
23 第1ベルト
30 第2コンベア
31、32 ローラ
33 第2ベルト
50 搬送装置
100 搬送物(ガラス基板)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のローラ間に第1ベルトが巻回されてなる第1コンベアを上面に有する固定部と、
前記第1ベルトの下側部分に固定され、前記第1ベルトから上方に延びる支持部材と、
前記支持部材に支持されて前記固定部の上方に配置され、かつ一対のローラ間に第2ベルトが巻回されてなる第2コンベアを上面に有する第1可動部と、
前記第2ベルトの上側部分に固定されて前記第1可動部の上方に配置され、搬送物を載置可能な第2可動部とを有し、
前記第2ベルトは、前記第1ベルトと平行でかつ前記第1ベルトの上側部分に対向し、その対向部分の一部が互いに固定され、
前記第1可動部は、前記第1ベルトの進退方向に沿って前記固定部に対し摺動可能であり、前記第2可動部は、前記第2ベルトの進退方向に沿って前記第1可動部に対し摺動可能であり、
前記第1可動部が前記固定部に対し距離Lだけ摺動したとき、前記第2可動部は前記第1可動部に対し距離2Lだけ摺動し、前記第2可動部が前記固定部に対して距離3Lだけ摺動可能な搬送装置。
【請求項2】
前記第2可動部の上面に、別の前記搬送装置の固定部が固定されている請求項1記載の搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−190807(P2009−190807A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−30625(P2008−30625)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【出願人】(591065413)トッキ株式会社 (57)
【Fターム(参考)】