説明

搬送車システム

【課題】各搬送車に対する搬送要求の割り当てを効率よく行うことのできる搬送車システムを提供すること。
【解決手段】複数のステーション120に沿って設けられた一方通行の経路105と、複数の台車140と、コントローラ110とを備える搬送車システムであって、コントローラ110は、数の搬送要求を複数の台車140に通知する要求通知部112を有し、複数の台車140のそれぞれは、複数の搬送要求を受信する要求取得部142と、先行搬送車から、複数の搬送要求のうちの、先行搬送車が実行を予定する搬送要求を示す先行車情報を受信する受信部144と、先行車情報を参照することで特定される、複数の搬送要求のうちの当該搬送車が実行可能な1以上の搬送要求の中から、当該搬送車が実行する搬送要求である実行要求を決定する決定部146と、実行要求を示す情報を、後続搬送車に送信する送信部148とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方通行の経路と当該経路を走行する複数の搬送車とを備える搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一方通行の経路と当該経路を走行する複数の搬送車とを備える搬送車システムが存在する。このような搬送車システムでは、経路に沿って複数のステーションが配置されており、各搬送車は、例えば、上位コントローラからの搬送要求に応じて、ステーション間での荷物の搬送を行う。
【0003】
このような搬送車システムにおいて、例えば、連続して配置された複数のステーションのそれぞれに載置された荷物を、複数の搬送車に受け取らせて搬送させる場合を想定する。
【0004】
つまり、これら荷物の搬送作業に対応する複数の搬送要求のそれぞれを、複数の搬送車のいずれかに割り当てる場合を想定する。
【0005】
この場合、作業効率を向上させる観点から、複数の搬送車のそれぞれに、当該複数の搬送車の並び順に応じたステーションに対応する搬送要求を割り当てることが一般に行われる。
【0006】
上位コントローラは、このような割り当てを行うために、自身の支配下にある複数の搬送車の並び順、位置、および、作業内容等を確認し、その確認結果に基づいて、それぞれの搬送車に対する搬送要求の割り当てを行う。
【0007】
このような、上位コントローラによる、搬送車に対する搬送要求の割り当てについての技術も開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
特許文献1記載の有軌道台車システムによれば、各ステーションから上流側における所定のエリア内の空き台車に荷積み指令を割り付けると共に、より効率的に割り付け指令を実行できる台車が出現した際に、割り付けを変更する。このような処理により、例えば、荷積みまでの台車の平均走行距離の短縮化が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−6951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来では、例えば、各搬送車の荷積み効率が向上するように、複数の搬送車に対する搬送要求を変更するためには、上位コントローラは、各搬送車の位置および状態等を常時監視する必要がある。
【0011】
そのため、例えば、各搬送車が高速で移動していることに起因する、通信エラーおよび応答遅延などの問題が生じる場合がある。
【0012】
また、各搬送車が走行する経路には、合流点および分岐点も存在する。これにより、各搬送車の並び順には入れ替わりが生じる。その結果、上位コントローラは、各搬送車の新たな並び順を考慮して、再度、各搬送車に対する搬送要求の割り当てを行う必要が生じる。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、複数の搬送車を備える搬送車システムであって、各搬送車に対する搬送要求の割り当てを効率よく行うことのできる搬送車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するため、本発明の一態様に係る搬送車システムは、複数のステーションに沿って設けられた一方通行の経路と、前記経路に沿って走行する複数の搬送車と、前記複数の搬送車の制御を行うコントローラとを備える搬送車システムであって、前記コントローラは、前記複数のステーションに対応する複数の搬送要求を前記複数の搬送車に通知する要求通知部を有し、前記複数の搬送車のそれぞれは、前記複数の搬送要求を受信する要求取得部と、当該搬送車の1つ前方の搬送車である先行搬送車から、前記複数の搬送要求のうちの、前記先行搬送車が実行を予定する搬送要求を示す先行車情報を受信する受信部と、前記先行車情報を参照することで特定される、前記複数の搬送要求のうちの当該搬送車が実行可能な1以上の搬送要求の中から、当該搬送車が実行する搬送要求である実行要求を決定する決定部と、前記決定部により決定された前記実行要求を示す情報を、当該搬送車よりも1つ後方の搬送車である後続搬送車に送信する送信部とを有する。
【0015】
この構成によれば、複数の搬送車のそれぞれは、コントローラから通知された複数の搬送要求のいずれかを当該搬送車に割り当てる機能を有している。
【0016】
例えば、複数の搬送要求のうちの、先行搬送車の実行予定の搬送要求を除いた残りから、当該搬送車が実行する搬送要求(実行要求)が決定される。さらに、どの搬送要求を実行要求として決定したかを示す情報が、後続搬送車に送信される。
【0017】
つまり、複数の搬送車のそれぞれは、上位のコントローラから与えられた複数の搬送要求の中から、一方通行の方向における並び順で先頭から順に、自身が実行する搬送要求を選択することができる。
【0018】
そのため、当該コントローラは、各搬送車の位置等を把握しておく必要がなく、これら複数の搬送車に対して、複数の搬送要求を通知するだけで、これら複数の搬送要求の搬送車に対する割り当てが適切に実行される。
【0019】
このように、本態様の搬送車システムは、複数の搬送車を備える搬送車システムであって、各搬送車に対する搬送作業の割り当を効率よく行うことができる。
【0020】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記送信部はさらに、前記受信部により受信された前記先行車情報を前記後続搬送車に送信するとしてもよい。
【0021】
この構成によれば、例えば、当該搬送車において実行要求として決定された搬送要求に加えて、先行搬送車が実行すると決定した搬送要求を、後続搬送車に知らせることができる。
【0022】
また、例えば、当該搬送車が、他の要求を実行中、または、他の要求の実行を予定していることにより、当該複数の搬送要求の割り振りに関与できない場合であっても、先行搬送車が実行すると決定した搬送要求を、後続搬送車に知らせることができる。
【0023】
このように、先行搬送車が実行すると決定した搬送要求を、後続搬送車に知らせることにより、例えば、後続搬送車における実行要求の決定処理が効率化される。
【0024】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、前記実行可能な1以上の搬送要求の中から、前記複数のステーションのうちの最も下流に配置されたステーションに対応する1つの搬送要求を、前記実行要求として決定するとしてもよい。
【0025】
この構成によれば、複数の搬送要求のそれぞれは、それぞれの搬送要求に対応するステーションの並び順に応じて、いずれかの搬送車に選択され実行される。
【0026】
その結果、例えば、複数の搬送要求とその実行とにより構成される搬送作業の全体が、効率的に行われる。
【0027】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記複数の搬送要求のそれぞれは、互いに異なる優先度と対応付けられており、前記決定部は、前記実行可能な1以上の搬送要求の中で最も優先度が高い搬送要求を、前記実行要求として決定するとしてもよい。
【0028】
この構成によれば、複数の搬送要求のそれぞれは、優先度の高いものから順に、いずれかの搬送車に選択され、実行される。
【0029】
その結果、例えば、複数の搬送要求とその実行とにより構成される搬送作業の全体が、効率的に行われる。
【0030】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部はさらに、前記実行要求と同じ搬送要求の実行を前記先行搬送車が予定していることを示す先行車情報が、前記受信部により受信された場合、前記実行要求として決定した搬送要求を取り消すとしてもよい。
【0031】
この構成によれば、実行要求が一旦決定された後に、例えば、当該搬送車と先行搬送車との間に割り込んだ他の搬送車が、当該実行要求と同じ搬送要求を実行すると決定した場合であっても、当該搬送要求が重複して選択されるという問題の発生は防止される。
【0032】
また、本発明は、上記いずれかの態様に係る搬送車システムが実行する特徴的な処理を含む、搬送要求の割り当て方法として実現することもできる。また、当該搬送要求の割り当て方法が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現すること、および、そのプログラムが記録された記録媒体として実現することもできる。そして、そのプログラムをインターネット等の伝送媒体又はDVD等の記録媒体を介して配信することもできる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、複数の搬送車を備える搬送車システムであって、各搬送車に対する搬送作業の割り当を効率よく行うことのできる搬送車システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における搬送車システムの構成概要を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態における台車の主要な機能構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における、各台車によって実行される搬送要求の割り当て処理の結果の一例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第1の例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第2の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第3の例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第4の例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第5の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第6の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第7の例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態における複数の台車の動作の第8の例を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態の搬送車システムにおけるステーション群を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の実施の形態における搬送車システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施の形態における搬送車システム100の構成概要を示す図である。
【0037】
搬送車システム100は、複数のステーション120に沿って設けられた一方通行の経路105と、経路105に沿って走行する複数の台車140と、複数の台車140の制御を行うコントローラと110を備える。
【0038】
ステーション120は、台車140との間で荷物の受け渡しが行われる場所であり、図1では、ST[A]、ST[B]、およびST[C]の3つステーション120が図示されている。
【0039】
台車140は、荷物の搬送を行う搬送車の一例であり、図1では、台車(α)、台車(β)、および台車(γ)の3台の台車140が図示されている。これら台車140は、一方通行の経路105に沿って走行する。
【0040】
なお、台車140の種類は特定のものに限定されず、天井走行車等の有軌道台車であってもよく、床面を走行する無人搬送車であってもよい。
【0041】
つまり、経路105は、具体的には、台車140の走行を案内するレール、または、台車140が走行する通路等によって構成される。また、経路105は、図1において右から左の方向の一方通行であり、台車140は経路105上で他の台車140を追い抜くことはできない。
【0042】
コントローラ110は、複数のステーション120に対応する複数の搬送要求を、複数の搬送車に通知する要求通知部112を有する。
【0043】
要求通知部112は、例えば、3台の台車140(台車(α)〜(γ))に対し、3つのステーション120(ST[A]〜[C])のそれぞれに載置された荷物を他のステーション120まで搬送する要求を通知する。
【0044】
つまり、ST[A]、ST[B]、およびST[C]に対応する3つの搬送要求を、台車(α)、台車(β)、および台車(γ)に通知する。
【0045】
これら台車140のそれぞれは、他の台車140と協調しながら、通知された3つの搬送要求の中から、自身が実行する搬送要求を決定する機能を有している。
【0046】
図2は、本発明の実施の形態における台車140の主要な機能構成を示すブロック図である。
【0047】
図2を用いて、実施の形態における台車140の主要な機能構成、および、各機能ブロックの基本的な処理内容を説明する。
【0048】
台車140は、要求取得部142と、受信部144と、決定部146と、送信部148とを有する。
【0049】
要求取得部142は、コントローラ110から送信された複数の搬送要求を取得する。例えば、要求取得部142は、図2に示すように、ST[A]〜[C]のそれぞれに対応する3つの搬送要求を取得する。
【0050】
なお、図2に示す“Lv3”、“Lv2”、および“Lv1”は、それぞれの搬送要求に対応付けられた優先度を示す情報であり、“Lv1”、“Lv2”、Lv3”の順に優先度は高くなる。
【0051】
つまり、これら複数の搬送要求については、ST[A]に対応する搬送要求(以下、「搬送要求[A]」という。)が最も優先度が高く、次いでST[B]に対応する搬送要求(以下、「搬送要求[B]」という。)の優先度が高く、ST[C]に対応する搬送要求(以下、「搬送要求[C]」という。)が最も優先度が低いことが示されている。
【0052】
本実施の形態では、コントローラ110から複数の搬送要求が送信される際に、それぞれの搬送要求の優先度が、これら搬送要求とともに送信される。
【0053】
また、本実施の形態では、各台車140は、自身が実行可能な1以上の搬送要求の中で、最も優先度が高い搬送要求を実行すると決定する。
【0054】
なお、詳細は省略するが、コントローラ110から送信される搬送要求には、荷物の搬送先等の、当該搬送要求の実行に必要な他の情報も含まれている。
【0055】
受信部144は、当該台車140の1つ前方の台車140である先行台車から、当該複数の搬送要求のうちの、先行台車が実行を予定する搬送要求を示す先行車情報を受信する。
【0056】
受信部144、例えば図2に示すように、先行台車から“[A]”を示す先行車情報を受信する。これにより、当該台車140では、先行台車が、搬送要求[A]を実行することが確認される。
【0057】
決定部146は、先行車情報を参照することで特定される、当該複数の搬送要求のうちの当該台車140が実行可能な1以上の搬送要求の中から、当該台車140が実行する搬送要求である実行要求を決定する。
【0058】
例えば、先行車情報が“[A]”を示す場合、決定部146では、実行可能な1以上の搬送要求として、搬送要求[B]および搬送要求[C]が特定され、これらのうち、優先度の高い搬送要求[B]が、実行要求として決定される。
【0059】
送信部148は、決定部146により決定された実行要求を示す情報を、当該台車140よりも1つ後方の台車である後続台車に送信する。
【0060】
例えば、搬送要求[B]が、実行要求として決定された場合、送信部148は、“[B]”を示す情報を、後続台車に送信する。なお、本実施の形態では、先行車情報“[A]”も、後続台車に送信される。
【0061】
これにより、後続台車では、コントローラ110から送信された3つの搬送要求のうちの2つ(搬送要求[A]、搬送要求[B])が他の台車140に割り当て済みであることが確認される。その結果、後続台車では、残りの搬送要求[C]が実行要求として決定される。
【0062】
なお、送信部148は、先行車情報を後続台車に送信しなくてもよい。例えば、本実施の形態のように、各搬送要求に優先度が対応付けられている場合において、後続台車が、“[B]”のみを示す先行車情報を受け取った場合を想定する。
【0063】
この場合、後続台車では、搬送要求[B]の優先度が“Lv2”であることから、“Lv2”以上の優先度に対応する搬送要求は割り当て済みであると判断することができる。
【0064】
すなわち、後続台車では、“Lv1”に対応付けられた搬送要求[C]のみが実行可能であると判断することができ、その結果、搬送要求[C]を実行要求として決定することができる。
【0065】
また、実行要求を示す情報は、一台の後続台車にのみ受信されるように、例えば、当該情報の無線伝送に用いられる周波数が調整される。または、実行要求を示す情報を、指向性の高い赤外線等を用いて送信することでも、当該情報を、一台の後続台車にのみ受信させることができる。
【0066】
以上の構成を備える搬送車システム100における、複数の台車140の情報処理および動作の具体例について、図3〜図11を用いて説明する。
【0067】
図3は、本発明の実施の形態における、各台車140によって実行される搬送要求の割り当て結果の一例を示す図である。
【0068】
上述のように、搬送要求[A]、搬送要求[B]、および搬送要求[C]の優先度は、この順に、“Lv3”、“Lv2”、および“Lv1”であり、搬送要求[A]が最も優先度が高く、搬送要求[C]が最も優先度が低くなるように設定される。
【0069】
つまり、複数の搬送要求のそれぞれは、対応するステーション120の位置が下流であるほど、優先度は高く設定される。
【0070】
また、複数の台車140のそれぞれは、走行方向の先頭から順に、優先順位の高い搬送要求を自身に割り当てる。
【0071】
これにより、複数の台車140による、これら複数のステーション120での作業(荷積み)を、例えば同時期に行うことが可能となり、搬送作業全体の効率を向上させることができる。
【0072】
例えば、図3に示すように、台車(α)〜(γ)に、搬送要求[A]〜[C]が割り当てられた場合、台車(α)〜(γ)のそれぞれはほぼ同時に、対応するステーション120からの荷物の受け取り(荷積み)を実行することができる。
【0073】
本実施の形態における各台車140は、互いに協調することで、このように、搬送作業全般の効率を向上させるような、搬送要求の割り当てを実行することができる。
【0074】
図4は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第1の例を示す図である。
【0075】
なお、図4〜図11に示す例では、コントローラ110から、図2に示す複数の搬送要求(搬送要求[A]、搬送要求[B]、および搬送要求[C])が、各台車140に通知されている状態を想定している。
【0076】
このような想定下において、先頭の台車(α)は、優先度が最も高い、搬送要求[A]を実行すると決定し、実行を予定する搬送要求[A]を示す情報として“[A]”を示す先行車情報を、後続の台車(β)に送信する。
【0077】
なお、台車(β)が、自身が実行可能な搬送要求を特定できればよいため、台車(α)は、3つの搬送要求から、自身が実行を予定する搬送要求を除いた情報、つまり、“[B]、[C]”を示す情報を、先行車情報として台車(β)に送信してもよい。
【0078】
台車(β)は、自身が実行可能な搬送要求として、搬送要求[B]と搬送要求[C]とを特定し、これらの中から、優先度が最も高い、搬送要求[B]を実行要求として決定する。
【0079】
図5は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第2の例を示す図である。
【0080】
図5に示すように、台車(β)が荷物を積んだ状態であり、当該荷物を、ST[A]よりも下流に配置されたST[Z]まで搬送する要求を実行中である場合を想定する。
【0081】
この場合、台車(β)は、先行台車である台車(α)から、先行車情報“[A]”を受信するが、荷降ろし先であるST[Z]は、その時点で、当該3つの搬送要求の中で選択枝として残っている搬送要求に対応する、ST[B]およびST[C]よりも下流である。
【0082】
従って、台車(β)は、当該3つの搬送要求の割り当てには関与せず、台車(α)から受信した先行車情報“[A]”をそのまま、台車(γ)に転送する。
【0083】
つまり、台車(β)の送信部148は、受信部144が受信した先行車情報“[A]”を、後続台車である台車(γ)に送信する。
【0084】
その結果、台車(γ)は、自身が実行可能な搬送要求として、搬送要求[B]と搬送要求[C]とを特定し、これらの中から、優先度が最も高い、搬送要求[B]を実行要求として決定する。
【0085】
このように、搬送車システム100では、一連の台車140の中に、既に何らかの搬送要求を実行中であるなどにより、その時点でコントローラ110から送信された複数の搬送要求に関与できない台車140が存在した場合は、以下のような処理が発生する。
【0086】
すなわち、当該台車140に送信された先行車情報は当該台車140をスルーし、その後方の、当該複数の搬送要求に関与できる台車140に到達する。これにより、先行車情報を受信した台車140では、実行要求の決定が適切に行われる。
【0087】
また、仮に、先頭の台車(α)が、当該複数の搬送要求に関与できない場合であっても、以下のような処理が発生する。すなわち、台車(α)が、当該複数の搬送要求のうちのいずれかの搬送要求を示す先行車情報を台車(β)に送信しないことで、台車(β)は、例えばST[C]に到達するまでに、当該複数の搬送要求の中から、優先度が最も高い搬送要求[A]を、実行要求として決定することができる。
【0088】
図6は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第3の例を示す図である。
【0089】
図6に示すように、台車(β)が荷物を積んだ状態であり、当該荷物を、ST[C]よりも上流に配置されたST[Z]まで搬送する要求を実行中である場合を想定する。
【0090】
この場合、台車(β)は、先行台車である台車(α)から、先行車情報“[A]”を受信し、かつ、荷降ろし先であるST[Z]は、その時点で、当該3つの搬送要求の中で選択枝として残っている搬送要求に対応する、ST[B]およびST[C]よりも上流である。
【0091】
従って、台車(β)は、その時点で積んでいる荷物を、ST[Z]で降ろしてから、搬送要求[B]または搬送要求[C]を実行することができる。つまり、台車(β)は、実行可能な搬送要求として、搬送要求[B]と搬送要求[C]とを特定し、これらの中から、優先度が最も高い、搬送要求[B]を実行要求として決定する。
【0092】
台車(β)はさらに、後続台車である台車(γ)に対する先行車情報として、“[A]、[B]”を示す情報を送信する。台車(γ)は、当該先行車情報に基づいて、搬送要求[C]を実行要求として決定する。
【0093】
図7は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第4の例を示す図である。
【0094】
図7に示すように、台車(β)が、メインの経路105(図7における左右方向の経路105)から分岐した分岐した経路105(図7における上下方向の経路105)に沿って配置されたST[D]に対応する搬送要求[D]を実行要求として決定している場合を想定する。
【0095】
つまり、台車(β)に、既に搬送要求[D]が割り当て済みである状態を想定する。
【0096】
この場合、台車(β)は、当該3つの搬送要求には関与することができない、そのため、先行台車である台車(α)から、先行車情報“[A]”を受信した場合、先行車情報“[A]”をそのまま、後続台車である台車[γ]に転送する。
【0097】
図8は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第5の例を示す図である。図8は、具体的には、図7に示す状態の後の各台車140の動作を示している。
【0098】
つまり、台車[γ]は、先行車情報“[A]”を受信することで、搬送要求[B]を実行要求として決定し、後続台車である台車(δ)に、先行車情報として、“[A]、[B]”を示す情報を送信する。
【0099】
その結果、台車(δ)は、実行可能な搬送要求として搬送要求[C]とを特定し、この搬送要求[C]を実行要求として決定する。
【0100】
各台車140において、以上のような情報処理が行われることで、図8に示すように、搬送要求[A]、搬送要求[B]、および搬送要求[C]のそれぞれは、台車(α)、台車(γ)、および台車(δ)に割り当てられる。つまり、これら複数の搬送要求は、これら台車140によって適切に実行される。
【0101】
以上、図5〜図8に示したように、搬送車システム100では、一連の台車140の中に、その時点でコントローラ110から送信された複数の搬送要求に関与できない台車140が存在している場合であっても、これら複数の搬送要求は、効率よくいずれかの台車140に割り当てられ、実行される。
【0102】
また、複数の搬送要求が通知された一連の台車140に、これら複数の搬送要求に対応する作業が完了する前に、メインの経路105に合流する経路105などから新たな台車140が加わる場合も考えられる。
【0103】
このような場合であっても、本実施の形態の搬送車システム100であれば、各搬送要求は、効率よくいずれかの台車140に割り当てられる。
【0104】
図9は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第6の例を示す図である。
【0105】
図9に示すように、台車(γ)が、メインの経路105(図7における左右方向の経路105)に合流する経路105(図7における上下方向の経路105)から、メインの経路105に進入する場合を想定する。
【0106】
ここで、図9に示す時点では、台車(α)は、最も優先度の高い搬送要求[A]を実行要求として決定し、その結果、上述のように、台車(β)は、次に優先度の高い搬送要求[B]を実行要求として決定している。
【0107】
また、台車(γ)は、自身に積んでいる荷物を、ST(C)まで搬送する搬送要求を実行中である。
【0108】
図10は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第7の例を示す図である。図10は、具体的には、図9に示す状態の後の、各台車140の動作の第1の例を示している。
【0109】
台車(γ)がメインの経路105に合流してくる場合、図10に示すように、台車(γ)が、台車(β)の後に連なる場合が考えられる。この場合、台車(α)は、予定通り搬送要求[A]を実行し、台車(β)も、予定通り搬送要求[B]を実行する。
【0110】
しかし、台車(γ)が、台車(α)と台車(β)との間に割り込んだ場合は、搬送要求の割り当ての再調整が行われる。
【0111】
図11は、本発明の実施の形態における複数の台車140の動作の第8の例を示す図である。図11は、具体的には、図9に示す状態の後の、各台車140の動作の第2の例を示している。
【0112】
図11に示すように、台車(γ)がメインの経路105に合流してくることにより、台車(γ)が、台車(α)と台車(β)との間に割り込んだ場合を想定する。
【0113】
この場合、台車(γ)は、台車(α)から、先行車情報“[A]”を受信することで、自身が実行可能な搬送要求として、搬送要求[B]と搬送要求[C]とを特定し、これらの中から、優先度が最も高い、搬送要求[B]を実行要求として決定する。
【0114】
その結果、台車(β)は、先行台車である台車(γ)から、先行車情報“[A]、[B]”を受信する。
【0115】
つまり、台車(β)では、自身が決定した実行要求と同じ搬送要求[B]の実行を先行台車である台車(γ)が予定していることを示す先行車情報を、受信部144が受信する。
【0116】
つまり、台車(β)からすると、搬送要求[B]は事後的に実行可能ではない搬送要求となる。その結果、台車(β)の決定部146は、実行要求として決定した搬送要求[β]を取り消す。
【0117】
また、台車(β)の決定部146は、図11に示すように、台車(β)のその時点の位置が、ST[C]よりも上流であれば、その時点で実行可能な搬送要求である搬送要求[C]を実行要求として決定する。
【0118】
このように、コントローラ110から送信された複数の搬送要求に対応して搬送作業を行う一連の台車140に、新たな台車140が追加された場合であっても、当該複数の搬送要求それぞれの各台車140への割り当て処理は、各台車140において適切に実行される。つまり、各台車140に対する搬送要求の割り当てが効率よく実行される。
【0119】
以上説明したように、本実施の形態の搬送車システム100では、複数の台車140のそれぞれは、複数の搬送要求が通知されると、先行車情報を参照することで、自身が実行すべき搬送要求を適切に決定することができる。
【0120】
なお、その時点で、当該複数の台車140のうちの先頭の台車140では、所定のタイミングまでに(例えば、当該複数の搬送要求に対応する複数のステーション120のうちの最も上流に位置するステーション120から所定の距離だけ上流の地点に到達するまでに)、先行車情報を受信しないことにより、当該複数の搬送要求のうちで、例えば、最も優先度が高い搬送要求を実行要求として決定することができる。
【0121】
また、当該複数の台車140の中で、当該複数の搬送要求に関与できない台車140が存在する場合、および、当該複数の台車140に、新たな台車140が追加された場合のいずれの場合であっても、上述のように、当該複数の搬送要求の割り当てが適切に行われる。
【0122】
具体的には、いずれかの台車140が、先行車情報の転送、または、実行要求の取り消し等の処理を行うことで、当該複数の搬送要求は、効率よくかつ適切に、いずれかの台車140に割り当てられる。
【0123】
また、このように、各台車140が、コントローラ110から通知された複数の搬送要求の割り当てを実行することができるため、コントローラ110は、例えば、各台車140の位置および状態等を常時監視しておく必要がない。その結果、搬送車システム100全体としての処理が効率化される。
【0124】
以上、本発明の搬送車システムについて、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0125】
例えば、各搬送要求に対応づけられた優先度は、コントローラ110から送信される必要はない。例えば、台車140が、各搬送要求の優先度を決定してもよい。
【0126】
ここで、台車140が、上述の搬送要求[A]〜[C]の3つの搬送要求を、優先度の付与なしにコントローラ110から受信した場合を想定する。
【0127】
この場合、例えば決定部146は、各搬送要求に対応するステーション120(つまり、ST[A]、ST[B]、およびST[C])の位置を、台車140に記憶されたマップ(図示せず)を参照することで特定する。
【0128】
これにより、決定部146は、ST[A]、ST[B]、およびST[C]の、下流から上流にかけての並び順を特定することができる。
【0129】
その結果、決定部146は、搬送要求[A]〜[C]の中で、最も下流のステーション120に対応する搬送要求[A]を実行要求として決定すべきことが判断できる。
【0130】
つまり、各台車140が、このような実行要求の決定の判断基準を共通して有することでも、上述の実施の形態と同じく、各搬送要求は、優先的に実行されるべきものから順に、いずれかの台車140に割り当てられる。
【0131】
また、本実施の形態では、コントローラ110は、図2に示すように、ステーション120ごとの搬送要求を明示的に行っている。
【0132】
しかしながら、コントローラ110は、ステーション120個別の情報([A]など)を用いることなく、複数の搬送要求と等価な要求を一括して通知してもよい。
【0133】
図12は、実施の形態の搬送車システム100におけるステーション群を説明するための図である。
【0134】
例えば、図12に示すように、連続して配置された複数のステーション120を含むステーション群を定義した場合を想定する。
【0135】
図12では、第一ステーション群201、第二ステーション群202、および第三ステーション群203の3つが示されている。
【0136】
この場合、各台車140には、これらステーション群とステーション120との対応づけを示すステーション群情報が記憶されている。
【0137】
このように、ステーション群が定義される場合、コントローラ110は、例えば、第一ステーション群201よりも上流を走行中の一連の台車140に対し、第一ステーション群201を示す情報を含む搬送要求を通知する。
【0138】
この場合、当該一連の台車140のそれぞれは、ステーション群情報を参照することで、第一ステーション群201に含まれるステーション120(ST[A]、ST[B]、・・・)を特定することができる。
【0139】
つまり、各台車140は、搬送要求[A]、搬送要求[B]、・・・という複数の搬送要求が通知されたことを認識できる。
【0140】
各台車140はさらに、例えば、上述のように、各搬送要求について対応するステーション120が下流にあるほど優先度が高いという判断基準を用いることで、各搬送要求の優先度(搬送要求[A]>搬送要求[B]>・・・)を特定することができる。
【0141】
このように、コントローラ110は、ステーション120個別の情報を用いることなく、複数の搬送要求と等価な要求を一括して通知してもよく、この場合であっても、各台車140は、協調することで、これら複数の搬送要求の効率的な割り当てを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の搬送車システムは、複数の搬送車を備える搬送車システムであって、各搬送車に対する搬送作業の割り当てを効率よく行うことのできる搬送車システムである。従って、工場および物流倉庫等で荷物の搬送を行うための搬送車システム等として有用である。
【符号の説明】
【0143】
100 搬送車システム
105 経路
110 コントローラ
112 要求通知部
120 ステーション
140 台車
142 要求取得部
144 受信部
146 決定部
148 送信部
201 第一ステーション群
202 第二ステーション群
203 第三ステーション群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステーションに沿って設けられた一方通行の経路と、前記経路に沿って走行する複数の搬送車と、前記複数の搬送車の制御を行うコントローラとを備える搬送車システムであって、
前記コントローラは、前記複数のステーションに対応する複数の搬送要求を前記複数の搬送車に通知する要求通知部を有し、
前記複数の搬送車のそれぞれは、
前記複数の搬送要求を受信する要求取得部と、
当該搬送車の1つ前方の搬送車である先行搬送車から、前記複数の搬送要求のうちの、前記先行搬送車が実行を予定する搬送要求を示す先行車情報を受信する受信部と、
前記先行車情報を参照することで特定される、前記複数の搬送要求のうちの当該搬送車が実行可能な1以上の搬送要求の中から、当該搬送車が実行する搬送要求である実行要求を決定する決定部と、
前記決定部により決定された前記実行要求を示す情報を、当該搬送車よりも1つ後方の搬送車である後続搬送車に送信する送信部とを有する
搬送車システム。
【請求項2】
前記送信部はさらに、前記受信部により受信された前記先行車情報を前記後続搬送車に送信する
請求項1記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記実行可能な1以上の搬送要求の中から、前記複数のステーションのうちの最も下流に配置されたステーションに対応する1つの搬送要求を、前記実行要求として決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項4】
前記複数の搬送要求のそれぞれは、互いに異なる優先度と対応付けられており、
前記決定部は、前記実行可能な1以上の搬送要求の中で最も優先度が高い搬送要求を、前記実行要求として決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項5】
前記決定部はさらに、前記実行要求と同じ搬送要求の実行を前記先行搬送車が予定していることを示す先行車情報が、前記受信部により受信された場合、前記実行要求として決定した搬送要求を取り消す
請求項1〜4のいずれか1項に記載の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−243291(P2012−243291A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116402(P2011−116402)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】