説明

搬送車システム

【課題】効率的な搬送作業を実現するための搬送車システムを提供すること。
【解決手段】複数のステーション120に沿って設けられた経路105と、経路105に沿って走行する台車140と、台車140の制御を行うコントローラ110とを備える搬送車システム100であって、台車140は、走行方向に並べて配置された第一載置台141と第二載置台142とを有し、方向転換することで、第一載置台141および第二載置台142のいずれをも走行方向における前方とすることが可能であり、コントローラ110は、荷物の移載作業の内容と荷物の載置状況とを用いて、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定する決定部112と、台車140の走行を制御することで、台車140を、決定された第一載置台141または第二載置台142が前方である状態で、目的ステーションに到着させる走行制御部114とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のステーションに沿って設けられた経路と、当該経路に沿って走行する搬送車とを備える搬送車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のステーションに沿って設けられた経路と、当該経路に沿って走行する搬送車とを備える搬送車システムが存在する。このような搬送車システムでは、荷物の搬送作業を効率化するための種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スピンターン動作が可能な搬送車について開示されている。当該搬送車によれば、スピンターン動作における旋回中心が複数の中から選択可能である。これにより、当該走行車は、例えば、他の搬送車の走行を妨げないような態様で方向転換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−320545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の搬送車システムにおいて、荷物の搬送作業の効率化を図るために、複数の載置台を備える搬送車が用いられる場合がある。
【0006】
このような搬送車としては、例えば、走行方向に並んで配置された複数の載置台を備える台車がある。当該台車では、例えば、走行方向の前方の空いている載置台から順に、荷物を載置していくように予め設定されている。
【0007】
しかしながらこの場合、搬送作業の効率が低下する場合がある。
【0008】
図12は、複数の載置台を備える従来の台車の動作の第1の例を示す図である。
【0009】
図12に示す従来の台車540は、走行方向に並べられた第一載置台541と第二載置台542とを備える。
【0010】
例えば、台車540において、経路505に沿って走行しながら前方の空いている載置台から順に、荷物を載置していくように予め設定されている場合を想定する。この場合、第一載置台541と第二載置台542とが空いていれば、上流のステーション520(図示せず)に載置された、台車540が受け取るべき荷物は、当該荷物の受け取りの時点で前方にある第一載置台541に載置される。
【0011】
その後、図12の(a)に示すように、台車540が、ステーション520に載置された荷物を受け取り、かつ、第一載置台541に載置された荷物(上述の受け取った荷物)を、当該ステーション520に移載する移載作業を行う場合を想定する。
【0012】
この場合、図12の(b)に示すように、台車540は、まず、第二載置台542に、当該ステーション520に載置された荷物を移載する。なお、荷物の移載は、台車540が備える移載機構によって行われる場合、および、ステーション520が備える移載機構によって行われる場合などがある。
【0013】
台車540はステーション520に載置された荷物を第二載置台542で受け取ると、後退した後に、第一載置台541に載置された荷物を当該ステーション520に載置する。
【0014】
つまり、図12に示す例の場合、台車540は、当該移載作業を完了させるために、少なくとも一度は後退せざるを得ず、このことは、荷物の搬送作業の全体の効率を低下させる要因ともなる。
【0015】
また、仮に、台車540において、後方の空いている載置台から順に、荷物を載置していくように予め設定されている場合であっても、同様の問題が生じうる。
【0016】
図13は、複数の載置台を備える従来の台車の動作の第2の例を示す図である。
【0017】
例えば、台車540において、経路505に沿って走行しながら後方の空いている載置台から順に、荷物を載置していくように予め設定されている場合を想定する。この場合、図13に示すように、第一載置台541と第二載置台542とが空いていれば、ステーション520に載置された荷物は、当該荷物の受け取りの時点で後方である第一載置台541に載置される。
【0018】
しかしながら、ステーション520の近傍に、例えば、図13に示すようにカーブ部分がある場合、台車540の存在により、他の台車が当該カーブ部分を走行できない事態が生じる。その結果、当該他の台車は、台車540の移載作業が完了するまで当該カーブ部の手前での停止を余儀なくされる。
【0019】
つまり、図13に示す例の場合、台車540が当該移載作業を完了させるために、他の台車の動作を停止させる必要が生じ、このことは、荷物の搬送作業の全体の効率を低下させる要因ともなる。
【0020】
本発明は、上記従来の課題を考慮し、走行方向に複数の荷物を載置可能な搬送車を備える搬送車システムであって、効率的な搬送作業を実現するための搬送車システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記従来の課題を解決するため、本発明の一態様に係る搬送車システムは、複数のステーションに沿って設けられた経路と、前記経路に沿って走行する搬送車と、前記搬送車の制御を行うコントローラとを備える搬送車システムであって、前記搬送車は、それぞれが荷物の載置が可能な、走行方向に並べて配置された第一載置台と第二載置台とを有し、方向転換することで、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれをも前記走行方向における前方とすることが可能であり、前記コントローラは、前記搬送車が実行を予定する荷物の移載作業の内容と、前記第一載置台および前記第二載置台における荷物の載置状況とを用いて、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定する決定部と、前記搬送車の走行を制御することで、前記決定部により決定された前記第一載置台または前記第二載置台が前方である状態で、前記搬送車を、前記移載作業が行われるステーションである目的ステーションに到着させる走行制御部とを有する。
【0022】
この構成によれば、搬送車を制御するコントローラは、当該搬送車に予定される移載作業の内容(どのステーションで移載作業をするか、または、荷積みか荷降ろしか、など)と、当該搬送車における荷物の載置状況(2つの載置台のいずれが空であるか、など)とから、第一載置台および第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定することができる。
【0023】
また、決定された第一載置台または第二載置台が前方の状態で目的ステーションに到着するように当該搬送車の走行が制御される。
【0024】
つまり、当該搬送車の目的ステーションに到着する時点での向きが、移載作業の内容などに応じて適応的に変更可能である。
【0025】
これにより、当該搬送車に、荷物の移載作業をスムースに実行させることができる。また、例えば、当該搬送車に、他の搬送車の動作を妨げないような態様で荷物の移載作業を実行させることができる。
【0026】
また、搬送車の向きの変更は、走行の制御(前進、後退、操舵、停止など)により実行されるため、例えば、当該搬送車の向きを固定したまま、第一載置台と第二載置台の位置を入れ替えるような複雑な機構は不要である。
【0027】
このように、本態様の搬送車システムは、走行方向に複数の荷物を載置可能な搬送車を備える搬送車システムであって、効率的な搬送作業を実現することができる。
【0028】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記走行制御部は、前記第一載置台が前方であり、かつ、前記決定部が前記第二載置台を前方にすべきと決定した場合、前記目的ステーションまでの前記経路に存在するカーブ部分で前記搬送車の前後が入れ替わるように方向転換させることで、前記第二載置台が前方である状態で前記搬送車を前記目的ステーションに到着させるとしてもよい。
【0029】
この構成によれば、例えば、カーブ部分において行われる搬送車の走行方向の変更のための動作の一部として、当該搬送車の前後の入れ替えのための方向転換を行わせることができる。その結果、当該方向転換を行うことによる余分な時間の発生が抑制される。
【0030】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、前記搬送車が、前記目的ステーションに到着後に後退することなく前記移載作業が行えるように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定するとしてもよい。
【0031】
この構成によれば、当該搬送車は、目的ステーションにおいて後退することなく、自身が実行すべき移載作業を完了することができる。つまり、当該移載作業が効率よく実行される。
【0032】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、(a)前記第一載置台および前記第二載置台のうち前記第一載置台にのみ荷物が載置された状態で前記搬送車が前記目的ステーションに到着する予定であり、(b)前記移載作業が、前記第一載置台に載置された前記荷物を前記目的ステーションに移載し、かつ、前記目的ステーションに載置された荷物を前記搬送車が受け取る作業である場合、前記搬送車が、前記目的ステーションに到着後に後退することなく前記移載作業が行えるように、前記第二載置台を前方にすべきと決定するとしてもよい。
【0033】
この構成によれば、当該搬送車は、目的ステーションに載置された荷物を、前方の第二載置台に移載した後に前進し、後方の第一載置台の荷物を目的ステーションに移載することができる。つまり、目的ステーションにおいて、搬送車が荷積みした後に後退して荷降ろしするというような非効率的な動作の発生が防止される。
【0034】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、前記搬送車が前記目的ステーションで停車した場合に、前記搬送車の存在が、前記経路の妨げとならないように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定するとしてもよい。
【0035】
この構成によれば、目的ステーションで当該搬送車が移載作業を行っている最中であっても、他の搬送車は、例えば、目的ステーションに比較的近い位置にあるカーブ部分を通過することができる。つまり、当該搬送車に、他の搬送車の邪魔にならない態様で移載作業を実行させることができる。
【0036】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、前記搬送車が前記目的ステーションで停車した場合に、前記搬送車の存在が、前記目的ステーションに隣接する他のステーションにおける移載作業の妨げとならないように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定するとしてもよい。
【0037】
この構成によれば、目的ステーションで当該搬送車が移載作業を行っている最中であっても、他の搬送車は、目的ステーションに隣接する他のステーションで荷積みおよび荷降ろしを行うことができる。つまり、当該搬送車に、他の搬送車の邪魔にならない態様で移載作業を実行させることができる。
【0038】
また、本発明の一態様に係る搬送車システムにおいて、前記決定部は、前記第一載置台が前方であり、かつ、前記第二載置台を前方にすべきと決定しようとする場合、(a)前記第一載置台が前方のままで前記搬送車が前記目的ステーションに到着する場合の、前記搬送車による作業効率である第一効率と、(b)前記搬送車に、前記搬送車の前後が入れ替わるように方向転換させることで前記第二載置台を前方とする場合の、前記搬送車による作業効率である第二効率との比較を行い、当該比較の結果、前記第一効率が前記第二効率よりも高い場合、前記第二載置台ではなく前記第一載置台を前方にすべきと決定するとしてもよい。
【0039】
この構成によれば、搬送車の前後の入れ替えのための方向転換の有無によって生じる作業効率の差異を考慮した上で、第一載置台および第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定することができる。
【0040】
これにより、例えばより現実に即した決定がなされ、その結果、当該搬送車システムにおける搬送作業の効率がより向上される。
【0041】
また、本発明は、上記いずれかの態様に係る搬送車システムが実行する特徴的な処理を含む、搬送車の制御方法として実現することもできる。また、当該搬送車の制御方法が含む各処理をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現すること、および、そのプログラムが記録された記録媒体として実現することもできる。そして、そのプログラムをインターネット等の伝送媒体又はDVD等の記録媒体を介して配信することもできる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、走行方向に複数の荷物を載置可能な搬送車を備える搬送車システムであって、効率的な搬送作業を実現するための搬送車システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明の実施の形態における搬送車システムの構成概要を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるコントローラの基本的な処理の流れを示すフロー図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第1の例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態における台車による方向転換の第1の例を示す図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態における台車による方向転換の第2の例を示す図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第2の例を示す図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第3の例を示す図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第4の例を示す図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第5の例を示す図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態における台車の走行制御の第6の例を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態におけるコントローラの処理の流れの別の一例を示すフロー図である。
【図12】図12は、複数の載置台を備える従来の台車の動作の第1の例を示す図である。
【図13】図13は、複数の載置台を備える従来の台車の動作の第2の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明の実施の形態における搬送車システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0045】
図1は、本発明の実施の形態における搬送車システム100の構成概要を示す図である。
【0046】
搬送車システム100は、複数のステーション120に沿って設けられた経路105と、経路105に沿って走行する台車140と、台車140の制御を行うコントローラ110とを備える。
【0047】
ステーション120は、台車140との間で荷物の受け渡しが行われる場所である。図1では、2つのステーション120のうち左側のステーション120に荷物が載置されていることが示されている。
【0048】
台車140は、荷物の搬送を行う搬送車の一例であり、第一載置台141と第二載置台142とを有する。また、台車140は、方向転換することで、第一載置台141および第二載置台142のいずれをも走行方向における前方とすることが可能である。つまり、台車140は前後の入れ替えが可能である。方向転換については図4および図5を用いて後述する。
【0049】
なお、第一載置台141および第二載置台142は、別体である2つの載置台によって実現されてもよく、物理的に1つの載置台の載置領域が2つに区分されることで実現されてもよい。
【0050】
また、台車140の種類は特定のものに限定されず、例えば、軌道にガイドされながら走行する有軌道台車であってもよく、床面を走行する無軌道台車であってもよい。
【0051】
つまり、経路105は、具体的には、台車140の走行を案内するレール、または、台車140が走行する通路等によって構成される。
【0052】
コントローラ110は、決定部112と走行制御部114とを有する。決定部112は、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定する。走行制御部114は、決定部112による決定に従って台車140の走行を制御する。
【0053】
なお、コントローラ110は、例えば、複数の台車140を制御する上位のコンピュータによって実現される。また、コントローラ110は、台車140が備える、当該台車140を制御するコンピュータによって実現することもできる。
【0054】
つまり、コントローラ110は、台車140とは物理的に別体として備えられてもよく、台車140に内包されていてもよい。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態におけるコントローラ110の基本的な処理の流れを示すフロー図である。
【0056】
コントローラ110の決定部112は、台車140が実行を予定する荷物の移載作業の内容と、第一載置台141および第二載置台142における荷物の載置状況とを用いて、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定する(S10)。
【0057】
台車140が実行を予定する荷物の移載作業の内容とは、台車140がどのステーション120で荷物を積むまたは降ろすのかなどを示す情報であり、例えば、オペレータまたは上位のシステムからコントローラ110に入力される情報である。
【0058】
また、荷物の載置状況とは、第一載置台141および第二載置台142それぞれに載置された荷物があるか否かなどを示す情報であり、例えば、台車140からコントローラ110に通知される情報である。
【0059】
また、台車140は、第一載置台141および第二載置台142のそれぞれに対応した、互いに独立した移載機構(例えば移載フォークなど、図示せず)を有しており、第一載置台141および第二載置台142のそれぞれで独立した移載作業を行うことができる。
【0060】
なお、ステーション120に移載機構が備えられていてもよく、この場合、台車140は、移載機構を備えなくてもよい。
【0061】
走行制御部114は、決定部112により決定された第一載置台141または第二載置台142が前方である状態で、当該移載作業が行われるステーション120である目的ステーションに到着するように、台車140の走行を制御する(S20)。
【0062】
例えば、決定部112により、第二載置台142を前方にすべきと決定された場合であって、その時点で、第一載置台141が前方である場合を想定する。
【0063】
この場合、走行制御部114は、台車140が目的ステーションに到着するまでに、台車140に、後述するスピンターン方式またはスイッチバック方式などによる方向転換を行わせる。
【0064】
これにより、第二載置台142が前方の状態で、台車140を目的ステーションに到着させることができる。
【0065】
以下、図3〜図10を用いて、本実施の形態における台車140の走行制御の例を説明する。
【0066】
図3は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第1の例を示す図である。
【0067】
図3の(a)に示すように、台車140が、第一載置台141および第二載置台142のいずれにも荷物を載置していない状態である空荷状態で、あるステーション120に到着し、当該ステーション120で荷物[1]を受け取る場合を想定する。
【0068】
また、この時点では、台車140が次に実行すべき移載作業が完全には特定されていない場合を想定する。
【0069】
この場合、台車140は、例えば、図3の(a)に示すように、その時点で前方にある第一載置台141で荷物[1]を受け取るように制御される。
【0070】
その後、決定部112は、台車140が次に実行すべき移載作業の内容として、下流のステーション120(目的ステーション、図では“目的ST”と記載)での荷物[2]の受け取りと、目的ステーションへの荷物[1]の移載を示す情報を取得する。
【0071】
この場合、決定部112は、この時点で空である第二載置台142を前方にすべきことを決定する。これは、台車140に、目的ステーションに到着後に後退させないためには、荷物[2]を受け取るべき第二載置台142が前方の状態で、台車140を目的ステーションに到着させる必要があるからである。
【0072】
走行制御部114は、当該決定に従って、第二載置台142が前方の状態で台車140が目的ステーションであるステーション120に到着するように、台車140の走行を制御する。つまり、本例の場合は、第二載置台142が前方となるように、台車140が目的ステーションの到着までに方向転換するように台車140の走行を制御する。
【0073】
その結果、図3の(b)および(c)に示すように、台車140は、目的ステーションに到着後に一度も後退することなく、目的ステーションでの移載作業を完了させることができる。
【0074】
このように、コントローラ110は、台車140がある荷物の移載を行う時点で、次の移載作業の内容が完全には認識可能でない場合であっても、その後に認識可能となった時点で、次の移載作業を効率よく行わせるための決定を行うことができる。
【0075】
なお、台車140の方向転換(走行方向における前後の入れ替え)は、例えば、経路105におけるカーブ部分で行われる。つまり、台車140の走行方向の変更のための動作の一部として、台車140の前後の入れ替えのための方向転換を行わせることができる。その結果、当該方向転換を行うことによる余分な時間の発生量が抑制される。
【0076】
台車140の方向転換の際の動作については、図4および図5を用いて後述する。
【0077】
なお、コントローラ110は、例えば、(i)荷物の載置状況と、(ii)移載作業の内容とが対応づけられたテーブルを参照することで、(iii)第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定してもよい。
【0078】
例えば、本例の場合、「(i)前方の第一載置台141のみに荷物あり:(ii)荷物の入れ替え:(iii)方向転換要(第二載置台142が前方)」という情報が記録されたテーブルを参照することで、条件(i)および(ii)に対応する結論(iii)が特定される。
【0079】
また、コントローラ110は、条件(i)および(ii)を変数とし、結論(iii)を数値として導く関数を記憶しておき、当該関数を用いて第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを必要に応じて算出することで決定してもよい。
【0080】
ここで、図4および図5を用いて、台車140による2種類の方向転換の動作について説明する。
【0081】
図4は、本発明の実施の形態における台車140による方向転換の第1の例を示す図である。
【0082】
台車140は、例えば、スピンターン方式により方向転換を行うことができる。具体的には、図4に示すように、経路105に沿って、第一載置台141が前方の状態で走行している場合を想定する。
【0083】
この場合、台車140が、カーブ部分105aにおいて図4の左下に示すように反時計回りに旋回することで、第一載置台141が前方の状態が維持されたまま、走行を継続することができる。つまり、この場合は、通常のカーブ走行と同じく、台車140の向き(走行方向に対する前後方向)は維持される。
【0084】
また、台車140が、カーブ部分105aにおいて図4の右下に示すように時計回りに旋回することで、第二載置台142が前方にされた状態で、カーブ部分105aより下流のステーション120に到着することができる。
【0085】
なお、台車140として、例えば床面を走行する無人搬送車が採用された場合、このようなスピンターン動作による方向転換が行われる。例えば、無人搬送車の前輪の車軸および後輪の車軸が、水平面(図4の紙面に平行な面)に垂直な軸回りに回動自在である場合に、図4に示すようなスピンターン動作が可能である。
【0086】
図5は、本発明の実施の形態における台車140による方向転換の第2の例を示す図である。
【0087】
台車140は、例えば、スイッチバック方式により方向転換を行うことができる。具体的には、図5に示すように、経路105に沿って、第一載置台141が前方の状態で走行している場合を想定する。
【0088】
この場合、台車140が、カーブ部分105aにおいて、図5の左下に示すように、そのまま左方向に曲がるように制御されることで、第一載置台141が前方の状態が維持されたまま、走行を継続することができる。
【0089】
また、台車140が、カーブ部分105aにおいて、図5の右下に示すように、一旦、カーブ部分105aを直進した後に、右方向に曲がるように操舵制御されることで前後が切り替えられる。つまり、台車140は、第二載置台142が前方にされた状態で、カーブ部分105aより下流のステーション120に到着することができる。
【0090】
このように、台車140の方向転換は、カーブ部分105aにおいて、台車140の走行方向の変更のための動作の一部として行うことができる。つまり、当該方向転換を行うことによる余分な時間の発生量が抑制される。
【0091】
なお、台車140に方向転換を行わせることで、次の移載作業が効率よく行われる場合であっても、方向転換を回避しつつ次の移載作業を効率よく行うことができる場合は、方向転換は回避される。
【0092】
図6は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第2の例を示す図である。
【0093】
図6では、3つのステーション120(ST[A]、ST[B]、ST[C])が図示されており、ST[A]とST[B]との間にカーブ部分105aが存在している。
【0094】
このような環境において、図6の(a)に示すように、台車140に、ST[A]の荷物[1]を下流のST[B]に移載し、かつ、ST[B]の荷物[2]をさらに下流のST[C]に移載する移載作業が予定されている場合を想定する。
【0095】
この場合、この時点で前方の載置台である第一載置台141に荷物[1]を移載し、第一載置台141が前方の状態で台車140がST[B]に到着すると仮定すると、台車140は、ST[B]において後退する必要が生じる。
【0096】
具体的には、台車140は、第二載置台142に、ST[B]からの荷物[2]を移載した後に、後退して、第一載置台141に載置された荷物[1]をST[B]に移載する必要がある。
【0097】
この場合、台車140がST[B]に到着する時点で第二載置台142が前方となっているように、例えば、カーブ部分105aにおいて図5に示すようなスイッチバック方式による方向転換を行うことが考えられる。
【0098】
しかしながら、スイッチバック方式による方向転換を行った場合、通常のカーブ走行と比較すると、走行時間が長くなる。
【0099】
そのため、決定部112は、当該移載作業の中で台車140に方向転換をさせないように、前方となる載置台を決定する。具体的には、決定部112は、台車140による荷物[1]の受け取りの時点で、後方の載置台である第二載置台142に荷物[1]を載置すると決定するとともに、空の第一載置台141を前方にすべきと決定する。
【0100】
この場合、走行制御部114は、第二載置台142が、目的ステーション(ST[A])からの荷物[2]の受け取りが可能な位置に到達するように、台車140をST[A]に到着させる。
【0101】
その結果、図6の(b)に示すように、後方の第二載置台142にST[A]からの荷物[1]が移載され、走行制御部114は、台車140を、第一載置台141が前方である状態に維持したまま、カーブ部分105aで左に曲がるように走行させる。
【0102】
その後、台車140は、前方の第一載置台141にST[B]からの荷物[2]が移載された後に前進し、後方の第二載置台142に載置された荷物[1]をST[B]に移載する。
【0103】
さらにその後、台車140は前進し、前方の第一載置台141からST[C]に荷物[2]を移載する。なお、このとき、可能であれば、第二載置台142に載置された荷物[1]のST[B]への移載と、第一載置台141に載置された荷物[2]のST[C]への移載とが同時に実行される。
【0104】
このように、台車140に、2つのステーション120(ST[A]、ST[B])それぞれの荷物を、順次、下流のステーション120(ST[B]、ST[C])まで搬送させる上記一連の作業を行わせる場合に、一度も後退させることなく、効率よく当該一連の作業を完了させることができる。また、方向転換を行う必要もないため、当該一連の作業が非常に効率的に実行される。
【0105】
また、本実施の形態のコントローラ110は、台車140に予定される移載作業の内容に示されるステーション120と経路105または他のステーション120との位置関係に応じて、台車140の走行を制御することもできる。
【0106】
図7は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第3の例を示す図である。
【0107】
図7に示すように、搬送車システム100が備える複数の台車140のうちの一台である台車(α)に、カーブ部分105aの近傍のステーション120(目的ステーション)での荷物の移載作業が予定されている場合を想定する。
【0108】
この場合、決定部112は、例えば、当該移載作業の前の移載作業が完了した後に、台車(α)の第一載置台141および第二載置台142のうちの空である方を前方にすべきと決定する。
【0109】
例えば、前の移載作業が完了した後であって、次の移載作業の内容(図7に示す荷物の受け取り)が取得された時点で、図7に示すように、第二載置台142のみに荷物が載置されている場合、第一載置台141を前方にすべきと決定する。また、その時点で、第二載置台142が前方にある場合は、図4または図5に示すような方法で方向転換される。
【0110】
その結果、台車(α)は、目的ステーションにおいて、前方の第一載置台141で荷物を受け取る。そのため、図7に示すように、台車(α)の存在により、台車(β)が、目的ステーションに隣接するカーブ部分105aを通過不可能となることが防止される。
【0111】
すなわち、台車(α)により生じる目的ステーション近傍のブロッキングエリア(他の台車140の進入が禁止されるエリア)が、経路105にかからないように、台車(α)の走行が制御される。
【0112】
また、例えば、台車(α)が空荷状態であって、前の移載作業が荷物の受け取りであり、かつ、当該前の移載作業の実行の前に、次の移載作業の内容(図7に示す荷物の受け取り)が取得された場合を想定する。
【0113】
この場合、決定部112は、第一載置台141および第二載置台142のうちの、その時点で後方の一方の載置台に、当該前の移載作業で移載すべき荷物を載置すると決定するとともに、他方の載置台を前方すべきと決定する。
【0114】
これにより、台車(α)は、当該前の移載作業と当該次の移載作業との間で方向転換を行うことなく、台車(β)の動作を邪魔しない態様で当該移載作業を実行することができる。
【0115】
このように、本実施の形態のコントローラ110は、台車140が目的ステーションで停車した場合に、台車140の存在が、経路105の妨げとならないように、第一載置台141および前記第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定する。また、走行制御部114は当該決定に従って、台車140の走行を制御する。これにより、搬送車システム100における搬送作業が効率よく実行される。
【0116】
図8は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第4の例を示す図である。
【0117】
図8に示すように、搬送車システム100が備える複数の台車140のうちの一台である台車(α)に、連続して配置された2つのステーション120(ST[A]、ST[B])のうちの上流のステーション120(ST[A]:台車(α)にとっての目的ステーション)での荷物の受け取りが次の移載作業として予定されている場合を想定する。
【0118】
また、当該次の移載作業の開始前の時点で、台車140が空荷状態であり、かつ、第一載置台141が前方の状態である場合を想定する。
【0119】
この場合、決定部112は、第一載置台141を前方にすべきと決定する。その結果、走行制御部114は、台車140に方向転換させることなく、第一載置台141に荷物を載置させる。
【0120】
これにより、図8に示すように、台車(α)がST[A]での荷物の移載作業のために停車している最中であっても、台車(α)が、ST[A]の下流のST[B]の方向に突出しない。
【0121】
つまり、台車(α)が荷物の移載作業のためにST[A]に停車した場合に、台車(α)の存在がST[B]における移載作業の妨げとならないように、台車(α)が制御される。
【0122】
そのため、台車(β)は、ST[B]での荷物の移載作業を実行することが可能である。
【0123】
また、例えば、第一載置台141に既に荷物が載置されており、かつ、第一載置台141が前方の状態である場合を想定する。
【0124】
この場合、決定部112は、空の第二載置台142を前方にすべきと決定する。また、走行制御部114は、当該決定に従って、例えば、図4または図5に示す方法により、台車140を方向転換させ、第二載置台142が前方の状態で台車140をST[A]に到着させる。
【0125】
つまり、台車140において前方に位置する第二載置台142への荷物の移載が行われる。その結果、図8に示す場合と同様に、台車(α)がST[A]での荷物の移載作業をしている最中でも、台車(β)は、ST[A]の下流のST[B]での荷物の移載作業を実行することが可能である。
【0126】
なお、ST[B]での荷物の移載作業を行う台車(β)については、空の載置台が後方の状態でST[B]に到着するように制御される。
【0127】
これにより、図8に示すように、ST[B]で停車している台車(β)の存在が、上流のST[A]における移載作業の妨げとなることが防止される。
【0128】
このように、本実施の形態のコントローラ110は、台車140が目的ステーションであるステーション120で停車した場合に、台車140の存在が、目的ステーションに隣接する他のステーション120における移載作業の妨げとならないように、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定することができる。また、走行制御部114は当該決定に従って、台車140の走行を制御する。これにより、搬送車システム100における搬送作業が効率よく実行される。
【0129】
また、ステーション120に荷物を載置する場合に、例えば、当該荷物の特定の面が前方となるように載置するなど、荷物の方向が指定されている場合がある。
【0130】
この場合、本実施の形態の搬送車システム100であれば、荷物の回転のための複雑な機構を有することなく、指定された方向で荷物をステーション120に載置することが可能である。
【0131】
図9は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第5の例を示す図である。
【0132】
図9の(a)に示すように、台車140が、空荷状態であり、かつ、台車140に予定された荷物の移載作業の内容が、ステーション120からの荷物[1]の受け取りと、下流の目的ステーションでの荷物[1]と荷物[2]との入れ替えである場合を想定する。
【0133】
この場合、決定部112は、この時点で、後方に位置する第二載置台142に荷物[1]を移載することを決定するとともに、空の状態の第一載置台141を前方にすべきことを決定する。
【0134】
つまり、本例の場合は、走行制御部114は、第一載置台141が前方である状態が維持されるように、方向転換をせずに、台車140の走行を制御する。その結果、図9の(b)および(c)に示すように、台車140は、目的ステーションに到着後に一度も後退することなく、目的ステーションでの移載作業を完了させることができる。つまり、効率よく当該移載作業が実行されている。
【0135】
このように、コントローラ110は、台車140がある荷物の移載を行う時点で、次の移載作業の内容が認識可能である場合、方向転換をさせないことも含めて、次の移載作業を効率よく行わせるための決定を行うことができる。
【0136】
図10は、本発明の実施の形態における台車140の走行制御の第6の例を示す図である。
【0137】
図10の(a)に示すように、目的ステーションであるステーション120において荷物を載置する際の方向が指定されている場合を想定する。
【0138】
また、図10の(a)に示すように、当該荷物を台車140が受け取る時点では、当該荷物は、指定された方向とは逆方向にステーション120に載置されている場合を想定する。
【0139】
この場合、決定部112は、例えば、その時点で前方の載置台である第一載置台141で当該荷物を受け取らせるとともに、第二載置台142が前方の状態で台車140を目的ステーションに到着させることを決定する。
【0140】
この場合、走行制御部114は、例えば図4または図5に示す方法により台車140の方向転換を行わせ、これにより、図10の(b)に示すように、当該荷物の方向を逆にする。
【0141】
その結果、図10の(c)に示すように、指定の方向で当該荷物を目的ステーションに載置することができる。
【0142】
なお、本例では、前方の載置台である第一載置台141で当該荷物を受け取るとしたが、後方の載置台である第二載置台142で当該荷物を受け取ってもよい。
【0143】
この場合、台車140は、第二載置台142が前方の状態で目的ステーションに到着する。その結果、例えば、目的ステーションの下流であってかつ比較的に近い位置に、カーブ部分105aまたは他のステーション120がある場合に、目的ステーションで停車した当該台車140の存在が、他の台車140の動作を妨げることが防止される。
【0144】
以上説明したように、本実施の形態における搬送車システム100によれば、台車140の、目的ステーションに到着する時点での向きを、移載作業の内容などに応じて適応的に変更させることができる。
【0145】
これにより、台車140に、荷物の移載作業をスムースに実行させることができる。また、例えば、当該台車140に、他の台車140の動作を妨げないような態様で荷物の移載作業を実行させることができる。
【0146】
また、台車140の向きの変更は、走行の制御(前進、後退、操舵、停止など)により実行されるため、例えば、台車140の向きを固定したまま、第一載置台141と第二載置台142の位置を入れ替えるような複雑な機構は不要である。
【0147】
このように、本実施の形態における搬送車システム100は、走行方向に複数の荷物を載置可能な搬送車を備える搬送車システムであって、効率的な搬送作業を実現することができる。
【0148】
なお、本実施の形態における搬送車システム100では、図3等を用いて説明したように、台車140に方向転換を実行させることで、台車140に、目的ステーションへの到着後に後退させることなく目的ステーションにおける移載作業を行わせている。
【0149】
しかし、決定部112は、このように方向転換が必要となるような決定を行おうとする場合、例えば、方向転換を行う場合の作業効率と、行わない場合の作業効率とを比較し、より効率のよい方を選択してもよい。
【0150】
図11は、本発明の実施の形態におけるコントローラ110の処理の流れの別の一例を示すフロー図である。
【0151】
図11に示す処理の流れは、大まかには、図2に示す処理の流れと同じであり、コントローラ110は、前方にすべき載置台を決定する(S10)。また、走行制御部114は、決定された載置台が前方の状態で目的ステーションに到着するように、台車140の走行を制御する(S20)。
【0152】
しかし、図11に示す処理の流れでは、より詳細には、決定部112は、台車140に方向転換させる決定をしようとする場合、このように決定した場合に作業効率の観点から有利であるかを確認したうえで決定する。具体的には以下の通りである。
【0153】
決定部112は、例えば図3に示すように、荷物[1]を前方の第一載置台141に載置した後に、台車140が次に実行すべき移載作業の内容として、目的ステーションでの荷物[2]の受け取りと、目的ステーションへの荷物[1]の移載を示す情報を取得する。
【0154】
この場合、決定部112は、台車140が目的ステーションへの到着後に後退させずに、当該移載作業を実行させるために、第二載置台142を前方にすべきと仮決定する(S11)。
【0155】
決定部112はさらに、(a)第一載置台141が前方のままで台車140が目的ステーションに到着する場合の、台車140による作業効率である第一効率と、(b)台車140に方向転換させることで第二載置台142を前方とする場合の、台車140による作業効率である第二効率とを比較する(S12)。
【0156】
ここで、第一載置台141が前方のままで台車140が目的ステーションに到着する場合、台車140は、目的ステーションに到着した後に、荷積みと荷降ろしとの間に後退する必要が生じる。
【0157】
また、台車140に方向転換させる場合、目的ステーションに到着した後に後退することなく荷積みと荷降ろしとを実行することができるが、方向転換のための時間が余分に必要となる。
【0158】
従って、上記(a)の場合の作業効率と(b)の場合の作業効率との間の差異は、(a)の場合の後退に要する時間(後退所要時間)と、(b)の場合の方向転換に要する時間(方向転換所要時間)との差異が支配的である。
【0159】
そこで、決定部112は、後退所要時間と方向転換所要時間とを比較し、例えば、後退所要時間が方向転換所要時間よりも小さい場合、第一効率のほうが第二効率よりも高いと判断し(S12でYes)、第一載置台141を前方にすべきと決定する(S13)。つまり、上記の仮決定(S11)の結果は覆される。
【0160】
また、決定部112は、例えば、後退所要時間が方向転換所要時間以上である場合、第二効率が第一効率以上であると判断し(S12でNo)、第二載置台142を前方にすべきと決定する(S14)。つまり、上記の仮決定(S11)の結果は維持される。
【0161】
ここで、例えば、ステーション120ごとの後退所要時間と、カーブ部分105aごとの方向転換所要時間とは、コントローラ110が有する所定の記憶媒体(図示せず)に予め記憶されている。
【0162】
決定部112は、台車140の移載作業の内容から、目的ステーションはどのステーション120であるか、および、方向転換が可能な場所はどのカーブ部分105aであるかを特定し、特定したステーション120およびカーブ部分105aに対応する、後退所要時間および方向転換所要時間を当該記憶媒体から読み出す。これにより、上記の第一効率と第二効率との比較(S12)を行うことができる。
【0163】
また、決定部112は、特定したステーション120のサイズを示す情報、および、台車140の性能を示す情報等から、必要に応じて、後退所要時間および方向転換所要時間を算出してもよい。
【0164】
その後、走行制御部114は、上記決定(S13またはS14)に従って、第一載置台141または第二載置台142が前方の状態で台車140が目的ステーションに到着するように、台車140の走行を制御する(S20)。
【0165】
つまり、第一載置台141を前方にすべきと決定された場合(S13)、台車140は方向転換することなくそのままの向きで目的ステーションに到着する。また、第二載置台142を前方にすべきと決定された場合(S14)、台車140は方向転換することで前後が入れ替えられた後に目的ステーションに到着する。
【0166】
このように、台車140の方向転換の有無における作業効率の差異までも考慮した上で、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にすべきかを決定することで、例えば、より現実に即した決定がなされる。その結果、搬送車システム100における搬送作業の効率がより向上される。
【0167】
なお、図11では、第一載置台141が前方の状態において、第二載置台142を前方にすべきと仮決定する場合について説明した。しかし、第二載置台142が前方の状態において、第一載置台141を前方にすべきと仮決定する場合においても同様の処理が実行される。
【0168】
つまり、第二載置台142が前方のままの方が効率がよいと判断された場合は、仮決定が覆され、台車140に方向転換させて、第一載置台141を前方にした方が効率がよいと判断された場合は、仮決定は維持される。
【0169】
以上、本発明の搬送車システムについて、実施の形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したものも、あるいは、上記説明された複数の構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0170】
例えば、搬送車の一例である台車140は、第一載置台141および第二載置台142の2つの載置台を有している。しかし、台車140は、走行方向に並べて配置された3以上の載置台を有してもよい。
【0171】
つまり、台車140は、走行方向に並べて配置された少なくとも2つの載置台を有していれば、上記実施の形態で説明したような、搬送車システム100における荷物の搬送作業の効率化が可能である。
【0172】
また、台車140は、可能であれば、カーブ部分105a以外の経路105上で方向転換を行ってもよい。また、例えば経路105の近傍に方向転換用のエリアを設け、当該エリアで台車140に方向転換を行わせてもよい。
【0173】
例えば、台車140に方向転換させる必要があり、かつ、台車140の現在位置と、目的ステーションまでの間にカーブ部分105aがない場合を想定する。この場合、カーブ部分105a以外の場所であって方向転換可能な広さを有する場所で、当該台車140に方向転換させてもよい。
【0174】
また、カーブ部分105aの態様も、図4および図5等に示す態様以外であってもよく、例えば、複数の経路105が交差する交差点などもカーブ部分105aの一例である。
【0175】
また、例えば、決定部112が、ある時点における目的ステーションと、その次の目的ステーションとを認識している場合を想定する。
【0176】
この場合、決定部112は、これら目的ステーション間において、台車140の方向転換が可能な経路105上の部分(例えば、方向転換が可能なように、経路105がレイアウトされた部分)があるか否かで、方向転換させるか否かおよび方向転換のタイミング(位置)等を決定してもよい。
【0177】
例えば、決定部112は、目的ステーション間に、方向転換可能な経路105上の部分がある場合、荷物の向きの都合等を考慮した上で、台車140に、先の目的ステーションでの移載作業を終えた後に方向転換させる(2つの載置台の前後関係を逆転させる)と決定することができる。
【0178】
また、決定部112により台車140の方向転換が必要となるような決定がされた場合、走行制御部114が、その方向転換を行うべきタイミングまたは位置を、各種の条件に応じて決定してもよい。
【0179】
また、経路105のレイアウト上、台車140が経路105に沿って走行するだけで、台車140が必然的に方向転換されてしまう箇所が経路105上にある場合を想定する。
【0180】
この場合、決定部112は、台車140の方向転換が必要となるような決定をする際、例えば、台車140を、当該箇所を経由して目的ステーションに向かうように、走行制御部114に通知してもよい。
【0181】
また、台車140が必然的に当該箇所を通過することが予め分かっている場合、決定部112は、当該箇所における方向転換を考慮し、当該箇所を通過する前の時点で、第一載置台141および第二載置台142のいずれを前方にしておくべきかを決定してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0182】
本発明の搬送車システムは、走行方向に複数の荷物を載置可能な搬送車を備える搬送車システムであって、効率的な搬送作業を実現するための搬送車システムである。従って、工場および物流倉庫等で荷物の搬送を行うための搬送車システム等として有用である。
【符号の説明】
【0183】
100 搬送車システム
105 経路
105a カーブ部分
110 コントローラ
112 決定部
114 走行制御部
120 ステーション
140 台車
141 第一載置台
142 第二載置台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のステーションに沿って設けられた経路と、前記経路に沿って走行する搬送車と、前記搬送車の制御を行うコントローラとを備える搬送車システムであって、
前記搬送車は、それぞれが荷物の載置が可能な、走行方向に並べて配置された第一載置台と第二載置台とを有し、方向転換することで、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれをも前記走行方向における前方とすることが可能であり、
前記コントローラは、
前記搬送車が実行を予定する荷物の移載作業の内容と、前記第一載置台および前記第二載置台における荷物の載置状況とを用いて、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定する決定部と、
前記搬送車の走行を制御することで、前記決定部により決定された前記第一載置台または前記第二載置台が前方である状態で、前記搬送車を、前記移載作業が行われるステーションである目的ステーションに到着させる走行制御部とを有する
搬送車システム。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記第一載置台が前方であり、かつ、前記決定部が前記第二載置台を前方にすべきと決定した場合、前記目的ステーションまでの前記経路に存在するカーブ部分で前記搬送車の前後が入れ替わるように方向転換させることで、前記第二載置台が前方である状態で前記搬送車を前記目的ステーションに到着させる
請求項1記載の搬送車システム。
【請求項3】
前記決定部は、前記搬送車が、前記目的ステーションに到着後に後退することなく前記移載作業が行えるように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項4】
前記決定部は、
(a)前記第一載置台および前記第二載置台のうち前記第一載置台にのみ荷物が載置された状態で前記搬送車が前記目的ステーションに到着する予定であり、
(b)前記移載作業が、前記第一載置台に載置された前記荷物を前記目的ステーションに移載し、かつ、前記目的ステーションに載置された荷物を前記搬送車が受け取る作業である場合、
前記搬送車が、前記目的ステーションに到着後に後退することなく前記移載作業が行えるように、前記第二載置台を前方にすべきと決定する
請求項3記載の搬送車システム。
【請求項5】
前記決定部は、前記搬送車が前記目的ステーションで停車した場合に、前記搬送車の存在が、前記経路の妨げとならないように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項6】
前記決定部は、前記搬送車が前記目的ステーションで停車した場合に、前記搬送車の存在が、前記目的ステーションに隣接する他のステーションにおける移載作業の妨げとならないように、前記第一載置台および前記第二載置台のいずれを前方にすべきかを決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。
【請求項7】
前記決定部は、前記第一載置台が前方であり、かつ、前記第二載置台を前方にすべきと決定しようとする場合、
(a)前記第一載置台が前方のままで前記搬送車が前記目的ステーションに到着する場合の、前記搬送車による作業効率である第一効率と、(b)前記搬送車に、前記搬送車の前後が入れ替わるように方向転換させることで前記第二載置台を前方とする場合の、前記搬送車による作業効率である第二効率との比較を行い、
当該比較の結果、前記第一効率が前記第二効率よりも高い場合、前記第二載置台ではなく前記第一載置台を前方にすべきと決定する
請求項1または2に記載の搬送車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−3855(P2013−3855A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134570(P2011−134570)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】