説明

携帯型端末装置

【課題】ノートモードとタブレットモードの2つのモードを切り替えて使用できる高機能の小型パソコンなどの携帯装置において、蓋部の開閉機能と回転機能に係わる可動部の使用実績を正確かつ詳細に検出し、携帯装置の劣化により引き起こされる破損や故障の発生を未然に防止する。
【解決手段】入力部14が配設された本体10と表示装置20とを備え、ノートモードと、タブレットモードとに切り替え可能な携帯型端末装置1であって、開閉に係わる情報を検出する開閉検出手段M3と、回転に係わる情報を検出する回転検出手段S4、S5と、開閉および回転に係わる情報を記憶する情報記憶手段754と、開閉および回転に係わる情報の比較を行う比較手段755と、比較手段755からの情報に基づいて表示を行う表示手段756とを備え、少なくとも開閉検出手段M3、回転検出手段S4、S5および情報記憶手段754は、主電源OFF時であっても動作可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型パソコン等の携帯型端末装置に関し、特に蓋部の開閉に係わる可動部の故障の予測と表示に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、持ち運びが容易なノートパソコンや、携帯型辞書、携帯電話などの携帯型端末装置(以下、携帯装置ともいう)が広く使用されるようになった。これらの携帯装置は、入力部が配設された本体に対して表示装置が配設された蓋部をノート状に開閉してノートモードとして使用する構造が一般的であるが、本体に対して蓋部を回転して表裏を反転させ、本体上に表示装置を重ねてタブレットモードとしても使用可能な2モード切り替え構造を備えた携帯装置も普及している。
【0003】
これらの携帯装置において使用時に蓋部を開閉するなど可動部を繰り返し使用する場合、可動部は使用実績に応じて徐々に劣化し、やがて破損に至る。可動部の破損は携帯装置を使用不能にするだけでなく、可動部以外の部分における二次的な故障を引き起こす要因となりやすい。したがって、蓋部の開閉や回転に係わる可動部の品質および耐久性の確保と故障に対する備えが、携帯装置の機能および利便性の優劣を左右する重要な要件となる。
【0004】
これに対して、近年、携帯装置の使用実績に係わる評価技術に関し、折り畳み型の携帯電話装置などにおいて、折り畳み部の開閉動作の回数をカウントし、カウントした回数が設定された回数に達すると、カウント数の表示を行うなどの技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、故障の診断および判定に関する技術に関しては、情報機器などにおける駆動部材や動力伝達部材について、実働状態で測定した動作状態に係わる信号が、正常範囲に対してどの程度ずれているかを判定し、故障診断を行なう方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2003−309629号公報
【特許文献2】特開2005−33559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携帯装置の開閉動作のみを取り上げて開閉回数をカウントし、設定された回数に達した場合に表示を行う従来の技術は、故障時の処置において使用する情報を得ることを目的としており、携帯装置の使用実績の目安として折り畳み部の開閉動作のカウント数を携帯装置に表示するに過ぎない。したがって、カウント数と携帯装置の故障の予測とは無関係であり、カウント回数が表示された携帯装置がその後何回程度開閉した場合に故障が予測されるかは不明である。また、ノートモードとタブレットモードの2つのモードを切り替えて使用できる高機能の携帯型パソコンなどでは、表示装置が配設された蓋部には開閉機能と回転機能を備えており、開閉機能のみの携帯装置に比べて可動部の構造と動作が複雑になっている。したがって、蓋部の開閉や回転に係わる可動部の耐久性に関し、故障時に関する確実かつ効果的な備えを実現するためには、携帯装置の蓋部に関する使用実績を正確かつ詳細に把握できる方法を実現することが必要であり、折り畳み部の開閉回数のみをカウントする従来の方法は、機能的に不十分であることは明らかである。
【0007】
本発明は上記の課題を解決するものであり、ノートモードとタブレットモードの2つのモードを切り替えて使用できる高機能の小型パソコンなどの携帯装置において、表示装置が配設された蓋部の開閉機能と回転機能に係わる可動部の使用実績を正確かつ詳細に検出することを可能にし、また、携帯装置の使用に伴う故障時期を予測し表示する機能を備えた高機能で利便性に優れた携帯型端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために、本発明の携帯型端末装置は、本体と表示部とを有し、表示部が、本体に対して開閉可能に取り付けられるとともに本体に対して回転可能に取り付けられている携帯型端末装置であって、開閉の回数を検出する開閉検出手段と、回転の回数を検出する回転検出手段と、制御部とを備え、制御部は、開閉の回数および回転の回数が所定の回数を超えたとき警告を発する。
【0009】
このような構成により、表示部の開閉回数と回転回数をともに検出することができるので、より精度のよい故障予測が可能となる。これによって、携帯型端末装置の破損や故障を未然に防止することができる。
【0010】
また、本発明の携帯型端末装置では、制御部と開閉検出手段と回転検出手段は、本体の主電源がOFFの状態でも動作するようにしてもよい。
【0011】
このような構成により、主電源のON/OFFに関係なく表示部の開閉回数および回転回数を検出することができるので、より精度のよい故障予測が可能となる。
【0012】
また、本発明の携帯型端末装置では、制御部は、開閉の回数と回転の回数を独立してカウントし、いずれかの回数が所定の回数を超えたとき警告を発してもよい。
【0013】
このような構成により、表示部の開閉に係わる部分と回転に係わる部分とを独立に故障予測ができるので、より精度のよい故障予測が可能となる。
【0014】
本発明の携帯型端末装置は、入力部が配設された本体とヒンジ部によって開閉が可能に取り付けられた表示装置とを備え、本体に対して表示装置をノート状に開いて使用するノートモードと、本体に対して表示装置を回転して入力部上に重ねて使用するタブレットモードとに切り替え可能な携帯型端末装置であって、開閉を検出する開閉検出手段と、回転を検出する回転検出手段と、開閉および回転の回数をカウントするカウント手段と、開閉および回転の回数の情報を記憶する情報記憶手段と、開閉および回転の累積回数と予め設定された開閉および回転の故障予測回数との比較を行う比較手段と、比較手段の比較結果に基づいて警告表示を行う警告表示手段とを備え、少なくとも開閉検出手段、回転検出手段、カウント手段および情報記憶手段は、主電源がOFFの状態でも動作する。
【0015】
このような構成により、ノートモードとタブレットモードとに切り替え可能な携帯型端末装置において、主電源のON/OFFに関係なく表示装置の開閉および回転に係わる情報を検出して情報記憶手段に記憶することが可能となる。また、故障予測情報を予め設定しておくことにより、携帯型端末装置の使用実績に基づいて表示装置の開閉および回転に関する情報を事前に表示し、使用者に注意を喚起することができる。これにより、装置の劣化により引き起こされる破損や故障を未然に防止することができ、利便性に優れた高品質の携帯型端末装置を提供することができる。
【0016】
また、本発明の携帯型端末装置では、開閉検出手段はノートモードとタブレットモードの区分を検出するモード検出手段を含み、カウント手段はモードごとに開閉の回数をカウントしてもよい。
【0017】
このような構成により、ノートモードとタブレットモードそれぞれにおいて開閉回数をカウントできるので、使用実績を正確に把握でき、使用者へ正しい警告情報を提供することができる。
【0018】
また、本発明の携帯型端末装置では、開閉検出手段はノートモードとタブレットモードの区分を検出するモード検出手段を含み、回転検出手段はノートモードとタブレットモードとの切り替え情報に基づいて回転を検出してもよい。
【0019】
このような構成により、開閉検出手段と同じ情報により回転まで検出できるので特別に回転検出手段を追加する必要がなく、構成を簡略化することができる。
【0020】
また、本発明の携帯型端末装置では、回転検出手段はさらに回転角度を検出する手段を含み、回転の回数は回転角度の情報も使って計算してもよい。このような構成により、表示装置の回転を途中で中断するなど、通常の使用方法でない場合においても正確に使用実績を検出することができ、故障予測情報の精度を高めることができる。
【0021】
また、本発明の携帯型端末装置では、情報記憶手段は、開閉検出手段および回転検出手段が検出した情報の履歴に係わる情報をさらに記憶し、警告表示手段は、履歴の情報に基づいて警告表示を行ってもよい。
【0022】
このような構成により、開閉および回転に関する使用経過を蓄積することにより、過去の使用実績に応じて故障時期を予測することが可能となり、使用者に正確な警告表示を発することができる。
【0023】
また、本発明の携帯型端末装置は、表示素子をさらに備え、警告表示手段は、表示装置でのメッセージの表示または表示素子の点灯によって警告表示を行ってもよい。
【0024】
このような構成により、故障予測の警告表示を正確かつ確実に表示することができ、使用者に対して効果的に注意を喚起することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ノートモードとタブレットモードとに切り替え可能な携帯装置において、蓋部の開閉などの使用実績を正確かつ詳細に検出し、予め記憶された関連情報と比較して表示を行うことが可能となる。したがって、携帯装置の使用に伴う故障予測に係わる情報を表示し、使用者に注意を喚起することができる。これにより、装置の劣化により引き起こされる破損や故障を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図1から図7を用いて説明する。
【0027】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態における携帯型端末装置1(以下、「本装置1」と略記する)について、以下に説明する。
【0028】
まず、図1および図2により、本装置1の構造の概略について説明する。図1および図2は、本装置1を二つの使用方法で使用した場合の外観を示す斜視図である。
【0029】
図1は、本装置1をノートPCとして通常の使用方法(以下、「ノートモード」と略記する)で使用した場合を示し、本装置1は、本体10および表示装置20を備え、表示装置20は、本体10に配設された支持部16および表示装置20に配設された支持部23により係合され、表示装置20は本体10に対して開閉可能に構成されている。表示装置20はLCD(液晶ディスプレイ)で構成されている。また、本体10の操作面11にはキーボードによる入力部14およびタッチパッドによる操作部15が、側面12にはLED13がそれぞれ配設され、表示装置20の表示面21にはタッチパネルによる表示部22が設けられている。
【0030】
本装置1の筺体構造としては、表示装置20は支持部23に配設された回転機構(図示せず)によりXX軸を中心として回転可能に構成され、本装置1をノートモードで使用する場合には、本体10の操作面11と表示装置20の表示面21を対向させた状態で開閉することができる。表示装置20は、さらに本体10の支持部16に配設された回転機構(図示せず)によりYY軸を中心として回転可能に構成されており、支持部16および23の作用により表示装置20を2方向に回転させることにより、本体10に対して表示装置20の表示部22を外側にして閉じることができる。これにより、本装置1をコンパクトな形態にして表示装置20の表示部(タッチパネル)22から入力を行う方法(以下、「タブレットモード」と略記する)で使用することができる。
【0031】
図2は、本装置1をノートモードからタブレットモードに切り替えて使用する場合の形態の変化の状況を示す斜視図である。前述のように、本装置1は、表示装置20は本体10に対してXX軸およびYY軸まわりに回転することができる。図2におけるA部詳細図は、図1に示す支持部16、23に係わる可動部H(以下、「ヒンジ部H」と略記する)の構成を示す。
【0032】
ヒンジ部Hは、基本要素部品として回転支持部201、開閉支持部202、回転軸203、開閉軸204、205、および軸受206、207、208を備えている。
【0033】
回転支持部201は本装置1の本体10に配設され、軸受206により回転軸203を回転可能に嵌合保持している。また、回転軸203は開閉支持部202と一体化されており、軸受207、208により開閉軸204、205を回転可能に嵌合保持している。なお、回転軸203および開閉軸204、205はそれぞれの軸受に対してばねなど(図示せず)により軸方向に付勢されており、所定のトルクで回転させることができる。したがって、本装置1においては、表示装置20は、開閉軸204、205によりXX軸を中心として回転することにより、本体10に対して表示装置20の開閉を行うことができる。また、回転軸203によりYY軸を中心として回転することにより、本体10に対して表示装置20の回転を行うことができる。これにより、本装置1は図2(a)に示すノートモードの形態から表示装置20をYY軸まわりに回転させて表示装置の表裏を反転させた後、XX軸まわりに回転させて本体10に対して表示装置20を閉じることにより、本体10上に表示装置20の表示部22を表面にして重ね、図2(b)に示すタブレットモードの形態に切り替えることができる。
【0034】
つぎに、本装置1の制御に係わる全体構成について、図3により説明する。図3は、本装置1の制御に係わる情報処理装置100の全体構成を示すブロック図である。
【0035】
情報処理装置100は、CPU101、ノースブリッジ102、メインメモリ103、グラフィックコントローラ104、VRAM(ビデオRAM)105、LCD(液晶ディスプレイ)106、サウスブリッジ107、BIOSメモリ108、ODD(光ディスクドライブ)109、HDD(ハードディスクドライブ)110、USBポート111、PCIバス112、PCIデバイス113、114、EC(エンベデッドコントローラ)115、電源スイッチ116、マウス/キーボード117、LED118、EEPROM(不揮発性メモリ)119および開閉・回転センサー120を備えている。
【0036】
CPU101は情報処理装置100の処理全体を制御するプロセッサであり、HDD110に記憶されたオペレーティングシステム(OS)および各種アプリケーションプログラムをメインメモリ103にロードして実行する。
【0037】
ノースブリッジ102は、チップセットの構成要素のひとつであり、CPU101と接続し、メインメモリ103やPCI Expressバス(グラフィック用)、サウスブリッジ107とのデータのやり取りを制御する。
【0038】
グラフィックコントローラ104は、OS/アプリケーションプログラムによってVRAM105に書き込まれた画面データを、表示信号に変換してLCD106に出力する。
【0039】
BIOSメモリ108は不揮発性のフラッシュメモリであり、入出力ハードウェアの初期化や制御を実行するシステムソフトウェアであるBIOS(Basic Input Output System)が格納されている。また、一部書き込み可能な領域を持っている。
【0040】
サウスブリッジ107はチップセットの構成要素のひとつであり、ODD109およびHDD110を制御するIDEコントローラやSATAコントローラを内蔵している。また、USBポート111を介して外部の各種USBデバイスを制御したり、PCIバス112に接続されたPCIデバイス113、114と通信を行う。また内部にはコイン電池等でバックアップされた揮発性メモリ(CMOS)を含んでいる。
【0041】
EC115は、マイクロコンピュータであり、ユーザーによる電源スイッチ116の操作を受け付けてメイン電源(図示せず)のON/OFFの制御を行う。またマウス/キーボード117の操作を受け付けて、操作内容をCPU101へ伝達することや、本体の各種状態をLED118に表示してユーザーに知らせることなどを行う。EC115は、本体のメイン電源が切られている場合でも、図示していないが内蔵バッテリーまたは外部電源としてのACアダプタから電力の供給を受けて動作する。
【0042】
また、EC115にはEEPROM(不揮発性メモリ)119が接続されており、EC115の制御のもとに各種情報が記憶され、例えば、EC115が開閉・回転センサー120から、開閉・回転イベントを受け取り、EEPROM119に回数を記録することなどが行われる。なお、EEPROM119を設けない場合は、EC115が開閉・回転センサー120から、開閉・回転イベントを受け取り、一定間隔(PCが起動したときなど)でBIOSがEC115から回数を取得し、CMOSに一時記録する。CMOSに一定量のデータが記録され場合には、BIOSがCMOSのデータをBIOSメモリ108の所定の領域に記録する。
【0043】
その他、破線で示したようにEC115とは別に専用のカウンタ回路121と不揮発性メモリ122およびこれらに電力を供給するための電源(ボタン電池/コンデンサ)123を備えることにより、EC115およびEEPROM119の動作を代行させることができる。この場合、内蔵バッテリーやACアダプタが接続されていなくても開閉・回転イベントをカウントして記憶することができる。
【0044】
つぎに、本装置1の特徴である蓋部(表示装置)の繰り返し使用に係わる故障予測機能について、図4〜図7により詳細に説明する。
【0045】
本装置1は、表示装置20が本体10に対する蓋部としての機能を備えており、本体10に対して表示装置20が開閉および回転可能に構成されている。本装置1を継続して使用することにより、表示装置20の開閉および回転を繰り返し行った場合には、可動部の劣化に伴い、故障が発生しやすくなる。したがって、繰り返し使用による故障の発生を未然に防止することが、本装置1の信頼性を確保するための重要な要件になる。本装置1は、これに対する故障予測機能を備えており、実際の開閉回数や回転回数が限界に近づくと使用者に警告を発するようにしている。
【0046】
また図1および図2からわかるように、開閉に関してはノートモードとタブレットモードで表示装置20の開閉の向きが逆になる。すなわちノードモードでは表示装置20の表面(表示部22側)が操作面11と対面するように開閉が行われる。一方、タブレットモードでは逆に表示装置20の裏面と操作面11が対面するように開閉が行われる。この開閉の向きによりヒンジ部Hの可動部位が異なるために、正確に故障を予測するためには、開閉の向きも区別して開閉回数をカウントする必要がある。例えば、ヒンジ部Hの開閉可能回数がノートモードとタブレットモードでそれぞれ1万回に達したときに警告を発することにする。もし開閉の向きが区別できなければ開閉回数の合計が1万回に達した時点で使用者に警告を発することになる。一方、開閉の向きが区別できれば、ノートモードおよびタブレットモードそれぞれの開閉回数が1万回に達した時点で警告を出せばよい。このように、開閉の向きが区別できない場合は、まだ開閉回数の限度までには余裕があるにも係わらず、使用者に警告を発して部品交換等の処置をすることになり不経済である。したがって、本装置1では2つの向きの開閉回数と回転回数をそれぞれ別々にカウントできるようにしている。
【0047】
図4は、本装置1に備える故障予測部750の主要な構成を示すブロック図である。
【0048】
故障予測部750は、開閉検出センサー751、回転検出センサー752、カウンタ部753、情報記憶部754、比較部755および警告表示部756を備え、少なくとも開閉検出センサー751、回転検出センサー752、カウンタ部753および情報記憶部754は、専用電源757から電力の供給を受け、本装置1の主電源がOFFであっても動作可能に構成されている。
【0049】
開閉検出センサー751はモード検出部759を含んでおり、ノートモードとタブレットモードそれぞれの開閉を区別して検出する開閉検出手段としての機能を備え、表示装置20の開閉に係わる情報を検出することができる。開閉検出センサー751の部品としては、マグネットやスイッチ等を使用する。開閉検出方法については後程詳しく説明する。
【0050】
回転検出センサー752は、回転検出手段としての機能を備え、表示装置20の回転に係わる情報を検出することができる。回転検出センサー752の部品としては、マグネットなどを使用することができるほか(この方法については後述する)、表示装置20のヒンジ部H(図2)に可変抵抗式の回転センサーを配置することにより、表示装置20の回転角度を検出することができる。これにより、表示装置20が本体10に対して回転した場合には、完全(180度)回転だけでなく中途回転(180度以下)についても回転角度を検出することができる。
【0051】
カウンタ部753は、開閉検出センサー751および回転検出センサー752から受け取った検出情報に基づき、表示装置20の回転回数およびモードごとの開閉回数を独立してカウントすることができる。また、カウントした回転回数と開閉回数について、逐次、それぞれの累積値を情報記憶部754に記録することができる。開閉と回転に関する回数のカウントは、ECや専用カウンタなどにより行う。
【0052】
ここで情報記憶部754は、EEPROM119とBIOSメモリ108に対応している。また、情報記憶部754であるEEPROM119には表示装置20の開閉および回転に係わる推測寿命データ758が予め記録されている。
【0053】
専用電源757は、主電源のON/OFFとは関係なく故障予測部750に電力を供給する専用電源であり、内蔵バッテリーやACアダプタ(いずれも図示せず)に相当する電源である。また、これらが接続されていない場合は、専用のボタン電池によって電力を供給してもよい。少なくとも開閉検出センサー751、回転検出センサー752、カウンタ部753および情報記憶部754に直接接続され、それらに電力を供給する。したがって、本装置1の主電源がOFFであっても、開閉検出センサー751、回転検出センサー752、カウンタ部753および情報記憶部754は動作可能であり、主電源がOFFの状態で表示装置20の開閉や回転を行っても、正確に回数をカウントし、記録することができる。
【0054】
比較部755は、比較指示手段としての機能を備え、ソフトウェアにより情報記憶部754に記憶された情報を参照し、表示装置20の開閉および回転に係わる累積カウント情報と推測寿命データとの比較を行い、比較結果に基づき警告表示部756に対して表示の指示を行う。比較部755の機能はCPU101で実行される。
【0055】
警告表示部756は、表示手段としてLED13を備え、比較部755からの受信した指示情報に基づいて表示装置20の開閉および回転に係わる情報の表示を行う。表示方法としてはLED13などの表示素子を点灯する方法の他に、表示装置20の表示部22(図1)の一部を使用して表示する方法や専用の表示画面(図示せず)を設ける方法などを使用することができる。ここでLED13および表示部22は図3ではLED118およびLCD106である。なお、図示していないが、上記各動作を制御するための制御部も故障予測部750の中に含まれている。そしてこの制御部の役目をするのがEC115である。
【0056】
つぎに、本装置1が備える故障予測部750の構成要素である開閉検出手段および回転検出手段の配設方法について、図5により説明する。
【0057】
図5は、本装置1における開閉検出手段および回転検出手段の配設方法に関する第1の事例を示す斜視図である。
【0058】
図5(a)は、マグネットおよびセンサーを使用することにより、表示装置20の開閉、回転、および表示装置20を閉じた場合の本体10に対向する面の表裏の区分(ノートモードとタブレットモードの区分)を検出する事例を示す。表示装置20の中央上部および右下のコーナー部付近にそれぞれマグネットM1およびM2を配設する。また、本体10の前縁中央部付近には、表示装置20を閉じたときに表示装置20に配設されたマグネットM1と対向する位置にセンサーS1を配設する。さらに、本体10の奥右コーナー部付近の表示装置20に配設されたマグネットM2に対応する位置にセンサーS2を配設し、本体10においてセンサーS2と左右対称な位置にセンサーS3を、それぞれ配設する。なお、マグネットM1、M2は表示装置20の内部に埋設されており、本体10に対して表示装置20を閉じてセンサーS1〜S3のいずれかと対向した場合には、対向面が表示装置20の表裏いずれであっても、マグネットM1、M2から発する磁気をセンサーS1〜S3のいずれかが検出することができる。
【0059】
この構成により、表示装置20の開閉回数をマグネットM1およびセンサーS1により検出することができる。同様に、表示装置20の表裏の区分(ノートモードとタブレットモードの区分)をマグネットM2およびセンサーS2、S3の組み合わせ(M2×S2またはM2×S3)により検出することができる。さらには、ノートモードとタブレットモードの切り替え情報を使用すれば表示装置20の回転回数および回転の方向も検出が可能となる。
【0060】
図5(b)は、マグネットM2、センサーS2、S3に代えてヒンジ部Hに可変抵抗式の回転センサーを配置することにより、表示装置20の回転角度を検出する事例を示す。
【0061】
この事例では、マグネットM1、センサーS1およびヒンジ部Hに配設された回転センサー(図示せず)の機能により、図5(a)と同様な効果を発揮できるほか、表示装置20の回転回数、回転方向および回転角度に関するすべての情報(データ)を詳細かつ確実に取得することができる。また、回転角度情報も回転数のカウントに使用できる。例えば、回転角度が90度であれば、回転数を1/2としてカウントすればよい。このようにすれば回転回数の精度がより向上する。
【0062】
つぎに、図6により、本装置1における開閉検出手段および回転検出手段の配設方法に関する第2の事例について説明する。
【0063】
図6は、本装置1における開閉検出手段および回転検出手段の配設方法に関する第2の事例を示す斜視図である。
【0064】
この事例では、表示装置20の回転を検出せず、開閉および表示装置20を閉じた場合の本体10に対向する面の表裏の区分(ノートモードとタブレットモードの区分)を検出する。
【0065】
図6(a)に示す事例では、表示装置20の右上部のコーナー部付近にマグネットM3を配設する。また、本体10の前縁左右のコーナー部付近の左右対称な位置で、表示装置20を閉じたときに表示装置20に配設されたマグネットM3と対向する位置にセンサーS4、S5を配設する。この構成により、表示装置20の開閉回数および本体10に対して表示装置20を閉じたときの表裏の区分を、マグネットM3およびセンサーS4、S5の組み合わせ(M3×S4またはM3×S5)により検出することができる。
【0066】
図6(b)に示す事例では、表示装置20の中央上部付近にマグネットM4を配設する。また、本体10の前縁中央部付近には、表示装置20を閉じたときに表示装置20に配設されたマグネットM4と対向する位置にセンサーS6を配設する。さらに、ヒンジ部Hの付近には、本体10および表示装置20のそれぞれにスイッチW1aおよびW1bが配設されている。スイッチとしては突起物を利用した機構スイッチや導電体を使用した電気スイッチを使用することができるが、表示装置20の開閉に係わるロック機構により兼用する方法であってもよい。この構成により、表示装置20の開閉回数をマグネットM4とセンサーS6により検出し、本体10に対して表示装置20を閉じたときの表裏の区分を、W1aおよびW1bにより検出することができる。なお、この事例では、カウンタ部753および情報記憶部754(図4)において表示装置20の開閉および表裏の検出に係わる履歴情報を取得し管理することにより、故障予測部750(図4)の機能に関し表示装置20の回転に係わる検出をおこなわないことの補完を行う。
【0067】
つぎに、図4および図7により本装置1の表示装置20の故障予測に係わる詳細な機能について説明する。図7は、本装置1の表示装置20の故障予測に係わる手順を示すフローチャートである。
【0068】
本装置1の故障予測部750では、表示装置(蓋部)20に対して開閉動作を繰り返した場合、可動部分が破損するまでの繰り返し回数を計測する。これを複数の装置に対して実施し、統計的な処理を行うことにより、可動部の推測寿命(故障に至るまでに繰り返し可能な統計的に算出された回数)Xを算出する。同様にして、装置の蓋部に対して回転動作を繰り返した場合についても、推測寿命Yの算出を行い、蓋部の推測寿命XおよびYを情報記憶部754に予め記録しておく。開閉動作については、ノートモードとタブレットモードごとにXを算出することによってさらに故障予測精度を上げることができる。
【0069】
本装置1の使用に伴い、表示装置20に対して開閉や回転の動作を行った場合には、開閉の繰り返し回数Xおよび回転の繰り返し回数Yが、開閉検出センサー751および回転検出センサー752により、それぞれ独立して自動的に検出され、検出された繰り返し回数X、Yに関する情報は、カウンタ部753に送信される(ステップ1:図7において「S1」と略記する。以下、同様とする)。
【0070】
カウンタ部753では開閉検出センサー751および回転検出センサー752から受け取った検出情報に基づき、表示装置20の開閉および回転回数のカウントを行い(S2)、カウントした回転回数と開閉回数について、逐次、それぞれの累積値を情報記憶部754に記録し、累積回数の更新を行う(S3)。
【0071】
なお、開閉および回転回数の自動検出、開閉および回転回数のカウントおよび累積回数の更新は、本装置1の主電源のON/OFFと関係なく、発生都度、専用電源により自動的に行われる。
【0072】
比較部755では、本装置1の電源が投入されると、情報記憶部754に予め記憶された表示装置20の開閉および回転に係わる累積カウント情報X、Yを参照し、推測寿命X、Yと比較したうえ、予測される故障までの繰り返し可能な回数を算出する(S4)。算出の結果、例えば、開閉および回転に関する繰り返し回数の実績と推測寿命との差が所定値以下になった場合には、その差分に応じて注意喚起情報や警告情報として段階的に表示の指示を行う(S5、S6)。累積カウント情報X、Yが注意喚起の必要な回数に到達した場合には注意喚起情報の表示を行い(S7)、警告の必要な回数に到達した場合には警告情報およびその後の使用可能回数(目安)の表示を行う(S8)。
【0073】
警告表示部756では比較部755からの指示に基づいて、表示装置20の表示部22でのメッセージの表示、LED13の点灯や点灯色の変化などの方法により、注意喚起情報や警告情報の表示を行う。LED13により表示する方法は、表示装置20の開閉および回転に係わる可動部の劣化により表示装置が使用不能になった場合の影響を受けることがない。
【0074】
なお、装置に故障が発生するなどにより修理を実施した場合は、情報記憶部に記録された開閉および回転に関する繰り返し回数の実績XおよびY、ならびに比較部において作成された故障予測に係わる情報をリセットすることができる。
【0075】
また、注意喚起や警告の区分をさらに細分化することもできる。
【0076】
また、情報記憶754に情報表示装置20の開閉および回転の履歴情報を記憶しておき、この履歴情報に基づいて故障日時等を予測して注意喚起情報および警告情報を表示してもよい。この方法により、高精度な寿命予測が可能となる。
【0077】
以上の通り、本装置1は、蓋部(表示装置)のノートモードおよびタブレットモードでの開閉および回転に関する繰り返し使用回数をそれぞれ独立してカウントすることができる。したがって、蓋部(表示装置)の開閉および回転に係わる可動部の故障予測に関し、高精度かつ詳細に情報を検出することができる。また、事前に対象とする携帯装置により繰り返し使用回数による可動部の劣化の検証を行い、統計的に評価された推測寿命に係わるデータが予め装置に格納されており、使用実績に係わる検出データに基づき、使用者に対して適切な時期に適切な故障推測情報を提供することができる。これにより、使用頻度が装置の推測寿命に近づいた場合は、使用者に注意を促す情報や警告情報などを表示し、繰り返し使用による故障の発生を未然に防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明による携帯装置は、ノートモードとタブレットモードなど複数のモードで使用可能な高機能の表示装置において、使用頻度が装置の推測寿命に近づいた場合は、使用者に注意を促す情報や警告情報などを表示し、繰り返し使用による故障の発生を未然に防止することができる。したがって、高い信頼性を備えた高機能の携帯装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の実施の形態における携帯装置の外観を示す斜視図
【図2】同装置の要部構成図および二つの使用形態における外観を示す斜視図
【図3】同装置の制御に係わる全体構成を示すブロック図
【図4】同装置における故障予測部の主要な構成を示すブロック図
【図5】同装置の繰り返し使用に係わる検出手段の配設の第1の事例を示す斜視図
【図6】同装置の繰り返し使用に係わる検出手段の配設の第2の事例を示す斜視図
【図7】同装置の故障予測機能の処理手順を示すフローチャート
【符号の説明】
【0080】
1 携帯型端末装置
10 本体
11 操作面
12 側面
13,118 LED
14 入力部
15 操作部(タッチパッド)
16,23 支持部
20 表示装置
21 表示面
22 表示部(タッチパネル)
100 情報処理装置
101 CPU
102 ノースブリッジ
103 メインメモリ
104 グラフィックコントローラ
105 VRAM
106 LCD
107 サウスブリッジ
108 BIOSメモリ
109 ODD
110 HDD
111 USBポート
112 PCIバス
113,114 デバイス
115 EC
116 電源スイッチ
117 マウス/キーボード
118 LED
119 EEPROM
120 開閉・回転センサー
121 カウンタ回路
122 不揮発性メモリ
123 電源(ボタン電池/コンデンサ)
201 回転支持部
202 開閉支持部
203 回転軸
204,205 開閉軸
206,207,208 軸受
750 故障予測部
751 開閉検出センサー
752 回転検出センサー
753 カウンタ部
754 情報記憶部
755 比較部
756 警告表示部
757 専用電源
758 推測寿命データ
759 モード検出部
M1,M2,M3,M4 マグネット
S1,S2,S3,S4,S5,S6 センサー
W1a,W1b スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と表示部とを有し、前記表示部が、前記本体に対して開閉可能に取り付けられるとともに前記本体に対して回転可能に取り付けられている携帯型端末装置であって、
前記開閉の回数を検出する開閉検出手段と、
前記回転の回数を検出する回転検出手段と、
制御部とを備え、
前記制御部は、前記開閉の回数および前記回転の回数が所定の回数を超えたとき警告を発する携帯型端末装置。
【請求項2】
前記制御部と前記開閉検出手段と前記回転検出手段は、本体の主電源がOFFの状態でも動作する請求項1に記載の携帯型端末装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記開閉の回数と前記回転の回数を独立してカウントし、いずれかの回数が所定の回数を超えたとき警告を発する請求項1または請求項2に記載の携帯型端末装置。
【請求項4】
入力部が配設された本体とヒンジ部によって開閉が可能に取り付けられた表示装置とを備え、前記本体に対して前記表示装置をノート状に開いて使用するノートモードと、前記本体に対して前記表示装置を回転して前記入力部上に重ねて使用するタブレットモードとに切り替え可能な携帯型端末装置であって、
前記開閉を検出する開閉検出手段と、
前記回転を検出する回転検出手段と、
前記開閉および前記回転の回数をカウントするカウント手段と、
前記開閉および前記回転の回数の情報を記憶する情報記憶手段と、
前記開閉および前記回転の累積回数と予め設定された前記開閉および前記回転の故障予測回数との比較を行う比較手段と、
前記比較手段の比較結果に基づいて警告表示を行う警告表示手段とを備え、
少なくとも前記開閉検出手段、前記回転検出手段、前記カウント手段および前記情報記憶手段は、主電源がOFFの状態でも動作する携帯型端末装置。
【請求項5】
前記開閉検出手段は、前記ノートモードと前記タブレットモードの区分を検出するモード検出部を含み、前記カウント手段は前記モードごとに前記開閉の回数をカウントする請求項4に記載の携帯型端末装置。
【請求項6】
前記開閉検出手段は、前記ノートモードと前記タブレットモードの区分を検出するモード検出手段を含み、前記回転検出手段は前記ノートモードと前記タブレットモードとの切り替え情報に基づいて回転を検出する請求項4に記載の携帯型端末装置。
【請求項7】
前記回転検出手段はさらに回転角度を検出する手段を含み、前記回転の回数は前記回転角度の情報も用いて計算される請求項4に記載の携帯型端末装置。
【請求項8】
前記情報記憶手段は、前記開閉検出手段および前記回転検出手段が検出した情報の履歴に係わる情報をさらに記憶し、前記警告表示手段は、前記履歴の情報に基づいて警告表示を行う請求項4から請求項7のいずれか1項に記載の携帯型端末装置。
【請求項9】
表示素子をさらに備え、前記警告表示手段は、前記表示装置でのメッセージの表示または前記表示素子の点灯によって前記警告表示を行う請求項4から請求項8のいずれか1項に記載の携帯型端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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