説明

携帯情報端末用キー入力装置

【課題】片手操作が容易で強固に保持することができ、表示情報の秘匿性にも優れた携帯情報端末用のキー入力装置を提供する。
【解決手段】操作状態において平板な縦長の略直方体形状になるように端末筐体を構成し、文字入力用のキーボードは操作状態において縦長操作面の上部に、表示部は同じ縦長操作面の下部に位置するように配置する。端末筐体におけるキーボード部の上側にあたる上側面に2個のキーを、右側の右側面と左側の左側面には各3個のキーをそれぞれ設ける。上側面の2個のキーにはローマ字表記の日本語母音「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の内の2つの母音を、右側面及び左側面の3個のキーには残りの3個の母音を割り当てる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話機に代表される携帯情報端末に仮名文字、英文字、数字、記号等を入力するためのキー入力装置に関し、特には片手操作が容易で装置を強固に保持することができ、且つ表示情報の秘匿性に優れた携帯情報端末用キー入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機、携帯型電子手帳等の携帯情報端末には表示部を備えた小型のキー入力装置が採用される。このような携帯情報端末、例えば携帯電話機はその殆どが図7に示すような外形に構成されており、操作時には表示部51が操作面の上部に、キーボード52が操作面の下部に位置するように配置されている。文字入力の際は、操作者は例えば左手でキーボード部分を裏面から支えながら左手親指1本を動かして打鍵を行なう。
【0003】
しかし、このような親指1本で操作する方式は親指の作業負担が大きくて親指を疲労させる上、親指の移動距離が長くなって打鍵速度が上がらない問題がある。また、親指を装置の把持に使えないためキーボード部分を手の平面に載せた状態で親指以外の指で装置の振れや落下を防ぎながら打鍵しなければならない。このような把持の仕方では親指の付け根近くのキーを打鍵する際に把持力が不足して振れを十分に防ぐことができず、装置を落下させる危険もある。また、表示部がキーボードの上部に位置するため表示情報を他人に覗き見され易く、プライバシーの保護に欠ける問題もある。
【0004】
こうした問題の解決策として特許文献1には、端末筐体の左側面に1個、右側面に4個のキーを配置した携帯情報端末が開示されている。左側面のキーには「あ」の母音が、右側面の4個のキーには上から順に「い」、「う」、「え」、「お」の母音が割り当てられており、「あ」キーは親指で、右側面の4個のキーはそれぞれ人指し指、中指、薬指、小指で操作することが想定されている。
【0005】
しかし、この装置の場合、表示部がキーボードの上部に位置するため人指し指を側面キーに当てた状態で親指により表面の子音キーを打鍵すると、重心が上部にあるため装置を支えることが困難になって装置下部が浮き上がる。それを防ぐために右側面の各キーに指の力が加わることになり横振れが生じて誤入力を生じやすい。また、親指を側面の「あ」母音キーと表面の子音キーの打鍵に兼用使用するため、親指の移動距離が長くなり負担が重くなる問題がある。更に、表示部がキーボードの上部に位置するため表示情報を他人に覗き見され易く、プライバシーの保護に欠ける問題もある。
【特許文献1】特開000−000000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来技術のこうした問題点を解決するためになされたもので、その課題は、片手操作が容易で強固に端末を保持することができ、且つ表示情報の秘匿性にも優れた携帯情報端末用のキー入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、携帯情報端末用の表示部を備えたキー入力装置であって、端末筐体は操作状態においては平板な縦長の略直方体形状になるように構成されており、文字入力用のキーボードは操作状態において縦長操作面の上部に、表示部は同じ縦長操作面の下部に位置するように配置してあることを特徴とするキー入力装置である。
【0008】
このような構成によれば人指し指の先を端末筐体の上側面に掛けて端末筐体を引き寄せ、端末筐体の下側面を操作者の腹部又は胸部に押し付けた状態で保持することができる。このため人指し指以外の小指や親指の助けを殆ど借りずに端末筐体を安定して保持することができ、操作中における端末筐体の縦振れ、横振れや装置の落下を防ぐことができる。また、表示部が身体の近くに位置するため他人に表示情報を覗き見されるおそれが少なくなり情報の秘匿性が高まる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のキー入力装置において、前記端末筐体における前記キーボード部の上側にあたる上側面には2個のキーが、右側の右側面と左側の左側面には各3個のキーが設けてあり、上側面の2個のキーにはローマ字表記の日本語母音「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の内の2つの母音が、右側面及び左側面の3個のキーには残りの3個の母音がそれぞれ割り付けてあることを特徴とするキー入力装置である。
【0010】
このような構成によれば上側面の2個の母音は人指し指で、側面の3個の母音は中指、薬指、小指で打鍵するこができ、頻出度の高い母音を親指で打鍵する必要がなくなるため親指の疲労が軽減される。また、母音の打鍵を担当する指は担当する母音キーの上又は近くに常駐するため、母音の打鍵速度が速くなって全体としての文字入力速度が向上する効果が得られる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のキー入力装置において、前記上側面の2個のキーには母音「A」、「I」が、前記右側面及び左側面の3個のキーには母音「U」、「E」、「O」が割り付けてあることを特徴とするキー入力装置である。
【0012】
このような構成によれば、請求項2に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載のキー入力装置において、前記上側面の2個のキーには英文字「A」、「E」が、前記右側面及び左側面の3個のキーには英文字「U」、「I」、「O」が割り付けてあることを特徴とするキー入力装置である。
【0014】
このような構成による場合も、請求項2に記載の発明と同様の効果が得られる。
【0015】
また、請求項5に記載の発明は、請求項2乃至4の何れかに記載のキー入力装置において、前記右側面の3個のキー又は左側面の3個のキーからの入力を前記キーボードに設けた機能キーによる選択により無視できるように構成してあることを特徴とするキー入力装置である。
【0016】
このような構成によれば、左手操作の場合に左側面キーを不用意に操作した場合の入力を無視できる。右手操作の場合は右側面キーを不用意に操作した場合の入力を無視できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る携帯情報端末用の表示部を備えたキー入力装置の構成例を実施形態に分けて説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る表示部を備えたキー入力装置の構成例である。このキー入力装置1は、操作状態においては端末筐体が平板な縦長の略直方体形状になるように構成されている。そして、操作面には図7に示した従来のキー入力装置50とは逆に、操作状態においてキーボード2が操作面上部に、表示部3が下部に位置するように配置してある点に特徴がある。操作する際は図2に示すように、例えば、左手で操作する場合には左手でキーボード2部分の裏側を支え、人指し指の先を端末筐体の上側面にあてがい、中指、薬指、小指の先を右側面にあてがって保持する。そして、左手親指にてキーボード2のキーの打鍵を行なう。
【0019】
このような構成のキー入力装置1は次のような利点を有する。第1の利点はキー入力装置1を強固に保持できる点である。キー入力装置1では図7に示した従来のキー入力装置50とは異なり、人指し指の先を端末筐体の上側面に掛けることができる。そして、その人指し指に若干の力を入れて端末筐体を引き寄せ、端末筐体の下側面を図2に示すように操作者の腹部又は胸部5に押し付けることができる。このように人指し指と腹部又は胸部5とで端末筐体の上側面、下側面を挟み持つことができるため端末筐体を安定して保持することができる。その結果、キー入力操作中における端末筐体の縦振れ、横振れが防止されることに加え、装置が落下するおそれが軽減される効果を奏する。
【0020】
第2の利点は、表示部3に表示されている情報の秘匿性が高まる点である。キー入力装置1では表示部3が操作面におけるキーボード2の下部に配置してある。操作状態においては表示部3が操作者の身体近くに位置することになるため、他人に表示情報を覗き見されるおそれが少なくなり情報の秘匿性が高まる効果を奏する。
【0021】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るキー入力装置の操作面の構成図である。本実施形態のキー入力装置1aも操作状態において端末筐体が平板な縦長の略直方体形状になるように構成されている。そして、操作面には第1の実施形態と同様にキーボード8が上部に、表示部9が下部に位置するように配置してある。
【0022】
このキー入力装置1aの更なる特徴は、端末筐体におけるキーボード8の位置する右側面、左側面、そして上側面に文字入力用キーを配置している点である。上側面には2個のキー11、12が、右側面には3個のキー13、14、15が、左側面には3個のキー16、17、18が配置してある。右側面の3個のキーと左側面の3個のキーは左右対称の位置に配置してある。そして、上側面の2個のキー11、12には、ローマ字表記の日本語母音「A」、「I」が割り付けてある。右側面及び左側面の3個のキー13〜15、16〜18には、上から順にローマ字表記の日本語母音「U」、「E」、「O」が割り付けてある。
【0023】
キーボード8の正面は図4の拡大図に示すような構成にしてあり、上部に文字入力用の12個の文字キーが、その下部には動作モードや機能を設定するため5個の機能キーが配置してある。12個の文字キーは3行4列のマトリクス状に配置してある。各文字キーには、数字とローマ字表記の日本語子音、その他の英文字が割り付けてある。キーの総数が少ないため、一つ文字キーに複数の英文字と数字が割り付けてある。数字入力と英文字入力(ローマ字表記の日本語子音入力)との切り替えは機能キーを用いて行なう。
【0024】
1〜3行目の文字キーには、日本語の「か行」〜「わ行」に対応したローマ字表記子音が第1文字として割り付けてある。また、清音に対応した濁音の子音は、対応する清音と同じキーに第2文字として割り付けてある。半濁音の子音「P」は4行2列目キーに第1文字として割り付けてある。
【0025】
日本語では子音の後に母音が続く。子音キーの1回打鍵に続いて端末筐体の側面に配置した母音キーが打鍵された場合には、打鍵された子音キーに第1文字として割り付けられた子音と母音との組合せからなるローマ字に対応したひらがな又はカタカナが入力される。どちらが入力されるかは機能キーにより選択されていた入力モードにより決まる。例外として撥音「ん」は、2行1列目の「N」キーが2回連続打鍵されたときに入力される。
【0026】
このキー入力装置1aにより、例えば左手で日本語ひらがなを入力する場合は、人指し指には上側面に配置された母音「A」、「I」の入力を担当させ、中指、薬指、小指はそれぞれ右側面に配置された「U」、「E」、「O」キーの上に常駐させてそれぞれの母音の入力を担当させる。子音の入力は親指に担当させる。このような分担で入力を行なえば、頻出度の高い母音を親指で打鍵する必要がなくなるため親指の疲労が軽減される。また、母音の打鍵は4本の指で行ない、各指は担当する母音キーの上又は近くに常駐させることができるため母音の打鍵速度が速くなって全体としての文字入力速度が向上する効果が得られる。
【0027】
また、このキー入力装置1aも第一の実施形態のキー入力装置1と同様にキーボード8を操作面上部に、表示部9を下部に配置しているためキー入力装置1と同じようにキー入力装置1を強固に保持できことに加え他人に表示情報を覗き見されるおそれが少なくなる利点が得られる。
【0028】
なお、左手で操作する場合、左側面に配置した3個のキーは使用しない。操作中に誤ってこれらのキーに触れるおそれがあるため、左手操作の場合は左側面の3個のキーからの入力は無視する。反対に右手で操作する場合は右側面の3個のキーからの入力は無視する。それらの指定はキーボード8の下部に配置した機能キーで行なう。
【0029】
(第3の実施形態)
図5は第3の実施形態に係るキー入力装置1bの操作面の構成図、図6はそのキーボード8部の拡大図である。このキー入力装置1bが第2の実施形態に係るキー入力装置1aと異なる点は、各キーに割り付けた文字の相違のみである。このキー入力装置1bは英語文章入力を容易にすることを主目的に、パソコン用キーボードに採用されているQWERTY配列に類似した配列に英文字を割り付けてある。
【0030】
英語文章においても日本語の母音に相当する「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の頻出頻度が高いことを考慮し、それらの5文字を端末筐体の側面に設けたキーに割り付けている。具体的には上側面の2個のキーに「A」、「E」を、右側面及び左側面の3個のキーには上から順に「U」、「I」、「O」を割り付けている。この5個以外の文字は、図6に示すようにQWERTY配列に類似した配列に割り付けている。このキー入力装置1bにおいても、左手操作、右手操作に対応して使用しない側面キーからの入力は無視するように機能キーで設定できるようにしている。
【0031】
このキー入力装置1bは、英文字をQWERTY配列に類似した配列にしているため英語文章入力を効率的に入力することができる。また、側面キーを設けた点、キーボードを上部に、表示部を下部に配置した点はキー入力装置1aと同様であるのでキー入力装置1aと同様の効果も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】第1の実施形態に係るキー入力装置1の操作面の構成図である。
【図2】キー入力装置1の操作状態を表わす図である。
【図3】第2の実施形態に係るキー入力装置1aの操作面の構成図である。
【図4】キー入力装置1aのキーボード部の拡大図である。
【図5】第3の実施形態に係るキー入力装置1bの操作面の構成図である。
【図6】キー入力装置1bのキーボード部の拡大図である。
【図7】従来技術に係るキー入力装置50の操作面の構成例である。
【符号の説明】
【0033】
図面中、1、1a、1bはキー入力装置、2、8はキーボード、3、9は表示部、11、12は上側面のキー、13、14、15は右側面のキー、16、17、18は左側面のキーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯情報端末用の表示部を備えたキー入力装置であって、端末筐体は操作状態においては平板な縦長の略直方体形状になるように構成されており、文字入力用のキーボードは操作状態において縦長操作面の上部に、表示部は同じ縦長操作面の下部に位置するように配置してあることを特徴とするキー入力装置。
【請求項2】
請求項1に記載のキー入力装置において、前記端末筐体における前記キーボード部の上側にあたる上側面には2個のキーが、右側の右側面と左側の左側面には各3個のキーが設けてあり、上側面の2個のキーにはローマ字表記の日本語母音「A」、「I」、「U」、「E」、「O」の内の2つの母音が、右側面及び左側面の3個のキーには残りの3個の母音がそれぞれ割り付けてあることを特徴とするキー入力装置。
【請求項3】
請求項2に記載のキー入力装置において、前記上側面の2個のキーには母音「A」、「I」が、前記右側面及び左側面の3個のキーには母音「U」、「E」、「O」が割り付けてあることを特徴とするキー入力装置。
【請求項4】
請求項2に記載のキー入力装置において、前記上側面の2個のキーには英文字「A」、「E」が、前記右側面及び左側面の3個のキーには英文字「U」、「I」、「O」が割り付けてあることを特徴とするキー入力装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れかに記載のキー入力装置において、前記右側面の3個のキー又は左側面の3個のキーからの入力を前記キーボードに設けた機能キーによる選択により無視できるように構成してあることを特徴とするキー入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−117819(P2010−117819A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−289565(P2008−289565)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(597043419)
【Fターム(参考)】