説明

携帯情報端末

【課題】 携帯情報端末のどの面においても外部との通信を可能にするととともに、スペース効率、部品の削減を図る。
【解決手段】 ICチップ(2)、アンテナコイル(3)を組み込んだICモジュール(1)が挿入される携帯情報端末(10)において、携帯情報端末の両面側に相互に電磁結合可能な状態に誘導コイル(11、12)を設け、誘導コイルの一方とICモジュールのアンテナコイルとを電磁結合させるように配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は非接触でリーダ/ライタと通信可能な携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アンテナコイルを有するICカードモジュールを内蔵した装置に通信用のブースタコイルを設け、ブースタコイルとICモジュールのコイルとを電磁結合させて非接触でリーダ/ライタとの通信を行えるようにしたデータキャリア装置が知られている(特許文献1)。
また、アンテナコイルを有するICカードモジュールを内蔵させた携帯電話機にブースタコイルを設け、ICカードモジュールのアンテナコイルとブースタコイルとを電磁結合させ、ブースタコイルを介して送受信するようにした携帯情報端末が提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2002−175511号公報
【特許文献2】特開2004−029873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1、特許文献2で提案されているICモジュールのコイルとブースタコイルとを電磁結合させる情報端末装置においては、情報端末装置内部にはいろいろな電子部品や基板等が存在するため、これらが電波障害にならないように配置する必要がある。そのためには、例えば、基板に対して同じ側にICモジュールとブースタコイルを配置する必要がある。この場合、ブースタコイルが配置された側では外部との通信が可能であるが、その反対側の面では基板が電波障害となって外部との通信ができない。また、情報端末装置にICチップ、ブースタコイル等を入れるためにスペース効率、部品の削減を図る必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は上記課題を解決しようとするもので、アンテナコイルを有するICモジュールを組み込んだ携帯情報端末において、携帯情報端末のどの面においても外部との通信を可能にするととともに、スペース効率、部品の削減を図ることを目的とする。
そのために本発明は、ICチップ、アンテナコイルを組み込んだICモジュールが挿入される携帯情報端末において、携帯情報端末の両面側に相互に電磁結合可能な状態に誘導コイルを設け、誘導コイルの一方とICモジュールのアンテナコイルとを電磁結合させるように配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、携帯情報端末のどの面をリーダ/ライタに対向させても通信することが可能となり、携帯性、利便性が向上し、ICモジュールの持つ機能を有効に活用することが可能になり、さらにスペース効率、部品の削減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図1は本実施形態の携帯情報端末の例を説明する図であり、図1(a)は正面図、図1(b)は側面図である。
ICモジュールの一例であるメモリカード1は、定期券、SF(Stored Fare )券等の乗車券情報、電子マネー等の価値情報がチャージ可能であり、所定のデータ処理機能を有するICチップ2とアンテナ3とが組み込まれ、自動改札機等のリーダ/ライタと非接触で通信可能に構成されている。乗車券情報をチャージしたメモリカード1は、カード単体を自動改札機にかざすことにより自動改札機を通ることができる。
【0007】
本実施形態では、このメモリカード1を、携帯情報端末の一例である携帯電話機10に挿入して使用する。携帯電話機に挿入することで、持ち歩きが容易になり利便性を向上することができる。しかし、メモリカードを携帯電話機に挿入した場合、携帯電話機内部にはいろいろな電子部品や基板等が存在してこれらがメモリカード1に対する電波障害物となるため、携帯電話機を向ける方向によってはリーダ/ライタとの非接触通信ができなくなってしまう。
【0008】
これを解決するため、図1の例では、携帯電話機の表面側と裏面側にそれぞれ誘導コイル11、12を配置する。メモリカード1のアンテナ3は、少なくとも誘導コイル11、12の一方とは電磁結合している。また、図示の例では、誘導コイル11、12の上端部が筐体より僅かに上方へ突出していて、この部分を介して相互に電磁結合している。もちろん、一方のコイルのみ上方へ突出しても電磁結合可能である。また、筐体の下端部や側端部で誘導コイルの一方または両方を外方へ突出させて電磁結合させてもよく、もちろん筐体内部で電磁結合できる箇所があればその部分を利用すればよい。
【0009】
このように、筐体の両面側に設けた誘導コイル11、12が電磁結合し、メモリカード1のアンテナ3は、少なくとも誘導コイル11、12の一方と電磁結合しているので、携帯電話機のどちらの面をリーダ/ライタに向けてもメモリカード1はアンテナ3を通してリーダ/ライタと信号のやりとりができる。
【0010】
なお、上記の例では、誘導コイル11、12を表面と裏面とに平行に平面状に形成して配置するようにしているが、これらのコイルの一部を筐体面に垂直な方向に折り曲げることで、上下端面側、側端面側に向けても閉ループを形成することで、携帯電話機の任意の面をリーダ/ライタに向けて通信することが可能となる。
【0011】
また、上記の例ではICチップとアンテナを組み込んだメモリカードを携帯電話機に挿入するようにしたが、携帯電話機が内蔵しているICチップを利用して、これに定期券、SF券等の乗車券情報、電子マネー等の価値情報を格納し、自動改札機等のリーダ/ライタと通信するための誘導コイルを設けるようにしてもよい。
【0012】
図2は携帯情報端末の筐体に形成するデザインの一部を誘導コイルに兼用する例を示す図で、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図であり、図1と同一番号は同一内容を示している。
この例では、メモリカード1のアンテナと電磁結合する誘導コイル13を、筐体表面に形成するデザインの一部に使用した場合を示している。ここで使用する誘導コイルのための材料としては、アルミニウム等の金属を含む塗料などである。このように、誘導コイルを携帯情報端末の筐体デザインと兼用することにより、別途誘導コイルを設ける必要がないため、スペース効率を上げることができる。
【0013】
図3は誘導コイルを携帯電話機の内蔵アンテナの一部として兼用する例を示す図であり、図3(a)はメモリカード1と電磁結合する誘導コイルと携帯電話機との回路接続図、図3(b)はメモリカード1の通信における周波数帯域での等価回路図、図3(c)は携帯電話の通信帯域における等価回路図である。なお、メモリカードの通信における周波数は13.56MHz、携帯電話の周波数は900MHzである。
図3(a)において、メモリカード1と電磁結合する誘導コイルL1を、携帯情報端末としての携帯電話機10の共振回路を構成するインダクタンスL2、コンデンサC1に直列に接続する。なお、共振回路には携帯電話機10のアンテナ15、送受信回路16が接続されている。
【0014】
メモリカード通信(図3(b))の場合、使用する周波数は携帯電話の周波数より充分低いため、L1に比してL2は充分に小さく無視でき、L1とコンデンサC1とが直列に接続された状態となって共振回路が形成される。したがって、メモリカードの通信では、L1とC1による共振回路で感度を上げることができる。
【0015】
携帯電話通信(図3(c))の場合、使用する周波数はメモリカードの通信周波数より充分高いため、L2に比してL1は充分に大きく、高抵抗となって電気的に開放とみることができる。このときL1に繋がる線がアンテナを形成し、仮想コイルL4が発生した状態となり、これが携帯電話機の補助アンテナの役割をする。したがって、携帯電話通信では、誘導コイルの接続線が補助アンテナの役割をして感度を向上させることができる。
【0016】
このように、本実施形態では、誘導コイルを携帯情報端末の内蔵アンテナの一部として兼用し、また、携帯情報端末の共振回路部品の一部と共振させるようにしたのでスペース効率、部品の削減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、携帯性、利便性が向上し、ICモジュールの持つ機能を有効に活用することが可能になるとともに、スペース効率、部品の削減を図ることが可能となるので産業上の利用価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態の携帯情報端末の例を説明する図である。
【図2】携帯情報端末の筐体に形成するデザインの一部を誘導コイルに兼用する例を示す図である。
【図3】誘導コイルを携帯電話機の内蔵アンテナの一部として兼用する例を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
1…メモリカード、2…ICチップ、3…アンテナ、10…携帯電話機、11〜13…誘導コイル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICチップ、アンテナコイルを組み込んだICモジュールが挿入される携帯情報端末において
携帯情報端末の両面側に相互に電磁結合可能な状態に誘導コイルを設け、誘導コイルの一方とICモジュールのアンテナコイルとを電磁結合させるように配置したことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
前記誘導コイルの少なくとも一方の一部が装置の筐体より外方へ露出していることを特徴とする請求項1記載の携帯情報端末。
【請求項3】
ICチップ、アンテナコイルを組み込んだICモジュールが挿入されるとともに、前記アンテナコイルと電磁結合する誘導コイルを設けた携帯情報端末において、
前記誘導コイルは携帯情報端末の筐体に形成するデザインと兼用することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項4】
ICチップ、アンテナコイルを組み込んだICモジュールが挿入されるとともに、前記アンテナコイルと電磁結合する誘導コイルを設けた携帯情報端末において、
前記誘導コイルを携帯情報端末の内蔵アンテナの一部として兼用するとともに、携帯情報端末の共振回路部品の一部と共振させるようにしたことを特徴とする携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−54772(P2006−54772A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236318(P2004−236318)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(593092482)ジェイアール東日本メカトロニクス株式会社 (85)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】