説明

携帯機

【課題】携帯機の向きを意識することなくモーション操作を通じて制御対象を遠隔制御することができる携帯機を提供する。
【解決手段】特定の検出軸を基準としてユーザによる振り操作を検出する加速度センサと、同加速度センサの検出結果が予め設定された複数のモーションパターンのうちのいずれかと合致すると判断した場合には、そのモーションパターンに応じた制御信号を生成し、同制御信号を車両に送信することで、同車両の遠隔操作を行うキー側制御装置とを備える携帯機において、第1及び第2の操作位置へスライド変位するスライドスイッチ26を備え、キー側制御装置は、スライドスイッチ26が操作された位置に基づいて検出軸及びその正負の方向を設定する携帯機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象を遠隔制御する携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両及び住宅等の制御対象との間での無線通信を通じて、ドアの施解錠をはじめとする各種制御を行う電子キー(携帯機)が知られている。車両用の電子キーには、ドアの施錠及び解錠を行うロックスイッチ及びアンロックスイッチの他、ドアウインドやスライドドアを開閉させるドア開閉スイッチ等の各種スイッチが設けられる。ユーザは、制御対象から離れた位置においても、電子キーの各スイッチを操作することで、上記したような制御対象の各種制御が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−303026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子キーの多機能化に伴い、電子キーに搭載されるスイッチの数が増大傾向にある。このため、電子キーの大型化が懸念されている。そこで、特許文献1のようなものが従来提案されている。すなわち、特許文献1に記載の電子キーは、加速度センサを内蔵している。この加速度センサは、予め設定された検出軸方向(X軸、Y軸等)の加速度を検出する。この検出軸方向は、電子キーが振り操作(モーション操作)された際の振り方向を検出する際の基準となる。同加速度センサは、同じく電子キーに設けられる許可スイッチが押下された状態のときのみ、加速度の検出を行う。この電子キーは、許可スイッチを押下された状態で、例えばS字状等の所定の形状を描くように振り操作されると、これに伴う加速度の変化を加速度センサが検出する。そして、電子キーは、加速度の変化態様から電子キーの動きのパターンを認識し、そのパターンに応じた制御信号を制御対象に送信することによって、同制御対象の各種制御を行う。これにより、電子キーに複数のスイッチ等を設けなくとも、制御対象の各種制御が可能とされる。ひいては、電子キーの大型化を抑制することができる。
【0005】
しかし、この電子キーでは、加速度センサの検出軸があらかじめ設定されている。このため、ユーザが把持する携帯機の向きによって、電子キーを振り操作したときの加速度センサが検出する加速度の向きが異なる。図8(a)に示されるように電子キーを把持した場合と、図8(b)に示されるように電子キーを把持した場合とでは、X軸及びY軸の正負が逆転する。このため、ユーザは、同じように電子キーを振り操作した場合であっても、図8(a)に示す状態と、図8(b)に示す状態とでは、加速度センサが検出する方向が異なる。すなわち、図8(a)に示す状態と、図8(b)に示す状態とでは、ユーザが同じ振り操作した場合であっても、異なる制御信号が送信される。このため、ユーザは、振り操作を行う場合、常に把持したときの電子キーの向きを意識する必要があった。
【0006】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、携帯機の向きを意識することなくモーション操作を通じて制御対象を遠隔制御することができる携帯機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、特定の検出軸を基準としてユーザによる振り操作を検出するモーションセンサと、前記モーションセンサの検出結果が予め設定された複数のモーションパターンのうちのいずれかと合致すると判断した場合には、そのモーションパターンに応じた制御信号を生成し、同制御信号を制御対象に送信することで、同制御対象の遠隔操作を行う制御装置とを備える携帯機において、複数の操作位置が設定され、前記振り操作を許可状態とする際に操作されるスイッチを備え、前記制御装置は、前記スイッチが前記複数の操作位置のうちいずれに操作されたかに基づきユーザを基準とした携帯機の向きを認識し、この認識される携帯機の向きに合わせて前記検出軸及びその正負の方向を設定することを要旨とする。
【0008】
同構成によれば、スイッチの操作を通じて、検出軸及びその正負の方向を設定することができる。従って、ユーザは、ユーザを基準とした振り方向と、携帯機を基準とした振り操作方向とが一致する。これにより、ユーザは、携帯機の向きを意識することなく携帯機の振り操作を通じて、自身が意図する制御信号を制御対象に向けて送信することができる。ひいては、制御対象において、ユーザの意図する制御が行われる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の携帯機において、前記スイッチは前記振り操作が無効とされる基準位置を有することを要旨とする。
同構成によれば、ユーザは、振り操作を望まない場合に、スイッチを基準位置に位置させることによって、自身の意図しないところで、制御対象における制御が行われることを抑制することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の携帯機において、前記スイッチは、前記基準位置を挟んで設定される前記複数の操作位置へスライドすることによって変位するスライドスイッチであることを要旨とする。
【0011】
同構成によれば、ユーザは、スライドスイッチをスライドさせるのみで、容易に複数のモーションオン位置に対応した軸方向を設定することができる。
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の携帯機において、前記制御装置は、前記スライドスイッチのスライド方向を正方向として検出軸方向の設定を行うことを要旨とする。
【0012】
同構成によれば、制御装置には、ユーザが操作するスライドスイッチのスライド方向が正方向とされる軸方向が設定される。これにより、ユーザは、携帯機に設定される軸方向を容易に認識できる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の携帯機において、前記スライドスイッチは、ユーザの操作から開放された場合には、常時前記基準位置に復帰することを要旨とする。
【0014】
同構成によれば、ユーザは、モーション操作を望まない場合に、スイッチを基準位置に位置させることによって、意図しないモーション操作を抑制することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項3〜5のうちいずれか一項に記載の携帯機において、前記携帯機は直方体状をなし、前記スライドスイッチのスライド方向は、前記携帯機の長手方向と一致することを要旨とする。
【0015】
同構成によれば、ユーザにとって把持しやすく且つ操作性のよい携帯機を提供することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、携帯機の向きを意識することなくモーション操作を通じて制御対象を遠隔制御することができる携帯機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の電子キーシステムの概略構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態の電子キーの斜視図。
【図3】(a)は、スライドスイッチが基準位置に位置する場合、(b)は、第1の操作位置に位置する場合、(c)は、第2の操作位置に位置する場合における電子キーのスライドスイッチ部分の平面図。
【図4】図2のA−A線における断面図。
【図5】ユーザが電子キーを把持した状態のスライドスイッチの操作態様を示す斜視図。
【図6】(a)は、他の実施形態を示す電子キーの側面図、(b)は、(a)に示すシーソースイッチが操作された場合の電子キーの側面図。
【図7】他の実施形態を示す電子キーの平面図。
【図8】(a)は、従来形態の携帯機の加速度の検出軸を(b)は、(a)に示す携帯機の向きを上下逆転させたときの携帯機の加速度の検出軸を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を車両の電子キーシステムに具体化した実施形態について説明する。
図1に示すように、車両には、電子キーシステム1が搭載されている。電子キーシステム1では、車両のユーザが所持する電子キー20(送信側)と、車両10(受信側)との間での無線信号による単方向通信が可能である。
【0019】
(電子キー20)
図1に示すように、電子キー20は、キー側制御装置21と、加速度センサ23と、送信回路24と、送信アンテナ25と、スライドスイッチ26と、ロックスイッチ27aと
アンロックスイッチ27bとを備えている。ロックスイッチ27a及びアンロックスイッチ27bはプッシュ式スイッチであって、スライドスイッチ26はスライド式のスイッチである。スライドスイッチ26は、第1の操作位置と第2の操作位置との間でスライドする。なお、第1の操作位置と第2の操作位置との間には、基準位置が設けられている。
【0020】
加速度センサ23は、ユーザによる電子キー20の振り動作を検出するモーションセンサとして機能する。すなわち、加速度センサ23は、電子キー20が振られたときに生じる加速度に応じた電圧を検出結果として、キー側制御装置21に出力する。本実施形態における加速度センサ23は3軸方向(XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸)の加速度を検知可能である。加速度センサ23には機械式、光学式、半導体式等あるが電子キー20に内蔵可能であって振り操作に基づく加速度を検出できるものであれば何れであってもよい。
【0021】
キー側制御装置21は、不揮発性のメモリ21aを備え、同メモリ21aには電子キー20に固有のIDコードが記憶されている。キー側制御装置21は、加速度センサ23の検出結果に基づき振り操作の有無及び振り操作の方向を判別する。
【0022】
ロックスイッチ27aが操作されるとその旨を示す操作信号がキー側制御装置21に出力される。キー側制御装置21は、操作信号を通じてロックスイッチ27aが操作されたことを認識すると、IDコード及びドアの施錠を要求する旨のコードを含む施錠要求信号を生成して、送信回路24に出力する。送信回路24は、キー側制御装置21から入力された施錠要求信号を所定周波数帯に変調して、それを電波として送信アンテナ25から送信する。なお、本実施形態において所定周波数帯とはUHF(Ultra High Frequency)帯である。
【0023】
同様に、アンロックスイッチ27bが操作されるとその旨を示す操作信号がキー側制御装置21に出力される。キー側制御装置21は、上記アンロックスイッチ27bが操作された場合とことを認識すると、IDコード及びドアの施錠を要求する旨のコードを含む解錠要求信号を生成して、送信回路24に出力する。
【0024】
図1に示すように、スライドスイッチ26は、スライド操作されることで基準位置、第1の操作位置及び第2の操作位置に対応してその接点状態が切り替わる。キー側制御装置21は、スライドスイッチ26が基準位置に対応する接点状態から第1の操作位置に対応する接点状態に移行した旨認識したとき、第1の検出軸方向を設定する。反対に、スライドスイッチ26が基準位置に対応する接点状態から第2の操作位置に対応する接点状態に移行した旨認識したとき、第2の検出軸方向を設定する。この第1及び第2の検出軸方向とは、X軸、Y軸、及びZ軸で表される座標系全体を指す。第1又は第2の検出軸方向が設定されたキー側制御装置21は、モーション操作が許可されたモーション操作有効状態となる。この状態となったキー側制御装置21は、加速度センサ23からの電圧をもとに、ユーザによる電子キー20の振り操作の有無及び方向を判別する。そして、その振り操作が所定の操作であった場合には、その所定の操作に対応する制御信号を生成して、送信回路24に出力する。送信回路24は、キー側制御装置21から入力された制御信号をUHF帯に変調して、それを電波として送信アンテナ25から送信する。なお、キー側制御装置21は、スライドスイッチ26が基準位置に対応する接点状態である旨認識しているとき、又は第1及び第2の操作位置に対応する接点状態である旨認識していないとき、加速度センサ23の検出結果に関わらず振り操作の有無等の判別を行わない。
【0025】
本例では、モーション操作有効状態において、キー側制御装置21は、図2に示されるように、電子キー20が右回りに回転させられる態様で振り操作された旨認識したとき、IDコード及び右側スライドドアの開放を要求する旨のコードを含むドア開要求信号を生成する。また、キー側制御装置21は、電子キー20が左回りに回転させられる態様で振り操作された旨認識したとき、IDコード及び左側スライドドアの開放を要求する旨のコードを含むドア開要求信号を生成する。生成されたドア開要求信号は送信回路24に出力される。送信回路24は、入力されたドア開要求信号をUHF帯に変調して、それを電波として送信アンテナ25から送信する。
【0026】
なお、キー側制御装置21は、スライドスイッチ26が第1及び第2の操作位置に対応する接点状態から基準位置に対応する接点状態に移行した旨認識したときには解錠要求信号を生成しない。
【0027】
(車両10)
図1に示すように、車両10は、車載制御装置11と、受信回路14と、受信アンテナ15と、ドアロック装置16と、パワースライドドア装置17とを備えている。受信アンテナ15は、電子キー20から送信された各種要求信号(施錠要求信号、解錠要求信号、ドア開要求信号)を受信する。ここでは、施錠要求信号を受信した場合について説明する。受信回路14は、受信アンテナ15により受信された施錠要求信号を復調し、それを車載制御装置11に出力する。
【0028】
車載制御装置11は、不揮発性のメモリ11aを備え、同メモリ11aには、電子キー20のIDコードと同一のIDコードが記憶されている。車載制御装置11は、施錠要求信号に含まれるIDコードとメモリ11aに記憶されたIDコードとの照合が成立した場合、ドアロック装置16を介して車両ドアを施錠する。解錠要求信号が受信された場合にも同様にして、IDコードの照合成立をもって、ドアロック装置16を介して車両ドアが解錠される。また、ドア開要求信号が受信された場合にも、IDコードの照合成立をもって、パワースライドドア装置17を介して同ドア開要求信号に含まれる開放を要求する側(右側又は左側)のスライドドアが開放される。
【0029】
次に、スライドスイッチ26の構成について説明する。
図2に示すように、電子キー20は、その外周を樹脂からなる直方体状のケース32に覆われてなる。スライドスイッチ26は、ロックスイッチ27a及びアンロックスイッチ27bとともにケース32の同一の表面に設けられている。
【0030】
図4に示されるように、ケース32の表面には、その長手方向に延びる操作穴28が形成されている。操作穴28には、その上壁及び下壁との間に弾性ばね31a,31bを介して直方体状のスライドスイッチ26が挿入されている。弾性ばね31aは下側に向けて、弾性ばね31bは上側に向けて、それぞれスライドスイッチ26を常時付勢する。この弾性ばね31a,31bは、同等の弾性力を有している。操作穴28の上端は第1の操作位置、下端は第2の操作位置、この両位置の中間は、基準位置とされている。スライドスイッチ26は、弾性ばね31a,31bによって基準位置に維持されている。スライドスイッチ26の中央部には、表側に突出する操作部26aが設けられている。ユーザは、弾性ばね31a,31bの弾性力に抗して、指などで操作部26aを操作して、スライドスイッチ26を第1又は第2の操作位置に変位させることが可能とされている。スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に操作されると、キー側制御装置21は、第1又は第2の操作位置に応じた第1又は第2の検出軸方向が設定される。こうして、キー側制御装置21は、加速度センサ23からの加速度情報を処理することが可能となる。なお、スライドスイッチ26を第1又は第2の操作位置に変位させた状態で、操作部26aの操作を解除すると、スライドスイッチ26は、弾性ばね31a,31bの弾性力によって、基準位置にまで弾性復帰する。このとき、キー側制御装置21に設定された検出軸方向も解除される。すなわち、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に操作されている間だけ、検出軸方向が設定され、電子キー20の振り操作が可能とされている。
【0031】
また、図4に示されるように、電子キー20は、各位置へのスライド操作時にユーザに節度感覚を与える節度機構を備える。節度機構は、図4に示すように、節度ばね33及び金属製のボール34からなる。操作部26aの背面(図4の右側の面)には、収納穴35が形成されている。この収納穴35の底面にはコイル状の節度ばね33が設けられる。この節度ばね33の弾性力により収納穴35におけるボール34は操作部26aの背面と対面するケース32の接触面32aに付勢される。操作部26aのスライドに伴ってボール34は接触面32aを摺動する。接触面32aにはボール34の一部(図4の右部)が進入する節度穴36a〜36cが設けられている。節度穴36a〜36cは、それぞれ基準位置、第1及び第2操作位置に対応して設けられている。例えば、操作部26aが基準位置から第1の操作位置にスライド操作されたとき、ボール34は接触面32aを摺動して節度穴36bに進入する。この状態から操作部26aをスライド操作するには、ボール34が節度穴36bから脱出可能となる操作力にて操作する必要がある。これにより、操作部26aが各位置に操作されたときユーザに一定の節度感覚が与えられる。
【0032】
この節度機構は、スライドスイッチ26の位置検出機構も兼ねる。詳述すると、節度穴36b,36cの底部には、同図における図示は省略したキー側制御装置21と接続された固定接点37b,37cが設けられている。これに対する可動接点は、金属製のボール34であって、例えば、スライドスイッチ26が第1の操作位置にスライド操作されたとき、ボール34は、節度穴36bに進入するとともに、固定接点37bと接触する。このように、キー側制御装置21は、各固定接点のいずれかの回路が通電状態となることにより、スライドスイッチ26第1又は第2の操作位置にあることを認識する。
【0033】
キー側制御装置21は、スライドスイッチ26の第1又は第2の検出位置への移動を検出すると、加速度センサ23からの加速度情報を処理するために検出位置に応じた第1又は第2の検出軸方向を設定する。キー側制御装置21は、図3(a)に示される基準位置からスライドスイッチ26が上側に向かって操作され、第1の操作位置に操作されたことを検出すると、図3(b)に示すように、上側に向かって正のY軸方向を、右側に向かって正のX軸方向を設定する。反対に、スライドスイッチ26が下側に向かって操作され、第2の操作位置に操作されたことを検出すると、図3(b)に示すように、下側に向かって正のY軸方向を、左側に向かって正のX軸方向を設定する。なお、Z軸方向は、スライドスイッチ26の操作位置にかかわらず紙面の鉛直上向きに設定される。
【0034】
図5に示されるように、この検出軸の方向は、ユーザが電子キー20を把持した状態でスライドスイッチ26を親指で操作することを想定して設定されている。通常、正負を含む軸方向設定する場合、基準が必要となる。例えば、右とは自身が南の方向を向いたときの西側にあたる方向である。すなわち、自身の向いている方向、つまり前方を正として軸方向設定がなされる場合が多い。本例のキー側制御装置21は、スライドスイッチ26を操作した方向をY軸の正方向として設定する。電子キー20の右方向をX軸の正方向として設定する。これにより、ユーザがスライドスイッチ26のスライド操作を通じて想定する前方及び左右方向が、電子キー20のY軸の正方向及びX軸の正負方向と一致する。これにより、ユーザは、把持した電子キー20の向きを意識することなく電子キー20をモーション操作することができる。
【0035】
スライドスイッチ26が操作されると、キー側制御装置21は、操作位置に応じて設定する検出軸方向を基準にして加速度センサ23からの情報を処理する。これにより、キー側制御装置21は、ユーザのモーション操作による加速度の変化を検出した際に、電子キー20の振り方向を検出することができる。これにより、キー側制御装置21は、振り方向に応じた制御信号を生成するとともに、送信回路24及び送信アンテナ25を介して同制御信号を車両10に向けて送信する。例えば、操作部26aを基準位置から第1の操作位置まで一気に操作したうえで右回りの振り操作を行うことにより車両右側のスライドドアを開放させることができる。
【0036】
以上の構成によれば、ユーザは、電子キー20をモーション操作する場合に、ユーザの想定する左右方向(軸方向)と、キー側制御装置21が検出する左右方向(検出軸方向)とが一致する。このため、車両においては、ユーザの振り操作によって、ユーザの意図する制御が実行される。
【0037】
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られる。
(1)電子キー20は、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置にスライド操作されることによって、ユーザを基準とした携帯機の向きを認識する。そして、電子キー20(キー側制御装置21)は、認識した携帯機の向きに合わせ加速度センサ23の検出軸方向を設定するようにした。これにより、ユーザは電子キー20の把持する方向を意識することなく、ユーザを基準とした方向と、加速度センサ23の検出軸方向とを一致させることができる。このため、電子キー20をモーション操作した際には、同電子キー20は、ユーザの意図と合致する制御信号を制御対象に向けて送信することができる。ひいては、制御対象の車両において、ユーザの意図する制御が行われる。
【0038】
(2)第1の操作位置と第2の操作位置との間に電子キー20の検出軸方向を設定しない基準位置を設けた。これにより、スライドスイッチ26が基準位置とされた場合、キー側制御装置21には、加速度センサ23の検出軸方向が設定されない。このため、キー側制御装置21は、加速度センサ23からの情報を処理しない。すなわち、スライドスイッチ26を基準位置とすることにより、ユーザは、意図しないモーション操作を抑制することができる。
【0039】
(3)電子キー20の検出軸方向を設定するスイッチとしてスライドスイッチ26を設けた。これにより、ユーザは、スライドスイッチ26をスライドさせるのみで、容易に第1及び第2の操作位置に対応した検出軸方向を設定することができる。
【0040】
(4)電子キー20の検出軸方向は、スライドスイッチ26のスライド方向を前方として設定されるようにした。これにより、ユーザは、左右方向について容易に認識できる。
(5)スライドスイッチ26を同等の弾性力を有する弾性ばね31a,31bに挟まれる態様で設けた。これにより、スライドスイッチ26は、ユーザの操作から開放されると、第1の操作位置と第2の操作位置との中間に設定される基準位置に復帰する。これにより、より確実にユーザの意図しないモーション操作を抑制することができる。
【0041】
(6)電子キー20は直方体状に形成した。また、スライドスイッチ26のスライド方向を前記電子キー20の長手方向とした。これにより、ユーザは、把持しやすく且つスライドスイッチ26の操作性のよい電子キー20を所持することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、スライドスイッチ26を採用し、これが操作される方向によって、電子キー20の検出軸方向を決定するようにした。しかし、検出軸方向を決定するために採用するスイッチはスライドスイッチに限らず、例えば、図6(a)に示されるような、シーソースイッチ40であってもよい。この場合、図6(b)に示されるように、ユーザが操作している方向を前方、すなわち正のY軸方向として設定する。この場合、紙面鉛直上向きが正のX軸方向、すなわち右方向となる。このようにしても、ユーザは、シーソースイッチを操作するのみで、電子キー20を持つ向きを意識することなく使用することができる。
【0043】
・上記実施形態において、操作穴28は、必ずしも電子キー20の長手方向に沿って形成される必要はない。例えば、短手方向に沿って形成されてもよい。こうしても、ユーザは、スライドスイッチ26を操作するのみで、電子キー20を持つ向きを意識することなく使用することができる。また、この両者を組み合わせてもよい。すなわち、図7に示されるように、ケース32の表面にその長手方向と短手方向に沿って十字に延びる操作穴41を設ける。操作穴41には、これに沿って摺動可能なスライドスイッチ42を設ける。このようにすることで、一方向に延びる操作穴を採用した場合に比べて、スライドスイッチの操作位置を多数設けることが可能となる。従って、ユーザが電子キー20を把持する方向の自由度が向上する。
【0044】
・上記実施形態では、電子キー20の検出軸方向は、スライドスイッチ26のスライド方向を前方として設定されるようにしたが、スライド方向を後方として設定してもよい。このようにしても、ユーザは、左右方向について容易に認識できる。また、スライド方向にかかわらず、独自の方向を設定してもよい。例えば、スライドスイッチ26のスライド方向に対して、電子キー20の検出軸方向は10°ずれて設定させる。このようにしても、ユーザは、電子キー20に意図する検出軸方向を設定することができる。
【0045】
・上記実施形態において、電子キー20のケース32の形状は、直方体状に限らない。例えば、角がとれた卵状の形状であってもよい。
・上記実施形態においては、ロックスイッチ27a及びアンロックスイッチ27bはプッシュ式スイッチであった。しかし、ロックスイッチ27a又はアンロックスイッチ27b、若しくはその両スイッチの機能をスライドスイッチ26に組み込んでもよい。具体的には、第1及び第2の操作位置に加えて、第3及び第4の操作位置を設けて、例えば、第3の操作位置をロック位置、第4の操作位置をアンロック位置とする。そして、スライドスイッチ26が基準位置からスライド操作されてロック位置とされたとき、施錠要求信号が、アンロック位置に操作されたときに解錠要求信号が、それぞれ送信される。このようにロック位置及びアンロック位置を設けることで、ユーザは車両ドアの施解錠及びスライドドアの開放に係る全ての操作をスライドスイッチ26にて行うことができる。よって、より利便性が向上する。
【0046】
・上記実施形態において、必ずしも弾性ばね31a,31bを設ける必要はない。すなわち、ユーザからの操作が解放されたスライドスイッチ26が基準位置に自動復帰する必要はない。この場合、スライドスイッチ26は第1又は第2の操作位置に保持されるため、ユーザはスライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に達したことを認識しやすい。また、この構成の場合、ユーザはスライドスイッチ26から手指を離した状態で電子キー20を振り操作することができる。
【0047】
・上記実施形態においては、モーションセンサとして加速度センサ23が設けられていた。しかし、モーションセンサであれば加速度センサ23に限定されず、例えば速度センサであってもよい。
【0048】
・上記実施形態においては、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に保持されている限りモーション操作有効状態が維持されていた。しかし、モーション操作有効状態に時間制限を設けてもよい。例えば、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に5秒以上保持されていれば、モーション操作有効状態が解除される。これにより、例えば、ユーザが意図せずスライドスイッチ26をモーションオン位置に保持した場合であっても、一定時間経過後にモーション操作有効状態が解除される。よって、電子キー20の誤操作が抑制される。
【0049】
・上記実施形態においては、スライドスイッチ26を第1又は第2の操作位置に位置するように操作して電子キー20を振り操作することで、スライドドアを開かせることが可能であった。しかし、電子キー20の振り操作に伴う制御対象はスライドドアに限らず、例えばヒンジ型の車両ドアやドアウインド等であってもよい。例えば、ドアウインドの場合、電子キー20が上側に振られたときドアウインドは閉方向に移動し、電子キー20が下側に振られたときドアウインドは開方向に移動する。
【0050】
・上記実施形態においては、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に維持されている期間に限りモーション操作有効状態とされていた。しかし、一度、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置までスライド操作されたときには一定期間に亘りモーション操作有効状態とされてもよい。この場合、ユーザは、一度、スライドスイッチ26を第1又は第2の操作位置までスライド操作した後、スライドスイッチ26から手指を離した状態で振り操作ができる。
【0051】
・上記実施形態における復帰機構及び節度機構は一例であって、それらの機能を発揮できれば弾性ばね31a、31b、節度ばね33及びボール34等の位置はこれに限定されない。また、復帰機構及び節度機構の構成も上記実施形態に限定されない。
【0052】
・上記実施形態においては、スライドスイッチ26は上側から第1の操作位置、基準位置、第2の操作位置の順で配置されていた。しかし、各位置の配置はこれに限定されない。例えば、第1の操作位置が基準位置及び第2の操作位置間に挟まれる態様で配置されてもよい。また、基準位置を省略してもよい。この場合、スライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置に操作されると、ユーザのスライドスイッチ26に対する操作力が解除されてもその位置が保持される。すなわち、復帰機構が省略される。この場合、上記同様にスライドスイッチ26が第1又は第2の操作位置までスライド操作されたときには一定期間に限りモーション操作有効状態とされる。
【0053】
・上記実施形態においては、スライドスイッチ26が各位置に達したときユーザに一定の節度感覚を与える節度ばね33、ボール34等からなる節度機構が設けられていたが、これを省略してもよい。
【0054】
・上記実施形態においては、制御対象は車両であったが、これに限定されず、例えば住宅用のドアであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…電子キーシステム、10…車両、11…車載制御装置、11a,21a…メモリ、14…受信回路、15…受信アンテナ、16…ドアロック装置、17…パワースライドドア装置、20…電子キー、21…キー側制御装置、23…加速度センサ、24…送信回路、25…送信アンテナ、26,42…スライドスイッチ、26a…操作部、27a…ロックスイッチ、27b…アンロックスイッチ、28,41…操作穴、31a,31b…弾性ばね、32…ケース、32a…接触面、33…節度ばね、34…ボール、35…収納穴、36a,36b,36c…節度穴、37b,37c…固定接点、40…シーソースイッチ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の検出軸を基準としてユーザによる振り操作を検出するモーションセンサと、前記モーションセンサの検出結果が予め設定された複数のモーションパターンのうちのいずれかと合致すると判断した場合には、そのモーションパターンに応じた制御信号を生成し、同制御信号を制御対象に送信することで、同制御対象の遠隔操作を行う制御装置とを備える携帯機において、
複数の操作位置が設定され、前記振り操作を許可状態とする際に操作されるスイッチを備え、
前記制御装置は、前記スイッチが前記複数の操作位置のうちいずれに操作されたかに基づきユーザを基準とした携帯機の向きを認識し、この認識される携帯機の向きに合わせて前記検出軸及びその正負の方向を設定する携帯機。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯機において、
前記スイッチは前記振り操作が無効とされる基準位置を有する携帯機。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯機において、
前記スイッチは、前記基準位置を挟んで設定される前記複数の操作位置へスライドすることによって変位するスライドスイッチである携帯機。
【請求項4】
請求項3に記載の携帯機において、
前記制御装置は、前記スライドスイッチのスライド方向を正方向として検出軸方向の設定を行う携帯機。
【請求項5】
請求項3に記載の携帯機において、
前記スライドスイッチは、ユーザの操作から開放された場合には、常時前記基準位置に復帰する携帯機。
【請求項6】
請求項3〜5のうちいずれか一項に記載の携帯機において、
前記携帯機は直方体状をなし、前記スライドスイッチのスライド方向は、前記携帯機の長手方向と一致する携帯機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−102536(P2012−102536A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−251864(P2010−251864)
【出願日】平成22年11月10日(2010.11.10)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】