説明

携帯用電子機器のストラップ取付構造

【課題】ストラップの付け替えが容易に行えるとともに、取付部分を目立たせないようにして携帯用電子機器のデザインを生かせるような携帯用電子機器のストラップ取付構造を提供する。
【解決手段】携帯用電子機器30にストラップ20を取り付けるための取付構造において、携帯用電子機器30の筐体31の表面に形成された第1表面開口部35と、第1表面開口部35が形成された面の表面または他の表面に形成された第2表面開口部37とを連通して形成された連通孔32が設けられ、第1表面開口部35と第2表面開口部37との間に形成され、ストラップ20の紐22を巻き付けるための巻付部33が設けられ、連通孔32の容積が変更可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯用電子機器へストラップを取り付けるための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機や、情報携帯端末であるPDA(Personal Digital Assistants)などの携帯用電子機器には、ストラップを取り付けることが一般的に行われている。
従来のストラップの取付構造としては携帯用電子機器の筐体の角を利用して筐体の2面を貫通する連通孔を形成し、この連通孔にストラップの紐を通すように設けたものが多かった。
しかし、このような連通孔は、途中で屈曲しているので、ストラップの紐が途中で折れ曲がったりして紐を通すことが困難である。
【0003】
そこで、ストラップの紐を通しやすくするための構造が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
特許文献1には、筐体に形成した凹部の内壁面同士を貫通するようにネジ、アンテナインサート、イヤホンジャックゴム等を挿入し、このネジやアンテナインサート、イヤホンジャックゴム等にストラップを通す構成が開示されている。
【0004】
特許文献2には、筐体に形成した凹部内に、凹部の外側と内側との間で回動可能な棒状の係止部材を設け、この係止部材を筐体外に突出させてストラップの紐を係止させる構成が開示されている。また、この凹部内で棒状の係止部材が凹部の内壁面内に進入可能に設け、係止部材が凹部の内壁面内に進入させているときに凹部内にストラップの紐を入れ、その後係止部材を凹部内に突出させてストラップの紐を係止させる構成も開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−262104号公報
【特許文献2】特開2001−94650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したような特許文献1に開示されている構造では、ストラップの付け替えに伴ってネジやアンテナインサートを取り外さなくてはならず、付け替えに手間がかかってしまうという課題がある。
また、特許文献2に開示されている構造では、単なる棒状である係止部材が外から完全に見えているため、見た目が美しくない。特に現在の携帯電話機の傾向としては、多数の機能を盛り込むのではなくデザイン重視の傾向になってきている。このため、携帯用電子機器(特に携帯電話機)の統一されたデザインを壊さないようなストラップの取付構造が要望されているという課題もある。
【0007】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされ、その目的とするところは、ストラップの付け替えが容易に行えるとともに、取付部分を目立たせないようにして携帯用電子機器のデザインを生かせるような携帯用電子機器のストラップ取付構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかる携帯用電子機器のストラップ取付構造によれば、携帯用電子機器にストラップを取り付けるための取付構造において、携帯用電子機器の筐体の表面に形成された第1表面開口部と、該第1表面開口部が形成された面の表面または他の表面に形成された第2表面開口部とを連通して形成された連通孔が設けられ、前記第1表面開口部と前記第2表面開口部との間に形成され、ストラップの紐を巻き付けるための巻付部が設けられ、前記連通孔の容積が変更可能に設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、連通孔の容積を大きくしたときにはストラップの紐が通しやすくなり、ストラップの付け替えが容易となる。また、連通孔の容積を小さくしたときには連通孔が目立たなくなるので、見た目に優れた取付構造とすることができる。
【0009】
また、該連通孔内で連通孔の容積を大きくする方向と容積を小さくする方向との間で移動可能な容積調整部材が設けられていることを特徴としてもよい。
【0010】
さらに、前記容積調整部材を連通孔の容積を小さくする方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、通常時においては付勢手段によって自動的に連通孔の容積が小さくなっているので、見た目にも優れ且つストラップの外れ等に対しても安全である。
【0011】
本発明にかかる携帯用電子機器のストラップ取付構造によれば、携帯用電子機器にストラップを取り付けるための取付構造において、前記ストラップの紐を巻き付ける巻付部材がリング状に形成され、該リング状の巻付部材が携帯用電子機器の筐体内に収納された状態と、筐体外へ露出した状態との間で動作可能に設けられていることを特徴としている。
この構成を採用することによって、巻付部材が筐体外部に突出したときは、ストラップの紐が通しやすくストラップの付け替えが容易に行われる。また、巻付部材は筐体内に収納されてしまうので、見た目にも優れた取付構造とすることができる。
【0012】
また、前記巻付部材が筐体内に収納された状態の保持と該保持状態の解除とを行うロック機構が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、リング状の巻付部材が簡単に筐体外へ突出してしまうことを防止することができる。
【0013】
さらに、前記ロック機構によって前記保持状態が解除されたとき、前記巻付部材が筐体外へ突出するように付勢する付勢手段が設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、操作者が巻付部材を筐体の外へ突出させる動作が極めて容易となる。
【0014】
なお、前記携帯用電子機器は、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部において折り畳み可能に設けられており、前記巻付部材は、前記ヒンジ部の従動側の端部内に、ヒンジの回転軸の軸線方向に沿って突出入することで、筐体内に収納された状態と、筐体外へ露出した状態とで移動可能に設けられていることを特徴としてもよい。
この構成によれば、折り畳み式の携帯用電子機器において、ヒンジ部のスペースを有効利用することができる。また、ヒンジ部に取付構造を有することで、見た目にも優れた取付構造とすることができる。
【0015】
また、前記ロック機構は、巻付部材をヒンジの回転軸の軸線方向に沿って押圧することによって、巻付部材を筐体内に収納された状態でロックし、ロックされた状態から巻付部材をヒンジの回転軸の軸線方向に沿ってさらに押圧することにより巻付部材のロックを解除して巻付部材を筐体外へ露出させるように動作することを特徴としてもよい。
この構成によれば、巻付部材の筐体からの突出入の操作を極めて容易に行うことができる。
【0016】
前記ロック機構は、ヒンジ部の回転軸の軸線方向に沿って形成された凹部の底面に奥側端部が当接して配置される付勢手段と、該付勢手段の手前側端部に当接して付勢手段の付勢力を受けるとともに、前記凹部内で回転可能に配置され、手前側に突出するカム部を有する第1カム部材と、該第1カム部材のカム部と係合する係合溝部と、該係合溝部と隣接して設けられ前記カム部を回転軸の軸線方向に沿って摺動させるようにカム部に当接する傾斜カム部とを有し、前記凹部内で移動不能に固定される第2カム部材とを具備し、前記巻付部材は、該第2カム部材を貫通して第1カム部材に当接可能に設けられていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明にかかる携帯用電子機器のストラップ取付構造によれば、ストラップの付け替えを容易に行うことができるとともに、取付部分を目立たなくすることで見た目に優れた取付構造とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明にかかる携帯用電子機器のストラップ取付構造の好適な実施の形態について、図面に基づいて説明する。
(第1の実施形態)
本実施形態では、携帯用電子機器として携帯電話機30を採用している。
図1は携帯電話機の外観斜視図を示し、図2は本実施形態におけるストラップ取付構造の動作を示している。また、図3はストラップ取付構造の内部構成がわかる斜視図を示し、図4はストラップ取付構造の拡大図を示している。
【0019】
携帯電話機30の筐体31には、ストラップを取り付けるための連通孔32が形成されている。
連通孔32は、携帯電話機30の筐体31の正面31aと側面31bとを連通させるように筐体31の角部に形成され、筐体31の正面31aに形成された表面開口部35と、筐体31の側面に形成された側面開口部37を連通して形成されている。
【0020】
本実施形態における連通孔32は、筐体31の正面31aと側面31bとを直線的に連通させているものではなく、筐体31内でほぼ直角に屈曲して形成されている。
連通孔32が、筐体31の正面31aと側面31bとを連結するように筐体角部に形成されることにより、筐体31の角部には、ストラップ20の紐22を巻き付けることができる棒状の巻付部33が形成される。
【0021】
本実施形態では、図2に示すように連通孔32の容積が筐体31の長手方向に変更可能に設けられている。図2に示す例では、通常時では連通孔32の表面開口部35の筐体長手方向の長さがL1であるのに対し、容積変更時には連通孔32の表面開口部35の筐体長手方向の長さがL2(L2>L1)となっている。
すなわち、本実施形態では、連通孔32は筐体長手方向にL2−L1に対応する分だけの容積が変更可能に設けられている。
【0022】
連通孔32の容積の変更は、連通孔32の内部に設けられている容積調整部材34が連通孔32内部で筐体31の長手方向に沿って移動することで実現されている。なお、本実施形態における容積調整部材34の移動方向は、連通孔32の正面31aと側面31bの貫通方向と直交する方向となっている。
本実施形態では、連通孔32は筐体31の長手方向に沿って長尺な形状となっており、容積調整部材34の平面視したときの断面積は、連通孔32の平面視したときの断面積と同一である。
【0023】
このように、連通孔32の容積を変化させる容積調整部材34は、連通孔32の容積を大きくする際には、連通孔32に連結して形成された容積調整部材収納部38内に収納され、連通孔32の容積を小さくする際には容積調整部材収納部38から連通孔32内に突出して連通孔32の容積を小さくする。
【0024】
容積調整部材34によって連通孔32の容積が大きくなったときは、ストラップ20の紐22が通しやすくなる。本実施形態では、連通孔32は内部で屈曲しており、従来の技術で説明したように本来であれば紐22を通しにくい形状である。しかし、連通孔32の容積が大きくなると紐22を通す作業をしやすくなり、ストラップ20の付け替えが容易になる。
また、ストラップ20の紐22を連通孔32に通した後は、容積調整部材34を移動させて連通孔32の容積を小さくする。すると、連通孔32が目立たなくなり、見た目に優れた携帯電話機30とすることができる。また、容積調整部材34の突出方向側の端部を、連通孔32に通した紐に突き当てるようにすることができれば、容積調整部材34による紐22の固定もできる。
【0025】
容積調整部材34の移動は、操作者が操作部36を操作することによって実行することができる。操作部36は、容積調整部材34の下端部に連結されており、その表面が筐体31の側面31bに露出するようにして配置されている。操作部36は、筐体の側面31bに形成された操作部収納溝40内に収納されている。操作部収納溝40は、操作部36の長手方向の長さよりも、容積調整部材34の移動距離と同じ距離だけ長く形成されている。
【0026】
容積調整部材34には、連通孔32の容積を小さくする方向に付勢されるように付勢手段41が設けられている。したがって、連通孔32の容積が小さい状態が通常時として維持される。
付勢手段41は、具体的にはスプリング等の部材であり、容積調整部材収納部38に連続して形成された付勢手段収納部42内に収納されている。付勢手段であるスプリング41の一方の端部は、容積調整部材34の下面に当接し、スプリング41の他方の端部は、付勢手段収納部42の内底面に当接している。
【0027】
なお、容積調整部材34をスプリング41の付勢力に抗して容積調整部材収納部38内に収納させたとき、容積調整部材34が通常時の位置に戻ってしまわないように、容積調整部材34をその位置でロックさせるロック機構を設けてもよい。
例えば、ロック機構としては、容積調整部材収納部38の内壁面に設けられ、容積調整部材収納部38内に収納された容積調整部材34の外壁面を押圧するように、容積調整部材34方向に突出入する押圧部(図示せず)と、容積調整部材34の外壁面の所定位置に形成され、押圧部が収納される凹部(図示せず)とから構成されるようにしてもよい。
【0028】
なお、上述したようなロック機構では、押圧部が突出して容積調整部材34の壁面に当接しているとき、押圧部と容積調整部材34の壁面との間で生じる摩擦力が、スプリング41の付勢力よりも小さくなるように構成することが必要である。ロックが解除されたらスプリング41の付勢力により速やかに容積調整部材34が通常時の位置に戻るためである。
【0029】
図5に、本実施形態における取付構造の他の例を示す。
図5に示す例では、連通孔32の形状が、図1の連通孔32とは異なっており、筐体31の正面31aから側面31bにかけて直線状に形成されている。したがって、連通孔32を平面視すると、断面が台形状に形成されている。
【0030】
さらに、図5に示す連通孔32内の容積調整部材34は、移動方向は筐体31の長尺方向であり、上述した例と同様の移動方向である。しかし、容積調整部材34の形状が異なっており、本例の容積調整部材34は、その断面積が、連通孔32の平面視したときの断面形状の断面積よりも小さくした形状に形成されている。
したがって、容積調整部材34が通常時の位置にある場合には、連通孔32の平面視したときの断面積が小さくなり、これにより容積が小さくなる。容積調整部材34を移動させて容積調整部材収納部38へ収納させたとき、連通孔32の平面視したときの断面積が大きくなり、これにより容積が大きくなる。
【0031】
図5のような構成の場合、連通孔32の巻付部33側の内壁面と、容積調整部材34の巻付部33側の壁面との間に生じる隙間に、ストラップ20の紐22を通すこととなる。
そして、図5に示した構成では、筐体31の長尺方向に沿った方向への連通孔32の長さが短くて済む。したがって、図1〜図4に示した例よりもシンプルな見た目とすることができる。
【0032】
なお、図5に示したような、筐体31の正面31aから側面31bにかけて直線状に形成された連通孔32に対して、図1に示したような容積調整部材34を採用してもよい。つまり、平面視すると断面台形状の連通孔32に、断面積が連通孔32の断面積と同一となるような容積調整部材34を採用し、容積調整部材34の先端部と連通孔32の内壁面との間に生じる隙間にストラップ20の紐22を通すのである。
【0033】
さらに、図1に示したような、筐体31の正面31aから側面31bにかけて途中で屈曲されて形成された連通孔32に対して、容積調整部材34の断面積が、連通孔32の平面視したときの断面形状の断面積よりも小さくした形状に形成されているものを用いてもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
携帯用電子機器として携帯電話を採用した場合におけるストラップの取付構造の他の実施形態を以下に説明する。
図6は携帯電話機の外観斜視図を示し、図7は本実施形態におけるストラップ取付構造の動作を示している。また、図8はストラップ取付構造の内部構成がわかる斜視図を示し、図9はストラップ取付構造の内部構成が分かる正面図を示している。
【0035】
携帯電話機50の筐体51の側面51bには、ストラップ20の紐22を巻き付けることができる巻付部材52が設けられている。巻付部材52はリング状に形成されているが、本実施形態では正面視するとほぼ三角形状に形成されている。三角形を構成する3辺のうち、2辺52a,52bが直線状、1辺52cが曲線状に形成されている。
【0036】
筐体51の側面51bには、巻付部材52の全体が収納可能となるような収納部54が形成されている。そして、巻付部材52は、携帯電話機50の筐体51の収納部54内部に収納された状態と、収納部54から筐体51外部へ突出した状態との間で動作可能となるように設けられている。
【0037】
巻付部材52の三角形の頂点のうちの1つに該当する箇所、具体的には直線状の2辺52aと52bの間の頂点に、筐体51との間で巻付部材が収納部54に対して突出入可能にするための回動軸56が挿通される貫通穴57が設けられている。回動軸56は、収納部54の入口近傍の筐体51に設けられている。また、貫通穴57は長穴状に形成されており、収納部54に収納時において筐体51の長尺方向に長穴の長軸方向が一致するように形成されている。したがって、巻付部材52は、収納部54内に収納時において、筐体51の長尺方向に貫通穴57の長穴分だけ移動可能である。
【0038】
図7,図8に示すように、巻付部材52の一方の直線状の辺52aは、収納時に筐体51の側面51bに表れる位置に配置され、他方の直線状の辺52bは収納部54の内底面側に位置するように配置される。
【0039】
また、本実施形態の取付構造では、巻付部材52が収納部54内に収納されている時において、収納位置で固定され、且つ必要に応じて収納位置での固定を解除させるロック機構を備えている。
ロック機構は、収納部54内部で、巻付部材52を筐体51の長尺方向の一方(図面上では上方)へ付勢する付勢手段としての板バネ58を有している。板バネ58は、収納部54の内底面に配置され、収納部54の内底面に位置する巻付部材52の直線状の辺52bに当接して、巻付部材52を上方に付勢するように機能する。
【0040】
巻付部材52における、筐体51の側面51bに露出する直線状の辺52aと、曲線状の辺52cとの間の頂点(収納時の図面上では巻付部材52の上端部)には、一方側(上方)に突出する突起部59が形成されており、筐体51の収納部54の入口近傍には、この突起部59に係合する係合部60が形成されている。
すなわち、板バネ58の付勢力によって上述したような長穴分だけ移動可能となった巻付部材52が一方側(上方)に移動すると、突起部59が筐体51の係合部60に係合されてこの位置で巻付部材52がロックされる。
【0041】
ロックを解除するには、操作者が巻付部材52を持って、巻付部材52を板バネ58の付勢力に抗して他方側に移動させ、突起部59と係合部60との係合を解除することで実行される。
また、突起部59と係合部60との間の係合が解除されると、板バネ58の付勢力を得た巻付部材52は、回動軸56を軸線として回動し、曲線状の辺52cと直線状の辺52aが収納部54の外部へ露出し、リング状に形成された部分が筐体51外へ突出する。
【0042】
上述したように、巻付部材52が筐体51外へ突出したとき、ストラップ20の紐22を巻付部材52に巻き付けることができる。なお、紐22の巻き付けは、巻付部材52を構成する3辺のうち収納時に側面51bに露出して配置される直線状の辺52aに巻き付けるようにする必要がある。これは、ストラップ20の紐22を巻き付けた巻付部材52が収納部54内に収納されているとき、紐22が収納部54の内壁面との間で挟まれてしまうことを防止するためである。
【0043】
また、筐体51の側面51bの、巻付部材52を収納する収納部54の入口周囲は、収納部54側に凹む凹部62が形成されている。このため、収納部54に巻付部材52が収納されると、巻付部材52の直線状の辺52aとリング状の空間がこの凹部62の分だけ若干露出する。このため、紐22が収納部54の内壁面との間で挟まれてしまうことを、さらに防止できる。
【0044】
図11〜図13に、本実施形態におけるストラップの取付構造の他の例を示す。
本例では、巻付部材64がリング状であって、巻付部材64の収納箇所および操作方法において、上述してきた例とは異なっている。
本例における、ストラップ20の紐22が巻き付けられる巻付部材64は、リング状に形成されており、携帯電話機50の筐体51の正面51aに設けられている。
したがって、巻付部材64を収納する収納部66は、携帯電話機50の筐体51の正面51aに形成され、巻付部材64は、筐体51の正面51aに収納・突出可能に設けられる。
【0045】
巻付部材64は、筐体51内に、筐体51の短尺方向に軸線が沿って設けられている回動軸67に固定され、回動軸67が回動することによって、筐体51の正面51aに収納・突出するように設けられている。
回動軸67の巻付部材64に固定されている側と反対側の端部は、筐体51の側面51bから外部に突出し、この回動軸67の端部には操作者が操作できる操作部68が設けられている。すなわち、操作者は操作部68を回動させる操作をすることにより、巻付部材64を収納部66内に収納した位置と収納部66から突出した位置との間での動作させることができる。
【0046】
また、巻付部材64にストラップ20の紐22を巻き付けた際に、紐22が収納部66の内壁面との間で挟まれてしまうことを防止するため、収納部66において巻付部材64の突出時の先端部(回動軸67の軸線からすると径方向の先端部)近傍は、幅方向(筐体51の短尺方向)に幅広に形成された幅広部70に形成されている。
【0047】
なお、本実施形態のように、操作部68を回動させることにより巻付部材64を筐体51から突出入させる構成の取付構造を、図6〜図10に示したような筐体51の側面51bに設けてもよい。かかる場合、操作部68は筐体51の正面51aまたは背面に設けられることとなる。
【0048】
さらに、図6〜図10に示したような付勢手段である板バネ58とロック機構を設けた巻付部材52を、本例のように筐体51の正面51aに設けても良い。
【0049】
(第3の実施形態)
携帯用電子機器として携帯電話を採用した場合におけるストラップの取付構造の他の実施形態を以下に説明する。
図14は携帯電話機の外観斜視図を示し、図15は本実施形態におけるストラップ取付構造の動作を示している。また、図16はストラップ取付構造の内部構成がわかる組立分解図を示し、図17はストラップ取付構造の動作を示している。
【0050】
本実施形態の携帯電話機80は、第1の筐体81と第2の筐体82がヒンジ部84によって折り畳み可能に設けられた折り畳み式の携帯電話機である。
ストラップ20の紐22を取り付けるために、リング状に形成された巻付部材86は、通常時はヒンジ部84内に収納され、付け替え時にはヒンジ部84から突出するように設けられている。
【0051】
携帯電話機80に設けられるヒンジ部84内には、第1の筐体81と第2の筐体82との間で回動トルクを発生させるトルクヒンジ装置88が設けられている。ただし、携帯電話機80における第1の筐体81と第2の筐体82の開閉動作においては、1台のトルクヒンジ装置88だけで、十分なトルクを出せるので、ヒンジ部84内には、ヒンジ部84の回動軸線方向に沿った一方側の端部に1台のトルクヒンジ装置88が設けられている。
したがって、ヒンジ部84の回動軸線方向に沿った他方側の端部には、本発明のストラップの取付構造を設ける十分なスペースが存在する。
【0052】
図16の組立分解図に基づいて、本実施形態の取付構造の構成について説明する。
ヒンジ部84内には、トルクヒンジ装置88と、ストラップ取付機構90が設けられている。トルクヒンジ装置88は取付片92によって第2の筐体82に取付固定されており、トルクを出力する回動軸94には、第1の筐体81に取付固定される出力アーム95がトルクヒンジ装置88に対して回動可能に取り付けられている。
【0053】
ストラップ取付機構90は、出力アーム95と一体に形成されて他方側の端部に配置され、一方側が開口した筒状の収納凹部96内に、ストラップ20の紐22を巻き付けるリング状の部材である巻付部材86と、収納凹部96の内底面に他方の端部が当接して配置された付勢手段であるスプリング104と、スプリング104の他方の端部に当接して付勢力を受ける第1のカム部材102と、第1のカム部材102と巻付部材86との間に設けられる第2のカム部材100とを備えている。
【0054】
巻付部材86は、紐22が巻き付けられるリング状部105と、第1のカム部材102の先端部102aを挿入可能に形成した筒状部106を有している。筒状部106の一方側(第1のカム部材102に向かう側)の端面106aは、第1のカム部材102と係合可能な山型が連続してギザギザ状の波形が形成されている。
【0055】
第1のカム部材102は、一方の端面はスプリング104の他方の端部に当接し、スプリングの104の付勢力を受け、収納凹部96内で筒状の軸線方向に沿って移動可能である。
第1のカム部材102の先端部102aの周囲は、先端部102aよりも大径のカム部108が形成され、カム部108の先端面は、巻付部材86の筒状部106の端面106aと係合するように、山型が連続してギザギザ状の波形が形成されている。
また、カム部108の外壁面には、第1のカム部材102の移動方向に沿って延びる凸条110が複数箇所に形成されている。
【0056】
第2のカム部材100は、内部を巻付部材86の筒状部106が進入可能な径の貫通穴112が形成され、自身は収納凹部96に固定されて移動および回動ができないように設けられている。
貫通穴112の周囲には、第1のカム部材102のカム部108に形成された凸条110に当接し、カム部108の凸条110を介して第1のカム部材102を収納凹部96内で筒状の軸線方向に沿って移動させるように、第1のカム部材102の移動方向に対して傾斜面を有する傾斜カム部114が設けられている。
傾斜カム部114は、周方向に複数形成されており、各傾斜カム部114同士の隙間が、凸条110を収納可能な幅に形成された係合溝部116として設けられている。
【0057】
本実施形態のストラップ取付機構90の概略動作を説明すると、巻付部材86がヒンジ部84内に収納された状態から巻付部材86を押圧すると、巻付部材86が収納状態でのロックが解除されて突出し、ストラップ20の紐22をリング状部105に通すことができる。巻付部材86をヒンジ部84内に収納させるときは、巻付部材86を押圧することで巻付部材86が収納された状態でロックされる。
【0058】
続いて、図17に基づいてストラップ取付機構90の動作の詳細について説明する。
図17の(a)は、巻付部材86のリング状部105がヒンジ部84内に収納された状態でロックされているところである。このとき、第1のカム部材102の凸条110は、第2のカム部材100の傾斜カム部114の傾斜面に当接することでスプリング104の付勢力に抗して他方方向への移動が規制され、且つ傾斜カム部114の周方向端部に形成されたストッパー部114aに当接することで回動が規制されている。これにより、巻付部材86は収納状態でロックされることとなる。
【0059】
図17の(b)は、操作者が(a)の状態から巻付部材86を収納方向に若干押圧した状態を示している。
すると、第1のカム部材102は、凸条110が第2のカム部材100のストッパー部114aを乗り越えることができる程度に、一方側へ移動される。
【0060】
図17の(c)は、(b)の状態からスプリング104の付勢力によって巻付部材86のリング状部105がヒンジ部84の外部に突出した状態を示している。
このとき、第1のカム部材102の凸条110は、第2のカム部材100のストッパー部114aを乗り越え、第1のカム部材102はスプリング104の付勢力により他方側に移動し、凸条110が第2のカム部材の係合溝部116内に収納される。
この状態では、第1のカム部材102の凸条110の先端部が第2のカム部材100の本体に当接しているので、これ以上他方方向へ移動することが規制され、且つ凸条110の側面は係合溝部116に挟み込まれているので回動が規制される。これにより。巻付部材86は、リング状部105を突出させた状態でロックされることとなる。
【0061】
図17の(d)は、操作者が(c)の状態から巻付部材86を収納方向に押圧した状態を示している。
すると、第1のカム部材102はスプリング104の付勢力に抗して一方方向に移動し、 第1のカム部材102の凸条110が第2のカム部材100の係合溝部116を乗り越える。
そして(a)の状態に戻り、第1のカム部材102の凸条110は、第2のカム部材100の傾斜カム部114の傾斜面に当接することでスプリング104の付勢力に抗して他方方向への移動が規制され、且つ傾斜カム部114の周方向端部に形成されたストッパー部114aに当接することで回動が規制され、巻付部材86がロックされる。
【0062】
なお、巻付部材86がヒンジ部84内に収納されている状態のときには、リング状部105に巻き付けた紐22がヒンジ部84に挟み込まれないようにリングの部分が若干突出するような位置に配置される。
また、紐22が挟み込まれないようにするために、ヒンジ部84の外壁面を若干凹ませた凹部をリング状部105の周囲に形成してもよい。
【0063】
上述してきた各実施形態においては、携帯用電子機器の一例として携帯電話機について説明した。しかし、本発明としては情報携帯端末であるPDA(Personal Digital Assistants)等に適応させてもよい。
【0064】
以上本発明につき好適な実施例を挙げて種々説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】ストラップ取付構造の第1の実施形態を採用した携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】ストラップ取付構造の第1の実施形態の動作を示す説明図である。
【図3】ストラップ取付構造の第1の実施形態の内部構造を示す斜視図である。
【図4】ストラップ取付構造の第1の実施形態の拡大図である。
【図5】ストラップ取付構造の第1の実施形態における、他の例における動作を示す説明図である。
【図6】ストラップ取付構造の第2の実施形態を採用した携帯電話機の外観斜視図である。
【図7】ストラップ取付構造の第2の実施形態の動作を示す説明図である。
【図8】ストラップ取付構造の第2の実施形態の内部構造を示す説明図である。
【図9】ストラップ取付構造の第2の実施形態の内部構造を示す正面図である。
【図10】ストラップ取付構造の第2の実施形態のストラップの装着状態を示す説明図である。
【図11】ストラップ取付構造の第2の実施形態における、他の例における動作を示す説明図である。
【図12】図11に示したストラップ取付構造を採用した携帯電話機の正面図である。
【図13】図11に示したストラップ取付構造を採用した携帯電話機の側面図である。
【図14】ストラップ取付構造の第3の実施形態を採用した携帯電話機の外観斜視図である。
【図15】ストラップ取付構造の第3の実施形態の動作を示す説明図である。
【図16】ストラップ取付構造の第3の実施形態の内部構造を示す組立分解図である。
【図17】ストラップ取付構造の第3の実施形態の内部構造の動作を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
20 ストラップ
22 紐
30,50,80 携帯電話機
31 筐体
32 連通孔
33 巻付部
34 容積調整部材
35 表面開口部
36 操作部
37 側面開口部
38 容積調整部材収納部
40 操作部収納溝
41 スプリング(付勢手段)
42 付勢手段収納部
46 押圧部
51 筐体
52 巻付部材
54 収納部
56 回動軸
57 貫通穴
58 板バネ
59 突起部
60 係合部
62 凹部
64 巻付部材
66 収納部
67 回動軸
68 操作部
70 幅広部
81 第1の筐体
82 第2の筐体
84 ヒンジ部
86 巻付部材
88 トルクヒンジ装置
90 ストラップ取付機構
92 取付片
94 回動軸
95 出力アーム
96 収納凹部
100 第2のカム部材
102 第1のカム部材
102a 先端部
104 スプリング
105 リング状部
106 筒状部
108 カム部
110 凸条
112 貫通穴
114 傾斜カム部
114a ストッパー部
116 係合溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯用電子機器にストラップを取り付けるための取付構造において、
携帯用電子機器の筐体の表面に形成された第1表面開口部と、該第1表面開口部が形成された面の表面または他の表面に形成された第2表面開口部とを連通して形成された連通孔が設けられ、
前記第1表面開口部と前記第2表面開口部との間に形成され、ストラップの紐を巻き付けるための巻付部が設けられ、
前記連通孔の容積が変更可能に設けられていることを特徴とする携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項2】
該連通孔内で連通孔の容積を大きくする方向と容積を小さくする方向との間で移動可能な容積調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項3】
前記容積調整部材を連通孔の容積を小さくする方向に付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項2記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項4】
携帯用電子機器にストラップを取り付けるための取付構造において、
前記ストラップの紐を巻き付ける巻付部材がリング状に形成され、
該リング状の巻付部材が携帯用電子機器の筐体内に収納された状態と、筐体外へ露出した状態との間で動作可能に設けられていることを特徴とする携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項5】
前記巻付部材が筐体内に収納された状態の保持と該保持状態の解除とを行うロック機構が設けられていることを特徴とする請求項4記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項6】
前記ロック機構によって前記保持状態が解除されたとき、前記巻付部材が筐体外へ突出するように付勢する付勢手段が設けられていることを特徴とする請求項5記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項7】
前記携帯用電子機器は、第1の筐体と第2の筐体とがヒンジ部において折り畳み可能に設けられており、
前記巻付部材は、前記ヒンジ部の従動側の端部内に、ヒンジの回転軸の軸線方向に沿って突出入することで、筐体内に収納された状態と、筐体外へ露出した状態とで移動可能に設けられていることを特徴とする請求項4〜請求項6のうちのいずれか1項記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項8】
前記ロック機構は、
巻付部材をヒンジの回転軸の軸線方向に沿って押圧することによって、巻付部材を筐体内に収納された状態でロックし、ロックされた状態から巻付部材をヒンジの回転軸の軸線方向に沿ってさらに押圧することにより巻付部材のロックを解除して巻付部材を筐体外へ露出させるように動作することを特徴とする請求項7記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。
【請求項9】
前記ロック機構は、
ヒンジ部の回転軸の軸線方向に沿って形成された凹部の底面に奥側端部が当接して配置される付勢手段と、
該付勢手段の手前側端部に当接して付勢手段の付勢力を受けるとともに、前記凹部内で回転可能に配置され、手前側に突出するカム部を有する第1カム部材と、
該第1カム部材のカム部と係合する係合溝部と、該係合溝部と隣接して設けられ前記カム部を回転軸の軸線方向に沿って摺動させるようにカム部に当接する傾斜カム部とを有し、前記凹部内で移動不能に固定される第2カム部材とを具備し、
前記巻付部材は、該第2カム部材を貫通して第1カム部材に当接可能に設けられていることを特徴とする請求項8記載の携帯用電子機器のストラップ取付構造。

【図3】
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【図4】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図16】
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【図17】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−290437(P2009−290437A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−139423(P2008−139423)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【出願人】(592143057)株式会社 サンコー (30)
【Fターム(参考)】