説明

携帯端末、無線LAN接続方法およびプログラム

【課題】無線LANのアクセスポイントへの接続失敗による消費電力を抑える。
【解決手段】所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイント(AP)に接続し通信を行う通信手段と、APの位置情報を記憶する記憶部101と、を有する携帯端末100において、位置検出手段が取得した位置情報とAPの位置情報とに基づいて、携帯端末100とAPとの間の距離を計算する距離計算部112と、通信手段がAPへの接続に成功した際に、距離計算部112が計算した距離を接続距離情報としてAPと対応付けて記憶部101に記憶しておくエリア設定部113と、距離計算部112が計算した距離が接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、通信手段にAPへの接続を指示するエリア判定部114と、をさらに有し、通信手段は、エリア判定部からの指示に基づいてAPへの接続を試みる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末、無線LAN接続方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯端末を家庭やオフィスに配置されている無線LAN(Local Area Network)のアクセスポイントに接続することで、基地局を介した通信よりも安価で、且つ高速な通信が行えるようになってきている。
【0003】
しかし、アクセスポイントは、基地局と比べ携帯端末が接続できる範囲が狭く、また配置されている場所も限られている。そのため、携帯端末が、基地局に対して行っているように、周囲のアクセスポイントを常時探索し接続を試みるのは、消費電力の面において効率的ではない。
【0004】
そのため、特許文献1には、携帯端末がアクセスポイントへの接続に成功した際の周囲の複数の基地局の受信信号強度に基づいて、それらの基地局の受信信号強度に対する閾値を設けることでそのアクセスポイントに接続可能な範囲を設定し、以降、それらの基地局の受信信号強度に基づいて携帯端末がアクセスポイントに接続可能か否かを判定し、接続可能と判定した場合にアクセスポイントへの接続を試みる技術が記載されている。
【0005】
また特許文献2,3では、無線LANのアクセスポイントの位置情報とそのアクセスポイントに接続可能と推定される距離を示す情報とを携帯端末に記憶しておき、携帯端末のGPS(Global Positioning System)機能を用いてアクセスポイントと携帯端末との距離を計算し、計算した距離がそのアクセスポイントに接続可能と推定される距離より短い場合に携帯端末がアクセスポイントに接続可能な範囲に位置すると判定し、アクセスポイントへの接続を試みる技術が記載されている。
【0006】
ここで、特許文献3に記載の技術を例に、携帯端末が無線LANのアクセスポイントに接続を試みる動作についてより詳細に説明する。
【0007】
図4は、一般的な携帯端末400の構成を示すブロック図である。
【0008】
図4に示すように、携帯端末400は、GPSアンテナ401、無線LAN用アンテナ402、電話用アンテナ403、キー404、LCD(Liquid Crystal Display)405、マイク406、スピーカ407、バイブレータ408、位置検出部410、エリア情報記憶部420および制御部430を有している。また、制御部430は、エリア判定部431、報知制御部432、無線LAN通信制御部433および電話通信制御部434を有している。
【0009】
位置検出部410は、GPSを構成する不図示の複数のGPS衛星からの電波信号をGPSアンテナ401を介して受信し、その信号に基づいて計算を行うことにより、携帯端末400の所在位置の緯度および経度を示す位置情報を取得する。
【0010】
エリア情報記憶部420は、不揮発性メモリの一領域であり、不図示の無線LANのアクセスポイントの所在位置の緯度および経度を示す情報や、アクセスポイントに接続可能と推定される距離の情報等を含むエリア情報を記憶している。
【0011】
制御部430は、ハードウェアとしてはCPUおよびメモリ等から構成され、キー404を通じてなされるユーザ操作や位置検出部410にて取得された位置情報等に基づいて、携帯電話機400の各部を制御する。
【0012】
エリア判定部431は、エリア情報記憶部420に記憶されているエリア情報および位置検出部410にて取得された位置情報等に基づいて、報知制御部432、無線LAN通信制御部433および電話通信制御部434を制御する。
【0013】
報知制御部432は、LCD405、マイク406、スピーカ407およびバイブレータ408等を制御して、電話の着信等のイベントをユーザに報知する。
【0014】
無線LAN通信制御部433は、携帯端末400と無線LANのアクセスポイントとの間の通信を制御する。
【0015】
電話通信制御部434は、携帯端末400と不図示の基地局との間の通信を制御する。
【0016】
図5は、図4に示したエリア情報記憶部420に記憶されているエリア情報の一例を示す図である。
【0017】
図5に示すように、図4に示したエリア情報記憶部420に記憶されているエリア情報には、アクセスポイント情報510と、エリア境界情報520とが含まれている。
【0018】
また、アクセスポイント情報510には、無線LANのアクセスポイントそれぞれについての、アクセスポイントID(Identification)511、緯度512および経度513が含まれている。ここで、アクセスポイントID511は各アクセスポイントを識別するための識別子であり、緯度512および経度513はアクセスポイントの所在位置を示している。
【0019】
また、エリア境界情報520には、携帯端末400と無線LANのアクセスポイントとの間の距離に関連する閾値である、広域境界閾値521、狭域境界閾値522および周辺境界閾値523が含まれている。ここで、広域境界閾値521は、携帯端末400が無線LANのアクセスポイントに接続できる可能性があると推定される上限の距離を示している。また、狭域境界閾値522は、携帯端末400が無線LANのアクセスポイントに接続し、その接続を継続できる可能性が高いと推定される上限の距離を示している。また、周辺境界閾値523は、携帯端末400が、無線LANのアクセスポイントに接続することはできないが、アクセスポイントの近隣に位置すると判定する際の上限の距離を示している。
【0020】
以下に、図4に示した携帯端末400の動作について説明する。
【0021】
図6は、図4に示した携帯端末400の動作を説明するためのフローチャートである。
【0022】
まず、携帯端末400において、位置検出部410は、例えば30秒等の所定の時間間隔でGPS衛星から信号を繰り返し受信し、携帯端末400の位置情報を取得する(ステップ601)。
【0023】
次に、エリア判定部431は、エリア情報記憶部420に記憶されているエリア情報と位置検出部410により取得された携帯端末400の位置情報とに基づいて、携帯端末400が広域境界閾値521で示される広域境界内に位置し、かつ無線LANによる通信を行っていない状態であるか否かを判定する(ステップ602)。なお、エリア判定部431は、携帯端末400の位置情報とエリア情報に含まれるアクセスポイントの緯度および経度とに基づいて計算される携帯端末400とアクセスポイントとの間の距離が広域境界閾値521で示される距離よりも短い場合に、携帯端末400が広域境界内に位置すると判定する。
【0024】
携帯端末400がアクセスポイントの広域境界内に位置し、かつ無線LANによる通信を行っていない状態の場合、エリア判定部431は、スピーカ407を通じて報知音を出力するとともに、無線LAN通信を使用できる可能性のあるエリアに位置することを、例えば10秒といった一定期間だけLCD105に表示するよう報知制御部432に指示する(ステップ603)。
【0025】
次に、エリア判定部431は、無線LAN通信制御部433にアクセスポイントへの接続を指示する(ステップ604)。これを受け、無線LAN通信制御部433は、アクセスポイントからのいわゆるビーコン信号の検出処理を開始する。無線LAN通信制御部433は、アクセスポイントからのビーコン信号を検出した後、所定のプロトコルに従ってアクセスポイントとの間での接続を確立する。
【0026】
次に、エリア判定部433は、ステップ604でアクセスポイントへの接続が確立し無線LANによる通信に成功した場合(ステップ605)、電話通信制御部434が基地局を介してデータ通信を行っていればその通信を切断させ(ステップ606)、無線LANによる双方向のデータ通信を無線LAN通信制御部433に実行させる(ステップ607)。なお、基地局を介してデータ通信を行っていない場合には、ステップ606はスキップされる。
【特許文献1】特開2004−186762号公報
【特許文献2】特開2008−066781号公報
【特許文献3】特開2005−080071号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
しかし、特許文献1〜3に記載の技術には以下に示す課題がある。
【0028】
特許文献1に記載の技術では、アクセスポイントの周囲の複数の基地局の受信信号強度を用いてアクセスポイントに接続可能な範囲を設定し、アクセスポイントへの接続が可能か否かを判定している。
【0029】
しかし、各基地局の受信信号強度は天候等の様々な要因により変動するため、基地局の受信信号強度を用いて設定したアクセスポイントに接続可能な範囲は大きな誤差を含んでいる可能性がある。そのため、携帯端末がアクセスポイントに接続可能と判定されても、実際にはアクセスポイントに接続できず無駄な消費電力が発生する場合がある。
【0030】
また、特許文献2,3に記載の技術では、GPSを用いて携帯端末と無線LANのアクセスポイントとの間の距離を計算し、計算した距離がアクセスポイントに接続可能と推定される距離よりも短い場合に携帯端末がアクセスポイントに接続可能な範囲に位置すると判定し、アクセスポイントへの接続を試みる。
【0031】
しかし、携帯端末がアクセスポイントに接続可能な範囲に位置するか否かの判定に使用されるアクセスポイントに接続可能と推定される距離は、サービスを提供する通信キャリア等により設定される期待値であり、携帯端末の個々の性能や無線LANのアクセスポイントが設置されている環境等は考慮されていない。そのため、接続可能と推定される距離よりも実際に携帯端末がアクセスポイントに接続可能な距離が短く、接続可能な範囲内に位置すると判定されても、実際にはアクセスポイントに接続することができず無駄な消費電力が発生する場合がある。
【0032】
本発明の目的は、無線LANのアクセスポイントへの接続が失敗する可能性を低減させ、接続失敗による消費電力を抑えることができる携帯端末、無線LAN接続方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0033】
上記目的を達成するために本発明の携帯端末は、
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末において、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算部と、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算部が計算した距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定部と、
前記距離計算部が計算した距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定部と、をさらに有し、
前記無線LAN通信手段は、前記エリア判定部からの前記指示に基づいて前記アクセスポイントへの接続を試みることを特徴とする。
【0034】
上記目的を達成するために本発明の無線LAN接続方法は、
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末が行う無線LAN接続方法であって、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算ステップと、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算ステップで計算された距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定ステップと、
前記距離計算ステップで計算された距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定ステップと、
前記エリア判定ステップでの前記指示に基づいて前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続を試みる接続処理ステップと、を有する。
【0035】
上記目的を達成するために本発明のプログラムは、
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末に、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算手順と、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算手順で計算された距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定手順と、
前記距離計算手順で計算された距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定手順と、
前記無線LAN通信手段に前記エリア判定手順での前記指示に基づいて前記アクセスポイントへの接続を試みさせる接続処理手順と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
上述したように、本発明によれば、携帯端末が無線LANのアクセスポイントへの接続に成功した際に携帯端末とアクセスポイントとの間の距離を接続距離情報として記憶部に記憶しておき、その後は、携帯端末とアクセスポイントとの間の距離が接続距離情報で示される距離よりも短い場合にアクセスポイントへの接続を試みる。
【0037】
このように、携帯端末とアクセスポイントとの間の距離が、実際にアクセスポイントへの接続に成功した距離よりも短い場合にアクセスポイントへの接続を試みるため、高い確率で接続に成功することができ、アクセスポイントへの接続失敗による消費電力を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照して説明する。
【0039】
図1は、本発明の携帯端末100の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【0040】
図1に示すように、本実施形態の携帯端末100は、アクセスポイント情報記憶部101、GPSアンテナ102、無線LAN用アンテナ103、携帯電話用アンテナ104、タイマー部105、発音部106、表示部107、入力部108および制御部110を有している。
【0041】
制御部110は、位置検出部111、距離計算部112、エリア設定部113、エリア判定部114、通知部115、GPS通信制御部116、無線LAN通信制御部117および携帯電話通信制御部118を有し、携帯端末100の他の構成要素の制御を行う。制御部110は、例えば、マイクロコンピュータやメモリ等から構成される。なお、本実施形態においては、本発明の位置検出手段は、位置検出部111、GPS通信制御部116およびGPSアンテナ102から構成され、無線LAN通信手段は、無線LAN通信制御部117および無線LAN用アンテナ103から構成される。また、本実施形態においては、本発明の記憶部は、アクセスポイント情報記憶部101に相当する。
【0042】
アクセスポイント情報記憶部101は、不図示の無線LANのアクセスポイントの所在位置を示す緯度情報および経度情報等を含むアクセスポイント情報を記憶する記憶手段である。アクセスポイント情報記憶部101は、例えば、半導体メモリやハードディスク等から構成される。
【0043】
GPSアンテナ102は、不図示のGPS衛星からの電波信号を受信し、GPS通信制御部116に信号を出力する。
【0044】
無線LAN用アンテナ103は、無線LANのアクセスポイントからの電波信号を受信し、無線LAN通信制御部117に信号を出力するとともに、無線LAN通信制御部117からの信号を電波信号としてアクセスポイントに出力する。
【0045】
携帯電話用アンテナ104は、不図示の基地局からの電波信号を受信し、携帯電話通信制御部118に信号を出力するとともに、携帯電話通信制御部118からの信号を電波信号として基地局に出力する。
【0046】
タイマー部105は、ユーザにより設定された所定の時間間隔で距離計算部112に割り込みをかける。
【0047】
発音部106は、着信を伝える報知音等の各種音声を再生する手段であって、例えば、アンプや小型スピーカ等により構成される。また、携帯端末100に内蔵したアンプやスピーカ以外に、携帯端末100に出力端子を設け、外部のアンプやスピーカ等の機器と接続し、外部の機器から音声を出力するようにしても良い。
【0048】
表示部107は、画像表示手段である。ここでは、表示部107は、例えば、モノクロまたはカラー表示が可能な液晶ディスプレイから構成されるものとするが、特に液晶ディスプレイに限定されるものではない。
【0049】
入力部108は、ユーザからの入力を受け付ける手段であって、例えば、ボタンキーやジョグダイヤル等から構成される。
【0050】
位置検出部111は、GPSアンテナ102およびGPS通信制御部116を介してGPSを構成する複数のGPS衛星からの信号を受信し、それらに基づいて計算を行うことで、携帯端末100の所在位置の緯度及び経度を示す位置情報を取得する。
【0051】
距離計算部112は、タイマー部105からの割り込みによって位置検出部111に携帯端末100の位置情報の取得を指示し、取得された携帯端末100の位置情報とアクセスポイント情報に含まれるアクセスポイントの緯度情報および経度情報とに基づいて、携帯端末100とアクセスポイントとの間の距離を計算する。
【0052】
エリア設定部113は、無線LAN通信制御部117がアクセスポイントへの接続に成功した際に、距離計算部112が計算した距離を、そのアクセスポイントの接続距離情報としてアクセスポイント情報記憶部101に記憶する。これにより、アクセスポイント情報に接続距離情報が追加される。なお、エリア設定部113は、そのアクセスポイントの接続距離情報が既にアクセスポイント情報記憶部101に記憶されている場合には、距離計算部112が計算した距離をアクセスポイント情報記憶部101に記憶しない。
【0053】
エリア判定部114は、距離計算部112が計算した距離がそのアクセスポイントの接続距離情報で示される距離よりも短く、無線LAN通信制御部117がそのアクセスポイントに接続していない場合に、無線LAN通信制御部117にそのアクセスポイントへの接続を指示する。
【0054】
通知部115は、発音部106及び表示部107を制御して、着信やアクセスポイントへの接続が可能な旨の情報をユーザに通知する。
【0055】
GPS通信制御部116は、GPSアンテナ102を介してGPS衛星と通信する。
【0056】
無線LAN通信制御部117は、無線LAN用アンテナ103を介して無線LANのアクセスポイントと通信する。
【0057】
携帯電話通信制御部118は、携帯電話用アンテナ104を介して基地局と通信する。
【0058】
以下に、図1に示したアクセスポイント情報記憶部101に記憶されているアクセスポイント情報の構成について説明する。
【0059】
図2は、図1に示したアクセスポイント情報記憶部101に記憶されているアクセスポイント情報210の一例を示す図である。
【0060】
図2に示すように、図1に示したアクセスポイント情報記憶部101には、アクセスポイント情報210として、無線LANのアクセスポイントそれぞれについての、アクセスポイントID211、緯度情報212、経度情報213、範囲情報214および接続距離情報215等が記録されている。ここで、アクセスポイントID211は、各アクセスポイントを識別するための識別子である。また、緯度情報212及び経度情報213は、各アクセスポイントの所在位置を示している。範囲情報214は、携帯端末100が各アクセスポイントに接続可能と推定される上限の距離を示している。接続距離情報215は、携帯端末100が各アクセスポイントと実際に接続成功した時の距離を示している。なお、アクセスポイントID211、緯度情報212、経度情報213および範囲情報214は、予めアクセスポイント情報記憶部101に記録されているものとする。また、接続距離情報215については、当初はアクセスポイント情報記憶部101に記録されておらず、携帯端末100が各アクセスポイントへの接続に成功した際に、そのときの携帯端末100と各アクセスポイントとの間の距離が各アクセスポイントの接続距離情報215として記憶される。
【0061】
図2に示した例では、アクセスポイントID211がアクセスポイント1のアクセスポイントについては、所在位置が北緯35度40分00秒、東経139度46分00秒で、アクセスポイントに接続可能と推定される距離が100mで、実際に携帯端末100が接続成功した距離が90mであることを示している。また、アクセスポイントID211がアクセスポイント2のアクセスポイントについては、所在位置が北緯35度41分10秒、東経139度42分20秒で、接続可能と推定される距離が80mで、まだ実際に携帯端末100が接続成功したことがないことを示している。
【0062】
以下に、図1および図2に示した携帯端末100の動作について説明する。
【0063】
図3は、図1および図2に示した携帯端末100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0064】
図3に示すように、図1に示した携帯端末100において、まず、距離計算部112は、タイマー部105からの割り込みによって所定の時間間隔毎に位置検出部111に対して携帯端末100の位置情報の取得を指示する。これを受け、位置検出部111は、GPSアンテナ102を介してGPS衛星からの電波信号を受信するようGPS通信制御部116に指示し、GPS通信制御部116が受信した電波信号に基づいて計算を行うことで、携帯端末100の位置情報を取得する(ステップ301)。
【0065】
次に、距離計算部112は、アクセスポイント情報記憶部101に記憶されているアクセスポイント情報210に含まれる緯度情報212および経度情報213と、位置検出部111で取得された携帯端末100の位置情報とに基づいて、携帯端末100と無線LANのアクセスポイントとの間の距離を計算し、計算した距離の情報をアクセスポイント情報210に含まれるアクセスポイントID211とともにエリア判定部114に出力する(ステップ302)。
【0066】
これを受け、エリア判定部114は、無線LAN通信制御部117が無線LAN通信用アンテナ103を介してアクセスポイントに接続し、無線LAN通信を行っているか否か判定する(ステップ303)。
【0067】
無線LAN通信制御部117が無線LAN通信を行っている場合(ステップ303、Yes)、エリア判定部114は処理を終了する。
【0068】
一方、無線LAN通信制御部117が無線LAN通信を行っていない場合(ステップ303、No)、エリア判定部114は、距離計算部112が出力したアクセスポイントID211に基づいて、該当するアクセスポイントの接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記憶されているか否かを確認する。
【0069】
接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記録されていない場合、エリア判定部114は、そのアクセスポイントへの接続に成功したことがないと判定し、範囲情報214で示される距離よりもステップ302で距離計算部112が計算した距離のほうが短いか否かを判定する(ステップ304)。
【0070】
一方、接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記録されている場合、エリア判定部114は、接続に成功したことがあるアクセスポイントと判定し、接続距離情報215が示す距離よりもステップ302で距離計算部112が計算した距離のほうが短いか否かを判定する。
【0071】
ステップ302で距離計算部112が計算した距離の方が範囲情報214もしくは接続距離情報215で示される距離よりも長い場合(ステップ304、No)、エリア判定部114は処理を終了する。
【0072】
一方、ステップ302で距離計算部112が計算した距離の方が範囲情報214もしくは接続距離情報215で示される距離よりも短い場合(ステップ304、Yes)、エリア判定部114は、通知部115に対して、アクセスポイントへの接続が可能な旨をユーザに知らせる報知音を発音部106を介して出力するとともに、アクセスポイントに接続するか否かをユーザに問い合わせる旨を表示部107に表示するよう指示する(ステップ305)。
【0073】
ここで、ユーザにより入力部118にアクセスポイントに接続しない旨の入力が行われた場合、エリア判定部114は処理を終了する。
【0074】
一方、ユーザにより入力部108にアクセスポイントに接続する旨の入力が行われた場合(ステップ306、Yes)、エリア判定部114は、そのアクセスポイントのアクセスポイントIDを無線LAN通信制御部117に出力し、アクセスポイントへの接続を指示する(ステップ307)。これを受け、無線LAN通信制御部117は、アクセスポイントへの接続を試みる。具体的には、無線LAN通信制御部117は、アクセスポイントからのビーコン信号の検出処理を開始し、無線LAN用アンテナ103を介してビーコン信号を検出すると、所定のプロトコルに従ってアクセスポイントとの間での接続を確立する。
【0075】
無線LAN通信制御部117は、アクセスポイントへの接続に失敗した場合、処理を終了する(ステップ308、No)。
【0076】
一方、無線LAN通信制御部117は、アクセスポイントへの接続が成功した場合(ステップ308、Yes)、接続に成功したアクセスポイントのアクセスポイントIDをエリア設定部113に出力する。これを受け、エリア設定部113は、無線LAN通信制御部117が出力したアクセスポイントIDに基づいて、そのアクセスポイントの接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記憶されているか否か、つまり以前にそのアクセスポイントへの接続に成功したことがあるか否かを判定する(ステップ309)。
【0077】
接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記憶されていない場合(ステップ309、Yes)、エリア設定部113は、接続に成功したことがないアクセスポイントと判定し、距離計算部112が計算した距離をそのアクセスポイントの接続距離情報215としてアクセスポイント情報記憶部101に記憶する(ステップ310)。
【0078】
一方、接続距離情報215がアクセスポイント情報記憶部101に記憶されている場合(ステップ309、No)、エリア設定部113は、既に接続に成功したことがあるアクセスポイントと判定し、距離計算部112が計算した距離をアクセスポイント情報記憶部101に記憶しない。
【0079】
また、エリア判定部114は、無線LAN通信制御部117がアクセスポイントへの接続に成功した場合(ステップ308、Yes)、携帯電話通信制御部118が携帯電話用アンテナ104を介して基地局に接続し通信を行っているか否かを判定する(ステップ311)。
【0080】
携帯電話通信制御部118が通信を行っている場合(ステップ311、Yes)、エリア判定部114は、携帯電話通信制御部118に対して、その通信を切断するよう指示する(ステップ312)。
【0081】
携帯電話通信制御部118が通信を行っていない場合(ステップ311、No)、もしくはステップ312の処理を実行後、エリア判定部114は、無線LAN通信制御部117に無線LANによる通信を実行させる(ステップ313)。
【0082】
上述したように、本実施形態の携帯端末100においては、携帯端末100が無線LANのアクセスポイントへの接続に成功した際に携帯端末100とアクセスポイントとの間の距離を接続距離情報215としてアクセスポイント情報記憶部101に記憶しておき、その後は、携帯端末100とアクセスポイントとの間の距離が接続距離情報215で示される距離よりも短い場合にアクセスポイントへの接続を試みる。
【0083】
このように、携帯端末100とアクセスポイントとの間の距離が、実際にアクセスポイントへの接続に成功した距離よりも短い場合にアクセスポイントへの接続を試みるため、高い確率で接続に成功することができ、アクセスポイントへの接続失敗による消費電力を抑えることができる。
【0084】
また、アクセスポイント情報記憶部101に接続距離情報215が記録されていない場合でも、アクセスポイントに接続可能と推定される距離を示す範囲情報に基づいてアクセスポイントへの接続を試みるか否かを判断するため、接続距離情報を用いる場合よりは確率が落ちるものの比較的高い確率で接続に成功することができ、接続失敗による消費電力を抑えることができる。
【0085】
なお、本発明の携帯端末100にて行われる方法は、コンピュータに実行させるためのプログラムに適用してもよい。また、そのプログラムを記憶媒体に格納することも可能であり、ネットワークを介して外部に提供することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の携帯端末の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【図2】図1に示したアクセスポイント情報記憶部に記憶されているアクセスポイント情報の一例を示す図である。
【図3】図1および図2に示した携帯端末の動作を説明するためのフローチャートである。
【図4】一般的な携帯端末の構成を示すブロック図である。
【図5】図4に示したエリア情報記憶部に記憶されているエリア情報の一例を示す図である。
【図6】図4に示した携帯端末の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0087】
100 携帯端末
101 アクセスポイント情報記憶部
102 GPSアンテナ
103 無線LAN用アンテナ
104 携帯電話用アンテナ
105 タイマー部
106 発音部
107 表示部
108 入力部
110 制御部
111 位置検出部
112 距離計算部
113 エリア設定部
114 エリア判定部
115 通知部
116 GPS通信制御部
117 無線LAN通信制御部
118 携帯電話通信制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末において、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算部と、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算部が計算した距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定部と、
前記距離計算部が計算した距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定部と、をさらに有し、
前記無線LAN通信手段は、前記エリア判定部からの前記指示に基づいて前記アクセスポイントへの接続を試みることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
前記エリア設定部は、前記接続に成功したアクセスポイントと対応付けられた前記接続距離情報が既に前記記憶部に記録されている場合、前記距離計算部が計算した距離を前記記憶部に記憶しない、携帯端末。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の携帯端末において、
前記記憶部には、前記アクセスポイントに接続可能と推定される距離を示す範囲情報が前記アクセスポイントと対応付けて記録されており、
前記エリア判定部は、前記記憶部に前記接続距離情報が記憶されていない場合、前記距離計算部が計算した距離が前記範囲情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示する、携帯端末。
【請求項4】
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末が行う無線LAN接続方法であって、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算ステップと、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算ステップで計算された距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定ステップと、
前記距離計算ステップで計算された距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定ステップと、
前記エリア判定ステップでの前記指示に基づいて前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続を試みる接続処理ステップと、を有する無線LAN接続方法。
【請求項5】
請求項4に記載の無線LAN接続方法において、
前記エリア設定ステップでは、前記接続に成功したアクセスポイントと対応付けられた前記接続距離情報が既に前記記憶部に記録されている場合、前記距離計算部が計算した距離を前記記憶部に記憶しない、無線LAN接続方法。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の無線LAN接続方法において、
前記記憶部には、前記アクセスポイントに接続可能と推定される距離を示す範囲情報が前記アクセスポイントと対応付けて記録されており、
前記エリア判定ステップでは、前記記憶部に前記接続距離情報が記憶されていない場合、前記距離計算ステップで計算された距離が前記範囲情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示する、無線LAN接続方法。
【請求項7】
所在位置の位置情報を取得する位置検出手段と、無線LANのアクセスポイントに接続し通信を行う無線LAN通信手段と、前記アクセスポイントの位置情報を記憶する記憶部と、を有する携帯端末に、
前記位置検出手段が取得した位置情報と前記アクセスポイントの位置情報とに基づいて、前記携帯端末と前記アクセスポイントとの間の距離を計算する距離計算手順と、
前記無線LAN通信手段が前記アクセスポイントへの接続に成功した際に、前記距離計算手順で計算された距離を接続距離情報として前記アクセスポイントと対応付けて前記記憶部に記憶しておくエリア設定手順と、
前記距離計算手順で計算された距離が前記接続距離情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示するエリア判定手順と、
前記無線LAN通信手段に前記エリア判定手順での前記指示に基づいて前記アクセスポイントへの接続を試みさせる接続処理手順と、を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項8】
請求項7に記載のプログラムにおいて、
前記エリア設定手順では、前記接続に成功したアクセスポイントと対応付けられた前記接続距離情報が既に前記記憶部に記録されている場合、前記距離計算部が計算した距離を前記記憶部に記憶しない、プログラム。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のプログラムにおいて、
前記記憶部には、前記アクセスポイントに接続可能と推定される距離を示す範囲情報が前記アクセスポイントと対応付けて記録されており、
前記エリア判定手順では、前記記憶部に前記接続距離情報が記憶されていない場合、前記距離計算ステップで計算された距離が前記範囲情報で示される距離よりも短い場合に、前記無線LAN通信手段に前記アクセスポイントへの接続を指示する、プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−109681(P2010−109681A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−279532(P2008−279532)
【出願日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】