説明

携帯端末装置

【課題】筐体同士を連結する際に連結部の取り付け位置にズレが生じるのを抑え、筐体同士の重なりにズレが生じるのを防ぐことができる携帯端末装置を提供すること。
【解決手段】携帯端末装置は、固定側筐体100と可動側筐体とにネジ11で締結されて両筐体を連結する2軸ヒンジ構造の連結部250を備え、固定側筐体100及び可動側筐体の少なくとも一方に、連結部250を締結する際のネジ11の回転方向に連結部250が移動するのを制止する側から連結部250に対して当接する当接部105a,105b,206が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、携帯端末装置に関し、特に2軸ヒンジ構造の連結部を有する携帯端末装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯電話機は、携帯電話機を薄型化および小型化とする等の要望に応えるために、2つの筐体(固定側筐体と可動側筐体)を2軸ヒンジ構造の連結部を介して連結しているものが多い。2軸ヒンジ構造としては、例えば、固定側筐体に対して可動側筐体を開閉可能にする開閉軸と、開閉軸に直交する軸を中心に可動側筐体を回転可能にする回転軸との2軸を備える構造が用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−299835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような携帯電話機では、固定側筐体と可動側筐体を連結する際に両筐体に対して連結部がネジで締結される。しかしながら、連結部をネジで締結する際に、ネジを締めこむトルクによって連結部の取り付け位置にズレが生じる場合がある。連結部の取り付け位置にズレが生じることで、携帯電話機を閉じたときに固定側筐体と可動側筐体との筐体同士の重なりにズレが生じるという問題がある。連結部の取り付け位置に生じたズレが僅かなものであっても、連結部から離れた部分では、取り付け位置のズレの影響が大きくなり、筐体同士の重なりのズレが大きくなってしまう。
【0005】
開示の技術は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、筐体同士を連結する際に連結部の取り付け位置にズレが生じるのを抑えることで、筐体同士の重なりにズレが生じるのを防ぐことができる携帯端末装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本願の開示する携帯端末装置は、一つの態様において、固定側筐体と可動側筐体とにネジで締結されて両筐体を連結する2軸ヒンジ構造の連結部を備え、固定側筐体及び可動側筐体の少なくとも一方に、連結部を締結する際のネジの回転方向に連結部が移動するのを制止する側から連結部に対して当接する当接部が形成されている。
【発明の効果】
【0007】
本願の開示する携帯端末装置の一つの態様によれば、固定側筐体及び可動側筐体の少なくとも一方に、連結部を締結する際のネジの回転方向に連結部が移動するのを制止する側から連結部に対して当接する当接部が形成されているので、連結部をネジで締結する際に連結部の取り付け位置にズレが生じるのを抑え、筐体同士の重なりにズレが生じるのを防ぐことができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、本願の開示する携帯端末装置の好適な実施の形態を詳細に説明する。本実施例は、携帯端末装置として携帯電話機への適用例を示す。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0009】
ここで、図1は、実施例に係る携帯電話機10の開状態を示す外観斜視図である。また、図2は、図1に示した携帯電話機10が有する連結部250の外観斜視図である。携帯電話機10は、固定側筐体100、可動側筐体200、ヒンジカバー(カバー部)300を有して大略構成される。
【0010】
携帯電話機10は、送話用に用いられるとともに、数字(0〜9)のキーを有するテンキーパッド102および機能キー(モード設定キー)104などの各種操作キーを有する固定側筐体100と、この固定側筐体100と、ほぼ同等サイズに形成された可動側筐体200とを連結部250(図2も参照)により開閉(折り畳み)自在に連結している。
【0011】
図2に示すように、連結部250は、固定側取付部12、第1回転部14、第2回転部16、可動側取付部18を有している。固定側取付部12は、連結部250を固定側筐体100に取り付けるためのものである。固定側取付部12には、取付孔12a,12bが形成されている。取付孔12a,12bを通したネジ11で固定側取付部12が固定側筐体100に締結されることで、連結部250は固定側筐体100に取り付けられる。
【0012】
第1回転部14は、固定側取付部12に対して第1の軸(開閉軸)20を中心に回転可能となっている。第1回転部14は、この第1の軸20を中心とした回転によって、固定側筐体100に対して可動側筐体200を開閉可能とする(図1も参照)。
【0013】
第2回転部16は、第1回転部14に対して第2の軸(回転軸)22を中心に回転可能となっている。第2の軸22は、第1の軸と略直交しており、可動側筐体200を回転可能とする。
【0014】
可動側取付部18は、第2回転部16に対して一体的に形成されている。可動側取付部18は、連結部250を可動側筐体200に取り付けるためのものである。可動側取付部18には、取付孔18aが形成されている。取付孔18aを通したネジ11で可動側取付部18が可動側筐体200に締結されることで、連結部250は可動側筐体200に取り付けられる。
【0015】
すなわち、連結部250を固定側筐体100および可動側筐体200に取り付けることで、固定側筐体100と可動側筐体200とを連結するとともに、固定側筐体100に対する可動側筐体200を開閉自在とし、可動側筐体200を第2の軸22を中心とした回転自在とする。
【0016】
固定側筐体100は、テンキーパッド102などの各種操作キーを有する操作パネル101が配置された固定フロントケース110と、背面側(図1の下側)に位置する固定リアケース120との2分割構造を備えている。
【0017】
同図に示すように、固定フロントケース110には、上述したテンキーパッド102、機能キー104や利用者の音声を電気信号に変換するマイクロホンが内部に配設された送話口103が設けられている。そして、これら両ケース110、120は、それぞれ4箇所の位置で取り付けネジ(図示せず)によるネジ止め固定により組み付けられている。
【0018】
図3は、連結部250を取り付ける前の固定側筐体100を示す図である。図4は、固定側筐体100に連結部250を取り付けた状態を示す図である。固定側筐体100には、連結部250を固定側筐体100に取り付ける際にネジ11をねじ込むためのネジ孔100aが形成されている。
【0019】
固定側筐体100には、当接リブ(当接部)105a,105bが形成されている。当接リブ105a,105bは、連結部250をネジ11で固定側筐体100に締結する際に、連結部250がネジ11の回転方向に回転して、連結部250の取り付け位置にズレが生じるのを防ぐ。連結部250の取り付け位置のズレは、取付孔12a,12bの内径がネジ11の外径よりもやや大きく形成されていること、および、ネジ11を締結する際に加えられるトルクが摩擦力により連結部250にも加わることによって生じる。
【0020】
ここで、当接リブ105aが形成される位置は、取付孔12aを介して連結部250を締結する際に、ネジ11の回転方向に連結部250が回転するのを制止する側(矢印Xに示す方向側)から連結部250に当接する位置となっている。また、当接リブ105bが形成される位置は、取付孔12bを介して連結部250を締結する際に、ネジ11の回転方向に連結部250が回転するのを制止する側(矢印Yに示す方向側)から連結部250に当接する位置となっている。なお、当接リブ105a,105bは、リブ同士が連結部250に対して対角となる位置に形成されている。
【0021】
可動側筐体200は、固定側筐体100と略同一の平面寸法で形成されており、携帯電話機10を閉じた状態で、両筐体はズレなく重なり合う(図10も参照)。可動側筐体200は、可動フロントケース210と、背面側(図1の下側)に位置する可動リアケース220との2分割構造とを備えている。同図に示すように、このうち可動フロントケース210の表面のほぼ中央部には、LCDモジュール(液晶表示モジュール)205を視認するための大型の表示パネル201が設けられている。
【0022】
また、可動フロントケース210の上端部には、携帯電話機10の使用者の耳を当てて音声を聞き取るための受話口202が設けられている。受話口202の内部には電気信号を音声に変換するスピーカが配設されている。これら、両ケース210、220もそれぞれ4箇所の位置で取り付けネジ(図示せず)により取り付け固定されるとともに、表示パネル201の上部位置には、ネジ用の目隠しカバー203が設けられている。
【0023】
図5は、連結部250を取り付ける前の可動側筐体200を示す図である。図6は、可動側筐体200に連結部250を取り付けた状態を示す図である。可動側筐体200には、連結部250を可動側筐体200に取り付ける際にネジ11をねじ込むためのネジ孔200aが形成されている。
【0024】
可動側筐体200には、当接リブ(当接部)206が形成されている。当接リブ206は、連結部250をネジ11で可動側筐体200に締結する際に、連結部250がネジ11の回転方向に回転して、連結部250の取り付け位置にズレが生じるのを防ぐ。連結部250の取り付け位置のズレは、取付孔18aの内径がネジ11の外径よりもやや大きく形成されていること、および、ネジ11を締結する際に加えられるトルクが摩擦力により連結部250にも加わることによって生じる。
【0025】
ここで、当接リブ206が形成される位置は、取付孔18aを介して連結部250を締結する際に、ネジ11の回転方向に連結部250が回転するのを制止する側(矢印Zに示す方向側)から連結部250に当接する位置となっている。
【0026】
図7に示すように、可動側筐体200には、角度補正パッド260が設けられている。角度補正パッド260は、可動側筐体200の連結側であって、可動側筐体200が回転する第2の軸22を挟んだ両側に配置されている。角度補正パッド260は、後に詳説するヒンジカバー300と可動側筐体200との間隙に位置するようになっている。角度補正パッド260は、携帯電話機10を閉じた際に固定側筐体100と可動側筐体200との重なりにズレが生じていないときの、可動側筐体200とヒンジカバー300との間隔と略等しい厚みで形成されている。角度補正パッド260は、例えば、ポリアセタール等の摩擦係数の低い材料を用いて構成されている。これにより、角度補正パッド260とヒンジカバー300が接触している場合であっても、角度補正パッド260とヒンジカバー300との摩擦力に阻害されることなく可動側筐体200を円滑に回転させることができる。
【0027】
図8は、ヒンジカバー300の外観斜視図である。ヒンジカバー300は、連結部250のうち主に第1回転部14部分を覆い、可動側筐体200の開閉動作に伴って第1の軸20を中心に回転する(図1も参照)。ヒンジカバー300のうち可動側筐体200に対向する対向面300aは平坦な面となっている。なお、上述した角度補正パッド260は、この対向面300aと可動側筐体200とが成す間隙に位置する。
【0028】
次に図9−1,図9−2を用いて、角度補正パッド260による第2の軸22の角度の補正作用について説明する。例えば、連結部250の製造誤差により、第1の軸20と第2の軸22とが直交していない場合には、図9−1に示すように、可動側筐体200とヒンジカバー300との間隔が、角度補正カバー260の厚みとは異なるものとなる。しかし、角度補正パッド260を可動側筐体200とヒンジカバー300との間隙に位置させることで、図9−2に示すように、角度補正パッド260の厚みによって可動側筐体200とヒンジカバー300との間隔が適切なものに補正され、第1の軸20に対する第2の軸22の角度も適切な角度に補正される。すなわち、ヒンジカバー300の対向面300aが角度補正パッド260に対応しており、可動側筐体200とヒンジカバー300との間隔が角度補正パッド260の厚みより小さくならないようになっている。
【0029】
また、可動側筐体200を第2の軸22を中心に回転させた際に、第2の軸22の角度がズレてしまう場合であっても、可動側筐体200を図9−2の状態に戻せば、第2の軸22の角度を適切な角度に戻すことができる。
【0030】
また、角度補正パッド260に対応するヒンジカバー300の対向面300aは平坦な面であるため、相手方が曲面である場合に比べて精度よく第2の軸22の角度を補正することができる。図10は、携帯電話機10の閉じた状態の外観斜視図であるが、ヒンジカバー300の両側に位置する領域Aは、デザイン性等を考慮して曲面で構成されることが多い。しかし、本実施例の携帯電話機10では、角度補正パッド260に対応する部分を平坦な面である対向面300aとしているため、携帯電話機10のデザイン等に関わらず、第2の軸22の角度補正を精度よく行うことができる。
【0031】
また、ヒンジカバー300は、可動側筐体200とともに回転するので、角度補正パッド260に対応する部分を常に対向面300aとすることができる。これにより、可動側筐体200の開閉の程度に関わらず、第2の軸22の角度補正を精度よく行うことができる。
【0032】
以上説明したように、本実施例の携帯電話機10では、固定側筐体100に形成された当接リブ105a,105b及び可動側筐体200に形成された当接リブ206が、連結部250をネジ11で締結する際のネジ11の回転方向に連結部250が回転するのを制止する方向から連結部250に当接するので、連結部250の取付位置にズレが生じるのを防ぐことができる。これにより、携帯電話機10と閉じた際の、両筐体100,200の重なりにズレが生じるのを防ぐことができる。
【0033】
また、固定側筐体100の当接リブ105a,105bは、連結部250の固定側取付部12に対して対角となる位置に形成されているので、固定側筐体100に対して連結部250を取り付ける際に当接リブ105a,105bを利用して容易に位置決めをすることができる。
【0034】
なお、本実施例では、可動側筐体200に角度補正パッド260を設けているが、これに限られず、ヒンジカバー300に角度補正パッド260を設けてもよい。また、可動側筐体200とヒンジカバー300の両方に角度補正パッド260を設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】実施例に係る携帯電話機の開状態を示す外観斜視図である。
【図2】携帯電話機が有する連結部の外観斜視図である。
【図3】連結部を取り付ける前の固定側筐体を示す図である。
【図4】固定側筐体に連結部を取り付けた状態を示す図である。
【図5】連結部を取り付ける前の可動側筐体を示す図である。
【図6】可動側筐体に連結部を取り付けた状態を示す図である。
【図7】可動側筐体に設けられた角度補正パッドを説明するための図である。
【図8】ヒンジカバーの外観斜視図である。
【図9−1】第1の軸に対して第2の軸が直交していない状態を示す模式図である。
【図9−2】角度補正パッドによって第2の軸の角度が補正された状態を示す模式図である。
【図10】携帯電話機の閉状態を示す図である。
【符号の説明】
【0036】
10 携帯電話機(携帯端末装置)
20 第1の軸(開閉軸)
22 第2の軸(回転軸)
100 固定側筐体
105a,105b 当接リブ(当接部)
200 可動側筐体
205 LCDモジュール(液晶表示モジュール)
206 当接リブ(当接部)
250 連結部
260 角度補正パッド
300 ヒンジカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示モジュールを有する可動側筐体と、
操作キーを有する固定側筐体と、
前記可動側筐体及び前記固定側筐体にネジで締結され、前記固定側筐体に対して前記可動側筐体を開閉可能とする開閉軸と、前記開閉軸と略直交して前記可動側筐体を回転可能とする回転軸とで前記可動側筐体と前記固定側筐体とを連結する2軸ヒンジ構造の連結部と、を備える携帯端末装置であって、
前記可動側筐体及び前記固定側筐体の少なくとも一方に、前記連結部を締結する際のネジの回転方向に前記連結部が移動するのを制止する側から前記連結部に対して当接する当接部が形成されていることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項2】
液晶表示モジュールを有する可動側筐体と、
操作キーを有する固定側筐体と、
前記可動側筐体及び前記固定側筐体にネジで締結され、前記固定側筐体に対して前記可動側筐体を開閉可能とする開閉軸と、前記開閉軸と略直交して前記可動側筐体を回転可能とする回転軸とで前記可動側筐体と前記固定側筐体とを連結する2軸ヒンジ構造の連結部と、前記連結部を覆うカバー部と、を備える携帯端末装置であって、
前記可動側筐体及び前記カバー部の少なくとも一方は、前記可動側筐体と前記カバー部との間隙に位置して前記固定軸に対する前記回転軸の角度を補正する角度補正パッドを有し、
前記可動側筐体又は前記カバー部のうち前記角度補正パッドと対向する面は平坦な面であることを特徴とする携帯端末装置。
【請求項3】
前記角度補正パッド部は、ポリアセタールを用いて構成されていることを特徴とする請求項2に記載の携帯端末装置。
【請求項4】
液晶表示モジュールを有する可動側筐体と、
操作キーを有する固定側筐体と、
前記可動側筐体及び前記固定側筐体にネジで締結され、前記固定側筐体に対して前記可動側筐体を開閉可能とする開閉軸と、前記開閉軸と略直交して前記可動側筐体を回転可能とする回転軸とで前記可動側筐体と前記固定側筐体とを連結する2軸ヒンジ構造の連結部と、前記連結部を覆うカバー部と、を備える携帯端末装置であって、
前記可動側筐体及び前記固定側筐体の少なくとも一方に、前記連結部を締結する際のネジの回転方向に前記連結部が移動するのを制止する側から前記連結部に対して当接する当接部が形成され、
前記可動側筐体及び前記カバー部の少なくとも一方は、前記可動側筐体と前記カバー部との間隙に位置して前記固定軸に対する前記回転軸の角度を補正する角度補正パッドを有し、
前記可動側筐体又は前記カバー部のうち前記角度補正パッドと対向する面は平坦な面であることを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9−1】
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【図9−2】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−74440(P2010−74440A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238671(P2008−238671)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】