説明

携帯端末

【課題】滑らかに回転側筐体を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転させると共に、携帯端末をコンパクトなものとする。
【解決手段】回転側筐体3を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持する回転支持機構10に支持プレート16(回転支持機構本体)を設け、第1リンク部材31の一端を回転側筐体3の第1被支持部11に回転自在に連結し、他端を支持プレート16の第1支持部13に回転自在に連結する。また、第2リンク部材32の一端を回転側筐体3における第1被支持部11と離れた位置にある第2被支持部12に回転自在に連結し、他端を支持プレート16における第1支持部13と離れた位置にある第2支持部14に回転自在に連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転側筐体が縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持された携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地上デジタルテレビ放送の開始に伴い、携帯電話機に代表される携帯端末はTV受信機能やインターネット接続機能を備えるようになってきている。このため、携帯端末は、その携帯性を向上させることと、表示画面を大きくして画像を見やすくすることとの両立を図る必要がある。さらには、TV画像やインターネット画面の性質上、表示画面を横長状態にしてTV視聴やインターネット接続を行いたいというニーズがある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1のように、第1の筐体と第2の筐体とをヒンジ部で折り畳み開閉自在に連結し、第1の筐体に液晶表示部を縦長状態と横長状態とに切換操作可能に支持する折畳み式携帯電話機が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−211576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような携帯端末では、液晶表示部を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転させるときに、第1ガイドピン及び第2ガイドピンがそれぞれガイド溝内を摺動することで、液晶表示部の軌跡が規制されるように構成されているため、ガイドピンとガイド溝との間で、ある程度の摩擦抵抗の発生は避けられない。
【0006】
また、ガイドピンの軌跡を確実に規制するためにガイド溝の周縁をガイドプレートに形成する必要があるので、ガイドプレートの小型化には限界があった。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、滑らかに回転側筐体を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転させると共に、携帯端末をコンパクトなものとすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、回転支持機構に2つのリンク部材を設けた。
【0009】
具体的には、第1の発明では、
回転側筐体と、該回転側筐体を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持する回転支持機構とを備えた携帯端末を対象とする。
【0010】
そして、上記回転支持機構は、
回転支持機構本体と、
一端が上記回転側筐体の第1被支持部に回転自在に連結され、他端が上記回転支持機構本体の第1支持部に回転自在に連結された第1リンク部材と、
一端が上記回転側筐体における上記第1被支持部と離れた位置にある第2被支持部に回転自在に連結され、他端が上記回転支持機構本体における上記第1支持部と離れた位置にある第2支持部に回転自在に連結された第2リンク部材とを備えている。
【0011】
上記の構成によると、回転側筐体と回転支持機構本体とが第1及び第2リンク部材で回転可能に連結されているので、従来のようにガイドピンをガイド溝内に摺動させる必要がなくなり、摩擦抵抗が格段に低減される。また、回転支持機構本体にガイド溝を設けなくて良いので、ガイド溝の周縁分だけ回転支持機構本体のスペースを確保する必要がなくなり、回転支持機構本体の小型化が可能となる。
【0012】
第2の発明では、第1の発明において、
上記第1被支持部の回転軌跡と、上記第2被支持部の回転軌跡とが交差している。
【0013】
すなわち、従来のようにガイド溝内にガイドピンを摺動させる構造では、ガイド溝同士を交差させることはできなかった。しかし、本発明では、第1及び第2リンク部材で回転側筐体を回転可能に支持しているので、設計自由度が増え、第1被支持部の軌跡と第2被支持部の軌跡とを交差させることができる。このため、第1被支持部の軌跡を第2被支持部の軌跡から離す必要がなくなり、回転支持機構本体が小型化される。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、
上記回転側筐体の側面における厚さ方向中間に形成され、上記回転支持機構が移動するのを許容する移動用開口を備えている。
【0015】
すなわち、第1及び第2リンク部材で回転側筐体を回転支持機構本体に回転可能に支持しているので、特に回転側筐体の厚さ方向へのがたつきが発生しやすいが、上記の構成によると、回転支持機構は、常に移動用開口内を移動するので、回転側筐体が回転中には、移動用開口とのクリアランス内でしかぐらつかず、また、回転側筐体に不測の衝撃が加わっても、移動用開口の周縁にも負荷が伝達されるので、回転支持機構にのみ負荷が集中するのが防止され、回転支持機構が損傷しにくくなる。
【0016】
第4の発明では、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、
上記第1リンク部材及び上記第2リンク部材の少なくとも一方には、回転側筐体の回転移動を補助する付勢機構が設けられている。
【0017】
上記の構成によると、付勢機構により、回転側筐体の回転が容易となって片手での回転操作が可能となり、また、回転側筐体が横長状態や縦長状態で安定する。しかも、第1及び第2リンク部材で回転側筐体を回転支持機構本体に回転可能に支持しているので、摩擦抵抗が少なく、付勢機構の付勢力が小さくても回転側筐体が滑らかに動く。
【0018】
第5の発明では、第4の発明において、
上記付勢機構は、一端が上記回転支持機構本体に設けた第1バネ支持部に連結され、他端が上記第2リンク部材に設けた第2バネ支持部に連結された捩りコイルバネである。
【0019】
上記の構成によると、簡単な構成で付勢機構が実現されると共に、ガイド溝がなくて摩擦抵抗が小さいため、バネ定数を大きくする必要がなく、捩りコイルバネのコイル部が小さくなる。
【0020】
第6の発明では、第5の発明において、
上記第2リンク部材における上記第2バネ支持部と上記第2支持部との間には、該第2リンク部の回転時に該第2バネ支持部との干渉を避けるための切欠が形成されている。
【0021】
上記の構成によると、回転側筐体の回転に伴って捩りコイルバネも回転するが、第2リンク部材に切欠を形成しているので、この切欠によって第2バネ支持部との接触を避けられる。このため、第2リンク部材の回転角度を大きくすることができる。
【0022】
第7の発明では、第6の発明において、
上記第2リンク部材は、長手方向中間部が略U字状に折り曲げられ、
上記切欠は、上記略U字状部分に形成されている。
【0023】
上記の構成によると、簡単な構成で大きな切欠を形成することができるので、第2リンク部材の回転角度をさらに大きくすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、第1及び第2リンク部材で回転側筐体を回転支持機構本体に縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持するようにしたことにより、滑らかに回転側筐体を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転させると共に、携帯端末をコンパクトなものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態にかかる折り畳み状態にある携帯電話機を示す斜視図である。
【図2】開いた状態で回転側筐体が縦長状態の携帯電話機を正面側から見た斜視図である。
【図3】回転側筐体を縦長状態又は横長状態に切り換える途中の携帯電話機を正面側から見た斜視図である。
【図4】開いた状態で回転側筐体が横長状態のとき携帯電話機を正面側から見た斜視図である。
【図5】回転側筐体が縦長状態の携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図6】回転側筐体を縦長状態又は横長状態に切り換える途中の携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図7】携帯電話機の回転支持機構が移動用開口内を移動する様子を背面側から見た斜視図である。
【図8】回転側筐体を縦長状態又は横長状態に切り換える途中の携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図9】回転側筐体を縦長状態又は横長状態に切り換える途中の携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図10】回転側筐体が横長状態における携帯電話機を背面側から見た斜視図である。
【図11】回転側筐体が縦長状態における回転支持機構の様子を示す背面図である。
【図12】回転側筐体が縦長状態又は横長状態に切り換える途中の回転支持機構の様子を示す背面図である。
【図13】回転側筐体が縦長状態又は横長状態に切り換える途中の回転支持機構の様子を示す背面図である。
【図14】回転側筐体が縦長状態又は横長状態に切り換える途中の回転支持機構の様子を示す背面図である。
【図15】回転側筐体が横長状態における回転支持機構の様子を示す背面図である。
【図16】回転支持機構の背面図である。
【図17】側方遮蔽部材を拡大して示す斜視図である。
【図18】側方遮蔽部材を拡大して示し、(a)が背面図で、(b)が側面図である。
【図19】下方遮蔽部材を拡大して示す斜視図である。
【図20】下方遮蔽部材を拡大して示す斜視図である。
【図21】下方遮蔽部材を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1〜図10は本発明の実施形態の携帯端末としての折畳み式携帯電話機1を示し、この携帯電話機1は、正面側に表示ディスプレイ2が内蔵された薄板状の回転側筐体3を備えている。この回転側筐体3は、ヒンジ部4を中心に固定側筐体5と折り畳み自在に連結されている。このため、図1に示すように、回転側筐体3と固定側筐体5とを折り畳んだときには、薄い直方体形状となっている。一方、図2に示すように、回転側筐体3をヒンジ部4を中心に開くと、縦長の表示ディスプレイ2が正面に現れるようになっている。
【0028】
回転側筐体3は、いずれも矩形皿状の正面側キャビネット3aと背面側キャビネット3bとが厚さ方向に平行な分割面3cで結合されて形成されている。正面側キャビネット3aと背面側キャビネット3bとは、樹脂成型品でも金属成型品でもよいが、本実施形態では、正面側キャビネット3aは、マグネシウム合金等の軽量かつ剛性の高い材料で構成されている。この正面側キャビネット3aに表示用基板2aを含む表示ディスプレイ2を嵌め込んだ状態で正面側からアクリル板やガラス板よりなるディスプレイ用カバー9で覆われている。背面側キャビネット3bの上側には、時刻等を表示するための背面ディスプレイ用開口6が形成されている。
【0029】
図2に示すように、固定側筐体5には、携帯電話機1の各種機能を操作する操作部7が内蔵され、正面側にファンクションキー7aや文字キー7bが配置されている。これらのキー7a,7bの上に描かれた文字は、固定側筐体5を縦長に持ったときに読みやすいように描かれている。これらのキー7a,7bの背面側には、図示しないメイン基板が内蔵されている。図5に示すように、固定側筐体5の背面側には、矩形状のバッテリーカバー8が設けられ、その内部にバッテリー(図示せず)が内蔵されている。また、固定側筐体5にカメラ機能を設けてもよし、回転側筐体3にも簡単なカメラを設けてもよい。また、回転側筐体3又は固定側筐体5内には、図示しないTVチューナが内蔵され、TV受信可能となっている。
【0030】
そして、上記回転側筐体3は、回転支持機構10によって図2に示す縦長状態から図4に示す横長状態へ正面から見て時計回りに回転し、また、横長状態から縦長状態へ反時計回りに元に戻るように回転自在に支持されている。そして、回転側筐体3は、ヒンジ部4(後述するヒンジボス部17a,18a及び膨出部5a)と所定の距離を空けながら回転するように構成されている。このため、回転側筐体3の角部を丸める必要がなくなり、表示ディスプレイ2が大きく形成されている。また、図4に示すように、回転側筐体3が横長状態かつ開いた状態で、固定側筐体5の背面側を机上等の載置面に載置可能となっている。
【0031】
図11〜図16に示すように、回転支持機構10は、回転支持機構本体としての支持プレート16を備えている。この支持プレート16は、例えば、ステンレス鋼板よりなり、支持プレート16の下端は、下方(ヒンジ部4側)へ延びた一対の脚部16a,16bを備えている。
【0032】
正面側キャビネット3aの背面には、第1被支持部11と第2被支持部12とが所定の間隔を空けて配置されている。例えば、第1被支持部11と第2被支持部12とは、正面側キャビネット3aの成形時にその背面から突設され、中央にネジ穴11a,12aをそれぞれ備えたボス形状よりなる。
【0033】
そして、回転支持機構10は、第1リンク部材31を備え、この第1リンク部材31は、例えば両端が丸まったステンレス鋼板よりなり、両端にそれぞれ貫通孔31aが形成されている。この第1リンク部材31の一端の貫通孔31aに図示しないビスを通して回転側筐体3の第1被支持部11のネジ穴11aに締結することで、第1リンク部材31の一端が第1被支持部11に対して回転自在に連結されている。第1リンク部材31の他端は、支持プレート16に形成した第1支持部13の貫通孔13aに図示しないピン等をかしめることで、第1支持部13に対して回転自在に連結されている。この第1支持部13は、背面から見て回転側筐体3の左右中間下部に配置されている。このことで、図11等に二点鎖線で示すように、第1リンク部材31は、第1支持部13の貫通孔13aを中心に円弧状の第1回転軌跡L1を描くようになっている。
【0034】
また、回転支持機構10は、第2リンク部材32を備え、この第2リンク部材32は、例えば両端が丸められ、中間部が切り欠かれたU字状となったステンレス鋼板よりなり、両端にそれぞれ貫通孔32aが形成されている。この貫通孔32aに図示しないビスを通して回転側筐体3の第2被支持部12に締結することで、第2リンク部材32の一端が第2被支持部12に対して回転自在に連結されている。第2リンク部材32の他端は、支持プレート16に形成した第2支持部14の貫通孔14aに図示しないピン等をかしめることで、第2支持部14に対して回転自在に連結されている。この第2支持部14は、第1支持部13と離れた位置、すなわち背面から見て回転側筐体3の右側上下中間に配置されている。このことで、図11等に二点鎖線で示すように、第2リンク部材32は、第2支持部14の貫通孔14aを中心に円弧状の第2回転軌跡L2を描くようになっている。このため、支持プレート16の右側には、第2回転軌跡L2を避けるように円弧状に切り欠かれた開口16cが形成されている。また、図15に示すように、横長状態では、第2回転軌跡L2の上端が横長状態となった回転側筐体3の上辺よりも上方に飛び出すようになる。そして、第1被支持部11の第1回転軌跡L1と、第2被支持部12の第2回転軌跡L2とが交差している。なお、第1及び第2リンク部材31,32の連結方法は特に限定されず、例えば、第1及び第2被支持部11,12をネジ穴11a,12aのみで構成し、第1及び第2リンク部材31,32側にボス部を正面側キャビネット3aに向けて突設してもよい。
【0035】
一方、第2リンク部材32には、回転側筐体3の回転移動を補助する付勢機構としての捩りコイルバネ33が設けられている。この捩りコイルバネ33は、一端が支持プレート16に設けた第1バネ支持部34に連結され、他端が第2リンク部材32に設けた第2バネ支持部35に連結されている。第1バネ支持部34は、支持プレート16の開口16cの上端近傍に配置され、第2バネ支持部35は、第2リンク部材32の第2被支持部12側に配置されている。例えば、第1バネ支持部34及び第2バネ支持部35は、ピン形状を有し、捩りコイルバネ33の両端にそれぞれ形成した環状部(図示せず)を回転自在に支持している。この捩りコイルバネ33は、図11及び図15に示すような、回転側筐体3が縦長状態及び横長状態のとき引張力(一対の直線部を閉じようとする力)が弱く、図13に示すように、直線部分の角度が最も開いたときに引張力が蓄えられる構成とする。
【0036】
第2リンク部材32における第2バネ支持部35と第2支持部14側との間、すなわち第2リンク部材32の長手方向中間部は、略U字状に折り曲げられたような形状をし、この略U字状部分に切欠36が形成されている。この切欠36により、図15に示すように、第2リンク部材32と第2バネ支持部35とが接触しないようになっている。
【0037】
図1〜図10にも示すように、支持プレート16及びヒンジ部4は、厚さ方向に分割された正面側ヒンジ部筐体17及び背面側ヒンジ部筐体18で挟まれている。正面側ヒンジ部筐体17は、ヒンジ部4を構成する左右のヒンジボス部17aと、これらヒンジボス部17aから上方に延び、支持プレート16の左右側面をそれぞれ覆う装飾側面部17bとを有し、正面側が金属製の装飾薄板19で覆われている。同様に、背面側ヒンジ部筐体18は、ヒンジ部4を構成する左右のヒンジボス部18aを有し、背面側が金属製の装飾薄板19で覆われている。表裏一対の装飾薄板19には、上下又は斜めに延びる複数の突条19aが形成され、いずれも支持プレート16を固定するためのネジ挿通孔19bを備えている。また、背面から見て左上側の位置には、表裏の装飾薄板19同士を固定するネジ挿通孔19cが形成されている。そして、支持プレート16を正面側ヒンジ部筐体17及び背面側ヒンジ部筐体18で狭持した状態で、支持プレートのネジ挿通孔16dと、装飾薄板19のネジ挿通孔19b,19cにネジ(図示せず)を締結することにより、支持プレート16がヒンジ部4と連結される。なお、第1及び第2リンク部材31,32は、装飾薄板19よりも上方にあり、移動用開口25内を通過しない。
【0038】
図2等に示すように、ヒンジ部4は、左右外側のヒンジボス部17a,18aと、固定側筐体5の上側に形成されてこれらヒンジボス部17a,18aに挟まれる膨出部5aとを備えている。支持プレート16の一対の延長部16a,16bは、それぞれヒンジボス部17a,18a内に配置されている。図16に示すように、背面側から見て右側の延長部16aには、ヒンジ軸4aの右外側端部4bが回転不能に固定されている。このヒンジ軸4aの左側端部4cは、固定側筐体5の膨出部5aに挿通されて回転不能に固定されている。ヒンジ軸4aは、付勢バネ4dを備え、この付勢バネ4dの付勢力により、回転側筐体3が固定側筐体5に対し容易に開くように構成されている。また、背面側から見て左側のヒンジボス部17a,18a内には、表示用基板2aとメイン基板とを電気的に接続する信号線20が通り、この信号線20は、上記表裏の装飾薄板19で覆われることで回転側筐体3の回転時に損傷しないように保護されている。
【0039】
そして、図1等に示すように、回転側筐体3の側面における厚さ方向中間には、回転支持機構10が移動するのを許容する移動用開口25が形成されている。この移動用開口25は、背面側キャビネット3bにおける分割面3c側の縁部に形成されている。背面側から見たときに、この移動用開口25は、縦長状態で下側に配置される下方開口25aと、左側に配置される側方開口25bとに跨ってL字形状に形成されている。また、図1及び図10に示すように、移動用開口25は、回転支持機構10の移動に合わせて開閉する側方遮蔽部材40及び下方遮蔽部材41で覆われている。
【0040】
図17及び図18に示すように、側方遮蔽部材40は、側方開口25bを閉じる側方遮蔽部材本体40aを備え、回動支点40bを中心に回動自在に支持されている。側方遮蔽部材本体40aの内側には、バネ収容部40cが形成されている。このバネ収容部40cには、コイルバネ40dが収容されている。このコイルバネ40dにより、側方遮蔽部材本体40aが、側方開口25bを閉じる方向に付勢されている。図11に示すように、回動端40eは、縦長状態で正面側ヒンジ部筐体17の上端部17cの凹部17dに収容されている。
【0041】
図19〜図21に示すように、下方遮蔽部材41はL字形状を有し、下方開口25aを遮蔽する下方外観部41aと、この下方外観部41aよりも短く、側方開口25bの一部を遮蔽する側方外観部41bとを備えている。側方外観部41bの先端には、テーパ部41cが形成されている。この下方外観部41aには、板バネ43が連結されている。板バネ43は、下方外観部41aにモールド成型される埋込部43aと、正面側キャビネット3aの下端に収容されるシーソー部43bとを備え、これら埋込部43aとシーソー部43bとが連結部43cでのみ連結されている。シーソー部43bは、正面側キャビネット3aの下端とは結合されず、正面側キャビネット3aの下端内で自由に動くように収容されている。シーソー部43bは、下方外観部41aの内側に成型した三角形状のシーソー支点41dにより、シーソーのように揺動可能となっている。このように構成することで、回転支持機構10の回転に伴って、テーパ部41cから当接された側方外観部41bが徐々に回転側筐体3の厚さ方向に押圧されて回動し、下方外観部41a側が押圧されると連結部43cを境に揺動されることにより、回転支持機構10がスムーズに通過するように構成されている。回転支持機構10の通過後には、板バネ43に押し戻されて再び下方開口25a及び側方開口25bの一部を閉じるようになっている。下方遮蔽部材41も、背面側キャビネット3bと同じ材質で同じ色彩であると見映えがよい。なお、15等に示されているように、下方遮蔽部材41は、背面側を背面カバー42で覆われて正面側キャビネット3a内から飛び出さないようになっている。
【0042】
このように構成することで、図1及び図2に示す縦長状態では、装飾側面部17bと、側方遮蔽部材40とで側方開口25bが閉じられ、下方開口25aには支持プレート16、正面側ヒンジ部筐体17及び背面側ヒンジ部筐体18の下側が収容されている。図10に示す横長状態では、側方開口25bの一部に支持プレート16、正面側ヒンジ部筐体17及び背面側ヒンジ部筐体18が収容され、側方開口25bの残りの部分と下方開口25aとが下方遮蔽部材41で閉じられている。
【0043】
−作用−
次に、本実施形態にかかる携帯電話機1の作動について説明する。
【0044】
まず、図1に示すように、携帯電話機1を使用しないとき、又は待機状態のときなどは、回転側筐体3と固定側筐体5とは折り畳み状態にある。このとき、回転支持機構10は、回転側筐体3の移動用開口25内に収納されている。つまり、側方開口25bは、側方遮蔽部材40と装飾側面部17bとで覆われ、回転側筐体3の表面はほぼ連続して見える。このため、回転支持機構10が出っ張らず、一見すると回転支持機構10のない通常の折畳み式携帯電話機1に見えて見映えがよい。
【0045】
そして、図2に示すように、回転側筐体3を固定側筐体5に対して開くと、表示ディスプレイ2と操作部7とが現出する。通常の通話時やメール送受信時などには、表示ディスプレイ2を縦長状態とし、操作部7でキー入力しながら使用する。このとき、図11に示すように、捩りコイルバネ33の一対の直線部間の角度は小さく、比較的弱い力で第2リンク部材32を下方へ引っ張ることで、回転側筐体3がぐらつかないように保持している。
【0046】
一方、地上デジタルテレビ放送の視聴やインターネット接続をするときなど横長画像を見たいときには、ユーザが表示ディスプレイ2を回転させ縦長状態から横長状態に切り換える。
【0047】
まず、図3に示すように、ユーザは、捩りコイルバネ33の一対の直線部間の角度を開く方向に捩りコイルバネ33の引張力に抗しながら、表示ディスプレイ2の下端側コーナー部2bを表面から見て時計回りに回転させる。このとき、図11及び図12に示すように、携帯電話機1の背面から見て第1回転軌跡L1の左端にあった第1リンク部材31の第1被支持部11側は、徐々に第1回転軌跡L1上を右側へ移動し、第2回転軌跡L2の上下中間にあった第2リンク部材32の第2被支持部12側は、第2回転軌跡L2の上端側へ移動する。このとき、装飾側面部17bが下方遮蔽部材41を押し下げるので、回転側筐体3の回転を阻害しない。側方遮蔽部材40は、移動用開口25から外方へ飛び出さないように規制されることにより、回転側筐体3と共に回動する。図3及び図7に示すように、移動用開口25から出てきた回転支持機構10は、その正面及び背面が装飾薄板19で覆われているので、見映えがよい。
【0048】
さらに回転側筐体3が回転すると、図13に示すように、第1被支持部11が第1回転軌跡L1の左右中央に到達すると同時に第2被支持部12が第2回転軌跡L2の上端に到達する。このとき、正面側ヒンジ部筐体17の上端部17cが、回動端40eを押し込むので、側方遮蔽部材40が回動し、捩りコイルバネ33は、その一対の直線部を閉じようとする弾性エネルギーを最も蓄えた状態となる。
【0049】
次いで、さらに回転側筐体3を回転させると、捩りコイルバネ33が元の状態に戻ろうとして第2リンク部材32を引っ張るので、回転側筐体3が、捩りコイルバネ33の引張力によって徐々に回転して図4に示す横長状態に切り換えられる。このとき、図13〜図15に示すように、携帯電話機1の背面から見て第2回転軌跡L2の上端にあった第2被支持部12が第2回転軌跡L2の下端へ移動すると同時に、第1回転軌跡L1の中央にあった第1被支持部11が第2回転軌跡L2の右端に移動する。捩りコイルバネ33は、第2リンク部材32を下方に回動させる方向に引張力を発揮しているので、横長状態の回転側筐体3がぐらつかない。
【0050】
このように、回転支持機構10により、支持プレート16に対して表示ディスプレイ2の第1被支持部11が上下方向に円弧状の第1回転軌跡L1を描きながら移動すると同時に、表示ディスプレイ2の第2被支持部12が左右方向に円弧状の第2回転軌跡L2を描きながら移動する。
【0051】
本実施形態では、図15に示す横長状態において、第2回転軌跡L2の上端が横長となった回転側筐体3の上辺よりも飛び出している点に大きな特徴がある。すなわち、従来のようにガイド溝内にガイドピンを摺動させる構造では、ガイド溝同士を交差させることはできなかったが、本実施形態では、ガイド溝ではなく第1及び第2リンク部材31,32で回転側筐体3を回転可能に支持しているので、第1回転軌跡L1と第2回転軌跡L2の設計自由度が増えている。そのことで、第2回転軌跡L2をできるだけ第1回転軌跡L1に近づけることができ、両軌跡11,12が交差している。しかも、第2回転軌跡L2の上端が横長状態の回転側筐体3の上辺よりも上に配置されたとしても、支持プレート16にガイド溝を設けなくて良いので、ガイド溝の周縁分だけ支持プレート16のスペースを確保する必要がなくなり、支持プレート16の小型化されている。
【0052】
しかも、回転側筐体3の回転に伴って捩りコイルバネ33は回転するが、第2リンク部材32に切欠36を形成しているので、この切欠36によって横長状態における第2バネ支持部35との接触が避けられる。このため、第2リンク部材32の回転角度を大きくすることができる。
【0053】
また、図6〜図10に示すように、回転支持機構10は、側方遮蔽部材40及び下方遮蔽部材41を徐々に押しのけながら移動すると共に、移動後には、側方遮蔽部材40及び下方遮蔽部材41が徐々に元の位置に戻る。
【0054】
本実施形態では、第1及び第2リンク部材31,32で回転側筐体3を支持プレート16に回転可能に支持しているので、特に回転側筐体3の厚さ方向へのがたつきが発生しやすいが、回転支持機構10が常に移動用開口25内を移動するので、回転側筐体3が回転中には、移動用開口25とのクリアランス内でしかぐらつかず、また、回転側筐体3に不測の衝撃が加わっても、移動用開口25の周縁にも負荷が伝達されるので、回転支持機構10にのみ負荷が集中するのが防止され、回転支持機構10が損傷しにくい。
【0055】
また、捩りコイルバネ33により、回転側筐体3の回転が容易となって片手での回転操作が可能となり、また、回転側筐体3が横長状態や縦長状態で安定する。しかも、第1及び第2リンク部材31,32で回転側筐体3を支持プレート16に回転可能に支持しているので、従来のようにガイドピンをガイド溝内に摺動させる必要がなくなり、摩擦抵抗が格段に低減される。このため、捩りコイルバネ33の回転補助効果が増大するので、捩りコイルバネ33の引張力が小さくても回転側筐体3が滑らかに動く。したがって、捩りコイルバネ33のコイル部を大きくしないですみ、折畳み式携帯電話機1をコンパクトなものとすることができる。
【0056】
また、下端側コーナー部2bは、ヒンジ部4との間に一定の隙間を保った軌跡でもって移動するように案内支持される。このため、従来のように表示ディスプレイ2の下端をその支持軸を中心とした半径に沿って丸めなくても、表示ディスプレイ2がヒンジ部4に干渉することはない。このため、回転側筐体3の角部を丸める必要がなくなり、表示ディスプレイ2を大きくすることができ、画像が見やすくなっている。
【0057】
図4に示す横長状態でも、上記表示ディスプレイ2の左右方向中央部は、回転側筐体3の略左右方向中央に位置している。この状態で、固定側筐体5を手に持って横長状態の回転側筐体3を見ることができる。また、回転側筐体3が横長状態かつ開いた状態で、固定側筐体5の背面側を机上に載置することにより、横長状態の表示ディスプレイ2にTV画像を表示させた状態で長時間の視聴が可能となる。
【0058】
また、使用後は、上記とは反対に、表示ディスプレイ2の右側の下端側コーナー部2bを表面から見て反時計回りに回動させることで、表示ディスプレイ2が縦長状態に戻る。この際も、捩りコイルバネ33が回転側筐体3の回転を補助する。
【0059】
そして、回転側筐体3と固定側筐体5とを折り畳んで図1に示す待機状態とする。
【0060】
以上説明したように、本発明によれば、第1及び第2リンク部材31,32で回転側筐体3を支持プレート16に縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持するようにしたことにより、滑らかに回転側筐体3を回転させると共に、携帯電話機1をコンパクトなものとすることができる。
【0061】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0062】
すなわち、上記実施形態の第1リンク部材31及び第2リンク部材32の形状はあくまで一例である。第1リンク部材31及び第2リンク部材32の形状を最適化することで、回転側筐体3の最適な回転軌跡が得られる。例えば、上記実施形態では、第1回転軌跡L1と第2回転軌跡L2とを交差させるようにしているが、必ずしも交差させる必要はない。
【0063】
上記実施形態では、第2リンク部材32側に捩りコイルバネ33を設けているが、第1リンク部材31側に捩りコイルバネ33を設けてもよい。この場合には、一対の直線部間の角度が小さくなるほど弾性エネルギーが蓄えられるようにすればよい。
【0064】
また、上記実施形態では、回転側筐体3に表示ディスプレイ2を内蔵させたが、表示ディスプレイ2は、回転側筐体3及び固定側筐体5の両方に設けても、固定側筐体5の一方にのみ設けてもよい。また、上記実施形態では、操作部7を固定側筐体5のみに設けているが、回転側筐体3にのみ設け、固定側筐体5に表示ディスプレイ2を設けてもよい。また、回転側筐体3に表示ディスプレイ2を設け、かつ一部にファンクションキーなどよりなる簡単な操作部7を設けるようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、回転側筐体3を回転支持機構10によって縦長状態から横長状態へ正面から見て時計回りに回転し、また、横長状態から縦長状態へ元に戻るように回転自在に支持したが、縦長状態から横長状態へ正面から見て反時計回りに回転するようにしてもよい。その場合には、回転支持機構10及び移動用開口25を左右反転して配置すればよい。
【0066】
上記実施形態では、携帯端末は、折畳み式携帯電話機1としたが、固定側筐体5が回転側筐体3に対して折り畳み開閉不能に連結した、いわゆるストレートタイプの携帯端末としてもよい。その場合には、回転支持機構10は、固定側筐体5に直結すればよい。このストレートタイプの携帯端末であっても、回転支持機構10が回転側筐体3の移動用開口25内に収まるので、見映えがよい。
【0067】
また、回転支持機構10が移動用開口25を通って回転側筐体3内を移動するのではなく、回転支持機構10を回転側筐体3の背面側に露出させ、回転側筐体3の背面側で回転させるようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、携帯端末は、折畳み式携帯電話機としたが、PHS、PDA、PC、モバイルツール、電子辞書、電卓、ゲーム機等であってもよい。
【0069】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【符号の説明】
【0070】
1 携帯電話機(携帯端末)
3 回転側筐体
10 回転支持機構
11 第1被支持部
12 第2被支持部
13 第1支持部
14 第2支持部
16 支持プレート(支持機構本体)
25 移動用開口
31 第1リンク部材
32 第2リンク部材
33 コイルバネ(付勢機構)
34 第1バネ支持部
35 第2バネ支持部
36 切欠
L1 第1回転軌跡
L2 第2回転軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転側筐体と、該回転側筐体を縦長状態から横長状態へ又は横長状態から縦長状態へ回転自在に支持する回転支持機構とを備えた携帯端末であって、
上記回転支持機構は、
回転支持機構本体と、
一端が上記回転側筐体の第1被支持部に回転自在に連結され、他端が上記回転支持機構本体の第1支持部に回転自在に連結された第1リンク部材と、
一端が上記回転側筐体における上記第1被支持部と離れた位置にある第2被支持部に回転自在に連結され、他端が上記回転支持機構本体における上記第1支持部と離れた位置にある第2支持部に回転自在に連結された第2リンク部材とを備えている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯端末において、
上記第1被支持部の回転軌跡と、上記第2被支持部の回転軌跡とが交差している
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の携帯端末において、
上記回転側筐体の側面における厚さ方向中間に形成され、上記回転支持機構が移動するのを許容する移動用開口を備えている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の携帯端末において、
上記第1リンク部材及び上記第2リンク部材の少なくとも一方には、回転側筐体の回転移動を補助する付勢機構が設けられている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯端末において、
上記付勢機構は、一端が上記回転支持機構本体に設けた第1バネ支持部に連結され、他端が上記第2リンク部材に設けた第2バネ支持部に連結された捩りコイルバネである
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯端末において、
上記第2リンク部材における上記第2バネ支持部と上記第2支持部との間には、該第2リンク部の回転時に該第2バネ支持部との干渉を避けるための切欠が形成されている
ことを特徴とする携帯端末。
【請求項7】
請求項6に記載の携帯端末において、
上記第2リンク部材は、長手方向中間部が略U字状に折り曲げられ、
上記切欠は、上記略U字状部分に形成されている
ことを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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