説明

携帯端末

【課題】使用者が表示画面を見やすい角度に保持した状態で、水面に浮遊させることが可能な携帯端末を提供する。
【解決手段】防水構造を有する筐体10と、筐体10の一主面側に設けられた表示部20と、筐体10に設けられ、装置全体の重心の位置を変更する移動部材30と、を有し、装置全体の比重が水よりも小さく構成され、移動部材30は、装置全体を水面に浮遊させたときに、表示部20の法線と鉛直線とが交差する姿勢で、重心と浮心とが同じ鉛直線上に位置するように、重心の位置を変更可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生活の様々な場面において携帯電話に代表される小型情報機器である携帯端末が使用されている。近年では、防水構造を有する携帯端末が実用化されている。このような携帯端末は、水辺やスキー場などの屋外、または台所や風呂場などの屋内であって、携帯端末が濡れるおそれがある使用環境でも使用可能であり、利便性が高い。
【0003】
さらに、防水構造を有する携帯端末のなかには、意図した姿勢で水面に浮遊する構成のものが知られている。例えば、特許文献1には、水中に携帯電話(携帯端末)が落下したとき、アンテナ部分が水没しないように、アンテナ部分が水上に露出した状態で浮遊する携帯電話の構成が示されている。このような携帯電話は、水中に落下したときでも受信感度を維持しやすく着信・受信しやすいため、水中落下時の捜索が容易となる。
【0004】
また、特許文献2には、水面に浮かべた携帯電話が、ディスプレイ(表示画面、操作部)側を上方に向けて浮かびやすいように、重心をディスプレイとは反対側に位置させた携帯電話の構成が示されている。このような携帯電話は、水面に浮かべたときに、ディスプレイが上向きの状態で浮かびやすく、水面に浮かべた状態で着信やメール受信があった場合に確認しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−283539号公報
【特許文献2】特開2004−172677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、携帯電話向け地上デジタルTV放送であるワンセグ(ワンセグメント)放送や、端末に保存した動画など、種々の動画や画像を視聴可能な、多機能化された携帯電話が使用されている。このような動画を視聴する場合、使用者が見やすい角度となるように使用者自身が端末を保持するか、または使用者が見やすい角度で端末が保持された状態で机のような台の上に載置して使用する。
【0007】
しかし、上述するような防水型の携帯電話において、使用者が見やすい角度でディスプレイが保持され、水面に浮かぶような構成のものは知られていない。特許文献2の携帯電話では、ディスプレイが鉛直上向きの状態で浮かぶ構成となっているが、そのような浮遊姿勢では、動画を視聴する使用者に下向きの姿勢を強要することとなり、使用者が見やすい角度とはなっていない。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、使用者がディスプレイを見やすい角度に保持した状態で、水面に浮遊させることが可能な携帯端末を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明の一形態の携帯端末は、防水構造を有する筐体と、前記筐体の一主面側に設けられた表示画面と、前記筐体に設けられ、装置全体の重心の位置を変更する重心変更手段と、を有し、装置全体の比重が水よりも小さく構成され、前記重心変更手段は、装置全体を水面に浮遊させたときに、前記表示画面の法線と鉛直線とが交差する姿勢で、前記姿勢における浮心と前記重心とが同じ鉛直線上に位置するように、前記重心の位置を変更可能であることを特徴とする。
【0010】
本発明の一形態においては、前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置と、水面に浮遊させたときの前記表示画面の法線の鉛直線に対する角度と、の関係を示す第1の対応関係が予め求められており、前記重心変更手段には、前記第1の対応関係に基づいた目盛りが付されていることが望ましい。
【0011】
本発明の一形態においては、前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置と、水面に浮遊させたときの前記表示画面の法線の鉛直線に対する角度と、の関係を示す第1の対応関係、および、前記角度と、水面に浮遊させたときに前記表示画面のうち水上に露出する部分の位置と、の関係を示す第2の対応関係、が予め求められており、前記第1の対応関係および前記第2の対応関係に基づき、前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置の位置情報を用いて、前記水上に露出する部分を求める演算部を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、使用者が表示画面を見やすい角度に保持した状態で、水面に浮遊することが可能な携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の携帯電話の分解斜視図である。
【図2】第1実施形態の携帯電話の説明図である。
【図3】第1実施形態の携帯電話を使用する様子を示した模式図である。
【図4】第1実施形態の携帯電話を使用する様子を示した模式図である。
【図5】有効表示領域を決定する演算処理の一例を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態の携帯電話の分解斜視図である。
【図7】第2実施形態の携帯電話の概略断面図である。
【図8】第2実施形態の携帯電話の説明図である、
【図9】第2実施形態の携帯電話を使用する様子を示した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1実施形態]
以下、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る携帯端末について説明する。本実施形態においては、携帯端末の例として、本発明の機能を有する携帯電話について説明する。なお、以下の全ての図面においては、図面を見やすくするため、各構成要素の寸法や比率などは適宜異ならせてある。
【0015】
図1は、本実施形態の携帯電話1の分解斜視図である。図に示すように、携帯電話1は、筐体10と、筐体10の内部に収容された基板15と、基板15に接続(接続に係るケーブル等は不図示)された表示部(表示画面)20と、筐体10の外部に設けられた移動部材(重心変更手段)30と、を有している。
【0016】
筐体10は、防水構造を有し、内部への水の浸入を防ぐ構成となっており、平面視で四隅が丸められた略矩形を呈する略直方体状を呈している。さらに、筐体10は、表示部20により表示される画面を視認可能とするための、光透過性の窓部111が設けられた第1筐体11と、基板15を収容するための凹部121が設けられた第2筐体12と、を有している。
【0017】
筐体10は、防水性を有する形成材料で形成されている。筐体10の形成材料としては、プラスチックや金属材料などを例示することができ、必要に応じてこれらの複合材料が用いられる。
【0018】
基板15は、通常知られたプリント配線基板を用いることができ、表示部20の他に不図示の集積回路、通信用アンテナ、二次電池などが接続されている。基板15は、筐体10の内部空間(凹部121)に収容され、固定されている。
【0019】
表示部20は、筐体10の一主面側に設けられた、液晶素子や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を表示素子として用いる表示装置(ディスプレイ)であり、携帯電話1の機能により種々の文字や画像を表示する。また、表示部20は、タッチパッドのような入力装置を併設した、いわゆるタッチパネルであることとしてもよい。タッチパネルの動作方式には、静電容量方式、抵抗膜方式、電磁誘導方式など、通常知られた種々の方式を採用することができる。また、これらに限らず、図1に示すより小型の表示部を筐体10のおもて面側(一主面側)に配置し、該おもて面の残部に物理的な操作ボタンを配置する構成としてもよい。
【0020】
本発明の一形態においては前記重心変更手段は、前記筐体の外部に設けられ、前記筐体に対し相対的に移動可能に設けられた部材を含むことが望ましい。本実施形態においては、移動部材30は、金属材料など筐体10よりも高比重の材料を用いて形成されており、第2筐体12の外側に設けられたレール122に挿入され、筐体10の長手方向に摺動自在に設けられている。
【0021】
本発明の一形態においては、前記筐体の前記一主面から裏面への厚さ方向において、前記重心は厚さの中心よりも前記裏面側に位置していることが望ましい。本実施形態においては、第2筐体12側に移動部材30が設けられていることにより、携帯電話1の重心は、いずれも筐体10の厚さ方向において、厚さの中心よりも第2筐体12側(裏面側)に位置している。
【0022】
図2は、携帯電話1の説明図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は裏面図、図2(c)は移動部材30の機能を示す概略断面図である。
【0023】
図2(a)に示すように、携帯電話1は、筐体10のおもて面10aの略全面から表示部20が視認可能となるように構成されている。
【0024】
図2(b)に示すように、移動部材30は、筐体10の裏面10bにおいて、レール122に沿って移動するとともに、移動させた位置において、位置ズレを起こさないように固定可能となっている。
【0025】
図2(c)に示すように、移動部材30は、自身が移動することにより、携帯電話1の重心Gの位置を移動させる機能を有している。図2(c)では、移動部材30が符号Aの位置にある場合の重心を符号G1、移動部材30が符号Bの位置にある場合の重心を符号G2として示している。すなわち、移動部材30が移動することにより、重心位置が携帯電話1の下端1xの側に移動する。また、重心G1,G2は、いずれも筐体10の厚さ方向において、厚さの中心よりも第2筐体12側(裏面側)に位置している。
【0026】
図3、4は、携帯電話1を使用する様子を示した模式図であり、図3は外観図、図4は概略断面図を示す。
【0027】
本実施形態の携帯電話1は、筐体が防水構造となっている上に、全体の比重が水よりも小さくなるように構成されている。そのため、携帯電話1は、図3に示すように、水に浮かぶようになっている。例えば、携帯電話1の比重が0.4程度である場合、携帯電話1全体のうち略6割が水上に露出して水に浮かぶこととなる。
【0028】
ここで、比重の比較対象である「水」は、真水(純水)であってもよく、海水のような電解質などの溶質が溶解した水溶液であってもよい。携帯電話1を設計する上で、どのような性質の水に対して浮かぶことを想定するか、すなわち、風呂場などの真水に浮かべることを想定するか、海辺など海水に浮かべることを想定するかに応じて、全体の比重が対象とする「水」よりも小さくなるように構成するとよい。携帯電話1の比重を、真水を対象として真水よりも比重が小さくなるように構成しておくと、海水にも浮かぶこととなる。
【0029】
図3では、携帯電話1が、長手方向を概ね上下方向(鉛直方向)として、表示部20を上方に向けて斜めに水に浮かんでいる様子を示している。さらに、表示部20のうち水上に露出する部分(有効表示領域AR)を用いて表示を行っている様子を示している。本実施形態の携帯電話1は、重心位置を変更・制御することにより、表示部20が斜めとなる姿勢(表示部20の法線が鉛直線と交差する姿勢)で水面に浮かぶように構成されている。
【0030】
また、携帯電話1は、不図示のアンテナ、マイク部、スピーカー部が、図3のように水面に浮かんだ状態で、水上に位置するように設けられている。
【0031】
図4においては、鉛直方向にY軸、Y軸と直交する方向にX軸を設定して説明する。なおX軸は、静置時の水面Wと平行である。
【0032】
図に示すように、携帯電話1は水面Wにおいて表示部20の法線20aがY軸(すなわち、鉛直線)と交差するような姿勢で浮かんでいる。また、重心Gが、筐体10の厚さ方向において、厚さの中心よりも第2筐体12側(裏面側)に位置しているため、表示部20を上方に向けて浮かんでいる。
【0033】
ここで、物体を水面に浮かべる場合、物体が水から受ける浮力の方向と、物体が地球から受ける重力の方向とが、同一鉛直線上で逆方向となるようにすると、物体には回転モーメントがかからず安定に浮かぶ。すなわち、物体の水面下に没した部分の体積の中心である浮心の位置と、物体の重心の位置とが同一鉛直線上に配置されると、物体は安定に浮かぶこととなる。
【0034】
携帯電話1では、移動部材30を移動させることにより、重心Gの位置を変更可能である。そのため、使用者は、携帯電話1が所望の姿勢で浮かぶときの浮心Cの位置に対し、同一鉛直線上に携帯電話1の重心Gが配置されるように重心位置を変更して調節することにより、当該所望の姿勢を保ったまま、携帯電話1を水面に浮かべることが可能となる。
【0035】
なお、携帯電話1においては、水面下に没した部分の体積の中心である浮心Cの位置は、携帯電話1の形状、比重、姿勢により決まるため、図のような姿勢で浮かぶときの浮心Cの位置は予め予測可能である。また、当該姿勢において、浮心Cの位置に対し同一鉛直線上に重心Gが配置されるときの移動部材30の位置も、予め求めることができる。そのため、携帯電話1では、筐体10に対する移動部材30の相対位置(すなわち、重心の位置)と、表示部20の法線20aの鉛直線に対する角度(すなわち、携帯電話1の姿勢)と、の対応関係(第1の対応関係)を予め求めておくことができる。例えば、このような第1の対応関係を、移動部材30が摺動するレール122に目盛りとして付しておくと、移動部材30の引き出し位置に対応して、表示部20の角度を容易に変更可能となる。
【0036】
なお、移動部材30を移動させて重心Gの位置を変更することにより、水面下に没した部分の形状が変化するため、浮心Cの位置も変化する。しかし、移動部材30を大きい比重の形成材料で形成することにより、重心Gの位置の変位量よりも、浮心Cの位置の変位量を小さくすることができ、使用者の調節により所望の姿勢において重心Gと浮心Cとを、同一鉛直線上に配置することが可能となる。
【0037】
図5は、有効表示領域ARを決定する演算処理の一例を示すブロック図である。携帯電話1においては、基板15に実装された集積回路やセンサーの機能により、浮かんだ姿勢に応じた有効表示領域ARを算出し、有効表示領域AR内に文字や画像を表示する。
【0038】
図に示すように、まず、スライド位置検出部41が、移動部材30の位置を検出する。スライド位置検出部41は、図4の基板15上に設けられたセンサーであり、防水性を保ったまま移動部材30の位置を検出することが可能であれば、通常知られた種々の構成を用いることができる。
【0039】
次に、端末角度判定部42が、検出した移動部材30の位置を用い、携帯電話1の水面における傾き角度を判定する。端末角度判定部42には、予め、携帯電話1の形状、質量、比重、移動部材30の形状、質量、比重などのデータ、および、重心位置と安定に浮かぶ携帯電話1の姿勢との第1の対応関係、が保存されている。端末角度判定部42では、検出された移動部材30の位置から、重心位置を算出するとともに、算出された重心位置から携帯電話1の姿勢を判定する。
【0040】
なお、端末角度判定部42では、上述した各データに基づいて、その都度、傾き角度を算出することとしてもよく、予め計算結果をルックアップテーブルの形で保存しておき、参照することとしてもよい。
【0041】
次に、表示範囲決定部(演算部)43では、携帯電話1の傾き角度から、表示部のうち水面に露出している部分(すなわち、有効表示領域AR)を決定する。表示範囲決定部43には、予め、法線20aの鉛直線に対する角度と、有効表示領域ARの位置と、の対応関係(第2の対応関係)が保存されており、第1の対応関係から求められる携帯電話1の傾き角度を用いて、有効表示領域ARの範囲を決定する。
【0042】
なお、端末角度判定部42の機能を表示範囲決定部43に含ませることとしてもかまわない。すなわち、移動部材30の位置と、有効表示領域ARの範囲と、の対応関係を予め算出しルックアップテーブルの形で保存しておき、移動部材30の位置の検出結果から、直接、有効表示領域ARの範囲を求めることとしても構わない。
【0043】
次に、表示制御部44において、有効表示領域ARに合わせた画像データの変換を行う。例えば、表示制御部44では、入力される画像データ45を有効表示領域ARの大きさに合わせて圧縮処理を行い、表示部20が有する走査線駆動回路やデータ線駆動回路に適宜変換後の画像データを送ることにより、表示部20では、有効表示領域AR内で画像表示を行う。このとき、有効表示領域ARの外は、非表示状態となっている。
【0044】
なお、表示制御部44においては、使用者の選択により、圧縮処理を行うことなく、表示部20全体に表示する大きさの画像を表示させることとしてもよい。その場合、表示される画像は、有効表示領域ARの端部で切れることとなるが、高い解像度の画像を表示することが可能である。
【0045】
本実施形態の携帯電話1では、以上のようにして水面上に所望の姿勢で浮かんだ上で、有効表示領域AR内で画像表示を行う。
【0046】
以上のような構成の携帯電話1によれば、使用者が表示部20を見やすい角度に保持した状態で、水面に浮遊することが可能な携帯電話1とすることができる。
【0047】
[第2実施形態]
図6〜図9は、本発明の第2実施形態に係る携帯電話2の説明図である。本実施形態の携帯電話2は、第1実施形態の携帯電話1と一部共通しているため、本実施形態において第1実施形態と共通する構成要素については同じ符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0048】
図6は、本実施形態の携帯電話2の分解斜視図であり、第1実施形態の図1に対応する図である。図に示すように、携帯電話2は、筐体50と、筐体50の内部に収容された基板(重心変更手段)55と、基板55に接続(接続に係るケーブル等は不図示)された表示部(表示画面)20と、筐体10の外部に設けられたカバー部材60と、を有している。
【0049】
筐体50は、表示部20により表示される画面を視認可能とするための、光透過性の窓部511が設けられた第1筐体51と、基板55を収容するための凹部521が設けられた第2筐体52と、を有している。
【0050】
本発明の一形態においては、前記重心変更手段は、前記筐体内に収容され、前記筐体に対し相対的に移動可能に設けられた基板を含むことが望ましい。本実施形態においては、基板55は、第2筐体52側に設けられた突起状のレバーである移動レバー56と、同じく第2筐体52側において筐体50の長軸方向に延在して設けられた一対の摺動部材57と、を有している。また、第2筐体52には、移動レバー56が挿通される貫通孔53と、摺動部材57が嵌入する一対の溝部54と、が筐体50の長軸方向に延在して設けられている。移動レバー56は、第2筐体52の外側にまで突出して配置され、移動レバー56を筐体50の長軸方向に動かすことで、移動レバー56が接続されている基板55が、筐体50の長軸方向に摺動可能に設けられている。
【0051】
カバー部材60は、防水性を有する形成材料で形成されており、貫通孔53を覆って筐体50の外部に取り付けられている。
【0052】
図7は、携帯電話2の概略断面図である。図に示すように、基板55の表示部20側の面には、二次電池(電源)70が配置されている。二次電池70は、携帯電話2の下端2xに設けられた電池挿入口58から出入自在となっている。電池挿入口58は、使用時に蓋材59で閉じられる。
【0053】
本発明の一形態においては、前記基板には電源が実装され、前記電源は、前記基板と共に前記筐体に対し相対的に移動することが望ましい。本実施形態においては、二次電池70は、基板55の移動とともに移動する。
【0054】
また、基板55の上端55xと表示部20とは、ケーブル25により接続されている。ケーブル25は基板55の摺動により断線しないように、弛みを持たせて引き回されている。
【0055】
図8は、携帯電話2の説明図であり、図8(a)は裏面図、図8(b)は移動部材30の機能を示す概略断面図である。図8(a)は第1実施形態の図2(b)に対応する図であり、図8(b)は第1実施形態の図2(c)に対応する図である。
【0056】
図8(a)に示すように、携帯電話2では、筐体50の裏面50bにおいて、貫通孔53に沿って移動レバー56を移動させることにより、筐体50の内部の基板55を移動させることができる。基板55は、移動させた位置において、位置ズレを起こさないように不図示のカバー部材を用いて固定可能となっている。
【0057】
図8(b)に示すように、基板55は、自身が移動することにより、携帯電話2の重心Gの位置を移動させる機能を有している。図8(b)では、基板55が符号Xの位置にある場合の重心を符号G3、基板55が符号Yの位置にある場合の重心を符号G4として示している。すなわち、基板55が移動することにより、重心位置が携帯電話2の下端2xの側に移動する。
【0058】
図9は、携帯電話2を使用する様子を示した概略断面図であり、第1実施形態の図4に対応する図である。携帯電話2においては、水面下に没した部分の体積の中心である浮心Cの位置は、携帯電話2の形状、比重、姿勢により決まるため、図のような姿勢で浮かぶときの浮心Cの位置は予め予測可能である。そして、携帯電話2では、基板55を移動させることにより、重心Gの位置を変更可能である。そのため、使用者は、携帯電話2が所望の姿勢で浮かぶときの浮心Cの位置に対し、同一鉛直線上に携帯電話2の重心Gが配置されるように重心位置を変更することにより、当該所望の姿勢を保ったまま、携帯電話2を水面に浮かべることが可能となる。
【0059】
以上のような構成の携帯電話2であっても、使用者が表示部20を見やすい角度に保持した状態で、水面に浮遊することが可能な携帯電話2とすることができる。
【0060】
なお、本実施形態においては、二次電池70が基板55とともに移動する構成であるとして説明したが、もちろん、二次電池70は、基板55とともに移動することなく筐体50に固定されることとしてもよい。その場合、二次電池70と基板55とを接続する電源ケーブルが基板55の摺動により断線しないように、弛みを持たせて引き回されていることとするとよい。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施の形態例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0062】
例えば、上記実施形態においては、使用者が表示画面を見やすい角度で水面に浮遊する携帯電話1,2について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば、ラジオ、小型テレビ、ゲーム機器など、表示画面を有する種々の携帯端末に適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、防水性を備えた携帯端末の分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0064】
1,2…携帯電話(携帯端末)、10,50…筐体、10a…おもて面(一主面)、20…表示部(表示画面)、30…移動部材(重心変更手段)、55…基板(重心変更手段)、70…二次電池(電源)、AR…有効表示領域(水上に露出する部分)、C…浮心、G…重心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
防水構造を有する筐体と、
前記筐体の一主面側に設けられた表示画面と、
前記筐体に設けられ、装置全体の重心の位置を変更する重心変更手段と、を有し、
装置全体の比重が水よりも小さく構成され、
前記重心変更手段は、装置全体を水面に浮遊させたときに、前記表示画面の法線と鉛直線とが交差する姿勢で、前記姿勢における浮心と前記重心とが同じ鉛直線上に位置するように、前記重心の位置を変更可能であることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置と、水面に浮遊させたときの前記表示画面の法線の鉛直線に対する角度と、の関係を示す第1の対応関係が予め求められており、
前記重心変更手段には、前記第1の対応関係に基づいた目盛りが付されていることを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置と、水面に浮遊させたときの前記表示画面の法線の鉛直線に対する角度と、の関係を示す第1の対応関係、および、前記角度と、水面に浮遊させたときに前記表示画面のうち水上に露出する部分の位置と、の関係を示す第2の対応関係、が予め求められており、
前記第1の対応関係および前記第2の対応関係に基づき、前記筐体に対する前記重心変更手段の相対位置の位置情報を用いて、前記水上に露出する部分を求める演算部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の携帯端末。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−30964(P2013−30964A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165382(P2011−165382)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】