説明

携帯端末

【課題】通話/通信の際に、所定の管理端末の承認を必要とする携帯端末において、災害等の緊急時に、即座に通話/通信を行うことができるようにする。
【解決手段】緊急時(災害時)の場合には、ネットワークサーバ50に災害発生情報である規制解除情報4が設定され、規制解除情報4は、基地局からショートメッセージとして同報通信される。携帯端末1は、規制解除情報4をショートメッセージとして受信し、規制解除情報4を検出する。それにより携帯端末1は規制解除状態になり、管理端末3の承認を得ずに、通話/通信ができる状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に関する。特に、本発明は、通話/通信時に管理端末の承認を必要とする携帯端末において、緊急時に管理端末の承認を不要にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話の通話料金やパケット通信料金をキャリアに支払う契約者と携帯電話を実際に使用する使用者が異なる場合、契約者にとって使用者が携帯電話の利点を最大限に活かし費用に見合った効果を得ているかが、大きな関心事となっている。ここで、例えば、契約者は親権者で、使用者は未成年の子供の場合が考えられる。
【0003】
契約者が使用者に携帯電話を持たせたい理由の1つに、使用者と災害等の緊急時に即座に連絡が取れるということが挙げられるが、一方で、使用者は契約者の意思に反して有害サイトの閲覧や不審人物との長時間に及ぶ通話等により、意図しない多額の利用料金が発生するケースがある。
【0004】
これを緩和する手段として、キャリアのサービスにおいて、従量課金ではなく定額課金とする契約形態があるが、この料金は安いとは言えず、契約者の経済的負担を解決するに至っていない。
【0005】
そこで、別のサービスとして、従量課金で使用量が少ない場合に低料金で済ませられるサービスがある。例えば、使用者が金銭感覚のない未成年である場合、使用者が携帯電話の通話やパケット通信の機能を作動しようとした時点で、契約者へ承認伺いが発信され、契約者の事前承認が得られた場合のみ、該当機能が作動可能となる。このようなサービスは、従来技術として既に確立されている。本明細書では、以降、このサービスを「事前承認伺いシステム」のサービスという。
【0006】
また、特許文献1には、課金額の累計が予め設定した上限課金額に達したか否かを判定し、上限課金額に達しているときは、電話番号登録され特別に許可された番号に対してのみ発信要求を許可し、それ以外の番号に対する通話は規制される方法が開示されている。従って、この方法によれば、自宅の番号を特別に許可される番号として登録しておけば、緊急時において自宅への連絡が、規制されることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−190880号公報
【特許文献2】特開2007−243247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以下の分析は、本発明により与えられる。
【0009】
しかしながら、前述した使用者が契約者へ承認伺いを発信する事前承認伺いシステムは、契約者の立場で利用コストを抑えるという観点では有効であるが、使用者がいつでもタイムリーに、連絡を取りたい者と連絡が取れるという携帯電話本来の利便性を失う問題が生じる。特に、人命に関わるような緊急事態での即時使用には適さないという問題がある。
【0010】
また、前述した特許文献1に記載された方法の場合、課金額の累計が上限課金額に達しているときは、登録された特定の通話先しか通話できないが、登録された番号に対しては、上限課金額を超えて課金されていくので、課金の抑制が十分でないという問題がある。また、必要な連絡先を予め登録しておく手間が煩雑であるという問題もある。また、登録してない連絡先に緊急で電話することが必要になった場合、電話することができないという問題がある。例えば、自宅と連絡が取れないときに、親戚、友人などに安否連絡の電話をしようとしても、登録していないと通話が許可されない。あるいは、災害後に避難所に電話しようとした場合、電話番号が分かっていても、登録していないため通話が許可されない。
【0011】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、使用者の携帯端末が通話/通信を行う際に、所定の管理端末の承認を必要とする事前承認伺いを行うシステムにおいて、緊急時には、管理端末の承認を得ずに通話/通信を行うことができる状態になる携帯端末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の視点による携帯端末は、通話/通信の際に、所定の管理端末の承認を必要とする携帯端末であって、緊急時にネットワーク側に設定される規制解除情報を検出することによって、前記管理端末の承認を得ずに使用できる状態になる。
【0013】
さらに前記規制解除情報は災害発生情報であり、災害発生時にネットワーク側に設定され、災害発生エリアの基地局からショートメッセージとして同報通信され、前記携帯端末は、前記ショートメッセージを受信することにより、前記規制解除情報を検出するように構成することも望ましい。
【0014】
本発明の第2の視点による端末装置は、通話/通信の際に、所定の管理端末の承認を必要とする携帯端末であって、前記承認を不要とする規制解除情報を設定する規制解除情報設定部を有し、前記規制解除情報設定部で設定された規制解除情報が発生したことを検出した場合に、前記管理端末の承認を得ずに使用できる状態になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の携帯端末によれば、使用者の携帯端末が通話/通信を行う際に、管理端末の承認を必要とする事前承認伺いシステムにおいて、緊急時に管理端末の承認を得ずに通話/通信を行うことができる状態になる携帯端末を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施例1に係る携帯端末を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1に係る事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。
【図3】本発明の実施例1を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例1に係る携帯端末の規制解除情報検出部の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例1に係る事前承認伺いシステムの動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施例2に係る携帯端末を示すブロック図である。
【図7】本発明の実施例2に係る事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。
【図8】本発明の実施例2に係る携帯端末の規制解除情報設定部の動作を示すフローチャートである。
【図9】従来の事前承認伺いシステムにおける携帯端末を示すブロック図である。
【図10】従来の事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、必要に応じて図面を参照して説明する。なお、実施形態の説明において引用する図面及び図面の符号は実施形態の一例として示すものであり、それにより本発明による実施形態のバリエーションを制限するものではない。
【0018】
本発明による第1の実施形態の携帯端末1は、図2に示す事前承認伺いシステムで使用される携帯端末である。携帯端末1は、通話/通信の際に、所定の管理端末3の承認を必要とする携帯端末であって、緊急時にネットワーク側に設定される規制解除情報4を検出することによって、管理端末3の承認を得ずに使用できる状態になる。
【0019】
本発明による第2の実施形態の携帯端末2は、図7に示す事前承認伺いシステムで使用される携帯端末である。携帯端末2は、通話/通信の際に、所定の管理端末3の承認を必要とする携帯端末であって、承認を不要とする規制解除情報を設定する規制解除情報設定部53を有し、規制解除情報設定部53で設定された規制解除情報5が発生したことを検出した場合に、管理端末3の承認を得ずに使用できる状態になる。
【0020】
以下、実施例について、図面を参照して詳しく説明する。
【実施例1】
【0021】
まず、従来の事前承認伺いシステムの構成について、図10を参照しながら説明する。図10は、従来の事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。従来の事前承認伺いシステムは、基地局56、携帯端末9、管理端末3、及びネットワーク54を介して接続されたネットワークサーバ50により構成される。
【0022】
図10において、携帯端末9及び管理端末3は、キャリアが提供する事前承認伺いシステムのサービスに加入している。事前承認伺いシステムは、携帯端末9の現在までの課金額累計40が、契約者が予め設定した上限課金額38を超えている場合には、通話/通信を行う際に、管理端末3に対して事前承認伺いを行い、承認を得なければ通話/通信を行うことができない。このように上限課金額を超えると、契約者の管理下で使用が規制されるため、未成年が無制限に使用して課金額が高額になってしまうことを防ぐことができる。
【0023】
携帯端末9の使用者(以降、「使用者」という)が未成年の子供であり、携帯端末9の契約者(以降、「契約者」という)が、使用者の親権者である場合に、事前承認伺いシステムは好適に使用される。契約者は、管理端末3を用いて、使用者が無制限な使用をしないように規制をかけることができる。ここで、管理端末3は、携帯端末9と同様の機能を有する携帯端末であるが、事前承認伺いシステムにおいては、契約者が管理に使用するための端末という意味で、「管理端末」と呼ぶことにする。
【0024】
また、管理端末3は、既存の認証技術により、携帯端末9との相互関連付けがなされている端末のみに限定される。それにより、管理端末3による承認プロセスにおいて、不正アクセスがなされることを阻止でき、承認結果の正当性が確保される。
【0025】
図10において、携帯端末9から管理端末3に対する事前承認伺いの送信と、管理端末3から携帯端末9に対する承認結果の返信には、SMS(Short Message Service;ショートメッセージサービス)によるショートメッセージが好適に使用される。
【0026】
SMSは、同じキャリアの加入者間で短いメッセージを送受信するもので、遅延が少ないことが特徴である。一方、インターネット網を利用したメール配信は、複雑な経路を辿って配信されることによる遅延が生じること虞がある。そこで、事前承認伺いシステムでは、送受信に即時性のあるSMSを使用することが望ましい。
【0027】
図10において、携帯端末9と管理端末3は、基地局56を介して、ショートメッセージを送受信可能なように構成されている。
【0028】
また、ネットワークサーバ50は、課金管理、通信制御等の事前承認伺いシステムに必要な種々の機能を有するサーバである。但し、図10の構成に限定されず、ネットワークサーバ50を、機能毎に異なるサーバで構成するようにしてもよい。
【0029】
次に、図10における従来の携帯端末9の構成について、図9を参照しながら詳細に説明する。図9は、従来の携帯端末9の構成を示すブロック図である。図9に示すように、携帯端末9は、電波を送受信するアンテナ10と、アンテナ10を介して基地局と無線電波の送受信を行う送受信部12と、送受信部12が受信した信号の復調及び入力音声信号の変調を行う音声処理部18と、音声処理部18で復調された音声信号を音声として出力するスピーカ22と、使用者の音声を集音し音声処理部18へ供給するマイク24と、使用者が種々の操作を行う操作部16と、種々の情報を使用者に対して表示する表示部14と、携帯端末9の全体の制御を行う制御部20と、各種プログラムと各種データを記憶する記憶部26により構成される。
【0030】
ここで、記憶部26は、各種プログラムを記憶するプログラム領域28と、各種データを記憶するデータ領域30に分けられる。プログラム領域28に記憶されているプログラムは、制御部20により読み出され、制御部20が有するCPUにより処理が行われる。プログラム領域28には、事前承認伺いシステムの処理を実行する事前承認伺いメインプログラム47と、上限課金額を設定する上限課金額設定部49のプログラムが、記憶されている。
【0031】
また、データ領域30には、事前承認伺いシステムの処理に必要な種々のデータが記憶される。図9に示すように、事前承認伺い判別データ34、事前承認伺い一覧36、上限課金額38、現在までの課金額累計40が含まれる。これらのデータは実施例1に係る携帯端末1においても共通であり、詳細は後述することにする。
【0032】
[実施例1の構成]
次に、実施例1に係る事前承認伺いシステムの構成について説明する。図2は、実施例1に係る事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。図2を図10と比較すると、従来の事前承認伺いシステムに、ブロードキャストショートメッセージサーバ66と、ネットワークサーバ50に必要に応じて設定される規制解除情報4が新たに加えられていることが分かる。
【0033】
ここで、規制解除情報4は、事前承認伺いシステムのサービスを提供しているキャリアが、災害時に災害発生情報として、ネットワークサーバ50上に配置するものである。ネットワークサーバ50は、規制解除情報4が配置されると、ブロードキャストショートメッセージサーバ66に対して、災害エリアの基地局56を介して基地局56エリア内に含まれる携帯端末や管理端末(図2の1、3)に対し、ショートメッセージを同報通信するように要求する。
【0034】
次に、図1は、図2における携帯端末1の詳細を示すブロック図である。図1を図9と比較すると、従来の携帯端末9に、規制解除情報検出部41、規制解除状態データ32が新たに加えられていることが分かる。
【0035】
規制解除情報検出部41は、前述したブロードキャストショートメッセージサーバ66から基地局56を介して同報通信されたショートメッセージを検出する機能を有し、該ショートメッセージが、規制解除情報を含むことを検出すると、データ領域30内の規制解除状態データ32をONに設定する。規制解除情報検出部41の動作の詳細は後述する。
【0036】
次に、記憶部26におけるその他のプログラム及びデータの説明をする。まず、事前承認伺いメインプログラム47は、事前承認伺いシステムの処理を行うメインプログラムであり、キャリアが提供する事前承認伺いシステムのサービスに加入すると、動作する。
【0037】
事前承認伺いメインプログラム47は、使用者が通話/通信の発信を行う際に、現在までの課金額累計40を上限課金額38と比較して、事前承認伺い判別データ34の設定を行う。そして、事前承認伺いが必要な場合、管理端末3に事前承認伺いのショートメッセージを送り、契約者からの承認結果のショートメッセージを受信して、承認又は否承認を検知する。このように、事前承認伺いメインプログラム47は、事前承認伺いにおける基本機能を有するプログラムである。
【0038】
次に、上限課金額設定部49は、上限課金額38の設定を行うプログラムである。上限課金額は、携帯端末の月々の課金額の上限であり、事前承認伺いシステムのサービスに加入する際に、決めておく。但し、途中で、契約者が携帯端末1から設定変更をすることもできる。契約者のみが知っている携帯端末1のパスワードを入力することにより、上限課金額設定部49を動作させ、上限課金額38の設定を設定変更することができる。そして、設定変更を登録すると、携帯端末1のデータ領域30内の上限課金額38が設定変更されると共に、ネットワークサーバ50に設定変更が行われた旨が通知され、ネットワークサーバ50内の課金データ52も変更される。
【0039】
上限課金額38は、最低0円から設定が可能であり、0円に設定した場合は、使用実績に関わらず、通話/通信の度に、事前承認伺いを必要とすることになる。また、通話と通信で別の上限課金額を設定するようにしてもよく、例えば、通信のみ、課金額を低く設定して、使用を厳しく管理することも可能である。
【0040】
次に、データ領域30の各種データについて、順次説明する。まず、規制解除状態データ32は、携帯端末1が規制解除状態にあるか否かを示している。平常時は、規制解除状態OFFであり、緊急時(災害時等)に規制解除情報検出部41により、規制解除情報4を検出すると、規制解除状態ONに設定される。
【0041】
次に、事前承認伺い判別データ34は、事前承認伺いの要/不要を示すデータであり、現在までの課金額累計40が上限課金額38を超えた場合は「1」に設定されて事前承認伺いが必要とされ、それ以外の場合に「0」に設定され、事前承認伺いは不要とされる。
【0042】
次に、事前承認伺い一覧36は、事前承認伺いの処理ステータスをリスト形式で保存したものである。使用者が操作部16で事前承認伺い一覧のメニューを選択すると、事前承認伺い一覧36のデータが読み出され、事前承認伺いの処理ステータスの一覧を表示部14で見ることができる。
【0043】
事前承認伺い一覧36の一例を、図1の左下部に示す。事前承認伺い一覧36は、使用者が処理中の事前承認伺いが、現在の処理ステータスと共に記録されている。処理ステータスは、事前承認伺い中が「0」、承認結果が承認の場合「1」、承認結果が否承認の場合「2」、通話中の場合「3」、終話すると「4」に遷移する。図1に示す事前承認伺い一覧36では、通話「123−4567−8901」が事前承認伺い中であり、通話「012−3456−7890」は承認結果が否承認であることを示している。
【0044】
[実施例1の動作]
次に、実施例1に係る事前承認伺いシステムの動作について、必要に応じ図面を参照しながら詳細に説明する。図3は、実施例1に係る事前承認伺いシステムの概要を説明するための図である。図3(A)は、平常時に行われる事前承認伺いを示し、図3(B)は、緊急時(災害時等)に規制解除情報4が設定された場合を示している。
【0045】
まず、平常時に、使用者が携帯端末1から携帯端末6に通話をする際、携帯端末6の番号「123−4567−8901」を入力し発信する。すると、携帯端末1は、事前承認伺い判別データ34が「1」の場合、管理端末3に対し、事前承認伺いのショートメッセージS1が自動的に送信される。この状態で、事前承認伺い一覧36の番号「123−4567−8901」の処理ステータスは「0」である。
【0046】
契約者は管理端末3でショートメッセージS1を受信すると、承認するか否かの判断を行い、承認結果をショートメッセージS2で携帯端末1に返信する。携帯端末1はショートメッセージS2を受信すると、承認された場合には、事前承認伺い一覧36の番号「123−4567−8901」の処理ステータスが「1」に遷移する。この状態は、携帯端末1が、番号「123−4567−8901」に通話できる状態になったことを意味する。
【0047】
この状態で、使用者は、携帯端末6(番号「123−4567−8901」)に通話(図3のS3)する。通話が開始されると、事前承認伺い一覧36の番号「123−4567−8901」の処理ステータスは「3」に遷移する。
【0048】
次に、図3(B)に示す緊急時(災害時)の場合について説明する。緊急時(災害時)の場合には、ネットワークサーバ50に災害発生情報である規制解除情報4が設定される。前述したように、規制解除情報4は、基地局56からショートメッセージとして同報通信される(図3のS4)。携帯端末1は、規制解除情報4をショートメッセージとして受信し、規制解除情報4を検出する。それにより携帯端末1の規制解除状態データ32はONになり、管理端末3の承認を得ずに、通話/通信ができる状態になる。この状態において、使用者は、事前承認伺いをすることなく、即座に、携帯端末6(番号「123−4567−8901」)に通話(図3のS5)することができる。
【0049】
次に、規制解除情報検出部41(図1)の動作について、図4に示すフローチャートを参照しながら、より詳細に説明する。前述のように、図2において、災害エリア内の基地局56から、エリア内の携帯端末にショートメッセージを同報通信することにより、ネットワーク上に設定された規制解除情報4は携帯端末1に送信される。ここで、ショートメッセージを同報通信する方法に関しては、例えば、特許文献2に、特定の基地局の通信エリア内にある携帯電話機に一斉に同報通信を行うセルフブロードキャストによるショートメッセージの送信により、災害発生エリアにいる携帯端末の所持者に対して効果的に災害情報の伝達をする方法が開示されている。
【0050】
実施例1に係る事前承認伺いシステムでは、上記の特許文献2に記載された方法と同様に、緊急時(災害時等)にネットワークサーバ50に設定された規制解除情報4をセルフブロードキャストによるショートメッセージの送信により、災害発生エリアにいる携帯端末に送ることを実現している。
【0051】
図4は、携帯端末1の規制解除情報検出部41の動作を示すフローチャートである。図4において、まず、規制解除情報検出部41は、ショートメッセージの着信を検出する(ステップS100)。ステップS100でYESと判定された場合には、次のS102に進む。一方、NOと判定された場合はS100に戻る。次に、ショートメッセージが基地局56からの同報通信か否かを判定する(ステップS102)。ステップS102でYESと判定された場合は次のS104に進み、一方、NOと判定された場合はS100に戻る。
【0052】
次に、ステップS104で、ショートメッセージ内の規制解除情報コードを抽出する。規制解除情報コードは、該ショートメッセージが事前承認伺いシステムの規制解除情報4に関するショートメッセージであることを示すものである。ここで、事前承認伺いシステムのサービスに加入している携帯端末1には、規制解除情報コードに対応するコードが書き込まれており、ショートメッセージ内の規制解除情報コードと携帯端末1に書き込まれているコードが一致するか否かを検出する(ステップS106)。ステップS106で、YESの場合、該ショートメッセージが規制解除情報4を示すと判定され、規制解除状態データ32をONに設定し(ステップS108)、規制解除情報検出部41の処理は終了する。一方、ステップS106でNOの場合は、ステップS100に戻り、処理を繰り返す。以上のようにして、携帯端末1は、規制解除情報4の検出を行う。
【0053】
次に、実施例1に係る事前承認伺いシステムの動作について、図5のフローチャートを参照し、より詳細に説明する。
【0054】
図5の左側の破線枠は携帯端末1のフローチャートを示している。まず、使用者が操作部16で発話モードを選択する(ステップS300)。次に電話番号「123−4567−8901」を入力する(ステップS302)。次に、ステップS304で規制解除状態(すなわち、規制解除状態データがON)と判定された場合、又は、ステップS306で、現在までの課金額累計40が上限課金額38以下の場合には、発信許可がされ(ステップS308)、通話開始(ステップS310)、そして、終話(ステップS312)する。すると、基地局56から携帯端末1に送られてくる通話の課金データが、現在までの課金額累計40に加算され、現在までの課金額累計40が更新される。一方、通話の課金データは、ネットワークサーバ50の課金データ52にも加算され、更新される。
【0055】
このように、課金額は、ネットワークサーバ50と、携帯端末1の両方で管理される。キャリアからの支払いの請求は、ネットワークサーバ50の課金データ52に基づいて行われるが、使用者及び契約者は、携帯端末1に保存されている現在までの課金額累計40にアクセスしたほうが、ネットワークサーバ50にアクセスするより簡便にデータを見ることができる。従って、事前承認伺いシステムで課金状況が必要な場合は、携帯端末1内部の現在までの課金額累計40が使用される。
【0056】
次に、図5のステップS306でYESの場合には、事前承認伺い判別データは「1」になり、管理端末3に対し事前承認伺いを行うことが必要になり、ステップS400へと進む。そして、携帯端末1から、事前承認伺いのショートメッセージが自動的に管理端末3に送信される。携帯端末1の表示部14には、事前承認伺いのショートメッセージが送信されたことを知らせる通知、例えば、「現在、上限課金額を超えているため、事前承認伺いのショートメッセージが送信されました」という通知の表示がなされ、使用者に知らせる。
【0057】
この事前承認伺いのショートメッセージには、使用者が通話しようとしている電話番号「123−4567−8901」、上限課金額38、現在までの課金額累計40の情報が含まれる。また、携帯端末1が電話帳を登録している場合で、その電話番号が電話帳に含まれる場合には、通話先の名前を検索してショートメッセージに付けられる。これにより、ショートメッセージを見た契約者は、誰に通話しようとしているのかを即座に知ることができる。
【0058】
ステップS400の後、携帯端末1は、ショートメッセージの返信を待つ状態になる(ステップS402)。
【0059】
次に、図5の右側の破線枠内に示す管理端末3において、事前承認伺いのショートメッセージが有ることが検知され(ステップS500)、管理端末3は承認モードになる(ステップS502)。そして、携帯端末1からのショートメッセージを開き、通話先の電話番号、上限課金額38、現在までの課金額累計40を見る。また、上述したように、通話先の名前が付加されていることもある(ステップS504)。そして、契約者は、承認するか否かを判断する(ステップS506)。具体的には、契約者は管理端末3において、ショートメッセージに付いている「承認」、「否承認」のいずれかのボタンにカーソルを移動させて選択し、確定ボタンを押す操作を行う。承認した場合(S506でYESの場合)は、承認のショートメッセージが送信され(ステップS508)、否承認の場合(S506でNOの場合)は、否承認のショートメッセージが送信される(ステップS510)。
【0060】
次に、携帯端末1において、管理端末3から送られてきた事前承認伺いのショートメッセ−ジの返信を検出する(ステップS402のYES)。携帯端末1の事前承認伺いのメインプログラム47により、そのメッセージが承認か否承認かを判別する(ステップS404)。否承認と判別された場合(ステップS404でNOの場合)、通話は不可となり、事前承認伺い一覧の処理ステータスが「0」から「2」に遷移し、処理を終了する。この後、使用者が携帯端末で、この電話番号に通話しようとしても、事前承認伺い一覧のその電話番号の処理ステータスが「2」であると、通話は許可されない。
【0061】
一方、承認と判別された場合(ステップS404でYESの場合)、事前承認伺い一覧のその電話番号の処理ステータスが「0」から「1」に遷移し、携帯端末1はその時点で、その番号に通話可能な状態になる。使用者は、以下の3つのいずれかの方法で通話をすることができる。1つ目は、直接、通話先の番号を入力して通話する方法であり、2つ目は、発信履歴を呼び出してそこから通話する方法であり、3つ目は、返信されたショートメッセージを開き、そのショートメッセージに付いている「通話」のボタンにカーソル移動させて確定ボタンを押すことにより、その通話先の番号に通話する方法である。図5には、3つ目の方法をステップS406に示している。
【0062】
そして、通話が開始され(ステップS408)、終話する(ステップS409)。ここで、通話中は、事前承認伺い一覧のその電話番号の処理ステータスは「3」に遷移し、終話すると「4」に遷移する。そして、終話すると、基地局56から課金額が通知され、データ領域30の現在までの課金額累計40に加算され、更新される(ステップS314)。また、課金額は、ネットワークサーバ50にも送られ、課金データ52も同様に更新される。
【0063】
以上の説明では、通話の場合について説明したが、通信の場合も同様であり、事前承認伺いのショートメッセージに、使用者がパケット通信を行おうとしている宛先情報が書かれ、管理端末3に送信されることになる。
【0064】
以下に、実施例1の効果について纏める。災害等の緊急時には、メールが繋がりにくい等の通信障害が生じることが考えられる。そのような状況下では、事前承認伺いシステムにおける事前承認伺いの送信と承認結果の返信ができなくなったり、時間がかかり過ぎたりすることにより、緊急性の高い安否確認の通話/通信をすることができなくなる虞がある。
【0065】
本発明の実施例1に係る携帯端末によれば、緊急時にネットワーク側に設定された規制解除情報を携帯端末が検知することにより、管理端末の承認を得ずに通話/通信が行うことができる状態になるようにしたから、事前承認伺いシステムのサービスに加入している携帯端末が、緊急時に、即座に通話/通信が行えるようにすることができるという効果が得られる。
【0066】
特に災害時には、災害発生情報を規制解除情報としてネットワーク側に設定し、災害発生エリアの基地局から規制解除情報をショートメッセージとして同報通信することにより、その基地局エリア内の携帯端末が、そのショートメッセージを受信し、規制解除情報を検出する。それにより、事前承認伺いシステムのサービスに加入している携帯端末が、災害時に、管理端末の承認を得ずに通話/通信が行うことができる状態になり、即座に通話/通信を行えるようにすることができるという効果が得られる。
【実施例2】
【0067】
次に実施例2の構成について説明する。図7は実施例2に係る事前承認伺いシステムの構成を示す概略図である。図7を図2と比較すると、実施例1では規制解除情報は、ネットワークサーバ50に設定されていたのに対して、実施例2では、携帯端末2自身が、規制解除情報5を検知する構成になっている。また、実施例2ではブロードキャストメッセージサーバ66は使用されない。構成の違いから分かるように、実施例2に係る携帯端末2は、規制解除情報5をネットワーク側から取得するのではなく、自ら検出する。
【0068】
次に、図6は実施例2に係る携帯端末2を示すブロック図である。図6を図1と比較すると、実施例2の携帯端末2では、プログラム領域28に規制解除情報設定部53、データ領域30に規制解除情報設定データ44が新たに追加されていることが分かる。規制解除情報設定部53は、緊急時に事前承認伺いシステムの管理端末の承認を不要とする規制解除情報5を設定する機能を有する。
【0069】
規制解除情報設定部53が設定する規制解除情報5を一例として挙げると、例えば、防犯ブザーの音であり、規制解除情報設定部53が防犯ブザーの音を規制解除情報5として登録しておくと、携帯端末2の規制解除情報検出部51が、防犯ブザーの音を検出すると、規制解除状態データ32がONになり、この状態で、管理端末3の承認を得ずに、即座に通話/通信が行える状態になる。これにより、使用者は不審者の存在をタイムリーに連絡することが可能になる。
【0070】
また、図7では、規制解除情報5が携帯端末2の外部から入力される場合について示しているが、防犯ブザー付き携帯電話の場合のように防犯ブザーの音が携帯端末2の内部で発生するものもある。実施例2では、そのように携帯端末2の内部で発生する規制解除情報5も含んでいる。
【0071】
次に、図8を参照しながら、規制解除情報設定部53の動作について説明する。規制解除情報設定部53の操作を行うのは、主として契約者のほうである。まず、携帯端末2において、規制解除情報設定モードを選択する(ステップS200)。次に、契約者は、契約者のみが知っているパスワードを入力し、携帯端末1に設定されているパスワードと一致するか否かを判定する(ステップS202、S204)。ステップS204で一致している場合(YESの場合)、ステップS206へ進む。
【0072】
そして、規制解除情報の選択を行う(ステップS206)。具体的には、上述した防犯ブザーの設定以外に、幾つかの機能が提供され、それらの機能の中から使用するものを契約者が選択することができる。
【0073】
次に、ステップS206で選択した機能を設定するか否かを決める(ステップS208)。ステップS208でYESの場合に、規制解除情報設定登録が行われる(ステップS210)。そして、データ領域30に規制解除情報設定データ44として書き込まれる。次に、他に設定するか否かを判定し(ステップS212)、設定しない場合(S212でNOの場合)は終了し、一方、他に設定する場合(S212でYESの場合)はステップS202に戻り、処理を繰り返す。
【0074】
以下に、実施例2の効果について纏める。本発明の実施例2に係る携帯端末によれば、緊急時であることを携帯端末自身が検知することにより、事前承認伺いシステムにおいて管理端末の承認を得ずに、即座に通話/通信を行う状態にできるという効果が得られる。
【0075】
また、規制解除情報の内容を、ユーザが選択して登録することができるようにしたから、ユーザの要望に応じた規制解除情報を設定することができるという効果が得られる。
【0076】
尚、実施例1では規制解除情報をネットワーク上に設定する場合について、実施例2では携帯端末自身が規制解除情報を検出する場合について説明したが、これらは、組み合わせて使用するように構成してもよい。
【0077】
実施例1における携帯端末1、実施例2における携帯端末2のプログラム領域28に記憶されるプログラムである事前承認伺いメインプログラム47、上限課金額設定部49、規制解除情報検出部51、及び規制解除情報設定部53のプログラムは、工場出荷時に書き込まれるか、又は、事前承認伺いシステムのサービスに加入する際に、書き込まれる。また、それらのプログラムは、フロッピー(登録商標)ディスク、CD、DVD、メモリカードなどの種々の記憶メディアによっても供給される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の携帯端末は、携帯電話の通話/通信に関する事前承認伺いを行うシステムにおいて、災害時に規制解除することが可能な携帯電話として利用することができる。また、携帯電話に限らず、通信装置全般に対して適用することも可能である。
【0079】
なお、本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施形態ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
1、2、6、9:携帯端末
3:管理端末
4、5:規制解除情報
10:アンテナ
12:送受信部
14:表示部
16:操作部
18:音声処理部
20:制御部
22:スピーカ
24:マイク
26:記憶部
28:プログラム領域
30:データ領域
32:規制解除状態データ
34:事前承認伺い判別データ
36:事前承認伺い一覧
38:上限課金額
40:現在までの課金額累計
41、51:規制解除情報検出部
44:規制解除情報設定データ
47:事前承認伺いメインプログラム
49:上限課金額設定部
50:ネットワークサーバ
52:課金データ
53:規制解除情報設定部
54:ネットワーク
56:基地局
66:ブロードキャストショートメッセージサーバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話/通信の際に、所定の管理端末の承認を必要とする携帯端末であって、
緊急時にネットワーク側に設定される規制解除情報を検出することによって、前記管理端末の承認を得ずに使用できる状態になることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記規制解除情報は災害発生情報であり、災害発生時にネットワーク側に設定され、災害発生エリアの基地局からショートメッセージとして同報通信され、
前記携帯端末は前記ショートメッセージを受信することにより、前記規制解除情報を検出することを特徴とする請求項1に記載の携帯端末。
【請求項3】
通話/通信の際に、所定の管理端末の承認を必要とする携帯端末であって、
前記承認を不要とする規制解除情報を設定する規制解除情報設定部を有し、
前記規制解除情報設定部で設定された規制解除情報が発生したことを検出した場合に、前記管理端末の承認を得ずに使用できる状態になることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−5375(P2013−5375A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137188(P2011−137188)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】