説明

携帯電子機器用胸ポケット収納保持具

【課題】 本発明は、ワイシャツ等に具備された胸ポケットに収納された携帯電子機器や手帳等を、操作時の出し入れとの両立が可能で、胸部姿勢の静的・動的形状の変移に適合して収納保持させる用具を提供する。
【解決手段】スベリ防止材を展着させるに充分な剛性を有する薄板で、胸部姿勢の静的・動的変移に適合して自在に曲げることが可能なフレームとで構成され、胸ポケットに装着して携帯電子機器や手帳等を収納後、動的変移行動時における胸ポケットからの飛び出し・滑落を防止させ、或いはこれらの機能を向上させるべく収納品の表裏両面から挟持する二枚の表裏分離型フレームに展着させるべく、マチ部を含む表裏連続したスベリ防止材で構成された片結合サンドイッチ構造等を特徴とする、操作時の出し入れが容易で生地の表面突出や底部の局部圧下によるシルエット変形の低減が可能な携帯電子機器用胸ポケット収納保持具。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上着・ワイシャツ等の衣服に具備された上部開口構造の胸ポケット(以下胸ポケット)に収納された、携帯電話機・携帯音楽再生機・携帯IC録音機・等の携帯電子機器(以下携帯電子機器)や、定期券・ポケットブック・ビジネス手帳・校則により携帯を義務付けられた身分証明証を兼ね備えた生徒手帳・警察手帳等の手帳類(以下手帳)を収納保持させる用具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
日常の携帯電話の操作における出し入れ容易性、着信時における周囲に対する配慮のためのマナーモード機能としての、バイブレーション機構の作動音を有効に検知し易くしたり等、携帯電子機器や手帳を収納保持の簡便性・確実性のため胸ポケットに収納する方法が適用されるが、体位が前屈みの姿勢をとったりジャンプやランニング等の高低差がある動的変移行動を実行したときは、収納品が胸ポケットの生地面上を滑って飛び出したり滑落して、損傷や紛失する等の問題があった。
【先行技術文献】
【0003】
これらを改善するために、表ポケットの内側に、表ポケット底部より深く形成された裏ポケットを縫着により構成した二重化された胸ポケット(特許文献1)、携帯電話の周長より短く成形された伸縮性のある有底で筒状体の収納部と、それより幅広の開口部よりなる携帯電話用胸ポケット(特許文献2)、携帯電話外装面の一部に、天然もしくは合成ゴム又は布に対する滑り摩擦の大きい、合成樹脂をコーティングする胸ポケットからの滑落防止方法(特許文献3)等がある。
【0004】
【特許文献1】 特開平9−78321
【特許文献2】 登録実用新案 第3147437
【特許文献3】 登録実用新案 第3056841
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
胸ポケットに携帯電話等の携帯電子機器や手帳等を収納・保持する従来の方法はいくつか有るが、実効性・投入取り出しの容易性・汎用性・製造コスト等で納得のいくものは無かった。
【0006】
表ポケットより深く成形された、裏ポケットを縫着により構成された二重化胸ポケットは、前屈み程度の体位変化では脱落防止は実現可能ではあるが、取り出しが容易ではなく且つ制服への適用は、一括採用でなければ実現は困難であり汎用性が低い。
【0007】
携帯電話の周長より短く成形された伸縮性のある有底で筒状体の収納部と、それより幅広の開口部よりなる携帯電話用胸ポケットは、投入・取り出しが容易であるが、筒状体の収納部材の伸縮性による締め付けに頼る滑落防止方法のため、適用範囲が特許文献1より狭く、構造が通常の胸ポケットと比較して異形のため汎用性に乏しく、且つ胸ポケットを具備する衣服の製造コストアップ要因となる。
【0008】
携帯電話外装面の一部に、ゴム又は合成樹脂をコーティングする胸ポケットからの滑落防止方法は、携帯電話本体に係わるもので、胸ポケットへの投入・取り出しが容易ではあるが、前屈みの角度・速度や高低差のある歩行・ジャンプにおいては、携帯電話が確実に胸ポケット内で同生地に密着しているとは限らず、滑り摩擦効果が確実に期待できず滑落が防止できない。
【0009】
そこで、本発明は従来の方法にこれらの収納性・操作時の出し入れの問題点を見つけ、更にストラップやクリップに拠らず胸ポケット内で完結する解決策で携帯電子機器や手帳の収納保持や収納時の胸ポケットのシルエット変形の低減を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、合成樹脂や合成ゴム等からなるシート材やネット材よりなるスベリ防止材を、接着・熱融着・縫着等で展着させるに充分なる剛性を有する合成樹脂や硬質紙等の薄板による、人体胸部姿勢の静的・動的形状の変化に適合して自在に曲げることが可能なフレームとで構成され、胸ポケットに装着後そこに携帯電子機器や手帳等を収納させて、体位を前屈みの姿勢やジャンプやランニング等の高低差のある動的変移行動を実行したときに、胸ポケット内で安定して収納保持させ、胸ポケットへの操作時の出し入れの容易性との両立及び収納に伴う胸ポケット生地の表面突出によるシルエット変形の低減が可能なことを特徴とする、携帯電子機器用胸ポケット収納保持具。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の胸ポケット内の携帯電子機器や手帳等の収納品の収納保持性能を向上させるべく、前述収納品の表裏両面から挟持することが可能なように、縦方向(長手方向)にマチ幅を含む表裏連続して展開されたスベリ防止材を、請求項1のフレームと同寸法の二枚による表裏分離型フレーム、或いはマチ幅を含む表裏連続して展開された前述のスベリ防止材と同寸法のU字型の表裏一体化型フレームに、接着・熱融着・縫着等で展着させた片結合のサンドイッチ構造化か、又はスベリ防止材によって接着・熱融着・縫製等で作られた収納品を把持する独立した収納ポケットの、表裏面を前述の表裏分離型或いはU字型表裏一体化型の片結合サンドイッチ構造のフレームに接着・熱融着・縫着等で展着させた構造で、体位を前屈みの姿勢やジャンプやランニング等の高低差ある動的変移行動を実行したときに、胸ポケット内で安定した収納保持力を向上させ、操作時の胸ポケットへの携帯電子機器出し入れの容易性との両立及び、収納に伴う胸ポケット生地の表面突出や底部の局部圧下によるシルエット変形の低減が可能なことを特徴とする、携帯電子機器用胸ポケット収納保持具。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、合成樹脂や合成ゴム等からなるシート材やネット材よりなるスベリ防止材を展着させるに充分なる剛性を有する合成樹脂や硬質紙等の薄板で自在に曲げられるフレームとで構成された、胸ポケット収納保持具を装着して携帯電子機器や手帳を収納して前屈みの姿勢をとったが、収納品は胸ポケットから滑落することなく収納保持され、且つジャンプやランニングのように人体姿勢に高低差がある動的変移行動においても、収納品はわずかに胸ポケット内で上下したが、胸ポケットから飛び出すことはなく収納保持され、操作時の胸ポケットへの携帯電子機器出し入れの容易性との両立と、胸ポケット生地の収納品による表面突出によるシルエット変形の低減が実現された。
【0013】
請求項2の発明によれば、請求項1の胸ポケットの収納保持具の二枚分と収納品の厚みを考慮したマチ幅を含む表裏連続した長さのスベリ防止材を、請求項1と同寸法の二枚の表裏分離型フレーム、或いは請求項2の前述のスベリ防止材と同寸法のU字型一体化フレームに、展着させた片結合のサンドイッチ構造か、又はスベリ防止材を縫製等で作られた独立した収納ポケットの表裏面を、前述の表裏分離型或いはU字型表裏一体型の片結合サンドイッチ構造のフレームに展着させて構成される収納保護具を、胸ポケットに装着して携帯電子機器や手帳を収納して前屈みの姿勢で、収納品は胸ポケットから滑落することなく収納維持され、且つジャンプやランニングのように人体姿勢に高低差がある動的変移行動においても、収納品は胸ポケットからほとんど上下することなく飛び出し落下が防止され安定した収納保持がされ、操作時胸ポケットへの携帯電子機器出し入れの容易性との両立と、胸ポケット生地の収納品による表面突出や底部の局部圧下によるシルエット変形の低減が実現された。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 スベリ防止ネット製収納ポケット(フレームレス)概念図
【図2】 フレーム展着型スベリ防止ネット構造の胸ポケット収納保持具概念図
【図3】 表裏分離片結合サンドイッチフレーム展着型スベリ防止ネット構造の胸ポケット収納保持具概念図
【図4】 被覆線・被覆ワイヤー製フレーム展着型胸ポケット収納保持具概念図
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0015】
図1に示すように、厚み0.6mmの塩化ビニル樹脂製ネット構造(ピッチ幅寸法5mm*3mmのマトリクス)のスベリ防止ネット(以下ネット)を縫製にて、深さ110mm*幅95mmの独立したポケット(以下収納ポケット(1))を製作して、携帯電子機器として寸法108mm*49mm*15mmで重量105グラムの二つ折り式でメッキによる表面加飾処理を施した樹脂製筺体によりなる携帯電話を挿入して抱持させ、深さ135mm*幅125mmのワイシャツの胸ポケットに装着して、前屈みで靴ひも結びの動作を実行したところ、収納ポケット(1)と胸ポケットのワイシャツ本体生地部分とで隙間が生じ、従って携帯電話と前述のワイシャツ本体の生地と概ね無接触の状態で収納ポケットと胸ポケット生地との片面のみ摩擦によるスベリ防止効果であったが、携帯電話は胸ポケットから滑落することはなく、高さ200mm程のジャンプを10回実行したところ、都度胸ポケット内で大きく上下するも、単純な上下方向であれば特段飛び出し落下には至らなかった。
その時収納ポケット(1)の下部(底部)30mm(全深さの27%)程度が、ジャンプ動作による携帯電話の上下移動に伴い、胸ポケット底に押し込まれて折り曲がった状況を呈するようになり、ネットの接触面積の減少により収納保持が不確実となった。
又収納ポケット(1)は、上部開口部のネット端を内側に折り返して縫成処理することによって、結果僅かに剛性が生じ開口部形状は良好で、携帯電話の出し入れには特段の支障はなかったが、胸ポケットに装着後は人体胸部形状と姿勢の影響により同上部開口部は変形して閉鎖気味で、同携帯電話操作時の出し入れは容易に実行し難い様子を呈した。
【実施例2】
【0016】
図2に示すように、実施例1の塩化ビニル樹脂製スベリ防止ネット(以下ネット(2))を107mm*85mmの寸法で裁断し、同寸法のポリプロピレン樹脂製シート(厚み0.6mm)を幅10mmで抜いた形状のフレーム(以下フレーム(3))に縫製により展着(4)させた構造の胸ポケット収納保持具を製作して、実施例1と同じワイシャツの胸ポケットに装着した後、実施例1の携帯電話を挿入して、前屈みで靴ひも結びの動作を実行したところ、実施例1と同様にワイシャツ本体の胸ポケット部分の生地との間に、隙間が生じる状況を呈したが携帯電話は収納保持具のネット上で摩擦力により保持されて滑落は阻止された。
時速15Km程の速度でランニングをしたが、フレーム(2)とネット(3)がポケット生地の引っ張りにより両端が少々弓なり状になり結果として、携帯電話を胸部側に押さえ付けすることにより安定して収納保持され、且つ実施例1と同じく高さ200mm程のジャンプを10回実行したところ、収納保持具自体に特段の変移は発生しなかったが、携帯電話は胸ポケット内で僅かに上下するも胸ポケット内で収納保持され、且つ携帯電話操作時の出し入れの容易性との両立と、胸ポケット生地の収納品による表面突出によるシルエット変形の低減が実現できた。
【実施例3】
【0017】
図3に示すように、実施例1〜2で使用した塩化ビニル樹脂製スベリ防止ネット(以下ネット)を二枚分の寸法と収納品の厚み分のマチ(7)の長さを加えた表裏連続した長さのネット(5)に裁断して、同様に実施例2で使用したポリプロピレン樹脂製の抜き形のフレーム(以下フレーム(6A、6B))二枚を縫着により展着(4)させた表裏分離型片結合サンドイッチ構造の胸ポケット収納具を製作して、実施例1〜2と同じワイシャツの胸ポケットに装着した後、実施例1〜2の携帯電話を挿入して狭持させて前屈みで靴ひも結びの動作を実行したところ、前屈みした瞬間に裏面側フレーム(6B)ネット(5)が同胸部より離れワイシャツ本体との間に隙間が生じるが、反面携帯電話裏面を押さえるように作用して、且つ表面側フレーム(6A)とネット(5)で携帯電話を摩擦力により保持して滑落は阻止された。
実施例2と同じく時速15km程の速度でランニングをしたが、表裏両面のフレーム(6A、6B)とネット(5)がポケット生地の引っ張りにより僅かに弓なり状になり、結果有効的なサンドイッチ構造を呈することにより安定した挟持による収納保持がされ、実施例1〜2と同じく高さ200mm程のジャンプを10回実施したところ、携帯電話は胸ポケット内でほとんど上下することなく安定した挟持により収納保持され、携帯電話操作時の出し入れの容易性との両立と、胸ポケット生地の収納品による表面突出や底部の局部圧下によるシルエット変形の低減が実現できた。
尚表裏面で狭持せず表裏重ねて一体化して同様な評価を実施したところ、実施例2と同様な評価結果であった。
【実施例】
【0018】
図4に示すように、実施例1〜2のポリプロピレン樹脂製フレーム以外で、直径1.0mmの塩化ビニル樹脂被覆線(8A、8B)・直径2・0mm塩化ビニル樹脂被覆ワイヤー(9A、9B)・厚み0.6mmのシリコンゴムシート(6A、6B)にて、それぞれ製作されたフレーム二枚に実施例3のネット(5)を裁断・縫着により展着(4)させて、表裏分離型片結合サンドイッチ構造の胸ポケット収納保持具を製作して実施例1〜3の携帯電話で収納保持機能の検証を実施したところ、塩化ビニル被覆の線とワイヤーのフレームでは、出し入れの操作は容易ではあるが、前屈みで靴ひも結びの動作において、動作初期にフレーム部分に携帯電話が載り上がると、載り上げたフレーム付近で浮き上がりスベリ防止機能が著しく低減し、又シリコンゴムシートのフレームでは、フレームの剛性が弱くサンドイッチ構造による両面からの充分な挟持が得られず安定した収納保持が確保されず、且つフレームの剛性の弱さに起因して上部開口部が閉鎖気味で、携帯電話の操作時の出し入れは容易ではなかった。
【実施例5】
【0019】
塩化ビニル樹脂製の表紙で、外形寸法が105mm*71mm*15.5mmで重量90グラムの手帳を実施例2〜3と同様なる検証を実施したが、実施例2の200mmの高低差があるジャンプでの動的変移動作では、収納品の手帳は僅かに上下するも、実施例2の前屈み動作・ランニング動作及び実施例3の前屈み動作・ランニング動作・ジャンプ動作については安定して収納保持され、且つ手帳の出し入れとの両立は容易であった。
【符号の説明】
【0020】
1 ネット構造のスベリ防止材製収納ポケット
2 フレーム展着型胸ポケット収納保持具のネット
3 フレーム展着型胸ポケット収納保持具のフレーム
4 フレーム及びネットの展着部
5 表裏分離型片結合サンドイッチ構造胸ポケット収納保持具のネット
6A 表裏分離型片結合サンドイッチ構造胸ポケット収納保持具のフレーム(表側)
6B 同上フレーム(裏側)
7 表裏分離型片結合サンドイッチ構造胸ポケット収納具ネットのマチ部
8A 表裏分離型片結合サンドイッチ構造胸ポケット収納具の被覆線フレーム(表側)
8B 同上フレーム(裏側)
9A 表裏分離型片結合サンドイッチ構造胸ポケット収納具の被覆ワイヤーフレーム(表側)
9B 同上フレーム(裏側)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂や合成ゴム等からなるシート材やネット材よりなるスベリ防止材を、接着・熱融着・縫着等で展着させるに充分なる剛性を有する合成樹脂や硬質紙等の薄板による、人体胸部姿勢の静的・動的形状の変化に適合して自在に曲げることが可能なフレームとで構成され、胸ポケットに装着後そこに携帯電子機器や手帳等を収納させて、体位を前屈みの姿勢やジャンプやランニング等の高低差のある動的変移行動を実行したときに、胸ポケット内で安定して収納保持させ、胸ポケットへの操作時の出し入れの容易性との両立及び収納に伴う胸ポケット生地の表面突出によるシルエット変形の低減が可能なことを特徴とする、携帯電子機器用胸ポケット収納保持具。
【請求項2】
請求項1の胸ポケット内の携帯電子機器や手帳等の収納品の収納保持性能を向上させるべく、前述収納品の表裏両面から挟持することが可能なように、縦方向(長手方向)にマチ幅を含む表裏連続して展開されたスベリ防止材を、請求項1のフレームと同寸法の二枚による表裏分離型フレーム、或いはマチ幅を含む表裏連続して展開された前述のスベリ防止材と同寸法のU字型の表裏一体化型フレームに、接着・熱融着・縫着等で展着させた片結合のサンドイッチ構造化か、又はスベリ防止材によって接着・熱融着・縫製等で作られた収納品を把持する独立した収納ポケットの、表裏面を前述の表裏分離型或いはU字型表裏一体化型の片結合サンドイッチ構造のフレームに接着・熱融着・縫着等で展着させた構造で、体位を前屈みの姿勢やジャンプやランニング等の高低差ある動的変移行動を実行したときに、胸ポケット内で安定した収納保持力を向上させ、操作時の胸ポケットへの携帯電子機器出し入れの容易性との両立及び、収納に伴う胸ポケット生地の表面突出や底部の局部圧下によるシルエット変形の低減が可能なことを特徴とする、携帯電子機器用胸ポケット収納保持具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−180626(P2012−180626A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61582(P2011−61582)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(508252365)
【Fターム(参考)】