説明

携帯電子機器

【課題】アンテナによる人体への影響を低減することができる携帯電子機器を提供すること。
【解決手段】携帯電話機1は、筐体2内に配置され、基準電位部41が形成された回路基板40と、筐体2内に配置され、基準電位部41に電気的に接続されたアンテナ60と、筐体2に配置された操作部11と、操作部11に対応して回路基板40に形成され、操作部11に対する操作状態に応じて電気的な状態が変化するスイッチ電極51bとを備え、スイッチ電極51bは、信号線を介して基準電位部41と高周波的に接続される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作部を有する携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筐体と、前記筐体内に配置され、グランドパターンが形成された回路基板と、前記筐体内に配置され、前記グランドパターンに高周波的に接続されたアンテナと、を有する無線通信機器が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−229161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、アンテナからの電磁波による人体への影響を低減することが望まれていた。
【0005】
本発明は、アンテナによる人体への影響を低減することができる携帯電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯電子機器は、上記課題を解決するために、筐体と、前記筐体内に配置され、グランドパターンが形成された回路基板と、前記筐体内に配置され、前記グランドパターンに電気的に接続されたアンテナと、前記筐体に配置された操作部と、前記操作部に対応して前記回路基板に形成され、前記操作部に対する操作状態に応じて電気的な状態が変化する電極と、を有し、前記電極は、前記グランドパターンと高周波的に接続される、ことを特徴とする。
【0007】
また、前記電極は、前記アンテナに対向する位置に配置される、ことが好ましい。
【0008】
また、前記電極は、前記筐体の長手方向において前記グランドパターンに並設され、前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記電極の長さとの和により得られる長さは、前記アンテナの共振波長に対応する長さである、ことが好ましい。
【0009】
また、前記アンテナは、第1の共振波長及び第2の共振波長に共振し、前記電極は、第1の導電部及び第2の導電部を有し、前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記第1の導電部の長さとの和により得られる長さは、前記第1の共振波長に対応する長さであり、前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記第2の導電部の長さとの和により得られる長さは、前記第2の共振波長に対応する長さであり、前記アンテナにより前記第1の共振波長の信号が共振されると、前記第1の導電部と前記グランドパターンとを高周波的に接続し、前記アンテナにより前記第2の共振波長の信号が共振されると、前記第2の導電部と前記グランドパターンとを高周波的に接続する制御を行う制御部を有する、ことが好ましい。
【0010】
また、前記筐体には、前記操作部が複数配置され、前記回路基板には、複数の前記操作部に対応して前記電極が複数形成され、前記携帯電子機器は、前記アンテナに給電する給電部を有し、前記グランドパターンと高周波的に接続される電極は、複数の前記電極のうち前記給電部に近接する電極である、ことが好ましい。
【0011】
また、前記筐体には、前記操作部が複数配置され、前記回路基板には、複数の前記操作部に対応して前記電極が複数形成され、前記グランドパターンと高周波的に接続される電極は、複数の前記電極のうち前記回路基板の端部に形成される電極である、ことが好ましい。
【0012】
また、前記携帯電子機器は、前記電極に接続され、前記操作部に対する操作を検出する操作検出部と、前記電極と前記操作検出部との間に接続され、高周波信号を遮断する高周波遮断部と、を有する、ことが好ましい。
【0013】
また、前記携帯電子機器は、前記電極と前記グランドパターンとの間に接続されるリアクタンス部を有する、ことが好ましい。
【0014】
また、前記携帯電子機器は、前記電極と前記グランドパターンとの接続又は遮断を切り替えるスイッチと、前記アンテナの動作状態に応じて前記スイッチを制御する制御部と、を有する、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アンテナによる人体への影響を低減することができる携帯電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】携帯電子機器の一実施形態に係る携帯電話機の外観斜視図である。
【図2】携帯電話機の分解斜視図である。
【図3】図1に示す携帯電話機をA−Aで切断したときの切断面を模式的に示す断面図である。
【図4】回路基板、スイッチ電極及びアンテナの構成を示す図である。
【図5】導体側部に配置されるスイッチ電極の部分拡大図である。
【図6】図5において説明したスイッチ電極に係る構成の変形例を示す部分拡大図である。
【図7】リアクタンス部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。まず、本発明の携帯電子機器の一実施形態に係る携帯電話機1の基本構造について、図1を参照しながら説明する。図1は、携帯電子機器の一実施形態に係る携帯電話機1の外観斜視図である。
【0018】
図1に示すように、携帯電話機1は、筐体2を備えると共に、この筐体2の前面10に配置される操作部11と、表示部21と、スピーカ22と、マイク23とを備える。
操作部11は、ユーザにより操作がなされる部材である。表示部21は、文字情報や画像情報等の各種情報を表示するための装置である。スピーカ22は、通話時に相手側の音声を出力するための装置である。マイク23は、携帯電話機1のユーザが通話時に発した音声を入力するための装置である。
【0019】
次に、図2及び図3を参照して、携帯電話機1の内部構成について説明する。図2は、携帯電話機1の分解斜視図である。図3は、図1に示す携帯電話機1をA−A線で切断したときの切断面を模式的に示す断面図である。
【0020】
携帯電話機1は、フロントケース2aと、リアケース2bと、バッテリリッド2cとを備える。フロントケース2aとリアケース2bとは、互いの凹状の内側面が向き合うように配置され、互いの外周縁が重なり合うようにして結合される。また、リアケース2bの外面には、バッテリリッド2cがリアケース2bに対して着脱可能に結合される。また、携帯電話機1は、フロントケース2aとリアケース2bとの間に、表示部21と、キーシート30を含む操作部11と、メタルドームシート31と、回路基板40と、アンテナ60と、バッテリ80とが配置される。表示部21と、操作部11と、メタルドームシート31と、回路基板40と、アンテナ60と、バッテリ80とは、筐体2の厚さ方向(筐体2の内部側の方向又は筐体2の外部側の方向)において互いに支持し合うと共に、フロントケース2a及びリアケース2bにより挟持されて、筐体2の内部に設けられる。
【0021】
表示部21は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等から構成される。
操作部11は、キートップ13、14、15とキーシート30とから構成される操作対象である。キートップ13、14、15は、直方体形状に形成された樹脂であり、キートップ13、14、15は、フロントケース2aに形成されている貫通穴13a、14a、15a(開口部)を介して外部に露出する。キートップ13、14、15は、ユーザにより筐体2の内部側に押圧されると、その押圧力により筐体2の内部側に押し込まれる。なお、以下、ユーザによるキートップ13、14、15に対する筐体2の内部側への押圧を、「操作」と略して説明する。
【0022】
キーシート30は、可撓性を有するゴムから形成されるシート状の部材である。キーシート30における筐体2の外部側の面には、キートップ13、14、15が設けられている。また、キーシート30における筐体2の内部側の面には、キートップ13、14、15に対応して、筐体2の内部側に突出した押し子が形成されている。
【0023】
したがって、ユーザにより操作がなされると、キートップ13、14、15と共に、キーシート30の押し子も筐体2の内部側に押し込まれることとなる。
一方、操作が終了して、キートップ13、14、15に対する筐体2の内部側への押圧力が低減すると、キーシート30は、可撓性を有するゴムの反発力によりキートップ13、14、15は筐体2の外部側に押し戻され、キートップ13、14、15と共に、操作前の状態に戻る。
【0024】
メタルドームシート31は、可撓性のあるフィルム状の部材である。メタルドームシート31には、キートップ13、14、15の数と同数のメタルドーム32が、筐体2の外部側の面に設けられている。メタルドームシート31は、ユーザの操作によって筐体2の内部側に押し込まれるキートップ13、14、15に押圧されて筐体2の内部側に押し込まれる。また、操作が終了して、キートップ13、14、15に対する筐体2の内部側への押圧力が低減すると、メタルドームシート31は、可撓性を有するゴムの反発力により、キートップ13、14、15が筐体2の外部側に押し戻され、キートップ13、14、15及びキーシート30と共に、操作前の状態に戻る。
【0025】
メタルドーム32は、導電性を有する中空の凸状金属片であり、凸面が筐体2の外部側を向いて構成される。また、メタルドーム32は、キーシート30の押し子に対向するようにメタルドームシート31に設けられている。そして、キーシート30の押し子が、ユーザの操作によって、筐体2のキートップ13、14、15と共に筐体2の内部側に押し込まれると、押し子によって凸面が中空領域までつぶされて弾性変形する。
【0026】
一方、ユーザの操作が終了すると、キートップ13、14、15に対する筐体2の内部側への押圧力が低減され、上述のとおり、キーシート30の押し子は、筐体2の外部側に押し戻されるため、メタルドーム32の凸面は、つぶれが解除され、弾性力により変形前の状態に戻る。
【0027】
ユーザは、この操作に伴うメタルドーム32の弾性変形を通じてクリック感を得ることができる。すなわち、ユーザは、キートップ13、14、15を押下したことを好適に実感することができる。
【0028】
回路基板40は、各種の制御を司る制御部57をはじめとする多数の電子部品が実装されたリジッド基板である。回路基板40の表面部40a及び裏面部40bに実装された電子部品は、導電性の回路パターンを通じて互いに電気的に接続されている。実装された電子部品は、回路パターンを通じて、互いに信号の授受を行っている。
【0029】
また、回路基板40には、メタルドーム32の凸面の内面に対向する位置に、スイッチ電極51(電極)が設けられている。スイッチ電極51は、回路基板40上に設けられた回路パターンの一部を構成する導電性のパターンであり、中空の円形形状で形成された導電性の外周部分である第1の導電部52(図5参照)と、中空の領域において円形形状に形成された導電性の内周部分である第2の導電部53(図5参照)とを備える。第1の導電部52と第2の導電部53とは、互いに接しないよう回路基板40に設けられる。したがって、第1の導電部52と第2の導電部53とは、互いに非導通の関係にある。
【0030】
ただし、第1の導電部52と第2の導電部53とは、回路基板40において、ユーザによる操作に伴って弾性変形したメタルドーム32の凸面の内面に当接する位置に設けられる。したがって、第1の導電部52と第2の導電部53とは、ユーザによって操作された場合には、変形したメタルドーム32によって互いに導通されることとなる。つまり、第1の導電部52と第2の導電部53とは、ユーザにより操作がされていない状態においては非導通の状態となり、ユーザにより操作がされると導通状態となる。すなわち、スイッチ電極51は、ユーザによる操作の有無に応じて電気的な状態が変化する。
【0031】
スイッチ電極51は、回路基板40に形成された導電性の回路パターンによって制御部57に接続される。制御部57は、スイッチ電極51の電気的な状態変化を信号として受信し、その受信信号に基づいてユーザによる操作の有無及びその内容を判別する。なお、導電性の回路パターンは、後述する信号線を含むものである。
【0032】
また、回路基板40には、回路パターンの一部を構成する基準電位部41(グランドパターン)が形成される。基準電位部41は、メタルドーム32、スイッチ電極51、及びスイッチ電極51と制御部57とを接続する回路パターンと、アンテナ60とのアイソレーションを図るためのグランドである。基準電位部41は、アイソレーション効果を高める目的で、回路基板40において、メタルドーム32、スイッチ電極51、及びスイッチ電極51と制御部57とを接続する回路パターンに対向して設けられる。また、基準電位部41の一部は、回路基板40に形成されたスルーホールを介して回路基板40における筐体2の外部側の表面に露出している。
【0033】
アンテナ60は、高周波信号に共振するアンテナエレメントである。本実施形態においては、アンテナ60は、例えば、電話機能やメール機能を実行するための800MHz帯や2GHz帯の高周波信号に共振するよう構成される。アンテナ60は、給電部63(図4参照)及び回路基板40の回路パターンを介して制御部57に接続されている。制御部57は、アンテナ60に共振される800MHz帯や2GHz帯の信号に対して復調又は変調処理を行い、電話機能やメール機能を実行する。
バッテリ80は、回路基板40に実装された電子部品等に対して電力を供給する電源であり、例えば、リチウムイオン電池等で構成される。
【0034】
このように携帯電話機1は、操作部11を介してユーザが操作したり、表示部21を介して各種情報を視認したり、アンテナ60を利用して電話機能、メール機能、GPS機能等を利用することができ、携帯電話機としての機能を発揮する。
【0035】
以下、図4及び図5を参照しながらスイッチ電極51に係る特徴的な構成について説明する。図4は、回路基板40、スイッチ電極51及びアンテナ60の構成を示す図である。詳細には、図4(a)は、回路基板40を表面部40a側から視た図であり、図4(b)は、回路基板40を裏面部40b側から視た図であり、図4(c)は、回路基板40を右側面から視た図である。
【0036】
図4(a)に示すように、回路基板40は、基準電位部41が形成される基準電位側部43と、基準電位部41が形成されない導体側部44とを有する。
基準電位側部43は、回路基板40におけるスピーカ22(図1参照)側に形成される。導体側部44は、回路基板40におけるマイク23(図1参照)側に形成される。
【0037】
スイッチ電極51は、基準電位側部43における表面部40aに配置(実装)されるスイッチ電極51aと、導体側部44に配置(実装)されるスイッチ電極51bとを有する。
【0038】
また、スイッチ電極51bは、筐体2の長手方向D1において、基準電位部41に並設されている。詳細には、スイッチ電極51bは、筐体2の長手方向D1に沿って2列形成され、筐体2の短手方向D2に沿って10行形成されている。
【0039】
図4(b)に示すように、導体側部44における裏面部40bには、アンテナ60と、給電部63とが形成される。
図4(b)及び図4(c)に示すように、アンテナ60は、導体側部44における裏面部40bに配置される。すなわち、導体側部44に配置されるスイッチ電極51は、筐体2の厚さ方向において、アンテナ60と対向する位置に配置される。
【0040】
また、アンテナ60は、第1のアンテナ61と、第2のアンテナ62(例えば、図4(b)中の斜線部)とを備える。
第1のアンテナ61は、例えば、800MHz帯の周波数に対応する共振波長λ1(第2の共振波長)に共振する。そのため、第1のアンテナ61は、共振波長λ1の信号に対応する長さである。第2のアンテナ62は、例えば、2GHz帯の周波数に対応する共振波長λ2(第1の共振波長)に共振する。そのため、第2のアンテナ62は、共振波長λ2の信号に対応する長さである。
したがって、第1のアンテナ61の長さは、第2のアンテナ62の長さよりも長く形成されている。
【0041】
なお、本実施形態の携帯電話機1において、アンテナ60で高周波信号を受信すると、受信された高周波信号に係る電流は、回路基板40の基準電位側部43の表面を流れる。これにより、アンテナ60を含む回路基板40全体がアンテナエレメントとして機能する。
【0042】
また、筐体2の長手方向D1における基準電位部41の長さと、スイッチ電極51bの長さとの和により得られる長さは、アンテナ60の共振波長に対応する長さである。
すなわち、筐体2の長手方向D1における基準電位部41の長さと、第1の導電部52の長さとの和により得られる長さは、共振波長λ1に対応する長さである。
【0043】
また、筐体2の長手方向D1における基準電位部41の長さと、第2の導電部53の長さとの和により得られる長さは、共振波長λ2に対応する長さである。
ここで、共振波長λ1又は共振波長λ2に対応する長さとは、例えば、共振波長λ1又は共振波長λ2を、n/4倍した長さ(nは自然数)である。
また、給電部63は、アンテナ60における基準電位側部43と接続する部分に形成される。
【0044】
図5は、導体側部44に配置されるスイッチ電極51の部分拡大図である。詳細には、図5(a)は、スイッチ電極51の部分拡大平面図であり、図5(b)は、スイッチ電極51の部分拡大断面図である。図5(a)及び図5(b)に示すように、回路基板40の導体側部44には、第1の導電部52と、第2の導電部53と、スイッチ70と、スイッチ71が形成される。すなわち、上述したスイッチ電極51は、第1の導電部52と、第2の導電部53とを備える。
また、基準電位側部43には、制御部57と、フィルタ58とが形成される。
【0045】
第1の導電部52と第2の導電部53とは、キーシート30の押し子が操作されない状態では、電気的に非導通状態である。
一方、キーシート30の押し子が、ユーザの操作によって、筐体2のキートップ13、14、15と共に筐体2の内部側に押し込まれると、メタルドーム32の凸面は、押し子によって中空領域までつぶされて弾性変形する。この状態において、第1の導電部52と第2の導電部53とは、メタルドーム32を介して電気的に導通する。
これにより、キーシート30の押し子が操作されない状態と操作される状態とでは、第1の導電部52及び第2の導電部53(スイッチ電極51)の電気的な状態が変化する。
【0046】
そして、スイッチ電極51は、信号線を介して基準電位部41と接続される。
すなわち、アンテナ60からみると、スイッチ電極51bは、信号線を介して基準電位部41と高周波的に接続されているとみなすことができる。
【0047】
スイッチ70は、信号線を介して制御部57に接続され、制御部57の制御に従い、スイッチ電極51bにおける第1の導電部52と基準電位部41との接続又は遮断を切り替える。
スイッチ71は、信号線を介して制御部57に接続され、制御部57の制御に従い、スイッチ電極51bにおける第2の導電部53と基準電位部41との接続又は遮断を切り替える。
【0048】
制御部57は、第2のアンテナ62により共振波長λ2の信号が共振されると、スイッチ70をONさせて、第1の導電部52と基準電位部41とを高周波的に接続する制御を行う。
また、制御部57は、第1のアンテナ61により共振波長λ1の信号が共振されると、スイッチ71をONさせて、第2の導電部53と基準電位部41とを高周波的に接続する制御を行う。
また、制御部57は、共振波長λ1及び共振波長λ2の信号が共振されないと、スイッチ70及びスイッチ71をOFFさせて、第1の導電部52又は第2の導電部53と基準電位部41とを遮断させる。
【0049】
つまり、制御部57は、例えば、携帯電話機1の発信や着信、つまり、第1のアンテナ61及び/又は第2のアンテナ62の動作状態に応じてスイッチ70及びスイッチ71を制御して、第1の導電部52又は第2の導電部53と基準電位部41とを接続又は遮断させる。
【0050】
また、上述した実施形態においては、制御部57は、スイッチ70及びスイッチ71により全てのスイッチ電極51bを同一の状態に制御したが、本発明はこれに限らない。
例えば、制御部57は、共振波長λ1又は共振波長λ2の信号が共振されると、給電部63に近接するスイッチ電極51bに接続されているスイッチ70及びスイッチ71のみを制御して、当該スイッチ電極51bにおける第1の導電部52又は第2の導電部53と基準電位部41とを高周波的に接続してもよい。ここで、給電部63に近接するスイッチ電極51bとは、例えば、給電部63から最も近い距離にあるスイッチ電極51b(図4(a)中の破線Xで囲んだスイッチ電極)をいう。
【0051】
また、制御部57は、共振波長λ1又は共振波長λ2の信号が共振されると、導体側部44の端部に配置されるスイッチ電極51bに接続されているスイッチ70及びスイッチ71のみを制御して、当該スイッチ電極51bにおける第1の導電部52又は第2の導電部53と基準電位部41とを高周波的に接続してもよい。ここで、導体側部44の端部に配置されるスイッチ電極51bとは、例えば、導体側部44の隅に配置されているスイッチ電極51b(図4(a)中の破線Y1及びY2で囲んだスイッチ電極)をいう。
【0052】
フィルタ58は、スイッチ電極51bと制御部57との間に接続され、アンテナ60で共振される高周波信号を遮断する部材で構成される。
【0053】
次に、図6及び図7を参照しながら、本実施形態の変形例について説明する。
図6は、図5において説明したスイッチ電極51bに係る構成の変形例を示す部分拡大図である。図7は、リアクタンス部72の構成例を示す図である。
図6に示すように、本実施形態の変形例では、図5において説明したスイッチ70及びスイッチ71に代えてリアクタンス部72が設けられている。リアクタンス部72は、スイッチ電極51bと基準電位部41との間に接続される。
【0054】
リアクタンス部72としては、図7(a)に示すように、アンテナ60で共振される高周波帯域においてスイッチ電極51bと基準電位部41とを短絡(ショート)するコンデンサCを用いることができる。コンデンサCの容量は、例えば、第1のアンテナ61で共振する800MHz帯では約100pFであることが好ましく、第2のアンテナ62で共振する2GHz帯では約33pFであることが好ましい。
【0055】
さらに、図7(b)に示すように、リアクタンス部72は、コンデンサCだけでなく、コンデンサCとコイルLとを直列に接続した共振回路を用いてもよい。このようなコンデンサCとコイルLとで形成された共振回路は、コンデンサCのみの場合に比して、短絡させたい高周波帯域をより高い精度で制御することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態によれば、携帯電話機1は、操作部11に対応して回路基板40に形成され、操作部11に対する操作状態に応じて電気的な状態が変化するスイッチ電極51bを備え、スイッチ電極51bは、信号線を介して基準電位部41と高周波的に接続される。
【0057】
これにより、携帯電話機1は、基準電位部41及びスイッチ電極51bで構成されるグランドの面積が広がり、アンテナ60で共振される高周波信号がグランドにおいてより好適に分散される。したがって、携帯電話機1は、アンテナ60で共振される高周波信号による人体への影響(例えば、SAR(Specific Absorption Rate:比吸収率))の低減を図ると共に、アンテナ60における放射効率の向上を図ることができる。また、携帯電話機1は、グランドの長さが変化するため、グランドにおいて高周波信号に起因する磁界が集中することで発生するSARのホットスポットを移動又は分散させることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、スイッチ電極51bは、アンテナ60に対向する位置に配置されている。これにより、携帯電話機1は、スイッチ電極51bによって、アンテナ60で共振する高周波信号を遮蔽することができるため、高周波信号による人体への影響の低減をより好適に図ることができる。
【0059】
また、本実施形態によれば、筐体2の長手方向D1における基準電位部41の長さと、スイッチ電極51bの長さとの和により得られる長さは、アンテナ60の共振波長に対応する長さである。これにより、携帯電話機1は、基準電位部41の長さが足りない場合には、スイッチ電極51bにより基準電位部41の長さを延長することができ、アンテナ利得を調整することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、制御部57は、第2のアンテナ62により共振波長λ2の信号が共振されると、スイッチ70をONさせて、第1の導電部52と基準電位部41とを高周波的に接続する制御を行う。また、制御部57は、第1のアンテナ61により共振波長λ1の信号が共振されると、スイッチ71をONさせて、第2の導電部53と基準電位部41とを高周波的に接続する制御を行う。これにより、携帯電話機1は、第1の導電部52及び第2の導電部53を有効に活用しつつ、複数の周波数帯に対応するアンテナ特性の向上を図ることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、基準電位部41と高周波的に接続されるスイッチ電極51bは、複数のスイッチ電極51bのうち、給電部63に近接するスイッチ電極51bであってもよい。ここで、給電部63は、高周波信号に起因する電流の密度が高くなりやすいことが知られている。本実施形態に係る携帯電話機1は、給電部63に近接するスイッチ電極51bを基準電位部41と高周波的に接続するため、給電部63付近における高周波信号に起因する電流が分散され、高周波信号による人体への影響の低減をより好適に図ることができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、基準電位部41と高周波的に接続されるスイッチ電極51bは、複数のスイッチ電極51bのうち、回路基板40の端部に形成されるスイッチ電極51bであってもよい。ここで、回路基板40の端部は、高周波信号に係る電流の密度が高くなりやすいことが知られている。本実施形態に係る携帯電話機1は、回路基板40の端部に形成されるスイッチ電極51bを基準電位部41と高周波的に接続するため、回路基板40の端部における高周波信号に起因する電流が分散され、高周波信号による人体への影響の低減をより好適に図ることができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、フィルタ58は、スイッチ電極51bと制御部57との間に接続され、アンテナ60で共振される高周波信号を遮断する。これにより、携帯電話機1は、アンテナ60で受信された高周波信号がフィルタ58で遮断されるため、アンテナ60で受信された高周波信号が制御部57に入力されることを抑制できる。したがって、携帯電話機1は、アンテナ60で受信された高周波信号に起因して意図せぬ操作が検出されることを抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、リアクタンス部72は、スイッチ電極51bと基準電位部41との間に接続される。これにより、携帯電話機1は、スイッチ電極51bに重畳された高周波信号のノイズを基準電位部41に分散することができる。したがって、携帯電話機1は、スイッチ電極51bから制御部57への不要な高周波信号のノイズを低減することができる。また、携帯電話機1は、スイッチ電極51bと基準電位部41とがリアクタンス部72を介して直流的に分離可能となるため、スイッチ電極51bの電気的な状態変化に伴って生じる信号が基準電位部41に流れにくくなる。したがって、制御部57は、操作部11への操作を好適に検出することができる。さらに、携帯電話機1は、不要な高周波信号のノイズを基準電位部41に分散することにより、静電気放電(ESD:Electrostatic Discharge)対策も図ることができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、制御部57は、アンテナ60の動作状態に応じてスイッチ70及びスイッチ71を制御する。これにより、携帯電話機1は、リアクタンス部72を有さない場合であっても、スイッチ電極51bから制御部57への不要な高周波信号のノイズを低減することができる。また、携帯電話機1は、スイッチ電極51bと基準電位部41とがスイッチ70及びスイッチ71により分離可能となるため、スイッチ電極51bの電気的な状態変化に伴って生じる信号が基準電位部41に流れにくくなる。したがって、制御部57は、操作部11への操作を好適に検出することができる。
【0066】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0067】
また、上述した実施形態において、携帯電子機器としての携帯電話機1について説明したが、これに限定されず、デジタルカメラ、PHS(登録商標;Personal Handy phone System)、PDA(Personal Digital Assistant)、ポータブルナビゲーション装置、パソコン、ノートパソコン、携帯ゲーム装置等であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 携帯電話機(携帯電子機器)
2 筐体
11 操作部
40 回路基板
41 基準電位部(グランドパターン)
51 スイッチ電極(電極)
60 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、グランドパターンが形成された回路基板と、
前記筐体内に配置され、前記グランドパターンに電気的に接続されたアンテナと、
前記筐体に配置された操作部と、
前記操作部に対応して前記回路基板に形成され、前記操作部に対する操作状態に応じて電気的な状態が変化する電極と、を有し、
前記電極は、前記グランドパターンと高周波的に接続される、ことを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記電極は、前記アンテナに対向する位置に配置される、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記電極は、前記筐体の長手方向において前記グランドパターンに並設され、
前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記電極の長さとの和により得られる長さは、前記アンテナの共振波長に対応する長さである、ことを特徴とする請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記アンテナは、第1の共振波長及び第2の共振波長に共振し、
前記電極は、第1の導電部及び第2の導電部を有し、
前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記第1の導電部の長さとの和により得られる長さは、前記第1の共振波長に対応する長さであり、
前記筐体の長手方向における前記グランドパターンの長さと前記第2の導電部の長さとの和により得られる長さは、前記第2の共振波長に対応する長さであり、
前記アンテナにより前記第1の共振波長の信号が共振されると、前記第1の導電部と前記グランドパターンとを高周波的に接続し、前記アンテナにより前記第2の共振波長の信号が共振されると、前記第2の導電部と前記グランドパターンとを高周波的に接続する制御を行う制御部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項3に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記筐体には、前記操作部が複数配置され、
前記回路基板には、複数の前記操作部に対応して前記電極が複数形成され、
前記アンテナに給電する給電部を有し、
前記グランドパターンと高周波的に接続される電極は、複数の前記電極のうち前記給電部に近接する電極である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記筐体には、前記操作部が複数配置され、
前記回路基板には、複数の前記操作部に対応して前記電極が複数形成され、
前記グランドパターンと高周波的に接続される電極は、複数の前記電極のうち前記回路基板の端部に形成される電極である、ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記電極に接続され、前記操作部に対する操作を検出する操作検出部と、
前記電極と前記操作検出部との間に接続され、高周波信号を遮断する高周波遮断部と、を有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の携帯電子機器。
【請求項8】
前記電極と前記グランドパターンとの間に接続されるリアクタンス部を有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の携帯電子機器。
【請求項9】
前記電極と前記グランドパターンとの接続又は遮断を切り替えるスイッチと、
前記アンテナの動作状態に応じて前記スイッチを制御する制御部と、を有する、ことを特徴とする請求項1乃至請求項7に記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−205297(P2011−205297A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69425(P2010−69425)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】