説明

携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステム

【課題】 セキュリティ効果を高めた携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムを提供する。
【解決手段】 ICカードは、秘密鍵が記憶された記憶手段と、乱数生成手段と、電子署名データ生成手段とを有し、携帯電話機は、ICカードから乱数と電子署名データとを読み取る手段と、読み取った乱数と電子署名データとを施解錠制御装置に送信する手段とを有し、施解錠制御装置は、乱数と電子署名データとを受信する手段と、エンジン始動又はドア開閉に対するロック状態及びロック解除状態を制御するロック制御手段と、前記秘密鍵と一対で使用される公開鍵が登録された電子証明書が記憶された記憶手段と、受信した電子署名データを前記電子証明書に登録された公開鍵で復号したハッシュ値と、受信した乱数から算出されたハッシュ値とを照合する電子署名データ検証手段と、認証された場合にロック制御手段に対しロック解除とする信号を送信する手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車に搭載された施解錠制御装置と、ICカードが装着された携帯電話機とにより、キーを使用しないで車両のロックを解除することを可能にした携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のドアの開閉やエンジン始動などのロック機構においては、キーを使用して施錠を行ったり、解錠を行なう場合が一般的であった。
しかしながら、キーを使用するロック機構の場合には、キーを紛失してしまった際に、盗難などを予防するため自動車側に備え付けられているロック装置全体を別のロック装置に付け替えて、新たなキーでのロック及びロック解除を行なえるようにしなければならないという面倒がある。
更に、金属などからなるキーを持ち歩かなければならず、嵩張るなどの問題がある。
【0003】
また、キーを使用することなくドアロックを解除するシステムとして、携帯型電話装置を使用して、パスワードを携帯型電話装置から自動車に搭載されている施解錠制御装置に通信回線を介して送信し、施解錠制御装置内でパスワードによる照合処理を行い、照合一致した場合に解錠を行なうシステムが公知となっている。(例えば、特許文献1参照)
しかしながら、携帯型電話装置から施解錠制御装置に対して、通信回線を介してパスワードを送信する途中で第三者にパスワードが盗聴され、その盗まれたパスワードを第三者が使用して不正にロック解除を行い自動車が盗まれる危険性があるという問題がある。
【特許文献1】特開20001−193324号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、施解錠用のキーを必要としないで、携帯電話機を利用して施解錠の制御を行なうことができ、しかも携帯電話機から送信されたロック解錠用のデータが盗聴などで第三者に不正に知られたとしても、第三者がそのロック解錠用のデータを用いてロック解除を行えないようにして、セキュリティ効果を高めた携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムは、自動車に搭載された施解錠制御装置と、ICカードが装着された携帯電話機とにより、キーを使用しないで自動車のロックを解除することを可能にした携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムであって、前記ICカードは、秘密鍵が記憶された記憶手段と、乱数を生成する乱数生成手段と、前記乱数生成手段で生成された乱数から前記秘密鍵を用いて電子署名データを生成する電子署名データ生成手段と、を有し、前記携帯電話機は、前記ICカードから前記乱数生成手段で生成された乱数と、前記電子署名データ生成手段で生成された電子署名データとを読み取る手段と、読み取った乱数と電子署名データとを、通信回線を介して前記施解錠制御装置に送信する手段とを有し、前記施解錠制御装置は、前記携帯電話機から送信された乱数と電子署名データとを受信する手段と、エンジン始動又はドア開閉に対するロック状態及びロック解除状態を制御するロック制御手段と、前記秘密鍵と一対で使用される公開鍵が登録された電子証明書が記憶された記憶手段と、前記携帯電話機から受信した電子署名データを前記電子証明書に登録された公開鍵で復号したハッシュ値と、前記携帯電話機から受信した乱数から算出されたハッシュ値とを照合してデータの検証を行なう電子署名データ検証手段と、前記電子署名データ検証手段での検証の結果、認証された場合に前記ロック制御手段に対してロック解除状態とする信号を送信する手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、自動車のロック解除を行なう際に、携帯電話機から自動車に搭載された施解錠制御装置に送信されるデータが乱数と電子署名データなので、たとえ第三者がこの乱数と電子署名データを通信途中で不正に盗聴などで入手したとしても、乱数から電子署名データを生成する際に使用する秘密鍵がわからないので、正しい電子署名データを作りだすことができないために自動車のロック解除も行なうことができない。
したがって、第三者による不正な自動車のロック解除を防止することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムの概要構成を示す図、図2は、本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムのシステム構成を示す図、図3は、本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【0008】
図1に示すように、自動車1には、自動車1のエンジン始動及びドア開閉に対するロック状態及びロック解除状態に関する制御を行なう機能を有する施解錠制御装置2が搭載されている。
また、自動車1の所有者は、UIMカードからなるICカード3が取り外し可能に装着された携帯電話機4を所持し、携帯電話機4と施解錠制御装置2とは、通信回線5を介して通信可能に接続されている。
これにより、自動車1の所有者は、携帯電話機4から通信回線5を介して施解錠制御装置2にロックを解除状態とするためのデータを送信することで、施解錠制御装置2によるエンジン始動及びドア開閉に対するロック解除の制御が行なえるようにしてある。
【0009】
図2に示すように、施解錠制御装置2には、通信回線5を介して通信を行なう通信手段6、エンジンロック制御手段7、ドアロック制御手段8、電子署名データ検証手段9、記憶手段10、制御手段11などが備えられている。
エンジンロック制御手段7は、自動車1のエンジン始動に対してロック状態及びロック解除状態の制御を行なう機能を有し、また、ドアロック制御手段8は、自動車1のドア開閉に対するロック状態及びロック解除状態に関する制御を行なう機能を有している。
また、記憶手段10には、予め公開暗号方式に基づく電子証明書12や制御プログラム13が登録され、施解錠制御装置2の処理手順がこの制御プログラム13に基づき制御されている。
【0010】
電子証明書12には、公開鍵が登録されていて、この公開鍵と一対で用いられる秘密鍵で暗号化された暗号データを、電子証明書12に登録されている公開鍵を使用して復号できるようにしてあり、つまり、予め作成された一対の公開鍵と秘密鍵以外では、暗号データに対する復号が行なえないようにしてある。
電子署名データ検証手段9は、施解錠制御装置2が通信回線5を介して携帯電話機4から暗号データを受信した際に、記憶手段10の電子証明書12に登録されている公開鍵を使用して復号する機能を有している。
【0011】
したがって、電子署名データ検証手段9による暗号データの復号が可能であった場合には、予め作成された一対の公開鍵と秘密鍵とが使用されたことがわかるが、もしも、電子署名データ検証手段9による暗号データの復号ができなかった場合には、施解錠制御装置2が受信した暗号データが、予め作成された一対の公開鍵と秘密鍵における秘密鍵を用いて暗号化されなかったことがわかることになる。
【0012】
また、携帯電話機4に取り外し可能に装着されるUIMカードからなるICカード3には、乱数生成手段14、電子署名データ生成手段15、記憶手段16、インターフェース17、記憶手段18、制御手段19などが備えられている。
そして、記憶手段18には、アプリケーションデータ20、秘密鍵21、ユニークコード22、制御プログラム23などが記憶されている。
ここで、記憶手段18に記憶されている秘密鍵21は、施解錠制御装置2の記憶手段10に記憶されている電子証明書12の公開鍵と一対で使用される鍵である。
【0013】
乱数生成手段14は、乱数を生成する機能を有し、電子署名データ生成手段15は、乱数生成手段14で生成された乱数から、記憶手段16に記憶されている秘密鍵を用いて電子署名データを生成する機能を有している。
この場合に、電子署名データ生成手段15では、その乱数を、ハッシュ関数を用いてハッシュ値を算出し、このハッシュ値を、秘密鍵を用いて暗号化して電子署名データを作成する。
また、自動車1に搭載された施解錠制御装置2によるエンジン始動及びドア開閉をロック解除状態にしたい場合には、乱数生成手段14で生成された乱数と、秘密鍵を用いて暗号化した電子署名データとが用いられる。
【0014】
また、携帯電話機4は、通信手段24、マイク25、表示手段26、記憶手段27、スピーカ28、インターフェース29、操作手段30、制御手段31などが備えられている。
携帯電話機4には、UIMカードからなるICカード3が取り外し可能に装着されていて、携帯電話機4の操作手段30からの指示信号に基づいて、ICカード3のインターフェース17及び携帯電話機4のインターフェース29を介して、ICカード3内で生成された秘密鍵を用いて暗号化された電子署名データと、乱数生成手段14で生成された乱数とが携帯電話機4に送り込まれ、更に携帯電話機4の通信手段24から通信回線5を介して施解錠制御装置2に送信される。
【0015】
次に、本発明の実施形態にかかる携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムの処理手順を、図3に示すフローチャートに基づいて説明する。
ロック状態にある自動車の所有者が、その自動車1を運転する場合に、携帯電話機4の操作手段30から予め定められたロック解除用の指示情報の入力を行なう。(ステップS1)
この指示情報に基づいて、携帯電話機4からICカード3に指示信号が送信されて、ICカード3の乱数生成手段14で乱数が生成される。(ステップS2)
次に、ICカード3内の電子署名データ生成手段15で、その乱数をハッシュ関数によりハッシュ値が算出され、更にそのハッシュ値が記憶手段16に記憶されている秘密鍵により暗号化されて電子署名データが生成される。(ステップS3)
そして、ICカード3から携帯電話機4に電子署名データと、乱数のデータとが送られる。(ステップS4)
【0016】
次に、携帯電話機4から自動車1に搭載された施解錠制御装置2に対し通信回線5を介して、電子署名データと、乱数のデータとが送信される。(ステップS5)
電子署名データと、乱数のデータとを受信した施解錠制御装置2では、電子署名データ検証手段9により、受信した電子署名データを記憶手段10に登録されている電子証明書が有している公開鍵で復号されてハッシュ値が算出される。(ステップS6)
また、受信した乱数のデータからハッシュ関数を用いてハッシュ値が算出される。(ステップS7)
そして、公開鍵で復号することで算出されたハッシュ値と、受信した乱数のデータから算出されたハッシュ値との照合処理が行なわれる。(ステップS8)
【0017】
このハッシュ値による照合処理の結果、一致した場合には、エンジンロック制御手段7及びドアロック制御手段8に対して、それぞれロックを解除する指示信号が制御手段11から送られて、エンジンの始動が可能な状態となり、またドアの開閉が可能な状態とする。(ステップS9)
【0018】
また、このハッシュ値による照合処理の結果、不一致となった場合には、エンジンロック制御手段7及びドアロック制御手段8に対して指示信号が送られないままとなり、エンジンの始動及びドアの開閉ができない状態のまま処理が終了する。
【0019】
本発明の携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムでは、自動車1のエンジン始動及びドア開閉に対するロック状態を解除したい場合に、その都度、ICカード3内の乱数生成手段14で異なる数字からなる乱数が生成されるために、通信回線5での送信途中において第三者が送信中の乱数を不正に盗んだとしても、その第三者は、秘密鍵がわからないので、その盗んだ乱数から電子署名データを生成することができないため、自動車1のエンジン始動及びドア開閉に対するロック状態を解除することができないようにしてある。
したがって、通信データが通信の途中で第三者に不正に盗まれたとしてもセキュリティが確保されることになる。
【0020】
また、もしも自動車1の所有者が、ICカード3や、ICカード3が装着された携帯電話機4を落としたり、盗まれたりした場合には、直ぐに自動車1に搭載されている施解錠制御装置2の記憶手段10に記憶させた電子証明書のデータを別の新たな電子証明書に更新させることで、簡単に第三者による自動車1のエンジン始動及びドア開閉に対するロック状態の解除を防ぐことができる。
つまり、施解錠制御装置2の記憶手段10に記憶させた電子証明書を新たな電子証明書に更新させれば、電子証明書に有する公開鍵も変わることとなり、従来の秘密鍵で暗号化されたデータを新たな電子証明書の公開鍵で復号することができなくなり、照合処理されたハッシュ値での照合結果が不一致となり、ロックの解除がされないことになる。
したがって、従来のキーに基づく施解錠装置などのように、自動車に備えられている施解錠装置ごと新たな装置に取り替えるという手間がかからず、そのためのコストも必要がない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムの概要構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムのシステム構成を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムの処理手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0022】
1 自動車
2 施解錠制御装置
3 ICカード
4 携帯電話機
5 通信回線
6 通信手段
7 エンジンロック制御手段
8 ドアロック制御手段
9 電子署名データ検証手段
10,16,27 記憶手段
11,18,31 制御手段
12 電子証明書
13 制御プログラム
14 乱数生成手段
15 電子署名データ生成手段
17,29 インターフェース
20 アプリケーションデータ
21 秘密鍵
22 ユニークコード
23 制御プログラム
25 マイク
26 表示手段
27 記憶手段
28 スピーカ
30 操作手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載された施解錠制御装置と、ICカードが装着された携帯電話機とにより、キーを使用しないで自動車のロックを解除することを可能にした携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステムであって、
前記ICカードは、秘密鍵が記憶された記憶手段と、乱数を生成する乱数生成手段と、前記乱数生成手段で生成された乱数から前記秘密鍵を用いて電子署名データを生成する電子署名データ生成手段と、を有し、
前記携帯電話機は、前記ICカードから前記乱数生成手段で生成された乱数と、前記電子署名データ生成手段で生成された電子署名データとを読み取る手段と、読み取った乱数と電子署名データとを、通信回線を介して前記施解錠制御装置に送信する手段とを有し、
前記施解錠制御装置は、前記携帯電話機から送信された乱数と電子署名データとを受信する手段と、エンジン始動又はドア開閉に対するロック状態及びロック解除状態を制御するロック制御手段と、前記秘密鍵と一対で使用される公開鍵が登録された電子証明書が記憶された記憶手段と、前記携帯電話機から受信した電子署名データを前記電子証明書に登録された公開鍵で復号したハッシュ値と、前記携帯電話機から受信した乱数から算出されたハッシュ値とを照合してデータの検証を行なう電子署名データ検証手段と、前記電子署名データ検証手段での検証の結果、認証された場合に前記ロック制御手段に対してロック解除状態とする信号を送信する手段とを有することを特徴とする携帯電話機を利用したキーレスエントリーシステム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−9333(P2006−9333A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185885(P2004−185885)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】