説明

摩損しにくくかつプルランを含む速崩壊性固形製剤

活性薬剤とプルランとを含む固形製剤を開示する。固形製剤は約1%以下の摩損度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プルランを含みかつ著しく低い摩損度(friability)を有する活性薬剤の固形製剤に関する。活性薬剤は、ミクロンサイズであってもナノ微粒子状であってもよく、水に対して可溶性であっても低溶解性であってもよい。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、制御放出製剤、ファーストメルト(fast melt)製剤、エアロゾル製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ剤、カプセル剤、散剤などのようなすべての製剤を包含する。好ましい実施形態では、固形製剤は、迅速に崩壊または溶解する製剤すなわちファーストメルト製剤である。
【0003】
A. 速溶解性組成物に関する背景
速崩壊性または速溶解性の固形投与経口製剤の現在の製造業者としては、たとえば、Cima Labs、Fuisz Technologies Ltd.、Prographarm、R.P. Scherer、and Yamanouchi-Shakleeが挙げられる。これらの製造業者はいずれも、異なるタイプの速溶解性固形経口製剤を販売している。
【0004】
Cima Labsは、5〜30秒間の口腔内溶解時間を有する発泡性直接圧縮錠剤であるOraSolv(登録商標)および味マスキング活性薬剤を有しかつ15〜45秒間の口腔内溶解時間を有する直接圧縮錠剤であるDuraSolv(登録商標)を販売している。OraSolv(登録商標)製剤はとくに、非常に高い摩損度を有する。「経口製剤用の味マスキングマイクロ粒子」に関するCimaの米国特許第5,607,697号には、口内で崩壊するコーティングマイクロ粒子よりなる固形製剤が記載されている。マイクロ粒子コアは、医薬活性剤と、マンニトール、ソルビトール、人工甘味剤とメントールとの混合物、糖質とメントールとの混合物、およびメチルサリチレートから選択される負の溶解熱を有する1種以上の甘味化合物と、を有する。マイクロ粒子コアは、口内で溶解を遅らせかつ医薬活性剤の味をマスキングする材料で少なくとも部分的にコーティングされる。次に、マイクロ粒子は圧縮されてタブレットを形成する。他の賦形剤を錠剤に添加することもできる。
【0005】
Cima Labsに付与された「速溶解性ロバスト製剤」に関するWO 98/46215は、活性成分と、少なくとも非直接圧縮充填剤および滑沢剤のマトリックスと、を有する硬質圧縮ファーストメルト製剤を対象とする。非直接圧縮充填剤は、典型的には、直接圧縮(DC等級)充填剤とは対照的に自由流動性でなく、通常、自由流動性顆粒を形成するためにさらに処理が必要である。
【0006】
Cimaはまた、発泡性製剤(米国特許第5,503,846号、同第5,223,264号、および同第5,178,878号)と、速溶解性製剤用の錠剤化助剤(米国特許第5,401,513号および同第5,219,574号)と、水溶性薬剤の速溶解性製剤(「味マスキングマイクロカプセル組成物および製造方法」に関するWO 98/14179)と、を対象とする米国特許および国際特許出願を有する。
【0007】
Fuisz Technologies(現在はBioVailの一部門)は、Shearform(登録商標)と呼ばれる加工された賦形剤を含有する直接圧縮錠剤であるFlash Dose(登録商標)を販売している。Shearform(登録商標)は、アモルファス繊維に変換された混合多糖の綿菓子状物質である。この技術が記載されている米国特許としては、「速溶解性投与ユニットの製造装置」に関する米国特許第5,871,781号;「高速/高圧条件下で形成される速溶解性可食ユニット」に関する米国特許第5,869,098号;いずれも「速溶解性投与ユニットを製造するための方法および装置ならびにそれから得られる製品」に関する米国特許第5,866,163号、同第5,851,553号、および同第5,622,719号;「制御放出系の送達」に関する米国特許第5,567,439号;ならびに「速分散性可食ユニットの形成方法およびそれから得られる製品」に関する米国特許第5,587,172号が挙げられる。
【0008】
Prographarmは、カルボキシメチルセルロースのような崩壊剤と、変性デンプンのような膨潤剤と、味マスキング活性薬剤と、を有するファーストメルト錠剤であるFlashtab(登録商標)を販売している。錠剤は、1分以下の口腔内崩壊時間を有する(米国特許第5,464,632号)。
【0009】
R.P. Schererは、2〜5秒間の口腔内溶解時間を有するフリーズドライ錠剤であるZydis(登録商標)を販売している。凍結乾燥錠剤は、湿気および温度に対する錠剤の感受性が原因で、製造にコストがかかりかつ包装が困難である可能性がある。米国特許第4,642,903号(R.P. Scherer Corp.)には、溶液または懸濁液の全体にガスを分散させてフリーズドライすることにより調製されるファーストメルト投与製剤が言及されている。米国特許第5,188,825号(R.P. Scherer Corp.)には、水溶性活性薬剤をイオン交換樹脂に結合させるかまたはそれと複合体化させて実質的に水不溶性の複合体を形成してから、適切な担体と混合してフリーズドライすることにより調製されるフリーズドライ製剤が言及されている。米国特許第5,631,023号(R. P. Scherer Corp.)には、ゼラチンと活性薬剤との懸濁液にキサンタンガムを添加することにより作製されるフリーズドライ薬剤製剤が言及されている。米国特許第5,827,541号(R.P. Scherer Corp.)には、疎水性物質の固形医薬製剤の調製方法が開示されている。その方法は、非水性相中に疎水性活性成分および界面活性剤;ならびに水性相中に担体材料を含有する分散液をフリーズドライすることを含む。
【0010】
Yamanouchi-Shakleeは、低成形性サッカリドと高成形性サッカリドとの組合せを有する錠剤であるWowtab(登録商標)を販売している。この技術をカバーする米国特許としては、「頬腔内溶解性圧縮成形剤およびその製造方法」に関する米国特許第5,576,014号ならびに「頬腔内崩壊性製剤およびその製造」に関する米国特許第5,446,464号が挙げられる。
【0011】
速溶解性技術を所有する他の会社としては、Janssen Pharmaceuticaが挙げられる。Janssenに付与された米国特許には、2種のポリペプチド(またはゼラチン)成分と1種の増量剤とを有する速溶解性錠剤が記載されている。これら2種の成分は、同符号の実効電荷を有し、第1の成分は第2の成分よりも水溶液に可溶性である。「速溶解性錠剤」に関する米国特許第5,807,576号;「速溶解性錠剤の製造方法」に関する米国特許第5,635,210号;「速溶解性錠剤製造用の微粒子状支持マトリックス」に関する米国特許第5,595,761号;「速溶解性錠剤製造用の微粒子状支持マトリックスの製造方法」に関する米国特許第5,587,180号;および「速溶解性製剤」に関する米国特許第5,776,491号を参照されたい。
【0012】
Eurand America, Inc.は、重炭酸ナトリウムと、クエン酸と、エチルセルロースと、の混合物を有する速溶解性発泡性組成物を対象とする米国特許(米国特許第5,639,475号および同第5,709,886号)を所有する。
【0013】
L.A.B. Pharmaceutical Researchは、発泡性の酸と発泡性の塩基との発泡性の対を有する発泡剤ベースの速溶解性製剤を対象とする米国特許(米国特許第5,807,578号および同第5,807,577号)を所有する。
【0014】
Schering Corporationは、活性薬剤と、賦形剤(界面活性剤であってもよい)または少なくとも1種のスクロース、ラクトース、もしくはソルビトールと、マグネシウムステアレートまたはナトリウムドデシルスルフェートのいずれか一方と、を有するバッカル錠剤に関する技術を保有する(米国特許第5,112,616号および同第5,073,374号)。
【0015】
Laboratoire L. LaFonは、二相のうちの少なくとも一方が界面活性剤を含有する水中油型エマルジョンを凍結乾燥させることにより作製される従来型製剤を対象とする技術を保有する(米国特許第4,616,047号)。このタイプの製剤では、活性成分は凍結懸濁状態で保持され、微粉化や圧縮を行うことなく錠剤化される。なぜなら、そのような加工を行うと、活性薬剤が損傷を受ける可能性があるからである。
【0016】
Takeda Chemicals Inc., Ltd.は、活性薬剤および湿潤可溶性炭水化物を圧縮成形して錠剤にしてから錠剤を乾燥させる速溶解性錠剤の製造方法を対象とする技術を保有する。
【0017】
最後に、Elan Pharma International Ltd.の米国特許第6,316,029号には、低溶解性ナノ微粒子状活性薬剤を含む速溶解性製剤が記載されている。この特許にプルランを含む製剤が教示されていないので、本発明は米国特許第6,316,029号の発明の改善である。
【0018】
B. プルランに関する背景
プルラン(CAS Reg. No. 9057-02-7)は、真菌アウレオバシジウム・プルランス(黒酵母、Aureobasidium pullulans)により排泄される細胞外多糖である。それは、アルファ-1,6-グルコシド結合により連結された反復マルトトリオース(すなわちグルコース単位)より主としてなるアルファ-D-グルカンである。この反復配列は階段型構造を形成する。ところどころに、マルトテトロース単位が、ポリマー全体にランダムに分布する。プルランの分子量は、生物の成長状態に依存して8,000〜2,000,000ダルトンの範囲である。プルランは、熱水および冷水に可溶であり、有機溶媒には一般に不溶である。プルランは、非吸湿性かつ非還元性であり;250〜280℃で分解する。
【0019】
プルランのグルコース単位は、化合物が粘性かつ酸素不透過性になるように重合されている。プルランの水溶液の粘度はプルランの分子量に比例する。水溶液は安定でありゲルを形成しない。プルランは、熱安定性、帯電防止性、かつ弾性の皮膜を容易に形成する。プルランは接着性を有し、湿分と共に加熱すれば直接圧縮可能である。Agency Response Letter GRAS Notice No. GRN 000099 (Aug. 1, 2002), http://vm.cfsan.fda.gov/~rdb/opa-g099.html;およびDictionary of Biology (Oxford University Press, 2000), http://www.xrefer.com/entry/463045を参照されたい。
【0020】
プルランは、接着材、食品包装材、および成形品に使用される。食品工業において、プルランは、増粘剤、結合剤、および食品成分として使用することができる。その物理特性のおかげで、それは、ラッピング材、パッケージング材、およびシーリング材として好適である。それはまた、ティーバッグにラミネートしたり、卵および卵製品の鮮度を保持するために使用したりすることもできる。他の用途では、プルランは、編織布、ペイント、化粧品、接着材、写真、タバコ製品などのような工業製品の材料として使用することができる。http://www.mardi.my/ver2/rangkaian_inovasi/fed_batch.html (2001)を参照されたい。
【0021】
Ozakiらに付与された「高プルラン含有製剤ならびにその調製および用途」に関する米国特許第5,518,902号には、250,000未満の平均分子量を有する高プルラン含有製剤が言及されている。製剤は、栄養培地の粘度を30cp未満のレベルに制御しながら10〜20w/v %のサッカリドを含有する栄養培地中でプルランを産生しうる微生物を連続培養することにより調製される。この参考文献には、さらに、粘度付与剤、コーティング剤、接着剤、成形品、食品、化粧品、医薬品、ならびに農業用、林業用、畜産業用、および製紙業用、さらには鉱工業用の材料のようなさまざまな領域で高プルラン含有製剤を有利に使用できることが開示されている。この参考文献には、プルランを含みかつ低摩損度を有する固形製剤は教示されていない。
【0022】
C. ナノ微粒子状組成物に関する背景
米国特許第5,145,684号(「'684特許」)に初めて記載されたナノ微粒子状組成物は、表面上に吸着された非架橋型表面安定化剤を有する低溶解性活性薬剤よりなる粒子である。'684特許には、そのようなナノ微粒子状組成物の作製方法も記載されている。ナノ微粒子状組成物が望ましい理由は、粒子サイズの減少およびその結果として生じる表面積の増加に伴って、組成物が投与後に迅速に溶解され吸収されることにある。'684特許には、プルランを含むナノ微粒子状組成物は教示も示唆もされていない。
【0023】
ナノ微粒子状組成物の作製方法については、たとえば、いずれも「医薬用物質の粉砕方法」に関する米国特許第5,518,187号および同第5,862,999号;「医薬用物質の連続粉砕方法」に関する米国特許第5,718,388号;ならびに「ナノ粒子を含有する治療用組成物の調製方法」に関する米国特許第5,510,118号に記載されている。
【0024】
また、ナノ微粒子状組成物については、たとえば、「殺菌時における粒子凝結を防止するためのイオン性曇点調整剤の使用」に関する米国特許第5,298,262号;「凍結乾燥時における粒子サイズ成長を減少させる方法」に関する同第5,302,401号;「メディカルイメージングに有用なX線造影組成物」に関する同第5,318,767号;「高分子量非イオン性界面活性剤を用いるナノ微粒子状X線血液プール造影剤用の新規な製剤」に関する同第5,326,552号;「ヨウ素化芳香族プロパンジオエートを用いるX線イメージング方法」に関する同第5,328,404号;「ナノ粒子凝結を減少させるための荷電リン脂質の使用」に関する同第5,336,507号;「粒子凝結を防止しかつ安定性を増大させるOlin 10-G含有製剤」に関する同第5,340,564号;「殺菌時におけるナノ微粒子凝結を最小限に抑えるための非イオン性曇点調整剤の使用」に関する同第5,346,702号;「微弱磁性デキストラン粒子の調製および磁気特性」に関する同第5,349,957号;「殺菌時における粒子凝結を防止するための精製された表面改質剤の使用」に関する同第5,352,459号;いずれも「表面改質された抗癌性ナノ粒子」に関する同第5,399,363号および同第5,494,683号;「核磁気共鳴増強剤としての水不溶性非磁性マンガン粒子」に関する同第5,401,492号;「ナノ微粒子状安定化剤としてのチロキサポールの使用」に関する同第5,429,824号;「高分子量非イオン性界面活性剤を用いるナノ微粒子状X線血液プール造影剤の作製方法」に関する同第5,447,710号;「メディカルイメージングに有用なX線造影組成物」に関する同第5,451,393号;「製薬上許容されるクレーと組み合わされた経口胃腸診断用X線造影剤を含む製剤」に関する同第5,466,440号;「凝結を減少させるための荷電リン脂質を含有するナノ粒子組成物の調製方法」に関する同第5,470,583号;「血液プールおよびリンパ系のイメージングのためのX線造影剤としてのナノ微粒子状診断用混合カルバミン酸無水物」に関する同第5,472,683号;「血液プールおよびリンパ系のイメージングのためのX線造影剤としてのナノ微粒子状診断用ダイマー」に関する同第5,500,204号;「ナノ微粒子
状NSAID製剤」に関する同第5,518,738号;「X線造影剤として使用するためのナノ微粒子状ヨージパミド(Iododipamide)誘導体」に関する同第5,521,218号;「血液プールおよびリンパ系のイメージングのためのナノ微粒子状診断用ジアトリゾキシエステルX線造影剤」に関する同第5,525,328号;「ナノ粒子を含有するX線造影組成物の調製方法」に関する同第5,543,133号;「表面改質されたNSAIDナノ粒子」に関する同第5,552,160号;「可消化性の油または脂肪酸中のナノ微粒子状ディスパージョンとしての化合物の製剤」に関する同第5,560,931号;「ナノ粒子用の表面改質剤としてのポリアルキレンブロックコポリマー」に関する同第5,565,188号;「ナノ粒子組成物用の安定化材コーティングとしての硫酸化非イオン性ブロックコポリマー界面活性剤」に関する同第5,569,448号;「可消化性の油または脂肪酸中のナノ微粒子状ディスパージョンとしての化合物の製剤」に関する同第5,571,536号;「血液プールおよびリンパ系イメージング法に関するX線造影剤としてのナノ微粒子状診断剤混合カルボン酸無水物(Anydrides)」に関する同第5,573,749号;「診断イメージング用X線造影剤」に関する同第5,573,750号;「保護オーバーコートを有する再分散性ナノ微粒子状フィルムマトリックス」に関する同第5,573,783号;「高分子量線状ポリ(エチレンオキシド)ポリマーにより安定化されたナノ粒子を用いるGI管内の部位特異的接着」に関する同第5,580,579号;「経口胃腸治療剤と製薬上許容されるクレーとの併用製剤」に関する同第5,585,108号;「ナノ微粒子状組成物用の安定化材コーティングとしてのブチレンオキシド-エチレンオキシドブロックコポリマー界面活性剤」に関する同第5,587,143号;「分散安定化剤としてのヒドロキシプロピルセルロースとミリングされたナプロキセン」に関する同第5,591,456号;「非イオン性およびアニオン性の安定化剤により安定化された新規なバリウム塩製剤」に関する同第5,593,657号;「ナノ結晶用の糖質ベースの界面活性剤」に関する同第5,622,938号;「経口胃腸診断用X線造影剤および経口胃腸治療剤の改善された製剤」に関する同
第5,628,981号;「血液プールおよびリンパ系のイメージングのためのX線造影剤としてのナノ微粒子状診断用混合無水炭酸」に関する同第5,643,552号;「医薬用物質の連続粉砕方法」に関する同第5,718,388号;「イブプロフェンのR(-)エナンチオマーを含有するナノ粒子」に関する同第5,718,919号;「ベクロメタゾンナノ粒子ディスパージョンを含有するエアロゾル剤」に関する同第5,747,001号;「静脈内に投与されたナノ微粒子状製剤により誘発される有害な生理学的反応の低減」に関する同第5,834,025号;「セルロース系表面安定化剤を用いるヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶性製剤」に関する同第6,045,829号;「セルロース系表面安定化剤を用いるヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶性製剤の作製方法」に関する同第6,068,858号;「ナノ微粒子状ナプロキセンの注射用製剤」に関する同第6,153,225号;「ナノ微粒子状ナプロキセンの新しい固形製剤」に関する同第6,165,506号;「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロテアーゼ阻害剤のナノ結晶性製剤を用いる哺乳動物の治療方法」に関する同第6,221,400号;「ナノ粒子ディスパージョンを含有する微細スプレー状エアロゾル剤」に関する同第6,264,922号;「ナノ粒子組成物中における結晶成長および粒子凝結を防止する方法」に関する同第6,267,989号;「ナノ微粒子状組成物用の表面安定化剤としてのPEG誘導体化脂質の使用」に関する同第6,270,806号;「速崩壊性固形経口製剤」に関する同第6,316,029号、「高分子表面安定化剤とジオクチルナトリウムスルホスクシネートとの相乗的併用を含む固形投与ナノ微粒子組成物」に関する同第6,375,986号;「カチオン性表面安定化剤を有する生体接着性ナノ微粒子状組成物」に関する同第6,428,814号;ならびに「上部および/または下部の胃腸管への標的化薬剤送達方法」に関する同第6,432,381号にも記載されている。これらはすべて、参照により明示的に組み入れられるものとする。このほか、2002年1月31日公開の「制御放出ナノ微粒子組成物」に関する米国特許出願第20020012675 A1号には、ナノ微粒子状組成物が記載され
ており、参照により明示的に組み入れられるものとする。
【0025】
アモルファス小粒子組成物については、たとえば、「微粒子状組成物および抗微生物剤としてのその使用」に関する米国特許第4,783,484号;「水不溶性有機化合物から均一サイズの粒子を作製する方法」に関する同第4,826,689号;「不溶性化合物から均一サイズの粒子を作製する方法」に関する同第4,997,454号;「気泡を内部に閉じ込めるための均一サイズの超微小非凝結性ポーラス粒子および方法」に関する同第5,741,522号;ならびに「超音波後方散乱を増強するための超微小ポーラス粒子」に関する同第5,776,496号に記載されている。これらの参考文献はいずれも、プルランを含むナノ微粒子状ファーストメルト組成物に関するものではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
低摩損度を有する改善された固形製剤が、当技術分野で必要とされている。本発明はこの必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0027】
発明の概要
本発明は、プルランを含みかつ約1%以下の著しく低い摩損度を有する活性薬剤の新しい固形製剤の驚くべきかつ予想外の発見に関する。追加の製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。本発明は、制御放出製剤、ファーストメルト製剤、エアロゾル製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ剤、カプセル剤、散剤などのようなすべての固形製剤を包含する。
【0028】
本発明の第1の実施形態では、活性薬剤は、ミクロンサイズの活性薬剤である。これは、活性薬剤が約2ミクロン超の有効平均粒子サイズを有することを意味する。ミクロンサイズの活性薬剤は、水溶性であっても低水溶性であってもよい。
【0029】
第2の実施形態では、活性薬剤は、ナノ微粒子状粒子サイズを有する。これは、活性薬剤が、固形製剤に製剤される前に約2ミクロン以下の有効平均粒子サイズを有することを意味する。ナノ微粒子状活性薬剤は、水溶性であっても低水溶性であってもよい。ナノ微粒子状活性薬剤が水溶性である場合、複合体化または他の製薬上許容される手段により低水溶性にすることが可能である。このほか、ナノ微粒子状活性薬剤は、活性薬剤の表面上に吸着された1種以上の表面安定化剤を有しうる。
【0030】
第3の実施形態では、本発明は、高毒性および/または高奏効性(highly potent property)を有する活性薬剤の固形製剤を包含する。
【0031】
第4の実施形態では、固形製剤は製薬上許容される糖質を追加的に含む。この実施形態に係る固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである少なくとも1種の活性薬剤と;(3)1種以上の製薬上許容される糖質と、を含む。活性薬剤が、製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、ナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着された1種以上の表面安定化剤を含みうる。
【0032】
第5の実施形態では、固形製剤は可塑剤を追加的に含む。この実施形態に係る固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである少なくとも1種の活性薬剤と;(3)1種以上の製薬上許容される可塑剤と、を含む。このほか、固形製剤は1種以上の製薬上許容される糖質をも含みうる。活性薬剤が、製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、ナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着された1種以上の表面安定化剤を含みうる。
【0033】
第6の実施形態では、固形製剤はファーストメルト固形製剤である。ファーストメルト固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである活性薬剤と、を含む。固形製剤は、(3)1種以上の製薬上許容される糖質および/または(4)1種以上の製薬上許容される可塑剤をも含みうる。追加の製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。活性薬剤が、製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、少なくとも1種の表面安定化剤を含みうる。そのようなファーストメルト固形製剤では、活性薬剤を取り囲む固形投与マトリックスが唾液に接触したときに崩壊または溶解することにより、活性薬剤の吸収をもたらす。本発明に係るそのような速崩壊性または速溶解性の固形製剤は、治療活性の予想外に迅速な出現と、約4分以下での製剤の実質的に完全な崩壊または溶解と、きわめて低い摩損度と、を提供する。
【0034】
最も驚くべきことは、本発明のファーストメルト固形製剤が非常に低い摩損度を有するという発見である。先行技術のファーストメルト固形製剤は高摩損度を有することに起因して追加の製造コストおよび包装コストがかさむので、このことは重要である。
【0035】
本発明の第7の実施形態では、本発明の固形製剤の調製方法が提供される。本方法は、(1)活性薬剤組成物を提供することと、ここで、活性薬剤はミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである;(2)プルランと活性薬剤組成物とを組み合わせることと;(3)製薬上許容される方法を利用して約1%以下の摩損度を有する固形製剤を形成することと;を含む。本方法は、(1)1種以上の表面安定化剤(活性薬剤が、製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合);(2)1種以上の製薬上許容される糖質;および/または(3)1種以上の製薬上許容される可塑剤を添加することを追加的に含みうる。追加の製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。
【0036】
本発明の第8の実施形態では、本発明に係るプルラン含有固形製剤を用いて被験者(哺乳動物またはヒト含む)を治療する方法が提供される。
【0037】
当然のことながら、以上の一般的な説明および以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ解説的なものであり、特許請求された本発明のさらなる説明を提供することを意図したものである。他の目的、利点、および新規な特徴は、本発明の以下の詳細な説明から当業者に自明なものとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
発明の詳細な説明
A. 固形製剤
本発明は、プルランを含みかつ著しく低い摩損度を有する活性薬剤の新しい固形製剤の驚くべきかつ予想外の発見に関する。本発明の製剤は、(1)プルランと、(2)固形製剤に組み込まれる前にミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである1種以上の活性薬剤と、を含む。本発明は、制御放出製剤、ファーストメルト製剤、エアロゾル製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ剤、カプセル剤、散剤など(ただし、これらに限定されるものではない)をはじめとするすべての固形製剤を包含する。要するに、本発明の固形製剤は、任意の製薬上許容される固形製剤でありうる。
【0039】
好ましい実施形態では、固形製剤は、迅速に崩壊または溶解する製剤すなわちファーストメルト製剤である。
【0040】
先行技術の固形製剤が抱える問題点の1つは、製剤が高摩損度を呈することが多い点であった。摩損度は、固形製剤の物理的パラメーターであり;基本的には、製剤の「ロバスト性(堅牢性、robustness)」に関連付けられる。高摩損度を有する製剤は、迅速に溶解または崩壊するであろう。しかしながら、最適な固形製剤は、迅速に溶解または崩壊しかつ低レベルの摩損度を有するであろう。本発明は、望ましい特性のこの組合せを提供する。特定的には、本発明のプルラン含有固形製剤は、驚くほど迅速な崩壊および溶解のプロファイルを有し、いくつかの錠剤は数秒間で溶解する(以下の実施例を参照されたい)。さらに驚くべきことは、上述した錠剤が約1%以下の摩損度を有することである。このことは、錠剤が米国薬局方の錠剤摩損度規格(1%以下の摩損度が要求される)を満たすことを意味する。
【0041】
つまり、本発明の固形製剤は、好ましくは、約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、または約0.2%以下の摩損度を有する。
【0042】
「ナノ微粒子」は、固形製剤に組み込まれる前に約2ミクロン以下の有効平均粒子サイズを有する活性薬剤として定義され、そして「ミクロンサイズ」は、固形製剤に組み込まれる前に約2ミクロン超の有効平均粒子サイズを有するものとして定義される。
【0043】
ミクロンサイズの活性薬剤は、水溶性であっても低水溶性であってもよい。さらに、ナノ微粒子状活性薬剤は、水溶性であっても低水溶性であってもよい。ナノ微粒子状活性薬剤が水溶性である場合、所望により、たとえば、活性薬剤を非可溶性化合物と複合体化させるかまたは任意の他の製薬上許容される手段を利用することにより、低水溶性にすることが可能である。「低溶解性」とは、周囲温度および周囲圧力における水への活性薬剤の溶解度が約30mg/ml以下、約10mg/ml以下、または約1mg/ml以下であることを意味する。
【0044】
活性薬剤が、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤は、固形製剤中に活性薬剤を組み込む前に活性薬剤の表面に吸着される1種以上の表面安定化剤を追加的に含みうる。
【0045】
本発明の一実施形態では、固形製剤は製薬上許容される糖質を追加的に含む。この実施形態に係る固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである少なくとも1種の活性薬剤と;(3)1種以上の製薬上許容される糖質と、を含む。活性薬剤が、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着される1種以上の表面安定化剤を含みうる。例示的な有用な製薬上許容される糖質は、以下に提供されている。
【0046】
他の実施形態では、固形製剤は可塑剤を追加的に含む。この実施形態に係る固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである少なくとも1種の活性薬剤と;(3)1種以上の製薬上許容される可塑剤、を含む。このほか、固形製剤は1種以上の製薬上許容される糖質をも含みうる。活性薬剤が、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着される1種以上の表面安定化剤を含みうる。例示的な有用な製薬上許容される可塑剤は、以下に提供されている。
【0047】
本発明の固形製剤は、活性薬剤の不快な味をマスキングするように製剤化することができる。そのような味マスキングは、たとえば、1種以上の甘味賦形剤を添加することにより、活性薬剤を甘味賦形剤でコーティングすることにより、および/または活性薬剤とプルランとを含む製剤を甘味賦形剤でコーティングすることにより、達成することができる。
【0048】
本発明の他の実施形態は、高い毒性または奏効性を有する活性薬剤の固形製剤を包含する。高毒性化合物には、細胞傷害性、催奇形性、突然変異誘発性、免疫抑制性であること、もしくは負の薬理効果を有することが知られている化合物、またはそのように考えられる化合物が包含される。奏効性を有する化合物は、通常のヒト被験者において約10mg以下の用量で薬理効果を生じる化合物である。この実施形態に係る固形製剤は、(1)プルラン、(2)高い毒性および/もしくは奏効性を有する1種以上の活性薬剤(ここで、活性薬剤は、ミクロンサイズもしくはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性もしくは低水溶性のいずれかである)、場合により(3)製剤中に活性薬剤を組み込む前にナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着される1種以上の表面安定化剤、(4)1種以上の製薬上許容される糖質、ならびに/または(5)1種以上の製薬上許容される可塑剤を含む。
【0049】
たとえば高い奏効性および/または毒性の活性薬剤を含む本発明の固形製剤は、無塵プロセスで作製することができる。固形製剤を作製する従来の方法は本質的に固形製剤の材料のダストまたは微粉末を生じるので、このことは重要である。そのような材料が、高い毒性または奏効性を有する活性薬剤を含む場合、格納装置と共に、広範かつ高価な安全手順が必要となる。本発明の一方法に従って作製される固形製剤では、この問題が回避される。本方法は、(1)活性薬剤の分散液または溶液を提供することと、ここで、活性薬剤は、ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである;(2)プルランを含む溶液を提供することと;(3)プルラン溶液と活性薬剤分散液または溶液を組み合わせることと;(4)凍結乾燥のような任意の製薬上許容される方法により分散液/溶液または溶液/溶液の混合物を固形製剤に製剤化することと;を含む。この方法は単純で効率的であり、ほとんど任意の活性薬剤に適合化させることができる。このおかげで、本方法は、臨床試験(または任意の他の目的)に供される錠剤を作製するのにとくに有用なものとなる。
【0050】
さらに他の実施形態では、固形製剤はファーストメルト固形製剤である。速溶製剤、ファーストメルト製剤またはラピッドメルト(rapid melt)製剤、および即溶解性製剤としても知られる速崩壊性または速溶解性の製剤は、咀嚼したり水を必要としたりすることなく、短時間内で患者の口内で迅速に溶解または崩壊する。ファーストメルト固形製剤は、(1)プルランと、(2)ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである少なくとも1種の活性薬剤と、を含む。固形製剤は、(3)1種以上の製薬上許容される糖質および/または(4)1種以上の製薬上許容される可塑剤をも含みうる。追加の製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。活性薬剤が、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、固形製剤はまた、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着される少なくとも1種の表面安定化剤を含みうる。固形製剤は、治療活性の予想外に迅速な出現と、約4分以下での製剤の実質的に完全な崩壊または溶解と、きわめて低い摩損度と、を有する。
【0051】
本発明のファーストメルト固形製剤では、活性薬剤を取り囲む固形投与マトリックスが唾液に接触したときに崩壊または溶解することにより、活性薬剤の吸収をもたらすようになる。したがって、本発明に係るそのような速崩壊性または速溶解性の固形製剤は、(1)迅速な崩壊の結果としての活性薬剤の急速な提示と、(2)口腔内における活性薬剤の急速な溶解(とくに、活性薬剤がナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合)と、(3)劇的に改善された製造コストおよび包装コストをもたらす固形製剤の低摩損度と、を提供する。
【0052】
本発明に係るファーストメルト固形製剤は、水性媒体に添加したときに約4分以下の崩壊時間を有する。本発明の他の実施形態では、ファーストメルト固形製剤は、水性媒体に添加したときに、約3.5分以下、約3分以下、約2.5分以下、約2分以下、約90秒以下、約60秒以下、約45秒以下、約30秒以下、約20秒以下、約15秒以下、約10秒以下、または約5秒以下の崩壊時間または溶解時間を有する。
【0053】
最も驚くべきことは、本発明のファーストメルト固形製剤が非常に低い摩損度を有するという発見である。先行技術のファーストメルト固形製剤は高摩損レベルを有することに起因して追加の製造コストおよび包装コストがかさむので、このことは重要である。たとえば、伝統的なブリスター包装は、高摩損レベルを有する固形製剤に利用することができない。なぜなら、消費者が密封区画(典型的にはフォイルシーラーにより密封されている)から製剤を「押し出す」ときに、そのような製剤は粉末に崩壊するであろう。さらに、高摩損レベルを有する固形製剤を製造する際、材料は、より大きなパーセントで、廃物として、たとえば、破壊または崩壊された錠剤として失われる。最後に、高摩損レベルでは偶然の暴露の危険性が増大されるので、固形製剤中の活性薬剤の毒性または奏効性が高い場合、高摩損レベルを有する錠剤は製造時に問題となる可能性がある。
【0054】
迅速な崩壊と迅速な溶解と低摩損度とのこの組合せにより、活性薬剤の既知の速溶解性製剤に関連付けられる治療作用の出現の遅れが低減される。さらに、本発明を用いれば、活性薬剤の頬腔内吸収の可能性が強化される。本発明の固形製剤のさらに他の利点は、ナノ微粒子状活性薬剤粒子の使用により、低溶解性薬剤の先行技術のファーストメルト製剤で見いだされるザラザラした感触が除去または最小化されることである。
【0055】
投与が容易であることから、ファーストメルト固形製剤は、とくに、小児、老人、および嚥下障害の患者の特定のニーズを満たすのに有用である。ファーストメルト固形製剤は、投与が容易であり、便利であり、しかも患者にやさしい特性を有するので、有益でありうる。集団の35%〜50%(とくに小児患者および老人患者)は錠剤および硬ゼラチンカプセル剤を飲み込むことが困難であると推定される。ファーストメルト固形製剤を用いれば、錠剤またはカプセルを飲み込む必要性は回避される。さらに、ファーストメルト固形製剤では、水の添加も咀嚼も必要とされない。
【0056】
ファーストメルト固形製剤に関連付けられる利点の1つは、典型的には、用量の投与と活性薬剤の物理的提示とのタイムラグが低減されることである。この遅延時間は、通常、製剤の破損およびその後の活性薬剤の分配に関連する。ファーストメルト固形製剤の第2の利点は、投与時に口内で活性薬剤が迅速に提示されて活性薬剤の頬腔内吸収による血流中への直接的な取込みが促進されるので、単位用量の活性薬剤の全生物学的利用能に及ぼす肝臓の初回通過作用が低減されることである。活性薬剤がナノ微粒子サイズであれば口腔内での迅速な溶解が可能になるので、この第2の利点は、ナノ微粒子状活性薬剤を含む本発明のファーストメルト固形製剤では劇的に増大される。
【0057】
1. 活性薬剤
活性薬剤は、実質的に1種の光学的に純粋なエナンチオマーの形態でまたはエナンチオマーのラセミ混合物もしくは他の混合物として、存在しうる。さらに、活性薬剤は、個別の結晶相として、アモルファス相、半結晶性相、半アモルファス相、またはそれらの組合せとして存在する。活性薬剤は、ミクロンサイズの粒子サイズまたはナノ微粒子状の粒子サイズを有しうる。さらに、活性薬剤は、水溶性または低水溶性のいずれかである。
【0058】
治療剤または診断剤になりうる例示的な活性薬剤をまとめて「薬剤」と記す。治療剤は、タンパク質、ペプチド、およびヌクレオチドのような生物学的製剤を含む医薬剤、またはX線造影剤などの造影剤を含む診断剤でありうる。
【0059】
活性薬剤は、さまざまな公知のクラスの薬剤、具体的には、たとえば、COX-2阻害剤、レチノイド類、抗癌剤、NSAID類、タンパク質類、ペプチド類、ヌクレオチド類、抗肥満剤、栄養補助剤、コルチコステロイド類、エラスターゼ阻害剤、鎮痛剤、抗真菌剤、腫瘍治療剤、鎮吐剤、鎮痛剤、心臓血管剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質(ペニシリンを含む)、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、抗癲癇剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤(たとえば催眠剤および神経抑制剤)、収斂剤、β-アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤および血液代用剤、心臓変力剤、造影剤、コルチコステロイド類、鎮咳剤(去痰剤および粘液溶解剤)、診断剤、診断イメージング剤、利尿剤、ドーパミン作動剤(抗パーキンソン病剤)、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、副交感神経作動剤、上皮小体カルシトニンおよびビホスホネート類、プロスタグランジ類、放射性医薬品、性ホルモン類(ステロイド類を含む)、抗アレルギー剤、刺激剤および食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺剤、血管拡張剤、キサンチン類、アルファ-ヒドロキシ製剤、嚢胞性繊維症治療剤、喘息治療剤、気腫治療剤、呼吸促迫症候群治療剤、慢性気管支炎治療剤、慢性閉塞性肺疾患治療剤、臓器移植拒絶治療剤、結核および肺の他の感染症の治療剤、ならびに後天性免疫不全症候群に関連付けられる呼吸器疾病治療剤から選択可能である。
【0060】
例示的な栄養補助剤および食品サプリメントは、たとえば、Roberts et al., Nutraceuticals: The Complete Encyclopedia of Supplements, Herbs, Vitamins, and Healing Foods (American Nutraceutical Association, 2001)に開示されている。それは参照により明示的に組み入れられるものとする。フィトケミカルまたは機能性食品としても知られる栄養補助剤または食品サプリメントは、一般的には、食品サプリメント、ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類、または生体に対して医療効果もしくは医薬効果を有するヒーリング食品よりなるクラスのうちの任意の1つである。例示的な栄養補助剤または食品サプリメントとしては、葉酸、脂肪酸類(たとえば、DHAおよびARA)、果実および植物の抽出物、ビタミンおよびミネラルサプリメント、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、グルコサミン/コンドロイチン、アロエベラ、ググル、グルタミン、アミノ酸類(たとえば、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン(phenylanine)、トレオニン、トリプトファン、およびバリン)、緑茶、リコペン、自然食品、食品添加剤、ハーブ類、植物性栄養素、抗酸化剤、果実のフラボノイド成分、マツヨイグサ油、アマニン、魚油および海産動物油、およびプロバイオティックスが挙げられるが、これらに限定されるものではない。栄養補助剤および食品サプリメントにはまた、所望の特性を有するように遺伝子工学的に処理された生物工学的食品も包含される。これはまた、「ファーマフード(pharmafoods)」としても知られる。
【0061】
活性薬剤は、市販されている、かつ/または当技術分野で公知の方法により調製することができる。
【0062】
2. ナノ微粒子状活性薬剤用の表面安定化剤
活性薬剤が、固形製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合、活性薬剤は、ナノ微粒子状活性薬剤の表面に吸着された1種以上の表面安定化剤を含みうる。
【0063】
本発明に有用な表面安定化剤は、ナノ微粒子状活性薬剤の表面に物理的に接着するが、活性薬剤粒子またはそれ自体と化学反応することはない。表面安定化剤の個別吸着分子は、分子間架橋を本質的に含まない。
【0064】
例示的な有用な表面安定化剤としては、公知の有機および無機の医薬賦形剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。そのような賦形剤としては、種々のポリマー、低分子量オリゴマー、天然物、および界面活性剤が挙げられる。好ましい表面安定化剤としては、ノニオン性界面活性剤およびイオン性界面活性剤(アニオン性およびカチオン性の界面活性剤を含む)が挙げられる。2種以上の表面安定化剤の組合せを本発明に使用することができる。
【0065】
表面安定化剤の代表例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドンとビニルアセテートとのランダムコポリマー類、ナトリウムラウリルスルフェート、ジオクチルスルホスクシネート、ゼラチン、カゼイン、レシチン(ホスファチド類)、デキストラン、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ベンザルコニウムクロリド、カルシウムステアレート、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類(たとえば、セトマクロゴール1000のようなマクロゴールエーテル類)、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(たとえば、Tween 20(登録商標)およびTween 80(登録商標)(ICI Speciality Chemicals)のような市販のTween(登録商標)類);ポリエチレングリコール類(たとえば、Carbowaxs 3550(登録商標)および934(登録商標)(Union Carbide))、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート類、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールとエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても知られる)、ポロキサマー類(たとえば、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのブロックコポリマーであるPluronic F68(登録商標)およびF108(登録商標));ポロキサミン類(たとえば、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドをエチレンジアミンに逐次付加させることにより誘導される四官能性ブロックコポリマーであるPoloxamine 908(登録商標)としても知られるTetronic 908(登録商標)(BASF Wyandotte Corporation, Pa
rsippany, N.J.));Tetronic 1508(登録商標)(T-1508)(BASF Wyandotte Corporation)、アルキルアリールポリエーテルスルホネートであるTritons X-200(登録商標))( Dow);スクロースステアレートとスクロースジステアレートとの混合物であるCrodestas F-110(登録商標)(Croda Inc.);Olin-lOG(登録商標)またはSurfactant 10-G(登録商標)としても知られるp-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)(Olin Chemicals, Stamford, CT);Crodestas SL-40(登録商標)(Croda, Inc.);およびC18H37CH2C(O)N(CH3)-CH2(CHOH)4(CH20H)2であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド;n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド;n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-ノニルβ-D-グルコピラノシド(n-noyl β-D-glucopyranoside);オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;PEG-リン脂質、PEG-コレステロール、PEG-コレステロール誘導体、PEG-ビタミンA、PEG-ビタミンE、リゾチームなどが挙げられる。
【0066】
有用なカチオン性表面安定化剤の例としては、ポリマー類、バイオポリマー類、多糖類、セルロース系物質、アルギネート類、リン脂質類、および非高分子化合物類、たとえば、双性イオン性安定化剤、ポリ-n-メチルピリジニウム、アントリルピリジニウムクロリド(anthryul pyridinium chloride)、カチオン性リン脂質類、キトサン、ポリリシン、ポリビニルイミダゾール、ポリブレン、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド(PMMTMABr)、ヘキシルデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HDMAB)、およびポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェートが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0067】
他の有用なカチオン性安定化剤としては、カチオン性脂質類、スルホニウム、ホスホニウム、および第四級アンモニウム化合物類、たとえば、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリドまたはブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリドまたはブロミド)、N-アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14〜18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハリド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩およびジアルキル-ジメチルアンモニウム塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩および/またはエトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリドおよびドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12, C15, C17トリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド類、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニド類、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド(ALIQUAT 336TM)、POLYQUAT 10TM、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル類(たとえば、脂肪酸類のコリンエステル類)、ベンザルコニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド化合物類(たとえば、ステアリルトリモニウムクロリドおよびジ-ステアリルジモニウムクロリド)、セチルピリジニウムブロミドまたはクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミン類のハロゲン化物塩類、MIRAPOLTMおよびALKAQUATTM(Alkaril Chemical Company)、アルキルピリジニウム塩類;アミン類、たとえば、アルキルアミン類、ジアルキルアミン類、アルカノールアミン類、ポリエチレンポリアミン類、N,N-ジアルキルアミノアルキルアクリレート類、およびビニルピリジン、アミン塩類、たとえば、ラウリルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アルキルピリジニウム塩、およびアルキルイミダゾリウム塩、ならびにアミンオキシド類;イミドアゾリニウム塩類;プロトン化第四級アクリルアミド類;メチル化第四級ポリマー類、たとえば、ポリ[ジアリルジメチルアンモニウムクロリド]およびポリ-[N-メチルビニルピリジニウムクロリド];ならびにカチオン性グアーが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0068】
そのような例示的なカチオン性表面安定化剤および他の有用なカチオン性表面安定化剤については、J. Cross and E. Singer, Cationic Surfactants: Analytical and Biological Evaluation (Marcel Dekker, 1994); P. and D. Rubingh (Editor), Cationic Surfactants: Physical Chemistry (Marcel Dekker, 1991);およびJ. Richmond, Cationic Surfactants: Organic Chemistry, (Marcel Dekker, 1990)に記載されている。
【0069】
とくに好ましい非高分子の主要な安定化剤は、任意の非高分子化合物、たとえば、ベンザルコニウムクロリド、カルボニウム化合物、ホスホニウム化合物、オキソニウム化合物、ハロニウム化合物、カチオン性有機金属化合物、第四級リン化合物、ピリジニウム化合物、アニリニウム化合物、アンモニウム化合物、ヒドロキシルアンモニウム化合物、第一級アンモニウム化合物、第二級アンモニウム化合物、第三級アンモニウム化合物、および式NR1R2R3R4(+)で示される第四級アンモニウム化合物である。式NR1R2R3R4(+)で示される化合物の場合、
(i)R1〜R4がいずれもCH3でないか;
(ii)R1〜R4のうちの1つがCH3であるか;
(iii)R1〜R4のうちの3つがCH3であるか;
(iv)R1〜R4がすべてCH3であるか;
(v)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、R1〜R4のうちの1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4のうちの1つが7個以下の炭素原子のアルキル鎖であるか;
(vi)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、R1〜R4のうちの1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4のうちの1つが19個以上の炭素原子のアルキル鎖であるか;
(vii)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、かつR1〜R4のうちの1つがC6H5(CH2)n基(ここでn>1)であるか;
(viii)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、R1〜R4のうちの1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4のうちの1つが少なくとも1個のヘテロ原子を含むか;
(ix)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、R1〜R4のうちの1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4のうちの1つが少なくとも1個のハロゲンを含むか;
(x)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、R1〜R4のうちの1つがC6H5CH2であり、かつR1〜R4のうちの1つが少なくとも1個の環状フラグメントを含むか;
(xi)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、かつR1〜R4のうちの1つがフェニル環であるか;
または
(xii)R1〜R4のうちの2つがCH3であり、かつR1〜R4のうちの2つが純粋脂肪族フラグメントである。
【0070】
そのような化合物としては、ベヘナルコニウムクロリド、ベンゼトニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ベヘントリモニウムクロリド、ラウラルコニウムクロリド、セタルコニウムクロリド、セトリモニウムブロミド、セトリモニウムクロリド、セチルアミンヒドロフルオリド、クロロアリルメテナミンクロリド(クアテルニウム-15)、ジステアリルジモニウムクロリド(クアテルニウム-5)、ドデシルジメチルエチルベンジルアンモニウムクロリド(クアテルニウム-14)、クアテルニウム-22、クアテルニウム-26、クアテルニウム-18ヘクトライト、ジメチルアミノエチルクロリドヒドロクロリド、システインヒドロクロリド、ジエタノールアンモニウムPOE(10)オレイルエーテルホスフェート、ジエタノールアンモニウムPOE(3)オレイルエーテルホスフェート、獣脂アルコニウムクロリド、ジメチルジオクタデシルアンモニウムベントナイト、ステアラルコニウムクロリド、ドミフェンブロミド、デナトニウムベンゾエート、ミリスタルコニウムクロリド、ラウルトリモニウムクロリド、エチレンジアミンジヒドロクロリド、グアニジンヒドロクロリド、ピリドキシンHCl、イオフェタミンヒドロクロリド、メグルミンヒドロクロリド、メチルベンゼトニウムクロリド、ミルトリモニウムブロミド、オレイルトリモニウムクロリド、ポリクアテルニウム-1、プロカインヒドロクロリド、ココベタイン、ステアラルコニウムベントナイト、ステアラルコニウムヘクトナイト、ステアリルトリヒドロキシエチルプロピレンジアミンジヒドロフルオリド、獣脂トリモニウムクロリド、およびヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
これらの表面安定化剤のほとんどは、公知の医薬賦形剤であり、American Pharmaceutical AssociationとPharmaceutical Society of Great Britain とにより共同出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients(Pharmaceutical Press, 2000)に詳細に記載されている。これは参照により明示的に組み入れられるものとする。表面安定化剤は、市販されている、かつ/または当技術分野で公知の方法により調製することができる。
【0072】
3. プルラン
プルラン(CAS Reg. No. 9057-02-7)は、真菌Aureobasidium pullulansにより排泄される細胞外線状ホモ多糖である。それは、アルファ-1,6-グルコシド結合により連結された反復マルトトリオース(すなわちグルコース単位)より主としてなるアルファ-D-グルカンであり、次の構造を有する。
【化1】

【0073】
プルランのユニークな連結パターンにより、特有な物理特性が化合物に付与される。プルランは接着性を有しており、繊維、圧縮成形品、および強靭な酸素不透過性フィルムを形成するために使用することができる。プルランは、その溶解性を制御したりまたは反応性基を提供したりすべく容易に誘導体化される。したがって、プルランおよびその誘導体は、多くの食品用途、医薬用途、および工業用途に利用できる可能性がある。
【0074】
プルランについては、たとえば、Jakovljevi et al., "Fine Structural Analysis of the Fungal Polysaccharide Pullulan Elaborated by Aureobasidium pullulans, CH-1 Strain," J. Serb. Chem. Soc., 66(6):377-383 (2001); Agency Response Letter GRAS Notice No. GRN 000099 (Aug. 1, 2002), http://vm.cfsan.fda.gov/~rdb/opa-g099.html;およびthe Dictionary of Biology (Oxford University Press, 2000), http://www.xrefer.com/entry/463045に記載されている。それらは参照により明示的に組み入れられるものとする。
【0075】
4. 製薬上許容される糖質類
任意の製薬上許容される糖質を本発明の固形製剤に利用することができる。例示的な製薬上許容される糖質としては、スクロース、キシリトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、マンノース、フルクトース、およびトレハロースが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
5. 製薬上許容される可塑剤
任意の製薬上許容される可塑剤を本発明の固形製剤に利用することができる。例示的な製薬上許容される可塑剤としては、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、およびソルビトールが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
6. 他の医薬賦形剤
本発明に係る固形製剤は、1種以上の結合剤、充填剤、滑沢剤、懸濁化剤、甘味剤、香味剤、保存剤、緩衝剤、湿潤剤、崩壊剤、発泡剤、および他の賦形剤をも含有しうる。そのような賦形剤は当技術分野で公知である。
【0078】
充填剤の例は、ラクトース一水和物、無水ラクトース、および種々のデンプンであり;結合剤の例は、種々のセルロースおよび架橋型ポリビニルピロリドン、微結晶性セルロース、たとえば、Avicel(登録商標) PH101およびAvicel(登録商標) PH102、微結晶性セルロース、ならびにケイ化微結晶性セルロース(silicifized microcrystalline cellulose)(SMCC)である。
【0079】
圧縮される粉末の流動性に影響を及ぼす物質を包含する好適な滑沢剤は、コロイド二酸化ケイ素、たとえばAerosil(登録商標) 200;タルク、ステアリン酸、マグネシウムステアレート、カルシウムステアレート、およびシリカゲルである。
【0080】
甘味剤の例は、スクロース、キシリトール、ナトリウムサッカリン、シクラメート、アスパルテーム、およびアクスルフェーム(acsulfame)のような任意の天然または人工の甘味剤である。香味剤の例は、Magnasweet(登録商標)(MAFCOの商標)、風船ガム香味剤、および果実香味剤などである。
【0081】
保存剤の例は、カリウムソルベート、メチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸およびその塩類、ブチルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸の他のエステル類、エチルアルコールまたはベンジルアルコールのようなアルコール類、フェノールのようなフェノール系化合物類、またはベンザルコニウムクロリドのような第四級化合物類である。
【0082】
好適な希釈剤としては、製薬上許容される不活性充填剤、たとえば、微結晶性セルロース、ラクトース、第二リン酸カルシウム、糖類、および/または以上のいずれかの混合物が挙げられる。希釈剤の例としては、微結晶性セルロース、たとえば、Avicel(登録商標) PH101およびAvicel(登録商標) PH102;ラクトース、たとえば、ラクトース一水和物、無水ラクトース、およびPharmatose(登録商標) DCL21;第二リン酸カルシウム、たとえば、Emcompress(登録商標);マンニトール;デンプン;ソルビトール;スクロース;ならびにグルコースが挙げられる。
【0083】
好適な崩壊剤としては、弱架橋型ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプンおよび変性デンプン類、クロスカルメロースナトリウム、クロス-ポビドン、ナトリウムデンプングリコレート、ならびにそれらの混合物が挙げられる。
【0084】
発泡剤の例は、発泡性対、たとえば、有機酸と炭酸塩または重炭酸塩との対である。好適な有機酸としては、たとえば、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、コハク酸、およびアルギン酸、ならびにそれらの無水物および酸塩が挙げられる。好適な炭酸塩および重炭酸塩としては、たとえば、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、重炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、ナトリウムグリシンカーボネート、L-リシンカーボネート、およびアルギニンカーボネートが挙げられる。他の選択肢として、発泡性対の酸成分だけを存在させてもよい。
【0085】
7. 活性薬剤の粒子サイズ
本明細書中で使用する場合、粒子サイズは、当業者に周知の従来の粒子サイズ測定法により測定される重量平均粒子サイズに基づいて決定される。そのような方法としては、たとえば、沈降場流動分画法、光子相関分光法、光散乱法、およびディスク遠心分離法が挙げられる。
【0086】
「ミクロンサイズの活性薬剤」の場合、「約2ミクロン超の有効平均粒子サイズ」とは、以上の方法により測定したときに重量分布(粒子サイズの関数としての重量分率)の平均値が約2ミクロン超であることを意味する。本発明によれば、活性薬剤粒子の少なくとも約50%、約70%、約90%、または約95%は、有効平均値超すなわち約2ミクロン超の平均粒子サイズを有することができる。
【0087】
「ナノ微粒子状の活性薬剤」の場合、「約2ミクロン以下の有効平均粒子サイズ」とは、上記の方法により測定したときに、活性薬剤粒子の少なくとも50重量%が有効平均値以下すなわち約2000nm以下、1900nm、1800nmなどの粒子サイズを有することを意味する。本発明の他の実施形態では、活性薬剤粒子の少なくとも約70%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%は、有効平均値以下すなわち約2000nm以下、1900nm、1800nmなどの粒子サイズを有する。
【0088】
さらに、本発明の他の実施形態では、ナノ微粒子状活性薬剤粒子の有効平均粒子サイズは、約1900nm以下、約1800nm以下、約1700nm以下、約1600nm以下、約1500nm以下、約1400nm以下、約1300nm以下、約1200nm以下、約1100nm以下、約1000nm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約75nm以下、または約50nm以下でありうる。
【0089】
本発明において、ナノ微粒子状活性薬剤組成物のD50の値は、重量基準で活性薬剤粒子の50%がその値以下になるときの粒子サイズである。同様に、D90およびD99は、それぞれ重量基準で活性薬剤粒子の90%および99%がその値以下になるときの粒子サイズである。
【0090】
8. 活性薬剤、プルラン、表面安定化剤、糖質、および可塑剤の濃度
少なくとも1種の活性薬剤およびプルランの相対量は、大幅に変化しうる。さらに、固形製剤が1種以上の表面安定化剤を含む場合、表面安定化剤の最適量は、たとえば、選択される特定の活性薬剤、活性薬剤の等価親水性親油性バランス(HLB)、表面安定化剤の融点、曇点、および水への溶解度、ならびに安定化剤の水溶液の表面張力などに依存しうる。活性薬剤またはその製薬上許容される塩は、治療効果を引き起こすのに十分な任意の量で存在しうる。
【0091】
少なくとも1種の活性薬剤の濃度は、乾燥組成物の全重量を基準にして約99.9重量%から約0.01重量%まで変化しうる。
【0092】
1種以上の表面安定化剤の存在下では、少なくとも1種の活性薬剤の濃度は、少なくとも1種の活性薬剤と少なくとも1種の表面安定化剤(他の賦形剤は含めない)との全合計重量を基準にして、約99.5重量%から約0.001重量%まで、約95重量%から約0.1重量%まで、または約90重量%から約0.5重量%まで変化しうる。
【0093】
少なくとも1種の表面安定化剤の濃度は、少なくとも1種の活性薬剤と少なくとも1種の表面安定化剤(他の賦形剤は含めない)との全合計乾燥重量を基準にして、約0.0001重量%から約99.9重量%まで、約5重量%から約90重量%まで、および約10重量%から約70重量%まで変化しうる。
【0094】
プルランの濃度は、乾燥組成物の全重量を基準にして、約99.9%から約0.1%(w/w)まで、約85%から約1%(w/w)まで、約60%から約5%(w/w)まで、および約30重量%から約10重量%まで変化しうる。
【0095】
1種以上の製薬上許容される糖質の濃度は、乾燥組成物の全重量を基準にして約1%から約99%(w/w)まで変化しうる。
【0096】
1種以上の製薬上許容される可塑剤の濃度は、乾燥組成物の全重量を基準にして約0.01%から約70%(w/w)まで変化しうる。
【0097】
B. プルランを含む速崩壊性固形投与活性薬剤組成物の作製方法
本発明の他の態様において、プルランを含む活性薬剤の固形製剤を調製する方法が提供される。本方法は、(1)活性薬剤組成物を提供することと;(2)プルランを添加することと、(3)投与に供すべく(1)と(2)との混合物の固形製剤を形成することとと、を含む。投与に供すべく製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。本方法は、(1)1種以上の表面安定化剤(活性薬剤が製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合);(2)1種以上の製薬上許容される糖質;および/または(3)1種以上の製薬上許容される可塑剤を添加することを追加的に含みうる。本発明の固形製剤を作製するために、任意の製薬上許容される方法を使用することができる。
【0098】
活性薬剤は、ミクロンサイズであってもナノ微粒子状であってもよく、かつ水溶性であっても低水溶性であってもよい。
【0099】
本発明の固形製剤を調製する一方法は、(1)活性薬剤の分散液または溶液を提供することと、ここで、活性薬剤は、ミクロンサイズまたはナノ微粒子状のいずれかでありかつ水溶性または低水溶性のいずれかである;(2)プルランを含む溶液を提供することと;(3)プルラン溶液と活性薬剤分散液または溶液を組み合わせることと;(4)任意の製薬上許容される方法により分散液/溶液または溶液/溶液の混合物を固形製剤に製剤化することと;を含む。ファーストメルト組成物を作製するための工程(4)の好ましい方法は凍結乾燥であるが、任意の製薬上許容される方法を使用することができる。本方法は、(1)1種以上の表面安定化剤(活性薬剤が製剤に組み込まれる前にナノ微粒子状の粒子サイズを有する場合);(2)1種以上の製薬上許容される糖質;および/または(3)1種以上の製薬上許容される可塑剤を分散液または溶液に添加することを追加的に含みうる。追加の製薬上許容される賦形剤を組成物に添加することもできる。
【0100】
水溶性ミクロンサイズ活性薬剤に適用されるこの方法の例は、(1)ミクロンサイズ活性薬剤の溶液を調製すること、(2)プルランの溶液を調製すること、(3)活性薬剤溶液をプルラン溶液と組み合わせること;および(4)任意の製薬上許容される方法により溶液/溶液の混合物を固形製剤に製剤化することである。ファーストメルト固形製剤を作製する好ましい方法は凍結乾燥である。
【0101】
表面に吸着された表面安定化剤を有する低水溶性ナノ微粒子状活性薬剤に適用されるこの方法の例は、(1)表面に吸着された少なくとも1種の表面安定化剤を有するナノ微粒子状活性薬剤の分散液を調製すること;(2)プルランの溶液を調製すること、(3)活性薬剤分散液をプルラン溶液と組み合わせること;および(4) 任意の製薬上許容される方法により分散液/溶液の混合物を固形製剤に製剤化することである。ファーストメルト固形製剤を作製する好ましい方法は凍結乾燥である。
【0102】
活性薬剤のスプレー乾燥またはスプレー顆粒化で見られるような活性薬剤のいかなる粉末や塵埃の生成も本方法により回避されるので、この方法は、奏効性または毒性の高い活性薬剤の場合にとくに好ましい。毒性または奏効性の高い化合物の粉末を生じる製造方法では暴露問題を回避するための広範な安全対策および装置が必要になるので、このことは重要である。そのような安全手順および装置は、実際に利用するにはコストがかかる可能性がある。さらに、この方法は単純で効率的であり、ほとんど任意の活性薬剤に適合化させることができる。
【0103】
固形製剤の作製方法は当技術分野で公知であり、そのような方法を本発明に利用することができる。たとえば、先に記載したように、活性薬剤の分散液または溶液をプルラン溶液と混合してから凍結乾燥により固形製剤を作製することができる。他の選択肢として、活性薬剤の粉末または顆粒をプルラン粉末とブレンドしてから錠剤化またはカプセル充填を行うことができる。ナノ微粒子状活性薬剤の分散液またはミクロンサイズ活性薬剤の溶液もしくは分散液の粉末または顆粒は、たとえば、スプレー乾燥またはスプレー顆粒化により作製することができる。たとえば、ナノ微粒子状またはミクロンサイズの活性薬剤の分散液をプルラン粉末上にスプレー顆粒化することができる。活性薬剤を含む液体から粉末を作製する例示的方法を以下に記載する。
【0104】
1. ナノ微粒子状活性薬剤組成物の作製方法
沈殿析出、マイクロ流動化、粉砕のような機械的手段、または任意の他の好適なサイズリダクション法を包含しうるナノ微粒子状活性薬剤組成物の作製方法は、当技術分野で公知である。たとえば、ナノ微粒子状組成物の作製方法については、いずれも「医薬用物質の粉砕方法」に関する'684特許ならびに米国特許第5,518,187号および同第5,862,999号;「医薬用物質の連続粉砕方法」に関する米国特許第5,718,388号;「結晶成長調整剤を用いるナノ微粒子状医薬剤の共マイクロ沈殿析出」に関する米国特許第5,665,331号;「結晶成長調整剤を用いるナノ微粒子状医薬剤の共マイクロ沈殿析出」に関する米国特許第5,662,883号;「ナノ微粒子状医薬剤のマイクロ沈殿析出」に関する米国特許第5,560,932号;「ナノ粒子を含有するX線造影組成物の調製方法」に関する米国特許第5,543,133号;「安定な薬剤ナノ粒子の調製方法」に関する米国特許第5,534,270号;「ナノ粒子を含有する治療用組成物の調製方法」に関する米国特許第5,510,118号;ならびに「凝結を減少させるための荷電リン脂質を含有するナノ粒子組成物の調製方法」に関する米国特許第5,470,583号に記載されている。これらの特許はすべて、参照により明示的に組み入れられるものとする。
【0105】
固形製剤に組み込む前に活性薬剤をナノ微粒子状の粒子サイズにし、かつミリング、マイクロ流動化、または他の好適な機械的手段により活性薬剤を調製する場合、活性薬剤は少なくとも1種の液体分散媒に対して低溶解性であることが好ましい。「低溶解性」とは、液体分散媒への活性薬剤の溶解度が約30mg/ml以下、約10mg/ml以下、または約1mg/ml以下であることを意味する。そのような液体分散媒は、たとえば、水、塩水溶液、サフラワー油のような油、ならびにエタノール、t-ブタノール、ヘキサン、およびグリコールのような溶媒でありうる。
【0106】
2. ナノ微粒子状活性薬剤分散液またはミクロンサイズ活性薬剤溶液のスプレー乾燥
ナノ微粒子状活性薬剤分散液またはミクロンサイズ活性薬剤溶液の固形製剤は、液体製剤を乾燥させることにより調製することができる。例示的な乾燥方法はスプレー乾燥である。スプレー乾燥法を用いれば、投与に供すべく固形製剤に製剤化しうるナノ微粒子状またはミクロンサイズの活性薬剤粉末が得られる。
【0107】
例示的なスプレー乾燥法では、活性薬剤の分散液または溶液を蠕動ポンプによりアトマイザーに供給し、アトマイズして液滴の微細なスプレーの状態にする。スプレーを乾燥チャンバー内で熱風に接触させ、液滴から湿分を蒸発させる。得られたスプレーをサイクロンに通し、そこで粉末を分離し捕集する。賦形剤の存在下または不在下で活性薬剤の分散液または溶液をスプレー乾燥させることにより、スプレー乾燥中間体粉末を得ることができる。次に、この粉末を、たとえば、プルラン粉末とブレンドすることにより、プルランと組み合わせることが可能であり、またはプルラン溶液を活性薬剤粉末上にスプレー顆粒化することが可能である。他の選択肢として、スプレー乾燥前にプルランを活性薬剤の分散液または溶液に溶解させることができる。
【0108】
3. 凍結乾燥
本発明のファーストメルト固形製剤は、上述したように凍結乾燥により調製することができる。好適な凍結乾燥条件は、たとえば、EP 0,363,365 (McNeil-PPC Inc.)、米国特許第4,178,695号 (A. Erbeia)、および米国特許第5,384,124号(Farmalyoc)に記載されている。それらはいずれも参照により本明細書に組み入れられるものとする。典型的には、ナノ微粒子状またはミクロンサイズの活性薬剤とプルランとを含む液体組成物を好適な容器に入れて、約-5℃〜約-100℃の温度に凍結させる。ナノ微粒子状活性薬剤は、その表面に吸着された1種以上の表面安定化剤を追加的に含みうる。1種以上の製薬上許容される糖質および/または可塑剤を固形製剤に添加することができる。次に、凍結された液体を約48時間までの時間にわたり減圧状態にする。温度、圧力、液体媒体、およびバッチサイズのようなパラメーターは、組み合わさって、凍結乾燥プロセスに必要な時間に影響を及ぼすであろう。低温低圧の条件下で、凍結された溶媒を昇華により除去すれば、全体にわたって分布した活性薬剤を有する中実ポーラス速崩壊性固形製剤が得られる。
【0109】
4. 顆粒化
他の選択肢として、本発明の固形製剤は、顆粒を形成すべくナノ微粒子状またはミクロンサイズの活性薬剤とプルランとの液体含有混合物を流動床中で顆粒化することにより調製することができる。ナノ微粒子状活性薬剤は、その表面に吸着された1種以上の表面安定化剤を追加的に含みうる。1種以上の製薬上許容される糖質および/または可塑剤を固形製剤に添加することができる。この後、顆粒を錠剤化して固形製剤を形成する。
【0110】
5. 錠剤化
本発明の固形製剤は、経口投与に供すべく錠剤の形態をとることができる。そのような錠剤の調製は、当技術分野で公知の医薬向けの圧縮法または成形法により行うことができる。本発明の錠剤は、円盤形、丸形、卵形、矩形、円柱形、三角形、六角形などのような任意の適切な形状をとりうる。
【0111】
錠剤化用の粉末は、当技術分野で公知の任意の方法により錠剤に製剤化することができる。好適な方法としては、ミリング、流動床顆粒化、乾式顆粒化、直接圧縮、球状化、スプレー凝結、およびスプレー乾燥(spray-dying)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。錠剤化法についての詳細な説明は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th ed. Vol. 11 (1995) (Mack Publishing Co., Pennsylvania);およびRemington's Pharmaceutical Sciences, Chapter 89, pp. 1633-1658 (Mach Publishing Company, 1990)に提供されている。それらは両方とも参照により明示的に組み入れられるものとする。
【0112】
例示的方法では、固形製剤は、ナノ微粒子状またはミクロンサイズの活性薬剤組成物をプルランおよび場合により他の賦形剤とブレンディングしてブレンドを形成してからそのブレンドを錠剤に直接圧縮することにより、調製することができる。たとえば、V-blender(登録商標)(Blend Master Lab Blender, Patterson Kelley Co.)または高剪断混合機を用いて、スプレー乾燥された活性薬剤粉末を錠剤賦形剤とブレンドし、その後、たとえば、自動Carverプレス(Carver Laboratory Equipment)、シングルステーションKorsch(登録商標)プレス、または高速Fette(登録商標)タブレットプレスを用いて、粉末を圧縮することができる。
【0113】
錠剤は、コーティングしてもよいしコーティングしなくてもよい。コーティングする場合、糖衣(不快な味または臭気を隠蔽したり酸化を防止したりするため)であってもよいし、フィルムコーティング(類似の目的の水溶性物質の薄膜)であってもよい。
【0114】
C. プルラン含有固形製剤の投与
本発明は、本発明の固形製剤を用いて被験者(哺乳動物またはヒトを含む)を治療する方法を提供する。投与されるプルラン含有固形製剤は、低摩損性でありながら活性が迅速に現れる。
【0115】
一般的には、本発明の組成物は、所望の生理学的作用を提供するのに十分なレベルの活性薬剤を用いて、それを必要とする被験者に経口投与されるであろう。被験者は、家畜またはペットのような哺乳動物であってもよいが、好ましくはヒト被験者である。所望の生理学的結果を得るのに必要な活性薬剤のレベルは、Goodman and Gillman and the Physician's Desk Referenceのような標準的典拠を参照すれば当業者により容易に決定される。
【実施例】
【0116】
以下の実施例により、本発明について具体的に説明する。しかしながら、当然のことではあるが、本発明は、これらの実施例に記載されている特定の条件または細目に限定されるものではない。本明細書全体を通して、公に入手可能な文献が参照されている場合、それらはすべて、参照により明示的に本特許出願に組み入れられるものとする。
【0117】
実施例1
この実施例の目的は、プルランを含むコンパウンドAの速溶解性固形製剤を調製することであった。
【0118】
最初に、10%(w/w)コンパウンドAと表面安定化剤としての2.5%ポリビニルピロリドン(PVP K29/32)とを組み合わせ、その後、500μm高分子磨砕媒体を利用して150ccバッチチャンバーを備えたDYNO(登録商標)-Mill KDL(Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下で混合物をミリングすることにより、ナノ微粒子状コンパウンドAの分散液を調製した。コンパウンドA粒子の最終平均粒子サイズが108nmに達するまで、ミリングを行った。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0119】
プルラン(0.150g)とマンニトール(0.6g)と注射用水(4.7g)との溶液を結晶性コンパウンドAのナノ微粒子状分散液0.45グラムと組み合わせることにより、プルラン溶液とナノ微粒子状コンパウンドA分散液との混合物を調製した。
【0120】
ナノ微粒子状コンパウンドA/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。約5ccの水に入れた時、ウェーハは数秒間以内で崩壊した。Horiba LA-910で測定したところ、再構成コンパウンドA分散液中のコンパウンドA粒子の平均粒子サイズは136nmであることが判明した。
【0121】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有し、しかも再構成時にナノ微粒子状活性薬剤は実質的に活性薬剤を固形製剤に取り込む前に存在した粒子サイズに再分散されることが実証された。この後者の点は重要である。なぜなら、ナノ微粒子状活性薬剤が実質的に再分散されないのであれば、製剤は、活性薬剤をナノ微粒子サイズの状態にすることにより得られる利点(すなわち、より大きな生物学的利用能、活性のより迅速な出現など)を失うからである。
【0122】
実施例2
この実施例の目的は、プルランを含むコンパウンドBの速溶解性固形製剤を調製することであった。
【0123】
25%(w/w)コンパウンドBと5%ヒドロキシプロピルセルロース(HPC-SL)と0.25%ドキュセートナトリウムとを組み合わせ、その後、コンパウンドB粒子の最終平均粒子サイズが152nmに達するまで、500μm高分子磨砕媒体を利用して300cc再循環チャンバーを備えたDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下で混合物をミリングすることにより、コンパウンドBのナノ微粒子状分散液を調製した。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0124】
プルラン(0.375g)とマンニトール(0.375g)とグリセロール(0.05g)と注射用水(7.2g)との溶液を調製した。次に、2.0グラムのナノ微粒子状コンパウンドB分散液をプルラン溶液に添加した。
【0125】
ナノ微粒子状コンパウンドB分散液/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。
【0126】
凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。約10ccの水に入れた時、ウェーハは1分間以内で崩壊した。Horiba LA-910で測定したところ、再構成コンパウンドB分散液中のコンパウンドB粒子の平均粒子サイズは169nmであることが判明した。
【0127】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有し、しかも再構成時にナノ微粒子状活性薬剤は実質的に活性薬剤を固形製剤に取り込む前に存在した粒子サイズに再分散されることが実証された。
【0128】
実施例3
この実施例の目的は、プルランを含むシクロスポリンの速溶解性固形製剤を調製することであった。シクロスポリン(Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標)、SangCya(登録商標))は、移植後の器官拒絶反応を防止するために使用される。また、再生不良性貧血のような他の疾病を治療したりまたは移植片対宿主疾患(GVHD)を防止したりするためにも使用されてきた。
【0129】
15%(w/w)シクロスポリンと4.15% HPC-SLと0.225%ドキュセートナトリウムとを組み合わせ、その後、シクロスポリン粒子の最終平均粒子サイズが200nmに達するまで、500μm高分子磨砕媒体を利用して300cc再循環チャンバーを備えたDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下で混合物をミリングすることにより、シクロスポリンのナノ微粒子状分散液を作製した。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0130】
プルラン(20.0g)とマンニトール(40.0g)とグリセロール(10.0g)と注射用水(596.7g)との溶液を調製し、133.3グラムのナノ微粒子状シクロスポリン分散液をプルラン溶液に添加した。
【0131】
ナノ微粒子状シクロスポリン分散液/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。
【0132】
凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。約5ccの水に入れた時、ウェーハは数秒間以内で崩壊した。Horiba LA-910で測定したところ、再構成シクロスポリン分散液中のシクロスポリン粒子の平均粒子サイズは258nmであることが判明した。
【0133】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有し、しかも再構成時にナノ微粒子状活性薬剤は実質的に活性薬剤を固形製剤に取り込む前に存在した粒子サイズに再分散されることが実証された。
【0134】
実施例4
この実施例の目的は、コンパウンドCとプルランとを含む速溶解性固形製剤を調製することであった。
【0135】
25%(w/w)コンパウンドCと8%リゾチームとを組み合わせることにより、ナノ微粒子状コンパウンドC分散液を調製した。コンパウンドC粒子の最終平均粒子サイズが116nmに達するまで、500μm高分子磨砕媒体を利用してDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下でNCDをミリングした。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0136】
プルラン(0.5g)とマンニトール(0.5g)と注射用水(7.0g)との溶液を調製し、2.0グラムのナノ微粒子状コンパウンドC分散液をプルラン溶液に添加した。
【0137】
ナノ微粒子状コンパウンドC分散液/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。
【0138】
凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。約15ccの水に入れた時、ウェーハは10秒間以内で崩壊した。再構成粒子サイズは155nmであった。
【0139】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有することが実証された。
【0140】
実施例5
この実施例の目的は、プルランを含むコンパウンドDの速溶解性固形製剤を調製することであった。
【0141】
10%(w/w)コンパウンドDと2% HPC-SLとを組み合わせ、その後、500μm高分子磨砕媒体を利用して150ccバッチチャンバーを備えたDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下で混合物をミリングすることにより、ナノ微粒子状コンパウンドD分散液を作製した。薬剤が高溶解性であるため、光学顕微鏡法を用いて粒子サイズ分析を行った。光学顕微鏡により、小さい十分に分散された粒子であることが示された。
【0142】
ミリング後、10%(w/w)コンパウンドD分散液を注射用滅菌水で希釈して、38グラムの5%(w/w)コンパウンドD分散液を作製した。プルラン(1.9g)およびマンニトール(3.8g)を38グラムのナノ微粒子状コンパウンドD分散液に添加した。プルランとマンニトールとコンパウンドDとの分散液8グラムにグリセリン(0.12g)を添加した。
【0143】
ナノ微粒子状コンパウンドD分散液/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。各ウェーハは、次の材料、すなわち、0.100gのプルランと0.200gのマンニトールと0.030gのグリセロールと0.100gのコンパウンドDとを含有していた。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。
【0144】
凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。40ccの水に入れた時、ウェーハは3分間以内で崩壊した。水中への再構成時、薬剤粒子は完全に溶解した。
【0145】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有することが実証された。
【0146】
実施例6
この実施例の目的は、プルランを含むコンパウンドD遊離塩基の速溶解性固形製剤を調製することであった。
【0147】
5%(w/w)コンパウンドD遊離塩基と1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)と0.05%ドキュセートナトリウムとを組み合わせ、その後、コンパウンドD粒子の最終平均粒子サイズが258nmに達するまで、500μm高分子磨砕媒体を利用して150ccバッチチャンバーを備えたDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下で混合物をミリングすることにより、コンパウンドD遊離塩基のナノ微粒子状分散液を作製した。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0148】
プルラン(0.8g)およびマンニトール(1.6g)を16グラムのナノ微粒子状コンパウンドD遊離塩基分散液に添加した。グリセリン(0.06g)をプルランとマンニトールとコンパウンドD遊離塩基との分散液8グラムに添加した。
【0149】
コンパウンドD遊離塩基ナノ微粒子状分散液/プルラン溶液の混合物2.0グラムを各ウェルに入れることにより、2.5ccウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。各ウェーハは、次の材料、すなわち、0.100gのプルランと0.200gのマンニトールと0.015gのグリセロールと0.100gのコンパウンドD遊離塩基とを含有していた。
【0150】
凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。40ccの水に入れた時、ウェーハは3.5分間以内で崩壊した。Horiba LA-910で測定したところ、再構成コンパウンドD分散液中のコンパウンドD粒子の平均粒子サイズは268nmであることが判明した。
【0151】
この実施例では、プルランを含むナノ微粒子状組成物の固形製剤を作製することが可能であるとともに、そのような製剤は著しく短い崩壊時間および低い摩損度(すなわち、破壊を起こすことなく錠剤を取り扱いうる)を有し、しかも再構成時にナノ微粒子状活性薬剤は実質的に活性薬剤を固形製剤に取り込む前に存在した粒子サイズに再分散されることが実証された。
【0152】
実施例7
この実施例の目的は、プルランを含むナノ微粒子状コンパウンドCファーストメルトウェーハの摩損度を試験することであった。
【0153】
摩損度は、製剤の「ロバスト性」の尺度となる。高摩損度を有する製剤では包装が困難でありかつ製造コストが増大されるので、このことは重要である。従来のファーストメルト投与製剤は、高摩損度を有する傾向がある。
【0154】
25%(w/w)コンパウンドCと5%ポリビニルピロリドン(PVP K29/32)と0.1%ドキュセートナトリウムとを組み合わせることにより、ナノ微粒子状コンパウンドC分散液を調製した。最終平均粒子サイズが354nmに達するまで、500μm高分子磨砕媒体を利用してDYNO(登録商標)-Mill KDL (Willy A. Bachofen AG, Maschinenfabrik, Basel, Switzerland)で高エネルギーミリング条件下でNCDをミリングした。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0155】
プルラン(3.0g)とマンニトール(3.0g)と注射用水(42.0g)との溶液を調製し、12.0グラムのナノ微粒子状コンパウンドC分散液をプルラン溶液に添加した。凍結乾燥後、14個のウェーハを摩損度計(VanKelモデル45-2000)で試験した。ウェーハは、4.5197グラムの初期重量を有していた。ウェーハをタンブリングして100回落下させ、個別に取り出し、塵埃をブローイング除去した。ウェーハはいずれも破壊されることはなく、最終重量は4.4940グラムであった。
【0156】
United States Pharmacopeia (USP)錠剤摩損度試験では、錠剤が破壊されないことおよび<1%の重量損失であることが必要とされる。破壊された錠剤は観察されずかつ重量損失はわずか0.6%にすぎなかったので、コンパウンドCファーストメルトウェーハはUSP錠剤摩損度要件を満たす。
【0157】
実施例8
この実施例の目的は、プルランを含むナプロキセンの固形製剤を調製することであった。
【0158】
ナノ微粒子状ナプロキセン分散液を次のように調製した。20リットル再循環容器を備え500μm高分子磨砕媒体を利用するNanoMill-2システム(Elan Drug Delivery)で、高エネルギーミリング条件下で、30%(w/w)ナプロキセンと表面安定化剤としての7.5%リゾチームとの水性スラリーをミリングした。ミリング後の平均ナプロキセン粒子サイズは96nmであり、D90は139nmであった。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0159】
プルラン(1.8g)とマンニトール(6.0g)とグリセロール(1.2g)と注射用水(31.0g)とを含む溶液を調製し、ナプロキセンのナノ微粒子状分散液20.0グラムを添加した。NCDは、30%(w/w)ナプロキセンと表面安定化剤としての7.5%リゾチームとを含有していた。20リットル再循環容器を備え500μm高分子磨砕媒体を利用するNanoMill-2システムで高エネルギーミリング条件下でNCDをミリングした。凍結乾燥前の粒子サイズは96nmであった。Horiba LA-910粒子サイズアナライザー(Irvine、CA)を用いて粒子サイズ分析を行った。
【0160】
2.0グラムのNCD/プルラン混合物を各ウェルに入れることにより、2.5ccのウェルを備えたウェーハトレーに充填した。次に、トレーを48時間凍結乾燥させた。凍結乾燥後、ウェーハは良好な物理的組成物を示し、破壊を起こすことなく取り扱うことができた。約5ccの水に入れた時、ウェーハは数秒間以内で崩壊した。再構成ウェーハの平均ナプロキセン粒子サイズを測定したところ118nmであり、D90は160nmであった。
【0161】
当業者には自明なことであろうが、本発明の精神または範囲から逸脱することなく本発明に種々の修正および変更を加えることが可能である。したがって、添付の特許請求およびその等価物の範囲内に含まれるかぎり、本発明の修正および変更は、本発明に包含されるものとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の活性薬剤と;
(b)プルランと;
を含む固形製剤であって、
約1%以下の摩損度を有する、上記固形製剤。
【請求項2】
プルランの濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして、約99.9重量%〜約0.1重量%(w/w)、約85重量%〜約1重量%(w/w)、約60重量%〜約5重量%(w/w)、および約30重量%〜約10重量%よりなる群から選択される、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、および約0.2%以下よりなる群から選択される摩損度を有する、請求項1または請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
少なくとも1種の製薬上許容される糖質をさらに含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項5】
前記糖質が、スクロース、キシリトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、マンノース、フルクトース、およびトレハロースよりなる群から選択される、請求項4に記載の固形製剤。
【請求項6】
前記1種以上の製薬上許容される糖質の濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして約1%から約99%(w/w)まで変化可能である、請求項4または請求項5に記載の固形製剤。
【請求項7】
少なくとも1種の製薬上許容される可塑剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項8】
前記可塑剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはソルビトールである、請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
前記1種以上の製薬上許容される可塑剤の濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして約0.01%から約70%(w/w)まで変化可能である、請求項7または請求項8に記載の固形製剤。
【請求項10】
少なくとも1種の発泡剤をさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項11】
1種以上の製薬上許容される賦形剤を含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項12】
この組成物が凍結乾燥されたものである、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項13】
前記製剤が、制御放出製剤、ファーストメルト製剤、エアロゾル製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ剤、カプセル剤、および散剤よりなる群から選択される、請求項1〜12のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項14】
前記製剤が、唾液に接触したときに約4分以下、約3.5分以下、約3分以下、約2.5分以下、約2分以下、約90秒以下、約60秒以下、約45秒以下、約30秒以下、約20秒以下、約15秒以下、約10秒以下、および約5秒以下よりなる群から選択される時間で実質的に完全に崩壊または溶解するファーストメルト製剤である、請求項13に記載の固形製剤。
【請求項15】
前記活性薬剤が水溶性である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項16】
前記活性薬剤が低水溶性である、請求項1〜14のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項17】
前記活性薬剤が高毒性および/または高奏効性を有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項18】
前記活性薬剤が前記製剤への組込み前に約2ミクロン超の有効平均粒子サイズを有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項19】
前記活性薬剤が前記製剤への組込み前に約2ミクロン以下の有効平均粒子サイズを有する、請求項1〜17のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項20】
前記活性薬剤粒子の有効平均粒子サイズが、約1900nm以下、約1800nm以下、約1700nm以下、約1600nm以下、約1500nm以下、約1400nm以下、約1300nm以下、約1200nm以下、約1100nm以下、約1000nm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約75nm以下、および約50nm以下よりなる群から選択される、請求項19に記載の固形製剤。
【請求項21】
前記製剤への組込み前に前記活性薬剤の表面に吸着または会合される少なくとも1種の表面安定化剤をさらに含む、請求項19または20に記載の固形製剤。
【請求項22】
前記少なくとも1種の活性薬剤の濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして約99.9重量%〜約0.01重量%(w/w)である、請求項1〜21のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項23】
前記少なくとも1種の活性薬剤の濃度が、前記少なくとも1種の活性薬剤と前記少なくとも1種の表面安定化剤(他の賦形剤は含めない)との全合計重量を基準にして、約99.5重量%〜約0.001重量%、約95重量%〜約0.1重量%、および約90重量%〜約0.5重量%よりなる群から選択される、請求項21に記載の固形製剤。
【請求項24】
前記少なくとも1種の表面安定化剤の濃度が、前記少なくとも1種の活性薬剤と前記少なくとも1種の表面安定化剤(他の賦形剤は含めない)との全合計乾燥重量を基準にして、約0.0001重量%〜約99.9重量%、約5重量%〜約90重量%、および約10重量%〜約70重量%よりなる群から選択される、請求項21に記載の固形製剤。
【請求項25】
前記低溶解性活性薬剤が、結晶性粒子、半結晶性粒子、アモルファス粒子、半アモルファス粒子、またはそれらの混合物の形態である、請求項1〜24のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項26】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、COX-2阻害剤、抗癌剤、NSAID類、タンパク質類、ペプチド類、栄養補助剤、抗肥満剤、コルチコステロイド類、エラスターゼ阻害剤、鎮痛剤、抗真菌剤、腫瘍治療剤、鎮吐剤、鎮痛剤、心臓血管剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、抗癲癇剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、収斂剤、β-アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤および血液代用剤、心臓変力剤、造影剤、鎮咳剤、診断剤、診断イメージング剤、利尿剤、ドーパミン作動剤、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、副交感神経作動剤、上皮小体カルシトニンおよびビホスホネート類、プロスタグランジン類、放射性医薬品、性ホルモン類、抗アレルギー剤、刺激剤および食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺剤、血管拡張剤、キサンチン類、座瘡剤、アルファ-ヒドロキシ製剤、嚢胞性繊維症治療剤、喘息治療剤、気腫治療剤、呼吸促迫症候群治療剤、慢性気管支炎治療剤、慢性閉塞性肺疾患治療剤、臓器移植拒絶治療剤、結核および肺の他の感染症の治療剤、ならびに後天性免疫不全症候群に関連付けられる呼吸器疾病治療剤よりなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項27】
前記栄養補助剤が、食品サプリメント、ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類、生体に対して医療効果または医薬効果を有するヒーリング食品、葉酸、脂肪酸類、果実および植物の抽出物、ビタミンサプリメント、ミネラルサプリメント、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、グルコサミン/コンドロイチン、アロエベラ、ググル、グルタミン、アミノ酸、緑茶、リコペン、自然食品、食品添加剤、ハーブ類、植物性栄養素、抗酸化剤、果実のフラボノイド成分、マツヨイグサ油、アマニン類、魚油および海産動物油、ならびにプロバイオティックスよりなる群から選択される、請求項26に記載の固形製剤。
【請求項28】
前記ナノ微粒子状活性薬剤組成物が少なくとも2種の表面安定化剤を含む、請求項21に記載の固形製剤。
【請求項29】
前記少なくとも1種の表面安定化剤が、ノニオン性表面安定化剤、アニオン性表面安定化剤、カチオン性表面安定化剤、およびイオン性表面安定化剤よりなる群から選択される、請求項21に記載の固形製剤。
【請求項30】
前記少なくとも1種の表面安定化剤が、セチルピリジニウムクロリド、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド類、デキストラン、グリセロール、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸のエステル類および塩類、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール類、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート類、ナトリウムドデシルスルフェート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミウニム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールとエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマー、ポロキサマー類、ポロキサミン類、荷電リン脂質、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホスクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル類、ナトリウムラウリルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルホネート類、スクロースステアレートとスクロースジステアレートとの混合物、構造:-(-PEO)--(-PBO-)--(-PEO-)-で示されるトリブロックコポリマー類、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド、n-デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド、n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノニルβ-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチルβ-D-チオグルコピラノシド、リゾチーム、PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンA、PEG誘導体化ビタミンE、およびビニルアセテートとビニルピロリドンとのランダムコポリマーよりなる群から選択される、請求項29に記載の固形製剤。
【請求項31】
前記少なくとも1種のカチオン性表面安定化剤が、ポリマー、バイオポリマー、多糖、セルロース系物質、アルギネート、非高分子化合物、およびリン脂質よりなる群から選択される、請求項29に記載の固形製剤。
【請求項32】
前記少なくとも1種の表面安定化剤が、カチオン性脂質類、ベンザルコニウムクロリド、スルホニウム化合物類、ホスホニウム化合物類、第四級アンモニウム化合物類、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロミド、N-アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14〜18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハリド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩類、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド類、C15トリメチルアンモニウムブロミド類、C17トリメチルアンモニウムブロミド類、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド類、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニド類、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、POLYQUAT 10TM、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル類、ベンザルコニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド化合物、セチルピリジニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミン類のハロゲン化物塩類、MIRAPOLTM、ALKAQUATTM、アルキルピリジニウム塩類;アミン類、アミン塩類、アミンオキシド類、イミドアゾリニウム塩類、プロトン化第四級アクリルアミド類、メチル化第四級ポリマー類、カチオン性グアー、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリ(2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)(S1001)、ポリ(N-ビニルピロリドン/2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルスルフェート第四級(S1002)、およびポリ(2-メチルアクリルオキシアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)(S1004)よりなる群から選択される、請求項29に記載の固形製剤。
【請求項33】
低摩損度を有する固形製剤を調製する方法であって、
(a)(i)少なくとも1種の活性薬剤と(ii)プルランとを組み合わせることと;
(b)固形製剤を形成することと;
を含み、
該固形製剤が約1%以下の摩損度を有する、上記方法。
【請求項34】
(a)少なくとも1種の活性薬剤の分散液または溶液を形成することと;
(b)プルラン溶液を形成することと;
(c)(a)の分散液または溶液を(b)の溶液と組み合わせることと;
(d)製薬上許容される方法を利用して、工程(c)で得られた液体を固形製剤に製剤化することと;
を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
工程(d)が凍結乾燥を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記活性薬剤が高毒性および/または高奏効性を有する、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
必要のある被験者を治療する方法であって、該被験者に有効量のプルラン含有固形製剤を投与することを含み、
(a)該固形製剤が少なくとも1種の活性薬剤とプルランとを含み;かつ
(b)該固形製剤が約1%以下の摩損度を有する;
上記方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の活性薬剤と;
(b)プルランと;
を含む固形製剤であって、
約1%以下の摩損度を有する、上記固形製剤。
【請求項2】
約1%以下、約0.9%以下、約0.8%以下、約0.7%以下、約0.6%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、および約0.2%以下よりなる群から選択される摩損度を有する、請求項1に記載の固形製剤。
【請求項3】
(a)少なくとも1種の製薬上許容される糖質、および/または
(b)少なくとも1種の製薬上許容される可塑剤、および/または
(c)少なくとも1種の発泡剤
をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の固形製剤。
【請求項4】
(a)前記糖質が、スクロース、キシリトール、ラクトース、マンニトール、ソルビトール、グルコース、マンノース、フルクトース、およびトレハロースよりなる群から選択され、および/または
(b)前記可塑剤が、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、またはソルビトールである、
請求項3に記載の固形製剤。
【請求項5】
(a)前記1種以上の製薬上許容される糖質の濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして約1%から約99%(w/w)まで変化可能であり、および/または
(b)前記1種以上の製薬上許容される可塑剤の濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして約0.01%から約70%(w/w)まで変化可能である、
請求項3または請求項4に記載の固形製剤。
【請求項6】
この組成物が凍結乾燥されたものである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項7】
前記製剤が、制御放出製剤、ファーストメルト製剤、エアロゾル製剤、凍結乾燥製剤、錠剤、固形ロゼンジ剤、カプセル剤、および散剤よりなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項8】
前記製剤が、唾液に接触したときに約4分以下、約3.5分以下、約3分以下、約2.5分以下、約2分以下、約90秒以下、約60秒以下、約45秒以下、約30秒以下、約20秒以下、約15秒以下、約10秒以下、および約5秒以下よりなる群から選択される時間で実質的に完全に崩壊または溶解するファーストメルト製剤である、請求項7に記載の固形製剤。
【請求項9】
前記活性薬剤が、
(a)水溶性もしくは低水溶性であり、および/または
(b)高毒性および/または高奏効性を有し、および/または
(c)結晶性粒子、半結晶性粒子、アモルファス粒子、半アモルファス粒子、もしくはそれらの混合物の形態である、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項10】
前記活性薬剤が前記製剤への組込み前に約2ミクロン超の有効平均粒子サイズを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項11】
前記活性薬剤が前記製剤への組込み前に約2ミクロン以下、約1900nm以下、約1800nm以下、約1700nm以下、約1600nm以下、約1500nm以下、約1400nm以下、約1300nm以下、約1200nm以下、約1100nm以下、約1000nm以下、約900nm以下、約800nm以下、約700nm以下、約600nm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約250nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約75nm以下、および約50nm以下よりなる群から選択される有効平均粒子サイズを有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項12】
前記少なくとも1種の活性薬剤が、COX-2阻害剤、抗癌剤、NSAID類、タンパク質類、ペプチド類、栄養補助剤、抗肥満剤、コルチコステロイド類、エラスターゼ阻害剤、鎮痛剤、抗真菌剤、腫瘍治療剤、鎮吐剤、鎮痛剤、心臓血管剤、抗炎症剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗生物質、抗凝血剤、抗鬱剤、抗糖尿病剤、抗癲癇剤、抗ヒスタミン剤、抗高血圧剤、抗ムスカリン剤、抗ミコバクテリア剤、抗新生物剤、免疫抑制剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、収斂剤、β-アドレナリン受容体遮断剤、血液製剤および血液代用剤、心臓変力剤、造影剤、鎮咳剤、診断剤、診断イメージング剤、利尿剤、ドーパミン作動剤、止血剤、免疫剤、脂質調節剤、筋弛緩剤、副交感神経作動剤、上皮小体カルシトニンおよびビホスホネート類、プロスタグランジン類、放射性医薬品、性ホルモン類、抗アレルギー剤、刺激剤および食欲抑制剤、交感神経興奮剤、甲状腺剤、血管拡張剤、キサンチン類、座瘡剤、アルファ-ヒドロキシ製剤、嚢胞性繊維症治療剤、喘息治療剤、気腫治療剤、呼吸促迫症候群治療剤、慢性気管支炎治療剤、慢性閉塞性肺疾患治療剤、臓器移植拒絶治療剤、結核および肺の他の感染症の治療剤、ならびに後天性免疫不全症候群に関連付けられる呼吸器疾病治療剤よりなる群から選択される、請求項1〜11のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項13】
前記栄養補助剤が、食品サプリメント、ビタミン類、ミネラル類、ハーブ類、生体に対して医療効果または医薬効果を有するヒーリング食品、葉酸、脂肪酸類、果実および植物の抽出物、ビタミンサプリメント、ミネラルサプリメント、ホスファチジルセリン、リポ酸、メラトニン、グルコサミン/コンドロイチン、アロエベラ、ググル、グルタミン、アミノ酸、緑茶、リコペン、自然食品、食品添加剤、ハーブ類、植物性栄養素、抗酸化剤、果実のフラボノイド成分、マツヨイグサ油、アマニン類、魚油および海産動物油、ならびにプロバイオティックスよりなる群から選択される、請求項12に記載の固形製剤。
【請求項14】
前記製剤への組込み前に前記活性薬剤の表面に吸着または会合される少なくとも1種の表面安定化剤をさらに含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項15】
(a)プルランの濃度が、この乾燥組成物の全重量を基準にして、約99.9%〜約0.1%(w/w)、約85%〜約1%(w/w)、約60%〜約5%(w/w)、および約30%〜約10%よりなる群から選択され、および/または
(b)活性薬剤の濃度が、この乾燥組成物(他の賦形剤は含めない)の全重量を基準にして、約99.9%〜約0.01%(w/w)、約99.5%〜約0.001%、約95%〜約0.1%、および約90%〜約0.5%よりなる群から選択され、および/または
(c)少なくとも1種の表面安定化剤の濃度が、前記少なくとも1種の活性薬剤と前記少なくとも1種の表面安定化剤(他の賦形剤は含めない)との全合計乾燥重量を基準にして、約0.0001%〜約99.9%、約5%〜約90%、および約10%〜約70%よりなる群から選択される、
請求項1〜14のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項16】
前記少なくとも1種の表面安定化剤が、ノニオン性表面安定化剤、アニオン性表面安定化剤、カチオン性表面安定化剤、およびイオン性表面安定化剤よりなる群から選択される、請求項14または15に記載の固形製剤。
【請求項17】
前記少なくとも1種の表面安定化剤が、セチルピリジニウムクロリド、ゼラチン、カゼイン、ホスファチド類、デキストラン、グリセロール、アカシアガム、コレステロール、トラガカント、ステアリン酸、ステアリン酸のエステル類および塩類、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化蝋、ソルビタンエステル類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリエチレングリコール類、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリオキシエチレンステアレート類、コロイド二酸化ケイ素、ホスフェート類、ナトリウムドデシルスルフェート、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース類、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、非結晶性セルロース、ケイ酸マグネシウムアルミウニム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールとエチレンオキシドおよびホルムアルデヒドとのポリマー、ポロキサマー類、ポロキサミン類、荷電リン脂質、ジミリストイルホスファチジルグリセロール、ジオクチルスルホスクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル類、ナトリウムラウリルスルフェート、アルキルアリールポリエーテルスルホネート類、スクロースステアレートとスクロースジステアレートとの混合物、構造:-(-PEO)--(-PBO-)--(-PEO-)-で示されるトリブロックコポリマー類、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド、n-デシルβ-D-マルトピラノシド、n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド、n-ドデシルβ-D-マルトシド、ヘプタノイル-N-メチルグルカミド、n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド、n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド、n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド、ノナノイル-N-メチルグルカミド、n-ノニルβ-D-グルコピラノシド、オクタノイル-N-メチルグルカミド、n-オクチル-β-D-グルコピラノシド、オクチルβ-D-チオグルコピラノシド、リゾチーム、PEG誘導体化リン脂質、PEG誘導体化コレステロール、PEG誘導体化コレステロール誘導体、PEG誘導体化ビタミンA、PEG誘導体化ビタミンE、ビニルアセテートとビニルピロリドンとのランダムコポリマー、カチオン性ポリマー、カチオン性バイオポリマー、カチオン性多糖、カチオン性セルロース系物質、カチオン性アルギネート、カチオン性非高分子化合物、カチオン性リン脂質、カチオン性脂質類、ベンザルコニウムクロリド、スルホニウム化合物類、ホスホニウム化合物類、第四級アンモニウム化合物類、ベンジル-ジ(2-クロロエチル)エチルアンモニウムブロミド、ココナツトリメチルアンモニウムクロリド、ココナツトリメチルアンモニウムブロミド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツメチルジヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、デシルトリエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、デシルジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、C12〜15ジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリドブロミド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、ココナツジメチルヒドロキシエチルアンモニウムブロミド、ミリスチルトリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムブロミド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムクロリド、ラウリルジメチル(エテノキシ)4アンモニウムブロミド、N-アルキル(C12〜18)ジメチルベンジルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C14〜18)ジメチル-ベンジルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、ジメチルジデシルアンモニウムクロリド、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、トリメチルアンモニウムハリド、アルキル-トリメチルアンモニウム塩類、ジアルキル-ジメチルアンモニウム塩類、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、エトキシル化アルキルアミドアルキルジアルキルアンモニウム塩、エトキシル化トリアルキルアンモニウム塩、ジアルキルベンゼンジアルキルアンモニウムクロリド、N-ジデシルジメチルアンモニウムクロリド、N-テトラデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド一水和物、N-アルキル(C12〜14)ジメチル1-ナフチルメチルアンモニウムクロリド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ジアルキルベンゼンアルキルアンモニウムクロリド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルメチルアンモニウムクロリド、アルキルベンジルジメチルアンモニウムブロミド、C12トリメチルアンモニウムブロミド類、C15トリメチルアンモニウムブロミド類、C17トリメチルアンモニウムブロミド類、ドデシルベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ポリ-ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、ジメチルアンモニウムクロリド類、アルキルジメチルアンモニウムハロゲニド類、トリセチルメチルアンモニウムクロリド、デシルトリメチルアンモニウムブロミド、ドデシルトリエチルアンモニウムブロミド、テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、メチルトリオクチルアンモニウムクロリド、POLYQUAT 10TM、テトラブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、コリンエステル類、ベンザルコニウムクロリド、ステアラルコニウムクロリド化合物、セチルピリジニウムブロミド、セチルピリジニウムクロリド、四級化ポリオキシエチルアルキルアミン類のハロゲン化物塩類、MIRAPOLTM、ALKAQUATTM、アルキルピリジニウム塩類;アミン類、アミン塩類、アミンオキシド類、イミドアゾリニウム塩類、プロトン化第四級アクリルアミド類、メチル化第四級ポリマー類、カチオン性グアー、ポリメチルメタクリレートトリメチルアンモニウムブロミド、ポリビニルピロリドン-2-ジメチルアミノエチルメタクリレートジメチルスルフェート、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、ポリ(2-メタクリルオキシエチルトリメチルアンモニウムブロミド)(S1001)、ポリ(N-ビニルピロリドン/2-ジメチルアミノエチルメタクリレート)ジメチルスルフェート第四級(S1002)、およびポリ(2-メチルアクリルオキシアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド)(S1004)よりなる群から選択される、請求項14〜16のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項18】
1種以上の製薬上許容される賦形剤を含む、請求項1〜17のいずれか1項に記載の固形製剤。
【請求項19】
医薬の製造のための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の固形製剤の使用。

【公表番号】特表2006−508136(P2006−508136A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−552054(P2004−552054)
【出願日】平成15年11月12日(2003.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2003/035915
【国際公開番号】WO2004/043440
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(500370883)エラン ファーマ インターナショナル,リミティド (45)
【Fターム(参考)】