摺動式等速自在継手
【課題】トリポード型等速自在継手の加工工数および部品点数の削減でコスト低減を図ると共に、内部部品の軸方向摺動範囲を確保して外側継手部材の軽量化を図る。
【解決手段】ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が転動自在に挿入可能なガイド溝58を外側継手部材10のトラック溝12と同軸に形成する。
【解決手段】ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が転動自在に挿入可能なガイド溝58を外側継手部材10のトラック溝12と同軸に形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
このドライブシャフトに組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。また、他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。
【0005】
トリポード型等速自在継手は、一端に開口部を有するカップ状をなし、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成された外側継手部材と、径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、そのトリポード部材の脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラとで主要部が構成されている。
【0006】
この種の等速自在継手は、トリポード部材およびローラからなる内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容された構造を具備する。また、トリポード部材の軸孔にはシャフトの一端がスプライン嵌合により連結され、このシャフトの他端には、固定式等速自在継手の内側継手部材がスプライン嵌合により連結されている。さらに、この等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材の開口部とシャフトとの間に蛇腹状のブーツを装着した構造が一般的である。
【0007】
このトリポード型等速自在継手を自動車に組み付けるに際しては、トリポード型等速自在継手をエンジン側(インボード側)に組み付けた後、固定式等速自在継手を駆動車輪側(アウトボード側)に組み付けるのが一般的である。エンジン側のトリポード型等速自在継手を組み付けた際、駆動車輪側の固定式等速自在継手は車体側の懸架装置に組み付けられておらず完全に垂れ下がった状態となり、さらにロアアームのみに組み付けられて容易に傾く状態もしくはどこにも固定されていないハブベアリング及びナックルが組みつけられることでスライドアウト方向へ大きな荷重がかかる場合がある。
【0008】
このような状態になると、トリポード型等速自在継手の内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じることがある。このようなスライドオーバー時には、内部部品のローラが傾いた状態になったりすることで内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが困難となる。そこで、従来では、このスライドオーバーを防止するため、以下のような抜け止め機構が採用されている。
【0009】
抜け止め機構の一つとしては、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を設け、その環状凹溝にサークリップを嵌着した構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ローラがサークリップと干渉することでローラの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。
【0010】
また、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手における抜け止め機構としては、ブーツの内周面に、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をトラック溝軸方向で楔となるように設けた構造のものがある(例えば、特許文献2参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ボールが突起と干渉することでボールの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。なお、この特許文献2では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−283175号公報
【特許文献2】特開平9−177816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の特許文献1で開示された従来の等速自在継手では、ローラの軸方向変位量を規制するサークリップを外側継手部材に組み付けるため、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を形成しなければならず、ブーツの内周面を溝加工する必要があり、また、サークリップも必要となることから、加工工数および部品点数の増加により製品のコストアップを招くことになる。
【0013】
また、特許文献2に開示された従来の等速自在継手では、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をブーツの内周面に設けているため、その突起が外側継手部材のトラック溝に入り込んだ分だけ、内部部品の軸方向摺動範囲が狭くなる。この内部部品の軸方向摺動範囲は外側継手部材のトラック溝の軸方向長さで決まる。その結果、内部部品の軸方向摺動範囲を確保するためには、外側継手部材の軸方向寸法を長くする必要があり、その分、外側継手部材の重量が増大することになる。
【0014】
本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、加工工数および部品点数を削減することでコスト低減を図ると共に、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保して外側継手部材の軽量化を図り得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、その外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、転動体および内側継手部材を含む内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことを特徴とする。ここで、「ブーツの内周面形状と内部部品の外形形状との一致」とは、完全に一致した状態だけでなく、略一致した状態を含むことを意味する。
【0016】
本発明における摺動式等速自在継手では、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、その内部部品がブーツの内周面形状で規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが容易となる。特に、この摺動式等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重が摺動式等速自在継手のスライドアウト方向にかかってスライドオーバーが生じた場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
【0017】
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
【0018】
本発明において、内部部品の外形形状と一致させた形状としては、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、転動体が転動自在に挿入可能なガイド溝を外側継手部材のトラック溝と同軸に形成した形状が望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品の転動体がブーツのガイド溝に嵌まり込んで規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0019】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、ブーツが最大限に伸長した状態で内部部品を収容可能とする軸方向長さを有することが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、ブーツが最大限に伸長した状態となっても内部部品をブーツの内周面形状で規制することができるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0020】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、外側継手部材の開口部に装着されるブーツの端部よりも厚肉にすることが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品を内周面形状で規制しながら収容するブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位が不必要に変形することを抑制できるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0021】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、転動体が軸方向変位時に係止されるストッパ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、外側継手部材の開口部から飛び出した内部部品の軸方向変位量を規制することができるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことがより一層容易となる。
【0022】
本発明におけるストッパ面は、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面から一体的に連続して形成されていることが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、外側継手部材の開口部から飛び出した内部部品の軸方向変位量を規制するストッパ面を容易に形成することができる。
【0023】
本発明において、ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に、そのガイド溝と外側継手部材のトラック溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた構造が望ましい。このようにすれば、外側継手部材の外周面形状が円形の場合であっても、外側継手部材の開口部の外周面にブーツの端部を装着するに際して、指標に基づいて外側継手部材のトラック溝とブーツのガイド溝との円周方向の相対位置を容易に合わせることができるので、外側継手部材に対するブーツの組み付け性が向上する。
【0024】
また、前記ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に指標を設けた構造に加えて、外側継手部材の開口部の外周面でトラック溝と対応する部位に、そのトラック溝とブーツのガイド溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた構造が望ましい。このようにすれば、外側継手部材の開口部の外周面にブーツの端部を装着するに際して、両者の指標に基づいて外側継手部材のトラック溝の円周方向位置とブーツのガイド溝の円周方向位置とを容易に確認することができるので、外側継手部材のトラック溝とブーツのガイド溝との位置合わせ精度がより一層向上する。
【0025】
本発明における外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、内側継手部材は、先端がトラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、転動体は、脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラである構造を具備することが望ましい。つまり、このような構造を具備するローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用可能である。
【0026】
また、本発明における内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、その内部部品がブーツの内周面形状で規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが容易となる。また、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。さらに、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
【0028】
このように、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、低廉化および軽量化が容易に図れる摺動式等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態で、トリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】ブーツ装着前の状態における図1のA矢視図である。
【図3】図1のブーツを示す縦断面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】図1の内部部品が軸方向変位してブーツに収容され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5のB矢視図である。
【図7】図1のブーツにストッパ面を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】図7の内部部品が軸方向変位してストッパ面に係止され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明に係る摺動式等速自在継手の他の実施形態で、ダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図12】ブーツ装着前の状態における図11のC矢視図である。
【図13】図11のブーツを示す縦断面図である。
【図14】図13の右側面図である。
【図15】図11の内部部品が軸方向変位してブーツに収容され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図16】図15のD矢視図である。
【図17】図11のブーツにストッパ面を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図18】図17の内部部品が軸方向変位してストッパ面に係止され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図19】図13のブーツに指標を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図20】図19の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手を例示する。なお、本発明は、このシングルローラタイプ以外に、作動時の低振動化を可能としたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも適用可能である。また、本発明は、トリポード型等速自在継手以外に、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手のような他の摺動式等速自在継手にも適用可能である。
【0031】
図1および図2はシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手の基本構成を示し、図1は継手の軸線に対する縦断面図、図2はブーツ装着前の状態での継手のA矢視図である(但し、一つのローラ30のみを断面で示す)。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、外側継手部材10と、内側継手部材であるトリポード部材20と、転動体であるローラ30とで主要部が構成されている。
【0032】
外側継手部材10は、一端に開口部11を有するカップ状をなし、その底部中央に軸部13が一体的に形成されている。外側継手部材10の内周面には、軸方向に延びる三本の直線状トラック溝12が円周方向等間隔に形成される。各トラック溝12は、その内側両壁に互いに対向する一対のローラ案内面14を有する。ローラ案内面14は円弧状断面を有し、外側継手部材10の軸線方向に直線状に延びる。外側継手部材10の外周面は、軽量化のため、トラック溝12間と対応する部位が減肉されて凹部15が軸方向に形成されている。この外側継手部材10の内部には、トリポード部材20とローラ30からなる内部部品60が軸方向摺動自在に収容されている。
【0033】
トリポード部材20は、円筒状をなすボス21の外周面に三本の脚軸22が円周方向等間隔(120°間隔)で放射状に一体形成されたものである。脚軸22は、その先端がトラック溝12の底部付近まで半径方向に延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。ボス21の軸孔にシャフト40の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング41によりトリポード部材20に対して抜け止めされている。
【0034】
外側継手部材10のトラック溝12のローラ案内面14と脚軸22の外周面との間に針状ころ31を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面14とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。このローラ30と脚軸22との間に、複数の針状ころ31が、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。脚軸22の外周面は針状ころ31の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ31の外側転動面を構成している。
【0035】
これら針状ころ31は、脚軸22の付け根部に外嵌されたインナワッシャ32と半径方向内側で接すると共に、脚軸22の先端部に外嵌されたアウタワッシャ33と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ33は、脚軸22の先端部に形成された環状溝23に丸サークリップ等の止め輪34を嵌合させることにより抜け止めされている。
【0036】
この等速自在継手では、トリポード部材20の脚軸22と外側継手部材10のローラ案内面14とがローラ30を介して二軸の回転方向に係合することにより、駆動側から従動側へ回転トルクが等速で伝達される。また、ローラ30が脚軸22に対して回転しながらローラ案内面14上を転動することにより、外側継手部材10とトリポード部材20との間の相対的な軸方向変位や角度変位が許容される。
【0037】
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材10とシャフト40との間に、外側継手部材10の開口部11を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ50を装着した構造を具備する。このように、外側継手部材10およびブーツ50の内部空間に潤滑剤を封入することにより、外側継手部材10に対してシャフト40が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材10、トリポード部材20およびローラ30で構成される摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
【0038】
ブーツ50は、外側継手部材10の開口部11の外周面にブーツバンド54により締め付け固定された大径端部51と、トリポード部材20から延びるシャフト40の外周面にブーツバンド55により締め付け固定された小径端部52と、大径端部51と小径端部52とを繋ぎ、その大径端部51から小径端部52へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部53とで構成されている。なお、ブーツ50の大径端部51の内周面は、外側継手部材10の外周面形状に対応させて、トラック溝12間と対応する部位に凸部56が軸方向に形成されている。また、ブーツ50の大径端部51の外周面は円形形状を有する。
【0039】
この実施形態の等速自在継手では、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品60を外側継手部材10に挿入し直すことが容易なように、図1に示すように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面形状を内部部品60の外形形状と一致させた抜け戻し構造を採用している(図3および図4参照)。
【0040】
つまり、この抜け戻し構造は、内部部品60の外形形状と一致させた形状として、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が転動自在に挿入可能なガイド溝58を外側継手部材10のトラック溝12と同軸に形成した形状としている。このガイド溝58は外側継手部材10のトラック溝12と同一形状を有する。ここで、図5および図6は、内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じた状態を示す。抜け戻し構造におけるブーツ50の内周面形状では、同図に示すように、ガイド溝58の底部に脚軸22の先端部が当接すると共にその底部の両側に位置する側壁部にローラ30が当接し、ガイド溝58間に位置して径方向内側へ突出する膨出部59にボス21の外周面が当接している。
【0041】
図5および図6に示すように、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面形状を内部部品60の外形形状と一致させたことにより、その内部部品60がブーツ50の内周面形状で規制されながら軸方向変位する。つまり、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57に収容された内部部品60は、ローラ30がブーツ50のガイド溝58に嵌まり込むと共にトリポード部材20のボス21が膨出部59に当接した状態で規制されながら軸方向変位する。その結果、内部部品60を外側継手部材10に挿入し直すことが容易となる。特に、このトリポード型等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重がトリポード型等速自在継手のスライドアウト方向にかかってスライドオーバーが生じた場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
【0042】
このように、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品60のローラ30がブーツ50のガイド溝58に嵌まり込んで規制されながら軸方向変位するので、そのローラ30を外側継手部材10のトラック溝12に確実に挿入し直すことができる。なお、内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバー時、等速自在継手が角度をとって傾いた状態であっても、その角度を0°に戻すことにより、内部部品60のローラ30はブーツ50のガイド溝58に収まり、外側継手部材10のトラック溝12に確実に挿入し直すことができる。
【0043】
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材10の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品60の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材10の軽量化が図れる。
【0044】
この抜け戻し構造において、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、図5に示すように、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態で内部部品60を収容可能とする軸方向長さL1を有する。このように、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態で内部部品60を収容可能とする軸方向長さL1を有することにより、内部部品60の軸方向変位時、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態となっても、内部部品60をブーツ50の内周面形状で規制することができるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことができる。
【0045】
また、この抜け戻し構造において、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、外側継手部材10の開口部11に装着される大径端部51よりも厚肉としている。このように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57を、外側継手部材10の開口部11に装着される大径端部51よりも厚肉としたことにより、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60を内周面形状で規制しながら収容するブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57が不必要に変形することを抑制できるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことができる。また、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、蛇腹状となっていないことから、軸方向に伸縮することはない。
【0046】
図7〜図10は、本発明の他の実施形態を説明するためのもので、図7および図8に示すように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面の軸方向端部でローラ30が当接するガイド溝58の側壁部に、ローラ30が軸方向変位時に係止されるストッパ面58aを形成するようにしてもよい。このように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が軸方向変位時に係止されるストッパ面58aを形成することにより、図9および図10に示すように、内部部品60の軸方向変位時、ローラ30がストッパ面58aに係止されることで、外側継手部材10の開口部11から飛び出した内部部品60の軸方向変位量を規制することができるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことが容易となる。
【0047】
このストッパ面58aは、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、その内周面から一体的に連続して形成されている。このように、ストッパ面58aを、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面から一体的に連続して形成することにより、そのストッパ面58aを容易に形成することができる。なお、この実施形態では、ストッパ面58aをローラ30の外周面と対応させた凹曲面形状としているが、テーパ面形状などの他の形状であってもよい。
【0048】
以上の実施形態では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合について説明したが、図11および図12に示すボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手にも適用可能である。図11は継手の軸線に対する縦断面図、図12はブーツ装着前の状態での継手のC矢視図である。このダブルオフセット型等速自在継手は、図11および図12に示すように、外側継手部材110、内側継手部材120、転動体であるボール130およびケージ170で主要部が構成されている。
【0049】
この等速自在継手は、一端に開口部111を有するカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝112が内周面の複数箇所に形成された外側継手部材110と、軸方向に延びる直線状トラック溝122が外側継手部材110のトラック溝112と対をなして外周面の複数箇所に形成された内側継手部材120と、外側継手部材110のトラック溝112と内側継手部材120のトラック溝122との間に配されたボール130と、外側継手部材110の内周面と内側継手部材120の外周面との間に介在してボール130を保持するケージ170とを備えた構造である。
【0050】
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール130の個数は任意である。この外側継手部材110の内部には、内側継手部材120、ボール130およびケージ170からなる内部部品160が軸方向摺動自在に収容されている。また、内側継手部材120の軸孔にシャフト140の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング141により内側継手部材120に対して抜け止めされている。
【0051】
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材110とシャフト140との間に、外側継手部材110の開口部111を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ150を装着した構造を具備する。ブーツ150は、外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツバンド154により締め付け固定された大径端部151と、内側継手部材120から延びるシャフト140の外周面にブーツバンド155により締め付け固定された小径端部152と、大径端部151と小径端部152とを繋ぎ、その大径端部151から小径端部152へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部153とで構成されている。
【0052】
この実施形態の等速自在継手において、内部部品160の軸方向変位時、その内部部品160が外側継手部材110の開口部111から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品160が外側継手部材110に挿入し直すことを容易にする抜け戻し構造として、図11に示すように、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面を内部部品160の外形形状と一致させた形状としている(図13および図14参照)。つまり、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面に、ボール130が転動自在に挿入可能なガイド溝158を外側継手部材110のトラック溝112と同軸に形成した形状としている。このガイド溝158は外側継手部材110のトラック溝112と同一形状を有する。
【0053】
図15および図16に示すように、内部部品160の軸方向変位時、その内部部品160が外側継手部材110の開口部111から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面形状を内部部品160の外形形状と一致させたことにより、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157に収容された内部部品160は、ボール130がブーツ150のガイド溝158に嵌まり込んで当接すると共にケージ170がガイド溝158間に当接した状態で規制されながら軸方向変位する。その結果、内部部品160のボール130を外側継手部材110のトラック溝112に確実に挿入し直すことができる。
【0054】
この抜け戻し構造において、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157が、図15に示すように、ブーツ150の蛇腹部153が最大限に伸長した状態で内部部品160を収容可能とする軸方向長さL2を有する点や、外側継手部材110の開口部111に装着される大径端部151よりも厚肉である点については、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様であり、その作用効果も同様であるため、重複説明は省略する。
【0055】
また、図17に示すように、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面の軸方向端部でボール130が当接するガイド溝158の底部に、ボール130が軸方向変位時に係止されるストッパ面158aを形成するようにしてもよい。図18に示すように、内部部品160の軸方向変位時、外側継手部材110の開口部111から飛び出した内部部品160の軸方向変位量を、ストッパ面158aにボール130を係止させることで規制することができるので、内部部品160を外側継手部材110に確実に挿入し直すことが容易となる。なお、ストッパ面158aが、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面に、その内周面から一体的に連続して形成されている点や、ボール130と対応させた凹曲面形状としている点については、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様である。
【0056】
前述の実施形態で説明したトリポード型等速自在継手は、外側継手部材10の外周面に凹部15が設けられ、ブーツ50の大径端部51の内周面に、外側継手部材10の凹部15と対応させて凸部56が形成された構造を備えている(図2および図4参照)。外側継手部材10にブーツ50を組み付けるに際しては、この凹部15と凸部56との凹凸嵌合でもって、外側継手部材10のトラック溝12とブーツ50のガイド溝58とを同軸上に円周方向で位相合わせすることが容易である。しかしながら、ダブルオフセット型等速自在継手の場合、外側継手部材110の外周面が円形形状であるため(図12参照)、外側継手部材110に対するブーツ150の組み付け時、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との位相合わせが困難である。
【0057】
そこで、ダブルオフセット型等速自在継手のように外側継手部材110の外周面が円形形状である場合、図19および図20に示すように、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位に指標180を設ける。外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツ150の大径端部151を装着するに際して、外側継手部材110の開口部111からトラック溝112を目視確認しながらガイド溝158の指標180をそのトラック溝位置に合わせることで、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との円周方向の相対位置を容易に合わせることができるので、外側継手部材110に対するブーツ150の組み付け性が向上する。
【0058】
なお、この実施形態では、指標180として、ブーツ150の大径端部151の外周面に一体的に形成した三角形状の突起を例示しているが、ブーツ150の大径端部151の外周面に凹状に形成したものや別体のシール等を固着したものであってもよく、その形状も任意である。また、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位を着色しただけであってもよい。
【0059】
また、前述したように、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位に指標180を設けるだけでなく、図示しないが、外側継手部材110の開口部111の外周面でトラック溝112と対応する部位にも指標を設けるようにしてもよい。このように、ブーツ150と外側継手部材110の両者に指標を設けることにより、外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツ150の大径端部151を装着するに際して、外側継手部材110のトラック溝112の円周方向位置とブーツ150のガイド溝158の円周方向位置とを容易に確認することができるので、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との位置合わせ精度が向上する。
【0060】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0061】
10 外側継手部材
11 開口部
12 トラック溝
14 ローラ案内面
20 内側継手部材(トリポード部材)
22 脚軸
30 転動体(ローラ)
50 ブーツ
51 端部(大径端部)
57 ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位
58 ガイド溝
58a ストッパ面
60 内部部品
80 指標
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、航空機、船舶や各種産業機械の動力伝達系において使用され、例えば4WD車やFR車などで使用されるドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれて駆動側と従動側の二軸間で軸方向変位および角度変位を許容する摺動式等速自在継手に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のエンジンから車輪に回転力を等速で伝達するドライブシャフトやプロペラシャフト等に組み込まれる等速自在継手には、固定式等速自在継手と摺動式等速自在継手の二種がある。これら両者の等速自在継手は、駆動側と従動側の二軸を連結してその二軸が作動角をとっても等速で回転トルクを伝達し得る構造を備えている。
【0003】
自動車のエンジンから駆動車輪に動力を伝達するドライブシャフトは、エンジンと車輪との相対的位置関係の変化による角度変位と軸方向変位に対応する必要があるため、一般的に、エンジン側(インボード側)に摺動式等速自在継手を、駆動車輪側(アウトボード側)に固定式等速自在継手をそれぞれ装備し、両者の等速自在継手をシャフトで連結した構造を具備する。
【0004】
このドライブシャフトに組み付けられる摺動式等速自在継手の一つに、トルク伝達部材としてローラを用いたローラタイプのトリポード型等速自在継手(TJ)がある。また、他の摺動式等速自在継手には、トルク伝達部材としてボールを用いたボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手(DOJ)がある。
【0005】
トリポード型等速自在継手は、一端に開口部を有するカップ状をなし、内周面に軸方向に延びる三本のトラック溝が形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成された外側継手部材と、径方向に突出した三本の脚軸を有するトリポード部材と、そのトリポード部材の脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラとで主要部が構成されている。
【0006】
この種の等速自在継手は、トリポード部材およびローラからなる内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容された構造を具備する。また、トリポード部材の軸孔にはシャフトの一端がスプライン嵌合により連結され、このシャフトの他端には、固定式等速自在継手の内側継手部材がスプライン嵌合により連結されている。さらに、この等速自在継手では、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材の開口部とシャフトとの間に蛇腹状のブーツを装着した構造が一般的である。
【0007】
このトリポード型等速自在継手を自動車に組み付けるに際しては、トリポード型等速自在継手をエンジン側(インボード側)に組み付けた後、固定式等速自在継手を駆動車輪側(アウトボード側)に組み付けるのが一般的である。エンジン側のトリポード型等速自在継手を組み付けた際、駆動車輪側の固定式等速自在継手は車体側の懸架装置に組み付けられておらず完全に垂れ下がった状態となり、さらにロアアームのみに組み付けられて容易に傾く状態もしくはどこにも固定されていないハブベアリング及びナックルが組みつけられることでスライドアウト方向へ大きな荷重がかかる場合がある。
【0008】
このような状態になると、トリポード型等速自在継手の内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じることがある。このようなスライドオーバー時には、内部部品のローラが傾いた状態になったりすることで内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが困難となる。そこで、従来では、このスライドオーバーを防止するため、以下のような抜け止め機構が採用されている。
【0009】
抜け止め機構の一つとしては、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を設け、その環状凹溝にサークリップを嵌着した構造のものがある(例えば、特許文献1参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ローラがサークリップと干渉することでローラの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。
【0010】
また、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手における抜け止め機構としては、ブーツの内周面に、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をトラック溝軸方向で楔となるように設けた構造のものがある(例えば、特許文献2参照)。このような構造とすることにより、内部部品の軸方向変位時、ボールが突起と干渉することでボールの軸方向変位量を規制することにより、内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーを防止するようにしている。なお、この特許文献2では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000−283175号公報
【特許文献2】特開平9−177816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
前述の特許文献1で開示された従来の等速自在継手では、ローラの軸方向変位量を規制するサークリップを外側継手部材に組み付けるため、ブーツの内周面で外側継手部材の開口部近傍部位に環状凹溝を形成しなければならず、ブーツの内周面を溝加工する必要があり、また、サークリップも必要となることから、加工工数および部品点数の増加により製品のコストアップを招くことになる。
【0013】
また、特許文献2に開示された従来の等速自在継手では、外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起をブーツの内周面に設けているため、その突起が外側継手部材のトラック溝に入り込んだ分だけ、内部部品の軸方向摺動範囲が狭くなる。この内部部品の軸方向摺動範囲は外側継手部材のトラック溝の軸方向長さで決まる。その結果、内部部品の軸方向摺動範囲を確保するためには、外側継手部材の軸方向寸法を長くする必要があり、その分、外側継手部材の重量が増大することになる。
【0014】
本発明は前述の問題点に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、加工工数および部品点数を削減することでコスト低減を図ると共に、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保して外側継手部材の軽量化を図り得る摺動式等速自在継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、その外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、転動体および内側継手部材を含む内部部品が外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことを特徴とする。ここで、「ブーツの内周面形状と内部部品の外形形状との一致」とは、完全に一致した状態だけでなく、略一致した状態を含むことを意味する。
【0016】
本発明における摺動式等速自在継手では、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、その内部部品がブーツの内周面形状で規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが容易となる。特に、この摺動式等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重が摺動式等速自在継手のスライドアウト方向にかかってスライドオーバーが生じた場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
【0017】
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
【0018】
本発明において、内部部品の外形形状と一致させた形状としては、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、転動体が転動自在に挿入可能なガイド溝を外側継手部材のトラック溝と同軸に形成した形状が望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品の転動体がブーツのガイド溝に嵌まり込んで規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0019】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、ブーツが最大限に伸長した状態で内部部品を収容可能とする軸方向長さを有することが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、ブーツが最大限に伸長した状態となっても内部部品をブーツの内周面形状で規制することができるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0020】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、外側継手部材の開口部に装着されるブーツの端部よりも厚肉にすることが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品を内周面形状で規制しながら収容するブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位が不必要に変形することを抑制できるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことができる。
【0021】
本発明において、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、転動体が軸方向変位時に係止されるストッパ面を形成した構造が望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、外側継手部材の開口部から飛び出した内部部品の軸方向変位量を規制することができるので、内部部品を外側継手部材に確実に挿入し直すことがより一層容易となる。
【0022】
本発明におけるストッパ面は、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面から一体的に連続して形成されていることが望ましい。このようにすれば、内部部品の軸方向変位時、外側継手部材の開口部から飛び出した内部部品の軸方向変位量を規制するストッパ面を容易に形成することができる。
【0023】
本発明において、ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に、そのガイド溝と外側継手部材のトラック溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた構造が望ましい。このようにすれば、外側継手部材の外周面形状が円形の場合であっても、外側継手部材の開口部の外周面にブーツの端部を装着するに際して、指標に基づいて外側継手部材のトラック溝とブーツのガイド溝との円周方向の相対位置を容易に合わせることができるので、外側継手部材に対するブーツの組み付け性が向上する。
【0024】
また、前記ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に指標を設けた構造に加えて、外側継手部材の開口部の外周面でトラック溝と対応する部位に、そのトラック溝とブーツのガイド溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた構造が望ましい。このようにすれば、外側継手部材の開口部の外周面にブーツの端部を装着するに際して、両者の指標に基づいて外側継手部材のトラック溝の円周方向位置とブーツのガイド溝の円周方向位置とを容易に確認することができるので、外側継手部材のトラック溝とブーツのガイド溝との位置合わせ精度がより一層向上する。
【0025】
本発明における外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、内側継手部材は、先端がトラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、転動体は、脚軸に回転自在に支持されると共に外側継手部材のトラック溝に挿入されてローラ案内面に沿って案内されるローラである構造を具備することが望ましい。つまり、このような構造を具備するローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用可能である。
【0026】
また、本発明における内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在してボールを保持するケージを備えた構造が望ましい。つまり、このような構造を具備するボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手に適用可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、内部部品の軸方向変位時、その内部部品が外側継手部材の開口部から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、その内部部品がブーツの内周面形状で規制されながら軸方向変位するので、内部部品を外側継手部材に挿入し直すことが容易となる。また、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。さらに、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材の軽量化が図れる。
【0028】
このように、ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を内部部品の外形形状と一致させたことにより、低廉化および軽量化が容易に図れる摺動式等速自在継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態で、トリポード型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図2】ブーツ装着前の状態における図1のA矢視図である。
【図3】図1のブーツを示す縦断面図である。
【図4】図3の右側面図である。
【図5】図1の内部部品が軸方向変位してブーツに収容され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図6】図5のB矢視図である。
【図7】図1のブーツにストッパ面を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図8】図7の要部拡大断面図である。
【図9】図7の内部部品が軸方向変位してストッパ面に係止され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図10】図9の要部拡大断面図である。
【図11】本発明に係る摺動式等速自在継手の他の実施形態で、ダブルオフセット型等速自在継手の全体構成を示す縦断面図である。
【図12】ブーツ装着前の状態における図11のC矢視図である。
【図13】図11のブーツを示す縦断面図である。
【図14】図13の右側面図である。
【図15】図11の内部部品が軸方向変位してブーツに収容され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図16】図15のD矢視図である。
【図17】図11のブーツにストッパ面を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図18】図17の内部部品が軸方向変位してストッパ面に係止され、そのブーツが最大限に伸長した状態を示す縦断面図である。
【図19】図13のブーツに指標を設けた他の実施形態を示す縦断面図である。
【図20】図19の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に係る摺動式等速自在継手の実施形態を以下に詳述する。以下の実施形態では、シングルローラタイプのトリポード型等速自在継手を例示する。なお、本発明は、このシングルローラタイプ以外に、作動時の低振動化を可能としたダブルローラタイプのトリポード型等速自在継手にも適用可能である。また、本発明は、トリポード型等速自在継手以外に、ボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手のような他の摺動式等速自在継手にも適用可能である。
【0031】
図1および図2はシングルローラタイプのトリポード型等速自在継手の基本構成を示し、図1は継手の軸線に対する縦断面図、図2はブーツ装着前の状態での継手のA矢視図である(但し、一つのローラ30のみを断面で示す)。この実施形態のトリポード型等速自在継手は、外側継手部材10と、内側継手部材であるトリポード部材20と、転動体であるローラ30とで主要部が構成されている。
【0032】
外側継手部材10は、一端に開口部11を有するカップ状をなし、その底部中央に軸部13が一体的に形成されている。外側継手部材10の内周面には、軸方向に延びる三本の直線状トラック溝12が円周方向等間隔に形成される。各トラック溝12は、その内側両壁に互いに対向する一対のローラ案内面14を有する。ローラ案内面14は円弧状断面を有し、外側継手部材10の軸線方向に直線状に延びる。外側継手部材10の外周面は、軽量化のため、トラック溝12間と対応する部位が減肉されて凹部15が軸方向に形成されている。この外側継手部材10の内部には、トリポード部材20とローラ30からなる内部部品60が軸方向摺動自在に収容されている。
【0033】
トリポード部材20は、円筒状をなすボス21の外周面に三本の脚軸22が円周方向等間隔(120°間隔)で放射状に一体形成されたものである。脚軸22は、その先端がトラック溝12の底部付近まで半径方向に延在し、その外周面は一般的に円筒面とされている。ボス21の軸孔にシャフト40の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング41によりトリポード部材20に対して抜け止めされている。
【0034】
外側継手部材10のトラック溝12のローラ案内面14と脚軸22の外周面との間に針状ころ31を介してローラ30が回転自在に配設される。ローラ30の外周面は縦断面円弧状とされ、ローラ案内面14とアンギュラ接触により二箇所で接触する場合と、サーキュラ接触により一箇所で接触する場合がある。一方、ローラ30の内周面は、円筒状に形成されている。このローラ30と脚軸22との間に、複数の針状ころ31が、保持器のない、いわゆる単列総ころ状態で配設されている。脚軸22の外周面は針状ころ31の内側転動面を構成し、ローラ30の内周面は針状ころ31の外側転動面を構成している。
【0035】
これら針状ころ31は、脚軸22の付け根部に外嵌されたインナワッシャ32と半径方向内側で接すると共に、脚軸22の先端部に外嵌されたアウタワッシャ33と半径方向外側で接している。このアウタワッシャ33は、脚軸22の先端部に形成された環状溝23に丸サークリップ等の止め輪34を嵌合させることにより抜け止めされている。
【0036】
この等速自在継手では、トリポード部材20の脚軸22と外側継手部材10のローラ案内面14とがローラ30を介して二軸の回転方向に係合することにより、駆動側から従動側へ回転トルクが等速で伝達される。また、ローラ30が脚軸22に対して回転しながらローラ案内面14上を転動することにより、外側継手部材10とトリポード部材20との間の相対的な軸方向変位や角度変位が許容される。
【0037】
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材10とシャフト40との間に、外側継手部材10の開口部11を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ50を装着した構造を具備する。このように、外側継手部材10およびブーツ50の内部空間に潤滑剤を封入することにより、外側継手部材10に対してシャフト40が作動角をとりながら回転する動作時において、継手内部の摺動部位、つまり、外側継手部材10、トリポード部材20およびローラ30で構成される摺動部位での潤滑性を確保するようにしている。
【0038】
ブーツ50は、外側継手部材10の開口部11の外周面にブーツバンド54により締め付け固定された大径端部51と、トリポード部材20から延びるシャフト40の外周面にブーツバンド55により締め付け固定された小径端部52と、大径端部51と小径端部52とを繋ぎ、その大径端部51から小径端部52へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部53とで構成されている。なお、ブーツ50の大径端部51の内周面は、外側継手部材10の外周面形状に対応させて、トラック溝12間と対応する部位に凸部56が軸方向に形成されている。また、ブーツ50の大径端部51の外周面は円形形状を有する。
【0039】
この実施形態の等速自在継手では、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品60を外側継手部材10に挿入し直すことが容易なように、図1に示すように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面形状を内部部品60の外形形状と一致させた抜け戻し構造を採用している(図3および図4参照)。
【0040】
つまり、この抜け戻し構造は、内部部品60の外形形状と一致させた形状として、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が転動自在に挿入可能なガイド溝58を外側継手部材10のトラック溝12と同軸に形成した形状としている。このガイド溝58は外側継手部材10のトラック溝12と同一形状を有する。ここで、図5および図6は、内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じた状態を示す。抜け戻し構造におけるブーツ50の内周面形状では、同図に示すように、ガイド溝58の底部に脚軸22の先端部が当接すると共にその底部の両側に位置する側壁部にローラ30が当接し、ガイド溝58間に位置して径方向内側へ突出する膨出部59にボス21の外周面が当接している。
【0041】
図5および図6に示すように、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面形状を内部部品60の外形形状と一致させたことにより、その内部部品60がブーツ50の内周面形状で規制されながら軸方向変位する。つまり、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57に収容された内部部品60は、ローラ30がブーツ50のガイド溝58に嵌まり込むと共にトリポード部材20のボス21が膨出部59に当接した状態で規制されながら軸方向変位する。その結果、内部部品60を外側継手部材10に挿入し直すことが容易となる。特に、このトリポード型等速自在継手をドライブシャフトとして自動車に組み付けるに際して、固定式等速自在継手、ハブベアリングおよびナックルの荷重がトリポード型等速自在継手のスライドアウト方向にかかってスライドオーバーが生じた場合に有効で、この等速自在継手の組み付け性が向上する。
【0042】
このように、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品60のローラ30がブーツ50のガイド溝58に嵌まり込んで規制されながら軸方向変位するので、そのローラ30を外側継手部材10のトラック溝12に確実に挿入し直すことができる。なお、内部部品60が外側継手部材10の開口部11から飛び出すスライドオーバー時、等速自在継手が角度をとって傾いた状態であっても、その角度を0°に戻すことにより、内部部品60のローラ30はブーツ50のガイド溝58に収まり、外側継手部材10のトラック溝12に確実に挿入し直すことができる。
【0043】
一方、従来のような環状凹溝形成のための加工、サークリップのような別部品を不要とすることができるので、加工工数および部品点数の削減によりコスト低減が図れる。また、従来のように外側継手部材の開口部内側に嵌まり込む突起を設けることがないので、外側継手部材10の軸方向寸法を長くすることなく、内部部品60の軸方向摺動範囲を確保することができて外側継手部材10の軽量化が図れる。
【0044】
この抜け戻し構造において、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、図5に示すように、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態で内部部品60を収容可能とする軸方向長さL1を有する。このように、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態で内部部品60を収容可能とする軸方向長さL1を有することにより、内部部品60の軸方向変位時、ブーツ50の蛇腹部53が最大限に伸長した状態となっても、内部部品60をブーツ50の内周面形状で規制することができるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことができる。
【0045】
また、この抜け戻し構造において、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、外側継手部材10の開口部11に装着される大径端部51よりも厚肉としている。このように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57を、外側継手部材10の開口部11に装着される大径端部51よりも厚肉としたことにより、内部部品60の軸方向変位時、その内部部品60を内周面形状で規制しながら収容するブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57が不必要に変形することを抑制できるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことができる。また、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57は、蛇腹状となっていないことから、軸方向に伸縮することはない。
【0046】
図7〜図10は、本発明の他の実施形態を説明するためのもので、図7および図8に示すように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面の軸方向端部でローラ30が当接するガイド溝58の側壁部に、ローラ30が軸方向変位時に係止されるストッパ面58aを形成するようにしてもよい。このように、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、ローラ30が軸方向変位時に係止されるストッパ面58aを形成することにより、図9および図10に示すように、内部部品60の軸方向変位時、ローラ30がストッパ面58aに係止されることで、外側継手部材10の開口部11から飛び出した内部部品60の軸方向変位量を規制することができるので、内部部品60を外側継手部材10に確実に挿入し直すことが容易となる。
【0047】
このストッパ面58aは、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面に、その内周面から一体的に連続して形成されている。このように、ストッパ面58aを、ブーツ50の外側継手部材10の開口部11から延びる部位57の内周面から一体的に連続して形成することにより、そのストッパ面58aを容易に形成することができる。なお、この実施形態では、ストッパ面58aをローラ30の外周面と対応させた凹曲面形状としているが、テーパ面形状などの他の形状であってもよい。
【0048】
以上の実施形態では、ローラタイプのトリポード型等速自在継手に適用した場合について説明したが、図11および図12に示すボールタイプのダブルオフセット型等速自在継手にも適用可能である。図11は継手の軸線に対する縦断面図、図12はブーツ装着前の状態での継手のC矢視図である。このダブルオフセット型等速自在継手は、図11および図12に示すように、外側継手部材110、内側継手部材120、転動体であるボール130およびケージ170で主要部が構成されている。
【0049】
この等速自在継手は、一端に開口部111を有するカップ状をなし、軸方向に延びる直線状トラック溝112が内周面の複数箇所に形成された外側継手部材110と、軸方向に延びる直線状トラック溝122が外側継手部材110のトラック溝112と対をなして外周面の複数箇所に形成された内側継手部材120と、外側継手部材110のトラック溝112と内側継手部材120のトラック溝122との間に配されたボール130と、外側継手部材110の内周面と内側継手部材120の外周面との間に介在してボール130を保持するケージ170とを備えた構造である。
【0050】
なお、この実施形態では、6個ボールの等速自在継手を例示するが、8個ボールの等速自在継手にも適用可能であり、ボール130の個数は任意である。この外側継手部材110の内部には、内側継手部材120、ボール130およびケージ170からなる内部部品160が軸方向摺動自在に収容されている。また、内側継手部材120の軸孔にシャフト140の軸端がスプライン嵌合により連結され、環状のスナップリング141により内側継手部材120に対して抜け止めされている。
【0051】
この種の等速自在継手は、継手内部に封入されたグリース等の潤滑剤の漏洩を防ぐと共に継手外部からの異物侵入を防止するため、外側継手部材110とシャフト140との間に、外側継手部材110の開口部111を閉塞するゴムまたは樹脂製のブーツ150を装着した構造を具備する。ブーツ150は、外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツバンド154により締め付け固定された大径端部151と、内側継手部材120から延びるシャフト140の外周面にブーツバンド155により締め付け固定された小径端部152と、大径端部151と小径端部152とを繋ぎ、その大径端部151から小径端部152へ向けて縮径した伸縮自在な蛇腹部153とで構成されている。
【0052】
この実施形態の等速自在継手において、内部部品160の軸方向変位時、その内部部品160が外側継手部材110の開口部111から飛び出すスライドオーバーが生じても、内部部品160が外側継手部材110に挿入し直すことを容易にする抜け戻し構造として、図11に示すように、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面を内部部品160の外形形状と一致させた形状としている(図13および図14参照)。つまり、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面に、ボール130が転動自在に挿入可能なガイド溝158を外側継手部材110のトラック溝112と同軸に形成した形状としている。このガイド溝158は外側継手部材110のトラック溝112と同一形状を有する。
【0053】
図15および図16に示すように、内部部品160の軸方向変位時、その内部部品160が外側継手部材110の開口部111から飛び出すスライドオーバーが生じても、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面形状を内部部品160の外形形状と一致させたことにより、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157に収容された内部部品160は、ボール130がブーツ150のガイド溝158に嵌まり込んで当接すると共にケージ170がガイド溝158間に当接した状態で規制されながら軸方向変位する。その結果、内部部品160のボール130を外側継手部材110のトラック溝112に確実に挿入し直すことができる。
【0054】
この抜け戻し構造において、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157が、図15に示すように、ブーツ150の蛇腹部153が最大限に伸長した状態で内部部品160を収容可能とする軸方向長さL2を有する点や、外側継手部材110の開口部111に装着される大径端部151よりも厚肉である点については、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様であり、その作用効果も同様であるため、重複説明は省略する。
【0055】
また、図17に示すように、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面の軸方向端部でボール130が当接するガイド溝158の底部に、ボール130が軸方向変位時に係止されるストッパ面158aを形成するようにしてもよい。図18に示すように、内部部品160の軸方向変位時、外側継手部材110の開口部111から飛び出した内部部品160の軸方向変位量を、ストッパ面158aにボール130を係止させることで規制することができるので、内部部品160を外側継手部材110に確実に挿入し直すことが容易となる。なお、ストッパ面158aが、ブーツ150の外側継手部材110の開口部111から延びる部位157の内周面に、その内周面から一体的に連続して形成されている点や、ボール130と対応させた凹曲面形状としている点については、前述のトリポード型等速自在継手の実施形態と同様である。
【0056】
前述の実施形態で説明したトリポード型等速自在継手は、外側継手部材10の外周面に凹部15が設けられ、ブーツ50の大径端部51の内周面に、外側継手部材10の凹部15と対応させて凸部56が形成された構造を備えている(図2および図4参照)。外側継手部材10にブーツ50を組み付けるに際しては、この凹部15と凸部56との凹凸嵌合でもって、外側継手部材10のトラック溝12とブーツ50のガイド溝58とを同軸上に円周方向で位相合わせすることが容易である。しかしながら、ダブルオフセット型等速自在継手の場合、外側継手部材110の外周面が円形形状であるため(図12参照)、外側継手部材110に対するブーツ150の組み付け時、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との位相合わせが困難である。
【0057】
そこで、ダブルオフセット型等速自在継手のように外側継手部材110の外周面が円形形状である場合、図19および図20に示すように、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位に指標180を設ける。外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツ150の大径端部151を装着するに際して、外側継手部材110の開口部111からトラック溝112を目視確認しながらガイド溝158の指標180をそのトラック溝位置に合わせることで、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との円周方向の相対位置を容易に合わせることができるので、外側継手部材110に対するブーツ150の組み付け性が向上する。
【0058】
なお、この実施形態では、指標180として、ブーツ150の大径端部151の外周面に一体的に形成した三角形状の突起を例示しているが、ブーツ150の大径端部151の外周面に凹状に形成したものや別体のシール等を固着したものであってもよく、その形状も任意である。また、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位を着色しただけであってもよい。
【0059】
また、前述したように、ブーツ150の大径端部151の外周面でガイド溝158と対応する部位に指標180を設けるだけでなく、図示しないが、外側継手部材110の開口部111の外周面でトラック溝112と対応する部位にも指標を設けるようにしてもよい。このように、ブーツ150と外側継手部材110の両者に指標を設けることにより、外側継手部材110の開口部111の外周面にブーツ150の大径端部151を装着するに際して、外側継手部材110のトラック溝112の円周方向位置とブーツ150のガイド溝158の円周方向位置とを容易に確認することができるので、外側継手部材110のトラック溝112とブーツ150のガイド溝158との位置合わせ精度が向上する。
【0060】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0061】
10 外側継手部材
11 開口部
12 トラック溝
14 ローラ案内面
20 内側継手部材(トリポード部材)
22 脚軸
30 転動体(ローラ)
50 ブーツ
51 端部(大径端部)
57 ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位
58 ガイド溝
58a ストッパ面
60 内部部品
80 指標
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して前記外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記転動体および内側継手部材を含む内部部品が前記外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、前記外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を前記開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、
前記ブーツの前記外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を前記内部部品の外形形状と一致させたことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、前記転動体が転動自在に挿入可能なガイド溝を前記外側継手部材のトラック溝と同軸に形成した請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、前記ブーツが最大限に伸長した状態で前記内部部品を収容可能とする軸方向長さを有する請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、前記外側継手部材の開口部に装着されるブーツの端部よりも厚肉にした請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、前記転動体が軸方向変位時に係止されるストッパ面を形成した請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項6】
前記ストッパ面は、前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面から一体的に連続して形成されている請求項5に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項7】
前記ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に、前記ガイド溝と外側継手部材のトラック溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項8】
前記外側継手部材の開口部の外周面でトラック溝と対応する部位に、前記トラック溝と前記ブーツのガイド溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項9】
前記外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、前記内側継手部材は、先端が前記トラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、前記転動体は、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に挿入されて前記ローラ案内面に沿って案内されるローラである請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項10】
前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージを備えた請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項1】
一端に開口部を有するカップ状をなし、軸方向に延びるトラック溝が内周面の円周方向複数箇所に形成された外側継手部材と、前記外側継手部材のトラック溝に転動自在に挿入された転動体を介して前記外側継手部材との間で角度変位を許容しながらトルクが伝達される内側継手部材とを備え、前記転動体および内側継手部材を含む内部部品が前記外側継手部材に軸方向摺動自在に収容され、前記外側継手部材の開口部を閉塞するブーツの端部を前記開口部の外周面に装着した摺動式等速自在継手であって、
前記ブーツの前記外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面形状を前記内部部品の外形形状と一致させたことを特徴とする摺動式等速自在継手。
【請求項2】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、前記転動体が転動自在に挿入可能なガイド溝を前記外側継手部材のトラック溝と同軸に形成した請求項1に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項3】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、前記ブーツが最大限に伸長した状態で前記内部部品を収容可能とする軸方向長さを有する請求項1又は2に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項4】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位は、前記外側継手部材の開口部に装着されるブーツの端部よりも厚肉にした請求項1〜3のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項5】
前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面に、前記転動体が軸方向変位時に係止されるストッパ面を形成した請求項1〜4のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項6】
前記ストッパ面は、前記ブーツの外側継手部材の開口部から延びる部位の内周面から一体的に連続して形成されている請求項5に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項7】
前記ブーツの端部の外周面でガイド溝と対応する部位に、前記ガイド溝と外側継手部材のトラック溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた請求項1〜6のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項8】
前記外側継手部材の開口部の外周面でトラック溝と対応する部位に、前記トラック溝と前記ブーツのガイド溝との円周方向位置を合わせるための指標を設けた請求項7に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項9】
前記外側継手部材は、軸線方向に延びる三本のトラック溝が内周面に形成されると共に各トラック溝の内側壁に互いに対向するローラ案内面が形成され、前記内側継手部材は、先端が前記トラック溝内に挿入された三本の脚軸を有するトリポード部材であり、前記転動体は、前記脚軸に回転自在に支持されると共に前記外側継手部材のトラック溝に挿入されて前記ローラ案内面に沿って案内されるローラである請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【請求項10】
前記内側継手部材は、軸方向に延びる直線状トラック溝が前記外側継手部材のトラック溝と対をなして外周面の複数箇所に形成され、前記転動体は、外側継手部材のトラック溝と内側継手部材のトラック溝との間に配されたボールであり、前記外側継手部材の内周面と内側継手部材の外周面との間に介在して前記ボールを保持するケージを備えた請求項1〜8のいずれか一項に記載の摺動式等速自在継手。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−226588(P2011−226588A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97893(P2010−97893)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】
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