説明

摺動材

【課題】 大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得る摺動材を提供する。
【解決手段】 基材100上に設けられる摺動材110であって、フッ素含有ダイヤモンド・ライク・カーボン(F−DLC)からなる第一の層111と、第一の層111上に設けられてフッ素含有ポリマー・ライク・カーボン(F−PLC)からなる第二の層112とを備えると共に、第一の層111と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてフッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)からなる基礎層113を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得る摺動材に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)は、摺動材として優れた摩擦特性を発現する材料であるものの、宇宙空間等のような真空環境においては十分に満足できる摩擦特性を発現し得なかった(下記特許文献1〜3等参照)。このため、宇宙空間等の真空環境においては、二硫化モリブデン(MoS2)が摺動材として使用されている。
【0003】
しかしながら、二硫化モリブデンからなる摺動材は、大気中、特に高湿度雰囲気に曝されると摩擦特性が著しく低下してしまう。このため、宇宙空間等の真空環境へ移動する前の打ち上げの際のような大気雰囲気中に二硫化モリブデンからなる摺動材が曝されてしまうときには、当該摺動材を乾燥窒素雰囲気中にシールするようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−003262号公報
【特許文献2】特開2002−020869号公報
【特許文献3】特開2003−254341号公報
【非特許文献1】材料技術研究協会 表面改質技術総覧編集委員会編,「実用 表面改質技術総覧」,初版,株式会社産業技術サービスセンター,1993年3月25日
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述したように、二硫化モリブデンからなる摺動材が大気雰囲気中に曝されてしまうときには、当該摺動材を乾燥窒素雰囲気中にシールする必要があるため、二硫化モリブデンからなる摺動材は、その管理に手間やコストが非常にかかっていた。
【0006】
このようなことから、本発明は、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得る摺動材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る摺動材は、基材上に設けられる摺動材であって、フッ素含有ダイヤモンド・ライク・カーボンからなる第一の層と、前記第一の層上に設けられてフッ素含有ポリマー・ライク・カーボン又はフッ素含有グラッシー・カーボンからなる第二の層とを備えていることを特徴とする。
【0008】
第二番目の発明に係る摺動材は、第一番目の発明において、前記第一の層と前記基材との間に位置するように当該基材上に設けられてフッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボンからなる基礎層を備えていることを特徴とする。
【0009】
第三番目の発明に係る摺動材は、第一番目又は第二番目の発明において、前記第二の層と接する前記第一の層が、当該第二の層側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有していることを特徴とする。
【0010】
第四番目の発明に係る摺動材は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、前記第一の層と前記第二の層とが交互に複数設けられていることを特徴とする。
【0011】
第五番目の発明に係る摺動材は、第四番目の発明において、隣り合う前記第二の層の間に介在する前記第一の層が、フッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボンからなる中間部を積層方向中央部分に有していることを特徴とする。
【0012】
第六番目の発明に係る摺動材は、第一番目、第二番目、第四番目の発明のいずれかにおいて、前記第一の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜2.0原子%であることを特徴とする。
【0013】
第七番目の発明に係る摺動材は、第三番目又は第五番目の発明において、前記第一の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で10.0原子%以下であることを特徴とする。
【0014】
第八番目の発明に係る摺動材は、第一番目から第五番目の発明のいずれかにおいて、フッ素含有ポリマー・ライク・カーボンからなるときの前記第二の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜20.0原子%であることを特徴とする。
【0015】
第九番目の発明に係る摺動材は、第一番目から第五番目の発明のいずれかにおいて、フッ素含有グラッシー・カーボンからなるときの前記第二の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜10.0原子%であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る摺動材によれば、第一の層がフッ素含有ダイヤモンド・ライク・カーボンからなるので、大気中だけでなく真空中でも高い摩擦特性を発現することができると共に、フッ素含有ポリマー・ライク・カーボン又はフッ素含有グラッシー・カーボンからなる第二の層が第一の層上に設けられているので、表面側から衝撃が加わったときに表面側が比較的容易に欠損して内部側へのダメージを抑制することができる。このため、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得ると共に、耐久性(寿命性)を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る摺動材の実施形態を図面に基づいて以下に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
[摺動材]
〈第一番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の第一番目の実施形態を図1に基づいて以下に説明する。図1は、摺動材の概略構成図である。
【0019】
本実施形態に係る摺動材は、図1に示すように、基材100上に設けられる摺動材110であって、フッ素含有ダイヤモンド・ライク・カーボン(F−DLC)からなる第一の層111と、第一の層111上に設けられてフッ素含有ポリマー・ライク・カーボン(F−PLC)からなる第二の層112とを備えると共に、第一の層111と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてフッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボン(DLC)からなる基礎層113を備えている。
【0020】
前記第一の層(F−DLC)111は、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とすることにより、容易に形成することができる。
【0021】
このようにして形成される第一の層(F−DLC)111は、ラマン分光分析により、D−バンド及びG−バンドのピークが確認されると共に、光電子分光分析により、炭素とフッ素との結合が確認され、さらに、硬度が10〜30GPaと高いことから、DLC構造をベースにフッ素を含有した構造を有していると推定される。このような第一の層(F−DLC)111においては、フッ素を含有しないDLCよりも、撥水性が高い、すなわち、表面エネルギが低いので、大気中だけでなく真空中でも高い摩擦特性を発現することができるようになる。
【0022】
前記第二の層(F−PLC)112は、上記第一の層(F−DLC)111の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100V未満、パルスの場合で−20kV未満(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とする、すなわち、第一の層(F−DLC)111を成膜するときの印加電圧を変更することにより、容易に形成することができる。
【0023】
このようにして形成される第二の層(F−PLC)112は、その詳細な構造が明らかではないが、ラマン分光分析によりピークが確認できないと共に、硬度が2〜10Gpaと低いことから、フッ素原子が結合するポリマーに近似した構造を有していると推定される。このような第二の層(F−PLC)112においては、第一の層(F−DLC)111よりも、硬度が2〜10Gpaと低いため、衝撃に対する緩衝性(自己損壊によるバッファ機能)が発現される。
【0024】
前記基礎層(DLC)113は、上記第一,二の層111,112の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜−1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とする、すなわち、第一の層(F−DLC)111を成膜するときのフッ素源を省略することにより、容易に形成することができる。
【0025】
このようにして形成される基礎層(DLC)113は、ラマン分光分析により、D−バンド及びG−バンドのピークが確認されると共に、硬度が10〜80Gpaと非常に高いことから、ダイヤモンドに近似した構造を有していると推定される。このような基礎層(DLC)111においては、基材100及び第一の層(F−DLC)111の両者に対して結合力が高いので、第一の層(F−DLC)111を基材100に確実に結合させるバインダとしての機能が発現される。
【0026】
このような本実施形態に係る摺動材110においては、第一の層111がF−DLCからなるので、大気中だけでなく真空中でも高い摩擦特性を発現することができると共に、F−PLCからなる第二の層112が第一の層111上に設けられているので、表面側から衝撃が加わったときに表面側が比較的容易に欠損して内部側へのダメージを抑制することができる。
【0027】
したがって、本実施形態に係る摺動材110によれば、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得ると共に、耐久性(寿命性)を高めることができるので、二硫化モリブデンからなる摺動材のように乾燥窒素雰囲気中にシールする必要がなく、その管理にかかる手間やコストを大幅に削減することができる。
【0028】
また、第一の層(F−DLC)111と基材100との間に位置するように当該基材100上に基礎層(DLC)113を設けたので、第一の層(F−DLC)111を基材100に確実に結合させることができ、基材100から剥離してしまうことを大幅に抑制することができる。
【0029】
なお、第一の層(F−DLC)111のフッ素含有量は、炭素に対する割合で0.5〜2.0原子%であると好ましい。なぜなら、0.5原子%未満であると、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現することが難しくなってしまい、2.0原子%を超えると、内部応力が高くなって剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0030】
また、第二の層(F−PLC)112のフッ素含有量は、炭素に対する割合で0.5〜20.0原子%であると好ましい。なぜなら、0.5原子%未満であると、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現することが難しくなってしまい、20.0原子%を超えると、剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0031】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の第二番目の実施形態を図2に基づいて以下に説明する。図2は、摺動材の概略構成図である。なお、前述した第一番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0032】
本実施形態に係る摺動材は、図2に示すように、基材100上に設けられる摺動材120であって、F−DLCからなる第一の層121と、第一の層121上に設けられてF−PLCからなる第二の層112とを備えると共に、第一の層121と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてDLCからなる基礎層113を備え、第二の層112と接する第一の層121が、第二の層112側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有しているものである。
【0033】
前記第一の層(F−DLC)121は、前述した第一番目の実施形態の第一の層(F−DLC)111の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とし、さらに、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量を増加させるように、フッ素源の供給量を徐々に増加させる(例えば、当初(基礎層113側)のフッ素の供給量を0とし、最終(第二の層112側)のフッ素の供給量を10.0原子%とする)ことにより、容易に形成することができる。
【0034】
つまり、本実施形態に係る摺動材120は、前述した第一番目の実施形態に係る摺動材110のフッ素含有量が均一な第一の層(F−DLC)111を、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有する第一の層(F−DLC)121に代えたものなのである。
【0035】
このような第一の層(F−DLC)121においては、基礎層(DLC)113側ほどフッ素含有量が少なく、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量が増加する傾斜組成を有していることから、基礎層(DLC)113及び第二の層(F−PLC)112に対する界面組成を近似させることができるので、前述した第一番目の実施形態の場合よりも、基礎層(DLC)113に対する結合性をさらに高めることができると共に、フッ素含有に伴う積層方向の結晶歪みを緩和することができるので、前述した第一番目の実施形態の場合よりも、膜厚を厚くすることや、第二の層(F−PLC)112側のフッ素含有量を増やすことが可能となる。
【0036】
したがって、本実施形態に係る摺動材120によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第一番目の実施形態の場合よりも、摩擦特性及び耐久性(寿命性)をさらに高めることができる。
【0037】
なお、第一の層(F−DLC)121のフッ素含有量は、炭素に対する割合で10.0原子%までの傾斜組成であると好ましい。なぜなら、10.0原子%を超えると、内部応力が高くなって剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0038】
〈第三番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の第三番目の実施形態を図3に基づいて以下に説明する。図3は、摺動材の概略構成図である。なお、前述した第一,二番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0039】
本実施形態に係る摺動材は、図3に示すように、基材100上に設けられる摺動材130であって、F−DLCからなる第一の層111と、第一の層111上に設けられてF−PLCからなる第二の層112とを備えると共に、第一の層111と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてDLCからなる基礎層113を備え、第一の層111と第二の層112とを交互に複数(本実施形態では2層ずつ)設けたものである。
【0040】
つまり、本実施形態に係る摺動材130は、前述した第一番目の実施形態に係る摺動材110の第一の層(F−DLC)111及び第二の層(F−PLC)112を交互に複数積層したものなのである。
【0041】
このような本実施形態に係る摺動材130においては、第一の層(F−DLC)111と第二の層(F−PLC)112とを交互に複数積層しているので、前述した第一番目の実施形態の場合よりも厚膜化を図ることが容易にできると共に、衝撃に対する緩衝性(自己損壊によるバッファ機能)を有する第二の層(F−PLC)112を表面だけでなく内部にも介在させることができる。
【0042】
したがって、本実施形態に係る摺動材130によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第一番目の実施形態の場合よりも、摩擦特性及び耐久性(寿命性)をさらに高めることができる。
【0043】
〈第四番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の第四番目の実施形態を図4に基づいて以下に説明する。図4は、摺動材の概略構成図である。なお、前述した第一〜三番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一〜三番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜三番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0044】
本実施形態に係る摺動材は、図4に示すように、基材100上に設けられる摺動材140であって、F−DLCからなる第一の層121,141と、第一の層121,141上に設けられてF−PLCからなる第二の層112とを備えると共に、第一の層121と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてDLCからなる基礎層113を備え、第一の層121,141と第二の層112とを交互に複数(本実施形態では2層ずつ)設け、第二の層112と接する第一の層121,141が、当該第二の層112側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有しているものである。
【0045】
隣り合う第二の層112の間に介在する前記第一の層(F−DLC)141は、前述した第二番目の実施形態の第一の層(F−DLC)121の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とし、さらに、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量を増加させるように、フッ素源の供給量を徐々に減少させた後に徐々に増加させる(例えば、当初(先に積層されている第二の層112側)のフッ素の供給量を10.0原子量%として積層方向中程で0.5原子%となるように徐々に減少させて第一の傾斜組成部141aを形成したら、最終(次に積層する第二の層112側)のフッ素の供給量を再び10.0原子量%とするように徐々に増加させて第二の傾斜組成部141bを形成する)ことにより、容易に形成することができる。
【0046】
つまり、本実施形態に係る摺動材140は、前述した第三番目の実施形態に係る摺動材130の複数積層している第一の層(F−DLC)111を、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有する第一の層(F−DLC)121,141に代えたものなのである。
【0047】
このような第一の層(F−DLC)141においては、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量が増加する前記傾斜組成部141a,141bを有していることから、フッ素含有に伴う積層方向の結晶歪みを緩和することができるので、前述した第三番目の実施形態の場合よりも、膜厚を厚くすることや、第二の層(F−PLC)112側(積層方向両端側)のフッ素含有量を増やすことが可能となる。
【0048】
したがって、本実施形態に係る摺動材140によれば、前述した第三番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第三番目の実施形態の場合よりも、摩擦特性及び耐久性(寿命性)をさらに高めることができる。
【0049】
なお、第一の層(F−DLC)141のフッ素含有量は、炭素に対する割合で0.5〜10.0原子%の範囲の傾斜組成であると好ましい。なぜなら、0.5原子%未満になると、フッ素を含有させる効果が生じなくなってしまい、10.0原子%を超えると、内部応力が高くなって剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0050】
〈第五番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の第五番目の実施形態を図5に基づいて以下に説明する。図5は、摺動材の概略構成図である。なお、前述した第一〜四番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一〜四番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜四番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0051】
本実施形態に係る摺動材は、図5に示すように、基材100上に設けられる摺動材150であって、F−DLCからなる第一の層121,151と、第一の層121,151上に設けられてF−PLCからなる第二の層112とを備えると共に、第一の層121と基材100との間に位置するように当該基材100上に設けられてDLCからなる基礎層113を備え、第一の層121,151と第二の層112とを交互に複数(本実施形態では2層ずつ)設け、第二の層112と接する第一の層121,151が、当該第二の層112側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有すると共に、隣り合う第二の層112の間に介在する第一の層151が、フッ素を含有しないDLCからなる中間部151cを積層方向中央部分に有しているものである。
【0052】
隣り合う第二の層112の間に介在する前記第一の層(F−DLC)151は、前述した第四番目の実施形態の第一の層(F−DLC)141の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を300℃未満とし、さらに、第二の層(F−PLC)112側ほどフッ素含有量を増加させるように、フッ素源の供給量を徐々に減少させて0とした後、しばらくしてから徐々に増加させる(例えば、当初(先に積層されている第二の層112側)のフッ素の供給量を10.0原子量%として0となるように徐々に減少させて第一の傾斜組成部151aを形成した後、そのままの状態でしばらく成膜して中間部151cを形成したら、最終(次に積層する第二の層112側)のフッ素の供給量を再び10.0原子量%とするように0から徐々に増加させて第二の傾斜組成部151bを形成する)ことにより、容易に形成することができる。
【0053】
つまり、本実施形態に係る摺動材150は、前述した第四番目の実施形態に係る摺動材140の隣り合う第二の層112の間に介在する第一の層(F−DLC)141を、フッ素を含有しないDLCからなる中間部151cを有する第一の層(F−DLC)151に代えたものなのである。
【0054】
このような第一の層(F−DLC)151においては、フッ素を含有しないDLCからなる中間部151cを有していることから、前述した第三番目の実施形態の場合よりも、膜厚をさらに厚くすることが可能となる。
【0055】
したがって、本実施形態に係る摺動材150によれば、前述した第四番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第四番目の実施形態の場合よりも、全体の厚さを厚くすることが容易にできる。
【0056】
なお、第一の層(F−DLC)151の前記傾斜組成部151a,151bのフッ素含有量は、炭素に対する割合で10.0原子%までの傾斜組成であると好ましい。なぜなら、10.0原子%を超えると、内部応力が高くなって剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0057】
〈他の実施形態〉
なお、前述した第一〜五番目の実施形態では、F−PLCからなる第二の層112を適用した場合について説明したが、他の実施形態として、フッ素含有グラッシー・カーボン(F−GC)からなる第二の層を適用することも可能である。
【0058】
このようなF−GCからなる第二の層は、前述したF−PLCからなる第二の層(F−DLC)112の場合と同様に、CVD法,スパッタ法,イオンプレーティング法,イオンビーム蒸着法,プラズマイオン注入法等において、メタン,アセチレン等(気体)や、グラファイト等(固体)を炭素源に用いると共に、CF4,C26等をフッ素源に用い、印加電圧を、直流の場合で−100〜−1000V、パルスの場合で−1〜−20kV(パルス電圧を全成膜時間で均したときに、直流の場合の成膜条件に相当するduty比での値)とし、成膜温度を500℃未満とする、すなわち、第一の層(F−DLC)111,121,141,151を成膜するときの成膜温度を変更することにより、容易に形成することができる。
【0059】
このようにして形成される第二の層(F−GC)は、ラマン分光分析により、シャープなD−バンド及びG−バンドのピークが確認されると共に、光電子分光分析により、炭素とフッ素との結合が確認され、さらに、硬度が2〜10Gpaと低く、成膜温度が高いことから、フッ素原子が配位するグラファイトに近似した構造を有していると推定される。このような第二の層(F−GC)においては、前述したF−PLCからなる第二の層112の場合と同様に、硬度が2〜10Gpaと低いため、衝撃に対する緩衝性(自己損壊によるバッファ機能)を発現することができる。
【0060】
なお、F−GCからなる第二の層のフッ素含有量は、炭素に対する割合で0.5〜10.0原子%であると好ましい。なぜなら、0.5原子%未満であると、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現することが難しくなってしまい、10.0原子%を超えると、剥離を生じやすくなってしまうからである。
【0061】
[製造装置]
〈第一番目の実施形態〉
次に、本発明に係る摺動材の製造装置の第一番目の実施形態(イオンビーム法)を図6に基づいて説明する。図6は、製造装置の概略構成図である。
【0062】
図6に示すように、本実施形態に係る摺動材の製造装置は、真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたホルダー3と、当該ホルダー3の対向位置に設置されたイオン源5とから構成される。
【0063】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気される。ホルダー3は、摺動材110,120,130,140を形成する基材100を真空容器1内に保持するための台であり、その内部には図示していない電源、温調器に接続された加熱ヒーター4が設置されている。ホルダー3は固定タイプであるが、摺動材110,120,130,140を均一に成膜するために回転機構を備えても良い。
【0064】
イオン源5にはガス導入口6が設置され、当該ガス導入口6から導入された原料ガスはイオン源5の内部でイオン化、及び加速されることにより、イオンビーム7として基材100に照射される。イオン源5としては、基材100の表面に生成した膜質の均一性、生産性の観点からカウフマン型イオン源を用いており、他にはバケット型イオン源等を適用することができる。
【0065】
本実施形態に係る摺動材の製造装置による摺動材の形成方法(イオンビーム法)は次のように行う。
【0066】
先ず、真空容器1を1.5×10-3Pa以下に真空排気する。次に、ガス導入口6より、主に炭素源としての炭化水素化合物ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる標料ガスを供給する。ここで、炭化水素化合物ガスとしてはメタン(CH4)、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4)を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6から供給する。
【0067】
続いて、メタン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を2×10-2Paに調整する。この状態でイオン源5をイオン加速電圧500V、イオン電流密度1mA/cm2の作動条件で作動させ、発生した混合ガスのイオンをイオンビーム7として基材100に照射し、膜厚が1μmの摺動材110,120,130,140を形成する。
【0068】
〈第二番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の製造装置の第二番目の実施形態(プラズマイオン注入法)を図7に基づいて説明する。図7は、製造装置の概略構成図である。なお、前述した第一番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0069】
図7に示すように、本実施形態に係る摺動材の製造装置は、ガス導入口6が設けられた真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたホルダー3と、真空容器1の周囲にそれぞれ対向するように設置された電磁コイル15と、導波管13を介して真空容器1に接続されているマイクロ波電源14とから構成される。
【0070】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気される。ホルダー3は、摺動材110,120,130,140を形成する基材2を真空容器1内に保持するための台であり、高絶縁フィードスルー10を介して、負のパルス電圧の印加が可能なバイアス電源11に接続されている。
【0071】
ガス導入口6から導入される原料ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を一定に調整する。また、電磁コイル15により真空容器1内に磁場を発生させると共に、マイクロ波電源14によりマイクロ波を真空容器1内へ導入する。これらの条件を適切に調整することにより、基材100付近において、マイクロ波を効果的に吸収することができる磁場を形成し、混合ガスのプラズマ12を発生させることができる。なお、プラズマを発生させる方法としては、上記以外に高周波プラズマ、ヘリコンプラズマ、誘導結合プラズマ等のプラズマ源を用いる方法によっても同様な効果を得ることができる。
【0072】
本実施形態に係る摺動材の製造装置による摺動材の形成方法(プラズマイオン注入法)は次のように行う。
【0073】
まず、真空容器1を1.5×10-3Pa以下に真空排気する。次に、ガス導入口6より、主に炭素源としての炭化水素化合物ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる原料ガスを供給する。ここで、炭化水素化合物ガスとしてはメタン(CH4)、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4)を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6より供給する。
【0074】
続いて、メタン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を制御することにより、真空容器1の内圧を5×10-2Paに調整する。また、電磁コイル15に300Aの電流を流すと共に、マイクロ波電源14から1000Wの出力のマイクロ波周波数2.45GHz)を真空容器1内へ導入する。
【0075】
これにより、真空容器1内の中心部から100mm離れた場所において、混合ガスがマイクロ波を効果的に吸収することができる磁場(875ガウス)を形成し、混合ガスのプラズマ12を発生させる。この状態において、高絶縁フィードスルー10を介してバイアス電源11から基材100に、電圧−2kV,duty比1%のパルス電圧を印加することにより摺動材110,120,130,140を成膜する。
【0076】
〈第三番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の製造装置の第三番目の実施形態(スパッタ法)を図8に基づいて説明する。図8は、製造装置の概略構成図である。なお、前述した第一,二番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0077】
図8に示すように、本実施形態に係る摺動材の製造装置は、ガス導入口6が設けられた真空容器1と、当該真空容器1の内部に設置されたスパッタ源20と、当該スパッタ源20の対向位置に設置された基板電極28から構成される。
【0078】
真空容器1は、図示していない真空排気装置によって真空排気される。基板電極28は、摺動材110,120,130,140を形成する基材100を真空容器1内に保持するための台の機能も有し、真空シール機能を備えた絶縁体25を介して真空容器1の内部に通じるように設置されている。また、基板電極28は加熱ヒーター4を備えており、当該加熱ヒーター4の上に基材100が設置されている。
【0079】
スパッタ源20は、炭素から構成されるターゲット21と、磁場発生用磁石22と、内部に水冷機能を備えたターゲットホルダー23と、これらの部品の周囲を囲むように設置されたシールド24とから構成される。また、ターゲットホルダー23は、絶縁体25を介して真空容器1の内部に通じるように設置されており、真空容器1の外部では、整合器26を介して高周波電源27に接続されている。この電源としては、高周波電源以外に直流電源を用いても良く、この場合には整合器26は不要となる。
【0080】
本実施形態に係る摺動材の製造装置による摺動材の形成方法(スパッタ法)は次のように行う。
【0081】
まず、真空容器1を2×10-4Pa以下に真空排気する。次に、ガス導入口6より、放電ガスである希ガスと主にフッ素源としてのフッ化炭素化合物ガスとからなる原料ガスを供給する。ここで、希ガスとしてはアルゴン(Ar)、フッ化炭素化合物ガスとしては四フッ化炭素(CF4)を用い、これらのガスを図示していない流量制御装置により設定した流量比で混合した後、ガス導入口6より供給する。アルゴン及び四フッ化炭素からなる混合ガスの流量を樹御することにより、真空容器1の内圧を7×10-1Paに調整する。
【0082】
この状態において、整合器26を介して高周波電源27より高周波電力(例えば500W)をターゲットホルダー23に印加し、アルゴンガスを放電させると共に四フッ化炭素(CF4)を分解させる。放電により生じたアルゴンイオンはターゲット21の表面に衝突し、ターゲット21の表面からは炭素膜中の炭素源となる炭素スパッタ粒子が飛び出す。この炭素スパッタ粒子及び四フッ化炭素(CF4)の分解により生じたフッ素が基材100に堆積することにより、摺動材110,120,130,140が形成される。前述した実施形態の場合と同様に、膜厚を1μmとした。
【0083】
〈第四番目の実施形態〉
本発明に係る摺動材の製造装置の第四番目の実施形態(イオンプレーティング法:前記非特許文献1等参照)を図9に基づいて説明する。図9は、製造装置の概略構成図である。なお、前述した第一〜三番目の実施形態と同様な部分については、前述した第一〜三番目の実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を用いることにより、前述した第一〜三番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
【0084】
図9に示すように、本実施形態に係る摺動材の製造装置は、反応ガス(例えば四フッ化炭素(CF4))により真空度を10-2Pa〜数Pa台に調整した真空容器1内において蒸発源30より固体(例えば炭素)を蒸発させ、何らかの手法(例えばRFコイル等)を用いてプラズマ31を生成させる。そのプラズマ31中で、蒸発した固体位子・原子及び反応ガス分子,原子が電離(イオン化)又は励起される。
【0085】
ここで用いられるプラズマ31は非平衡プラズマであり電子温度は数千〜数万Kに達する。プラズマ31中に置かれた基材100には負のDCバイアス若しくはRFによるセルフバイアスを印加し、緻密な摺動材110,120,130,140が基材100上に密着性良く形成される。
【実施例】
【0086】
本発明に係る摺動材の効果を確認するために行った試験例を以下に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0087】
[試験体の作製]
〈試験体1〉
前述した第一番目の実施形態に基づいて試験体1を作製した。
〈試験体2〉
前述した第二番目の実施形態に基づいて試験体2を作製した。
〈試験体3〉
前述した第三番目の実施形態に基づいて試験体3を作製した。
〈試験体4〉
前述した第四番目の実施形態に基づいて試験体4を作製した。
〈試験体5〉
前述した第五番目の実施形態に基づいて試験体5を作製した。
〈試験体6〉
前述した第一番目の実施形態におけるF−PLCからなる第二の層を、F−GCからなる第二の層に変えて試験体6を作製した。
【0088】
[試験方法(往復動摩擦試験)]
大気中及び真空中(5×10-4Pa以下)の室温下において、上記試験体1〜6とボール(材質:SUS304、直径:4.7mm)とを荷重(2N)を加えた状態で当接させて往復動(速度:60サイクル/分)させることにより試験体1〜6を摩耗させ、その摩耗量から耐久性(比較体(基材にDLCのみを設けた摺動材)との相対値)をそれぞれ求めた。
【0089】
[試験結果]
試験結果を下記の表1に示す。表1からわかるように、試験体1〜6は、大気中における耐久性が、比較体とほぼ同程度の性能を示す一方、真空中における耐久性が、比較体よりも非常に優れた性能(約2〜4倍)を示すことが確認された。
【0090】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明に係る摺動材は、大気中及び真空中の両方で十分な摩擦特性を発現し得るので、航空宇宙事業等において、極めて有益に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明に係る摺動材の第一番目の実施形態の概略構成図である。
【図2】本発明に係る摺動材の第二番目の実施形態の概略構成図である。
【図3】本発明に係る摺動材の第三番目の実施形態の概略構成図である。
【図4】本発明に係る摺動材の第四番目の実施形態の概略構成図である。
【図5】本発明に係る摺動材の第五番目の実施形態の概略構成図である。
【図6】本発明に係る摺動材を製造するために使用する装置の第一番目の実施形態の概略構成図である。
【図7】本発明に係る摺動材を製造するために使用する装置の第二番目の実施形態の概略構成図である。
【図8】本発明に係る摺動材を製造するために使用する装置の第三番目の実施形態の概略構成図である。
【図9】本発明に係る摺動材を製造するために使用する装置の第四番目の実施形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0093】
100 基材
110 摺動材
111 第一の層(F−DLC)
112 第二の層(F−PLC)
113 基礎層(DLC)
120 摺動材
121 第一の層(F−DLC)
130 摺動材
140 摺動材
141 第一の層(F−DLC)
141a 第一の傾斜組成部
141b 第二の傾斜組成部
150 摺動材
151 第一の層(F−DLC)
151a 第一の傾斜組成部
151b 第二の傾斜組成部
151c 中間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に設けられる摺動材であって、
フッ素含有ダイヤモンド・ライク・カーボンからなる第一の層と、
前記第一の層上に設けられてフッ素含有ポリマー・ライク・カーボン又はフッ素含有グラッシー・カーボンからなる第二の層と
を備えていることを特徴とする摺動材。
【請求項2】
請求項1において、
前記第一の層と前記基材との間に位置するように当該基材上に設けられてフッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボンからなる基礎層を備えている
ことを特徴とする摺動材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記第二の層と接する前記第一の層が、当該第二の層側ほどフッ素含有量を増加させた傾斜組成を有している
ことを特徴とする摺動材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
前記第一の層と前記第二の層とが交互に複数設けられている
ことを特徴とする摺動材。
【請求項5】
請求項4において、
隣り合う前記第二の層の間に介在する前記第一の層が、フッ素を含有しないダイヤモンド・ライク・カーボンからなる中間部を積層方向中央部分に有している
ことを特徴とする摺動材。
【請求項6】
請求項1、請求項2、請求項4のいずれかにおいて、
前記第一の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜2.0原子%である
ことを特徴とする摺動材。
【請求項7】
請求項3又は請求項5において、
前記第一の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で10.0原子%以下である
ことを特徴とする摺動材。
【請求項8】
請求項1から請求項5のいずれかにおいて、
フッ素含有ポリマー・ライク・カーボンからなるときの前記第二の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜20.0原子%である
ことを特徴とする摺動材。
【請求項9】
請求項1から請求項5のいずれかにおいて、
フッ素含有グラッシー・カーボンからなるときの前記第二の層のフッ素含有量が、炭素に対する割合で0.5〜10.0原子%である
ことを特徴とする摺動材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−23331(P2007−23331A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206391(P2005−206391)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】