説明

撚り線機および撚り線の被覆方法

【課題】 ゴム被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能な撚り線機を提供することにある。
【解決手段】 撚り線機22において、ボビン14A〜Cから引き出された複数本の線材18A〜Cは、ボビン14A〜Cと線材引出方向(X方向)に離間した位置に配置された回転体30の回転によってその線材引出方向(X方向)を回転軸とした回転力が加えられて撚り線となる。従って、複数本の線材18A〜Cの撚り点26よりもボビン14A〜Cでは、複数本の線材18A〜Cは回転しない。これにより、ゴム被覆部28において複数本の線材18A〜Cに未加硫ゴム88を被覆する際に、複数本の線材18A〜Cが未加硫ゴム中を横切る動きをしないので、複数本の線材18A〜Cの間に十分に未加硫ゴム88が充填され、また、各線材18A〜Cの表面にも未加硫ゴム88が十分に付着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り線機及び撚り線の被覆方法に係り、特に撚り線に被覆を施すようにした撚り線機及び撚り線の被覆方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、撚り線に被覆を施すようにした撚り線機及び撚り線の被覆方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
以下、この種の撚り線機及び撚り線の被覆方法について、車両用の空気入りタイヤに用いられる撚り合わせゴム被覆スチールコードの製造過程を例に説明する。
【0004】
特許文献1には、コード製造装置の例が記されている。このコード製造装置は、複数のスチールコードを撚り合わせると共にこれにゴム被覆を施して撚り合わせゴム被覆スチールコードを形成するものである。
【0005】
コード製造装置には、チューブラ型撚線機、プリフォーマ、ゴム押出機、張力付与装置が設けられている。
【0006】
チューブラ型撚線機は、回転バレルと、この回転バレルを回転駆動する電動機を有する。回転バレルには、各々がスチールコードを巻装した3つのボビンが配置されている。
【0007】
回転バレルの前端面には、プリフォーマが回転バレルと一体に回転するように設けられており、プリフォーマは、各スチールコード毎に所定ピッチの螺旋の癖付けをし、撚り合わせを容易にする。
【0008】
ゴム押出機は、スチールコードを撚り合わせながらゴムを押出する押出型ヘッドと、このヘッドに未加硫ゴムを加圧供給する押出機本体を有する。
【0009】
また、押出型ヘッドは、押出型本体と、撚り維持具と、撚り合わせダイスと、押出室とで構成されている。
【0010】
張力付与装置は、巻き取りドラムを所定速度で回転させ、押出型ヘッドから繰り出される撚り合わせゴム被覆コードを巻き取り、プリフォーマ及び押出型ヘッドを通過するスチールコードの各々に所定の引っ張りテンションを付与する。
【0011】
そして、上記構成からなる特許文献1に記載のコード製造装置において、張力付与装置によって一定の巻き取り張力が付与されると、回転バレルの3つのボビンからスチールコードが引き出される。
【0012】
各ボビンから引き出されるスチールコードは、回転バレルの軸心から半径方向外方に導かれ、そこから回転バレルの長手方向に案内され、回転バレルの前端面に開口する送出口からプリフォーマへ送出される。
【0013】
続いて、プリフォーマを通過した3本のスチールコードは、回転バレルの回転軸線に向かって集合しながらゴム押出機の押出型ヘッド内へ導入される。
【0014】
押出型ヘッド内へ導入される3本のスチールコードは、撚り維持具の3本の分離通過孔を通過し、続いて分離通過溝にガイドされてゴム注入部に導かれ、そこからダイスを通過する。
【0015】
このとき、押出室では、未加硫ゴムが圧送充填された雰囲気が形成され、この雰囲気の中でスチールコードの撚り合わせが行われる。つまり、未加硫ゴムが圧送充填された雰囲気中を、複数のスチールコードがその送出方向を回転軸として回転することにより撚り線が形成される。
【0016】
そして、ゴム注入部を撚り合わせされながら通過する3本のスチールコードからなる撚り線の軸心の空隙部に未加硫ゴムがスチールコードにより巻き込まれながら充填され、これと同時に撚り合わされた撚り線の外周面にも未加硫ゴムが被覆されて撚り合わせゴム被覆スチールコードが形成されるとしている。
【特許文献1】特開2004−277923公報(図1−図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、特許文献1に記載の例では、上述の如く、未加硫ゴムが圧送充填された雰囲気中を、複数のスチールコードがその送出方向を回転軸として回転するようになっている。
【0018】
従って、複数のスチールコードが圧送充填された未加硫ゴムを横切るため、スチールコードの表面にゴムが付着し難く、また、複数のスチールコード間にゴムが入り難い(充填され難い)という不都合がある。これにより、撚り線に対するゴム被覆が不充分となる虞がある。
【0019】
ここで、スチールコードの表面に対してゴム被覆が充分に行われるようにするためには、特許文献1に記載の構成において、複数のスチールコードが撚り合わされて撚り線となった後に、未加硫ゴムが圧送充填された雰囲気中に撚り線を通過させて、この撚り線にゴム被覆を施すことも考えられる。
【0020】
ところが、特許文献1に記載の例では、複数のスチールコードが撚り合わされて撚り線となった後には、撚り線が回転せずに真っ直ぐに引き出される。
【0021】
従って、未加硫ゴムが圧送充填された雰囲気中を撚り線が回転せずに真っ直ぐに通過しても、撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部にゴムが十分に入り込まず、結果として撚り線に対するゴム被覆が不充分となる虞がある。
【0022】
なお、上記不具合を解決するために、撚り線機が大型化することは望ましくなく、上記不具合を解決するための撚り線機を構成する場合には、撚り線機がコンパクトであることが望ましい。
【0023】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ゴム被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能な撚り線機及び撚り線の被覆方法を提供することにある。
【0024】
また、本発明の他の目的は、コンパクトな撚り線機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の撚り線機は、複数本の線材を保有する線材保有手段から前記複数本の線材を引き出す線材引出手段と、前記線材保有手段と前記複数本の線材の線材引出方向に離間した位置に配置され、線材引出方向を回転軸として回転することにより前記複数本の線材に線材引出方向を回転軸とした回転力を加えて前記複数本の線材を撚って撚り線を形成する撚り線形成手段と、前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記撚り線回転手段側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆する被覆手段と、を備えたことを特徴とする。
【0026】
次に、請求項1に記載の撚り線機の作用について説明する。
【0027】
請求項1に記載の撚り線機では、線材引出手段によって、線材保有手段から複数本の線材が引き出される。そして、この線材保有手段から引き出された複数本の線材には、線材保有手段と複数本の線材の線材引出方向に離間した位置に配置された撚り線形成手段の回転によって、その線材引出方向を回転軸とした回転力が加えられる。
【0028】
これにより、複数本の線材が撚られて撚り線が形成される。このとき、被覆手段は、複数の線材の撚り点よりも線材保有手段側に位置する複数本の線材及び撚り点よりも撚り線回転手段側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆する。これにより、被覆された撚り線が形成される。
【0029】
ここで、請求項1に記載の撚り線機において、線材保有手段から引き出された複数本の線材は、線材保有手段と複数本の線材の線材引出方向に離間した位置に配置された撚り線形成手段の回転によって線材引出方向を回転軸とした回転力が加えられて撚り線となる。
【0030】
従って、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段側では、複数本の線材は回転せずに、複数本の線材の撚り点よりも撚り線形成手段側では、撚り線が回転する。
【0031】
このように、請求項1に記載の撚り線機では、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段側では、複数本の線材は回転しない。
【0032】
従って、この複数本の線材に被覆手段によって被覆材を被覆する場合には、複数本の線材が被覆材中を横切る動きをしないので、複数本の線材の間に十分に被覆材が充填され、また、各線材の表面にも被覆材が十分に付着される。
【0033】
これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0034】
また、請求項1に記載の撚り線機では、複数本の線材の撚り点よりも撚り線形成手段側では、撚り線が回転する。
【0035】
従って、この撚り線に被覆手段によって被覆材を被覆する場合には、被覆材中を撚り線が回転するので、ねじ作用によって、撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部に被覆材が十分に入り込む。
【0036】
これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0037】
このとき、撚り点よりも線材保有手段側に位置する複数本の線材に被覆を施すと共に、この被覆された複数本の線材が撚り合わされて撚り線となった後にもこの撚り線に対して連続的に被覆材を被覆するようにすると、被覆が十分に施された撚り線を確実に形成することが可能となる。
【0038】
請求項2に記載の撚り線機は、請求項1に記載の撚り線機において、前記線材引出手段は、前記撚り線形成手段に設けられていることを特徴とする。
【0039】
次に、請求項2に記載の撚り線機の作用について説明する。
【0040】
請求項2に記載の撚り線機では、線材引出手段が、撚り線形成手段に設けられている。従って、撚り線形成手段と線材引出手段を一体化できるので、撚り線機をコンパクトにすることができる。
【0041】
請求項3に記載の撚り線機は、請求項1又は請求項2に記載の撚り線機において、前記被覆手段よりも線材引出方向には、前記撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化する平滑化手段が設けられていることを特徴とする。
【0042】
次に、請求項3に記載の撚り線機の作用について説明する。
【0043】
請求項3に記載の撚り線機では、被覆手段よりも線材引出方向に、撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化する平滑化手段が設けられている。
【0044】
従って、被覆手段によって撚り線の表面に被覆材が被覆された場合でも、撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化手段によって平滑化することができる。
【0045】
これにより、撚り線の表面に被覆された被覆材の凹凸や被覆ムラなどを修復できるので、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0046】
請求項4に記載の撚り線の被覆方法は、複数本の線材を保有する線材保有手段から前記複数本の線材を引き出すと共に、前記線材保有手段と前記複数本の線材の線材引出方向に離間した位置で前記複数本の線材に線材引出方向を回転軸とした回転力を加えて前記複数本の線材を撚って撚り線を形成する一方で、前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆することを特徴とする。
【0047】
次に、請求項4に記載の撚り線の被覆方法の作用について説明する。
【0048】
請求項4に記載の撚り線の被覆方法では、先ず、複数本の線材を保有する線材保有手段から複数本の線材を引き出すと共に、線材保有手段と複数本の線材の線材引出方向に離間した位置で複数本の線材に線材引出方向を回転軸とした回転力を加えて複数本の線材を撚って撚り線を形成する。
【0049】
そして、請求項4に記載の撚り線の被覆方法では、複数の線材の撚り点よりも線材保有手段側に位置する複数本の線材及び撚り点よりも線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆する。
【0050】
ここで、請求項4に記載の撚り線の被覆方法において、線材保有手段から引き出された複数本の線材は、線材保有手段と複数本の線材の線材引出方向に離間した位置で線材引出方向を回転軸とした回転力が加えられて撚り線となる。
【0051】
従って、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段側では、複数本の線材は回転せずに、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段と反対側では、撚り線が回転する。
【0052】
このように、請求項4に記載の撚り線の被覆方法では、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段側では、複数本の線材は回転しない。
【0053】
従って、この複数本の線材に被覆材を被覆する場合には、複数本の線材が被覆材中を横切る動きをしないので、複数本の線材の間に十分に被覆材が充填され、また、各線材の表面にも被覆材が十分に付着される。
【0054】
これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0055】
また、請求項4に記載の撚り線の被覆方法では、複数本の線材の撚り点よりも線材保有手段と反対側では、撚り線が回転する。
【0056】
従って、この撚り線に被覆材を被覆する場合には、被覆材中を撚り線が回転するので、ねじ作用によって、撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部に被覆材が十分に入り込む。
【0057】
これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0058】
このとき、撚り点よりも線材保有手段側に位置する複数本の線材に被覆を施すと共に、この被覆された複数本の線材が撚り合わされて撚り線となった後にもこの撚り線に対して連続的に被覆材を被覆するようにすると、被覆が十分に施された撚り線を確実に形成することが可能となる。
【0059】
請求項5に記載の撚り線の被覆方法は、請求項4に記載の撚り線の被覆方法において、前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆した後に、前記撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化することを特徴とする。
【0060】
次に、請求項5に記載の撚り線の被覆方法の作用について説明する。
【0061】
請求項5に記載の撚り線の被覆方法では、複数の線材の撚り点よりも線材保有手段側に位置する複数本の線材及び撚り点よりも線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆した後に、この撚り線の表面に被覆された被覆材が平滑化される。
【0062】
これにより、撚り線の表面に被覆された被覆材の凹凸や被覆ムラなどを修復できるので、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【発明の効果】
【0063】
以上詳述したように、本発明によれば、複数本の線材に被覆材を被覆する場合には、複数本の線材が被覆材中を横切る動きをしないので、複数本の線材の間に十分に被覆材が充填され、また、各線材の表面にも被覆材が十分に付着される。これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【0064】
また、撚り線に被覆材を被覆する場合には、被覆材中を撚り線が回転するので、ねじ作用によって、撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部に被覆材が十分に入り込む。これにより、被覆が十分に施された撚り線を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、本発明の一実施形態について、図を参照して説明する。なお、以下に説明する部材、構成、配置等は、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変することができることは勿論である。
[第一実施形態]
はじめに、図1,図2を参照しながら、本発明の第一実施形態に係るコード製造ライン10の構成について説明する。
【0066】
本実施形態に係るコード製造ライン10は、たとえば、空気入りタイヤのベルトプライ若しくはカーカスプライ等を構成する撚り合わせゴム被覆コード20を形成するのに好適に用いられるものである。
【0067】
コード製造ライン10には、線材18A〜C(例えばスチールコード)がそれぞれ巻かれている線材保有手段としての複数のボビン14A〜Cと、ボビン14A〜Cから引き出された線材18A〜Cのテンションを制御するテンション制御部16A〜Cと、撚り線機22と、が設けられている。
【0068】
撚り線機22は、線材18A〜Cを撚って撚り線を形成すると共にこの撚り線にゴム被覆を施して撚り合わせゴム被覆コード20を製造する引出・回転・ゴム被覆一体式の装置である。
【0069】
この撚り線機22は、線材18A〜Cにクセ(型)を付けるクセ付け部(型付け部)24と、複数のボビン14A〜Cと線材引出方向(X方向)に離間した位置に配置され撚り線にゴム被覆を施す被覆手段としてのゴム被覆部28(押出型ヘッド)と、ゴム被覆部28よりも線材引出方向(X方向)に設けられた撚り線形成手段としての回転体30と、回転体30に回転力を与えると共にボビン14A〜Cに巻かれている線材18A〜Cを引き出す力を与えるモータ34と、を備えている。
【0070】
回転体30は、線材引出方向線と同軸上に配置されると共に、撚り線機22に設けられたベアリング部36A、Bによって回転可能に保持され、線材引出方向(X方向)を回転軸として回転することができるようになっている。
【0071】
図1、図2に示すように、回転体30の線材引出方向(X方向)側の部分には、回転体30のハウジング31から短筒状に延び出した回転駆動用軸部40に回転駆動用プーリ42が固定されており、回転駆動用プーリ42と、モータ34の軸部に取付けられた第1回転板44とには無端ベルト46が掛けられている。
【0072】
回転駆動用軸部40の回転中心には、細長筒状の引出駆動用軸部材50が挿通されている。この引出駆動用軸部材50は、回転体30に設けられたベアリング部51によって支えられている。
【0073】
そして、回転駆動用プーリ42の線材引出方向(X方向)側には、引出駆動用軸部材50に固定された引出駆動用プーリ52が設けられており、引出駆動用プーリ52と、モータ34の軸部に取付けられた第2回転板54とには無端ベルト56が掛けられている。
【0074】
ハウジング31内には、撚り合わせゴム被覆コード20を引き出す線材引出手段としての引出機構58が設けられている。引出機構58は、引出駆動用軸部材50と同軸上に固定された第1ギア60と、第1ギア60と噛み合う第2ギア62と、を有する。
【0075】
第2ギア62の回転中心には小径の小ギア部64が設けられている。また、引出機構58は、撚り合わせゴム被覆コード20が数回巻かれる巻回部66を有すると共に小ギア部64と噛み合う大ギア部67を有する多段巻きキャプスタン68と、多段巻きキャプスタン68の巻回部66に当接して撚り合わせゴム被覆コード20を巻回部66に押し付けるピンチローラ70と、を有する。
【0076】
本実施形態では、多段巻きキャプスタン68の巻回部66及びピンチローラ70によって撚り線の表面に被覆された未加硫ゴムを平滑化する平滑化手段が構成されている。この多段巻きキャプスタン68の巻回部66の表面及びピンチローラ70の表面は、平滑面で構成されている。
【0077】
そして、引出機構58は、多段巻きキャプスタン68に巻回された撚り合わせゴム被覆コード20が更に数回巻かれる多段巻きダミープーリ72を有する。
【0078】
多段巻きキャプスタン68及び多段巻きダミープーリ72の径は、回転体30から送り出された撚り合わせゴム被覆コード20を使用する際に真直性の観点で支障がないように、線材18A〜Cの径、材質等を考慮して決定されている。
【0079】
また、撚り線機22には、引出駆動用軸部材50の回転中心を挿通して、多段巻きダミープーリ72から送り出された撚り合わせゴム被覆コード20を回転体30の線材引出方向へ案内するコード排出用パイプガイド74が設けられている。
【0080】
ここで、本実施形態では、第1回転板44の径が第2回転板54の径に比べて少し大きくされており、回転体30の回転速度(撚り線の撚り速度)と、撚り合わせゴム被覆コード20の引出速度との比が調整されている。
【0081】
このように、本実施形態では、回転駆動用軸部40と引出駆動用軸部材50とを同軸上に配置しており、回転体30に引出駆動用のモータを更に設けることに比べ、撚り線機22の構成が簡素になっている。
【0082】
また、本実施形態に係る撚り線機22では、回転体30の内部に引出機構58が設けられており、回転体30と引出機構58とが一体化されている。これにより、撚り線機22のコンパクト化が図られている。
【0083】
そして、図1に示されるゴム被覆部28は、押出型本体80と、線材導入用インサート82と、ダイス84とで構成されている。
【0084】
押出型本体80には、押出室86が形成されている。この押出室86には、例えば不図示のスクリューポンプにより未加硫ゴム88が圧送されて、未加硫ゴム88が圧送充填された雰囲気が形成される。
【0085】
線材導入用インサート82には、線材引出方向(X方向)と平行に各線材18A〜Cがそれぞれ個別に挿通される不図示のインサート穴(つまりインサート穴は合計3個)が形成されている。
【0086】
従って、クセ付け部24を介して引き出された線材18A〜Cは、この線材導入用インサート82に形成された3つのインサート穴をそれぞれ通じて押出室86内に導かれる。
【0087】
ダイス84には、撚り合わせゴム被覆コード20の断面よりも若干大きな略三つ葉形の送出穴(不図示)が形成されており、本実施形態では、この送出穴から撚り合わせゴム被覆コード20が引き出されるようになっている。
【0088】
次に、本発明の第一実施形態に係る撚り線機22にて撚り線にゴム被覆を施す方法について説明する。
【0089】
先ず、撚り線機22を使用するには、図1,図2に示すように各線材18A〜Cをセットした状態で、モータ34を所定回転数で回転させる。これにより、第1回転板44及び第2回転板54が回転する。
【0090】
第1回転板44及び第2回転板54が回転すると、これらの回転力が無端ベルト46,56によって回転駆動用プーリ42、引出駆動用プーリ52に伝達されて、回転駆動用プーリ42、引出駆動用プーリ52が回転する。
【0091】
引出駆動用プーリ52が回転すると、この回転力が、第1ギア60、第2ギア62、多段巻きキャプスタン68に順次伝達されて、第1ギア60、第2ギア62、多段巻きキャプスタン68が回転する。
【0092】
この結果、線材18A〜Cが所定の引出し速度でボビン14A〜Cから引き出される。このようにしてボビン14A〜Cから引き出された線材18A〜Cは、クセ付け部24にてクセ付けられた後に、ゴム被覆部28の線材導入用インサート82に形成された3つのインサート穴を通じて押出室86内に導かれる。
【0093】
そして、押出室86内に導かれた線材18A〜Cは、ダイス84の送出穴に向かって集合すると共に、ダイス84の送出穴内で撚られて撚り線となる。
【0094】
このとき、押出室86内に導かれた線材18A〜Cの間には、未加硫ゴム88が充填され、また、線材18A〜Cの表面には、未加硫ゴム88が付着される。
【0095】
本実施形態では、このようにして、ゴム被覆部28によって撚り線にゴム被覆が施されて撚り合わせゴム被覆コード20が形成される。
【0096】
そして、このようにして形成された撚り合わせゴム被覆コード20は、ダイス84の送出穴を介して回転体30へと導かれ、回転体30内においてピンチローラ70によって多段巻きキャプスタン68の巻回部66に押し付けられる。
【0097】
続いて、撚り合わせゴム被覆コード20は、巻回部66に巻回された後に多段巻きダミープーリ72に更に数回巻かれ、その後、コード排出用パイプガイド74を介して回転体30から外部に送り出される。
【0098】
次に、本発明の第一実施形態に係る撚り線機22にて撚り線にゴム被覆を施す方法の作用及び効果について説明する。
【0099】
本実施形態に係る撚り線機22において、ボビン14A〜Cから引き出された複数本の線材18A〜Cは、ボビン14A〜Cと線材引出方向(X方向)に離間した位置に配置された回転体30の回転によって線材引出方向(X方向)を回転軸とした回転力が加えられられて撚り線となる。
【0100】
従って、本実施形態に係る撚り線機22では、複数本の線材18A〜Cの撚り点26よりもボビン14A〜C側では、複数本の線材18A〜Cは回転しない。
【0101】
これにより、本実施形態のように、この複数本の線材18A〜Cにゴム被覆部28によって未加硫ゴム88を被覆する場合には、未加硫ゴム88が圧送充填された雰囲気中を複数本の線材18A〜Cが横切る動きをしないので、複数本の線材18A〜Cの間に十分に未加硫ゴム88が充填され、また、各線材18A〜Cの表面にも未加硫ゴム88が十分に付着される。
【0102】
これにより、ゴム被覆が十分に施された撚り合わせゴム被覆コード20を形成することが可能となる。
[第二実施形態]
次に、図3を参照しながら、本発明の第二実施形態に係るコード製造ライン90の構成について説明する。
【0103】
本発明の第二実施形態において、第一実施形態と異なる点は、撚り線機92のゴム被覆部94に設けられた線材導入用インサート96の構成である。従って、本発明の第二実施形態において、第一実施形態と同一の構成については同一の符号を用いるとしてその説明を省略する。
【0104】
本発明の第二実施形態に係る撚り線機92のゴム被覆部94において、線材導入用インサート96には、線材引出方向(X方向)と平行に各線材18A〜Cがまとめて挿通される不図示のインサート穴(つまりインサート穴は1個)が形成されている。
【0105】
従って、クセ付け部24を介して引き出された線材18A〜Cは、線材導入用インサート96に形成された1つのインサート穴に向かって集合すると共に、このインサート穴内で撚られて撚り線となる。
【0106】
そして、線材導入用インサート96に形成されたインサート穴を介して押出室86内に導かれた撚り線には、押出室86においてゴム被覆が施される。
【0107】
つまり、押出室86内で撚り線が回転し、この撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部にねじ作用によって未加硫ゴム88が入り込むようにして撚り線全体がゴム被覆される。
【0108】
本実施形態では、このようにして、ゴム被覆部94によって撚り線にゴム被覆が施されて撚り合わせゴム被覆コード20が形成される。
【0109】
そして、このようにして形成された撚り合わせゴム被覆コード20は、ダイス84の送出穴から回転体30へと導かれ、回転体30内においてピンチローラ70によって多段巻きキャプスタン68の巻回部66に押し付けられる。
【0110】
続いて、撚り合わせゴム被覆コード20は、巻回部66に巻回された後に多段巻きダミープーリ72に更に数回巻かれ、その後、コード排出用パイプガイド74を介して回転体30から外部に送り出される。
【0111】
次に、本発明の第二実施形態に係る撚り線機92にて撚り線にゴム被覆を施す方法の作用及び効果について説明する。
【0112】
本実施形態に係る撚り線機92において、ボビン14A〜Cから引き出された複数本の線材18A〜Cは、ボビン14A〜Cと線材引出方向(X方向)に離間した位置に配置された回転体30の回転によって線材引出方向(X方向)を回転軸とした回転力が加えられて撚り線となる。
【0113】
従って、本実施形態に係る撚り線機92では、複数本の線材18A〜Cの撚り点26よりも回転体30側では、撚り線が回転する。
【0114】
これにより、本実施形態のように、この撚り線にゴム被覆部94によって未加硫ゴム88を被覆する場合には、未加硫ゴム88が圧送充填された雰囲気中を撚り線が回転するので、ねじ作用によって、撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部に未加硫ゴム88が入り込む。
【0115】
これにより、ゴム被覆が十分に施された撚り合わせゴム被覆コード20を形成することが可能となる。
【0116】
また、本実施形態では、上述のようにして形成された撚り合わせゴム被覆コード20は、回転体30内に導かれ、ピンチローラ70によって多段巻きキャプスタン68の巻回部66に押し付けられる。
【0117】
従って、撚り合わせゴム被覆コード20がピンチローラ70によって多段巻きキャプスタン68の巻回部66に押し付けられることにより、ゴム被覆コード20の撚り線の表面に被覆された未加硫ゴム88が平滑化される。
【0118】
これにより、撚り線の表面に被覆された未加硫ゴム88の凹凸や被覆ムラなどを修復できるので、ゴム被覆が十分に施されたゴム被覆コード20を形成することが可能となる。
[第三実施形態]
次に、図4を参照しながら、本発明の第三実施形態に係るコード製造ライン100について説明する。
【0119】
本発明の第三実施形態において、第一実施形態及び第二実施形態と異なる点は、撚り線機102のゴム被覆部104に設けられた押出型本体108の構成である。従って、本発明の第三実施形態において、第一実施形態及び第二実施形態と同一の構成については同一の符号を用いるとしてその説明を省略する。
【0120】
本発明の第三実施形態に係る撚り線機102のゴム被覆部104において、押出型本体108には、線材導入用インサート82と、ダイス84と、中間ダイス110が設けられている。また、この押出型本体108には、第一押出室112と第二押出室114が形成されている。
【0121】
この第一押出室112及び第二押出室114には、例えば不図示のスクリューポンプにより未加硫ゴム88が圧送されて、未加硫ゴム88が圧送充填された雰囲気が形成される。
【0122】
そして、クセ付け部24を介して引き出された線材18A〜Cは、線材導入用インサート82に形成された3つのインサート穴を通じて第一押出室112内に導かれる。
【0123】
この押出室86内に導かれた線材18A〜Cは、中間ダイス110の送出穴に向かって集合すると共に、中間ダイス110の送出穴内で撚られて撚り線となる。
【0124】
このとき、第一押出室112内に導かれた線材18A〜Cの間には、未加硫ゴム88が充填され、また、線材18A〜Cの表面には、未加硫ゴム88が付着される。
【0125】
そして、このようにしてゴム被覆された撚り線は、中間ダイス110を介して第二押出室114に導かれる。
【0126】
この第二押出室114内に導かれた撚り線には、第二押出室114においてさらにゴム被覆が施される。
【0127】
つまり、第二押出室114内では、撚り線が回転し、この撚り線の表面に形成された螺旋凹凸部分の凹部にねじ作用によって未加硫ゴム88が入り込むようにして撚り線全体がゴム被覆される。
【0128】
本実施形態では、このようにして、撚り点26よりもボビン14A〜C側に位置する複数本の線材18A〜Cにゴム被覆が施されると共に、この複数本の線材18A〜Cが撚り合わされてから撚り線となった後にもこの撚り線に対して連続的にゴム被覆が施されて撚り合わせゴム被覆コード20が形成される。
【0129】
これにより、ゴム被覆が十分に施されたゴム被覆コード20を確実に形成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】図1は本発明の第一実施形態に係る撚り線機の構成を示す正面図である。
【図2】図2は本発明の第一実施形態に係る回転体の構成を示す一部断面を含む図である。
【図3】図3は本発明の第二実施形態に係る撚り線機の構成を示す正面図である。
【図4】図3は本発明の第三実施形態に係る撚り線機の構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0131】
14A〜C ボビン(線材保有手段)
18A〜C 線材(線材)
22 撚り線機
28 ゴム被覆部(被覆手段)
30 回転体(撚り線形成手段)
58 引出機構(線材引出手段)
66 巻回部(平滑化手段)
68 多段巻きキャプスタン(平滑化手段)
70 ピンチローラ(平滑化手段)
88 被覆材(未加硫ゴム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の線材を保有する線材保有手段から前記複数本の線材を引き出す線材引出手段と、
前記線材保有手段と前記複数本の線材の線材引出方向に離間した位置に配置され、線材引出方向を回転軸として回転することにより前記複数本の線材に線材引出方向を回転軸とした回転力を加えて前記複数本の線材を撚って撚り線を形成する撚り線形成手段と、
前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記撚り線回転手段側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆する被覆手段と、を備えたことを特徴とする撚り線機。
【請求項2】
前記線材引出手段は、前記撚り線形成手段に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の撚り線機。
【請求項3】
前記被覆手段よりも線材引出方向には、前記撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化する平滑化手段が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の撚り線機。
【請求項4】
複数本の線材を保有する線材保有手段から前記複数本の線材を引き出すと共に、前記線材保有手段と前記複数本の線材の線材引出方向に離間した位置で前記複数本の線材に線材引出方向を回転軸とした回転力を加えて前記複数本の線材を撚って撚り線を形成する一方で、前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆することを特徴とする撚り線の被覆方法。
【請求項5】
前記撚り線の被覆方法は、前記複数の線材の撚り点よりも前記線材保有手段側に位置する複数本の線材及び前記撚り点よりも前記線材保有手段と反対側に位置する撚り線の少なくとも一方に被覆材を被覆した後に、前記撚り線の表面に被覆された被覆材を平滑化することを特徴とする請求項4に記載の撚り線の被覆方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−291424(P2006−291424A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117253(P2005−117253)
【出願日】平成17年4月14日(2005.4.14)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】