説明

撚糸機

【課題】撚糸機において、糸切れが生じて糸継ぎを行った部分に対して撚りを正確に付与することで、撚りムラの少ないパッケージを形成できる構成を提供する。
【解決手段】ダブルツイスタは、回転するスピンドル22によって糸20に撚りを付与する撚糸ユニット16を備える。そして、この撚糸ユニット16は、クレードル31と、駆動ドラム28と、スイッチ42と、LEDランプ43と、を備える。クレードル31は、撚りが付与された糸20が巻き取られるパッケージ30を支持する。駆動ドラム28は、パッケージ30と接触して当該パッケージ30を回転させる。スイッチ42は、停止しているスピンドル22を回転させるために操作される。LEDランプ43は、スイッチ42が操作された後に、スピンドル22が所定の量だけ回転した時点で、クレードル31を下降させるタイミングを光の点滅によってオペレータに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンドルを回転させて糸に撚りを付与する撚糸機に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の撚糸機は、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示されるダブルツイスタは、給糸パッケージを垂直に支持するスピンドルと、紙管を支持するクレードルアームと、を備え、給糸パッケージから引き出した糸を中心孔に通して二重撚しつつ上方に導き、回転ドラムにより回転駆動される紙管に巻き取って巻取パッケージを形成するようになっている。
【0003】
また、特許文献1は、糸切れ等が生じた場合は、ロボットが糸を糸継ぎ装置に導いて自動糸継ぎし、糸継ぎが終了したら、巻取パッケージを駆動ローラにより巻取り方向に回転させ、クレードルアームを押し下げて巻取パッケージを回転ドラムに接触させることにより運転を再開する構成についても開示している。
【0004】
また、ダブルツイスタにおいては、上記のように自動糸継ぎを行う構成のほか、糸切れ等が生じた場合にはオペレータが手で糸継ぎ作業を行い、運転を再開する構成についても知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−128825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダブルツイスタにおいて糸切れ等が発生した場合、当該部分の撚りが解けることになるので、糸切れが生じた端部同士を糸継ぎすると、その部分は殆ど無撚りとなる。従って、糸継ぎを行ってそのままパッケージに巻き取ると、撚りムラが生じて品質の低下を招くことになる。
【0007】
この点、上記特許文献1は、糸継ぎ装置による糸継ぎ完了後に運転を再開することについて開示するのみであって、上記のような無撚りの部分が発生し得ることについて何ら言及されていない。
【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、撚糸機において、糸切れが生じて糸継ぎを行った部分に対して撚りを正確に付与することで、撚りムラの少ないパッケージを形成できる構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0010】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の撚糸機が提供される。即ち、この撚糸機は、回転するスピンドルにより糸に撚りを付与する撚糸ユニットを備える。前記撚糸ユニットは、クレードルと、駆動ドラムと、操作部と、報知部と、を備える。前記クレードルは、撚りが付与された糸が巻き取られるパッケージを支持する。前記駆動ドラムは、前記パッケージと接触して当該パッケージを回転させる。前記操作部は、停止している前記スピンドルを回転させるために操作される。前記報知部は、前記操作部が操作された後に前記スピンドルが所定の量だけ回転した時点で、次工程の操作タイミングを通知する。
【0011】
これにより、撚糸ユニットでの巻取中に糸切れが生じて糸継作業を行った場合でも、巻取再開時に、操作部を操作してスピンドルの回転を開始させ、報知部によって通知されたタイミングでクレードルを操作してパッケージを駆動ドラムに接触させるようにすることで、糸継ぎを行った箇所に生じた無撚りの部分に対して撚りを必要なだけ正確に掛けた状態でパッケージに巻き取ることができる。従って、撚りムラの少ないパッケージを形成することができる。また、撚糸機の操作に慣れていないオペレータであっても、報知部の通知にタイミングを合わせてクレードルを操作するように注意するだけで、正確な撚りを糸の無撚り部分に付与できる。従って、オペレータによる作業品質のバラツキを抑制でき、パッケージ品質の安定化を実現することができる。
【0012】
前記の撚糸機においては、前記報知部は発光部として構成され、その発光状態が変化することで次工程の操作タイミングを通知するように構成されていることが好ましい。
【0013】
これにより、簡単な構成で、オペレータにクレードルの操作タイミングを判り易く知らせることができる。
【0014】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の撚糸機が提供される。即ち、この撚糸機は、回転するスピンドルにより糸に撚りを付与する撚糸ユニットを備える。前記撚糸ユニットは、クレードルと、駆動ドラムと、切替機構と、操作部と、制御部と、を備える。前記クレードルは、撚りが付与された糸が巻き取られるパッケージを支持する。前記駆動ドラムは、前記パッケージと接触して当該パッケージを回転させる。前記切替機構は、前記駆動ドラムの回転が前記パッケージに伝達される駆動伝達状態と、前記駆動ドラムの回転が前記パッケージに伝達されるのを遮断する遮断状態と、を切替可能である。前記操作部は、停止している前記スピンドルを回転させるために操作される。前記制御部は、前記操作部が操作された後に前記スピンドルが所定の量だけ回転した時点で、前記切替機構を前記遮断状態から前記駆動伝達状態に切り替える。
【0015】
これにより、撚糸ユニットでの巻取中に糸切れが生じて糸継作業を行った場合でも、巻取再開時にオペレータが操作部を操作すると、スピンドルの回転が開始され、糸継ぎを行った箇所に生じた無撚りの部分に対して撚りを必要なだけ正確に掛けたタイミングで、パッケージを駆動ドラムに接触させるように切替機構が切り替えられる。従って、撚りムラの少ないパッケージを簡単に形成することができる。また、撚糸機の操作に慣れていないオペレータであっても、単に操作部を操作するだけで、正確な撚りを糸の無撚り部分に自動的に付与できる。従って、オペレータによる作業品質のバラツキを抑制でき、パッケージ品質の安定化を実現することができる。
【0016】
前記の撚糸機においては、前記撚糸ユニットを複数備え、前記駆動ドラムは、複数の前記撚糸ユニットに共通の駆動源によって駆動されることが好ましい。
【0017】
これにより、駆動ドラムの駆動源を共通化してコストを削減しつつ、撚糸ユニットごとに糸の巻取りを正確なタイミングで自動的に開始(再開)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係るダブルツイスタの全体的な構成を示す正面概略図。
【図2】第1実施形態のダブルツイスタが備える撚糸ユニットの概略を示す側面図及びブロック図。
【図3】機台制御装置と撚糸ユニットの主要な構成を示すブロック図。
【図4】糸切れ発生時に糸継ぎして巻取りを再開する作業を示す側面図。
【図5】第2実施形態のダブルツイスタが備える撚糸ユニットの概略を示す側面図及びブロック図。
【図6】機台制御装置と撚糸ユニットの主要な構成を示すブロック図。
【図7】糸切れ発生時に糸継ぎして巻取りを再開する作業を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係るダブルツイスタ60の正面概略図である。図2は、ダブルツイスタ60が備える撚糸ユニット16の概略を示す正面図及びブロック図である。図3は、機台制御装置11と撚糸ユニット16の主要な構成を示すブロック図である。図4は、糸切れ発生時に糸継ぎして巻取りを再開する作業を示す側面図である。
【0020】
図1に示すように、第1実施形態のダブルツイスタ(二重撚糸機、撚糸機)60は、機台制御装置(制御部)11と、共通駆動ユニット10と、並べて配置された複数の撚糸ユニット16と、を備えている。
【0021】
それぞれの撚糸ユニット16は、給糸パッケージ21から解舒された糸20に対して、スピンドル22の回転によって撚りを付与するとともに、トラバースガイド27によって綾振りしながら巻取ボビン29に巻き取ってパッケージ30を形成できるように構成されている。巻取ボビンは、糸20の巻取りのために駆動ドラム28によって回転駆動される。
【0022】
共通駆動ユニット10には、図示しない複数の電動モータ等が配置されている。複数の前記撚糸ユニット16の駆動ドラム28は共通の駆動軸51によって連結されており、この駆動軸51が、共通駆動ユニット10に配置された駆動源としての電動モータ52によって駆動される。また、複数の撚糸ユニット16のトラバースガイド27は共通のロッド53に固定されており、このロッド53が、共通駆動ユニット10に配置された図略の電動モータによって駆動されている。従って、各撚糸ユニット16の駆動ドラム28及びトラバースガイド27等は、その撚糸ユニット16が実際に糸20の巻取中であるか否かにかかわらず、常に駆動されることになる。
【0023】
以下、図2を参照して、撚糸ユニット16の構成を具体的に説明する。図2に示すように、撚糸ユニット16は、給糸パッケージ21と駆動ドラム28との間の糸走行経路中に、給糸パッケージ21側から順に、スピンドル22と、糸ガイド23と、2つの案内ローラ24,25と、フィードローラ26と、トラバースガイド27と、を配置して構成されている。なお、以下の説明では、糸20が走行する方向の上流側及び下流側を、単に上流側及び下流側と称する場合がある。
【0024】
スピンドル22は、その軸線を垂直に向けた状態で、ダブルツイスタ60が備える機台フレーム5に配置されている。このスピンドル22には、合糸等を巻き取って構成される前記給糸パッケージ21を、その軸線方向を垂直に向けた状態で装着できるように構成されている。スピンドル22の内部には図示しない糸通路が形成されており、給糸パッケージ21から解舒された糸20を当該給糸パッケージ21の中心孔に通過させ、更に前記スピンドル22の糸通路に通すことができるように構成されている。
【0025】
前記撚糸ユニット16は、当該スピンドル22を垂直軸の周りに回転させるための電動モータ(スピンドル駆動部)36を備えている。この電動モータ36は、それぞれの撚糸ユニット16を制御するためのユニット制御部70に電気的に接続されている。ユニット制御部70は、適宜の制御信号を電動モータ36に出力することにより、その回転/停止や回転速度の制御を行うことができる。
【0026】
この構成で、スピンドル22の前記糸通路に給糸パッケージ21からの糸を通した状態で当該スピンドル22を電動モータ36により回転させることで、糸20に撚り(二重撚)を付与することができる。
【0027】
糸20はスピンドル22から上方へ引き出され、糸ガイド23を通過する。この糸ガイド23は略環状に形成されており、スピンドル22から供給される糸20の回転と遠心力によって給糸パッケージ21の上部に形成されるバルーンの大きさを適切に制御することで、スピンドル22からの糸20の円滑な引出しを実現している。
【0028】
糸ガイド23の上方には、転動可能なローラからなる2つの案内ローラ24,25が配置されている。この案内ローラ24,25は、糸ガイド23から供給された糸20の軌道を適宜屈曲させて、後述のフィードローラ26に導くように構成されている。
【0029】
フィードローラ26は、糸20を駆動ドラム28側へ供給するために、適宜の速度で駆動される。また、トラバースガイド27は、糸20を引っ掛けた状態で往復動することで、当該糸20を所定のトラバース幅で綾振りできるように構成されている。このトラバースガイド27の往復運動は、前述の共通駆動ユニット10の電動モータによって実現される。
【0030】
撚糸ユニット16は、パッケージ30(巻取ボビン29)を回転可能に支持するためのクレードル31を備えている。このクレードル31は、フィードローラ26の上方であって、前記駆動ドラム28の近傍に配置されている。前記クレードル31は一対のクレードルアームを備えており、その間に巻取ボビン29を回転可能に支持できるように構成されている。
【0031】
クレードル31はヒンジ軸を介して支持されており、駆動ドラム28に対して近接及び離間する方向に回転することができる。これにより、巻取ボビン29への糸20の巻取りに伴う径の増大を、クレードル31の回転によって吸収することができる。
【0032】
また、一側のクレードルアームには、オペレータが握って操作することが可能なクレードル操作レバー32が備えられている。このクレードル操作レバー32をオペレータが握って上下に動かすことで、前記ヒンジ軸を中心としてクレードル31を上下に回転させ、駆動ドラム28とパッケージ30(巻取ボビン29)とを接触させたり離したりすることができる。
【0033】
それぞれの撚糸ユニット16においては、装置正面側にスイッチケース41が配置されている。このスイッチケース41には、当該撚糸ユニット16のスピンドル22の回転/停止をオペレータが指示するためのスイッチ(操作部)42が配置されている。このスイッチ42は、内部にLEDランプ(発光部、報知部)43が組み込まれた押しボタンスイッチとして構成されている。スイッチ42及びLEDランプ43は、前記ユニット制御部70に電気的に接続されている。
【0034】
LEDランプ43は、スピンドル22の回転/停止に応じて発光状態を切り替えるように、ユニット制御部70によって制御されている。具体的には、ユニット制御部70は、スピンドル22の回転中はLEDランプ43が原則として消灯し、スピンドル22の停止中はLEDランプ43が点灯するように制御する。
【0035】
ユニット制御部70はマイクロコンピュータとして構成されており、図略のCPU(中央演算処理装置)と、ROM(リードオンリーメモリ)と、RAM(ランダムアクセスメモリ)と、タイマ回路と、を備える。また、ユニット制御部70は、図3に示すように、データの送受信が可能なI/Oポート78を備えている。
【0036】
図1及び図3に示すように、前記機台制御装置11は、演算部17と、表示部18と、入力キー19と、を備えている。また、機台制御装置11はユニット制御部70と同様にマイクロコンピュータとして構成されており、図示しないCPU、ROM及びRAMを備えるほか、図3に示すように、データの送受信のためのI/Oポート15を備えている。
【0037】
次に、各撚糸ユニット16の制御について説明する。図2及び図3に示すように、それぞれの撚糸ユニット16において、スイッチケース41に配置されたスイッチ42と、LEDランプ43は、当該撚糸ユニット16を制御するためのユニット制御部70にそれぞれ接続されている。また、スピンドル22を駆動する電動モータ36も、前記ユニット制御部70に接続されている。
【0038】
ユニット制御部70の前記ROMには、撚糸ユニット16の各構成(例えば、電動モータ36、LEDランプ43、図略のセンサ、アクチュエータ等)を制御するための制御プログラムが記憶されている。前記CPUは、ROMに記憶された制御プログラムを前記RAMに読み出して実行することにより、各部を制御して適切に糸の巻取りを行うことができるように構成されている。言い換えれば、上記ハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、糸の撚糸及び巻取りを制御するための巻取制御部75がユニット制御部70に構築されている。
【0039】
また、ユニット制御部70は、上記の巻取制御部75のほか、糸切れ復旧後の巻取再開時に、オペレータに知らせるクレードル操作レバー32の操作タイミング(巻取の開始タイミング)を計算するための開始タイミング演算部76を備えている。
【0040】
機台制御装置11のI/Oポート15は、各撚糸ユニット16に備えられるユニット制御部70のI/Oポート78と、適宜の通信線を介して接続されている。この構成により、機台制御装置11は、それぞれの撚糸ユニット16のユニット制御部70に対して糸の撚りに関する条件を送信し、当該条件を設定することができる。また機台制御装置11は、それぞれの撚糸ユニット16のユニット制御部70から、当該撚糸ユニット16における現在の状況に関する情報を受信可能に構成されている。
【0041】
この構成により、ダブルツイスタ60が備えている複数の撚糸ユニット16を、機台制御装置11によって一括して管理することができる。具体的には、機台制御装置11は、それぞれの撚糸ユニット16のユニット制御部70に対して撚りに関する条件を送信し、設定することができる。更に、機台制御装置11は、それぞれの撚糸ユニット16のユニット制御部70から、当該撚糸ユニット16における現在の糸巻取状況(例えば、巻取りの進行状況)に関する情報を受信可能に構成されている。
【0042】
具体的には、オペレータは適宜の操作によって機台制御装置11の表示部18に設定メニューを表示させ、入力キー19により数値入力を行うことによって、糸20に付与する撚りに関する条件を設定することができる。なお、設定された条件は、それぞれの撚糸ユニット16を個別に指定して送信することもできるし、全ての撚糸ユニット16に対し一括して送信することもできる。
【0043】
次に、糸切れが発生した場合について説明する。本実施形態のダブルツイスタ60では、ある撚糸ユニット16において何らかの事情により糸切れが生じた場合、それを図略の検知機構(例えば、公知のドロップワイヤを用いたもの)で検知できるように構成されている。そして、糸切れが検知されると、図示しない巻取中断機構が自動的にクレードル31を持ち上げて上昇させ、パッケージ30を駆動ドラム28から離して当該パッケージ30の駆動を停止させるようになっている。また、それと同時に、ユニット制御部70は電動モータ36を制御して直ちにスピンドル22の回転を停止させ、糸20の撚りを停止する。
【0044】
その後、糸切れの発生に気付いたオペレータは、対象の撚糸ユニット16に移動し、以下の復旧作業を行う。
【0045】
即ち、オペレータは最初に、クレードル31が上昇してパッケージ30が駆動ドラム28から離れている状態であること(パッケージ30の回転が停止していること)、及び、スピンドル22の回転が停止していることを確認する。なお、上述したように、ユニット制御部70は、スピンドル22の停止中は前記LEDランプ43が点灯するように制御する。従って、オペレータは、スピンドル22の回転が停止していることを、スイッチケース41のスイッチ42が光っていることによって簡単に確認することができる。
【0046】
次に、オペレータは、切れた糸20の糸端を探し、糸端同士を結んで繋ぐ糸継作業を行う。なお、この結んだ箇所においては、糸切れにより撚りが解かれているので、殆ど無撚りの状態となっている。次に、オペレータは、クレードル31が上昇した状態のまま、糸20を指で持って図4のように装置の正面側に若干引き出した状態で、スイッチケース41のスイッチ42を押す。すると、ユニット制御部70は、点灯している前記LEDランプ43を消灯させるとともに、直ちに電動モータ36を駆動してスピンドル22を回転させる。この結果、糸20がパッケージ30に巻き取られない状態のまま、オペレータに持たれた糸20(無撚りの部分)に撚りが付与されていく。
【0047】
そしてユニット制御部70は、スイッチ42が押された時点からタイマ回路による計時を開始し、所定の時間が経過した時点でLEDランプ43を点滅させるように制御する。即ち、ユニット制御部70は、スピンドル22が所定の量だけ回転し、無撚りの部分に必要なだけの撚りを付与できたタイミングを、LEDランプ43の点滅によってオペレータに知らせるのである。なお、スイッチ42が押されてからLEDランプ43を点滅させるまでの待機時間としては、機台制御装置11に設定されて撚糸ユニット16のユニット制御部70が受信した撚り数の設定値に基づいて、図3に示す開始タイミング演算部76が計算した値が用いられる。LEDランプ43の点滅は、適宜の周期で、例えば数秒程度継続される。
【0048】
オペレータは、スイッチ42を押した後、クレードル操作レバー32を手で掴んだ状態でスイッチ42の様子を観察する。そして、スイッチ42(前記LEDランプ43)が点滅を開始したのにタイミングを合わせて、クレードル操作レバー32を下方へ押してクレードル31を下降させ、パッケージ30を駆動ドラム28に接触させて巻取りを再開させる。そしてオペレータは、回転するパッケージ30に糸20が巻き取られるのに応じて、指に掛けていた糸20をフィードローラ26及び案内ローラ24,25に掛けるようにして離す。以上により、糸20を継いだ無撚りの部分に必要な撚りを正確に付与して巻取りを再開することができる。
【0049】
このように、本実施形態では、クレードル31を下降させるタイミングをスイッチ42の点滅タイミングに合わせることで、糸が切れて繋いだ部分(無撚りの部分)について、必要な撚りを正確に掛けた状態でパッケージ30に巻き取ることができる。従って、ダブルツイスタ60の操作に慣れていないオペレータでも、安定して正確なタイミングで糸の巻取りを再開させ、糸20の撚りムラを容易に低減して高品質のパッケージを得ることができる。
【0050】
以上に説明したように、本実施形態のダブルツイスタ60は、回転するスピンドル22によって糸20に撚りを付与する撚糸ユニット16を備える。そして、この撚糸ユニット16は、クレードル31と、駆動ドラム28と、スイッチ42と、LEDランプ43と、を備える。クレードル31は、撚りが付与された糸20が巻き取られるパッケージ30を支持する。駆動ドラム28は、パッケージ30と接触して当該パッケージ30を回転させる。スイッチ42は、停止しているスピンドル22を回転させるために操作される。LEDランプ43は、スイッチ42が操作された後に、スピンドル22が所定の量だけ回転した時点で、クレードル31を下降させるタイミングを光の点滅によって通知する。
【0051】
これにより、撚糸ユニット16での巻取中に糸切れが生じて糸継作業を行った場合でも、巻取再開時に、スイッチ42を操作してスピンドル22の回転を開始させ、LEDランプ43が点滅し始めたタイミングでクレードル操作レバー32を操作してパッケージ30を駆動ドラム28に接触させるようにすることで、糸継ぎを行った箇所に生じた無撚りの部分に対して撚りを必要なだけ正確に掛けた状態でパッケージ30に巻き取ることができる。従って、撚りムラの少ないパッケージ30を形成することができる。また、ダブルツイスタの操作に慣れていないオペレータであっても、LEDランプ43の点滅開始に合わせてクレードル操作レバー32を操作するように注意するだけで、正確な撚りを糸の無撚り部分に付与できる。従って、オペレータによる作業品質のバラツキを抑制でき、パッケージ品質の安定化を実現することができる。
【0052】
また、本実施形態のダブルツイスタ60において、LEDランプ43は、その発光状態が(消灯状態から点滅状態に)変化することで、クレードル31を下降させるタイミングを通知するように構成されている。
【0053】
これにより、簡単な構成で、オペレータにクレードル操作レバー32の操作タイミングを判り易く知らせることができる。
【0054】
次に、第2実施形態のダブルツイスタについて説明する。図5は、第2実施形態のダブルツイスタが備える撚糸ユニット16xの概略を示す側面図及びブロック図である。図6は、機台制御装置11と撚糸ユニット16xの主要な構成を示すブロック図である。図7は、糸切れ発生時に糸継ぎして巻取りを再開する作業を示す側面図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0055】
本実施形態のダブルツイスタは、前記の第1実施形態と同様に、複数並べて配置された撚糸ユニット16xを備える。なお、本実施形態のダブルツイスタにおいても、各撚糸ユニット16xの駆動ドラム28及びトラバースガイド27等は共通の電動モータ(図略)によって駆動される構成となっている。
【0056】
それぞれの撚糸ユニット16xは、パッケージ30を制動するためのブレーキ機構(切替機構)65を備える。このブレーキ機構65は、駆動ドラム28の近傍に配置されたブレーキ体61を備えている。
【0057】
ブレーキ体61は、支軸を中心として回転可能に支持されている。また、ブレーキ体61には、撚糸ユニット16xに配置されたシリンダ62のシリンダロッドが連結されている。このシリンダ62は、流体シリンダ(具体的には、空気圧シリンダ)として構成されている。シリンダ62は、ブレーキ体61を、駆動ドラム28から退避した退避位置(図5に実線で示す位置、駆動位置)と、駆動ドラム28の上側を覆うようにしてその先端を当該駆動ドラム28とパッケージ30との間に入り込ませる制動位置(図5に鎖線で示す位置、駆動解除位置)と、の間で回転させることができる。
【0058】
シリンダ62には、空気圧の供給を切り替えるための電磁弁63が接続される。また、図5及び図6に示すように、電磁弁63はユニット制御部70に電気的に接続されている。なお、上記以外の構成については、上記第1実施形態の構成と同様である。
【0059】
この構成で、ある撚糸ユニット16xにおいてパッケージ30の回転中に何らかの事情により糸切れが生じ、それを図略の検知機構が検知すると、ユニット制御部70は電磁弁63を制御してシリンダ62を作動させ、ブレーキ体61の位置を前記退避位置から制動位置に切り替える。この結果、ブレーキ体61の先端がパッケージ30と駆動ドラム28の間に差し込まれ、パッケージ30はブレーキ体61の上に乗り上げる。
【0060】
従って、パッケージ30に対する駆動ドラム28からの駆動力が絶たれると同時に、パッケージ30の外周面をブレーキ体61が摩擦制動するので、パッケージ30の回転が直ちに停止する。それと同時に、ユニット制御部70は電動モータ36を制御して直ちにスピンドル22の回転を停止させ、糸20の撚りを停止する。
【0061】
オペレータは、当該撚糸ユニット16xにおいて、切れた糸20を糸継ぎする。そして、図7に示すように(上述の第1実施形態の場合と同様に)、糸20を指に掛けて若干装置正面側へ引き出した状態で、スイッチケース41のスイッチ42を押す。すると、ユニット制御部70は、前記LEDランプ43を消灯させるとともに、直ちに電動モータ36を駆動してスピンドル22を回転させる。この結果、糸20がパッケージ30に巻き取られない状態のまま、オペレータに持たれた糸20(無撚りの部分)に撚りが付与されていく。
【0062】
ユニット制御部70は、オペレータによってスイッチ42が押された時点から、図略のタイマ回路による計時を開始する。そして、前記開始タイミング演算部76が計算した所定の時間が経過した時点で、電磁弁63を制御してシリンダ62を作動させ、ブレーキ体61を制動位置から退避位置に切り替える。即ち、本実施形態では、ユニット制御部70は、無撚りの部分に必要な撚りをスピンドル22の回転により付与できた時点で、パッケージ30の回転(即ち、糸20の巻取り)を開始するのである。そしてオペレータは、駆動ドラム28に接触して回転するパッケージ30に糸20が巻き取られるのに応じて、指に掛けていた糸20をフィードローラ26及び案内ローラ24,25に掛けるようにして離す。
【0063】
以上のように構成された本実施形態のダブルツイスタでは、無撚りの部分に撚りが必要なだけ掛けられたタイミングで巻取り(パッケージ30の回転)が自動的に開始されるので、撚りの付与が一層正確になり、高品質なパッケージ30を得ることができる。
【0064】
以上に示すように、本実施形態のダブルツイスタが備える撚糸ユニット16xは、クレードル31と、駆動ドラム28と、ブレーキ機構65と、スイッチ42と、ユニット制御部70と、を備える。ブレーキ機構65は、駆動ドラム28の回転がパッケージ30に伝達される駆動伝達状態(ブレーキ体61を退避位置とした状態)と、駆動ドラム28の回転がパッケージ30に伝達されるのを遮断する遮断状態(ブレーキ体61を制動位置とした状態)と、を切替可能である。そして、ユニット制御部70は、スイッチ42が操作された後にスピンドル22が所定の量だけ回転した時点で、ブレーキ機構65を前記遮断状態から前記駆動伝達状態に切り替える(即ち、ブレーキ体61を制動位置から退避位置に切り替える)。
【0065】
これにより、撚糸ユニット16xでの巻取中に糸切れが生じて糸継作業を行った場合でも、巻取再開時にオペレータがスイッチ42を操作すると、スピンドル22の回転が開始され、糸継ぎを行った箇所に生じた無撚りの部分に対して撚りを必要なだけ正確に掛けたタイミングで、パッケージ30を駆動ドラム28に接触させるようにブレーキ機構65が自動で切り替えられる。従って、撚りムラの少ないパッケージ30を簡単に形成することができる。また、ダブルツイスタの操作に慣れていないオペレータであっても、単にスイッチ42を操作するだけで、正確な撚りを糸の無撚り部分に自動的に付与できる。従って、オペレータによる作業品質のバラツキを抑制でき、パッケージ品質の安定化を実現することができる。
【0066】
また、本実施形態のダブルツイスタは撚糸ユニット16xを複数備えており、駆動ドラム28は、複数の撚糸ユニット16xにおいて共通の電動モータによって駆動されている。
【0067】
これにより、駆動ドラム28の駆動源を共通の電動モータとすることでコストを削減しつつ、撚糸ユニット16xごとに糸の巻取りを正確なタイミングで自動的に開始(再開)することができる。
【0068】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0069】
第1実施形態において、クレードル操作レバー32の操作タイミングは、スイッチ42を押した時点から所定時間後とすることに限られない。例えば、スピンドル22の回転を計測するためのセンサを備え、このセンサの信号に基づいてスピンドル22の回転をカウントし、このカウント値が所定値に達した時点でLEDランプ43を点滅させる構成とすることもできる。なお、第2実施形態のブレーキ機構65についても同様に、スイッチ42を押した時点からのスピンドル22の回転カウント値が所定値に達した時点でブレーキ機構65を切り替えるように変更することができる。
【0070】
第1実施形態において、LEDランプ43が配置される場所は適宜変更することができる。また、LEDランプ43は、点滅することによりクレードル操作レバー32の操作タイミングを知らせることに代えて、例えば発光色を変化させることで知らせるようにしても良い。また、LEDランプ43に代えて他の発光手段(発光部)を用いても良いし、例えば液晶ディスプレイに適宜の画面を表示することでアラームを発しても良い。また、音によりアラームを発する発音部を報知部として用いても良い。
【0071】
上記実施形態のダブルツイスタは、糸切れ時にはオペレータが手作業で糸を結んで糸継ぎすることとしている。しかしながら、ダブルツイスタが糸継装置を備え、糸継装置によって糸を自動で糸継ぎするように変更することもできる。
【0072】
上記実施形態のダブルツイスタのユニット制御部70は、データ通信のためのI/Oポート78を備えているが、通信のためのポートはこれに限られず、他の通信ポートでも良い。例えば、通信ポートとしてRS−232を使用することもできる。
【符号の説明】
【0073】
16 撚糸ユニット
28 駆動ドラム
31 クレードル
42 スイッチ(操作部)
43 LEDランプ(発光部、報知部)
60 ダブルツイスタ(撚糸機)
70 ユニット制御部(制御部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するスピンドルにより糸に撚りを付与する撚糸ユニットを備える撚糸機であって、
前記撚糸ユニットは、
撚りが付与された糸が巻き取られるパッケージを支持するクレードルと、
前記パッケージと接触して当該パッケージを回転させる駆動ドラムと、
停止している前記スピンドルを回転させるために操作される操作部と、
前記操作部が操作された後に前記スピンドルが所定の量だけ回転した時点で、次工程の操作タイミングを通知する報知部と、
を備えることを特徴とする撚糸機。
【請求項2】
請求項1に記載の撚糸機であって、
前記報知部は発光部として構成され、その発光状態が変化することで次工程の操作タイミングを通知するように構成されていることを特徴とする撚糸機。
【請求項3】
回転するスピンドルにより糸に撚りを付与する撚糸ユニットを備える撚糸機であって、
前記撚糸ユニットは、
撚りが付与された糸が巻き取られるパッケージを支持するクレードルと、
前記パッケージと接触して当該パッケージを回転させる駆動ドラムと、
前記駆動ドラムの回転が前記パッケージに伝達される駆動伝達状態と、前記駆動ドラムの回転が前記パッケージに伝達されるのを遮断する遮断状態と、を切替可能な切替機構と、
停止している前記スピンドルを回転させるために操作される操作部と、
前記操作部が操作された後に前記スピンドルが所定の量だけ回転した時点で、前記切替機構を前記遮断状態から前記駆動伝達状態に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする撚糸機。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の撚糸機であって、
前記撚糸ユニットを複数備え、
前記駆動ドラムは、複数の前記撚糸ユニットに共通の駆動源によって駆動されることを特徴とする撚糸機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275664(P2010−275664A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130409(P2009−130409)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】