説明

撚線機

【課題】短尺の撚り線を製造する撚線機の省スペース化および段替えの簡素化が可能な撚線機の提供。
【解決手段】1本のスチールワイヤW1を繰出しリール1から繰り出し、テンショナー2により張力を調整してくせ付け機構3に供給し、くせ付け機構3によりコード撚りのためのスパイラル状のくせ付けを施して、送り機構4により送り出し、そのくせ付けして送り出したスチールコードW2をカッター5で所定長さに切断し、切断したスチールコードW3を所定本数毎に投入機構6により回転異形ダイス7に投入して集合させ、回転異形ダイス7により撚り合わせつつ引取り機構8により引き取って、スチールコードCとして送り出すよう撚線機を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数本の素線を撚り合わせて短尺の撚り線を製造する撚線機に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ補強材等に使用するスチールコード等の撚り線を製造する撚線機として、チューブラー型撚線機やバンチャー型撚線機が一般に使用されている。これらチューブラー型やバンチャー型の撚線機は、複数本の素線を連続的に撚ってリールに巻き取り、その巻き取った長い撚り線を、例えばタイヤ成形の時に所定の長さに切って使用することを前提としたものである。
【0003】
それに対し、捻り機構であるオーバーツイストローラーを備えた回転体に送り機構を付加して、オーバーツイストローラーを引取りキャプスタンに兼用し、撚り点の前後で撚り線側または線材側の何れか一方をフリーにして、撚り線となって出てきたものを短く切るようにした撚線機が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。この撚線機は、例えばタイヤ成形時にインラインで使用し、撚り線となって出てきたものを順次短く切って、その場で、例えばタイヤ補強用に並べてタイヤを成形してしまうことを前提とするもので、リールに巻き取らないので、真直性に優れた短尺の撚り線を効率良く製造でき、また、チューブラー型やバンチャー型に較べてコンパクトな撚線機とすることができる。
【特許文献1】国際公開第2004/048679号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、短尺の撚り線を製造するよう開発された上記従来の撚線機は、撚り合わせる素線本数(撚り本数)分のリール(素線繰出用のリール)を配置する必要があって、大きな繰出しスペースが必要である。また、この撚線機は、素線本数分のリールを使用するため、素線径や撚り本数等のコード構成を変える段替えに際して必要本数分のリールを交換する必要があり、また、交換したリール毎に線通しが必要であるため、段替えに時間がかかる。
【0005】
本発明は、短尺の撚り線を製造する撚線機の省スペース化および段替えの簡素化を容易なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撚線機は、複数本の素線を撚り合わせて短尺の撚り線を製造する撚線機であって、リールから引き出した素線にコード撚りのためのくせ付けを施し、そのくせ付けした素線を製品長さに合わせて所定長さに切断し、切断した素線をコード構成に応じた本数集合させて撚り合わせるものである。くせ付けには、例えば従来一般に使用されているくせ付け機を使用する。また、集合部には、例えば、コード構成に応じた本数の素線を集合させて素線同士相対回転できない状態で通す穴を備えた異形ダイスを使用する。
【0007】
この撚線機は、素線をリールから繰り出して、コード撚りのためのスパイラル状のくせを付けた後、製品長さに合わせて所定長さに切断し、切断した素線をコード構成に応じた本数集合させて撚り合わせる。こうして例えばタイヤ成形時にインラインで補強材としての短尺の撚り線を製造でき、その場で並べてタイヤを成形してしまうようにできる。製造した短尺の撚り線は一旦保管した後で使用することもできる。
【0008】
この撚線機では、コード撚りのため施した後所定長さに切断した素線を所定本数集合させて撚り合わせるので、素線繰出用のリールは撚り本数に関係なく1個でよく、短尺用として開発された従来の撚線機に比べて省スペース化が容易である。また、素線径や撚り本数等のコード構成を変える段替えに際してリールを交換する場合でも、1個のリールを交換すればよく、線通しも1本分でよい。また、集合部に異形ダイスを使用することにより、複数本の素線を集合部に投入する機構が簡単になり、集合の自動化が容易となる。また、集合部に異形ダイスを使用した場合、複数本の素線を端から端まで均一に撚り合わせることができる。また、例えば、くせ付けに従来のくせ付け装置を使用し、集合部に異形ダイスを使用する場合、必要に応じてリール1個を交換し、また、くせ付けピンと異形ダイスを交換するだけで、簡単容易に段替えを行うことができる。
【0009】
また、この撚線機は、集合部に異形ダイスを使用する場合に、その異形ダイスの回転と引取り手段による送りにより、異形ダイスに通して集合させた複数本の素線を撚り合わせるようにすることができる。製品長さが短い場合、このように異形ダイスの回転と引取り手段による送りとによって複数本の素線を撚り合わせることが可能であり、撚り合わせ機構を簡単・小型化できる。
【0010】
また、この撚線機は、異形ダイスに通して集合させた素線を、交叉して回転する一対のローラーあるいはベルトに挟んで撚り合わせるようにすることができる。異形ダイスを通して集合させた複数本の素線を、一対のローラーあるいはベルトに挟み、これらローラーあるいはベルトを回転させることにより、ローラー回転方向あるいはベルト走行方向に摩擦力が発生し、撚り線進行方向に直角な方向の分力が素線に対する捻り力となり、撚り線進行方向の分力が送り力(引取り力)となって、複数本の素線が捩られると同時に送られ、撚りながら送り出される。切断した複数本の素線は、このように異形ダイスに通して集合させ、交叉して回転する一対のローラーあるいはベルトに挟んで撚り合わせることが可能であり、撚り合わせ機構を簡単・小型化できる。
【発明の効果】
【0011】
以上のとおり、本発明の撚線機は、素線繰出用のリールが撚り本数に関係なく1個でよいため、短尺の撚り線を製造する撚線機の省スペース化が容易となり、かつ、必要に応じてリール1個を交換し、その他に、例えば、くせ付けピンと異形ダイスを交換するだけで段替えでき、段替えが簡単容易となる。
【0012】
そして、この撚線機は、集合部に異形ダイスを使用することにより、複数本の素線の集合の自動化が容易となり、また、複数本の素線を端から端まで均一に撚り合わせことができる。
【0013】
また、この撚線機は、製品長さが短い場合に、切断した複数本の素線を集合させる異形ダイスの回転と引取り手段による送りにより複数本の素線を撚り合わせるよう構成することができ、それにより、撚り合わせ機構を簡単・小型化できる。
【0014】
また、この撚線機は、切断した複数本の素線を異形ダイスに通して集合させ、交叉して回転する一対のローラーあるいはベルトに挟んで撚り合わせるよう構成することができ、それにより撚り合わせ機構を簡単・小型化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1〜図4は本発明の第1実施形態の撚線機を示している。図1は撚線機の全体構成を一部断面にて示す平面図(a)およびコンベアベルトの側面図(b)、図2はくせ付け・切断部の構成を一部断面にて示す正面図(a)およびくせ付けした素線の平面図(b)、図3は集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図、図4は異形ダイスの拡大断面図(a)および異形ダイスの穴の形状を示す図(b)である。
【0017】
この実施形態の撚線機は、例えばタイヤ製造ラインにインライン配置されるスチールコード製造用の撚線機として使用されるもので、図1に示すように、素線である真直なスチールワイヤW1が巻かれている1個の繰出しリール1と、繰出しリール1から繰り出されるスチールワイヤW1の張力を調整するテンショナー2と、テンショナー2を経て供給されたスチールワイヤW1にコード撚りのためのくせ付けをするくせ付け機構3と、くせ付けされたスチールワイヤW2を送り出す送り機構4と、送り出されたくせ付け後のスチールワイヤW2を所定長さ毎に切断するカッター5と、カッター5で切断されたスチールワイヤW3を複数本(所定本数)ずつ受け止めて搬送し集合部へ投入する投入機構6と、複数本のスチールワイヤW3を集合させる集合部を構成するとともに後述の引取り手段8と協働して撚り合わせ機構を構成し、複数本のスチールワイヤW3を集合させて撚り合わせる回転異形ダイス7と、撚り線であるスチールコードCを回転異形ダイス7から引き出す引取り手段8とを備えている。
【0018】
ここで、繰出しリール1(繰出し部)は、胴部両端にフランジ部を備えたもので、従来一般に使用されているものと同様である。また、テンショナー2(張力調整部)は、図2に示すように、ターンローラー21とダンサーローラー22とからなるもので、従来一般に使用されているものと同様であり、くせ付け機構3(くせ付け部)は、3本のくせ付けピン31を千鳥状に所定間隔をおいて突設し、それらのくせ付けピン31の間に真直なスチールワイヤW1を通し、プーリー32を介してモータ駆動によりパスラインを軸として回転させることにより、くせ付けピン31によるしごき効果と、パスラインを軸とする回転効果との相乗効果で、スチールワイヤW1にスパイラル状のくせを付けるもので、従来一般に使用されているくせ付け機と同様である。そして、送り機構4(送り部)は、キャプスタン41および押えローラー42と、ダミープーリー43とからなるもので、従来一般に使用されているものと同様であり、カッター5(切断部)は、例えば上下2枚のカッター刃を有するもので、従来一般に使用されているものと同様である。
【0019】
そして、投入機構6(投入部)は、図1に示すように、送り機構4から送り出されカッター5で所定長さに切断されたスチールワイヤW3を1本ずつワイヤ先端側および後端側の2箇所で受けるようそれぞれが分割されて前後一対となった複数の線受け61,62と、各一対の線受け61,62を前後で同列になるよう支持し、各前後一対の線受け61,62が送り出し方向(図1の右方向)に直交する方向(図1の下方向)へ同期移動させるよう駆動される前後一対のコンベアベルト63,64と、線受け61,62上に投出されたスチールワイヤW3の先端位置を規制する位置調整自在な線ストッパー65と、コンベアベルト63,64のベルト移動方向の側端で前後一対のコンベアベルト63,64の間に配置され、線受け61,62上に支持されて移送されてきた複数本のスチールワイヤW3を前方(図1に右方)へ送り、集合部を構成する回転異形ダイス7に投入する送りローラー66とを備えたものである。
【0020】
また、回転異形ダイス7は、図3および図4に示すように、コード構成に応じた本数(図示の例では3本)の素線(スチールワイヤW3)を集合させて素線同士相対回転できない状態で通す穴71(図示の例では、素線である3本のスチールワイヤW3の束を相対回転できない状態で通すよう略三角に形成されている。)を有する異形ダイス72を保持したホルダー73を筒状の回転体74に装着し、回転体74をプーリー75を介してモータ駆動で回転させることにより、異形ダイス72の穴71に通したスチールワイヤW3の束に捻りトルクを加えるよう構成されたものであり、引取り手段8は、例えば、フィードローラー81と押えローラー82を備え、回転異形ダイス7で捻りトルクを付与したスチールワイヤW3の束に送り力(引取り力)を加えるよう構成されたものである。これら回転異形ダイス7と引取り手段8は、協働して撚り合わせ機構(撚り合せ部)を構成し、複数本のスチールワイヤW3の束を撚りながら送り出す。引取り手段は上記構成のものに限らず適宜変更できる。
【0021】
この撚線機は、1本のスチールワイヤW1が繰出しリール1から繰り出され、テンショナー2により張力が調整されてくせ付け機構3に供給され、くせ付け機構3によりコード撚りのための所定ピッチのスパイラル状のくせ付けが施され、送り機構4によって送り出される。そして、送り出されたくせ付け後のスチールワイヤW2が、カッター5で製品(スチールコードC)の長さに合わせて所定長さ毎に切断され、切断されたスチールワイヤW3が、所定本数(図示の例では3本)毎に投入機構6の一対の線受け61,62に支持され、線ストッパー66により先端が揃えられた状態でコンベアベルト63,64の回転により移送され、集合部位置で送りローラー66により回転異形ダイス7に投入される。そして、その所定本数(図示の例では3本)のスチールワイヤW3が集合した束となり、回転異形ダイス7の捻り力と引取り手段8の引取り力とで撚り合わされ、スチールコードCとなって送り出される。製品長さが短い場合、このように回転異形ダイス7と引取り手段8の組み合わせによって複数本の素線を撚り合わせることが可能で、撚り合わせ機構を簡単・小型化できる。
【0022】
こうして例えばタイヤ成形時にインラインで補強材としての短尺の撚り線であるスチールコードCを製造し、その場で並べてタイヤを成形する。また、製造した短尺のスチールコードCは、一旦保管した後で使用するようにしてもよい。
【0023】
この撚線機の場合、繰出リール1は撚り本数に関係なく1個でよい。そして、段替えに際しては、素線径等が変わるためにリールを交換する場合でも、交換するリールは1個でよく、線通しも1本分でよく、他に、くせ付けピン31と異形ダイス72を交換するだけで、簡単容易に段替えを行うことができる。また、この撚線機は、集合部に異形ダイス72を使用し、切断した複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を自動投入するよう構成したもので、投入機構の構成は簡単で、複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を端から端まで均一に撚り合わせることができる。
【0024】
(第2実施形態)
図5は本発明の第2実施形態の撚線機の集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。この実施形態は、先の第1実施形態の撚線機において、集合・撚り合わせ部を変更して図5に示す構成を採用したもので、繰出し部(繰出しリール1)、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)および投入部(投入機構6)の構成および作用は第1実施形態と同様である。図1に示す繰出しリール1、テンショナー2、くせ付け機構3、送り機構4、カッター5および投入機構6の構成は、第2実施形態にも共通する。また、図2に示すくせ付け・切断部の構成と、図4に示す異形ダイス72の構成は、第2実施形態にも共通する。
【0025】
この実施形態は、集合部に固定式の異形ダイス72を使用し、撚り合わせ部に、交叉して回転する一対のローラー91,92を使用した撚り合わせ機構を採用している。この撚り合わせ機構は、一対のローラー91,92がそれぞれスプロケット93,94を介して図示しないモータにより駆動されて、図5に矢印で示すようにそれぞれ一定方向に回転するよう構成されるものであり、これら一対のローラー91,92は、平面視にて交叉し、上下に重なって、その交叉する部分が、コード撚りのためのくせ付けが施され所定長さに切断された複数本のスチールワイヤW3の束を挟んで回転することにより、ローラー回転方向に摩擦力が発生し、そのコード進行方向(図5で右方向)に直角な方向の分力がスチールワイヤW3の束に対する捻り力となり、コード進行方向の分力が送り力(引取り力)となるよう配置される。
【0026】
この撚線機は、第1実施形態の場合と同様、繰出し部(繰出しリール1)から繰り出された真直なスチールコードW1が、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)を経て、くせ付けされ切断されたスチールワイヤW3となり、その切断されたスチールワイヤW3が投入部(投入機構6)によって所定本数(図示の例では3本)ずつ移送され、異形ダイス72に投入される。そして、投入された所定本数(図示の例では3本)のスチールワイヤW3が異形ダイス72の穴71で集合し束となって、ローラー91,92で撚り合わされ、スチールコードCとなって送り出される。
【0027】
この実施形態の撚線機は、第1実施形態と同様、例えばタイヤ成形時にインラインで補強材としての短尺の撚り線であるスチールコードCを製造し、その場で並べてタイヤを成形するようにできる。また、製造した短尺のスチールコードCを一旦保管した後で使用することもできる。そして、やはり繰出リール1は撚り本数に関係なく1個でよく、段替えに際し、素線径等が変わるためにリールを交換する場合でも、交換するリールは1個でよく、線通しも1本分でよく、他に、くせ付けピン31と異形ダイス72を交換するだけで、簡単容易に段替えを行うことができる。また、集合部に異形ダイス72を使用し、切断した複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を自動投入するよう構成したものであって、投入機構の構成が簡単であり、複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を端から端まで均一に撚り合わせることができる。
【0028】
(第3実施形態)
図6は本発明の第3実施形態の撚線機の集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。この実施形態は、先の第1実施形態の撚線機において、集合・撚り合わせ部を変更して図6に示す構成を採用したもので、繰出し部(繰出しリール1)、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)および投入部(投入機構6)の構成および作用は第1実施形態と同様である。図1に示す繰出しリール1、テンショナー2、くせ付け機構3、送り機構4、カッター5および投入機構6の構成は、第3実施形態にも共通する。また、図2に示すくせ付け・切断部の構成と、図4に示す異形ダイス72の構成は、第3実施形態にも共通する。
【0029】
この実施形態は、集合部に固定式の異形ダイス72を使用し、撚り合わせ部に、交叉して回転する一対のベルト(平ベルト)101,102を使用した撚り合わせ機構を採用している。この撚り合わせ機構は、一対のベルト101,102がそれぞれスプロケット103,104を介して図示しないモータにより駆動されて、図6に矢印で示すようにそれぞれ一定方向に回転するよう構成されるものであり、これら一対のベルト101,102は、平面視にて交叉し、上下に重なって、その交叉する部分が、コード撚りのためのくせ付けが施され所定長さに切断された複数本のスチールワイヤW3の束を挟んで回転することにより、ローラー回転方向に摩擦力が発生し、そのコード進行方向(図6で右方向)に直角な方向の分力がスチールワイヤW3の束に対する捻り力となり、コード進行方向の分力が送り力(引取り力)となるよう配置される。
【0030】
この撚線機は、第1実施形態の場合と同様、繰出し部(繰出しリール1)から繰り出された真直なスチールコードW1が、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)を経て、くせ付けされ切断されたスチールワイヤW3となり、その切断されたスチールワイヤW3が投入部(投入機構6)によって所定本数(図示の例では3本)ずつ移送され、異形ダイス72に投入される。そして、投入された所定本数(図示の例では3本)のスチールワイヤW3が異形ダイス72の穴71で集合し束となって、ベルト101,102で撚り合わされ、スチールコードCとなって送り出される。
【0031】
この実施形態の撚線機は、第1実施形態と同様、例えばタイヤ成形時にインラインで補強材としての短尺の撚り線であるスチールコードCを製造し、その場で並べてタイヤを成形するようにできる。また、製造した短尺のスチールコードCを一旦保管した後で使用することもできる。そして、やはり繰出リール1は撚り本数に関係なく1個でよく、段替えに際し、素線径等が変わるためにリールを交換する場合でも、交換するリールは1個でよく、線通しも1本分でよく、他に、くせ付けピン31と異形ダイス72を交換するだけで、簡単容易に段替えを行うことができる。また、集合部に異形ダイス72を使用し、切断した複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を自動投入するよう構成したものであって、投入機構の構成が簡単であり、複数本の素線(切断したスチールワイヤW3)を端から端まで均一に撚り合わせることができる。
【0032】
(第4実施形態)
図7は本発明の第3実施形態の撚線機の撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。この実施形態は、先の第1実施形態の撚線機において、集合・撚り合わせ部を変更して図5に示す構成を採用したもので、繰出し部(繰出しリール1)、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)および投入部(投入機構6)の構成および作用は第1実施形態と同様である。図1に示す繰出しリール1、テンショナー2、くせ付け機構3、送り機構4、カッター5および投入機構6の構成は、第4実施形態にも共通する。また、図2に示すくせ付け・切断部の構成は、第4実施形態にも共通する。
【0033】
この実施形態は、集合部に、素線本数と同数の穴111(丸穴)を有する目板112と、ホルダー113に保持した集合ダイス114(丸穴)を使用し、撚り合わせ部に、交叉して回転する一対のローラー91,92を使用した撚り合わせ機構を採用している。この撚り合わせ機構は、一対のローラー91,92がそれぞれスプロケット93,94を介して図示しないモータにより駆動されて、図7に矢印で示すようにそれぞれ一定方向に回転するよう構成されるものであり、これら一対のローラー91,92は、平面視にて交叉し、上下に重なって、その交叉する部分が、コード撚りのためのくせ付けが施され所定長さに切断された複数本のスチールワイヤW3の束を挟んで回転することにより、ローラー回転方向に摩擦力が発生し、そのコード進行方向(図7で右方向)に直角な方向の分力がスチールワイヤW3の束に対する捻り力となり、コード進行方向の分力が送り力(引取り力)となるよう配置される。
【0034】
この撚線機は、第1実施形態の場合と同様、繰出し部(繰出しリール1)から繰り出された真直なスチールコードW1が、張力調整部(テンショナー2)、くせ付け・切断部(くせ付け機構3、送り機構4、カッター5)を経て、くせ付けされ切断されたスチールワイヤW3となり、その切断されたスチールワイヤW3が投入部(投入機構6)によって所定本数(図示の例では3本)ずつ移送され、目板112の穴111を通して集合ダイス113に投入される。そして、投入された所定本数(図示の例では3本)のスチールワイヤW3が集合ダイス113の穴で集合し束となって、ローラー91,92で撚り合わされ、スチールコードCとなって送り出される。撚り合わせ機構には、ローラー91,92に代えて、上記第3実施形態と同様の交叉して回転する一対のベルトを使用することもできる。
【0035】
この実施形態の撚線機は、第1実施形態と同様、例えばタイヤ成形時にインラインで補強材としての短尺の撚り線であるスチールコードCを製造し、その場で並べてタイヤを成形するようにできる。また、製造した短尺のスチールコードCを一旦保管した後で使用することもできる。そして、やはり繰出リール1は撚り本数に関係なく1個でよく、段替えに際し、素線径等が変わるためにリールを交換する場合でも、交換するリールは1個でよく、線通しも1本分でよく、他に、くせ付けピン31と目板12を交換するだけで、簡単容易に段替えを行うことができる。また、投入機構の構成が簡単である。
【0036】
また、本発明は、他に、例えば上記第1実施形態の集合・撚り合わせ部の機構を、回転異形ダイスと、回転異形ダイスによって捻りトルクが加えられた複数本のスチールワイヤW3の束を上記第2実施形態の一対のローラー91,92あるいは上記第3実施形態の一対のベルト101,102によって撚りながら送り出すようにする実施形態も可能である。
【0037】
なお、上記各実施形態の撚線機において、くせ付け機構、投入機構等の構成は、図示の例以外に適宜変更することができる。また、これらの実施形態では、3本のスチールコードを撚り合わせて短尺のスチールコードを製造する場合について説明したが、この撚線機は、複数本の素線を撚って短尺の撚り線を製造する撚線機一般、つまりタイヤ補強用のスチールコードに限らないゴム製品用その他の撚り線製造のための撚線機一般に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の第1実施形態の撚線機の全体構成を一部断面にて示す平面図(a)およびコンベアベルトの側面図(b)である。
【図2】本発明の第1実施形態の撚線機のくせ付け・切断部の構成を一部断面にて示す正面図(a)およびくせ付けした素線の平面図(b)である。
【図3】本発明の第1実施形態の撚線機の集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。
【図4】本発明の第1実施形態の撚線機の異形ダイスの拡大断面図(a)および異形ダイスの穴の形状を示す図(b)である。
【図5】本発明の第2実施形態の撚線機の集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。
【図6】本発明の第3実施形態の撚線機の集合・撚り合わせ部の構成を一部断面にて示す平面図である。
【図7】本発明の第4実施形態の撚線機の集合・撚り合せ部の構成を一部断面にて示す平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 繰出しリール
2 テンショナー
3 くせ付け機構
4 送り機構
5 カッター
6 投入機構
7 回転異形ダイス
8 引取り機構
21 送りローラー
22 ダンサーローラー
31 くせ付けピン
32 プーリー
41 キャプスタン
42 押えローラー
43 ダミープーリー
61、62 線受け
63、64 コンベアベルト
65 線ストッパー
66 送りローラー
71 異形ダイスの穴
72 異形ダイス
73 ホルダー
74 回転体
75 プーリー
81 フィードローラー
82 押えローラー
91、92 ローラー
93、94 スプロケット
101、102 ベルト
103、104 スプロケット
111 目板の穴
112 目板
113 ホルダー
114 集合ダイス
C スチールコード
W1 真直なスチールワイヤ
W2 くせ付けされたスチールワイヤ
W3 所定長さに切断されたスチールワイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の素線を撚り合わせて短尺の撚り線を製造する撚線機であって、リールから繰り出した素線にコード撚りのためのくせ付けを施し、そのくせ付けした素線を製品長さに合わせて所定長さに切断し、切断した素線をコード構成に応じた本数集合させて撚り合わせることを特徴とする撚線機。
【請求項2】
集合部にコード構成に応じた本数の素線を集合させて素線同士相対回転できない状態で通す穴を備えた異形ダイスを使用したことを特徴とする請求項1記載の撚線機。
【請求項3】
前記異形ダイスに通して集合させた素線を該異形ダイスの回転と引取り手段による送りにより撚り合わせることを特徴とする請求項2記載の撚線機。
【請求項4】
前記異形ダイスに通して集合させた素線を、交叉して回転する一対のローラーに挟んで撚り合わせることを特徴とする請求項2記載の撚線機。
【請求項5】
前記異形ダイスに通して集合させた素線を、交叉して回転する一対のベルトに挟んで撚り合わせることを特徴とする請求項2記載の撚線機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−224455(P2007−224455A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47086(P2006−47086)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【出願人】(000110147)トクセン工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】