説明

撮像データを解析するためのシステムおよび方法

生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる、複数の画素にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する方法であって、該方法は、各画素に対し、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す特徴のベクトルを関連付け、それによって複数のベクトルを提供するステップと、前記ベクトルに応じて画素をクラスタ化し、それによって複数のクラスタを提供するステップと、前記クラスタに基づいて脈管構造における異なる区画を識別するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その一部の実施形態では、画像解析および処理に関し、さらに詳しくは、血流に関係する撮像データの解析に関するが、それに限定されない。
【背景技術】
【0002】
人間の感覚および運動、ホメオスタシス、ならびに感情、記憶、言語、および思考のような種々の高次機能のために、脳の各特定部位または領域に対する制御機能がしばしば存在する。脳内の機能のそのような局在性は、外傷もしくは脳血管障害によって生じる脳の局所的損傷、またはてんかん発作の状態に苦しむ患者の挙動の変化を観察することによって、かつ損傷した領域の機能を推定することによって、確認されてきた。
【0003】
脳の代謝および機能は神経血管ユニットに帰属する。このユニットは、軟膜および実質内脳血管と共にそれらの外因性および内因性神経支配、血管周囲の周皮細胞、星状細胞、および周囲のニューロンを含め、脳循環を備える。局所的脳血流(rCBF)は「神経血管結合」としても知られるニューロン活動および代謝要求に関係する。加えて、rCBFは自己調節され、したがって広範囲の灌流圧にわたって一定に維持される。血管異常(例えば、脳卒中)および一次神経機能障害(例えば、てんかん性発作および皮質拡延性抑制)に関連する病理学的脳状態では、rCBFの調節がしばしば損なわれる。例えば、くも膜下出血および外傷性脳障害の下では、神経血管結合が破られ、虚血性神経損傷の増悪を導くことがある。
【0004】
近年まで、集中治療室(ICU)患者の脳血管状態の評価は、頭蓋内圧測定を用いた脳灌流圧の決定に限定されてきた。脳血管評価のための新技術として、新世代の頭蓋内プローブが利用可能になったため、ICUで使用されるようになってきた熱拡散流量計測法がある。該プローブは局所的脳血流(rCBF)データを絶対単位(例えば、ml/100g/分)で提供する。幾つかの種類のそのようなプローブが、例えば、米国特許第4354504号、第4677985号、および第5207227号の明細書に記載されている。
【0005】
別の技術として、機器が頭蓋内の大コンダクタンス血管の血流の速度を測定する連続モニタリングプローブを装備した経頭蓋ドップラ速度計測法がある。この技術は、例えば、米国特許第5379770号、第6390979号、および第6468219号の明細書に記載されている。
【0006】
CBFを測定するために使用される別の技術として、レーザによって発生するコヒーレント放射線によって受けるドップラ偏移を利用して微小循環内の赤血球の動きを測定する、レーザドップラ流量計測法がある。典型的には、光ファイバプローブ構造を組織と接触して配置し、入射光をレーザ源から組織まで誘導させるだけでなく、組織からの光を流量計器内の光検出器まで後方散乱もさせる。流量計器は光検出器の信号を処理して、実際の血流に線形的に比例する時間に対する連続電圧信号を生成する。レーザドップラをベースとする技術は、例えば、米国特許第5579774号および第5916171号の明細書に記載されている。
【0007】
また、画像処理によって焦点領域の診断を可能にする、コンピュータ断層撮影法(CT)、陽電子放出断層撮影法(PET)、および磁気共鳴撮像法(MRI)のような、種々の脳組織撮像技術も公知である。
【0008】
血液化学の変動から脳を保護する機構は、「血液脳関門」(BBB)として知られる。BBBは、中枢神経系の神経細胞のために正常な環境を維持するための複雑な構造的かつ機能的関門である。脳内皮細胞は、身体の他の組織に見られるものとは異なる。特に、脳内皮細胞はそれら自体の間に複雑な密着結合を形成する。BBBの機能は、関門の他の構成要素と共に、血液から脳への多くの分子の受動的移動に抗する連続的「壁」を形成する、これらの密接な細胞間結合に依存する。中枢神経系(CNS)内の内皮細胞もまた、他の組織では毛細血管壁を越える多少無差別の輸送を可能にする飲小胞をほとんど示さない。加えて、細胞を貫通して走り、無制限の通過を可能にする、連続的間隙または流路が存在しない。それでもなお、栄養物および老廃物の交換は存在しているので、血流からの脳のこの分離は完全ではない。毛細血管内皮細胞内の特異な輸送系の存在は、脳が正常な成長および機能に必要な化合物の全てを制御された形で受け取ることを確実にする。
【0009】
BBBの独特な生物学的側面は、CNS障害の治療の文脈でしばしば取り上げられる。BBBは、薬物の脳への進入を妨げることによって、あるいはいったん通過した後、薬物輸送タンパク質により、脳から循環への逆輸送が促進されることによって、薬物の脳への送達に対する主要な障害として働き、一部の症例(例えば、てんかん)ではおそらく薬物耐性に寄与する。加えて、脳腫瘍、虚血性事象、腫瘍、多発性硬化症、および神経変性障害(例えば、アルツハイマ病)を含む、ほとんど全てのCNS障害で、BBB破壊が報告されている。
【0010】
近年、BBB破壊は神経血管ユニットの機能不全を直接導き、ひいてはニューロン活動の持続性変化とそれに続くニューロン欠損を導くことがあることが認識されている。
【0011】
多年にわたり、BBB分野において広範囲の研究が行われてきた。BBBを横断することができる薬物(例えば、米国特許第4801575号、第5004697号、第6419949号および第6294520号を参照のこと)、BBB透過性を増大させる薬物(例えば、米国特許第5434137号、第5506206号および第5591715号を参照のこと)、およびBBBを横断して物質を送給するための技術(例えば、米国特許第5670477号、第5752515号および第6703381号を参照のこと)、ならびに損傷を被ったBBBを治療するための技術(例えば、米国特許第4439451号を参照のこと)およびBBBを分析するための技術(例えば、米国特許第6574501号を参照のこと)などの様々な技術を開発すべく様々な努力が重ねられてきた。物質がBBBを横断する能力を試験するための技術を開発するためにも、多くの試みが行なわれてきた。この目的のために、例えば、米国特許第5266480号を参照のこと。
【発明の概要】
【0012】
本発明の一部の実施形態の態様では、生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる、複数の画素にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する方法を提供する。該方法は、各画素に対し、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す特徴のベクトルを関連付け、それによって複数のベクトルを提供するステップを含む。該方法はさらに、ベクトルに応じて画素をクラスタ化し、それによって複数のクラスタを提供するステップと、クラスタに基づいて脈管構造における異なる区画を識別するステップとを含む。
【0013】
本発明の一部の実施形態の態様では、脈管構造に検出可能なトレーサを有する、生きている被験者の器官を撮像する方法を提供する。該方法は、器官を撮像して撮像データのストリームを提供するステップと、本書に記載する解析方法によって撮像データのストリームを解析するステップとを含む。
【0014】
本発明の一部の実施形態では、撮像は蛍光撮像を含む。
【0015】
本発明の一部の実施形態では、撮像はコンピュータ断層撮影を含む。
【0016】
本発明の一部の実施形態では、撮像は磁気共鳴撮像を含む。
【0017】
本発明の一部の実施形態では、該方法は、クラスタに基づいて少なくとも1つの血管外区画を識別するステップをさらに含む。
【0018】
本発明の一部の実施形態では、該方法は、グリッド上に特徴の少なくとも1つのマップを生成するステップをさらに含む。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、撮像データは被験者の網膜に関係する。
【0020】
本発明の一部の実施形態では、該方法は、クラスタに基づいて網膜の機能性を評価するステップをさらに含む。
【0021】
本発明の一部の実施形態では、撮像データは被験者の脳に関係する。
【0022】
本発明の一部の実施形態では、該方法は、クラスタに基づいて脳の機能性を評価するステップをさらに含む。
【0023】
本発明の一部の実施形態の態様では、生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる、複数の画素にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する装置を提供する。該装置は、各画素に対し、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す特徴のベクトルを関連付け、それによって複数のベクトルを提供するためのベクトル関連付けユニットを備える。該装置は、ベクトルに従って画素をクラスタ化し、それによって複数のクラスタを提供するためのクラスタ化ユニットと、クラスタに基づいて脈管構造の様々な区画を識別するための識別ユニットとをさらに備える。
【0024】
本発明の一部の実施形態の態様では、撮像デバイスを備えた撮像装置、および本書に記載するベクトル関連付けユニットと、クラスタ化ユニットと、識別ユニットとを備えた解析装置を提供する。
【0025】
本発明の一部の実施形態では、識別ユニットは、クラスタに基づいて少なくとも1つの血管外区画を識別するように構成される。
【0026】
本発明の一部の実施形態では、該装置は、グリッド上に特徴の少なくとも1つのマップを生成するためのマッピングユニットをさらに備える。
【0027】
本発明の一部の実施形態では、該装置は、クラスタに基づいて網膜および/または脳の機能性を評価するための評価器をさらに備える。
【0028】
本発明の一部の実施形態では、網膜の機能性は血液網膜関門透過性を含む。本発明の一部の実施形態では、網膜の機能性は網膜動脈閉塞を含む。
【0029】
本発明の一部の実施形態では、脳の機能性は局所脳血流を含む。本発明の一部の実施形態では、脳の機能性は血管拡張を含む。本発明の一部の実施形態では、脳の機能性は血管脳関門透過性を含む。
【0030】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、基準時間から強度が関数遷移を示す時間までの測定された期間を含む。
【0031】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造内に導入された時間から画素の強度がベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間を含む。
【0032】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、画素の強度がベースライン強度に対して増強されている期間を含む。
【0033】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造に導入された時間から画素の強度が極大に達した時間までの定義された期間を含む。
【0034】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造に導入された時間から画素の強度がベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間と、画素の強度がベースライン強度に対して増強されている期間と、トレーサが脈管構造に導入された時間から画素の強度が極大に達した時間までの定義された期間とから成る群から選択された少なくとも2つの期間の組合せを含む。
【0035】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、画素の強度がベースライン強度に対して増強されている期間の最大強度値を含む。
【0036】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、画素の強度の変化率を特徴付ける少なくとも1つの傾きを含む。
【0037】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造内に導入された時間から画素の強度がベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間を含み、該時間間隔および隣接画素のそれぞれの時間間隔に基づいて、画素は細動脈または細静脈と分類される。
【0038】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および/または科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載される方法および材料と類似または同等である方法および材料を本発明の実施形態の実施または試験において使用することができるが、例示的な方法および/または材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0039】
本発明の実施形態の方法および/またはシステムを実行することは、選択されたタスクを、手動操作で、自動的にまたはそれらを組み合わせて実行または完了することを含んでいる。さらに、本発明の装置、方法および/またはシステムの実施形態の実際の機器や装置によって、いくつもの選択されたステップを、ハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア、あるいはオペレーティングシステムを用いるそれらの組合せによって実行できる。
【0040】
例えば、本発明の実施形態による選択されたタスクを実行するためのハードウェアは、チップまたは回路として実施されることができる。ソフトウェアとして、本発明の実施形態により選択されたタスクは、コンピュータが適切なオペレーティングシステムを使って実行する複数のソフトウェアの命令のようなソフトウェアとして実施されることができる。本発明の例示的な実施形態において、本明細書に記載される方法および/またはシステムの例示的な実施形態による1つ以上のタスクは、データプロセッサー、例えば複数の命令を実行する計算プラットフォームで実行される。任意選択的に、データプロセッサーは、命令および/またはデータを格納するための揮発性メモリ、および/または、命令および/またはデータを格納するための不揮発性記憶装置(例えば、磁気ハードディスク、および/または取り外し可能な記録媒体)を含む。任意選択的に、ネットワーク接続もさらに提供される。ディスプレーおよび/またはユーザ入力装置(例えば、キーボードまたはマウス)も、任意選択的にさらに提供される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本明細書では本発明のいくつかの実施形態を単に例示し添付の図面を参照して説明する。特に詳細に図面を参照して、示されている詳細が例示として本発明の実施形態を例示考察することだけを目的としていることを強調するものである。この点について、図面について行う説明によって、本発明の実施形態を実施する方法は当業者には明らかになるであろう。
【0042】
【図1】図1は、本発明の種々の例示的実施形態に従って撮像データのストリームを解析するのに適した方法を記載する流れ図である。
【0043】
【図2】図2は、本発明の種々の例示的実施形態に係る、画素のグリッドおよび特徴のベクトルの略図である。
【0044】
【図3】図3は、例示的強度時間曲線の略図である。
【0045】
【図4】図4は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、脈管構造に検出可能なトレーサを有する、生きている被験者の器官を撮像するのに適した方法を記載する流れ図である。
【0046】
【図5】図5は、本発明の種々の例示的実施形態に係る、撮像データのストリームを解析するための装置の略図である。
【0047】
【図6A−6F】図6A−6Fは、軟膜血管の血流を視覚化するために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【図6G−6I】図6G−6Iは、軟膜血管の血流を視覚化するために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【0048】
【図7A−7C】図7A−7Cは、rCBFの増加を撮像するために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【図7D−7H】図7D−7Hは、rCBFの増加を撮像するために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【0049】
【図8A−8E】図8A−8Eは、BBB透過性を解析するために撮像するように本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【図8F−8H】図8F−8Hは、BBB透過性を解析するために撮像するように本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【0050】
【図9A−9B】図9A−9Bは、局所虚血における血流の撮像のために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【図9C−9F】図9C−9Fは、局所虚血における血流の撮像のために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【図9G−9I】図9G−9Iは、局所虚血における血流の撮像のために本発明の一部の実施形態に従って実行された実験の結果を示す。
【0051】
【図10】図10は、本発明の好適な実施形態に従って実行された実験中に捕獲された網膜の蛍光画像である。
【0052】
【図11A−11B】図11A−11Bは、網膜の異なる脈管構造区画を識別するために本発明の一部の実施形態に従って実行されたクラスタ解析の結果を示す。
【0053】
【図12A−12C】図12A−12Bは、脳神経外科手術中に捕獲されたヒトの脳画像である。図12Cは、ヒトの脳の異なる脈管構造区画を識別するために本発明の一部の実施形態に従って実行されたクラスタ解析の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0054】
本発明は、その一部の実施形態では、画像解析および処理に関し、さらに詳しくは、小血管(例えば、細動脈および細静脈)のような、しかしそれに限らない血管の血流に関係する撮像データの解析に関するが、それに限定されない。本発明の一部の実施形態は、撮像に関し、さらに詳しくは血流の撮像に関するが、それに限定されない。
【0055】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳しく説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示されるか、および/または図面および/または実施例において例示される構成要素および/または方法の組み立ておよび構成の細部に必ずしも限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、または様々な方法で実施または実行されることが可能である。
【0056】
本発明の一部の実施形態は、本発明の種々の例示的実施形態に従って、撮像データのストリームを解析するのに適した方法を提供する。
【0057】
該方法は多くの形で具現することができる。例えば、それは、方法ステップを実行するためのコンピュータのような有形媒体で具現することができる。それは、該方法の操作を実行するためのコンピュータ可読命令を含む、コンピュータ可読媒体で具現することができる。それはまた、コンピュータプログラムを有形媒体上で実行するか、または命令をコンピュータ可読媒体上で実行するように構成された、デジタルコンピュータ能力を有する電子装置で具現することもできる。
【0058】
該方法を実現するコンピュータプログラムは、一般的に、フロッピディスク、CD−ROM、および不揮発性記憶装置のような、しかしそれらに限らない配布媒体でユーザに配布することができる。配布媒体からコンピュータプログラムをハードディスクまたは同様の中間格納媒体にコピーすることができる。コンピュータプログラムは、コンピュータ命令をそれらの配布媒体またはそれらの中間格納媒体のいずれかからコンピュータの実行メモリ内にロードし、コンピュータを本発明の方法に従って作動するように構成することによって、実行することができる。これらの操作は全て、コンピュータシステム分野の当業者には周知である。
【0059】
本発明の実施形態の方法は、複数の画素(例えば、ピクセル、ピクセル群等)にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する。
【0060】
本明細書においては、「ピクセル」という用語が、画素を示すべく略記される場合がある。しかしながら、これは「画素」という用語の意味を限定することを意図したものではなく、「画素」は、画像の構成単位をいう。
【0061】
撮像データのストリームは、以下でさらに詳述するように空間依存解析のみならず時間依存解析をも可能にすべく、充分な情報を提供するように選択されたレートで捕獲された一連の画像または一連の画像群の形を取ることができる。例えば、画像はビデオカメラで取得することができる。画像の画素は強度値に関連付けられる。
【0062】
理想的には、該方法への入力は各シーン点の光の量である。この理想的な入力が現実的なシステムで達成できることは滅多にない。したがって、本発明の実施形態の範囲は、シーンの標本化バージョンの処理を含む。特に、本発明の実施形態の方法への入力は、グリッド全体にわたって各画素の離散強度値に分解可能なデジタル信号である。このようにして、グリッドはシーンを標本化し、離散強度値は光の量を標本化する。ストリームの画像の更新率は、時間領域の追加標本化をもたらす。
【0063】
本書における「画像」の言及は、とりわけアレイとして集合的に処理される画素の値を指す。したがって、本書で使用する用語「画像」は、必ずしも物理的オブジェクトに対応しない数学的オブジェクトをも包含する。原画像および処理された画像は当然、撮像データをそこから取得したシーンである物理的オブジェクトに対応する。
【0064】
シーンは、脈管構造を有する、生きている被験者の器官であることが好ましい。例えば、シーンは被験者の脳または網膜とすることができる。
【0065】
画素の強度値は、被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する。例えば、画像は、蛍光撮像、コンピュータ断層撮影(CT)、および磁気共鳴撮像(MRI)によって取得することができる。
【0066】
画像を蛍光撮像によって取得する場合、検出可能なトレーサは、撮像前または撮像中に被験者の脈管構造内に導入することのできる蛍光染料である。
【0067】
本発明の実施形態に適する蛍光染料として、以下のものが挙げられるが、それらに限定されない。インドシアニングリーン、3−ヒドロキシピレン5,8,10−トリスルホン酸、5−ヒドロキシトリプタミン、5−ヒドロキシトリプタミン(5−HT)、酸性フクシン、アクリジンオレンジ、アクリジンレッド、アクリジンイエロ、アクリフラビン、AFA(アクリフラビンフォイルゲンSITSA)、アリザリンコンプレクソン、アリザリンレッド、アロフィコシアニン、ACMA、4−ジシアノ−メチレン−2−メチル−6−(p−ジメチルアミノスチリル)4H−ピラン、ランタニドイオン、例えば、テルビウム、サマリウム、およびユウロピウムのイオンの蛍光キレート、アミノアクチノマイシンD、アミノクマリン、アントロイルステアレート、アリール−またはヘテロアリール−置換ポリオレフィン、アストラゾンブリリアントレッド4G、アストラゾンオレンジR、アストラゾンレッド6B、アストラゾンイエロ7GLL、アタブリン、オーラミン、オーロホスフィン、オーロホスフィンG、BAO9(ビスアミノフェニルオキサジアゾール)、BCECF、硫酸ベルベリン、ビスベンズアミド、BOBO1、ブランコホルFFG溶液、ブランコホルSV、ボディパイF1、BOPRO1、ブリリアントスルホフラビンFF、カルセインブルー、カルシウムグリーン、カルコフロールRW溶液、カルコフロールホワイト、カルコホルホワイトABT溶液、カルコホルホワイト標準溶液、カルボシアニン、カルボスチリル、カスケードブルー、カスケードイエロ、カテコラミン、チナクリン、コリホスフィンO、クマリン、クマリン−ファロイジン、CY3.18、CY5.18、CY7、ダンス(1−ジメチルアミノナファリン5スルホン酸)、ダンサ(ジアミノナフチルスルホン酸)、ダンシルNHCH3、DAPI、ジアミノフェニルオキシルジアゾール(DAO)、ジメチルアミノ−5−スルホン酸、ジピロメテンボロンジフルオリド、ジフェニルブリリアントフラビン7GFF、ドーパミン、エオシン、エリトロシンITC、エチジウムブロミド、ユウクリシン、FIF(ホルムアルデヒド誘導蛍光)、フラゾオレンジ、フルオ3、フルオレスカミン、フラ−2、ゲナクリルブリリアントレッドB、ゲナクリルブリリアントイエロ10GF、ゲナクリルピンク3G、ゲナクリルイエロ5GF、グロキサリン酸、グラニュラブルー、ヘマトポルフィリン、ホーヒスト33258、インド−1、イントラホワイトCf液、ロイコホルPAF、ロイコホルSF、ロイコホルWS、リサミンローダミンB200(RD200)、ルシファイエロCH、ルシファイエロVS、マグダラレッド、マリナブルー、マキシロンブリリアントフラビン10GFF、マキシロンブリリアントフラビン8GFF、MPS(メチルグリーン−ピロニンスチルベン)、ミトラマイシン、NBDアミン、ナイルレッド、ニトロベンズオキサジドール、ノルアドレナリン、ヌクレアファストレッド、ヌクレアイエロ、ナイロサンブリリアントフラビンE8G、オレゴングリーン、オキサジン、オキサゾール、オキサジアゾール、パシフィックブルー、パラロサニリン(フォイルゲン)、ホルワイトAR溶液、ホルワイトBKL、ホルワイトRev、ホルワイトRPA、ホスフィン3R、フタロシアニン、フィコエリトリンR、ポリアザインダセンポントクロームブルーブラック、ポリフィリン、プリムリン、プロシオンイエロ、ヨウ化プロピジウム、ピロニン、ピロニンB、ピロザールブリリアントフラビン7GF、キナクリンマスタード、ローダミン123、ローダミン5GLD、ローダミン6G、ローダミンB、ローダミンB200、ローダミンBエクストラ、ローダミンBB、ローダミンBG、ローダミンWT、ローズベンガル、セロトニン、セブロンブリリアントレッド2B、セブロンブリリアントレッド4G、セブロンブリリアントレッドB、セブロンオレンジ、セブロンイエロL、SITS(プリムリン)、SITS(スチルベンイソチオスルホン酸)、スチルベン、スナーフ1、スルホローダミンBカンC、スルホローダミンGエクストラ、テトラサイクリン、テキサスレッド、チアジンレッドR、チオフラビンS、チオフラビンTCN、チオフラビン5、チオライト、チオゾールオレンジ、チノポールCBS、TOTO1、TOTO3、トゥルーブルー、ウルトラライト、ウラニンB、ユビテックスSFC、キシレンオレンジ、XRITC、YO PRO1、またはそれらの組合せ。
【0068】
当業者は、発光および吸収スペクトル、疎水性または親水性、血液タンパク質との結合性等のような適切な性質を有する限り、そのような染料の中でどれを選択するかを当然承知しているであろう。
【0069】
本発明の一部の実施形態では、蛍光染料はルシファイエロCHであり、本発明の一部の実施形態では、蛍光染料はインドシアニングリーンである。
【0070】
画像をMRIによって取得する場合、検出可能なトレーサはMRI造影剤であり、それは陽性または陰性どちらのMRI造影剤でもよい。
【0071】
本書で使用する場合、「陽性MRI造影剤」とは、近傍組織の流体に対し医薬組成物のシグナルを増大させる作用剤を指し、「陰性MRI造影剤」とは、近傍組織の流体に対し医薬組成物のシグナルを低減させる作用剤を指す。
【0072】
画像をCTによって取得する場合、検出可能なトレーサは、撮像前または撮像中に被験者の脈管構造内に導入することのできる、血管内X線造影剤のようなCT造影剤である。血管内X線造影剤は一般的に、脈管性空隙または細胞外(間質)空間を不透明化するものであり、当業界で公知である。本発明の実施形態に適したCT造影剤の代表例として、イオン性および非イオン性ヨウ化造影剤(例えば、メトリゾ酸塩、ジアトリゾ酸塩、イオベルソール(登録商標)、ヨウタラム酸ナトリウム、およびイオパミドール)が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、米国特許第4124705号、第5075502号、第5141739号、第5377681号、および第6647283号の明細書に記載されているような他の造影剤も考えられ、これらの明細書の内容を参照によって本書に援用する。
【0073】
好ましくは、本発明の実施形態の方法は、実質的に実時間で撮像データの解析を実行する。加えて、本発明の実施形態の方法は、(必須ではないが、典型的には、処理された撮像データのストリームの形で)実質的に実時間で解析レポートを提供する。
【0074】
本書で使用する場合、「実時間」とは、ヒト観察者の観点から知覚される実時間を指す。本発明の種々の例示的実施形態では、ストリームの各画像の解析は、例えば、コンピュータスクリーンのようなディスプレイ装置を用いてストリームがヒト観察者に対して表示されるときに、解析レポートまたは結果をそれと同時に表示することができ、かつヒトには連続しているように見えるように、充分に高い速度で実行される。例えば、約256×256画素の画像の解析は、毎秒少なくとも10画像、または毎秒少なくとも15画像、または少なくとも毎秒30画像のレートとすることができる。毎秒約30更新の更新率は、標準ビデオフレームレートと一致する。したがって、本発明の種々の例示的実施形態では、該方法は撮像データのストリームをビデオフレームレートで解析する。
【0075】
ここで図面を参照すると、図1は、本発明の種々の例示的実施形態に係る方法を記載する流れ図である。
【0076】
特に異なる旨を明記しない限り、本書で以下に記載する操作は、同時に、または多くの組合せで、もしくは実行順に逐次的に、実行することができることを理解されたい。特に、流れ図の順序は限定とみなすべきではない。例えば、以下の記載または流れ図に特定の順序で現われる2つ以上の方法操作は、異なる順序で(例えば、逆の順序で)または実質的に同時に実行することができる。加えて、下述する幾つかの操作は任意であり、実行しなくてもよい。
【0077】
該方法は10で始まり、11に続き、そこで特徴のベクトルが各画素に関連付けられる。種々の種類の特徴が考えられる。一般的に、特徴は強度時間曲線、すなわち画素に関連付けられる強度の時間依存性を表わす。ベクトルにおける特徴の好適な数は、強度の時間依存性を表わす、少なくとも3、または少なくとも4、または少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10の特徴である。
【0078】
画素のグリッド20の代表例を図2に示す。グリッド20の画素は、特徴f,f,...,fのベクトル22に関連付けられる。提示を明確にするために、1つの画素24だけが特徴のベクトルに関連付けられる状態で示されている。当業者は、画素24が代表的画素であり、多くの画素、好ましくはグリッド20の全ての画素にベクトルを関連付けることができることを理解されるであろう。
【0079】
グリッド20を特徴付ける分解能および入力画像の空間分解能は同一とすることができ、あるいはそれらは異なることができる。分解能が異なる場合、当該方法は、撮像データをグリッド20の分解能に適応させる事前解析手順を含むことが好ましい。これは、当業界で公知の補間技術によって行なうことができる。例えば、本発明の一部の実施形態では、2D双三次補間技術が使用される。この技術は、Keys,R.G.、1981、「Cubic convolution interpolation for digital image」、IEEE transactions on acoustics, speech, and signal processing 29に記載されている。
【0080】
本発明の一部の実施形態では、特徴の少なくとも少数が、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す。例えば、特徴は、ベースライン強度に対する最大値、曲線上の遷移点の値(遷移点毎に1つの値)等のような、曲線に沿った強度の値を含むことができる。一般的に、遷移点は関数遷移が発生する曲線点上に識別される。
【0081】
本書で使用する場合、「関数遷移」とは、所与の関数の遷移(例えば、傾きの変化、増加から減少への遷移またはその逆、フラットな挙動から増加または減少挙動への遷移)、および1つの特性関数挙動から別の挙動への遷移(例えば、線形挙動から非線形挙動への遷移、または第1非線形挙動から第2の異なる非線形挙動への遷移)を含むが、それらに限らず、関数の検出可能な数学的遷移を指す。
【0082】
関数遷移は、例えば、時間依存性の導関数を計算し、それらの零を求めることによって識別することができる。当業者に理解されるように、関数の遷移は、その導関数の1つの零によって特徴付けることができる。例えば、増加から減少への遷移またはその逆は、一次導関数の零によって特徴付けられ、凹部領域から凸部領域への遷移またはその逆(変曲点)は二次導関数等の零によって特徴付けられる。本発明の好適な実施形態では、時間依存性の任意の導関数を使用することができる。一般的に、関数遷移は好ましくはn次導関数の符号反転によって特徴付けられ、ここでnは正の整数である。
【0083】
加えてまたは代替的に、関数遷移は、平滑性からの逸脱を観察することによって識別することができる。この実施形態では、関数遷移は、時間依存性の導関数を計算するか否かに関係なく、識別することができる。例えば、平滑性からの逸脱は、時間依存性を既知の平滑関数と比較することによって識別することができる。
【0084】
考えられる別の種類の特徴は、時間間隔の計算に関係する。例えば、特徴は、遷移点に対応する時間間隔とすることができる。そのような時間間隔は、特定の遷移点に対応する時間から予め定められた基準時間を減算することによって算出することができる。予め定められた基準時間は、例えば、検出可能なトレーサが被験者の脈管構造内に導入された時間とすることができる。この実施形態では、当該方法は、基準時間を入力として受け取ることが好ましい。また、2つの遷移点の間の時間間隔を表わす特徴も考えられる。したがって、本発明の一部の実施形態では、特徴は、横座標に沿った少なくとも1つの間隔を含む。
【0085】
考えられる追加的種類の特徴として、時間依存性の時間導関数がある。したがって、時間依存性の導関数は、特徴を抽出するために間接的および直接的の両方で使用することができる。間接的には、導関数は、種々の特徴を得るかまたは算出することのできる遷移点を識別するために使用される。直接的には、導関数自体が特徴として使用される。本発明の種々の例示的実施形態では、導関数は両方で使用される。第一に、遷移点が識別され、第二に、識別された遷移点の導関数の値が特徴の1つとして格納される。時間導関数は一次またはより高次とすることができる。一次の時間導関数を本書では以下、簡略して傾きと呼ぶ。
【0086】
時間導関数は、強度曲線が単調である区間の平均時間導関数であることが好ましい。
【0087】
特徴はまた、2つの強度値の間の1つ以上の比率を含むこともできる。例えば、特徴は、1つの遷移点における強度値を別の遷移点における強度値で除算することによって抽出することができる。加えてまたは代替的に、特徴はまた、2つの強度値の間の1つ以上の差を含むこともできる。この実施形態では、特徴は、1つの遷移点における強度値を別の遷移点における強度値から減算することによって抽出することができる。したがって、本発明の一部の実施形態では、特徴は、強度曲線の縦座標に沿った少なくとも1つの間隔を含む。
【0088】
遷移点は、強度曲線から自動的に抽出することが好ましい。これは、当業界で公知の任意の手順を用いて行なうことができる。例えば、本発明の一部の実施形態では、複数の区間に区分化されることが好ましい解析関数に強度曲線を当てはめる。区間が時間に対する線形依存性を有するだけで充分であることが、本発明の発明者らによって明らかになった。しかし、本発明の範囲をいずれかの種類の関数またはいずれかの数の区画に制限することは意図していない。
【0089】
図3は例示的強度時間曲線26の略図である。図3に示されているのは曲線26上の種々の遷移点である。これらは基準時間点(R)、フラットな挙動から増加挙動への遷移点(A)、最大強度の点(B)、曲線が単調に減少していく区分に沿った変曲点(C)、および減少挙動からフラットな挙動への遷移点(D)を含む。これらの点の時間軸(横座標)上の投影をそれぞれt、t、t、t、およびtと指定し、これらの点の強度軸(縦座標)上の投影をそれぞれI、I、I、I、およびIと指定する。本実施例では、IおよびIはほぼ同一であることに注目されたい。基準点Rの強度は、ベースライン強度として使用することができる。これらの点のうちの少なくとも少数は、特徴のベクトルを定義するために使用することができる。例えば、特徴はtRA=t−t、tRB=t−t、tRD=t−t、tAD=t−t等のような間隔、I、IRB=I−I等のような強度値または強度値間の差、およびSBR=(I−I)/(t−t)、SBC=(I−I)/(t−t)、SDC=(I−I)/(t−t)、SDB=(I−I)/(t−t)等のような平均傾きを含むことができる。
【0090】
特徴はまた、上記特徴の2つ以上の組合せ(例えば、差、比率)を含むこともできる。
【0091】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造内に導入された時間からそれぞれの画素の強度がベースライン強度より上に上昇した時間までと定義される時間間隔を含む。この特徴は、上述した時間間隔tRAに少なくともおおまかに一致する。
【0092】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、トレーサが脈管構造内に導入された時間からそれぞれの画素の強度が極大に達した時間までと定義される時間間隔を含む。この特徴は、上述した時間間隔tABに少なくともおおまかに一致する。
【0093】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、それぞれの画素の強度がベースライン強度に対して増強される時間間隔を含む。この特徴は、上述した時間間隔tADに少なくともおおまかに一致する。
【0094】
本発明の一部の実施形態では、特徴は、それぞれの画素の強度がベースライン強度に対して増強される時間間隔の最大強度値を含む。この特徴は、上述した強度値Iに少なくともおおまかに一致する。
【0095】
このようにして、11で、当該方法は多次元特徴空間に複数のベクトルを提供する。任意選択的に、当該方法は12に進み、そこで当該方法はグリッド上に1つ以上の特徴のマップを生成する。マップはディスプレイ装置を用いてユーザに表示することができる。そのようなマップの代表例を、後述する実施例の項で提供する(例えば、図6D〜F、8F、8G、9E、および9Fを参照されたい)。
【0096】
当該方法は13に進み、そこで画素はベクトルに従ってクラスタ化され、複数のクラスタを提供する。多次元データを処理するように適応された任意のクラスタ化手順を使用することができる。本発明の実施形態では、階層的クラスタ化手順のみならず、部分クラスタ化手順も考えられる。
【0097】
本発明の一部の実施形態では、K平均法として知られる部分的手順を使用する。K平均法手順は、クラスタ内の全てのデータ点からそれらの最も近いクラスタ中心までの距離の二乗の和のような予め定められた判断基準を最小化するように、連続的な繰返しシーケンスを使用する。K平均法手順は、クラスタの数を先験的に決定することができ、それによって手順の複雑度が軽減されるので、有利である。本発明の一部の実施形態では、K平均法手順は全部で2つのクラスタに対して実行される。これらの実施形態は、例えば、血管組織に対応する画素と血管外組織に対応する画素との間の差別化に適する。本発明の一部の実施形態では、K平均法手順は、全部で3つのクラスタに対して実行される。これらの実施形態は、例えば、動脈血管組織(特に細動脈であるが、それに限らない)に対応する画素と、静脈血管組織(特に細静脈であるが、それに限らない)に対応する画素と、血管外組織に対応する画素との間の差別化に適する。
【0098】
本発明の一部の実施形態では、グラフ理論に基づくクラスタ化手順が使用される。これらの実施形態では、各データ入力はグラフ上の頂点として表わされ、データ入力間の類似性測度は頂点間の重み付きエッジとして表わされる。クラスタは、エッジの繰返し削除によって、かつグラフの最小全域木を構成することによって形成される。
【0099】
本発明の一部の実施形態では、密度推定手順が使用される。これらの実施形態では、データのクラスタは、低密度領域によって分離された高密度領域として表示される。本発明の実施形態に適する密度推定手順の例として、1組のガウス核を確率分布関数として使用するいわゆる「スケール空間クラスタ化」手順がある。
【0100】
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する多次元データをクラスタ化する技術が開発されることが予想され、クラスタ化手順の用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
【0101】
ひとたびクラスタが得られると、当該方法は14に進み、そこで脈管構造における異なる区画がクラスタに基づいて識別される。識別は各クラスタの特質的特徴による。クラスタの特質的特徴は、血管組織に対応する画素および血管外組織に対応する画素を識別するために使用することができることが、本発明の発明者らによって明らかになった。大まかに言うと、強度の変化は典型的には、血管外組織に対応する画素の方が血管組織に対応する画素より穏やかである。
【0102】
本発明の実施形態では、細動脈および細静脈のような異なる種類の血管の識別も考えられる。これは、例えば、特徴tRA、すなわちトレーサが脈管構造内に導入された時間から強度がベースライン強度より上に上昇した時間までの期間を用いて行なうことができる。本発明の一部の実施形態では、画素は、tRAの値に基づいて細動脈または細静脈に分類される。典型的には、tRAの値は、細動脈に対応する画素の方が細静脈に対応する画素より低い。
【0103】
RAによる分類は、画像全体に、または画像の領域別に行なうことができる。分類が画像全体に行なわれる場合、画素の脈管構造区画への関連付けは、画像内の画素の位置に関係なく実行される。
【0104】
分類が領域に関して行なわれる場合、画素の脈管構造区画への関連付けは、それぞれの画素のtRA値に基づき、かつ近隣画素、すなわちそれぞれの画素から半径R内の画素のtRA値に基づく。典型値またはRは1画素ないし50画素であるが、50より大きい値も本発明の範囲から除外されない。領域に関する分類の例として、画面上の半径Rの領域で、tRAの値は一部の画素では低く、他の画素では高いと仮定する。この場合、当該方法は、前者の画素が細動脈に対応し、後者の画素が細静脈に対応すると決定することができる。
【0105】
本発明の種々の例示的実施形態では、当該方法は15に続き、そこで被験者の脳の機能性がクラスタに基づいて評価される。例えば、当該方法は血管の直径、血流(例えば、平均過渡時間およびrCBF)を推定もしくは測定し、直径の変化(例えば、血管拡張または収縮)を識別し、かつ/または血管の透過性を識別することができる。
【0106】
rCBFは、例えば、時間間隔tRA、強度I、IBR、および傾きSABのうちの1つ以上に相関させることができる。tRAの減少ならびにIおよびSABの増加が存在する領域では、rCBFが増加することが本発明の発明者らによって明らかになった。
【0107】
血管拡張は、例えば、tRA、tAD、I、IBR、およびSABのうちの1つ以上に相関させることができる。SABおよびIが増大し、かつtADが細動脈および細静脈に対応する画素で減少するときに、当該方法は血管拡張を識別することができることが、本発明の発明者らによって明らかになった。これらの変化はいずれも、適切な二値化手順を用いて当該方法によって検証することができる。本発明の種々の例示的実施形態で、SABが約20%増大し、Iが約2%増大し、かつtADが約10%減少するときに、当該方法は血管拡張を識別する。
【0108】
BBB透過性は、例えば、tRA、tAD、I、IBR、SAB、SBC、およびSBDのうちの1つ以上に相関させることができる。次の判断基準が満たされるときに、すなわち(i)細静脈に対応する画素で、SABが減少し、Iが減少し、かつtADが増大するとき、および(ii)血管外区画に対応する画素で、SABが減少し、Iが増大し、SBDが減少し、かつtADが増大するときに、BBB透過性を識別できることが本発明の発明者らによって明らかになった。これらの判断基準は適切な二値化手順を随伴することができる。本発明の種々の例示的実施形態では、(i)細静脈に対応する画素で、SABが約20%減少し、Iが約2%減少し、かつtADが約10%増大するとき、および(ii)血管外区画に対応する画素で、SABが約30%減少し、Iが約4%増大し、SBDが約98%減少し、かつtADが約175%増大するとき、当該方法はBBB透過性を識別することができる。
【0109】
前述の通り、本発明の実施形態は、網膜血管の血流に関係する撮像データを解析するのにも適している。目の網膜では、血管はBBBと共通の特性を示す血液網膜関門(BRB)によって包囲される。
【0110】
このようにして、本発明の種々の例示的実施形態において、15で当該方法はクラスタに基づき、被験者の網膜の機能性を評価する。例えば、当該方法はBRB透過性の増大、網膜動脈閉塞症、網膜静脈血栓症等を識別することができる。BRBはBBBのプロキシとして役立てることができるので、本発明の実施形態の技術を網膜像に使用することは有利である。特に、BRBに影響を及ぼす多くの病態、例えば、真性糖尿病および虚血性または炎症性疾患の小血管疾患は、同時にBBBにも発生する。したがって、網膜像を解析し、かつBRB透過性を評価することによって、本発明の実施形態はBBB透過性を示すことができる。加えて、一方の目に特徴的な血流の識別および定量化は、他方の目の診断値を有する。例えば、本発明の一部の実施形態に従って一方の目で識別される糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞、および加齢に関係する黄斑変性症のような病態は、他方の目におけるそのような病態の存在のプロキシとして使用することができる。
【0111】
網膜血液循環の変化は種々の血管疾患の程度を示し、しばしば機能障害の発生に先行する。本発明の実施形態はしたがって、目の機能障害の可能性および処置の適用を予測するために使用することができる。
【0112】
当該方法は任意選択的に、かつ好ましくは、16に続き、そこで当該方法は解析に関するレポートを発行する。レポートは典型的には、解析の結果を提示する画像または画像のストリーム(例えば、ビデオストリーム)のようなグラフィック出力である。グラフィック出力は、グリッド上の特徴の1つ以上のマップ、グリッド上の異なる血管または血管外区画の1つ以上のマップを含むことができる。
【0113】
本発明の実施形態を脳の画像の解析に使用する場合、グラフィック出力は、脳の機能に関係する画像を含むことができる。例えば、グラフィック出力は、rCBFの増加が存在する領域が強調表示された画像、血管拡張を示す画像、および/またはBBB透過性を示すかあるいはBBB破壊の領域を強調表示した画像を含むことができる。
【0114】
本発明の実施形態を網膜の画像の解析に使用する場合、レポートは、網膜または目の機能性に関係する画像を含むことができる。例えば、レポートは、網膜動脈閉塞を示す画像、BBB透過性を示す画像、および/またはBRB破壊の領域を強調表示する画像のようなグラフィック出力を含むことができる。
【0115】
レポートはまた、解析の結果を記述するテキスト出力を含むこともできる。出力は、当業界で周知の通り、コンピュータスクリーンのようなディスプレイ装置に表示することができる。
【0116】
当該方法は17で終了する。
【0117】
ここで図4を参照すると、それは、本発明の種々の例示的実施形態に従って、検出可能なトレーサを脈管構造に有する、生きている被験者の器官を撮像するのに適した方法を記載する流れ図である。器官は、被験者の脳または網膜のような、しかしそれに限らない任意の器官とすることができる。当該方法は30で始まり、31に続き、ここで器官を撮像して撮像データのストリームを提供する。撮像中または撮像の少し前に、検出可能なトレーサが、例えば、注射によって、脈管構造内に導入される。撮像は好ましくは蛍光撮像であり、その場合、検出可能なトレーサは上で詳述した通り蛍光染料である。当該方法は32に続き、そこで撮像データのストリームが解析される。これは、上述しかつ図1に記載した操作の少なくとも一部を実行することによって行なうことができる。当該方法は任意選択的に33に続き、そこで当該方法は、上で詳述した通り、解析に関するレポートを発行する。
【0118】
当該方法は34で終了する。
【0119】
次に図5を参照すると、それは、本発明の種々の例示的実施形態に係る、撮像データのストリームを解析するための装置40の略図である。撮像データは、上で詳述した通り、生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる複数の画素にグリッド状に配列される。
【0120】
装置40は、上述した解析方法を用いて、撮像データを処理しかつ解析することができる。装置40は、本書に記載する操作機能を実行するための適切なソフトウェア付きの汎用コンピュータプロセッサの構成要素とするか、またはそのような構成要素として働くことができる。このソフトウェアは電子形式でプロセッサにダウンロードすることができ、あるいは代替的に、光学、磁気、または不揮発性電子メモリのような有形媒体上に提供することができる。代替的に、装置40は、本書に記載する操作を実行するように構成された専用コンピュータプロセッサの構成要素とするか、またはそのような構成要素として働くことができる。例えば、装置40は、本書に記載する操作を実行するためのコンピュータ命令を具現する専用ファームウェアを備えた専用コンピュータプロセッサとすることができる。
【0121】
本発明の種々の例示的実施形態では、装置40は、撮像データを希望に応じてデジタルまたはアナログ形式で受け取る入力ユニット42を備える。撮像データは、撮像デバイス46から直接提供することができる。撮像デバイス46は、当業界で公知の通り、蛍光撮像用に構成することができる。装置40はまた、デジタルで処理を実行することができるようにアナログ信号をデジタル信号に変換するための、入力ユニットに関連付けられる変換器44をも備えることができる。装置40およびデバイス46は、複合撮像解析装置として同調して機能することができる。
【0122】
装置40は、上で詳述した通り、各画素に対し特徴のベクトルを関連付けるベクトル関連付けユニット48をさらに備える(図2も参照されたい)。装置40は、上で詳述した通り、クラスタ化手順を使用するように構成されたクラスタ化ユニット50をさらに備える。装置40はまた、上で詳述した通り、クラスタに基づいて脈管構造における異なる区画を識別する識別ユニット52をも備えることができる。ユニットは、上で詳述した通り、血管外区画を識別するように構成することもできる。
【0123】
本発明の種々の例示的実施形態では、装置40は、グリッド上に特徴の少なくとも1つのマップを生成するためのマッピングユニット54を備える。本発明の一部の実施形態では、装置40は、上で詳述した通り、クラスタに基づいて網膜および/または脳の機能性を評価するための評価器56を備える。装置40は、上で詳述した通り、解析に関するレポートを発行し、かつディスプレイ装置60に出力する出力ユニット58を備えることが好ましい。
【0124】
本明細書中で使用される用語「約」または「ほぼ」は、±10%を示す。
【0125】
用語「例示的」は、本明細書では「例(example,instance又はillustration)として作用する」ことを意味するために使用される。「例示的」として記載されたいかなる実施形態も必ずしも他の実施形態に対して好ましいもしくは有利なものとして解釈されたりかつ/または他の実施形態からの特徴の組み入れを除外するものではない。
【0126】
用語「任意選択的」は、本明細書では、「一部の実施形態に与えられるが、他の実施形態には与えられない」ことを意味するために使用される。本発明のいかなる特定の実施形態も対立しない限り複数の「任意選択的」な特徴を含むことができる。
【0127】
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
【0128】
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
【0129】
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
【0130】
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。
【0131】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0132】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0133】
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
【0134】
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
【実施例】
【0135】
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
【0136】
実施例1
脳の撮像
材料および方法
全ての実験手順は、イスラエル国ベールシェバ、ネゲブのベングリオン大学の動物倫理委員会(Animal Ethics Committee)によって承認された。特に異なる旨を明記しない限り、薬品はシグマアルドリッジから購入した。
【0137】
インビボ動物前処置
確立された方法を用いてインビボ実験を実行した(例えば、Seiffertら、2004、「Lasting blood−brain barrier disruption induces epileptic focus in the rat somatosensory cortex」、J Neurosci.24、7829〜7836を参照されたい)。
【0138】
体重200〜300gの雄の成体SD系ラットに、ケタミン(100mg/ml、0.08ml/100g)およびキシラジン(20mg/ml、0.06ml/100g)の腹腔内注射によって、深麻酔をかけた。尾静脈にカテーテルを挿入し、動物を蛍光立体顕微鏡(Zeiss、SteReO Lumar V12)下で定位フレームに配置した。体温を連続的に監視し、加温パッドで38.0±0.5℃に維持した。
【0139】
1脳半球の運動−体性感覚皮質(尾側4mm、前頭2mm、ブレグマ側方5mm)に骨窓を穿孔した。硬膜を開口し、129mMのNaCl、21mMのNaHCO、1.25mMのNaHPO、1.8mMのMgSO、1.6mMのCaCl、3mMのKCl、および10mMのグルコース(pH7.4)を含有する人工脳脊髄液(ACSF)で皮質を連続的に表面灌流した。rCBFの増加を誘発させるために、翼口蓋神経節(SPG)からの副交感神経線維を含め、眼窩内篩骨神経を分離し(そのような技術のさらなる詳細については、例えば、Henninger NおよびFisher M.、2007、「Stimulating circle of Willis nerve fibers preserves the diffusion−perfusion mismatch in experimental stroke」、Stroke 38、2779〜2786を参照されたい)、かつ間に12秒の間隔を置いて2セットの60秒間の刺激(10Hz、方形パルス幅500μs、1〜6mA)によって刺激した(NeuroPath(商標)、BrainsGate)。
【0140】
BBBの破壊のために、胆汁酸塩デオキシコール酸(DOC)をACSFに添加し(2mM)、皮質を30分間灌流した。
【0141】
局所虚血を誘発させるために、血管内注射を介して光化学物質のローズベンガル(RBG;生理食塩水中に7.5mg/ml)を注射した(体重100g当たり0.133ml)。
【0142】
次いで、露出した皮質に、光ファイババンドル(Zeiss、KL1500LCD)を介して伝達されたハロゲン光を照射した。梗塞の発生を確認するために、実験後に骨窓を慎重に閉鎖し、動物を縫合し、回復のためにケージに戻した。2〜3週間後に、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を用いて、経心腔的灌流によって脳を固定し、取り出して、PFA中に48時間貯蔵した。40μmの冠状切片を装着し、クレシルバイオレットを用いて着色した。
【0143】
一部の実験では、BBB破壊の確認のために、動物にBBB非透過性のアルブミン結合染料エバンスブルーを注射した。
【0144】
方法確認のために、一部の実施形態では、レーザドップラ流量計(LDF)(Oxford Optronix、OxyFlo(商標)2000)でrCBFを監視した。rCBFの変化を、処置の30分前に記録された平均ベースライン信号からのパーセント変化として計算した。
【0145】
実時間蛍光撮像
rCBFおよびBBB透過性を撮像するために、非透過性蛍光染料ルシファイエロCHジカリウム塩(LY、FW=521.58)またはFITC標識血清アルブミンを静脈内に注射した。トレーサの注射前、注射中、および注射後に(全部で20〜40秒)、EMCCDカメラ(DL−658M−TIL、Andor Technology PLC.)を用いて、毎秒12〜30画像のレートで皮質表面血管の最大解像度(658×496)画像を取得した。LY注射から約15〜20分後に、平均画像強度が注射前の値に戻り、注射を繰り返した。
【0146】
画像解析
メモリ使用量および計算時間を低減するために、2D双三次補間技術を用いて画像の大きさを(256×256に)変更した。
【0147】
小さい動きによるアーチファクトを克服するために、Guizar−Sicairosら、2008、「Efficient subpixel image registration algorithms」、Optical Letters 33、156〜158に記載された変換のようなシングルステップ離散フーリエ変換を各画像に適用することによって、サブピクセル画像位置合せを実行した。信号対雑音比を高めるために、各フレームを幾つかの先行画像の移動平均に従って位置合せした。
【0148】
時間および空間による信号強度の変化を解析した。各ピクセルを強度時間曲線から抽出した特徴のベクトルによって表現した。次いで、当業界で公知の通りK平均法クラスタ化アルゴリズムを用いて、クラスタ解析を実行して(例えば、Hartigan,A.、Wong,M.A.、1979、「A K−Means Clustering Algorithm」、Applied Statistics 28、100〜108を参照されたい)、動脈、静脈、および血管外基質間でシグナル挙動を分離した。
【0149】
トレーサの注射時間を基準時間として使用し、「t=0」と定義した。クラスタ化プロセスのために以下の特徴、すなわちトレーサの注射前の背景強度(「雑音」)を表わすベースライン(0〜2.5秒、約30〜50画像)、ベースラインと比較して強度の有意の増加を最初に検出するまでの時間(本書では「傾斜時間」と呼び、ttiと表示する)、最大値(maxと表示する)、ttiとmaxとの間の信号強度増加の傾き(inclineと表示する)、t=0から最大強度までの時間(ttmaxと表示する)、信号強度減少の傾き(declineと表示する)、およびトレーサ注射から急速下降傾斜が停止する時間までの時間(ここでは「下降傾斜時間」と呼び、ttdと表示する)を使用した。これらの特徴は、図3に関連して上述した特徴に対応することに注目されたい。特に、ベースラインはIに対応し、ttiはtARに対応し、maxはIに対応し、inclineはSBRに対応し、ttmaxはtBRに対応し、declineはSDBに対応し、ttdはtRCに対応する。
【0150】
強度時間曲線からの自動的特徴抽出を、4つの区分を持つ区分化線形モデルに対する測定シグナル強度曲線の最小二乗誤差当てはめによって実行した。モデルは5つの区切り点、すなわち始点および終点における2つの固定区切り点、最大強度になる時間の1つの固定内部区切り点、ならびに傾斜時間および下降傾斜時間における2つの内部区切り点を含んでいた。後者は最小二乗誤差当てはめの自由度として使用された。
【0151】
ttiは、区分化線形モデルが最初に正の傾きを示した点(図3の点A参照)を識別し、かつt=0からこの点までの時間を測定することによって得られた。
【0152】
Incline(傾斜)は、最大値を先行するベースラインに接続する線の平均傾きとして計算した。Decline(下降傾斜)は、maxからttdまでの平均傾きとして計算した。加えて、平均過渡時間を各ピクセルに対して計算した。この計算は、平均して全ての粒子のMTTが同一であり、かつ大まかに先入れ先出しシーケンスとして挙動するという仮定の下で行なった。最初の粒子がシステムに進入しかつシステムから退出する時間をそれぞれtenterおよびtexitとする。システムに進入する全ての粒子は退出もすると仮定すると、tenterとtexitとの間にシステムに進入する粒子の数は、texitの後にシステムを退出する粒子の量に等しい。したがって、texitは、強度曲線の下の全面積を2つの均等な面積に分割する時点である。tenterはttiに等しいので、MTTをしたがってMTT=texit−tenterと定義した。代替的に、MTTはttdとttiとの間の差(MTT=ttd−tti)と定義することができる。
【0153】
細動脈および細静脈を表わすことが分かったクラスタの数を総計して脳血管面積(CBA)とした。
【0154】
結果
流れの可視化および動的画像解析
図6A〜Iは、軟膜血管の血流の視覚化および画像解析のプロセスを示す。
【0155】
図6Aおよび6Bは、蛍光トレーサの注射から5.15秒後(図6A)および6.85秒後(図6B)の血管の蛍光画像を示す。
【0156】
図6Cは、本発明の実施形態の画像解析手順によって作成された強度時間曲線を示す。図6Cの挿入図は、区分化線形モデル(赤)および生データ(青)を示す。
【0157】
図6D〜Fは、画像解析の手順、特にtti、incline、およびmaxのマップを示す。
【0158】
図6G〜Iは、クラスタ解析手順を示す。図6Gはクラスタの数を2と選択した結果を示し、推定血管を赤で、血管外組織をグレーでマーキングする。図6Hはクラスタの数を3と選択した結果を示し、細動脈を赤で、細静脈を青で、組織をグレーでマーキングする。図6Iは強度を動脈、静脈、および血管外組織の識別後の時間の関数として示す。
【0159】
注射から平均で5.15±0.15秒後に、トレーサを軟膜細動脈(図6A)で検出し、その後(6.85±0.30秒)遅れて細静脈のラベリング(図6B)を行なった。画像解析は、局所脈管構造内のトレーサの流動を反映する、蛍光シグナル強度の急速な増加とそれに続く緩徐な低下を明らかにした(図6C)。
【0160】
幾つかの生理学的に関連する特徴、すなわちトレーサの注射前の背景強度(「雑音」)を表わすベースライン(0〜2.5秒、約30〜50画像)、解剖学的に細動脈と識別された血管の場合、同じ領域の細静脈の場合より短いtti(図6Aおよび6D)、incline(図6E)、max(図6F)、およびttd(図示せず)を測定した。
【0161】
特徴の各々に対して作成されたピクセル関係解析マップは、解剖学的に定義された細動脈、細静脈、および血管外脳組織(後者は蛍光強度の著しく小さい変化を示す)の間の差を実証した。測定されたパラメータを用いたクラスタ解析は、選択されたクラスタの数nに応じて、自動分離を可能にする。n=2の場合、血管と血管外組織との間の明瞭な分離が観察され(図6G)、n=3の場合、解剖学的に定義された細動脈と細静脈との間の明瞭な分離が観察された(図6H)。
【0162】
rCBFの増加の撮像
本発明の実施形態の技術がrCBFの生理学的および病理学的変化の検出にどの程度敏感であるかも調べた。これは、同側冠状縫合皮質におけるrCBFを増大させるように篩骨神経を刺激することによって行なわれた。
【0163】
図7A〜Hは、篩骨神経の刺激後のCBFの増大の結果を示す。
【0164】
図7Aおよび7Bは、対照条件下(図7A)および3mAの各刺激列の終了時(図7B)の蛍光トレーサの注射中の画像を示す。画像は表面血管の血管拡張を実証する。図7Cは各刺激列中の最大rCBF増加の平均測定値を示すグラフであり、挿入図はレーザドップラ流量計による監視の結果を示す。1mAを超える各刺激列で、rCBFの増大が観察された。1mAより大きいパルスによる神経の刺激を繰り返すことにより、血管の直径の不定であるが顕著な増大およびレーザドップラ流量計で測定された平均rCBF(n=5)の増大が一貫して得られた。異なる組の実験で、12秒の間隔を置いた60秒の刺激の列(500μmの持続時間、10Hz、1〜6mA)を15分毎に、刺激強度を上げながら与えた。各列の最後にLYを静脈注射した。
【0165】
図7Dは、篩骨神経の刺激の結果誘発されるrCBFの増大を示すヒストグラムである。1mA超の刺激強度により血管の直径の明瞭な増大が観察された(図7Bも参照されたい)。血管拡張は細動脈の方が細静脈の場合より大きかった(データは図示せず)。
【0166】
図7Eおよび7Fは、動的解析の結果、特に、対照条件下(図7E)および3mAの各刺激列の終了時(図7F)のトレーサ注射中の流量に相関する最大値パラメータを示す。刺激後に最大強度の変化の増大が観察された。図7Gおよび7Hは、動脈(7G)および静脈区画(7H)の注射中の平均強度変化を示す。1mAより高い刺激強度でttiの顕著な低下ならびにincline(傾斜)およびmax(最大)値の増加が観察されたことに注目されたい。動脈および静脈区画は両方とも、rCBFおよびドレナージ(流出)の増大を示唆する同様の反応を示した。
【0167】
BBB破壊の撮像
BBBが破壊された条件下で、不透過性トレーサは血管の外に拡散し、血管外区画の画像強度を増大させる。
【0168】
図8A〜Hは、BBB透過性の検出のための解析の結果を示す。
【0169】
図8Aおよび8Bは、脳をDOCに暴露する前(図8A)および後(図8B)の注射挙動の静脈相中の表面血管の蛍光画像である。脳をDOCに暴露してから30分後に、トレーサ注射を繰り返すことにより、BBB破壊を示唆する血管外組織の明瞭な染色が示された。
【0170】
図8Cは、DOCによる処置およびエバンスブルーの注射後の冠状切片を示す。処置された皮質組織へのエバンスブルー−アルブミン複合体の血管外漏出はBBB破壊を示し、蛍光撮像の結果を確認した。
【0171】
図8Dはレーザドップラ流量計による監視の結果を示し、図8Eは、本発明の実施形態の画像解析によって決定された、対照条件下(ACSF)およびDOCの灌流後の動脈および静脈クラスタ内のピクセル数を示すヒストグラムである。レーザドップラ流量計の測定値(図8D)は、全ての実験でrCBFの安定かつ一貫した増大を実証した(n=5)。rCBFの増大は、DOC後の動脈および静脈クラスタの両方のCBAの増大を検出した本発明の実施形態の画像解析によって確認された通り(図8E)、細動脈および細静脈の両方の血管拡張に関連付けられた。
【0172】
図8Fおよび8Gは、本発明の一部の実施形態に従って計算された、対照条件下(図8F)およびDOCの灌流後(図8G)のMTTパラメータのマップである。細動脈でMTTの減少が観察され、トレーサが蓄積している血管外空間では確実な増大が観察された。
【0173】
血管拡張は、rCBFの増大と整合して、incline(傾斜)およびmax(最大)の値の増加ならびにMTT値の低下に関連付けられた(p<0.0001)。細動脈および細静脈に対応する画素におけるincline、max、およびMTTの変化を下の表1にまとめておく。

【0174】
図8Hは動脈、静脈、および血管外区画の強度曲線を示す。図示する通り、動脈区画における流量の増大および静脈区画におけるシグナル強度の低下がDOC後に観察された(破線)。下の表2は、細静脈に対応する画素で得られたincline、max、およびMTTパラメータの値をまとめたものである。該表は、inclineおよびmaxの減少ならびにMTTの増加を実証する(p<<0.001)。

【0175】
BBB破壊後の血管外区画におけるシグナル減衰の確実な減速もまた観察された。血管外区画で得られたincline、max、decline、およびMTTパラメータの値を表3にまとめておく。該表はinclineおよびdeclineの減少ならびにmaxおよびMTTの増加を実証する(p<0.001)。

【0176】
この実験は、DOCが誘発する血管拡張、脳細動脈の血流増加、および血管外空間におけるトレーサの蓄積が、静脈区画におけるシグナルの減少を導くことを実証する。
【0177】
局所虚血における血流の撮像
RBGモデルを使用して局所的血管内血栓症を誘発した。結果を図9A〜Iに示す。
【0178】
図9A〜Dは、RBGの静脈注射および皮質へのハロゲン光の照射前(図9Aおよび9B)ならびに30分後(図9Cおよび9D)の動脈区画(図9Aおよび9C)ならびに静脈区画(図9Bおよび9D)の蛍光画像である。図9A〜Dは、ビデオストリームを形成する一連の画像のスナップショットである。図9Aおよび9Cはt=6秒に対応するスナップショットであり、図9Bはt=10.8秒に対応するスナップショットであり、図9Dはt=11.6秒に対応するスナップショットである。図9Cおよび9Dにおける四角は血栓性血管(左側の四角)および無傷血管(右側の四角)の領域を示す。これらの領域を本書ではそれぞれ「中心」および「周囲」と呼ぶ。
【0179】
図9Eおよび9Fは、RBGの静脈注射および皮質へのハロゲン光の照射前(図9E)および後(図9F)のMTTマップである。
【0180】
図9Gは、エバンスブルー−アルブミン複合体を注射してから30分後(RBG処置から1時間後)の冠状切片を示す画像であり、図9Hは、光による血栓性病変の冠状切断から21日後の組織学的脳切片(クレシルバイオレット染色)を示す画像である。
【0181】
図9−Iは、中心および周囲領域の動脈、静脈、および血管外区画の強度曲線を示す。図9−Iでは、実線はRBG注射前の強度曲線(対照)であり、破線はRBG注射後の強度曲線(処置後)である。
【0182】
図示する通り、RBGの注射および光の照射から30分後に、LY注射は、光を照射した皮質の領域(中心領域)におけるrCBFの明瞭な低減を実証した。他方、周囲の脳組織における血液の供給(周囲領域)は無傷でありrCBFおよびBBB透過性の軽度の増加が示された。
【0183】
中心領域における動脈および静脈区画の両方の画像強度は、「背景」血管外区画のレベルまでシグナルの著しい低減を示した。周囲領域では、動脈および静脈区画でシグナルの明瞭な増加が観察された(図9−I、破線参照)。
【0184】
incline(傾斜)、max(最大)、およびMTTの値の増加が、動脈および静脈区画の両方で周囲領域に観察された(図9E〜I参照)。血管外区画は同様のinclineおよびmax値を示したが、BBBが破壊されたときに観察されたのと同様に(図8Fおよび8G参照)、MTTの増加と共に下降傾斜相が確実に減速したことに注目されたい。この結果は、処置された皮質の周囲の脳組織内へのエバンスブルー−アルブミン複合体の血管外漏出によって支持された(図9G参照)。
【0185】
実施例2
網膜の撮像
年齢25のヒトの男性志願者に、蛍光トレーサのフルオレセインナトリウム(英国エセックス州McCarthy’s Limited)、分子量376ダルトンの結晶性炭化水素を静脈内注射した。眼科で日常的に使用される標準静脈内カテーテルを用いて、トレーサを末梢静脈内に注射した。トレーサの注射中に、640×480DPIの解像度で、志願者の右網膜の網膜像を、SLOカメラ(NIDEK Co.,LTD.)を用いて、25フレーム/秒の速度で捕獲した(全部で60秒)。
【0186】
幾つかの前処理手順を使用した。これらは、上の実施例1で示したように、2D双三次補間技術を用いて画像の大きさを256×256に変更すること、およびシングルステップ離散フーリエ変換を用いて動き補正することを含む。画像解析およびクラスタ化は上の実施例1に記載した通りであった。
【0187】
図10は蛍光画像の代表例を示す。
【0188】
図11Aおよび11Bはクラスタ解析手順を示す。図11Aは動脈区画(赤)、静脈区画(青)、および網膜組織(グレー)を表わす。図11Bは、強度を動脈、静脈、および血管外組織の識別後の任意の単位の時間の関数として示す。
【0189】
実施例3
ヒトの脳の撮像
ヒトの脳のビデオ画像は脳神経外科手術中に捕獲され、University Hospital MannheimのDr.Johannes Woitzikの好意により得たものである。ヒト被験者は、左半球の悪性脳卒中を経験した41歳の女性であった。脳神経外科手術の説明については、Woitzikらの「Cortical Perfusion Measurement by Indocyanine−Green Videoangiography in Patients Undergoing Hemicraniectomy for Malignant Stroke」、Stroke(2006)、37:1549〜1551を参照されたい。インドシアニングリーンを末梢静脈内に注射し(体重1Kg当たり0.3mg)、ビデオカメラにより蛍光信号を25フレーム/秒の速度で記録した。上の実施例1で記載した通り、原フレームに前処理、画像解析、およびクラスタ化を実行した。
【0190】
図12Aおよび12Bは、脳神経外科手術中に捕獲されたフレームの例であり、図12Aは動脈相に対応し、図12Bは静脈相に対応する。
【0191】
図12Cは、クラスタ解析後の時間の関数としての任意の単位による強度、ならびに動脈、静脈、および血管外組織の識別を示す。
【0192】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
【0193】
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる、複数の画素にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する方法であって、
各画素に対し、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す特徴のベクトルを関連付け、それによって複数のベクトルを提供するステップと、
前記ベクトルに応じて画素をクラスタ化し、それによって複数のクラスタを提供するステップと、
前記クラスタに基づいて脈管構造における異なる区画を識別するステップと
を含む方法。
【請求項2】
脈管構造に検出可能なトレーサを有する、生きている被験者の器官を撮像する方法であって、器官を撮像して撮像データのストリームを提供するステップと、請求項1に記載の方法を実行するステップとを含む方法。
【請求項3】
前記撮像は蛍光撮像を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記撮像はコンピュータ断層撮影を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記撮像は磁気共鳴撮像を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記クラスタに基づいて少なくとも1つの血管外区画を識別するステップをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
グリッド上に前記特徴の少なくとも1つのマップを生成するステップをさらに含む、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
撮像データは被験者の網膜に関係する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記クラスタに基づいて網膜の機能性を評価するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
撮像データは被験者の脳に関係する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記クラスタに基づいて脳の機能性を評価するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
生きている被験者の脈管構造における検出可能なトレーサのレベルに関係する強度値に関連付けられる、複数の画素にグリッド状に配列された撮像データのストリームを解析する装置であって、
各画素に対し、ベースライン強度に対する時間的強度変化を示す特徴のベクトルを関連付け、それによって複数のベクトルを提供するためのベクトル関連付けユニットと、
前記ベクトルに従って画素をクラスタ化し、それによって複数のクラスタを提供するためのクラスタ化ユニットと、
前記クラスタに基づいて脈管構造の様々な区画を識別するための識別ユニットと
を備える装置。
【請求項13】
撮像デバイスおよび請求項12に記載の装置を備えた撮像装置。
【請求項14】
前記識別ユニットは、前記クラスタに基づいて少なくとも1つの血管外区画を識別するように構成される、請求項12または13に記載の装置。
【請求項15】
グリッド上に前記特徴の少なくとも1つのマップを生成するためのマッピングユニットをさらに備える、請求項12〜14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
撮像データは被験者の網膜に関係する、請求項12〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項17】
前記クラスタに基づいて網膜の機能性を評価するための評価器をさらに備える、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記網膜の機能性は血液網膜関門透過性を含む、請求項9に記載の方法または請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記網膜の機能性は網膜動脈閉塞を含む、請求項9に記載の方法または請求項17に記載の装置。
【請求項20】
撮像データは被験者の脳に関係する、請求項12〜15のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記クラスタに基づいて脳の機能性を評価するための評価器をさらに備える、請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記脳の機能性は局所脳血流を含む、請求項11に記載の方法または請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記脳の機能性は血管拡張を含む、請求項11に記載の方法または請求項21に記載の装置。
【請求項24】
前記脳の機能性は血管脳関門透過性を含む、請求項11に記載の方法または請求項21に記載の装置。
【請求項25】
前記特徴は、基準時間から前記強度が関数遷移を示す時間までの測定された期間を含む、請求項1〜24のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項26】
前記特徴は、前記トレーサが前記脈管構造内に導入された時間から前記画素の強度が前記ベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間を含む、請求項1〜25のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項27】
前記特徴は、前記画素の前記強度が前記ベースライン強度に対して増強されている期間を含む、請求項1〜26のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項28】
前記特徴は、前記トレーサが前記脈管構造に導入された時間から前記画素の強度が極大に達した時間までの定義された期間を含む、請求項1〜27のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項29】
前記特徴は、
前記トレーサが前記脈管構造に導入された時間から前記画素の強度が前記ベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間と、
前記画素の前記強度が前記ベースライン強度に対して増強されている期間と、
前記トレーサが前記脈管構造に導入された前記時間から前記画素の強度が極大に達した時間までの定義された期間と
から成る群から選択された少なくとも2つの期間の組合せを含む、請求項1〜28のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項30】
前記特徴は、前記画素の前記強度が前記ベースライン強度に対して増強されている期間の最大強度値を含む、請求項1〜29のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項31】
前記特徴は、前記画素の強度の変化率を特徴付ける少なくとも1つの傾きを含む、請求項1〜30のいずれかに記載の方法または装置。
【請求項32】
前記特徴は、前記トレーサが前記脈管構造内に導入された時間から前記画素の強度が前記ベースライン強度より上に上昇した時間までの定義された期間を含み、前記時間間隔および隣接画素のそれぞれの時間間隔に基づいて、前記画素は細動脈または細静脈と分類される、請求項1〜31のいずれかに記載の方法または装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A−6F】
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【図6G−6I】
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【図7A−7C】
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【図7D−7H】
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【図8A−8E】
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【図8F−8H】
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【図9A−9B】
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【図9C−9F】
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【図9G−9I】
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【図10】
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【図11A−11B】
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【図12A−12C】
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【公表番号】特表2013−502263(P2013−502263A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525247(P2012−525247)
【出願日】平成21年9月1日(2009.9.1)
【国際出願番号】PCT/IL2009/000847
【国際公開番号】WO2011/021175
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 
【出願人】(505412650)ベン‐グリオン ユニバーシティ オブ ザ ネゲヴ リサーチ アンド デベロップメント オーソリティ (3)
【出願人】(508029240)モル リサーチ アプリケーションズ リミテッド (4)
【Fターム(参考)】