説明

撮像ユニット及び撮像装置

【課題】先幕を電子フォーカルプレーンシャッタで行い、後幕をメカニカルフォーカルプレーンシャッタで行う場合において、安定的な露光を行えるようにする。
【解決手段】先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を制御する電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623は、状態情報取得部625及びリセットタイミング制御部627を備える。状態情報取得部625は、焦点位置、射出瞳位置、絞り値等の撮影レンズに関する情報、さらにはカメラ姿勢情報、内部温湿度情報、幕速等の情報を取得する。リセットタイミング制御部627は、これら情報に基づき、撮像センサの各画素ラインに対するリセットタイミングを制御することで、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、露光ムラが発生しないような幕速に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CMOS型の撮像素子が搭載された撮像ユニット及び撮像装置に関し、特に先幕を電子フォーカルプレーンシャッタで行い、後幕をメカニカルフォーカルプレーンシャッタで行うようにした撮像ユニット及び撮像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)を利用した撮像素子は、CCD(Charge Coupled Device)を利用した撮像素子と比較して、画素信号の読出し動作の高速化、省電力化及び高集積化が可能であり、撮像装置に対するサイズや性能等の点での要求に合致することから、撮像装置に搭載する撮像素子として注目されている。また、水平信号線及び垂直信号線を介し、任意の画素を指定して電荷を読み出すいわゆるランダムスキャンが可能であるという特質も有している。
【0003】
このようなCMOS型の撮像素子を搭載した撮像装置において、特許文献1には、シャッタ動作の先幕を電子フォーカルプレーンシャッタで行い、後幕をメカニカルフォーカルプレーンシャッタで行うようにすることが開示されている。すなわち、撮像素子が備える各画素にリセット動作を行わせるリセット信号を、画素ライン単位で順次与えて当該撮像素子に露光動作を開始させ(先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタ)、設定された露光時間の経過後に幕体を走行させる機械的な遮光を行い当該撮像素子の露光動作を終了させる(後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタ)ようにした撮像装置が開示されている。ここで、前記先幕において、前記リセット信号を各画素ラインに順次供給するリセットタイミングは、各画素ライン間で一定とされていた。つまり、シャッタ速度等に応じて設定された一定のリセットタイミングで、幕体の移動方向の始端側から順に、各画素ラインにリセット信号が供給されていた。
【特許文献1】特開2000−152057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、メカニカルフォーカルプレーンシャッタは、幕体の移動速度が一定ではなく、移動始端では比較的幕速が遅く、移動終端になるほど加速されて比較的幕速が早くなるという特性を有している。また、温湿度の変化や姿勢差等によっても、幕速が変化する場合がある。このため、先幕として電子フォーカルプレーンシャッタにより、幕体の移動方向の始端側から順に一定のリセットタイミング(一定の幕速)で各画素ラインにリセット信号を供給し、画素ライン毎に露光を開始させた場合、一定な幕速の先幕と、幕速が変化する後幕との間で幕速のずれが発生するようになる。従来、このような幕速のずれに起因して、特にスリット露光となる高速SS(シャッタスピード)時において、安定的な露光が得られないという問題があった。さらに、先幕の位置と後幕の位置とが離間することとなるので、かかる光学的な位置ずれに起因して射出瞳位置やFno.によっては光束のケラレが発生し、露光ムラが生じることがあった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、先幕を電子フォーカルプレーンシャッタで行い、後幕をメカニカルフォーカルプレーンシャッタで行う場合において、安定的な露光を行うことができる撮像ユニット及び撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係る撮像ユニットは、マトリクス状に配列された複数の画素を有するCMOS型の撮像素子と、前記撮像素子の所定の画素ラインと略直交する方向に移動する幕体を備え、前記撮像素子に導かれる光の遮断動作を行うメカニカルフォーカルプレーンシャッタと、前記撮像素子の各画素にリセット動作を行わせるリセット信号を与える制御を行う第1制御手段と、前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕体の移動動作を制御する第2制御手段とを備え、前記第1制御手段は、前記撮像素子における露光動作を開始させるべく各画素に前記リセット信号を与えるものであり、前記第2制御手段は、前記撮像素子における露光動作を終了させるべく前記幕体を移動させる制御を行うものであって、前記第1制御手段は、前記画素ライン単位で前記リセット信号を各画素に与えることが可能とされていると共に、前記リセット信号を各画素ラインに順次供給するリセットタイミングを、所定の画素ライン間で変化させることが可能とされていることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、第1制御手段により、所定の画素ライン単位でリセット信号が各画素に与えられることにより撮像素子の露光動作が開始される(先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタ)。また、第2制御手段により、幕体が移動されることにより撮像素子の露光動作が終了される(後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタ)。そして、第1制御手段は、一定のリセットタイミングでリセット信号を各画素ラインに順次供給するのではなく、リセットタイミングを所定の画素ライン間で変化させることが可能とされている。これにより、後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速特性に合わせて、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を適正に変化させることができるようになる。
【0008】
上記構成において、前記第1制御手段は、前記幕体の前記移動方向の始端側に位置する画素ラインから順次前記移動方向の終端側に位置する画素ラインに向けて、それぞれの画素ラインが備える各画素にリセット動作を行わせるものであって、1つの画素ライン間又は複数の画素ライン群間の前記リセットタイミングが、徐々に短くなるよう変化させることが望ましい(請求項2)。
【0009】
上述したように、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速は、移動始端では比較的遅く、移動終端になるほど加速されるという特性がある。従って、この構成のようにリセットタイミングが幕体の移動方向終端側に向けて徐々に短くなるよう変化させることで、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速も終端側に向けて加速できるようになる。これにより、先幕の幕速と後幕の幕速との間のずれが可及的に解消できるようになる。
【0010】
上記いずれかの構成において、前記第1制御手段は、所定の画素ライン間のリセットタイミングについて、少なくとも所定の時間間隔とされた第1のリセットタイミングから、この第1のリセットタイミングとは異なる時間間隔とされた第2のリセットタイミングに変更することが可能とされていることが望ましい(請求項3)。この構成によれば、所定の画素ライン間のリセットタイミングが固定的なものではなく、可変的なものとされる。これにより、様々な状況に合わせて、所定の画素ライン間のリセットタイミングを適正な時間間隔に設定できるようになる。
【0011】
また、前記第1制御手段は、前記幕体の前記移動方向の始端側に位置する画素ラインから前記移動方向の終端側に位置する画素ラインに向けての前記リセットタイミングの変化パターンを、所定の第1の変化パターンから、これとは異なる第2の変化パターンに変更することが可能とされていることが望ましい(請求項4)。この構成によれば、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速が、状況に応じて所定の変化パターンで変化するように、所定の画素ライン間のリセットタイミングを設定できるようになる。
【0012】
この場合、前記第1制御手段は、設定されたシャッタ速度に応じて前記リセットタイミングを変更させることができる(請求項5)。この構成によれば、設定されたシャッタ速度に応じてリセットタイミングの変化度合いを選定することが可能となり、例えばスリット露光となる高速SS時において、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を特に加速するといった運用を行うことができる。
【0013】
上記いずれかの構成において、被写体光を前記撮像素子に導く撮像光学系を形成する撮影レンズを有し、前記第1制御手段は、前記撮影レンズの撮影時における状態情報を取得し、該状態情報に基づいて前記リセットタイミングを変更させることができる(請求項6)。この構成によれば、撮影レンズの撮影時における状態情報に応じて、幕速のずれが生じず、また光束ケラレが発生しないようなリセットタイミング(先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速)を設定することが可能となる。
【0014】
この場合、前記撮影レンズが交換可能な撮影レンズであり、該撮影レンズが備えるメモリ部に所定の状態情報が記憶されている場合において、前記第1制御手段は、前記撮影レンズのメモリ部から前記状態情報を読み出すことで、前記リセットタイミングを変更させるための状態情報を取得する構成とすることが望ましい(請求項7)。この構成によれば、例えば一眼レフレックスタイプの撮像装置等において、撮影レンズから取得された状態情報に適したリセットタイミングを設定することが可能となる。
【0015】
前記状態情報は、焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態から選ばれる1又は複数の情報を含む状態情報であることが望ましい(請求項8)。この構成によれば、リセットタイミングの設定に必要な情報(シャッタスピード、Fno.、レンズの周辺光量落ち情報等)を的確に取得できる。
【0016】
また、前記状態情報に対応付けてリセットタイミングの設定値を記憶する記憶手段を備え、前記第1制御手段は、取得された状態情報に応じた前記リセットタイミングの設定値を前記記憶手段から読み出して、前記リセットタイミングを変更させるようにすることが望ましい(請求項9)。この構成によれば、状態情報に応じてリセットタイミングの設定値が記憶手段から読み出されるので、リセットタイミングの設定演算を高速化することが可能なる。
【0017】
上記いずれかの構成において、前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタの動作状態に関連する所定のパラメータを検知する検知手段を備え、前記第1制御手段は、前記検知手段により検知された検知情報に基づいて、前記リセットタイミングを変更させる構成とすることができる(請求項10)。この構成によれば、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの動作状態に合わせて、リセットタイミングを変更させることが可能となる。例えば、幕速の経年変化、温湿度に起因する変化、撮像ユニットの姿勢に起因する変化等に応じて、適宜なリセットタイミングを設定(補正)することができるようになる。
【0018】
この場合、前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタが、先幕と後幕とを有し、少なくとも前記後幕が備える幕体の移動動作が前記第2制御手段により制御されるよう構成されている場合において、これら先幕及び後幕が備える幕体の走行速度を検出する速度検出センサを具備する構成とすることができる(請求項11)。通常、先幕と後幕とを有するメカニカルフォーカルプレーンシャッタの場合、その先幕及び後幕の移動態様は略同じである。このため、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの先幕が備える幕体の走行速度を検出することで、後幕が備える幕体の走行速度を知見することができる。先幕として電子フォーカルプレーンシャッタが機能している場合において、露光動作の開始・終了に関与しないメカニカルフォーカルプレーンシャッタの先幕の幕速を検出することで、必要な状態情報を露光動作に関与しない段階で取得できるようになる。
【0019】
上記いずれかの構成において、前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタが、前記第2制御手段により制御される幕体のみで構成されていることが望ましい(請求項12)。メカニカルフォーカルプレーンシャッタは、機械的な駆動動作を伴うことから電力を多く消費する。この構成によれば、後幕に相当する幕体のみでメカニカルフォーカルプレーンシャッタが構成されるので、電力消費量を抑制できるようになる。
【0020】
本発明の請求項13に係る撮像装置は、請求項1〜12のいずれかに記載の撮像ユニットと、該撮像ユニットの駆動制御を行う駆動制御手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に係る発明によれば、後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速変化に合わせて、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を適正に変化させることが可能となり、例えばスリット露光となる高速SS時においても、先幕の幕速と後幕の幕速とのずれに起因する露光ムラを抑止できるようになる。さらに、レンズのFno.や射出瞳位置に拘わらず、先幕と後幕との光学的な位置ずれに起因より生じる光束ケラレ等も抑止できるようになり、撮像素子を安定的に露光させることができる。
【0022】
請求項2に係る発明によれば、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速の加速特性に合わせて、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速が設定されるので、露光ムラの発生を抑止することができる。
【0023】
請求項3に係る発明によれば、画素ライン間のリセットタイミングが可変的なものとされるので、様々な状況に合わせて、的確に露光動作を行わせることができる。
【0024】
請求項4に係る発明によれば、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、状況に応じて所定の変化パターンで変化させ得るので、各々の状況にマッチさせて的確に露光動作を行わせることができる。
【0025】
請求項5に係る発明によれば、設定されたシャッタ速度に応じてリセットタイミングを変更するようにしたので、先幕と後幕との間における幕速のずれ度合いを予測して、露光ムラが生じないよう、的確にリセットタイミングを設定することができる。
【0026】
請求項6に係る発明によれば、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、撮影レンズの撮影時における状態情報に応じて適正に設定できるようになる。
【0027】
請求項7に係る発明によれば、一眼レフレックスタイプの撮像装置等において、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、交換撮影レンズから取得された状態情報に応じて適正に設定できるようになる。
【0028】
請求項8に係る発明によれば、リセットタイミングの設定に必要な情報を的確に取得できるので、正確な露光状態を得ることができる。
【0029】
請求項9に係る発明によれば、リセットタイミングの設定演算を高速化することができるので、撮影タイムラグの発生を可及的に抑止できるようになる。
【0030】
請求項10に係る発明によれば、例えば、幕速の経年変化、温湿度に起因する変化、撮像ユニットの姿勢に起因する変化等に応じて、適宜なリセットタイミングを設定することができることから、長期間に亘り常に安定的に露光動作を行わせることができる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの先幕及び悪幕を活用した露光動作も行えると共に、メカニカルフォーカルプレーンシャッタの先幕を利用して後幕の移動状態を知見できる。従って、露光開始態様を多様化できると共に、電子フォーカルプレーンシャッタの機能時においては、露光動作に影響を与えることなく、幕体の走行速度情報を取得できるようになる。
【0032】
請求項12に係る発明によれば、後幕に相当する幕体のみでメカニカルフォーカルプレーンシャッタが構成されるので電力消費量を抑制でき、これにより電池等の消耗を抑制できるようになる。
【0033】
請求項13に係る発明によれば、先幕を電子フォーカルプレーンシャッタで行い、後幕をメカニカルフォーカルプレーンシャッタで行う場合において、画素ライン間のリセットタイミングを変化させることで先幕の幕速を適正に設定できる撮像装置を提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき説明する。
(カメラ構造の説明)
図1、図2は、本発明に係る撮像ユニットが組み込まれたデジタルカメラ1(撮像装置)の外観構造を示す図であり、図1は、デジタルカメラ1の正面外観図、図2は、デジタルカメラ1の背面外観図をそれぞれ示している。また図3は、デジタルカメラ1の内部構造を示す断面図である。図1に示すように、このデジタルカメラ1は、カメラ本体10と、このカメラ本体10の正面略中央に着脱可能(交換可能)に装着される撮影レンズ2(交換レンズ)とを備えた一眼レフレックス型デジタルスチルカメラである。
【0035】
図1において、カメラ本体10の正面側には、正面略中央に撮影レンズ2が装着されるマウント部101と、マウント部101の右横に配置されたレンズ交換ボタン102と、正面左端部(X方向左側)において突設され、ユーザが片手(又は両手)により確実に把持(保持)可能とするためのグリップ部103と、マウント部101の左横に配置されたAF補助光発光部104と、正面左上部(Y方向左上側)に配置されたモード設定ダイアル11と、正面右上部に配置された制御値設定ダイアル12と、グリップ部103の上面に配置されたシャッターボタン13とが備えられている。
【0036】
また、図2において、カメラ本体10の背面側には、背面左側に配置されたLCD(Liquid Crystal Display)14と、LCD14の下方に配置された設定ボタン群15と、LCD14の側方に配置された十字キー16と、十字キー16の中央に配置されたプッシュボタン17と、LCD14の上方に配設された光学ファインダー18と、光学ファインダー18の側方に配設されたメインスイッチ105と、光学ファインダー18の上方に配設された接続端子部106とが備えられている。
【0037】
モード設定ダイアル11及び制御値設定ダイアル12は、カメラ本体10の上面と略平行な面内で回転可能な略円盤状の部材からなる。モード設定ダイアル11は、自動露出(AE)制御モードや自動焦点(AF;オートフォーカス)制御モード、或いは1枚の静止画を撮影する静止画撮影モードや連続撮影を行う連続撮影モード等の各種撮影モード、記録済みの画像を再生する再生モード等、デジタルカメラ1に搭載されたモードや機能を択一的に選択するためのものである。制御値設定ダイアル12は、デジタルカメラ1に搭載された各種の機能に対する制御値を設定するためのものである。
【0038】
シャッターボタン13は、途中まで押し込んだ「半押し状態」の操作と、さらに押し込んだ「全押し状態」の操作とが可能とされた押下スイッチである。静止画撮影モードにおいてシャッターボタン13が半押し(S1)されると、被写体の静止画を撮影するための準備動作(露出制御値の設定や焦点調節等の準備動作)が実行され、シャッターボタン13が全押し(S2)されると、撮影動作(撮像センサを露光し、その露光によって得られた画像信号に所定の画像処理を施してメモリカード等に記録する一連の動作)が実行される。なお、シャッターボタン13の半押し操作は、図略のスイッチS1がオンされることにより検出され、シャッターボタン13の全押し操作は、図略のスイッチS2がオンされることにより検出される。
【0039】
LCD14は、カラー液晶パネルを備えてなり、撮像センサ30(図3参照)により撮像された画像の表示や記録済みの画像の再生表示等を行うとともに、デジタルカメラ1に搭載される機能やモードの設定画面を表示するものである。なお、LCD14に代えて、有機ELやプラズマ表示装置を用いるようにしてもよい。
【0040】
設定ボタン群15は、デジタルカメラ1に搭載された各種の機能に対する操作を行うボタンである。この設定ボタン群15には、例えばLCD14に表示されるメニュー画面で選択された内容を確定するための選択確定スイッチ、選択取り消しスイッチ、メニュー画面の内容を切り替えるメニュー表示スイッチ、表示オン/オフスイッチ、表示拡大スイッチ、手振れ補正スイッチなどが含まれる。
【0041】
十字キー16は、円周方向に一定間隔で配置された複数の押圧部(図中の三角印の部分)を備える環状の部材を有し、各押圧部に対応して備えられた図略の接点(スイッチ)により押圧部の押圧操作が検出されるように構成されている。また、プッシュボタン17は、十字キー16の中央に配置されている。十字キー16及びプッシュボタン17は、撮影倍率の変更(ズームレンズのワイド方向やテレ方向への移動)、LCD14に再生する記録画像のコマ送り、及び撮影条件(絞り値、シャッタスピード、フラッシュ発光の有無等)の設定等の指示を入力するためのものである。
【0042】
光学ファインダー18は、被写体が撮影される範囲を光学的に表示するものである。すなわち、光学ファインダー18には、撮影レンズ2からの被写体像が導かれており、ユーザ(撮影者)は、この光学ファインダー18を覗くことにより、実際に撮像センサ30にて撮影される被写体像を視認することができる。
【0043】
マウント部101は、撮影レンズ2が装着される部位であり、その近傍には、装着された撮影レンズ2との電気的接続を行うための複数個の電気的接点(図示省略)や、機械的接続を行うための後述するカプラ414(図3参照)等が設けられている。レンズ交換ボタン102は、マウント部101に装着された撮影レンズ2を取り外す際に押下されるボタンである。
【0044】
グリップ部103は、ユーザが撮影時に当該デジタルカメラ1を把持する部分であり、フィッティング性を高めるために指形状に合わせた表面凹凸が設けられている。なお、グリップ部103の内部には電池収納室とカード収納室とが設けられている。電池収納室にはカメラの電源として電池69B(図6参照)が収納されており、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するための記録媒体、例えばメモリカード67が着脱可能に収納されるようになっている。なお、グリップ部103に、ユーザが該グリップ部103を把持したか否かを検出するためのグリップセンサを設けるようにしても良い。
【0045】
AF補助光発光部104は、LED等の発光素子を備えてなり、被写体の輝度やコントラストが小さい場合であって焦点調節動作を行う際に、補助光を出力するものである。
【0046】
メインスイッチ105は、左右にスライドする2接点のスライドスイッチからなり、左にセットするとデジタルカメラ1の電源がオンされ、右にセットすると電源がオフされる。接続端子部106は、図略のフラッシュ等の外部装置を当該デジタルカメラ1と接続するための端子である。
【0047】
このデジタルカメラ1には、図1に点線で示すように、カメラ本体10の適所に振れ検出センサ49が搭載されている。この振れ検出センサ49は、手振れなどによりカメラ本体10に与えられる振れを検出するもので、図1の水平方向をX軸、該X軸に垂直な方向をY軸とする2次元座標系を想定するものとすると、X軸方向のカメラ振れを検出するXセンサ49aと、Y軸方向のカメラ振れを検出するYセンサ49bとを有している。Xセンサ49a及びYセンサ49bは、例えば圧電素子を用いたジャイロから構成され、各方向のぶれの角速度を検出するものである。
【0048】
撮影レンズ2は、被写体からの光(光像)を取り込むレンズ窓として機能するとともに、当該被写体光をカメラ本体10の内部に配置されている後述の撮像センサ30や光学ファインダー18へ導くための撮像光学系を構成するものである。この撮影レンズ2は、上述のレンズ交換ボタン102を押圧操作することで、カメラ本体10から取り外すことが可能(交換可能な撮影レンズ)とされている。
【0049】
撮影レンズ2は、光軸Lに沿って直列的に配置された複数のレンズからなるレンズ群21を備えてなる(図3参照)。このレンズ群21には、焦点の調節を行うためのフォーカスレンズ211(図6参照)、変倍を行うためのズームレンズ212(図6参照)が含まれており、それぞれ光軸L方向に駆動されることで、変倍や焦点調節が行われる。また、撮影レンズ2には、その鏡胴22の外周適所に該鏡胴の外周面に沿って回転可能な操作環が備えられており、ズームレンズ212は、マニュアル操作或いはオート操作により、前記操作環の回転方向及び回転量に応じて光軸方向に移動し、その移動先の位置に応じたズーム倍率(撮影倍率)に設定されるようになっている。
【0050】
続いて、カメラ本体10の内部構造について、図3を参照して説明する。図3に示すように、カメラ本体10の内部には、撮像センサ30、AF駆動ユニット41、位相差AFモジュール42、シャッターユニット43、ミラーボックス44、光学ファインダー18、前述した振れ検出センサ49、姿勢センサ491、温湿度センサ492、フォトインタラプタ493及びメイン制御部62などが備えられている。
【0051】
撮像センサ30(撮像素子)は、カメラ本体10の背面側の領域において該背面に略平行に配設されている。撮像センサ30としては、例えばフォトダイオードを有して構成される複数の画素がマトリクス状に2次元配列され、各画素の受光面に、それぞれ分光特性の異なる例えばR(赤),G(緑),B(青)のカラーフィルタが1:2:1の比率で配設されてなるベイヤー配列のCMOSカラーエリアセンサ(CMOS型の撮像素子)が用いられる。撮像センサ30は、レンズ群21により結像された被写体の光像をR(赤),G(緑),B(青)各色成分のアナログの電気信号(画像信号)に変換し、R,G,B各色の画像信号として出力する。
【0052】
AF駆動ユニット41は、AFアクチュエータ411と、出力軸412と、エンコーダ413とを備えてなる。AFアクチュエータ411は、AF動作のための駆動力を発生するもので、DCモータ、ステッピングモータ、超音波モータ等のモータと、このモータの回転数を減速するための図略の減速系を含むものである。出力軸412は、AFアクチュエータ411から出力される駆動力を撮影レンズ2内のレンズ駆動機構24に伝達するものである。エンコーダ413は、AFアクチュエータ411の出力軸412に伝達された駆動量(回転量)を検出するもので、検出された回転量は、撮影レンズ2内のレンズ群21の位置算出に用いられる。なお、前記出力軸412とレンズ駆動機構24とは、両者の機械的接続を行うためのカプラ414を介して接続されている。
【0053】
位相差AFモジュール42は、ミラーボックス44の底部に配設されており、周知の位相差検出方式により合焦位置を検出するものである。
【0054】
シャッターユニット43は、撮像センサ30の所定の画素ラインと略直交する方向に移動する幕体を備え、撮像センサ30に導かれる光の遮断動作を行うメカニカルフォーカルプレーンシャッタからなり、ミラーボックス44の背面と撮像センサ30との間に配設されている。図4は、かかるシャッターユニット43の構成を示す分解斜視図である。このシャッターユニット43は、一対のシャッタ基板430A、430Bの間に、先幕群431、後幕群432、遮光板433及び中間板434を備えて構成されている。
【0055】
先幕群431は、4枚の分割幕体4311〜4314(幕体)により構成され、これら分割幕体4311〜4314が2枚の先幕アーム4315、4316により連結されてなる。これら先幕アーム4315、4316が、所定の駆動軸を備える駆動装置(図6に示すシャッタ駆動アクチュエータ43M)で駆動されることで、分割幕体4311〜4314が展開状態(「シャッタ開」状態)及び重ね状態「シャッタ閉」状態)に動作される。後幕群432も同様であり、4枚の分割幕体4321〜4324が2枚の後幕アーム4325、4326により連結されてなる。なお、遮光板433及び中間板434には、被写体光を通過させる所定の開口部が形成されている。また、シャッタ基板430A、430Bには、前記駆動装置の駆動軸が挿入される円弧溝435A、436A及び435B、436Bが設けられている。
【0056】
本実施形態に係るデジタルカメラ1では、撮像センサ30の各画素に所定のタイミングでリセット信号を与えることで当該撮像センサ30の露光動作を開始させる電子フォーカルプレーンシャッタが、露光動作における先幕として用いられ、メカニカルフォーカルプレーンシャッタからなるシャッターユニット43が後幕として主に用いられる。従って、前記先幕群431は、専ら露光開始時点よりも早い段階で「シャッタ開」状態とされる。勿論、長秒露光時等に、先幕として電子フォーカルプレーンシャッタを用いず、この先幕群431を用いるようにしても良い。また、後幕群432の動作状態を知見するために、先幕群431の分割幕体4311〜4314の走行速度(幕速)を測定することが望ましい。この点については、後記で説明する。
【0057】
なお、本実施形態では先幕として電子フォーカルプレーンシャッタが用いられることから、前記先幕群431が省かれたシャッターユニット43を用いるようにしても良い。メカニカルフォーカルプレーンシャッタは重量が重く、これを機械的な駆動動作で移動させる必要があることから、その駆動装置は電力を多く消費する。従って、先幕群431を省き、後幕群432に相当する幕体のみが組み付けられたようなシャッターユニット43を用いることで、電力消費量を抑制できるようになる。
【0058】
図3に戻って、ミラーボックス44は、クイックリターンミラー441とサブミラー442とを備えてなる。クイックリターンミラー441は、回動支点443を中心として、図3の実線で示すように、撮像光学系を構成するレンズ群21の光軸Lに対して略45度傾斜した姿勢(以下、傾斜姿勢という)と、図3の仮想線で示すように、カメラ本体10の底面と略平行な姿勢(以下、水平姿勢という)との間で回動自在に構成されている。
【0059】
サブミラー442は、クイックリターンミラー441の背面側(撮像センサ30側)に配設されており、図3の実線で示すように、傾斜姿勢にあるクイックリターンミラー441に対して略90度傾斜した姿勢(以下、傾斜姿勢という)と、図3の仮想線で示すように、水平姿勢にあるクイックリターンミラー441と略平行な姿勢(以下、水平姿勢という)との間で、クイックリターンミラー441に連動して変位可能に構成されている。クイックリターンミラー441及びサブミラー442は、後述のミラー駆動アクチュエータ44M(図6参照)により駆動される。
【0060】
クイックリターンミラー441及びサブミラー442が傾斜姿勢のとき、クイックリターンミラー441は、光軸Lに沿った被写体光束の大部分を光学ファインダー18(焦点板45)方向に反射するとともに、残りの光束を透過させ、サブミラー442は、クイックリターンミラー441を透過した光束を位相差AFモジュール42に導く。このとき、光学ファインダー18による被写体像の表示と、位相差AFモジュール42による位相差検出方式の焦点調節動作とが行われる一方、撮像センサ30には光束が導かれないため、LCD14による被写体の画像表示は行われない。
【0061】
一方、クイックリターンミラー441及びサブミラー442が水平姿勢のときには、クイックリターンミラー441及びサブミラー442は光軸Lからいずれも退避することになるため、光軸Lに沿った被写体光束は略全て撮像センサ30に導かれるようになる。このとき、LCD14による被写体の画像表示が行われる一方、光学ファインダー18による被写体の画像表示や、位相差AFモジュール42による位相差検出方式の焦点調節動作は行われない。
【0062】
光学ファインダー18は、カメラ本体10の略中央に配設されたミラーボックス44の上部に配設されており、焦点板45と、プリズム46と、接眼レンズ47と、ファインダー表示素子48とを備えて構成されている。プリズム46は、焦点板45上の像の左右を反転させ接眼レンズ47を介して撮影者の目に導き、被写体像を視認できるようにするものである。ファインダー表示素子48は、ファインダー枠内に形成される表示画面の下部に、シャッタ速度、絞り値、露出補正値等を表示するためのものである。
【0063】
振れ検出センサ49は、図1に示す振れ検出センサ49(Xセンサ49a及びYセンサ49b)に相当するものである。なお、この図3では、Xセンサ49a及びYセンサ49bを1つにまとめて図示している。
【0064】
姿勢センサ491、温湿度センサ492及びフォトインタラプタ493は、シャッターユニット43の後幕群432の動作状態に関連する所定のパラメータを検知する検知手段として機能するものである。メカニカルフォーカルプレーンシャッタの動作状態(幕速等)は、例えばデジタルカメラ1の姿勢、温湿度、或いは構成部品の経年劣化等によって変化する。上記3つの検知手段は、かかる要因に基づく後幕群432の動作状態の変化を検知若しくは予測することで、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、後述のメイン制御部62において的確に制御するために配置されている。
【0065】
姿勢センサ491は、ボールセンサや加速度センサ等からなり、当該デジタルカメラ1の姿勢乃至は傾き角を検出するためのものである。温湿度センサ492は、測温素子等から構成され、デジタルカメラ1の内部温度及び湿度を計測するものである。
【0066】
フォトインタラプタ493(速度検出センサ)は、発光素子と受光素子とを備える光学センサであり、シャッターユニット43が備える先幕の幕速を光学的に検知するためのものである。図4に示すように、先幕群431(先幕)と後幕群432(後幕)とを有するメカニカルフォーカルプレーンシャッタの場合、その先幕群431及び後幕群432の移動態様は略同じである。このため、先幕群431の分割幕体4311〜4314の走行速度を検出することで、後幕群432の分割幕体4321〜4324の走行速度を高精度に推定することができる。
【0067】
図5は、シャッターユニット43に対するフォトインタラプタ493の配置状況の一例を示す平面図である。ここでは、先幕群431の分割幕体4311〜4314の遠端側(先幕アーム4315、4316から遠い側)に、フォトインタラプタ493を配置した例を示している。前記発光素子及び受光素子は、分割幕体4311〜4314を挟んで対向配置される(反射光を検出すべく、両者を隣接配置しても良い)。この場合、分割幕体4311〜4314が展開状態(図5の状態)にあるときは、前記発光素子から発せられた測定光は分割幕体4311〜4314により遮光されるが、分割幕体4311〜4314が重ね状態になり開口すると、前記測定光は前記受光素子により検出されるようになる。従って、受光素子の出力をモニタすることで、先幕群431の幕速を知見でき、ひいては後幕群432の幕速を推定できるようになる。なお、フォトインタラプタ493は少なくとも一対の発光素子及び受光素子を備えていれば良いが、複数対の発光素子及び受光素子を、分割幕体4311〜4314の移動方向に沿って配列することが望ましい。
【0068】
図3に戻って、メイン制御部62は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶部が内蔵されたマイクロコンピュータからなるものである。詳細な機能については後述する。
【0069】
次に、カメラ本体10に装着される撮影レンズ2について説明する。この撮影レンズ2は、撮像光学系を構成するレンズ群21と、鏡胴22と、レンズ駆動機構24と、レンズ位置検出部25と、レンズ制御部26とを備えている。
【0070】
レンズ群21は、上述のフォーカスレンズ211及びズームレンズ212(図6参照)と、カメラ本体10に備えられている撮像センサ30へ入射される光量を調節するための絞り23とが、鏡胴22内において光軸L方向に保持されてなり、被写体の光像を取り込んで該光像を撮像センサ30等に結像するものである。撮影倍率(焦点距離)の変更や焦点調節動作は、レンズ群21がカメラ本体10内のAFアクチュエータ411により光軸L方向に駆動されることで行われる。
【0071】
レンズ駆動機構24は、例えばヘリコイド及び該ヘリコイドを回転させる図略のギヤ等で構成され、カプラ414を介してAFアクチュエータ411からの駆動力を受けて、レンズ群21を一体的に光軸Lと平行な矢印A方向に移動させるものである。なお、レンズ群21の移動方向及び移動量は、それぞれAFアクチュエータ411の回転方向及び回転数に従う。
【0072】
レンズ位置検出部25は、レンズ群21の移動範囲内において光軸L方向に複数個のコードパターンが所定ピッチで形成されたエンコード板と、このエンコード板に摺接しながら鏡胴22と一体的に移動するエンコーダブラシとを備えてなり、レンズ群21の焦点調節時の移動量を検出するためのものである。
【0073】
レンズ制御部26は、例えば制御プログラムを記憶するROMや状態情報に関するデータを記憶するフラッシュメモリ等からなるメモリ部261(交換可能な撮影レンズが備えるメモリ部)が内蔵されたマイクロコンピュータからなる。またレンズ制御部26は、カメラ本体10のメイン制御部62との間で通信を行う通信部262を備え、この通信部262は、例えばレンズ群21の焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態等の状態情報データをメイン制御部62に送信する一方、メイン制御部62から例えばフォーカスレンズ211の駆動量のデータを受信する。また撮影時には、AF動作完了後の焦点距離情報、絞り値等のデータが通信部262からメイン制御部62へ送信される。なお、前記記憶部261には、上記レンズ群21の状態情報データや、メイン制御部62から送信された例えばフォーカスレンズ211の駆動量のデータ等が記憶される。
【0074】
(デジタルカメラの電気的な構成の説明)
次に、本実施形態に係るデジタルカメラ1の電気的な構成について説明する。図6は、カメラ本体10に撮影レンズ2が装着された状態でのデジタルカメラ1全体の電気的な構成を示すブロック図である。ここで、図1〜図3と同一の部材等については、同一の符号を付している。なお、撮影レンズ2についての電気的構成は上述した通りであるので、ここでは専らカメラ本体10の電気的構成について説明する。
【0075】
カメラ本体10には、先に図1〜図3に基づき説明した撮像センサ30等の他に、CMOS駆動機構30A、AFE(アナログフロントエンド)5、画像処理部61、画像メモリ614、メイン制御部62(第1制御手段を含む)、フラッシュ回路63、操作部64、VRAM65、カードI/F66、メモリカード67、通信用I/F68、電源回路69、電池69B、フォーカス駆動制御部41A、シャッタ駆動制御部43A(第2制御手段)及びシャッタ駆動アクチュエータ43M、ミラー駆動制御部44A及びミラー駆動アクチュエータ44Mを備えて構成されている。
【0076】
撮像センサ30は、先に説明した通りCMOSカラーエリアセンサからなり、後述のタイミング制御回路51により、当該撮像センサ30の露光動作の開始(及び終了)や、撮像センサ30が備える各画素の出力選択、画素信号の読出し等の撮像動作が制御される。図7は、撮像センサ30の回路構成を概略的に示す回路ブロック図である。ここでは図示の便宜上、3行(ライン)×4列の画素群のみを示している。
【0077】
撮像センサ30は、複数の画素31(31a−1〜31d−3)が、複数の画素ライン32(32a〜32c)上に整列(マトリクス状の配列)されてなり、図7では、第1画素ライン32aに画素31a−1、31b−1、31c−1、31d−1が、第2画素ライン32bに画素31a−2、31b−2、31c−2、31d−2が、第3画素ライン32cに画素31a−3、31b−3、31c−3、31d−3が各々配置されている例を示している。各画素31は、光電変換動作を行う光電変換素子としてのフォトダイオード33と、リセット信号を受けて画素31に蓄積されている電荷を放電させるリセットスイッチ(Rst)34と、画素31に蓄積された電荷を電圧として読み出し(電荷電圧変換)これを増幅する増幅素子(Amp)35と、選択信号を受けて当該画素30の画素信号を出力させる垂直選択スイッチ(SW)36とを備えて構成されている。なお、リセットスイッチ34及び増幅素子35は、電源Vpに接続されている。
【0078】
また、撮像センサ30は、垂直走査回路37、水平走査回路38及びアンプ39を備える。垂直走査回路37には、画素ライン32a〜32c単位で、各画素31a−1〜31d−3のリセットスイッチ34が共通に接続されたリセット線371a〜371cと、垂直選択スイッチ36の制御電極が共通に接続された垂直走査線372a〜372cとが接続されている。垂直走査回路37は、リセット線371a〜371cを介して、各画素ライン32a〜32cに所定のリセットタイミングでリセット信号φVrを順次供給し、画素ライン32a〜32c単位で各画素31a−1〜31d−3にリセット動作を行わせる。また、垂直走査回路37は、垂直走査線372a〜372cを介して垂直走査パルスφVnを各画素31a−1〜31d−3に与える。
【0079】
さらに、画素列(例えば、画素31a−1、31a−2、31a−3)ごとに、垂直選択スイッチ36の主電極が共通に接続された水平走査線381(381a〜381d)が引き出され、各々水平スイッチ382(382a〜382d)を介して水平信号線383に接続されている。水平走査回路38は、このような水平スイッチ382a〜382dの制御電極に接続され、水平走査パルスφVmを与えることで選択された画素の画素信号を取り出すものである。アンプ39は、水平信号線383に接続され、画素からの出力信号を増幅するものである。
【0080】
このような構成を有する撮像センサ30においては、各画素31a−1〜31d−3に蓄積された電荷の出力動作(読み出し)を1画素ずつ行わせることが可能であると共に、垂直走査回路37及び水平走査回路38の動作を制御することで、特定の画素を指定してその画素信号を出力させることができる。すなわち、垂直走査回路37により、或る画素の垂直選択スイッチ36に垂直走査パルスφVnが与えられ、その画素が有するフォトダイオード33で光電変換された電荷(画素信号)が水平走査線381を介して出力可能な状態とされる。しかる後、水平走査回路38により、その水平走査線381に接続されている水平スイッチ382に水平走査パルスφVmが与えられ、前記画素信号が水平スイッチ382を介して水平信号線383に出力される。この動作を各画素について順次行うことで、画素を指定しつつ全ての画素から順次画素信号を出力させることができる。水平信号線383に出力された画素信号は、アンプ39にてさらに増幅された上でAFE5に出力される。
【0081】
本実施形態に係るデジタルカメラ1では、先幕として電子フォーカルプレーンシャッタを採用しているため、画素31のリセットスイッチ34にリセット信号φVrが与えられるタイミングが、その画素31に対する露光開始タイミングとなる。すなわち、リセットスイッチ34は、リセット信号φVrが与えられることでONとされ、それまでに蓄積されている不要な電荷を廃棄し、その後OFFとされて画素31を露光による電荷蓄積が可能な状態とする。図7に示す例では、リセット信号φVrは、1つの画素ライン32a〜32c単位で与えられる回路構成とされていることから、第1〜第3画素ライン32a〜32c毎に、順次露光が開始される。
【0082】
図8は、かかる電子フォーカルプレーンシャッタ動作を説明するための模式図である。図8(a)では、第1画素ライン32a〜第N画素ライン32Nまでを示しており、これら画素ラインに各々リセット信号φVrを供給するリセット線371a〜371Nを矢印で示している。なお、第1画素ライン32a〜第N画素ライン32Nは、メカニカルフォーカルプレーンシャッタが備える幕体の移動方向と直交する方向に画素が配列された画素ラインである。
【0083】
このような構成において、第1画素ライン32a〜第N画素ライン32Nに、所定のリセットタイミングで、垂直走査回路37からリセット線371a〜371Nを介して、図8(b)に示すようなリセット信号φVrが順次与えられる。すなわち、先ず時刻t1で第1画素ライン32aに備えられている画素31a−1〜31d−1へリセット信号φVrが同時に与えられ、これら画素31a−1〜31d−1の露光が開始される。次に、時刻t2で第2画素ライン32bに備えられている画素31a−2〜31d−2へリセット信号φVrが同時に与えられ、これら画素31a−2〜31d−2の露光が開始される。以下同様にして、時刻t3、t4、t5・・・tn毎に、第3画素ライン32c、第4画素ライン32d、第5画素ライン32e・・・第N画素ライン32Nまで、順次リセット信号φVrが与えられる。これにより、第1画素ライン32aから第N画素ライン32Nに向けて順に露光が開始されるようになり、電子フォーカルプレーンシャッタとして機能するものである。
【0084】
ここで、リセットタイミング(第1画素ライン32a〜第N画素ライン32Nに順次リセット信号φVrを与えるタイミング)は、当該電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を決定付けることとなる。すなわち、時刻t1〜tnの時間が短いほど、幕速は早くなる。また、時刻t1、t2・・・tnの各間隔が一定であれば、幕速は一定である。本実施形態では、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を制御するために、前記リセットタイミングがメイン制御部62により制御(特に、幕速を加減速する制御)可能とされている。この点については後記で詳述する。
【0085】
図6に戻って、CMOS駆動機構30Aは、カメラ本体10に対して与えられる手振れ等に応じて撮像センサ30を振れ補正駆動するためのものである。このCMOS駆動機構30Aは、圧電素子を用いたインパクト型アクチュエータやステッピングモータ等からなるX軸アクチュエータ及びY軸アクチュエータを含むものであり、メイン制御部62により制御される。
【0086】
AFE5は、撮像センサ30に対して所定の動作を行わせるタイミングパルスを与えると共に、撮像センサ30から出力される画像信号(CMOSエリアセンサの各画素で受光されたアナログ信号群)に所定の信号処理を施し、デジタル信号に変換して画像処理部61へ出力するものである。このAFE5は、タイミング制御回路51、信号処理部52及びA/D変換部53などを備えて構成されている。
【0087】
タイミング制御回路51は、メイン制御部62から出力される基準クロックに基づいて所定のタイミングパルス(垂直走査パルスφVn、水平走査パルスφVm、リセット信号φVr等を発生させるパルス)を生成して撮像センサ30(上記垂直走査回路37及び水平走査回路38等)に出力し、撮像センサ30の撮像動作を制御する。また、所定のタイミングパルスを信号処理部52やA/D変換部53にそれぞれ出力することにより、信号処理部52及びA/D変換部53の動作を制御する。
【0088】
信号処理部52は、撮像センサ30から出力されるアナログの画像信号に所定のアナログ信号処理を施すものである。この信号処理部52には、CDS(相関二重サンプリング)回路、AGC(オートゲインコントロール)回路及びクランプ回路(クランプ手段)等が備えられている。A/D変換部53は、信号処理部52から出力されたアナログのR,G,Bの画像信号を、前記タイミング制御回路51から出力されるタイミングパルスに基づいて、複数のビット(例えば12ビット)からなるデジタルの画像信号に変換するものである。
【0089】
画像処理部61は、AFE5から出力される画像データに所定の信号処理を行って画像ファイルを作成するもので、黒レベル補正回路611、ホワイトバランス制御回路612及びガンマ補正回路613等を備えて構成されている。なお、画像処理部61へ取り込まれた画像データは、撮像センサ30の読み出しに同期して画像メモリ614に一旦書き込まれ、以後この画像メモリ614に書き込まれた画像データにアクセスして、画像処理部61の各ブロックにおいて処理が行なわれる。
【0090】
黒レベル補正回路611は、A/D変換部53によりA/D変換されたR,G,Bの各デジタル画像信号の黒レベルを、基準の黒レベルに補正するものである。
【0091】
ホワイトバランス制御回路612は、光源に応じた白の基準に基づいて、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分のデジタル信号のレベル変換(ホワイトバランス(WB)調整)を行うものである。すなわちホワイトバランス制御回路612は、メイン制御部62から与えられるWB調整データに基づき、撮影被写体において輝度や彩度データ等から本来白色であると推定される部分を特定し、その部分のR,G,Bそれぞれの色成分の平均と、G/R比及びG/B比とを求め、これをR,Bの補正ゲインとしてレベル補正する。
【0092】
ガンマ補正回路613は、WB調整された画像データの階調特性を補正するものである。具体的にはガンマ補正回路613は、画像データのレベルを色成分毎に予め設定されたガンマ補正用テーブルを用いて非線形変換すると共にオフセット調整する。
【0093】
画像メモリ614は、撮影モード時には、画像処理部61から出力される画像データを一時的に記憶するとともに、この画像データに対しメイン制御部62により所定の処理を行うための作業領域として用いられるメモリである。また、再生モード時には、メモリカード67から読み出した画像データを一時的に記憶する。
【0094】
メイン制御部62は、図6に示すデジタルカメラ1内の各部の動作を制御するものであり、本実施形態においては、機能的に、AF/AE制御部621、振れ補正制御部622、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623(第1制御手段)を有して構成されている。
【0095】
AF/AE制御部621は、自動焦点制御(AF)及び自動露出制御(AE)のために必要な動作制御を行う。すなわち、AFのために、前記位相差AFモジュール42の出力信号を用いて位相差検出方式による焦点調節処理を行い、合焦制御信号(AF制御信号)を生成し、フォーカス駆動制御部41Aを介してAFアクチュエータ411を動作させ、フォーカスレンズ211の駆動を行わせる。また、AEのために、図略のAEセンサで検出された被写体の輝度情報等に基づいて、当該被写体における適正な露出量を求める演算を行う。
【0096】
振れ補正制御部622は、手振れ補正モードが実行される場合において、前述の振れ検出センサ49からの振れ検出信号に基づいて振れ方向及び振れ量を算出し、算出された方向及び振れ量に基づき振れ補正制御信号を生成してCMOS駆動機構30Aに出力し、撮像センサ30を手振れが打ち消される方向にシフト駆動させるものである。
【0097】
電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623は、撮像センサ30の垂直走査回路37(図7参照)を介して、所定の状態情報に応じて所定のリセットタイミングを設定し、当該リセットタイミングにてリセット信号φVrを各画素ライン32a〜32cに順次供給し、撮像センサ30に先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタ動作を行わせる。この電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623の詳細については、図16に基づき後記で詳述する。
【0098】
フラッシュ回路63は、フラッシュ撮影モードにおいて、接続端子部106に接続されるフラッシュの発光量を、メイン制御部62により設定された所定の発光量に制御するものである。
【0099】
操作部64は、前述のモード設定ダイアル11、制御値設定ダイアル12、シャッターボタン13、設定ボタン群15、十字キー16、プッシュボタン17、メインスイッチ105等を含み、操作情報をメイン制御部62に入力するためのものである。
【0100】
VRAM65は、LCD14の画素数に対応した画像信号の記録容量を有し、メイン制御部62とLCD14との間のバッファメモリである。カードI/F66は、メモリカード67とメイン制御部62との間で信号の送受信を可能とするためのインターフェイスである。メモリカード67は、メイン制御部62で生成された画像データを保存するものである。通信用I/F68は、パーソナルコンピュータやその他外部機器に対する画像データ等の伝送を可能とするためのインターフェイスである。
【0101】
電源回路69は、例えば定電圧回路等からなり、メイン制御部62等の制御部、撮像センサ30、その他の各種駆動部等、デジタルカメラ1全体を駆動させるための電圧(例えば5V)を生成する。なお、撮像センサ30への通電制御は、メイン制御部62から該電源回路69へ与えられる制御信号により行われる。電池69Bは、アルカリ乾電池等の一次電池や、ニッケル水素充電池等の二次電池からなり、デジタルカメラ1全体に電力を供給する電源である。
【0102】
フォーカス駆動制御部41Aは、メイン制御部62のAF/AE制御部621から与えられるAF制御信号に基づき、フォーカスレンズ211を合焦位置に移動させるために必要な、AFアクチュエータ411に対する駆動制御信号を生成するものである。
【0103】
シャッタ駆動アクチュエータ43Mは、シャッターユニット43(図4に示す先幕群431及び後幕群432)の開閉駆動を行うアクチュエータである。シャッタ駆動制御部43A(第2制御手段)は、メイン制御部62から与えられる制御信号に基づき、前記シャッタ駆動アクチュエータ43Mに対する駆動制御信号を生成するものである。なお、後幕群432を駆動させる制御信号は、撮像センサ30における露光動作を終了させるための制御信号となる。
【0104】
ミラー駆動アクチュエータ44Mは、前述のミラーボックス44に備えられているクイックリターンミラー441を、水平姿勢若しくは傾斜姿勢に回動させるアクチュエータである。ミラー駆動制御部44Aは、撮影動作のタイミングに合わせて、ミラー駆動アクチュエータ44Mを駆動させる駆動信号を生成するものである。
【0105】
(シャッタ動作についての説明)
本実施形態に係るデジタルカメラ1では、先幕として電子フォーカルプレーンシャッタを使用し、後幕としてメカニカルフォーカルプレーンシャッタを使用することで、CMOS型の撮像センサ30の露光動作を開始・終了させることが可能とされている。このようなシャッタ動作を行う場合に、下記[1]、[2]に示す特有の問題が発生する。この点につき、先ず説明する。
【0106】
[1]高速SS時における露光ムラの問題
図9は、撮像センサ30とシャッターユニット43との配置関係を示す断面図である。一般に撮像センサ30は、図9に示すように、CMOSセンサチップ301が、収納凹部を有するホルダ302に収納され、CMOSセンサチップ301の受光面301a側に所定の空隙301gを設けて、カバーガラス303でホルダ302の開口面が封止される構成を備えている。また、撮像センサ30とシャッターユニット43との間には、一般に被写体光の高周波成分を除去してモアレを防ぐための光学的ローパスフィルタ304が介在される。この光学的ローパスフィルタ304としては、例えば所定の結晶軸方向が調整された水晶等を材料とする複屈折型ローパスフィルタや、必要とされる光学的な遮断周波数特性を回折効果により実現する位相型ローパスフィルタ等が用いられる。かかる構成において、被写体光は、シャッターユニット43の画枠43B、光学的ローパスフィルタ304、カバーガラス303及び空隙301gを通過してCMOSセンサチップ301の受光面301aに至るものである。
【0107】
このような構成において、シャッターユニット43に備えられている幕体(先幕群431及び後幕群432)の幕速は、展開状態〜重ね状態において一定ではない。図10は、先幕及び後幕の双方とも、メカニカルフォーカルプレーンシャッタを使用した場合における幕速特性を示すグラフである。図10に示すように幕速は、画枠43Bの移動始端側から終端側にかけて、最初は遅く、徐々に加速され、終端側において最も早くなる。しかも、この幕速特性は、デジタルカメラ1の姿勢、温度、湿度、或いはシャッターユニット43の構成部品の経年劣化等によって変化する。
【0108】
ここで、シャッタスピードが遅い場合(低速SS時)、図10において後幕(L)の特性で示すように、後幕は先幕よりも時間的にかなり遅れて動作が開始されるため、画枠43Bが全開になる時間帯Tzを含め露光時間Tm1は長くなり、先幕及び後幕の幕速特性の相違はさほど問題とはならない。これに対し、シャッタスピードが高速である場合(高速SS時)、図10において後幕(H)の特性で示すように、先幕が開放動作を行っている途中で後幕の動作が開始され、いわゆるスリット露光が行われるようになる。かかるスリット露光におけるスリット幅は、始端側(幕体の動き始め)では比較的狭いスリット幅w1であるが、幕体が加速する性質を有することから徐々に広くなり、中央では前記スリット幅w1よりも広いスリット幅w2となり、終端側ではさらに広いスリット幅w3となってゆく。しかし、スリット幅がw1〜w3と変化しても、その分幕速が加速されることから、撮像センサ30の受光面301aの全面が略同一の露光時間Tm2で露光される。
【0109】
このように先幕及び後幕の双方がメカニカルフォーカルプレーンシャッタである場合、両者の幕速特性は略同一であるため、互いの幕速特性を相殺する形となることから、高速SS時においても露光ムラは比較的生じにくい。しかし、先幕として電子フォーカルプレーンシャッタを使用する場合、幕速特性の相違により露光ムラが生じ易くなる。すなわち、電子フォーカルプレーンシャッタにおける幕速は、図8で説明したように、各画素ラインに順次リセット信号を与えるリセットタイミングに依存するが、このリセットタイミングに基づく先幕の幕速と、後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速とが同じ幕速特性でないと、受光面301aの露光時間が部分的に異なるようになり、露光ムラが発生するようになる。かかる露光ムラは、低速SS時では許容誤差の範囲内であるが、高速SSになると画質に与える影響が顕在化する。
【0110】
[2]高速SS時の光束ケラレの問題
図9に示す構成において、シャッターユニット43が備える先幕群431及び後幕群432のみ、つまりメカニカルフォーカルプレーンシャッタのみで露出制御を行う場合、全露光時間Tmは次の(1)式で表される。
Tm=(W+ds/A)V ・・・(1)
但し、W:スリット幅
ds:受光面301aからスリット走行面までの平均距離
A:レンズのFno.(焦点距離f/レンズの有効口径D)
V:スリットの走行速度
【0111】
ここで、先幕群431及び後幕群432が用いられる場合、上記dsは、図9に矢印x1で示すように、先幕群431及び後幕群432の中間位置から受光面301aまでの距離となる。一方、本実施形態のように先幕として電子フォーカルプレーンシャッタを用い、後幕として後幕群432を用いる場合は、先幕の位置=受光面301aとなることから、上記dsは図9に矢印x2で示すように、受光面301aから後幕群432までの距離の1/2程度となる。このように、本実施形態ではdsを小さくすることができるのであるが、光学的ローパスフィルタ304が介在されていることも相俟って、先幕の位置(受光面301a)と後幕の位置(シャッターユニット43における後幕群432の配置位置)とが離間していることに起因して、高速SS時においてレンズのFno.や射出瞳位置によって光束のケラレが発生する。
【0112】
図11に示すように、いま、光軸AX上にレンズ群21及び撮像センサ30が配置され、射出瞳位置が図示の位置に設定されているものとする。この場合、図12に示すように、Fno.が小さいとき(例えばF2)、射出瞳径は大きくなる。この場合、当該射出瞳の最外周上端に位置する一つの点P1から像面へ向けて射出される光束op11〜op13について見ると、受光面301aの上端側へ向かう光束op11は光軸AXに対する傾斜角は比較的緩いが、中央へ向かう光束op12〜下端側へ向かう光束op13では、光軸AXに対する傾斜角が大きくなる。
【0113】
これに対し、図13に示すように、Fno.が大きいとき(例えばF8)、射出瞳径は小さくなる。この場合、当該射出瞳の最外周上端に位置する一つの点P2から像面へ向けて射出される光束op21〜op23について見ると、射出瞳径が縮小されていることに伴い、受光面301aの上端側〜下端側へ向かういずれの光束op21〜op23も、光軸AXに対する傾斜角は比較的緩いものとなる。
【0114】
そして、Fno.が小さいとき(図12)、図14に示すように、先幕と後幕との光学的位置が離間していることに起因して、受光面301aの端部において光束のケラレが発生する。図14において、後幕群432(後幕)と受光面301aにおける電子フォーカルプレーンシャッタによる先幕とで形成されるスリット幅を矢印wで示している。いま、後幕群432の幕体が符号Q1で示す位置に存在し、露光スリットが受光面301aの中央付近に差し掛かっている場合、点P1から受光面301aの中央に向かう光束op12は幕体で遮光されることなく受光面301aに至っている。しかしながら、後幕群432の幕体が符号Q2で示す位置に存在し、露光スリットが受光面301aの下端側付近に差し掛かると、点P1から受光面301aの下端側に向かう光束op13が幕体で遮光されてしまい、受光面301aに届かなくなる。このような光束のケラレにより、露光ムラが発生することになる。
【0115】
一方、Fno.が大きいとき(図12)、図15に示すように、上述のような光束のケラレは発生しにくくなる。すなわち、後幕群432の幕体が符号Q2で示す位置に存在している場合でも、点P2から受光面301aの下端側に向かう光束op23は、光軸AXに対する傾斜角が比較的緩いことから、幕体で遮光されない。以上の通り、高速SS時(スリット露光時)において、Fno.の大小によって、光束ケラレによる露光ムラが発生することがある。言うまでもなく、光束ケラレが発生するか否かは、光学的ローパスフィルタ304の厚さ等の固定的な要因のほか、射出瞳位置の遠近にも依存する。
【0116】
上記[1]、[2]の問題点に鑑みて、本実施形態に係るデジタルカメラ1では、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623を設け、各画素ラインに対するリセットタイミングを制御することで、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を、露光ムラが発生しないような幕速に制御している。図16は、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623の機能構成を示す機能ブロック図である。この電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623は、通信部624、状態情報取得部625、ROM626(記憶手段)及びリセットタイミング制御部627を備えて構成されている。
【0117】
通信部624は、撮影レンズ2(交換レンズ)のレンズ制御部26(通信部262)から、撮影レンズ2の交換時において、その焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態等の状態情報データを取得する。また撮影時において、撮影者により又はAF/AE制御により設定された焦点距離、絞り値等の状態情報データを取得する。これは、上記で説明した通り、光束ケラレが発生するか否かは、撮影光学系の焦点距離や射出瞳位置等に依存性があるため、露光ムラが発生しないリセットタイミングの設定には上記状態情報データの参照が必要となるからである。図17に、撮影レンズ2の交換時、撮影時に交信される状態情報データの一例を示しておく。なお、周辺光量落ちデータは、図22、図23に基づいて後述する周辺光量落ち補正の際に専ら用いられるデータである。
【0118】
状態情報取得部625は、姿勢センサ491、温湿度センサ492及びフォトインタラプタ493から、それぞれデジタルカメラ1の姿勢に関する情報、内部温度及び湿度に関する情報、先幕群431の走行速度に関する情報を取得する。これは、後幕群432の幕速が、かかる要因に9l変動するため、リセットタイミングの設定に際して補正要因として参照するためである。また、状態情報取得部625は、前記通信部624から撮影レンズ2に関する上記状態情報を取得する。
【0119】
ROM626は、上記の各種状態情報に対応付けたリセットタイミングの設定値を記憶する。具体的には、焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態等の状態情報に関連付けられたリセットタイミングの設定値、若しくはリセットタイミングの変化パターンを記憶する。これに加え、デジタルカメラ1の姿勢角度、温度及び湿度、後幕の幕速の変化に関連付けられたリセットタイミングの補正係数をルックアップテーブルとして記憶するものである。
【0120】
リセットタイミング制御部627は、状態情報取得部625から各種状態情報データを取得すると共に、該状態情報データとROM626に格納されているリセットタイミング設定値とを照合し、所定の演算を行うことで、撮像センサ30の各画素ラインにリセット信号を与えるリセットタイミングを設定する。すなわち、リセットタイミング制御部627は、図8に基づいて先に説明したように、電子フォーカルプレーンシャッタ動作を撮像センサ30に実行させるため、第1画素ライン32a〜第N画素ライン32Nに順次与えられるリセット信号φVrの、リセットタイミングを制御する。これにより、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を制御する。
【0121】
図18は、かかるリセットタイミングの制御例を模式的に示すチャートである。ここでは、リセットパルス(リセット信号)の立ち上がり部の間隔で各画素ライン間のリセットタイミングが設定される例を示している。図18(a)は、各画素ライン間のリセットタイミングが一定とされている例を示している。この場合、先幕の幕速はリセットパルスの立ち上がり間隔に依存した一定速度となる。このようなリセットタイミングは、例えば低速SS時等に適用される。
【0122】
図18(b)は、各画素ライン間のリセットタイミングが、画枠始端側に位置する画素ラインからから終端側に位置する画素ラインに向けて徐々に短くなるように設定された例を示している。この場合、先幕の幕速は、画枠始端側から終端側に向けて徐々に加速されるようになる。また、図18(c)は、リセットタイミングが、複数の画素ライン群間において、画枠始端側から終端側に向けて徐々に短くなるように設定された例を示している。この場合、先幕の幕速は、画枠始端側から終端側に向けて段階的に加速されるようになる。図18(b)、(c)に示したようなリセットタイミングは、例えば高速SS時(スリット露光時)等に適用される。これにより、図10に示したメカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕速特性に、先幕の幕速特性を略合致させることができるようになる。因みに、図18(b)及び(c)に示したリセットタイミングを比較すると、より正確な制御を目指す場合は図18(b)のリセットタイミングが有利であり、制御の簡素化を目指す場合は図18(c)のリセットタイミングが有利である。
【0123】
このように、例えばシャッタスピードに応じてリセットタイミングを変更することで、上記[1]項で述べた、高速SS時における先幕と後幕との幕速の相違に起因する露光ムラの問題が解消できるようになる。また、上記[2]項で述べた、光束ケラレの問題も、射出瞳位置、シャッタスピード、絞り値等の状態情報に基づき、例えばケラレが発生しないように終端側における先幕の幕速が後幕の幕速に比べて十分早くなるようなリセットタイミングを設定することで解消することができる。
【0124】
リセットタイミング制御部627は、少なくとも図18(a)に示すような一定のリセットタイミングの状態から、図18(b)又は(c)に示したような徐々にタイミングが短くなるリセットタイミングに二者択一的に変更できるものであれば良い。しかし、木目の細かいリセットタイミング制御が行えるよう、各画素ライン間のリセットタイミングを自在に変更(少なくとも所定の時間間隔とされた第1のリセットタイミングから、これとは異なる時間間隔とされた第2のリセットタイミングに変更)できるようにすることが望ましい。或いは、多数のリセットタイミング変化パターン(少なくとも所定の第1の変化パターンと、これとは異なる第2の変化パターン)を予め準備しておき、撮影状況等に応じて最適な変化パターンを選択することが望ましい。これにより、焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態等の状態情報に応じて最適なリセットタイミングが設定できるようになり、また、デジタルカメラ1の姿勢角度、温度及び湿度、後幕の幕速の変化に応じて、前記リセットタイミングを補正することが可能となり、より一層露光ムラの発生を抑止できるようになる。
【0125】
(デジタルカメラの動作の説明)
次に、本実施形態にかかるデジタルカメラ1による一連の撮像処理動作を、先に説明した図面を参照しながら説明する。図19は、全体的な撮像処理動作を示すフローチャートである。メインスイッチ105(図2参照)が投入され、デジタルカメラ1の電源がONとされると(ステップS1)、メイン制御部62(電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623)の通信部624(図6、図16参照)は、撮影レンズ2のレンズ制御部26と交信し、装着されている撮影レンズ2のレンズ情報を取得する(ステップS2)。
【0126】
その後、メイン制御部62により、撮影レンズ2の交換が為されたか否かが確認される(ステップS3)。もし、レンズ交換がなされた場合(ステップS3でYES)、ステップS2と同様に交信を行ってレンズ情報を取得すると共に、取得されたレンズ情報にデータ更新する処理が行われる(ステップS4)。レンズ交換がなされない場合は(ステップS3でNO)、ステップS4はスキップされる。そして、ステップS2若しくはステップS4で取得されたレンズ情報に基づいて、焦点距離、絞り値等の設定が行われる(ステップS5)。ここでの設定は最終的なものではなく、撮影動作を行うに際してのデフォルト値的な設定であって、プログラム撮影が行われる場合は特に設定動作が行われない。
【0127】
続いてメイン制御部62は、シャッターボタン13の半押し操作(S1:ON)が行われたか否かを判定し(ステップS6)、その半押し操作が行われていない場合には、該半押し操作が行われるまで待機する(ステッS6でNO)。そして、シャッターボタン13の半押し操作が行われると(ステップS6でYES)、メイン制御部62のAF/AE制御部621により、被写体の輝度に基づいたAE処理(シャッタスピード及び絞り値の決定)、位相差検出方式によるAF処理(合焦位置の決定)が実行される(ステップS7)。この際、振れ補正制御部622による振れ補正制御も実行される。そして、シャッターボタン13の全押し操作(S2:ON)が行われたか否かを判定し(ステップS8)、シャッターボタン13の全押し操作が行われていない場合には(ステップS8でNO)、ステップS7の処理に戻る。
【0128】
一方、シャッターボタン13の全押し操作が行われると(ステップS8でYES)、メイン制御部62は、AE処理及びAF処理後の焦点距離、絞り値、合焦距離にデータを更新し(ステップS9)、さらに、そのレンズ状態に従ったパラメータを設定し、AE、AFを実行する(ステップS10)。ここで、前記焦点距離、絞り値、合焦距離等は、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623の状態情報取得部625により、撮影時における状態情報データとして取得される。そして、リセットタイミング制御部627により、ROM626に格納されている情報を参照しつつ、電子フォーカルプレーンシャッタの幕速を決定付けるリセットタイミングの設定がなされる(ステップS11)。この際、姿勢センサ491、温湿度センサ492及びフォトインタラプタ493によるセンシング情報も参照され、前記リセットタイミングに所要の補正がなされる。
【0129】
しかる後、先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタ、及び後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタ(後幕群432)が順次動作され、撮像センサ30が露光される(シャッタ動作;ステップS12)。そして、タイミング制御回路51から与えられるタイミングパルスに従って画素信号が順次読み出され、AFE5に出力されて前記画素信号がデジタル信号に変換され、画像処理部61で前記デジタル信号に所定の画像処理が施された後、メモリカード67にその画像信号を記録させるという、一連の画像記録動作が実行される(ステップS13)。続いて、メイン制御部62は、次の撮影指示が与えられるか否かを確認し(ステップS14)、次の撮影が行われる場合は(ステップS14でYES)、ステップS3〜S13までの処理を繰り返し行わせる。一方、次の撮影が行われない場合は(ステップS14でNO)、所定時間経過後に電源をオートオフし(ステップS15)、処理を終了させる。
【0130】
続いて、上記ステップS11の、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623によるリセットタイミングの設定動作の一例(リセットタイミング設定1)について、図20に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、図21は、リセットタイミング設定1によって設定される先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速変化パターン(=リセットタイミング変化パターン)71〜74を、後幕の幕速変化パターン70に対比付けて模式的に示す図である。図21において、縦軸はシャッターユニット43の画枠43Bにおける位置を示し、上端が幕体の移動始端側、下端が移動終端側に相当する。また、横軸は時間を示し、この横軸に対する傾きが大きいほど、幕速が早い部分を示している。幕速変化パターン70に付している時刻tsは幕体が画枠内において移動を開始する時刻であり、時刻teは移動が完了する時刻である。
【0131】
処理が開始されると、先ず射出瞳位置が確認される(ステップS21)。これは、先に図12〜図15で説明したように、射出瞳位置の遠近によって光束ケラレの発生状況が異なるからである。その後、AE制御、AF制御後の焦点距離、絞り値、合焦距離等から導かれるシャッタ速度が低速(低速SS)のカテゴリーであるか否かが判定される(ステップS22)。
【0132】
低速SSである場合(ステップS22でYES)、先幕と後幕との幕速を厳格に同期させる必要がないことから、先幕として「電子シャッタ1」、すなわち幕速が始端側から終端側にかけて一定である幕速変化パターン71が選択される(ステップS23)。メカニカルフォーカルプレーンシャッタである後幕は、図21に示すように、前半部701が遅く、中間部(画枠中央部付近)702でだんだん早くなり、後半部703に至るに従い加速されるという幕速変化パターン70を有している。なお、図21では実際は前半部701と中間部702との間、中間部702と後半部703との間に折曲部が存在するように描いているが、これは先幕の幕速変化パターン71〜74との対比を容易とするためであり、実際は折曲部が存在しない加速曲線である。従って、「電子シャッタ1」が選択された場合、後幕の幕速変化パターン70と先幕の幕速変化パターン71とは同期しないこととなるが、低速SS時の長秒露光では露光ムラを生じるには至らない。
【0133】
一方、低速SSでない場合(ステップS22でNO)、すなわち高速SSでスリット露光が行われるような場合、先幕と後幕の幕速を同期させる必要が生じる。この場合、先ず絞り値(Fno.)が所定値以上であるか否かが判定される(ステップS24)。これは、先幕位置と後幕位置とが光学的に離間していることに起因する光束ケラレの発生を、先のステップS21で取得した射出瞳位置を参照して予測するためである。
【0134】
絞り値が所定値以上(例えばFno.=F8)である場合(ステップS24でYES)、図15で説明したように光束ケラレが発生しないことから、後幕の幕速変化パターン70に同期させることだけが考慮された「電子シャッタ2」が選択される(ステップS25)。この「電子シャッタ2」の幕速変化パターン72は、その前半部721、中間部722及び後半部723とも、幕速変化パターン70の前半部701、中間部702及び後半部703と同一とされている。
【0135】
一方、絞り値が所定値以下である場合(ステップS24でNO)、図14で説明したように光束ケラレが発生する可能性があり、スリット露光におけるスリット幅に応じて先幕の幕速を設定する必要があることから、スリット幅が所定値以上であるか否かが判定される(ステップS26)。スリット幅が比較的広い場合(ステップS26でYES)、「電子シャッタ3」が選択される(ステップS27)。この「電子シャッタ3」の幕速変化パターン73は、後幕の幕速変化パターン70よりも加速度が大きいものである。すなわち、前半部731の幕速は幕速変化パターン70の前半部701の幕速と略同一であるが、中間部732及び後半部733の幕速は、中間部702及び後半部703よりも早く設定されている。これにより画枠終端側において、後幕の幕体で光束が遮光される前に先幕を走行させてしまうことができ、光束ケラレを抑止できる。なお、スリット幅が相当広いものである場合は、「電子シャッタ2」を採用するようにしても良い。
【0136】
また、スリット幅が比較的狭い場合(ステップS26でNO)、より顕著に光束ケラレが発生する可能性があることから、幕速変化パターン70よりも一層加速度が大きい「電子シャッタ4」が選択される(ステップS28)。この「電子シャッタ4」の幕速変化パターン74は、前半部741の幕速は幕速変化パターン70の前半部701の幕速と略同一であるが、中間部742及び後半部743の幕速は、中間部702及び後半部703よりも一層早く、しかも加速タイミングも早く設定されている。これにより、スリット幅が狭い場合であっても、確実に光束ケラレを抑止できるようになる。
【0137】
以上説明した電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623の機能を利用して、レンズ群21の周辺光量落ちを是正することもできる。図22は、電子フォーカルプレーンシャッタ制御部623を周辺光量落ち対策として用いる場合(リセットタイミング設定2)の動作を示すフローチャートである。また図23は、図21と同様に、リセットタイミング設定2によって設定される先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速変化パターン75〜77を、後幕の幕速変化パターン70に対比付けて模式的に示す図である。
【0138】
処理が開始されると、先ず撮影レンズのレンズ状態(装着されている撮影レンズ2の周辺光量落ちデータ等)が確認される(ステップS31)。これは、レンズによって周辺光量落ちの度合いが異なるからである。そして、確認されたレンズ状態においてFno.が「小」のカテゴリー(F2程度)に属するか否かが判定され(ステップS32)、「小」のカテゴリーである場合(ステップS32でYES)、被写体像は明るいものの、画像中央部と周辺部とで光量差(周辺部が比較的暗い)が生じ易くなる。従って、この場合は周辺光量レベル「低」と判定され(ステップS33)、「電子シャッタ5」が選択される(ステップS34)。
【0139】
この「電子シャッタ5」の幕速変化パターン75は、その前半部751の幕速が、幕速変化パターン70の前半部701の幕速よりも遅いものとされている。ここでの「遅い」とは、後幕の移動開始時刻tsを基準とした場合に、先幕と後幕とを同期移動させる場合に比べて早い時刻から先幕の移動を開始させるという意味である。これにより、画枠始端側における撮像センサ30の露光時間を長く確保することができ、当該部分の光量落ちを補正することができる。そして、幕速変化パターン75の中間部752の幕速は、中間部702と略同速されているが、後半部753の幕速は後半部703よりも早いものとされている。これも、画枠終端側における撮像センサ30の露光時間を長く確保するためである。以上のように、かかる幕速変化パターン75を採用することで、撮像センサ30の周辺部に対する露光時間を長く確保でき、周辺光量落ちを抑止することができる。
【0140】
一方、Fno.が「小」のカテゴリーに属さない場合(ステップS32でNO)、続いてFno.が「中」のカテゴリー(F5程度)に属するか否かが判定される(ステップS35)。「中」のカテゴリーである場合(ステップS35でYES)、若干の周辺光量落ちが生じ得ることから、この場合は周辺光量レベル「中」と判定され(ステップS36)、「電子シャッタ6」が選択される(ステップS37)。
【0141】
この「電子シャッタ6」の幕速変化パターン76も、その前半部761の幕速が、幕速変化パターン70の前半部701の幕速よりも遅いものとされている。但し、幕速変化パターン75の前半部751と比較すると、これよりは早い幕速とされている。これは、周辺光量落ちの程度が、周辺光量レベル「中」のときは比較的少ないからである。そして、幕速変化パターン76の中間部762の幕速は、中間部702と略同速されているが、後半部763の幕速は後半部703よりも早いものとされている。但し、この後半部763の幕速は、幕速変化パターン75の後半部753よりは遅く設定されている。
【0142】
これに対し、Fno.が「中」のカテゴリーに属さない場合(ステップS35でNO)、周辺光量落ちは殆ど生じないことから、周辺光量レベル「高」と判定され(ステップS38)、「電子シャッタ7」が選択される(ステップS39)。この「電子シャッタ7」の幕速変化パターン77は、その前半部771、中間部772及び後半部773とも、幕速変化パターン70の前半部701、中間部702及び後半部703と同一とされている。これは、事実上周辺光量落ちを考慮しなくとも良いからである。
【0143】
以上、本発明の実施態様につき説明したが、かかる実施形態は本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各種構成の追加、変更を伴うことが可能である。例えば、次のような変形実施態様を取ることができる。
【0144】
(1)上記実施形態では、図5において、一つの垂直走査回路37と一つの水平走査回路38が備えられたCMOS型の撮像センサ30を例示したが、垂直走査回路37及び水平走査回路38を複数備える分割フィールド読み出し方式のCMOSセンサを用いるようにしても良い。この場合、例えば幕体の移動方向に沿ったフィールド分割ラインを有しているときは、同じライン上に並ぶ分割フィールドの各画素ラインに対して、同期したリセットタイミングで各々リセット信号を与えるようにすれば良い。
【0145】
(2)後幕の先幕に対するシンクロタイミングの取り方は任意であるが、例えばシャッタ駆動制御部43Aにおいて、メイン制御部62を介してタイミング制御回路51で生成されたリセット信号に関する情報(例えばパルスカウント数)を取得して、かかる情報に基づき後幕としてのメカニカルフォーカルプレーンシャッタの駆動開始タイミングを設定することができる。
【0146】
(3)上記実施形態では、本発明の撮像装置の例としてデジタルカメラ1を例示して説明したが、CMOS撮像センサを用いたデジタルビデオカメラ、撮像部を備えたセンシング装置等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0147】
【図1】本発明に係る撮像ユニットが組み込まれたデジタルカメラ(撮像装置)の正面外観図である。
【図2】図1に示すデジタルカメラの背面図である。
【図3】デジタルカメラの内部構造を示す断面図である。
【図4】シャッターユニットの構成を示す分解斜視図である。
【図5】シャッターユニットに対するフォトインタラプタ(速度検出センサ)の配置状況の一例を示す平面図である。
【図6】カメラ本体に撮影レンズが装着された状態でのデジタルカメラ全体の電気的な構成を示すブロック図である。
【図7】撮像センサの回路構成を概略的に示す回路ブロック図である。
【図8】電子フォーカルプレーンシャッタ動作を説明するための模式図である。
【図9】撮像センサとシャッターユニットとの配置関係を示す断面図である。
【図10】先幕及び後幕の双方とも、メカニカルフォーカルプレーンシャッタを使用した場合における幕速特性を示すグラフである。
【図11】射出瞳位置と撮像センサ及びシャッターユニットとの関係を示す断面図である。
【図12】撮像センサへの光束の入射状況を示す断面図である。
【図13】撮像センサへの光束の入射状況を示す断面図である。
【図14】撮像センサへの光束の入射状況を示す断面図である。
【図15】撮像センサへの光束の入射状況を示す断面図である。
【図16】電子フォーカルプレーンシャッタ制御部の機能構成を示す機能ブロック図である。
【図17】撮影レンズの交換時、撮影時に交信される状態情報データの一例を示す表形式の図である。
【図18】リセットタイミングの制御例を模式的に示すチャートである。
【図19】全体的な撮像処理動作を示すフローチャートである。
【図20】リセットタイミングの設定動作の一例を示すフローチャートである。
【図21】図20のリセットタイミング設定動作による先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速変化パターンを、後幕の幕速変化パターンに対比付けて模式的に示す図である。
【図22】リセットタイミングの設定動作の一例(周辺光量落ち対策)を示すフローチャートである。
【図23】図22のリセットタイミング設定動作による先幕としての電子フォーカルプレーンシャッタの幕速変化パターンを、後幕の幕速変化パターンに対比付けて模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0148】
1 デジタルカメラ(撮像ユニット、撮像装置)
2 撮影レンズ(交換可能な撮影レンズ)
26 レンズ制御部
261 メモリ部
30 撮像センサ(撮像素子)
31(31a−1〜31d−3) 画素
32(32a〜32c) 画素ライン
43 シャッターユニット(メカニカルフォーカルプレーンシャッタ)
43A シャッタ駆動制御部(第2制御手段)
43B 画枠
431 先幕群(幕体)
432 後幕群(幕体)
491 姿勢センサ
492 温湿度センサ
493 フォトインタラプタ(速度検出センサ)
5 AFE
51 タイミング制御回路
61 画像処理部
62 メイン制御部
623 電子フォーカルプレーンシャッタ制御部(第1制御手段)
624 通信部
625 状態情報取得部
626 ROM(記憶手段)
627 リセットタイミング制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マトリクス状に配列された複数の画素を有するCMOS型の撮像素子と、
前記撮像素子の所定の画素ラインと略直交する方向に移動する幕体を備え、前記撮像素子に導かれる光の遮断動作を行うメカニカルフォーカルプレーンシャッタと、
前記撮像素子の各画素にリセット動作を行わせるリセット信号を与える制御を行う第1制御手段と、
前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタの幕体の移動動作を制御する第2制御手段とを備え、
前記第1制御手段は、前記撮像素子における露光動作を開始させるべく各画素に前記リセット信号を与えるものであり、前記第2制御手段は、前記撮像素子における露光動作を終了させるべく前記幕体を移動させる制御を行うものであって、
前記第1制御手段は、前記画素ライン単位で前記リセット信号を各画素に与えることが可能とされていると共に、前記リセット信号を各画素ラインに順次供給するリセットタイミングを、所定の画素ライン間で変化させることが可能とされていることを特徴とする撮像ユニット。
【請求項2】
前記第1制御手段は、前記幕体の前記移動方向の始端側に位置する画素ラインから順次前記移動方向の終端側に位置する画素ラインに向けて、それぞれの画素ラインが備える各画素にリセット動作を行わせるものであって、
1つの画素ライン間又は複数の画素ライン群間の前記リセットタイミングが、徐々に短くなるよう変化させることを特徴とする請求項1に記載の撮像ユニット。
【請求項3】
前記第1制御手段は、所定の画素ライン間のリセットタイミングについて、少なくとも所定の時間間隔とされた第1のリセットタイミングから、この第1のリセットタイミングとは異なる時間間隔とされた第2のリセットタイミングに変更することが可能とされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像ユニット。
【請求項4】
前記第1制御手段は、前記幕体の前記移動方向の始端側に位置する画素ラインから前記移動方向の終端側に位置する画素ラインに向けての前記リセットタイミングの変化パターンを、所定の第1の変化パターンから、これとは異なる第2の変化パターンに変更することが可能とされていることを特徴とする請求項3に記載の撮像ユニット。
【請求項5】
前記第1制御手段は、設定されたシャッタ速度に応じて前記リセットタイミングを変更させることを特徴とする請求項3又は4に記載の撮像ユニット。
【請求項6】
被写体光を前記撮像素子に導く撮像光学系を形成する撮影レンズを有し、
前記第1制御手段は、前記撮影レンズの撮影時における状態情報を取得し、該状態情報に基づいて前記リセットタイミングを変更させることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の撮像ユニット。
【請求項7】
前記撮影レンズが交換可能な撮影レンズであり、該撮影レンズが備えるメモリ部に所定の状態情報が記憶されている場合において、
前記第1制御手段は、前記撮影レンズのメモリ部から前記状態情報を読み出すことで、前記リセットタイミングを変更させるための状態情報を取得することを特徴とする請求項6に記載の撮像ユニット。
【請求項8】
前記状態情報は、焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態から選ばれる1又は複数の情報を含む状態情報であることを特徴とする請求項6又は7に記載の撮像ユニット。
【請求項9】
前記状態情報に対応付けてリセットタイミングの設定値を記憶する記憶手段を備え、
前記第1制御手段は、取得された状態情報に応じた前記リセットタイミングの設定値を前記記憶手段から読み出して、前記リセットタイミングを変更させることを特徴とする請求項6〜8のいずれかに記載の撮像ユニット。
【請求項10】
前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタの動作状態に関連する所定のパラメータを検知する検知手段を備え、
前記第1制御手段は、前記検知手段により検知された検知情報に基づいて、前記リセットタイミングを変更させることを特徴とする請求項3〜9のいずれかに記載の撮像ユニット。
【請求項11】
前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタが、先幕と後幕とを有し、これら先幕及び後幕が備える幕体の移動動作が前記第2制御手段により制御されるよう構成されている場合において、
前記先幕が備える幕体の走行速度を検出する速度検出センサを具備することを特徴とする請求項10に記載の撮像ユニット。
【請求項12】
前記メカニカルフォーカルプレーンシャッタが、前記第2制御手段により制御される幕体のみで構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の撮像ユニット。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の撮像ユニットと、該撮像ユニットの駆動制御を行う駆動制御手段とを備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2007−159061(P2007−159061A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−355363(P2005−355363)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】