説明

撮像レンズ

【課題】よりコンパクトな構成でありながら高い結像性能を発現する撮像レンズを提供する。
【解決手段】この撮像レンズは、物体側に凸面を向けた正の第1レンズG1と、物体側に凹面を向けた負のメニスカス形状の第2レンズG2と、正の第3レンズG3と、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズG4とを物体側から順に備え、条件式(1)〜(5)を全て満足するように構成したので、コンパクト化を実現すると共に高い結像性能を確保することができる。条件式(1)は第1レンズのパワーを規定するものであり、条件式(2),(3)はレンズの分散を規定するものであり、条件式(4)は第2レンズのパワーを規定するものであり、条件式(5)は第3レンズのパワーを規定するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いたデジタルカメラや、銀塩フィルムを用いたカメラなどの小型の撮像装置への搭載に好適な固定焦点の撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータの一般家庭等への普及に伴い、撮影した風景や人物像等の画像情報をパーソナルコンピュータに入力することができるデジタルスチルカメラ(以下、単にデジタルカメラという。)が急速に普及しつつある。また携帯電話の高機能化に伴い、携帯電話に画像入力用のモジュールカメラ(携帯用モジュールカメラ)が搭載されることも多くなってきている。
【0003】
これらの撮像装置では、CCDやCMOSなどの撮像素子が用いられている。このような撮像装置は、近年、撮像素子の小型化が進んでいることから、装置全体としても非常に小型化が図られてきている。また、撮像素子の高画素化も進んでおり、高解像、高性能化が図られてきている。
【0004】
このような小型化した撮像装置に用いられる撮像レンズとしては、例えば以下の特許文献記載のものがある。特許文献1,2には、3枚構成の撮像レンズがそれぞれ記載されている。特許文献3〜6には、4枚構成の撮像レンズがそれぞれ記載されている。特許文献3記載の撮像レンズでは、物体側から2番目のレンズと3番目のレンズとの間に絞りが配置され、特許文献4記載の撮像レンズでは、最も物体側に絞りが配置されている。特許文献5,6記載の撮像レンズでは、最も物体側あるいは物体側から1番目のレンズと2番目のレンズとの間に絞りが配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−48516号公報
【特許文献2】特開2002−221659号公報
【特許文献3】特開2004−302057号公報
【特許文献4】特開2005−24581号公報
【特許文献5】特開2005−4027号公報
【特許文献6】特開2005−4028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように近年の撮像素子は、小型化および高画素化が進んでおり、それに伴って、特にデジタルカメラ用の撮像レンズには、高い解像性能と構成のコンパクト化が求められている。一方、携帯用モジュールカメラの撮像レンズには従来、コスト面とコンパクト性が主に要求されていたが、最近では携帯用モジュールカメラにおいても撮像素子の高画素化が進む傾向にあり、性能面に対する要求も高くなってきている。
【0007】
このため、コスト、結像性能、およびコンパクト性の面で総合的に改善された多種多様なレンズの開発が望まれており、例えば、携帯用モジュールカメラにも搭載可能なコンパクト性を確保しつつ、性能面ではデジタルカメラへの搭載をも視野に入れた、ローコストで高性能な撮像レンズの開発が望まれている。
【0008】
このような要求に対しては、例えば、コンパクト化およびローコスト化を図るためにレンズ枚数を3枚または4枚構成とし、高性能化を図るために、非球面を積極的に用いることが考えられる。この場合、非球面はコンパクト化および高性能化に寄与するが、製造性の点で不利でありコスト高になり易いので、その使用は製造性を十分考慮したものとすることが望ましい。上記各特許文献記載のレンズは、3枚または4枚構成で非球面を用いた構成となっているが、例えば結像性能とコンパクト性との両立という点で不十分なところがある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、よりコンパクトな構成でありながら高い結像性能を発現する撮像レンズを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の撮像レンズは、物体側に凸面を向けた正のパワーを有する第1レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを有する第2レンズと、正のパワーを有する第3レンズと、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを物体側から順に備え、かつ、以下の条件式(1)〜(5)を全て満足するように構成されたものである。
【0011】
本発明の第2の撮像レンズは、物体側に凸面を向けた正のパワーを有する第1レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを有する第2レンズと、正のパワーを有する第3レンズと、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを物体側から順に備え、第1レンズと第2レンズとの間に空気間隔を有し、かつ以下の条件式(5)を満足するように構成されたものである。
【0012】
本発明の第3の撮像レンズは、物体側に凸面を向けた正のパワーを有する第1レンズと、物体側に凹面を向けた負のパワーを有する第2レンズと、正のパワーを有する第3レンズと、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを物体側から順に備え、かつ以下の条件式(1),(5)を満足するように構成されたものである。
【0013】
但し、第1レンズの焦点距離をf1、全体の焦点距離をf、第1レンズのd線に対する屈折率をn1、第1レンズのd線に対するアッベ数をν1、第2レンズの焦点距離をf2、第3レンズの焦点距離をf3とした。
【0014】
0.7<f1/f<1.1 ……(1)
1.45<n1<1.6 ……(2)
ν1>60 ……(3)
0.8<|f2/f|<1.8 ……(4)
1.9<f3/f<20 ……(5)
本発明の第1ないし第3の撮像レンズでは、4枚という少ないレンズ枚数によってコンパクト化が可能になると共に、高い結像性能が得られる。特に、本発明の第1の撮像レンズでは、例えば500万画素の撮像素子を搭載したデジタルカメラにも対応可能な結像性能が得られる。本発明の第1の撮像レンズでは、第1レンズが条件式(1)を満足するようなパワーを有しているので大型化が抑制されると共に球面収差の増大が抑制される。さらに、第1レンズが条件式(2),(3)を満足するようなレンズ材料によって形成されているので、軸上色収差が低減される。さらに、条件式(4),(5)を満足するように構成されているので、球面収差やコマ収差等の高次収差が良好に補正されるうえ、コンパクト化が実現される。
【0015】
本発明の第1の撮像レンズでは、さらに以下の条件式(6)を満たすようにするとよい。但し、bfは第4レンズの像側の面から撮像面まで(バックフォーカス)の距離(空気換算)であり、TLは第1レンズの物体側の面から撮像面までの距離(但し、バックフォーカスは空気換算)である。これを満足するようにすると、より十分なバックフォーカスが確保される。
【0016】
bf/TL>0.2 ……(6)
本発明の第1の撮像レンズでは、さらに以下の条件式(7)を満たすようにするとよい。但し、Ihは撮像面での最大像高である。これを満足するようにすると、さらなる小型化が達成される。
【0017】
TL/(2×Ih)<1.1 ……(7)
本発明の第1の撮像レンズでは、第1レンズから第4レンズが、それぞれ少なくとも1つの非球面を含んでいることが望ましい。こうすることで、高い収差性能が比較的容易に得られる。また、第1レンズを光学ガラスによって構成すると共に第2レンズから第4レンズを全て樹脂材料によって構成した場合には、諸収差(特に色収差)の低減と共に軽量化も実現される。
【0018】
本発明の第1の撮像レンズでは、さらに、第1レンズにおける光軸上の物体側の面位置と、第1レンズにおける光軸上の像側の面位置との間に絞りを配置するようにするとよい。このようにすると、全長の短縮化に有利となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1ないし第3の撮像レンズによれば、物体側に凸面を向けた正の第1レンズと、物体側に凹面を向けた負の第2レンズと、正の第3レンズと、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとを物体側から順に備え、かつ、所定の条件式を満足するようにしたので、コンパクト化を実現すると共に高い結像性能を確保することができる。特に、本発明の第1の撮像レンズによれば、条件式(1)〜(5)を全て満足するようにしたので、よりコンパクト化に有利になると共に、より高い結像性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第1の構成例を示すものであり、実施例1に対応する断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第2の構成例を示すものであり、実施例2に対応する断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第3の構成例を示すものであり、実施例3に対応する断面図である。
【図4】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第4の構成例を示すものであり、実施例4に対応する断面図である。
【図5】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第5の構成例を示すものであり、実施例5に対応する断面図である。
【図6】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第6の構成例を示すものであり、実施例6に対応する断面図である。
【図7】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第7の構成例を示すものであり、実施例7に対応する断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第8の構成例を示すものであり、実施例8に対応する断面図である。
【図9】本発明の一実施の形態としての撮像レンズにおける第9の構成例を示すものであり、実施例9に対応する断面図である。
【図10】実施例1の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図11】実施例1の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図12】実施例2の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図13】実施例2の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図14】実施例3の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図15】実施例3の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図16】実施例4の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図17】実施例4の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図18】実施例5の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図19】実施例5の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図20】実施例6の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図21】実施例6の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図22】実施例7の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図23】実施例7の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図24】実施例8の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図25】実施例8の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図26】実施例9の撮像レンズにおける基本レンズデータを示す説明図である。
【図27】実施例9の撮像レンズにおける非球面に関するデータを示す説明図である。
【図28】実施例1〜9の各撮像レンズにおける式(1)〜(7)に対応する数値を示す説明図である。
【図29】実施例1の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図30】実施例2の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図31】実施例3の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図32】実施例4の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図33】実施例5の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図34】実施例6の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図35】実施例7の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図36】実施例8の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【図37】実施例9の撮像レンズにおける球面収差、非点収差およびディストーションを示す収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明における一実施の形態としての撮像レンズの第1の構成例を示している。この構成例は、後述の第1の数値実施例(図10,図11)のレンズ構成に対応している。また、図2〜図9は、それぞれ本実施の形態における第2〜第9の構成例を示している。第2の構成例は後述の第2の数値実施例(図12,図13)のレンズ構成に対応し、第3の構成例は後述の第3の数値実施例(図14,図15)のレンズ構成に対応し、第4の構成例は後述の第4の数値実施例(図16,図17)のレンズ構成に対応し、第5の構成例は後述の第5の数値実施例(図18,図19)のレンズ構成に対応し、第6の構成例は後述の第6の数値実施例(図20,図21)のレンズ構成に対応し、第7の構成例は後述の第7の数値実施例(図22,図23)のレンズ構成に対応し、第8の構成例は後述の第8の数値実施例(図24,図25)のレンズ構成に対応し、第9の構成例は後述の第9の数値実施例(図26,図27)のレンズ構成に対応している。図1〜図9において、符号Siは、最も物体側の構成要素の面を1番目として、像側(結像側)に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目の面を示す。符号Riは、面Siの曲率半径を示す。符号Diは、i番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸Z1上の面間隔を示す。なお、各構成例共に基本的な構成は同じなので、以下では、図1に示した撮像レンズの構成例を基本にして説明し、必要に応じて図2〜図9の構成例についても説明する。
【0023】
この撮像レンズは、例えば、CCDやCMOSなどの撮像素子を用いた携帯用モジュールカメラやデジタルカメラ等に搭載されて使用されるものである。この撮像レンズは、光軸Z1に沿って、絞りSt、第1レンズG1、第2レンズG2、第3レンズG3および第4レンズG4が、物体側より順に配設された構成となっている。この撮像レンズの結像面(撮像面)Simgには、CCDなどの撮像素子(図示せず)が配置される。撮像素子の撮像面付近には、撮像面を保護するためのカバーガラスCGが配置されている。第4レンズG4と結像面(撮像面)との間には、カバーガラスCGのほか、赤外線カットフィルタやローパスフィルタなどの他の光学部材が配置されていても良い。
【0024】
第1レンズG1は、近軸近傍(光軸近傍)において物体側に凸面を向けたメニスカス形状をなし、かつ、正のパワーを有している。ただし、第6,第9の構成例のように、第1レンズG1は、近軸近傍において両凸形状となっていてもよい。第1レンズG1は、例えば物体側の面S1および像側の面S2のうちの少なくとも一方が非球面であることが望ましく、特に、両面S1,S2が非球面であることが望ましい。このような第1レンズG1は、分散の小さな光学ガラスによって構成されている。また、絞りStについては、撮像素子への入射角を小さくするためには、なるべく物体側寄りの位置に配置されているほうが有利である。一方で、絞りStが面S1よりも物体側に位置すると、その分(絞りStと面S1との距離)が光路長として加算されてしまうので全体構成の小型化(低背化)の面で不利となる。このような理由から、絞りStは、光軸Z1上における面S1と面S2との間に配置されることが望ましい。
【0025】
第2レンズG2は、近軸近傍において物体側に凹面を向けたメニスカス形状をなし、かつ、負のパワーを有している。ただし、第9の構成例のように、第2レンズG2は、近軸近傍において両凹形状となっていてもよい。第2レンズG2は、例えば物体側の面S3および像側の面S4のうちの少なくとも一方が非球面であることが望ましく、特に、両面S3,S4が非球面であることが望ましい。
【0026】
第3レンズG3は、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状をなし、かつ、正のパワーを有している。第3レンズG3は、例えば物体側の面S5および像側の面S6のうちの少なくとも一方が非球面であることが望ましい。特に、有効径の範囲内において、面S5が周辺に近づくほど正のパワーが弱くなる非球面形状であり、面S6が有効径の範囲内で周辺に近づくほど負のパワーが弱くなる非球面形状であることが望ましい。すなわち、物体側の面S5が、近軸近傍では凸形状でありながら周辺部では凹形状となる非球面であり、像側の面S6が、近軸近傍では凹形状でありながら周辺部では凸形状となる非球面であることが望ましい。
【0027】
第4レンズG4は、近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状をなし、例えば正のパワーを有している。第4レンズG4は、例えば物体側の面S7および像側の面S8のうちの少なくとも一方が非球面であることが望ましい。特に、有効径の範囲内において、面S7が周辺に近づくほど正のパワーが弱くなる非球面形状であり、面S8が周辺に近づくほど負のパワーが弱くなる非球面形状であることが望ましい。すなわち、物体側の面S7が、近軸近傍では凸形状でありながら周辺部では凹形状となる非球面であり、像側の面S8が、近軸近傍では凹形状でありながら周辺部では凸形状となる非球面であることが望ましい。
【0028】
また、第1レンズG1と比べて複雑な形状を有し、かつサイズの大きな第2レンズG2〜第4レンズG4は、全て樹脂材料により構成されている。これにより、複雑な非球面形状が高精度に形成されると共に、撮像レンズ全体としての軽量化が図られている。
【0029】
さらに、この撮像レンズは以下の条件式(1)〜(5)を全て満足するように構成されている。但し、第1レンズG1の焦点距離をf1、全体の焦点距離をf、第1レンズG1のd線に対する屈折率をn1、第1レンズG1のd線に対するアッベ数をν1、第2レンズG2の焦点距離をf2、第3レンズG3の焦点距離をf3としている。
【0030】
0.7<f1/f<1.1 ……(1)
1.45<n1<1.6 ……(2)
ν1>60 ……(3)
0.8<|f2/f|<1.8 ……(4)
1.9<f3/f<20 ……(5)
この撮像レンズでは、さらに以下の条件式(6)を満たすようにするとよい。但し、bfは第4レンズG4の像側の面S7から撮像面Simgまで(バックフォーカス)の距離(空気換算)であり、TLは第1レンズG1の物体側の面S1から撮像面Simgまでの距離(但し、バックフォーカスは空気換算)である。
【0031】
bf/TL>0.2 ……(6)
この撮像レンズでは、さらに以下の条件式(7)を満たすようにするとよい。但し、Ihは撮像面での最大像高である。
【0032】
TL/(2×Ih)<1.1 ……(7)
次に、以上のように構成された本実施の形態の撮像レンズの作用および効果を説明する。
【0033】
本発明の撮像レンズでは、第1レンズG1〜第4レンズG4の各レンズ面を偶数次および奇数次の非球面係数により規定される非球面形状とすることで、4枚という少ないレンズ枚数によってコンパクト化がなされると共に、例えば500万画素の撮像素子を搭載したデジタルカメラにも対応可能な高い結像性能が得られる。具体的には、第1レンズG1が条件式(1)を満足するようなパワーを有しているので大型化が抑制されると共に球面収差の増大も抑制される。さらに、第1レンズG1が条件式(2),(3)を満足するような光学ガラスによって形成されているので、軸上色収差が低減される。さらに、条件式(4),(5)を満足するように構成されているので、球面収差やコマ収差等の高次収差が良好に補正されるうえ、コンパクト化に寄与する。さらに、条件式(6),(7)を満足するように構成した場合には、十分なバックフォーカスを確保しつつ、さらなる小型化が実現される。また、光軸Z1上における面S1と面S2との間の位置に絞りStを配置するようにしたので、全長をより短縮することができる。以下、条件式(1)〜(7)の意義について詳細に説明する。
【0034】
条件式(1)は、全系のパワー(1/f)に対する第1レンズG1のパワー(1/f1)の大きさを表す量(f1/f)の適正範囲を表す式である。第1レンズG1のパワー配分を適正化することにより、諸収差の補正と、十分なバックフォーカスの確保とをバランス良く実施することができる。ここで、条件式(1)の下限を下回って第1レンズG1の正のパワーが強くなりすぎると球面収差の補正が不十分となってしまううえ、全系の大型化を招いてしまう。一方、条件式(1)の上限を上回って第1レンズG1の正のパワーが弱くなりすぎるとバックフォーカスが十分に確保できなくなってしまう。
【0035】
条件式(2),(3)は、第1レンズG1に用いる光学ガラスのd線に対する分散を規定するものである。条件式(2),(3)を満足することにより分散を抑え、軸上色収差の低減を図っている。
【0036】
条件式(4)は、全系のパワー(1/f)に対する第2レンズG2のパワー(1/f2)の大きさを表す量(f2/f)の適正範囲を表す式である。第2レンズG2のパワー配分を適正化することにより、諸収差を良好に補正することができる。ここで、条件式(4)の下限を下回って第2レンズG2の負のパワーが強くなりすぎると高次収差の増大を招いてしまう。一方、条件式(2)の上限を上回って第2レンズG2の負のパワーが弱くなりすぎると主に球面収差やコマ収差の補正が困難となる。特に、この撮像レンズでは、以下の条件式(8)を満足するようにすると、より良好な収差補正が可能となる。
【0037】
0.9<|f2/f|<1.1 ……(8)
条件式(5)は、全系のパワー(1/f)に対する第3レンズG3のパワー(1/f3)の大きさを表す量(f3/f)の適正範囲を表す式である。第3レンズG3のパワー配分を適正化することにより、諸収差の補正と、十分なバックフォーカスの確保とをバランス良く実施することができる。ここで、条件式(5)の下限を下回って第3レンズG3の正のパワーが強くなりすぎるとバックフォーカスが十分に確保できなくなってしまう。一方、条件式(5)の上限を上回って第3レンズG3の正のパワーが弱くなりすぎると、十分な収差補正が困難となってしまう。特に、以下の条件式(9)を満足するようにすると、十分なバックフォーカスの確保と良好な収差補正とをよりバランス良く実施することが可能となる。
【0038】
3.0<f3/f<10 ……(9)
条件式(6),(7)は、撮像レンズ全体のコンパクト性を規定するものである。条件式(6)を満足することで、より十分なバックフォーカスを確保することができる。特に、以下の条件式(10)を満足する場合には、よりいっそう大きなバックフォーカスを確保することができる。また、条件式(7)を満足することにより、さらなる小型化を実現することができる。特に、以下の条件式(11)を満足する場合には、よりいっそうの小型化を達成することができる。
【0039】
bf/TL>0.23 ……(10)
TL/(2×Ih)<1.0 ……(11)
このように、本実施の形態の撮像レンズによれば、第1レンズG1〜第4レンズG4を上記のように構成し、所定の条件式を満足するようにしたので、コンパクト化を実現すると共に高い結像性能を確保することができる。
【実施例】
【0040】
次に、本実施の形態に係る結像レンズの具体的な数値実施例について説明する。以下では、第1〜第9の数値実施例(実施例1〜9)を、第1の数値実施例を基本にしてまとめて説明する。
【0041】
図10,図11は、図1に示した撮像レンズの構成に対応する具体的なレンズデータ(実施例1)を示している。図10は、基本的なレンズデータ、図11は、非球面形状に関するデータを示している。同様に、図12,図13は、第2の構成例(図2)に対応する具体的なレンズデータ(実施例2)を示している。同様に、図14,図15は、第3の構成例(図3)に対応する具体的なレンズデータ(実施例3)を示している。同様に、図16,図17は、第4の構成例(図4)に対応する具体的なレンズデータ(実施例4)を示している。同様に、図18,図19は、第5の構成例(図5)に対応する具体的なレンズデータ(実施例5)を示している。同様に、図20,図21は、第6の構成例(図6)に対応する具体的なレンズデータ(実施例6)を示している。同様に、図22,図23は、第7の構成例(図7)に対応する具体的なレンズデータ(実施例7)を示している。同様に、図24,図25は、第8の構成例(図8)に対応する具体的なレンズデータ(実施例8)を示している。同様に、図26,図27は、第9の構成例(図9)に対応する具体的なレンズデータ(実施例9)を示している。
【0042】
図10に示した基本レンズデータにおける面番号Siの欄には、図1に示した撮像レンズの符号Siに対応させて、絞りStを除き最も物体側にある構成要素の面を1番目として、像側に向かうに従い順次増加するようにして符号を付したi番目(i=1〜10)の面の番号を示している。曲率半径Riの欄には、図1で示した符号Riに対応させて、物体側からi番目の面の曲率半径の値を示す。面間隔Diの欄についても、図1で付した符号に対応させて、物体側からi番目の面Siとi+1番目の面Si+1との光軸上の間隔を示す。曲率半径Riおよび面間隔Diの値の単位はミリメートル(mm)である。Ndj,νdjの欄には、それぞれ、カバーガラスCGも含めて、物体側からj番目(j=1〜5)のレンズ要素のd線(587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数の値を示す。なお、カバーガラスCGの両面の曲率半径R9,R10の値が0(ゼロ)となっているが、これは平面であることを示す。また、絞りの面間隔Diの欄には、光軸上における面S1と絞りStとの距離(mm)を示す。マイナスの符号は、絞りStが面S1よりも像側にあることを意味する。図10の欄外には、諸データとして、全系の焦点距離f(mm)、Fナンバー(FNO.)、バックフォーカス(空気換算)bf(mm)、第1レンズG1の物体側の面S1から撮像面Simgまでの距離(但し、バックフォーカスは空気換算)TL(mm)および撮像面での最大像高Ih(mm)の値を同時に示す。
【0043】
図10において、面番号Siの左側に付された記号「*」は、そのレンズ面が非球面形状であることを示す。各実施例共に、第1レンズG1〜第4レンズG4の全ての両面が非球面形状となっている。基本レンズデータには、これらの非球面の曲率半径として、光軸近傍(近軸近傍)の曲率半径の数値を示している。
【0044】
図11の非球面データの数値において、記号“E”は、その次に続く数値が10を底とした“べき指数”であることを示し、その10を底とした指数関数で表される数値が“E”の前の数値に乗算されることを示す。例えば、「1.0E−02」であれば、「1.0×10-2」であることを示す。
【0045】
非球面データには、以下の式(ASP)によって表される非球面形状の式における各係数Ai,Kの値を記す。Zは、より詳しくは、光軸から高さhの位置にある非球面上の点から、非球面の頂点の接平面(光軸に垂直な平面)に下ろした垂線の長さ(mm)を示す。
【0046】
Z=C・h2/{1+(1−K・C2・h21/2}+ΣA・h ……(ASP)
但し、
Z:非球面の深さ(mm)
h:光軸からレンズ面までの距離(高さ)(mm)
K:離心率
C:近軸曲率=1/R
(R:近軸曲率半径)
Ai:第i次(iは3以上の整数)の非球面係数
なお、実施例1〜9のいずれにおいても、第1レンズG1〜第4レンズG4の全ての面が非球面形状となっている。また、非球面係数Aとしては、第3次〜第10次の係数A〜A10が有効に用いられている。ただし、実施例6の第3面〜第8面、および実施例7の第2面〜第8面では、第3次〜第16次の係数A〜A16が有効に用いられている。
【0047】
図28は、上述の条件式(1)〜(7)に対応する値を、各実施例についてまとめて示したものである。図28に示したように、各実施例の値が、全て条件式(1)〜(7)の数値範囲内となっている。
【0048】
図29(A)〜図29(C)は、実施例1の撮像レンズにおける球面収差、非点収差、およびディストーション(歪曲収差)を示している。各収差図には、d線を基準波長とした収差を示すが、球面収差図には、F線(波長486.1nm),C線(波長656.3nm)についての収差も示す。非点収差図において、実線はサジタル方向、破線はタンジェンシャル方向の収差を示す。同様に、実施例2についての諸収差を図30(A)〜図30(C)に示す。同様に、実施例3についての諸収差を図31(A)〜図31(C)に示す。同様に、実施例4についての諸収差を図32(A)〜図32(C)に示す。同様に、実施例5についての諸収差を図33(A)〜図33(C)に示す。同様に、実施例6についての諸収差を図34(A)〜図34(C)に示す。同様に、実施例7についての諸収差を図35(A)〜図35(C)に示す。同様に、実施例8についての諸収差を図36(A)〜図36(C)に示す。同様に、実施例9についての諸収差を図37(A)〜図37(C)に示す。
【0049】
以上の各レンズデータおよび各収差図から明らかなように、各実施例について、極めて良好な収差性能が発揮されている。また、全長のコンパクト化も達成されている。
【0050】
以上、いくつかの実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態および実施例に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、各レンズ成分の曲率半径、面間隔および屈折率の値は、上記各数値実施例で示した値に限定されず、他の値をとり得るものである。また、上記実施の形態および実施例では、第1〜第4レンズにおける両面が全て非球面となるようにしたが、これに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0051】
G1〜G4…第1レンズ〜第4レンズ、CG…カバーガラス、Si…物体側から第i番目のレンズ面、Ri…物体側から第i番目のレンズ面の曲率半径、Di…物体側から第i番目と第(i+1)番目のレンズ面との面間隔、Z1…光軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、
物体側に凸面を向けた正のパワーを有する第1レンズと、
物体側に凹面を向けた負のパワーを有する第2レンズと、
正のパワーを有する第3レンズと、
近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとからなり、
前記第1レンズと前記第2レンズとの間に空気間隔を有し、かつ以下の条件式(1),(5)を満足するように構成されている
ことを特徴とする撮像レンズ。
0.7<f1/f<1.1 ……(1)
1.9<f3/f<20 ……(5)
但し、
f:全体の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項2】
さらに、以下の条件式(2),(3)を満足するように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
1.45<n1<1.6 ……(2)
ν1>60 ……(3)
但し、
n1:第1レンズのd線に対する屈折率
ν1:第1レンズのd線に対するアッベ数
【請求項3】
さらに、以下の条件式(4)を満足するように構成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の撮像レンズ。
0.8<|f2/f|<1.8 ……(4)
但し、
f2:第2レンズの焦点距離
【請求項4】
物体側から順に、
物体側に凸面を向けた正のパワーを有する第1レンズと、
物体側に凹面を向けた負のパワーを有する第2レンズと、
正のパワーを有する第3レンズと、
近軸近傍において物体側に凸面を向けたメニスカス形状の第4レンズとからなり、
かつ以下の条件式(1),(5)を満足するように構成されている
ことを特徴とする撮像レンズ。
0.7<f1/f<1.1 ……(1)
1.9<f3/f<20 ……(5)
但し、
f:全体の焦点距離
f1:第1レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
【請求項5】
さらに、以下の条件式(2),(3)を満足するように構成されている
ことを特徴とする請求項4に記載の撮像レンズ。
1.45<n1<1.6 ……(2)
ν1>60 ……(3)
但し、
n1:第1レンズのd線に対する屈折率
ν1:第1レンズのd線に対するアッベ数
【請求項6】
さらに、以下の条件式(4)を満足するように構成されている
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の撮像レンズ。
0.8<|f2/f|<1.8 ……(4)
但し、
f2:第2レンズの焦点距離

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2011−221561(P2011−221561A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173149(P2011−173149)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【分割の表示】特願2006−163875(P2006−163875)の分割
【原出願日】平成18年6月13日(2006.6.13)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】