説明

撮像装置、その補正制御方法、及び補正制御プログラム、並びに記録媒体

【課題】本発明の目的は、画像データの変動に対する収束時間を速くして、精度よくオフセット成分の補正を行う。
【解決手段】撮像装置は、複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る。システム制御部及びライン選択回路201は、予め規定された特定モードの移行があると、画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、この特定遮光画素領域を検出領域として選択する。乗算器202及び205と加算器203とは検出領域に対応付けられた画像データを検出領域画像データとして受け、この検出領域画像データを撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする。減算器206は画像データを平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする。そして、システム制御部及びライン選択回路は、検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、遮光画素領域を通常状態に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルビデオカメラ等の撮像装置、その補正制御方法、及び補正制御プログラム、並びに記録媒体に関し、特に、マトリックス状に配列された複数の画素を有する撮像素子において発生し、撮像素子の列毎に互いに異なるオフセット成分の補正を行うことのできる撮像装置、その補正制御方法、及び補正制御プログラム、並びに記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、デジタルビデオカメラ等の撮像装置においては、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサー等の撮像素子が用いられている。この撮像素子においては、複数の画素が行方向及び列方向にマトリックス状に配列されている。そして、近年、撮像素子において、多画素化及び高速化が進んでいる。
【0003】
このような多画素化及び高速化に対処するため、撮像素子においては、例えば、増幅(アンプ)等の処理を、単数又は複数の列毎に並列的に行うようにしている。
【0004】
ところが、増幅等の処理を、列毎に分割して並列的に行う関係上、撮像素子から得られた画像データにおいて、列毎にそのオフセット成分が互いに異なるという現象が生じてしまう。
【0005】
つまり、列毎にオフセット成分のばらつきが生じてしまう。そして、オフセット成分にばらつきがあると、オフセット成分のばらつきに起因して、画像に縦方向に筋状のノイズ(縦筋ノイズ)が現れてしまうことになる。
【0006】
ところで、オフセット成分を検出して補正する手法として、つまり、撮像素子の並列読み出しに起因する縦筋ノイズを補正するための手法として、所謂加算平均法を用いてオフセット成分の補正を行うようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
ここでは、固定値に基づく撮像画像信号から基準信号平均値を算出するとともに、基準信号平均値に対する固定値に基づく撮像画像信号の差分値の加算値を得る。そして、有効画素の撮像画像信号が入力される期間において、撮像画像信号に対して、加算値を除算して得られる除算平均値を用いて、オフセット成分の補正を行うようにしている。
【0008】
ところで、列毎のオフセット成分のばらつきは、遮光時おける同一の列の画像データを減じることによって補正することができる。
【0009】
列毎のオフセット成分のばらつきを補正する際には、動画像の撮影中においては遮光することができないため、一般に、撮像素子に所謂遮光画素を設けて、この遮光画素から遮光時の画像データ(以下、遮光画像データと呼ぶ)を得る。そして、この遮光画像データを用いて補正値を生成し、この補正値に基づいてオフセット成分のばらつきを補正するようにしている。
【0010】
一方、列毎のオフセット成分のばらつきを精度よく検出するために、同列の遮光画像データを、例えば、加算平均又は巡回フィルタ等を用いて平均化処理を行って、補正値を生成することが行われている。
【0011】
そして、この平均化処理によって、画素毎の画像データのばらつきに起因する補正値のばらつきを防止することができる。
【0012】
なお、画素毎の画像データのばらつきには、オフセット性のばらつきとランダム性のばらつきとがある。オフセット性のばらつきには画素依存性があり、ランダム性のばらつきには、画素依存性はない。
【0013】
このため、上記の平均化処理によって、画像データのばらつきを低減できる程度は、オフセット性のばらつきについては、遮光画素の数に依存することになる。
【0014】
一方、ランダム性のばらつきについては、平均化処理の際に別のフレームにおける同一画素の出力(画像データ)を用いて、補正値を生成することが可能である。このため、ランダム性のばらつきについては、複数のフレームにおいて遮光画素の画像データを平均化して、補正値を生成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−167918号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところが、上述のような平均化処理を行うと、画像データの変動に対する収束が遅くなってしまう。一般に、撮影中においては、画像データが大きく変動することはないものの、次のような場合には、画像データが大きく変動する可能性がある。
【0017】
例えば、画像データが大きく変動する例として、記録した画像データを再生するモードの場合又は電源がオン状態で撮像装置を使用していない場合を例として挙げることができる。
【0018】
このような場合には、撮像素子の出力は不要であるため、一般に、自動又は手動によって省電力モード等に状態に切り替えられて、撮像素子の出力は停止される(オフする)。そして、撮像素子の出力が停止されると、遮光画像データがある期間の間得られない状態となる。
【0019】
撮像素子の出力が停止された状態において、温度変化等の外部環境に起因して、遮光画素に係るオフセット成分が変動すると、再度撮像素子の出力をオンした場合には、前回の遮光画像データと今回の遮光画像データとが大きく異なってしまうことになる。
【0020】
さらに、補正値を記憶しているメモリ等の記憶装置を初期化して、記憶装置に記憶された補正値がリセットされて初期値又は不定値になった際にも、記憶装置に記憶されている値に対応する遮光画像データが異なることになる関係上、画像データの変動が生じることになる。
【0021】
特に、画像データの変動量が大きいと、平均化処理の結果得られる補正値が収束するまでに、補正値自体が大きくずれることになる。この結果、所謂過補正が発生して、縦筋ノイズ及び黒レベルの変動が生じてしまう。
【0022】
なお、補正値が収束するまでの間、画像データを出力しないことも可能であるが、この場合には、画像データが出力されるまでの所謂出画時間が増加(遅延)してしまう結果となる。
【0023】
従って、本発明の目的は、画像データの変動に対する収束時間を速くして、精度よくオフセット成分の補正を行うことのできる撮像装置、その補正制御方法、及び補正制御プログラム、並びに記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記の課題を解決するために、本発明による撮像装置は、複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置において、予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する遮光画素調整手段と、前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする平均化手段と、前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする補正手段とを有し、前記遮光画素調整手段は、前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻すことを特徴とする。
【0025】
本発明による補正制御方法は、複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置に用いられ、前記画像データを補正する補正制御方法において、予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する第1のステップと、前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする第2のステップと、前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする第3のステップと、前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻す第4のステップとを有することを特徴とする。
【0026】
本発明による補正制御プログラムは、複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置に用いられ、該撮像装置に前記画像データの補正を実行させる補正制御プログラムにおいて、予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する第1のステップと、前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする第2のステップと、前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする第3のステップと、前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻す第4のステップとを有することを特徴とする。
【0027】
本発明による記録媒体は、上記の補正制御プログラムが格納されたコンピュータに読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本発明では、予め規定された特定モードの移行があると、画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域として、この特定遮光画素領域を検出領域として選択する。
【0029】
そして、検出領域に対応付けられた画像データを検出領域画像データとして受け、検出領域画像データを撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データと得て、画像データを平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとするようにしている。この際、検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、遮光画素領域を通常状態に戻すようにしている。
【0030】
このように、特定モード移行の際には、変更後の検出領域を通常状態よりも大きくしているので、画像データの変動に対する収束時間を速くして、精度よくオフセット成分の補正を行うことができるという効果が得られる。つまり、特定モード移行の際に、オフセット成分の補正に用いるフレーム数を低減することができ、被写体の明るさに拘わらず、常に特定モード移行時に実行される補正に要する時間を一定とすることができる。そして、特定モード移行時におけるオフセット成分の補正を精度よく行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態による撮像装置の一例であるデジタルビデオカメラの構成を概略的に示す図である。
【図2】図1に示す補正部の構成の一例を詳細に示すブロック図である。
【図3】図1に示すデジタルビデオカメラにおいて、モード移行の際の行選択(遮光画素領域選択)動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【図4】図1に示すデジタルビデオカメラにおいて、通常状態及び遮光時における検出領域(遮光画素領域)の一例を模式的に示す図であり、(a)は、通常状態における検出領域を示す図、(b)は遮光時における検出領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態による撮像装置の一例であるデジタルビデオカメラ100の構成を概略的に示す図である。
【0034】
図1を参照して、図示のデジタルビデオカメラ100は、アイリス及びレンズ等を備える光学系101、撮像部102、タイミングジェネレータ(TG)103、システム制御部104、アナログフロントエンド(AFE)105、補正部106、カメラ信号処理部107、及び操作部108を有している。
【0035】
そして、システム制御部104は、光学系101、TG103、AFE105、補正部106、及びカメラ信号処理部107を制御する。また、TG103は、システム制御部104の制御下で撮像部102を制御する。
【0036】
システム制御部104は、CPU(中央演算装置)及び内蔵メモリを備えており、ユーザーは、操作部108から撮影上の各種ユーザー操作指令等をシステム制御部104に与える。そして、システム制御部104は、ユーザー操作指令に応じてデジタルビデオカメラ100の制御を行う。また、ユーザーは、操作部108を用いて、撮影モード及び再生モード等のモード切り替え(モード移行とも呼ぶ)を行うことができる。
【0037】
図示の撮像部102は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサー又はCCDイメージセンサー(図示せず)等の撮像素子を有している。この撮像素子は、複数の画素を有しており、これら画素は、例えば、列方向及び行方向にマトリックス状に配列されている。
【0038】
被写体(図示せず)を撮影する際には、ユーザーは、操作部108を操作して、システム制御部104に撮影モード指令を与える。これによって、システム制御部104は、デジタルビデオカメラ100を撮影モードとする。
【0039】
撮影モードにおいて、被写体を撮影すると、光学系101を通過した光が、撮像部102内の撮像素子上に結像される。そして、撮像素子は、結像による像を光電変換して、アナログ画像信号として出力する。
【0040】
この際、TG103は、システム制御部107の制御下で撮像部102を制御し、システム制御部104によって設定されたシャッタースピード及びフレームレートで、アナログ画像信号を撮像部102から出力する。
【0041】
AFE105は、このアナログ画像信号をアナログ−デジタル(A/D)変換して、デジタル画像信号(以下、画像データと呼ぶ)とする。そして、この画像データは、補正部106に与えられる。
【0042】
補正部106は、後述するようにして、画像データについて列毎のオフセット性のばらつきを補正して、オフセット補正済み画像データ(補正後画像データ)とする。そして、補正部106は、このオフセット補正済み画像データをカメラ信号処理部107に供給する。
【0043】
カメラ信号処理部107は、オフセット補正済み画像データに対して、例えば、ガンマ補正、輪郭補正、及び色ゲイン補正等の信号処理を行い、カメラ信号として出力する。そして、このカメラ信号は、例えば、メモリ(図示せず)に記録される。
【0044】
図2は、図1に示す補正部106の構成の一例を示すブロック図である。
【0045】
図2を参照して、図示の補正部106は、平均化処理を行うため、所謂巡回フィルタを用いている。補正部106は、ライン選択回路201、乗算器202、加算器203、ラインメモリ204、乗算器205、及び減算器206を有している。
【0046】
図示の例においては、乗算器202は、係数kをライン選択回路301の出力に乗じる。ラインメモリ204には、1ライン分のデータが記憶される。また、乗算器205は、係数(1−k)をラインメモリ204の出力に乗じる。なお、係数kは巡回係数であり、0から1の間の数値が設定される。
【0047】
図1に関連して説明したように、AFE105から補正部106に画像データが与えられる。そして、この画像データは、補正部106において、ライン選択回路201及び減算器206に送られる。
【0048】
ライン選択回路201は、システム制御部104(図1)によって制御されている。そして、ライン選択回路201は、システム制御部104で指定されたたライン(つまり、行)を選択して、選択ライン画像データとして出力する。この選択ライン画像データは、検出領域画像データとも呼ばれる。
【0049】
ライン選択回路201の出力は、つまり、選択ライン画像データは、乗算器202においてk倍されて、第1の乗算画像データとして加算器203に与えられる。一方、ラインメモリ204の出力が、乗算器205で(1−k)倍されて、第2の乗算画像データとして加算器203に与えられる。
【0050】
加算器203は、第1及び第2の乗算画像データを加算して、加算画像データ(つまり、平均化画像データ)としてラインメモリ204に与える。ラインメモリ204は、この平均化画像データを補正値として記憶する。
【0051】
そして、減算器206には、前述のように画像データが与えられるとともに、ラインメモリ204から平均化画像データが与えられる。減算器206は、画像データから平均化画像データを減算して、オフセット補正済み画像データとして出力する。この際、減算器206は、画像データからラインメモリ204に記憶されている同列の平均化画像データを減算することになる。
【0052】
図3は、図1に示すデジタルビデオカメラ100において、モード移行の際の行選択(遮光画素領域選択)動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0053】
ここで、図1、図2、及び図3を参照して、前述したように、デジタルビデオカメラ100においては、ユーザーが操作部108(図1)を操作して、システム制御部104(図1)に対して、各種モード(以下、単にモードと呼ぶ)等の設定等を行うことができる。そして、システム制御部104は、ユーザーの操作によってモードの移行を表すモード移行指令が与えられると、モード移行を行う。
【0054】
このモード移行においては、ラインメモリ204に記憶された平均化画像データにおけるオフセット成分と現在の遮光画像データにおけるオフセット成分とが異なる可能性がある場合がある。ここでは、このようなオフセット成分の相違を伴うモード移行を、特定モード移行と呼び、このような特定モード移行は、予めシステム制御部104に設定されているものとする。
【0055】
例えば、撮像素子の出力を停止(オフ)するモードから撮像素子の出力を開始(オン)するモードへのモード移行は、特定モード移行とされる。ラインメモリ204の初期化を行うモードも、特定モード移行である。但し、特定モード移行後においては、撮像素子からアナログ画像信号が出力されているものとする。
【0056】
いま、ユーザーが操作部108を操作して、モード移行を行うと、システム制御部104は、当該モード移行が特定モード移行であるか否かを判定する(ステップS301)。当該モード移行が特定モード移行でなければ(ステップS301において、NO)、システム制御部104は、再度ステップS301に戻って、再度モード移行が行われるまで待機することになる。
【0057】
一方、当該モード移行が特定モード移行である判定すると(ステップS301において、YES)、システム制御部104は、光学系101が遮光されているか否かを判定する(ステップS302)。そして、光学系101が遮光されていないと(ステップS302において、NO)、システム制御部104は、光学系101を制御して、光学系101の遮光を行う(ステップS303)。その後、システム制御部104は、後述するステップS304に移行する。
【0058】
光学系101が遮光されていると(ステップS302において、YES)、システム制御部104は、TG103を制御してフレームレートを固定状態とするとともに、ラインメモリ204における蓄積時間を固定状態とする(ステップS304)。例えば、システム制御部104は、TG103を制御してフレームレートを最も速くする。さらに、システム制御部104は、ラインメモリ204における蓄積時間をフレームレートと同一の時間に制御する。
【0059】
これによって、1フレームの更新時間(つまり、フレームレート)は最も短くなり、蓄積時間は最も長い設定とすることができる。
【0060】
上記のようにして、フレームレート及び蓄積時間を固定状態とした後、システム制御部104は、ライン選択回路210を制御して、検出領域の変更を行う(検出領域変更:ステップS305)。ここで、検出領域とは、ライン選択回路201において選択するライン(行)を意味しており、通常状態の場合には、検出領域は、予め規定された遮光画素ライン(遮光画素領域)に設定されている。
【0061】
なお、図示の例では、検出領域については、特に、列に制限を設けていないが、列に制限を設けるようにしてもよい。
【0062】
図4は、図1に示すデジタルビデオカメラ100において、通常状態及び遮光時における検出領域(遮光画素領域)の一例を模式的に示す図である。
【0063】
ここで、図4(a)は、通常状態の場合の検出領域を示す図であり、図4(b)は特定モード移行における検出領域を示す図である。
【0064】
図4(a)において、撮像素子400は、遮光画素領域401及び有効画素領域402を有している。そして、システム制御部104は、通常状態の場合には、ライン選択回路210を制御して、遮光画素領域401における検出開始ライン403から検出終了ライン404までを検出領域とする。つまり、システム制御部104は、遮光画素領域401を検出領域とすることになる。
【0065】
一方、遮光時においては、システム制御部104は、図4(b)に示すように、通常状態における有効画素領域402を含めて検出終了ライン405を設定し、検出開始ライン403から検出終了ライン405までを検出領域とする。
【0066】
つまり、図4(a)に示す通常状態においては、斜線部分で示す遮光画素領域401が検出領域となる。一方、図4(b)に示す遮光時においては、有効画素領域402を含む斜線部分で示す領域406が検出領域(特定遮光画素領域)となる。
【0067】
図示の例では、遮光画素領域401及び有効画素領域402が検出領域とされる。このようにして、通常状態から変更された変更後の検出領域は、特定遮光画素領域とも呼ばれる。
【0068】
このようにして、変更後の検出領域(特定遮光画素領域)を、通常状態における検出領域よりも大きくすることによって、1フレームにおいて得られる遮光画像データの数を大きく増やすことができることになる。これによって、遮光画像データが収束するフレームの数を低減することができることになる。
【0069】
図4(a)及び(b)で説明したようにして、特定モード移行の場合には、検出領域を変更した後、システム制御部104は、変更後の検出領域(つまり、特定遮光画素領域)におけるオフセット成分の検出を開始する(ステップS306)。
【0070】
そして、システム制御部104は、オフセット成分が収束するまでの数フレームの間、ライン選択回路201を制御して、当該変更後の検出領域と光学系101の遮光とを維持する(ステップS307)。
【0071】
ここで、オフセット成分が収束するまでのフレーム数の算出について説明する。
【0072】
いま、乗算器202に与えられるn画素目(nは1以上の整数)の画像データを、乗算器入力としてXnで表し、ラインメモリ204の出力(平均化画像データ)をラインメモリ出力としてYnで表す。係数kを用いて乗算器入力とラインメモリ出力の関係を示すと、数1で表すことができる。
【0073】
【数1】

【0074】
ここで、ラインメモリ204に記憶されているある列の平均化画像データをAとし、オフセット成分が収束する値(収束値)をBとする。いま、ランダムノイズを無視すると、Y0はA、Xnはnに関係なく、常にBであるため、上記の数1に代入して整理すると、数2で表されることになる。
【0075】
【数2】

【0076】
一方、ラインメモリ出力Ynは、収束値Aと平均化画像データBとの差分のC%となるとすると、ラインメモリ出力Ynは、数3で表すことができる。
【0077】
【数3】

【0078】
上記の数3を、数2に代入すると、必要とする画像データの数、つまり、整数nは数4で表される。
【0079】
【数4】

【0080】
1フレームで得られる画像データの数は、図4(b)に示す検出開始ライン403から検出終了ライン405までの検出ライン数である。ここでは、この検出ライン数をDとする。従って、C%になるためのフレーム数Fは、n/Dとなり、数4からフレーム数Fは次の数5で表されることになる。
【0081】
【数5】

【0082】
例えば、係数kが1/1025、検出ライン数Dが1000、収束条件を初期値と収束値との差分の1%未満とすると、収束に要するフレーム数は、4.7フレームとなる。よって、この例においては、システム制御部104は、5フレーム分、上記の変更後の検出領域と光学系101の遮光とを維持することになる。
【0083】
上述のようにして、収束条件を満たすフレームの間、変更後の検出領域と光学系101の遮光とを維持した後、システム制御部104は、ライン選択回路201を制御して、図4(b)に示す変更後の検出領域を、図4(a)に示す遮光画素領域401に戻す(検出領域変更:ステップS308)。
【0084】
続いて、システム制御部104は、TG103及びラインメモリ204を制御して、前述のフレームレート及び蓄積時間の固定状態を解除する(ステップS309)。そして、システム制御部104は、光学系101を制御して、光学系101の遮光状態を解除する。これによって、システム制御部104は、補正部106からオフセット補正済み画像データの出力を開始する(出画:ステップS310)。
【0085】
このようにして、特定モード移行に伴ってオフセット成分の補正を行う際、つまり、特定モード移行があった場合のオフセット成分の補正について、その補正に要する時間を短縮することができる。
【0086】
そして、特定モード移行の際には、変更後の検出領域を通常状態よりも大きくしているので、特定モード移行に際に生じる画質劣化を緩和することができるばかりでなく、出画までに要する短縮することができる。つまり、上記の実施の形態によれば、画像データの変動に対する収束時間を速くして、精度よくオフセット成分の補正を行うことができることになる。
【0087】
また、遮光中においては、フレームレートとラインメモリ204における蓄積時間とを固定状態としているので、特定モード移行の際にオフセット成分の補正に要する時間を、特定モード移行の種別に拘わらず、常に最も短い時間とすることができる。
【0088】
なお、図4(b)に示す例では、変更後の検出領域として、撮像素子の全画素領域を用いているが、この例に限らず、変更後の検出領域は、遮光画素領域401を越える領域に設定するようにすればよい。
【0089】
いずれにしても、特定モード移行の際には、通常状態よりも遮光画素領域を拡大して、変更後の検出領域(つまり、特定遮光画素領域)とすればよい。そして、変更後の検出領域を大きくすれば、オフセット成分を補正する効果が大きくなる。
【0090】
上述の説明から明らかなように、上記の実施の形態では、光学系101、ライン選択回路201、システム制御部104、及び操作部108が集合的に、予め規定された特定モードの移行があると、画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、この特定遮光画素領域を検出領域として選択する遮光画素調整手段として機能する。
【0091】
この際、システム制御部104は、検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、ライン選択回路201を制御して遮光画素領域を通常状態に戻すことになる。
【0092】
また、乗算器202及び205と加算器203とが、上記の検出領域に対応付けられた画像データを検出領域画像データとして受け、この検出領域画像データを撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする平均化手段として機能することになる。
【0093】
さらに、減算器206が画像データを平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする補正手段として機能することになる。
【0094】
加えて、システム制御部104及び光学系101は、特定モードの移行があると、撮像素子に入射する光を遮光し、予め指定されたフレーム数が経過すると撮像素子に対する遮光を解除する遮光制御手段として機能する。
【0095】
なお、ライン選択回路201は、撮像素子の出力に係る全ての行から少なくとも一部を選択行として選択して、この選択行を検出領域として、検出領域画像データを生成する。そして、ライン選択回路201は、特定モードの移行があると、選択行の数を増加させて特定遮光画素領域を規定することになる。
【0096】
さらに、ラインメモリ204は、平均化画像データを補正値として記憶する記憶手段として機能する。
【0097】
また、システム制御部104は、フレームレート変更手段として機能する。そして、システム制御部104は、ライン選択回路210が選択行を増加させた際、TG103を制御して、画像データにおけるフレームレートを変更する。これによって、システム制御部104はフレームレートを通常のフレームレートよりも速い変更フレームレートすることになる。そして、例えば、この変更フレームレートは、デジタルビデオカメラ100に設定されたフレームレートのうち最も速いフレームレートである。
【0098】
また、システム制御部104は、ラインメモリ204を制御して、フレームレートが変更された際、平均化画像データの蓄積時間を変更フレームレートと同一とする。そして、システム制御部104は、上記のフレーム数を指定するフレーム数指定手段として機能することになる。
【0099】
以上、本発明について実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。
【0100】
例えば、上述の実施の形態の機能を補正制御方法として、デジタルビデオカメラ100に実行させるようにしてもよい。この場合には、補正制御方法は、第1のステップ、第2のステップ、第3のステップ、第4のステップ、第5のステップ、第6のステップ、第7のステップ、第8のステップ、第9のステップ、及び第10のステップを有する。また、上述の実施の形態の機能を有するプログラムを補正制御プログラムとして、デジタルビデオカメラ100が備えるマイクロプロセッサー等のコンピュータに実行させるようにしてもよい。
【0101】
さらには、この補正制御プログラムが格納された記録媒体から、補正制御プログラムをデジタルビデオカメラ100が備えるマイクロプロセッサー等のコンピュータに読み込ませて、当該プログラムを実行させても、同様な効果を実現できる。
【0102】
この補正制御プログラムを供給するための記録媒体としては、例えば、ハードディスク、磁気テープ等の磁気記録媒体、光/光磁気記憶媒体、不揮発性の半導体メモリが用いられる。また、濃度補正制御プログラムを供給する際には、コンピュータネットワーク上のサーバに当該プログラムを記憶し、クライアントコンピュータがこのプログラムをダウンロードするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
101 光学系
102 撮像部
103 タイミングジェネレータ(TG)
104 システム制御部
105 アナログフロントエンド(AFE)
106 補正部
107 カメラ信号処理部
108 操作部
201 ライン選択回路
202,205 乗算器
203 加算器
204 ラインメモリ
206 減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置において、
予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する遮光画素調整手段と、
前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする平均化手段と、
前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする補正手段とを有し、
前記遮光画素調整手段は、前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻すことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記遮光画素調整手段は、前記特定モードの移行があると、前記撮像素子に入射する光を遮光し、前記予め指定されたフレーム数が経過すると前記撮像素子に対する遮光を解除する遮光制御手段と、
前記撮像素子の出力に係る全ての行から少なくとも一部を選択行として選択して、該選択行を前記検出領域として、前記検出領域画像データを前記平均化手段に与える行選択手段とを有し、
前記行選択手段は、前記特定モードの移行があると、前記選択行の数を増加させて前記特定遮光画素領域を規定することを特徴とする請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
前記平均化画像データを補正値として記憶する記憶手段を有し、
前記補正手段は、前記画像データから前記補正値を減算して前記補正後画像データとすることを特徴とする請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】
前記行選択手段が前記選択行を増加させた際、前記画像データにおけるフレームレートを変更して、前記フレームレートを通常のフレームレートよりも速い変更フレームレートするフレームレート変更手段を有することを特徴とする請求項2項記載の撮像装置。
【請求項5】
前記変更フレームレートは、前記撮像装置に設定されたフレームレートのうち最も速いフレームレートであることを特徴とする請求項4記載の撮像装置。
【請求項6】
前記フレームレート変更手段によって前記フレームレートが変更された際、前記平均化画像データの蓄積時間を前記変更フレームレートと同一とすることを特徴とする請求項4又は5記載の撮像装置。
【請求項7】
前記フレーム数を指定するフレーム数指定手段を有することを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の撮像装置。
【請求項8】
複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置に用いられ、前記画像データを補正する補正制御方法において、
予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する第1のステップと、
前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする第2のステップと、
前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする第3のステップと、
前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻す第4のステップとを有することを特徴とする補正制御方法。
【請求項9】
前記第1のステップは、前記特定モードの移行があると、前記撮像素子に入射する光を遮光する第5のステップと、
前記特定モードの移行があると、前記撮像素子の出力に係る全ての行から少なくとも一部を選択行として選択して、該選択行を前記検出領域とし、前記検出領域画像データを得る際、前記特定モードの移行があると、前記選択行の数を前記通常状態より増加させる第6のステップとを有し、
前記第4のステップは、前記予め指定されたフレーム数が経過すると前記撮像素子に対する遮光を解除する第7のステップと、
前記予め指定されたフレームが経過すると前記選択行の数を前記通常状態に戻す第8のステップとを有することを特徴とする請求項8記載の補正制御方法。
【請求項10】
前記撮像装置には、前記平均化画像データを補正値として記憶する記憶手段が備えられており、
前記第3のステップでは、前記画像データから前記補正値を減算して前記補正後画像データとすることを特徴とする請求項8又は9記載の補正制御方法。
【請求項11】
前記第6のステップで前記選択行を増加させた際、前記画像データにおけるフレームレートを変更して、前記フレームレートを通常のフレームレートよりも速い変更フレームレートする第9のステップを有することを特徴とする請求項9記載の補正制御方法。
【請求項12】
前記変更フレームレートは、前記撮像装置に設定されたフレームレートのうち最も速いフレームレートであることを特徴とする請求項11記載の補正制御方法。
【請求項13】
前記第9のステップによって前記フレームレートが変更された際、前記平均化画像データの蓄積時間を前記変更フレームレートと同一とする第10のステップを有することを特徴とする請求項11又は12記載の補正制御方法。
【請求項14】
複数の画素がマトリックス状に配列された撮像素子を備え、該撮像素子からの出力に応じた画像データを得る撮像装置に用いられ、該撮像装置に前記画像データの補正を実行させる補正制御プログラムにおいて、
予め規定された特定モードの移行があると、前記画素のうち遮光された画素の領域を示す遮光画素領域を通常状態よりも増加させて特定遮光画素領域とし、該特定遮光画素領域を検出領域として選択する第1のステップと、
前記検出領域に対応付けられた前記画像データを検出領域画像データとして受け、該検出領域画像データを前記撮像素子の列毎に平均化して平均化画像データとする第2のステップと、
前記画像データを前記平均化画像データに応じて補正して補正後画像データとする第3のステップと、
前記検出領域画像データについて予め指定されたフレーム数が経過すると、前記遮光画素領域を前記通常状態に戻す第4のステップとを有することを特徴とする補正制御プログラム。
【請求項15】
請求項14に記載の補正制御プログラムが格納されたコンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−135196(P2011−135196A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290970(P2009−290970)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】